説明

容器類の掴み装置

【課題】ゴム状弾性体の先芯付近、及び後端付近における破損を防止し、掴み装置の耐久性を向上する。
【解決手段】先芯の背面を、断面が上に凸の曲線となっているR状斜面10とすることで、当該部分の接着剥離が無くなり、先芯付近のゴム状弾性体2に発生する応力が小さくなり、破損が減少する。また、ゴム状弾性体2の後端付近(鍔状部の直ぐ先端寄り部分)外周に環状凹溝14を形成することで、容器口部と擦れ合うことによる弾性体材料の摩耗又は劣化が無くなり、後端付近の破損が減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスびん等の口部を有する容器類を、その口部にゴム状弾性体を挿入し、その径を容器類の口部内径よりも太くして保持する、容器類の掴み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の掴み装置は、例えば下記特許文献1などに開示されているが、図6に基づいて説明する。図6は従来の掴み装置21の上半分を縦断して示す側面図である。掴み装置21はゴム状弾性体22、ロッド23、ガイド部24、スライダー25、コイルバネ26、座金28などからなる。ロッド23は金属の棒状で先端に先細りの砲弾形状をした樹脂製ガイド部24が固着されている。ゴム状弾性体22はブチルゴム、エチレン・プロピレンジエンゴムなどの高弾性体でなり、軸芯に貫通孔のあいた中空筒状をなし、後端に鍔状部27を有し、先端面をガイド部24に当接させてロッド23に挿通されている。また、ゴム状弾性体22の先端部分には環状凹部31が形成され、ここに環状の先芯29が内嵌されると共に接着剤32で固定され、先芯29はゴム状弾性体22と共にロッド23に挿入されているが、拡径したロッドの段部33に当接して後退不能となっている。座金28は金属製で、穴あき板状をなし、ロッド23に挿通されると共に鍔状部27の後端面に固着されている。ロッド23の後端には金属製のスライダー25が挿通固定され、スライダー25と座金28の間にコイルバネ26が装着されて双方を外側に押圧するように付勢している。
【0003】
掴み装置21で容器を掴む場合、装着装置(図示せず)によって行われる。装着装置は座金28を固定した状態でスライダー25を前方に押し出す。するとロッド23が前方に押し出され、先芯29の作用でゴム状弾性体22の先端部もロッド23と共に前方に押し出されるが、後端の鍔状部27が座金28に固定されているため、ゴム状弾性体22は前後に伸長されることとなり、径が細くなる。この状態で容器類の口部に挿入された後、スライダー25をフリーにすると、コイルばね26の作用でスライダが後退し、ロッド23及びゴム状弾性体22の先端部も後退し、ゴム状弾性体22は元の長さに戻ると共に、径も元の太さに戻り容器類の口部内側に圧接する。
【0004】
上記のように、掴み装置21は、ゴム状弾性体22が容器類の口部内側に嵌着して容器類を掴んだ後、例えば、下記特許文献2に示されるような表面処理装置によって、容器類の表面にコーティングを施す用途などに使用することができる。容器類を開放するときは、前記と同様にスライダー25を押し出してゴム状弾性体22の径を細くして行う。
【特許文献1】特開2002−301680号公報
【特許文献2】特開2000−281385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のこの種の掴み装置は、耐久性に問題があり、特に図6のA部分(先芯29付近)及びB部分(ゴム状弾性体22後端付近)において、ゴム状弾性体22が破損してしまうという問題があった。本発明は、A部分(先芯29付近)及びB部分(ゴム状弾性体22後端付近)における切断原因を確認し、当該部分においてゴム状弾性体が切断されることを防止し、掴み装置の耐久性を向上することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ロッドと、ロッド先端に固着した先細り形状のガイド部と、中空筒状をなし、後端に鍔状部を有し、先端面を前記ガイド部に当接させて前記ロッドに挿通されたゴム状弾性体と、前記ゴム状弾性体の先端部分に形成された環状凹部に内嵌されると共に接着固定され、前記ゴム状弾性体と共に前記ロッドに後退不能に挿入された環状の先芯と、穴あき板状をなし、前記ロッドに挿通して前記鍔状部の後端面に固着した座金とを有し、前記ロッドを前進させてゴム状弾性体を伸長させ、径を細くした状態で容器類の口へ挿入し、挿入後ロッドを後退させてゴム状弾性体の径を元に戻し、容器類の口の内周面に圧接させて容器類を掴む装置において、前記先芯の背面を、断面が上に凸の曲線となっているR状斜面としたことを特徴とする容器類の掴み装置である。
【0007】
上記従来の掴み装置21(先芯29の背面形状を図4の右側に「従来例」として示す)について、ロッド23を前方に押し出した場合、ゴム状弾性体22内部及び表面に生じる応力を調べた。図5に「従来例」として示すのは、先芯29の背面からゴム状弾性体22の環状凹部31を引き離すように作用する法線方向応力である。図7に示すように、先芯29とゴム状弾性体22の環状凹部31とは接着剤32で接着されているが、この法線方向の応力は接着をその面と直角方向に引き離すように作用する。図5に明らかなように、従来例の法線方向応力は全体的に大きく、特に下端において甚だしく大きくなっているので、接着は下端から上方に向かって剥がれだし、図7に示すように、接着の剥がれた剥離部34が生じていると考えられる。そこで、剥離部34が生じている場合に、ゴム状弾性体22内部及び表面に発生する応力について調べたところ、図8のようになった。図8の横軸は時間で、「ゴム伸ばし」はロッドを前方に押し出してゴム状弾性体が伸びるとき、「口部挿入」は掴み装置を容器(ガラスびん)口部に挿入するとき、「ゴム戻し」はロッドが後退してゴム状弾性体が元に戻るときを示している。「A−先端側」「B−根元側」は図6における破損のおきやすいA部分及B部分の応力である。A部分は非常に大きな応力が発生し、B部分は比較的小さな応力が発生しているのがわかる。
【0008】
以上の考察の結果、先端側のA部分の破損の原因は、先芯29の背面とゴム状弾性体22の環状凹部31との接着が剥がれて剥離部34が生じているため、A部分の応力がきわめて大きくなっていることであると結論できる。また、根元側のB部分の破損の原因は、発生応力が小さいことから、容器口部と擦れ合うことによる摩耗又は弾性体材料の劣化によるものと考えられる。
【0009】
先端側A部分の破損の対策として、先芯の背面を、断面が上に凸の曲線となっているR状斜面にした。これにより、先芯の背面からゴム状弾性体の環状凹部を引き離すように作用する法線方向応力が低減し、剥離部が生じにくくなるため、A部分に発生する応力が小さくなり、A部分の破損が減少する。なお、上記の上に凸の曲線は円弧であることがより望ましい。
【0010】
R状斜面の平均斜度は、0.1以上1.0以下であることが望ましい。平均斜度が0.1より小さいと、ゴム状弾性体の接着部分が長くなりすぎて好ましくない。1.0以下であると、法線方向応力の低減効果が特に大きくなり、好ましい。なお、平均斜度とは、図2において、R状斜面が開始する点をa、終了する点をb、ab間の水平距離をx、垂直距離をyとした場合のy/xである。
【0011】
また本発明は、ロッドと、ロッド先端に固着した先細り形状のガイド部と、中空筒状をなし、後端に鍔状部を有し、先端面を前記ガイド部に当接させて前記ロッドに挿通されたゴム状弾性体と、前記ゴム弾性体の先端部分に形成された環状凹部に内嵌されると共に接着固定され、前記ゴム弾性体と共に前記ロッドに後退不能に挿入された環状の先芯と、穴あき板状をなし、前記ロッドに挿通して前記鍔状部の後端面に固着した座金とを有し、前記ロッドを前進させてゴム状弾性体を伸長させ、径を細くした状態で容器類の口へ挿入し、挿入後ロッドを後退させてゴム状弾性体の径を元に戻し、容器類の口の内周面に圧接させて容器類を掴む装置において、前記鍔状部の直ぐ先端寄りの前記ゴム状弾性体外周に環状凹溝を形成したことを特徴とする容器類の掴み装置である。
【0012】
上記のように、根元側のB部分の破損の原因は、容器口部と擦れ合うことによる摩耗又は弾性体材料の劣化によるものであるので、鍔状部7の直ぐ先端寄りのゴム状弾性体2外周に環状凹溝14を形成すると、当該部分が容器口部と擦れ合うことが無くなり、B部分の破損が減少する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の掴み装置は、最も破損の発生する個所であった、ゴム状弾性体の先端側(A部分)と根元側(B部分)における損傷が減少するので、耐久性に優れるものである。
【実施例】
【0014】
図1は実施例の掴み装置1の上半分を縦断して示す側面図、図2は掴み装置1の先芯9付近の拡大説明図、図3はゴム状弾性体2の先端側と根元側の応力説明図、図4は実施例の掴み装置1及び従来例の掴み装置21の先芯の背面形状の説明図、図5は実施例の掴み装置1及び従来例の掴み装置21の先芯の背面からゴム状弾性体の環状凹部を引き離すように作用する法線方向応力の説明図である。
【0015】
掴み装置1はゴム状弾性体2、ロッド3、ガイド部4、スライダー5、コイルバネ6、座金8などからなる。ロッド3はステンレス等の金属製で、棒状をなし、先端に先細りの砲弾形状をした樹脂製ガイド部4が固着されている。ゴム状弾性体2はエチレン・プロピレンジエンゴム等の高弾性体でなり、軸芯に貫通孔を有する中空筒状をなし、後端に鍔状部7が一体形成され、先端面をガイド部4に当接させてロッド3に挿通されている。また、ゴム状弾性体2の先端部分内面には環状凹部31が形成され、ここに環状の先芯9(ステンレスなどの金属製)が内嵌されると共に接着剤12で固定され、これがゴム状弾性体2と共にロッド3に挿入されているが、ロッドの拡径した段部13に当接して後退不能となっている。座金は8はステンレスなどの金属製で、穴あき板状をなし、ロッド3に挿通されると共に鍔状部7の後端面に固着されている。ロッド3の後端にはステンレスなどの金属製のスライダー5が挿通固定され、スライダー5と座金8の間にコイルバネ6が装着されて双方を外側に押圧するように付勢している。
【0016】
先芯9の背面形状は、図2、3に示すように断面が上に凸の曲線(円弧)となっているR状の下り斜面となっており、その平均斜度は0.23である。本実施例について、ロッド3を前方に押し出した場合、ゴム状弾性体2内部及び表面に生じる応力を調べた。図5に「実施例」として示すのは、先芯9の背面からゴム状弾性体2の環状凹部11を引き離すように作用する法線方向応力である。同図に明らかなように、実施例の法線方向応力は従来例と比較してきわめて小さくなっており、したがって、先芯9と環状凹部11の接着が剥離するおそれがない。図3はゴム状弾性体2の先端側(図6におけるA部分)及び根元側(図6におけるB部分)に発生する応力であるが、図8の従来例と比較して、先端側に発生する応力が約35%低減している。したがって、A部分の破損が減少する。
【0017】
ゴム状弾性体2の根元側、すなわち鍔状部7の直ぐ先端寄りの外周に環状凹溝14が形成されている。図3と図8の比較から分かるように、根元側においては実施例の方が従来例よりも若干大きな応力が発生するが、環状凹溝14を設けることで、容器口部と擦れ合うことが無くなり、根元部分(B部分)の破損が減少する。
【0018】
本実施例の掴み装置は、従来例の掴み装置と比較して、使用開始から破損するまでの期間(寿命)が平均で約10倍となり、耐久性の向上が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例の掴み装置1の上半分を縦断して示す側面図である。
【図2】掴み装置1の先芯9付近の拡大説明図である。
【図3】ゴム状弾性体2の先端側と根元側の応力説明図である。
【図4】実施例の掴み装置1及び従来例の掴み装置21の先芯の背面形状の説明図である。
【図5】先芯の背面からゴム状弾性体の環状凹部を引き離すように作用する法線方向応力の説明図である。
【図6】従来例の掴み装置21の上半分を縦断して示す側面図である。
【図7】掴み装置21の先芯29付近の拡大説明図である。
【図8】ゴム状弾性体22の先端側と根元側の応力説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 掴み装置
2 ゴム状弾性体
3 ロッド
4 ガイド部
5 スライダー
6 コイルバネ
7 鍔状部
8 座金
9 先芯
10 R状斜面
11 環状凹部
12 接着剤
13 段部
14 環状凹溝
21 掴み装置
22 ゴム状弾性体
23 ロッド
24 ガイド部
25 スライダー
26 コイルバネ
27 鍔状部
28 座金
29 先芯
30 後端面
31 環状凹部
32 接着剤
33 段部
34 剥離部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッドと、
ロッド先端に固着した先細り形状のガイド部と、
中空筒状をなし、後端に鍔状部を有し、先端面を前記ガイド部に当接させて前記ロッドに挿通されたゴム状弾性体と、
前記ゴム弾性体の先端部分に形成された環状凹部に内嵌されると共に接着固定され、前記ゴム弾性体と共に前記ロッドに後退不能に挿入された環状の先芯と、
穴あき板状をなし、前記ロッドに挿通して前記鍔状部の後端面に固着した座金とを有し、
前記ロッドを前進させてゴム状弾性体を伸長させ、径を細くした状態で容器類の口へ挿入し、挿入後ロッドを後退させてゴム状弾性体の径を元に戻し、容器類の口の内周面に圧接させて容器類を掴む装置において、
前記先芯の背面を、断面が上に凸の曲線となっているR状斜面としたことを特徴とする容器類の掴み装置。
【請求項2】
請求項1の掴み装置において、前記R状斜面の平均斜度が、0.1以上1.0以下であることを特徴とする容器類の掴み装置。
【請求項3】
ロッドと、
ロッド先端に固着した先細り形状のガイド部と、
中空筒状をなし、後端に鍔状部を有し、先端面を前記ガイド部に当接させて前記ロッドに挿通されたゴム状弾性体と、
前記ゴム弾性体の先端部分に形成された環状凹部に内嵌されると共に接着固定され、前記ゴム弾性体と共に前記ロッドに後退不能に挿入された環状の先芯と、
穴あき板状をなし、前記ロッドに挿通して前記鍔状部の後端面に固着した座金とを有し、
前記ロッドを前進させてゴム状弾性体を伸長させ、径を細くした状態で容器類の口へ挿入し、挿入後ロッドを後退させてゴム状弾性体の径を元に戻し、容器類の口の内周面に圧接させて容器類を掴む装置において、
前記鍔状部の直ぐ先端寄りの前記ゴム状弾性体外周に環状凹溝を形成したことを特徴とする容器類の掴み装置。
【請求項4】
請求項1又は2の掴み装置において、
前記鍔状部の直ぐ先端寄りの前記ゴム状弾性体外周に環状凹溝を形成したことを特徴とする容器類の掴み装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−119184(P2007−119184A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314346(P2005−314346)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000222222)東洋ガラス株式会社 (102)
【Fターム(参考)】