説明

容器

【課題】容器内での物品の転動を的確かつ簡易に防止でき得る容器を提供する。
【解決手段】シート材を折り曲げるとともに一部を接着することで形成される容器10は、平坦状に折り畳まれた平坦状態と、物品を収容可能な形状に立体化させられた組立状態と、に変更可能となっている。この容器10は、組立状態において、物品が収容された際に当該物品の外表面に接触する位置に粘着剤を塗布することで形成される粘着部50と、前記平坦状態において、前記粘着部に接触する位置に剥離剤を塗布することで形成される剥離部52と、をそれぞれ1以上有している。平坦状態から組立状態への移行時に、剥離剤が粘着部に転移することにより、粘着部50に、適度な剥離性が付与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材を折り曲げるとともに一部を貼着することで形成される容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラスチックシートや紙などのシート材を折り曲げるとともに一部を接着して形成される容器が広く知られている。こうした容器の中には、少なくとも一部が透明または半透明となっており、容器内部に収容された物品を外部から観察でき得るものがある。かかる外部から観察可能な容器に物品を収容する場合、美観的な都合から、当該物品の正面と容器の正面とを常に一致させたいという要望がある。しかしながら、転動容易形状(例えば円筒形や楕円筒形、球形など)の物品の場合、搬送時などに生じる振動を受けて、物品が容器内で転動してしまい、物品と容器との位置関係がずれることが多かった。
【0003】
そこで、従来から容器内での物品の転動を防止し得る技術が多数提案されている。例えば、特許文献1記載の技術のように、容器とは別の部材を物品に嵌合させることで物品を転動しにくい状態にしたうえで、容器に収容する技術が知られている。
【0004】
また、特許文献2,3には、容器に形成された開口部を介して、当該容器に収容された物品に、接着性(粘着性含む)を有したフィルムやシールラベルを貼着することで、物品の回転を防止する技術が開示されている。また、特許文献4には、開口部に対向して設けられた一対のサイドフラップに止着フィルムを跨るように貼着することで、容器に収容された物品の天面に当該止着フィルムを止着し、これにより、物品の回転を防止する技術が開示されている。こうした技術によれば、容器内での物品の転動を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−153370号公報
【特許文献2】特開2006−240647号公報
【特許文献3】登録実用新案第3063151号明細書
【特許文献4】特開2006−240722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の技術のように他部材を物品に嵌合させることで回転防止する技術の場合、部品点数や製造工数、コストの増加という問題を招く。また、他部材に嵌合された状態の物品を収容する関係上、物品に比して容器のサイズを大きくせざるを得ないという問題もある。
【0007】
特許文献2−4記載の技術のように接着性(または粘着性)を有したフィルム等を用いる場合、容器サイズ増加などの問題は生じない。しかし、この特許文献2−4記載の技術でも、容器とは別の部品(フィルム等)を用いているため、部品点数や製造工数の増加という問題を招く。また、特許文献2−4記載の技術では、フィルム等の接着力(または粘着力)の調整が極めて困難という問題がある。すなわち、フィルム等の接着力が乏しい場合には、物品の回転を好適に防止することが出来ない。逆に、接着力が過大な場合、物品を容器から取り出すのに過大な力を要したり、接着剤の一部が物品に付着したまま剥がれなくなったりするという問題が生じる。
【0008】
つまり、従来、容器内での物品の転動を的確かつ簡易に防止でき得る技術はなかった。そこで、本発明では、容器内での物品の転動を的確かつ簡易に防止でき得る容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の容器は、シート材を折り曲げるとともに一部を接着することで形成される容器であって、平坦状に折り畳まれた平坦状態と、物品を収容可能な形状に立体化させた組立状態と、に変更可能な容器であって、前記組立状態において、物品が収容された際に当該物品の外表面に接触する位置に粘着剤を塗布することで形成される粘着部と、前記平坦状態において、前記粘着部に接触する位置に剥離剤を塗布することで形成される剥離部と、をそれぞれ1以上有していることを特徴とする。
【0010】
好適な態様では、前記物品が、略円筒形または略楕円筒形である場合、前記粘着部は、少なくとも、前記物品の天面または底面に接触する位置に設けられる。
【0011】
他の好適な態様では、前記容器は、組立状態において、前記粘着部が設けられた面と、当該容器に収容された物品外表面と、の隙間が殆ど生じない大きさ、形状に形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、物品に接触する粘着部が、平坦状態において、剥離剤が塗布された剥離部に接触している。そのため、粘着部への剥離剤の転移が生じ、粘着部に適度な粘着性と剥離性とが付与される。そして、結果として、物品への粘着剤の転移等を防止しつつ、容器内での物品の転動を的確かつ簡易に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一実施形態である容器の展開図である。
【図2】平坦状態における容器の正面図である。
【図3】組立状態における容器の一部斜視図および上面図である。
【図4】粘着部および剥離部周辺の断面図である。
【図5】本発明の第二実施形態である容器の展開図である。
【図6】平坦状態における容器の正面図である。
【図7】組立状態における容器の一部斜視図である。
【図8】組立状態における容器の背面図、上面図、および、底面図である。
【図9】第三実施形態である容器の展開図である。
【図10】容器の折り曲げ過程を示す図である。
【図11】第四実施形態である容器の展開図である。
【図12】平坦状態における容器の正面図である。
【図13】組立状態における容器の一部斜視図である。
【図14】組立状態における容器の正面図、上面図、および、底面図である。
【図15】従来の物品収容技術の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第一実施形態である容器10の展開図である。また、図2は、平坦状態における容器10の正面図、図3は、組立状態における容器10の一部斜視図および上面図である。なお、以下の図面では、見易さのために、斜視図と展開図との間で、寸法比や形状を異ならせている。また、以下の図面において砂目ハッチングを施した幾何学形状部分は、接着剤または粘着剤の塗布部分を示している。
【0015】
この容器10は、シート材を折り曲げるとともに一部を接着することで形成される自立可能な容器である。本実施形態の容器10は、従来の容器と異なり、転動容易な形状、例えば、円筒形や楕円筒形、球形などの物品100の収容に、特に好適な構成を有している。以下、物品100の形状が略円筒形である場合を例に挙げて、この容器10の構成について詳説する。
【0016】
容器10を構成するシート材は、箱形状を維持できる程度の強度を有するものであれば特に限定されない。したがって、例えば、厚紙、合成樹脂シート、紙と合成樹脂シートの積層シート、紙又は合成樹脂シートと金属箔の積層シートなどを用いることができる。合成樹脂シートの樹脂材料は特に限定されず、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリエステル系などの汎用樹脂が例示される。ただし、シート材は、少なくとも一部(例えば容器10の正面に相当する部位)、望ましくは、そのほぼ全体が、透明または半透明であることが望ましい。したがって、厚紙のように不透明なシート材を用いる場合には、当該シート材の一部に窓部(開口)を設けておくことが望ましい。このようにシート材の少なくとも一部を透明または半透明にするのは、容器10に収容された物品100を外部から観察可能とするためである。
【0017】
容器10は、1枚のシート材を、図1に図示する展開図の外形線に沿って打ち抜いた後、適宜、折り曲げ、接着することで形成される。したがって、後述する本体12、蓋部14、底部16などの容器10の構成部材は、全て、一体形成されていることになる。また、シート材には、折り曲げ作業を容易にするために、予め、押罫や、切罫、ミシン罫、リード罫などからなる折り曲げ線が形成されている。
【0018】
シート材の両端を接着することで構成される容器10は、図2に図示するように平坦状に折り畳まれた平坦状態と、図3に図示するように物品100を収容できるように立体的に組み立てられた組立状態と、に変更可能となっている。ここで、一般的に、製造された容器10は、平坦状態で保管や搬送された後、物品100を収容する直前に、組立状態に組み立てられることが多い。換言すれば、容器10は、一定期間、平坦状態で維持された後に、組立状態になり、物品100が収容されることになる。
【0019】
本実施形態の容器10は、組立状態において、断面略正方形となる略角筒状の本体12を有している。この本体12は、四つの周壁、すなわち、前壁18f、背壁18b、左側壁18l、右側壁18rから構成される(なお、特に前後左右を区別しない場合は、添字のアルファベットを省略して「周壁18」という。以下、他部材でも同じ)。なお、これら周壁18の名称は、あくまで説明上の名称であり、実際の製品としての前後左右とは無関係であってよい。したがって、例えば、「前壁」は、必ずしも、製品としての前側の周壁である必要はなく、製品としての後側や側面側の周壁が「前壁」であってもよい。
【0020】
前壁18fの端部からは、接着剤が塗布される糊代部20が延設されている。この糊代部20が、右側壁18rの端部に接着されることで、容器10が形成されることになる。なお、十分な接着力を発揮するのであれば、当該糊代部20に塗布される接着剤の種類は特に限定されないが、本実施形態では、合成ゴム系のホットメルト接着剤を用いている。
【0021】
本体12の下縁からは当該本体12の下端開口を覆うための三つの底フラップ、すなわち、主底フラップ22m、右底フラップ22r、左底フラップ22lが延設されている。この三つの底フラップ22により、容器10の底部16が構成される。右底フラップ22rおよび左底フラップ22lは、側壁18r,18lから延設されるフラップである。この左右の底フラップ22r,22lは、本体12の下端開口を覆う際には、周壁18との角度が略90度になるべく、側壁18r,18lとの境界線に沿って折り曲げられる。
【0022】
主底フラップ22mは、背壁18bから延設されるフラップで、下端開口を覆う主部24と、当該主部24の先端からの延びる差込部26と、に大別される。本体12の下端開口を覆う際、この主部24は、周壁18との角度が略90度になるべく、背壁18bとの境界線に沿って折り曲げられる。また、差込部26は、主部24との角度が略90度になるべく、主部24との境界線に沿って折り曲げられる。そして、この折り曲げられた差込部26が、左右底フラップ22l,22rと前壁18fとの隙間に差し込まれることで、折り曲げ状態が維持される。
【0023】
本体12の上縁からは当該本体12の上端開口を覆うための三つの蓋フラップ、すなわち、主蓋フラップ32m、右蓋フラップ32r、左蓋フラップ32lが延設されている。右蓋フラップ32rおよび左蓋フラップ32lは、側壁18r,18lから延設されるフラップである。この左右蓋フラップ32r、32lは、本体12の上端開口を蓋する際には、周壁18との角度が略90度になるべく、側壁18r,18lとの境界線に沿って折り曲げられる。また、この左右蓋フラップ32r,32lは、ほぼ同じ大きさの略矩形である。より具体的には、左右蓋フラップ32r,32lは、上端開口のほぼ半分を覆うような略矩形のうち前壁18f寄りの端部が大きく切り欠いたような形状となっている。したがって、この左右蓋フラップ32r,32lで上端開口を覆うべく当該左右蓋フラップ32r,32lを折り曲げたとしても、前壁18f寄りの位置に小開口38が形成されることになる。この小開口38は、後述する粘着部50が収まる位置および大きさとなっており、当該接触部の物品100天面への接触を許容するが、これについては後述する。
【0024】
右蓋フラップ32rには、剥離剤が塗布されることにより形成される剥離部52が設けられている。この剥離部52は、より具体的には、容器10を折り畳んだ平坦状態(図2の状態)において、後述する粘着部50に接触するような位置に設けられている。また、この剥離部52は、粘着部50よりも十分に大きくなっており、多少の寸法誤差があったとしても、粘着部50の全面に確実に接触できるようになっている。
【0025】
この剥離部52に塗布される剥離剤は、粘着剤が塗布された粘着部50に、適度な剥離性(一度接着された後の剥がし易さ)を付与できるのであれば、特に限定されないが、本実施形態では、微粒子状のシリコーン系樹脂を含有したシリコーン系剥離剤を用いている。
【0026】
主蓋フラップ32mは、背壁18bから延設されるフラップで、本体12の上端開口を覆う主部34と、当該主部34の先端から延びる差込部36と、に大別される。本体12の上端開口を蓋する際、この主部34は、周壁18との角度が略90度になるべく、背壁18bとの境界線に沿って折り曲げられる。また、差込部36は、主部34との角度が略90度になるべく、主部34との境界線に沿って折り曲げられる。そして、この折り曲げられた差込部36が、左右蓋フラップ32r,32lと前壁18fとの隙間に差し込まれることで、蓋された状態が維持される。
【0027】
主部34のうち基端(背壁18bに近いほうの端部)寄りの位置には、粘着剤を塗布することにより形成される粘着部50が設けられている。この粘着部50に塗布される粘着剤は、常温でも適度な粘着力を維持できるのであれば特に限定されない。したがって、「粘着剤」として市販されている物質の他にも、常温で粘着力を維持できるのであれば、二つの物質を接着するために用いられる接着剤や、接着対象の物質を溶融させることで粘着力を発揮する溶剤なども、本実施形態における「粘着剤」として用いることができる。本実施形態では、粘着部50に塗布される粘着剤として、合成ゴム系ホットメルト粘着剤を使用している。なお、このホットメルト粘着剤は、その硬度を調整することにより、得られる粘着力を調整することができる。すなわち、高い粘着力が必要な場合はホットメルト粘着剤の硬度を低めに調整し、低い粘着力が必要な場合はホットメルト粘着剤の硬度を高めに調整すればよい。
【0028】
既述した通り、この粘着部50は、折り畳んだ平坦状態において、剥離部52に接触する位置に設けられている。また、別の見方をすると、この粘着部50は、組立状態において上端開口を蓋した際(すなわち主蓋フラップ32mを折り曲げた際)に、背壁18bの縁と左右蓋フラップ32r,32lの縁とで囲まれる小開口38内に収まる位置に設けられている。したがって、蓋した際、この粘着部50は、本体12に収容された物品100の天面に接触できる位置に設けられているといえる。そして、この粘着部50が、物品100の天面(外表面)に接触し、粘着することで、容器10の内部での物品100の転動が効果的に防止される。
【0029】
すなわち、既述したとおり、本実施形態の容器10は、転動容易な形状、具体的には略円筒形の物品100を収容対象としている。このような転動容易形状の物品100は、単に、容器10に収容しただけでは、搬送時などに生じる振動や衝撃を受けて、当該容器10の内部で転動してしまう。その結果、物品100の正面位置と容器10との正面位置とがズレてしまう場合が多々あった。容器外部から物品の観察が可能な容器10の場合、かかる物品100と容器10との相対位置関係のズレは、商品としての美感を大きく損なうことになり、店頭陳列での購買意欲が落ちることになる。
【0030】
そこで、従来から、物品の転動を防止するために、当該物品に嵌合可能な孔または凹を設けた台紙やトレーを利用する技術が提案されている。例えば、図15(a)に図示するように、物品100に嵌合可能な半円筒形の凹部202を有する成形トレー200を用意しておく。そして、物品100の正面が外側に向くように、成形トレー200の凹部202に物品100を嵌合させ、その状態で容器10に収容する技術が知られている。また、別の形態として、図15(b)に図示するように、途中に二本の切り込みが施された台紙204を円弧状に撓ませることで物品が嵌合(挿入)可能な孔206を形成し、当該孔206に物品100を挿入した状態で当該物品100を容器10に収容する技術も知られている。このように、物品100に、転動困難な形状の他部材(成形トレー200や台紙204)を装着し、この他部材を装着した状態で物品100を容器10に収容する技術の場合、物品100の転動、ひいては、容器10と物品100との相対的位置関係のズレが効果的に防止できる。
【0031】
しかしながら、かかる技術の場合、成形トレー200などの別部材を新たに用意する必要があり、部品点数の増加や、数量管理、製造工程の煩雑化、コスト増加といった問題を招いていた。また、他部材を装着した状態の物品100を収容する関係上、容器10のサイズが、物品100に比して大きくならざるを得なかった。かかる容器10のサイズ増加は、保管スペースや材料費の増加という問題も招いていた。
【0032】
本実施形態では、こうした問題を避けつつも物品100の転動を防止するために、既述したとおり、容器10のうち物品100に接触する位置、具体的には、主蓋フラップ32mの主部34に粘着部50を設けている。この粘着部50は、容器10に収容された物品100の外表面(本実施形態では天面)に接触、粘着し、物品100の動きを阻害することになる。その結果、振動を受けても物品100の転動が防止されるため、容器10と物品100との相対位置関係が維持され、常に良好な外観を保つことができる。
【0033】
ここで、この粘着部50は、シート材に粘着剤を塗布することにより形成されている。そのため、本実施形態では、成形トレー200や台紙204のような他部材を用意する必要がなく、部品点数や材料費の増加という問題が生じることがない。また、本実施形態では、物品100に他部材を装着する必要がないため、容器10を、物品100に比して過度に大きくする必要がない。そして、その結果、容器10にサイズ増加、ひいては、保管スペースや材料費の増加という問題も防止できる。
【0034】
なお、本実施形態では、容器10の高さを、物品100の高さとほぼ同じにしている。換言すれば、容器10を、粘着部50が設けられた面(本実施形態では主蓋フラップ32mの表面)と物品100との隙間が殆どなくなるような形状(サイズ)としている。かかる構成とすることで、粘着部50を物品100の外表面に確実に接触させることができ、ひいては、物品100の転動をより確実に防止することができる。
【0035】
ところで、粘着部50を物品100の外表面に粘着させることで転動を防止する技術の場合、粘着部50における粘着力の強度によっては、容器10からの物品100の取り出しが困難になったり、取り出された物品100に粘着剤が付着して当該物品100の美感を損ねたりする場合があった。すなわち、粘着部50における粘着力は、物品100の転動を防止し、物品100を固定するためには強力であることが望ましい。しかし、この粘着力が過度に強力である場合には、容器10から物品を取り出す際に過大な力が必要になることがある。また、粘着力に抗して物品100を無理に取り出そうとした場合、粘着部50に塗布された粘着剤の一部が物品100の外表面に転移することがある。この場合、物品100の外表面がベタつくだけでなく、当該転移した粘着剤に粉塵が付着することで物品100の美感が損なわれたりする。かかる問題を避けるために、粘着部50に塗布する粘着剤の粘着力を厳密に調整することも考えられるが、かかる粘着力の厳密な調整は多大な手間が必要となる。
【0036】
本実施形態では、こうした問題を避けるために、容器10を折り畳んだ平坦状態において、粘着部50に接触する位置に剥離剤を塗布した剥離部52を設けている。この剥離部52に粘着部50が接触することにより、粘着部50に適度な剥離性が付与されることになる。これについて、図4を参照して説明する。図4(a)は、平坦状態における粘着部50および剥離部52周辺の断面図である。既述したとおり、シート材を接着することにより製造された容器10は、折り畳まれた平坦状態で保管、搬送される。この平坦状態において、主蓋フラップ32mに設けられた粘着部50および右蓋フラップ32rに設けられた剥離部52は、図4(a)に図示するとおり、互いに対向して接触することになる。
【0037】
物品100を収容する際には、適宜、必要な箇所を折り曲げて、容器10を、平坦状態から、立体化した組立状態に変化させる。この平坦状態から組立状態への移行時には、図4(b)に図示するとおり、主蓋フラップ32mに設けられた粘着部50および右蓋フラップ32rに設けられた剥離部52が、互いに離間することになる。この離間の際、粘着部50の粘着力により、剥離部52に塗布された剥離剤の一部が、粘着部50の表面に転移することになる。この剥離剤の転移により、粘着部50に適度な剥離性が付与されることになる。そして、その結果、粘着剤の物品100の外表面への転移が防止され、粘着剤による物品100のベタツキや汚れなどが効果的に防止される。
【0038】
ここで、剥離剤を、剥離部52(すなわち、粘着部50とは別の部位)に塗布するのではなく、粘着部50に直接、塗布することで粘着部50に剥離性を付与することも考えられる。すなわち、粘着部50に、粘着剤と剥離剤とを順に塗布することで、粘着力と剥離性とを確保することも考えられる。ここで、かかる手法の場合、剥離剤の塗布厚を厳密に調整する必要がある。なぜなら、剥離剤の塗布厚が、厚すぎる場合には、粘着力が過度に低下してしまい、物品100の転動を効果的に防止することができないからである。逆に剥離剤の塗布厚が薄すぎる場合には、剥離性が過度に低下してしまい、物品100への粘着剤の転移を生じる恐れがある。しかしながら、粘着部50に直接、剥離剤を塗布する手法の場合、当該剥離剤の塗布厚を調整することは非常に手間、あるいは、困難であり、ひいては、適度な剥離性および接着力の両立が困難になるといえる。
【0039】
一方、本実施形態では、粘着部50とは別の部位である剥離部52に剥離剤を塗布し、当該剥離剤を粘着部50の粘着力により転移させることで、粘着部50に剥離性を付与している。この場合、剥離部52に塗布された剥離剤の塗布厚に関わらず、剥離剤の粘着部50への転移量は、基本的には、粘着部50の粘着力に応じた量に限定される。換言すれば、剥離剤の塗布厚を厳密に調整しなくても、適度な量の剥離剤が、粘着部50に塗布(転移)されることになる。その結果、比較的簡易な作業内容で、粘着部50に、適度な剥離性と接着力とを持たせることが可能となる。
【0040】
つまり、本実施形態によれば、物品の他部材への嵌合や、粘着剤の粘着力の厳密な調整、剥離剤の塗布厚の厳密な調整といった煩雑あるいは複雑な作業を経ることなく、物品100の転動を的確かつ簡易に防止できる。
【0041】
次に、第二実施形態について、図5〜図8を参照して説明する。図5は、第二実施形態である容器10の展開図である。また、図6は、平坦状態における当該容器10の正面図、図7は、組立状態における当該容器10の一部斜視図である。さらに、図8は、組立状態における容器10の背面図、上面図、および、底面図である。
【0042】
この容器10も第一実施形態の容器10と同様に、組立状態において、略角筒形となる本体12、当該本体12の上端から延設される蓋部14、当該本体12の下端から延設される底部16を備えている。ただし、本実施形態では、第一実施形態と異なり、前壁18fを他の周壁18r,18b,18lに比して大サイズとし、当該前壁18fの一部が角筒部分からはみ出すようにしている。かかる構成とすることで、商品に関する印刷面積を広げることができ、意匠の自由度を向上することができる。
【0043】
また、本実施形態は、粘着部50が、物品100の天面の略中央に接触するように、各蓋フラップ32r,32l,32mの形状や、剥離部52および粘着部50の位置などを、第一実施形態と若干異ならせている。具体的には、本実施形態では、左蓋フラップ32lに粘着部50を、主蓋フラップ32mに当該粘着部50に接触する剥離部52をそれぞれ設けている。そして、粘着部50が設けられた左蓋フラップ32lは、蓋するために折り曲げられた際に、少なくとも物品100の天面中央を覆える程度の大きさとなっている。この左蓋フラップ32lに対向する右蓋フラップ32rは、折り曲げた際に、当該左蓋フラップ32lに干渉しないような大きさとなっている。そして、本実施形態では、この左蓋フラップ32lのうち折り曲げた際に物品100の天面中央に接触する位置に粘着部50を設けている。
【0044】
主蓋フラップ32mは、第一実施形態と同様に、主部34と、当該主部34から延設される差込部36と、を有している。本実施形態では、この主蓋フラップ32mの主部34のうち、平坦状態において粘着部50に接触する位置に剥離剤を塗布した剥離部52を設けている。
【0045】
かかる構成において、容器10に物品を収容した状態で、三つの蓋フラップ32を折り曲げて蓋した場合、左蓋フラップ32lに設けられた粘着部50が、適度な粘着力と剥離性とを持って、物品100の天面中央に接触し、粘着することができる。ここで、本実施形態のように、粘着箇所を物品100の天面中央にした場合、より安定的に物品を保持することができる。そして、結果として、より確実に、物品100の転動を防止することができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、より確実に物品100の転動を防止するために、蓋部14だけでなく、底部16にも粘着部50および剥離部52を設けている。すなわち、本実施形態では、主底フラップ22mの主部24に粘着剤を塗布した粘着部50を設けている。また、右底フラップ22rのうち平坦状態において粘着部50に接触する位置に剥離剤を塗布した剥離部52を、それぞれ設けている。このように物品100の天面だけでなく、物品100の底面も容器10に粘着させることにより、より確実に物品100の転動を防止することができる。
【0047】
なお、これまで例示した粘着部50および剥離部52の位置は、一例であり、粘着部50は組立状態で物品100に接触、剥離部52は平坦状態で粘着部50に接触できるのであれば、他の場所に設けられてもよい。
【0048】
例えば、図5における底部16の剥離部52と粘着部50の位置は逆であってもよい。すなわち、右底フラップ22rに粘着剤を塗布した粘着部50を、主底フラップ22mの主部24に剥離剤を塗布した剥離部52を、それぞれ設けるようにしてもよい。ただし、図8に図示するとおり、本実施形態で対象とする物品は、その底面中央が盛り上がっており、物品底面と容器10の底部16との接触面が略環状になる。かかる場合には、底部16の粘着部50は、物品底面との底部16との接触面内に位置するべく、中央から若干ずれた位置に設けることが必要となる。なお、当然ながら、物品100の底面が平坦面である場合には、蓋部14の場合と同様に、物品100の底面中央に接触する位置に粘着部50を設けるようにしてもよい。
【0049】
次に第三実施形態について、図9、図10を参照して説明する。図9は、第三実施形態である容器10の展開図であり、図10は、この容器10の折り曲げ過程を示す図である。この容器10は、その底部16がワンタッチ方式である点で、第一実施形態と大きく異なっている。すなわち、この容器10の底面は、四つの底フラップ22a,22b,22c,22dから構成されている。前壁18fおよび背壁18bの下端から延設される第一底フラップ22aおよび第二底フラップ22bは、先端に二つの山状突起が並ぶ略M字状となっている。また、左側壁18lおよび右側壁18rから延設される第三底フラップ22cおよび第四底フラップ22dは、略三角形状となっている。つまり、この容器10の下端には、略M字状の底フラップ22a,22bと、略三角形状の底フラップ22c,22dとが交互に並んでいることになる。
【0050】
二つの山状突起が並ぶ第一底フラップ22aのうち一つの山状突起には、隣接する第三底フラップ22cに接着されるために接着剤が塗布されている。また、二つの山状突起が並ぶ第二底フラップ22bのうち一つの山状突起には、隣接する第四底フラップ22dに接着されるために接着剤が塗布されている。
【0051】
容器10を形成する際には、この四つの底フラップ22a,22b,22c,22dを、図10(a)に図示するように、周壁18との境界線に沿って折り曲げる。さらに、図10(b)に図示するように、第一底フラップ22aおよび第二底フラップ22bに設けられた二つの山状突起のうちの一つを手前側に折り返す。そして、前壁18fと左側壁18lとの境界線、および、右側壁18rと背壁18bとの境界線に沿ってシート材を折り曲げ、第一底フラップ22aと第三底フラップ22c、および、第二底フラップ22bと第四底フラップ22dと、を互いに接着する。また、この折り曲げにより、前壁18fの端部から延設された糊代部20と、右側壁18rの端部との接着も図られる。このように形成された容器10は、本体12が略角筒となるように立体化させるだけで、四つの底フラップが互いに係合し合い、本体12の下端開口を覆う底部16となる。
【0052】
このようなワンタッチ方式の底部構成を設けた場合であっても、当該底部に粘着部50を設けることができる。本実施形態では、第一底フラップ22aのうち他の山状突起に、物品100の底面に接着して、当該物品100の転動を防止するために粘着剤が塗布された粘着部50を設けている。さらに、前壁18fのうち、平坦状態において粘着部50に接触する位置、具体的には、第一底フラップ22aとの境界線を挟んで粘着部50に線対象となる位置に、剥離剤が塗布された剥離部52を設けている。このようにワンタッチ方式においても、底部16に粘着部50を設けることにより、物品100の転動をより確実に防止でき、ひいては、商品の美感を向上できる。
【0053】
次に、第四実施形態について図11〜図14を参照して説明する。図11は、第四実施形態である容器10の展開図である。また、図12は、平坦状態における容器10の正面図、図13は組立状態における容器10の一部斜視図である。さらに、図14は、組立状態における容器10の正面図、上面図、および、底面図である。
【0054】
この容器10は、組立状態で略ロの字状となる左蓋フラップ32lを有する点で第一実施形態と異なっている。すなわち、本実施形態の容器10は、背壁18bから延設される主蓋フラップ32mと、左側壁18lから延設される左蓋フラップ32l、および、右側壁18rから延設される右蓋フラップ32rを有している。このうち左蓋フラップ32lは、その中間高さ位置で山折りされて二つに折り畳まれたうえで、その先端が左側壁18lの内面に貼着されている。そして、平坦状態では、この折り畳まれた状態を維持しているが、組立状態では、略角筒状の本体12の内部において、略ロの字状に広げられる。この略ロの字状の左蓋フラップ32lの高さは、その底面が本体12に収容された物品100の天面に接触するように調整されている。そして、本実施形態では、この左蓋フラップ32lの底面に、粘着剤を塗布した粘着部50を設けている。また、平坦状態において、この粘着部50と接触する位置、具体的には、前側壁18fの先端近傍に剥離剤を塗布した剥離部52を設けている。そして、これにより、適度な粘着力と剥離性とを粘着部50に付与することができ、ひいては、物品100の転動を効果的に防止できる。
【0055】
つまり、適宜、容器10の形状に応じて粘着部50および剥離部52の位置を変更することにより、本実施形態のように、若干特殊な形状の容器10であっても、適切に物品100の転動を防止できる。
【0056】
なお、これまで説明した構成は、一例であり、組立状態において物品100の外表面に接触する位置に粘着剤を塗布して形成される粘着部50、および、平坦状態において粘着部50に接触する位置に剥離剤を塗布して形成される剥離部52を有するのであれば、その他の構成は適宜、変更されてもよい。
【0057】
例えば、これまでの説明では、少なくとも、物品100の天面に接触する位置に粘着部50を設けているが、物品100の底面に接触する位置にのみ粘着部50を設け、天面に接触する位置には粘着部50を設けないようにしてもよい。かかる構成とした場合、消費者の目に留まりやすい容器10の蓋部14付近への粘着剤および剥離剤の塗布を避けることができるため、商品としての美感向上を図り易い。
【0058】
また、粘着部50は、物品100の天面および底面以外の場所、例えば、外周面に接触する位置などに設けられてもよい。また、これまでの説明では、粘着部50と剥離部52とを同数にした例のみを挙げているが、粘着部50と剥離部52の数は異なっていてもよい。例えば、複数の粘着部50と、平坦状態において、この複数の粘着部全てに接触できる大きさの一つの剥離部と、を設けるようにしてもよい。さらに、これまでの説明では、略角筒形の容器10のみを例示しているが、転動容易な形状(例えば円筒形や楕円筒形、球形)の物品を収容するのであれば、他の形状の容器10を採用してもよい。例えば、本実施形態の技術は、円筒形や楕円筒形、半円筒形の容器10にも応用することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 容器、12 本体、14 蓋部、16 底部、18 周壁、20 糊代部、22 底フラップ、32 蓋フラップ、50 粘着部、52 剥離部、100 物品、200 成形トレー、204 台紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を折り曲げるとともに一部を接着することで形成される容器であって、平坦状に折り畳まれた平坦状態と、物品を収容可能な形状に立体化させた組立状態と、に変更可能な容器であって、
前記組立状態において、物品が収容された際に当該物品の外表面に接触する位置に粘着剤を塗布することで形成される粘着部と、
前記平坦状態において、前記粘着部に接触する位置に剥離剤を塗布することで形成される剥離部と、
をそれぞれ1以上有していることを特徴とする容器。
【請求項2】
請求項1に記載の容器であって、
前記物品が、略円筒形または略楕円筒形である場合、
前記粘着部は、少なくとも、前記物品の天面または底面に接触する位置に設けられる、
ことを特徴とする容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の容器であって、
前記容器は、組立状態において、前記粘着部が設けられた面と、当該容器に収容された物品外表面と、の隙間が殆ど生じない大きさ、形状に形成されている、ことを特徴とする容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−274953(P2010−274953A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128523(P2009−128523)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【出願人】(000202154)相互印刷紙器株式会社 (43)
【Fターム(参考)】