説明

容器

【課題】取出口22が不用意に開放されるのを抑制しつつ、内容物Mを取り出すときに取出口22を確実に開放させること。
【解決手段】粒状の内容物Mを収容すると共に、天板20bに取出口22が形成された箱型の容器本体2と、天板20b上に重ねられると共に、容器本体2に対して、容器軸Oに直交するスライド方向Sにスライド移動可能に組み合わされた蓋体3と、を備え、蓋体3は、容器本体2に対してスライド方向Sの一方向側にスライド移動させられたときに、取出口22を開放し、容器本体2および蓋体3のいずれか一方には、その平面視において容器軸Oに直交する直交面に沿ってスライド方向Sに交差する方向に延びる弾性係合片54が延設されると共に、いずれか他方には、蓋体3が容器本体2に対して一方向側へスライド移動するときに弾性係合片54の先端部に乗り越えられる係合突起58、59が配設されている容器1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状の内容物(タブレット状の清涼菓子等)を収容する容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の容器として、内容物を収容する貯留部と内容物を取り出すための取出部とを有する容器本体と、この容器本体にスライド移動可能に組み合わされ、スライド移動により取出部を開閉する蓋体と、を備えた容器が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−238176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の容器では、蓋体が不用意にスライド移動して取出部が開放されてしまうという問題があった。
さらに、上記従来の容器では、蓋体をスライド移動させて取出部から内容物を取り出すときに、やはり蓋体が不用意にスライド移動して取出部を閉塞してしまうという問題もあった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、取出口が不用意に開放されるのを抑制しつつ、内容物を取り出すときに取出口を確実に開放させることができる容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る容器は、粒状の内容物を収容すると共に、天板に取出口が形成された箱型の容器本体と、前記天板上に重ねられると共に、前記容器本体に対して、容器軸に直交するスライド方向にスライド移動可能に組み合わされた蓋体と、を備え、前記蓋体は、前記容器本体に対して前記スライド方向の一方向側にスライド移動させられたときに、前記取出口を開放し、前記容器本体および前記蓋体のいずれか一方には、その平面視において容器軸に直交する直交面に沿って前記スライド方向に交差する方向に延びる弾性係合片が延設されると共に、いずれか他方には、前記蓋体が前記容器本体に対して前記一方向側へスライド移動するときに前記弾性係合片の先端部に乗り越えられる係合突起が配設されていることを特徴とする。
【0007】
この発明において、取出口が蓋体で塞がれているときには、弾性係合片と係合突起とを互いに係合するように配置することができ、この場合、蓋体の容器本体に対する一方向側へのスライド移動が規制される。これにより、取出口が不用意に開放されるのを抑制することができる。
【0008】
また、内容物を取り出すために蓋体で塞がれた取出口を開放するときに、蓋体を容器本体に対して一方向側にスライド移動させると、まず、弾性係合片および係合突起が互いに当接し、その後、弾性係合片がスライド方向に弾性変形し、弾性係合片の先端部および係合突起が互いに乗り越えることとなる。
【0009】
ここで、弾性係合片の先端部および係合突起が互いに乗り越えるときに、弾性係合片が弾性変形するので、聴覚的および触覚的に乗り超えを認識することができる。したがって、蓋体の容器本体に対するスライド移動を、途中でやめることなく、取出口が開放されるまで確実に行うことが可能になり、取出口を確実に開放させることができる。
また、弾性係合片が、直交面上でスライド方向に交差する方向に向けて延設されているので、弾性係合片の先端部がスライド方向に弾性変形しても、容器本体および蓋体が、容器軸方向に互いに離間してしまうことが抑えられる。
【0010】
さらに、開放された取出口から内容物を取り出すときには、前述のように、弾性係合片の先端部および係合突起が互いに乗り越えていることから、弾性係合片および係合突起が互いに係合することで、蓋体の容器本体に対するスライド方向の他方向側へのスライド移動が規制されることとなる。したがって、蓋体が不用意にスライド移動して取出口を塞いでしまうことが抑制され、取出口が開放された状態を確保することができる。
【0011】
以上のように、取出口が不用意に開放されるのを抑制しつつ、内容物を取り出すときに取出口を確実に開放させることができる。
【0012】
また、前記係合突起は、前記スライド方向に間隔をあけて複数配設されていても良い。
【0013】
この場合、係合突起が、スライド方向に間隔をあけて複数配設されているので、係合突起として、例えば、蓋体が取出口を塞いでいるときに蓋体の容器本体に対する一方向側へのスライド移動を規制する第1係合突起と、蓋体が取出口を開放しているときに蓋体の容器本体に対する他方向側へのスライド移動を規制する第2係合突起と、を備えることで、前述の作用効果を確実に奏功させることができる。またこのように、第1係合突起と第2係合突起とを備えることで、例えば、スライド方向に長い1つの係合突起を備える場合に比べて、弾性係合片が係合突起を乗り越えるときに生じる抵抗力を小さくすることが可能になり、蓋体の容器本体に対するスライド移動を円滑に行うことができる。
【0014】
また、前記容器本体および前記蓋体には、前記蓋体が開放端位置に移動したときに、互いに当接して前記蓋体の前記容器本体に対する前記一方向側へのスライド移動を規制する規制部が各別に設けられ、前記弾性係合片および前記係合突起のうちの一方は、前記規制部を兼ねていても良い。
【0015】
この場合、容器本体および蓋体に、上記規制部が各別に設けられているので、蓋体が開放端位置よりも一方向側にスライド移動してしまうのを確実に規制することができる。
また、弾性係合片および係合突起のうちの一方が、規制部を兼ねているので、前述の作用効果を奏功させつつ、部品点数の増加、形状の複雑化を抑制することができる。
【0016】
また、前記蓋体の天壁部には、指先を引っ掛け可能な側壁部を有し、前記スライド方向の他方向側に開放されている指当て用凹部が形成されていても良い。
【0017】
この場合、蓋体に指当て用凹部が形成されているので、蓋体をスライド操作し易く、内容物の取り出しをスムーズに行える。
特に、指当て用凹部は、他方向側に開放されるように形成されており、主に一方向側に側壁部が形成されている。そのため、側壁部に指先を引っ掛けると、蓋体を一方向側にスライド移動させる方向に自然と指先が誘導され易い。従って、内容物の取り出し操作を確実に行い易く、使い易い。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る容器によれば、取出口が不用意に開放されるのを抑制しつつ、内容物を取り出すときに取出口を確実に開放させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る一実施形態の容器の分解斜視図である。
【図2】図1に示す容器本体と蓋体とを組み合わせた状態の容器の縦断面図である。
【図3】図1に示す容器本体の上面図である。
【図4】図1に示す蓋体を構成する蓋体本体部の上面図である。
【図5】図1に示す容器本体と蓋体とを組み合わせた状態の上面図である。但し、蓋体の上カバーを省略した図である。
【図6】図3に示す状態から、蓋体を前方側にスライド移動させて充填口を開放させた状態の縦断面図である。
【図7】図6に示す状態の上面図である。但し、蓋体の上カバーを省略した図である。
【図8】図3に示す状態から、蓋体を後方側にスライド移動させて取出口を開放させた状態の縦断面図である。
【図9】図8に示す状態の上面図である。但し、蓋体の上カバーを省略した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る容器の一実施形態について、図1から図9を参照して説明する。
本実施形態の容器1は、図1及び図2に示すように、粒状の内容物Mを収容する箱型の容器本体2と、この容器本体2の天板20b上に重ねられると共に容器本体2に対して径方向に沿ってスライド移動(往復移動)可能に組み合わされた蓋体3と、を備えている。
【0021】
なお、図1は、容器1の分解斜視図である。図2は、容器本体2と蓋体3とが組み合わされた状態における容器1の縦断面図である。また、容器本体2の中心軸(容器軸)Oに直交する方向を径方向、中心軸Oを中心に周回する方向を周方向とする。また、中心軸Oに沿って容器本体2から蓋体3側に向かう方向を上側とし、蓋体3から容器本体2側に向かう方向を下側とする。
また、粒状の内容物Mとしては、例えば、タブレット状(錠剤状)の清涼菓子や薬剤、サプリメント等の他、丸薬、カプセル剤、粒ガム等である。
【0022】
容器本体2は、図1から図3に示すように、有底筒状の皿状に形成された樹脂製或いは金属製などの下カバー10と、この下カバー10内に嵌め込まれる容器本体部20と、で平面視略八角形状の箱型に構成されている。なお、図3は、容器本体2の上面図である。
下カバー10は、平面視略八角形状の底壁部10aと、この底壁部10aの外周縁部から立ち上がった周壁部10bと、で構成されている。
【0023】
容器本体部20は、周壁部10bの内周に沿って配設され、周壁部10b内に嵌入される外壁部20aと、外壁部20aを上方から覆うと共に、外壁部20aよりも径方向外側に突出して下カバー10の周壁部10bの上端に接する天板20bと、を備えている。
この天板20bには、内容物Mを充填する際の充填口21と、内容物Mを取り出す際の取出口22と、が中心軸Oを挟んで向かい合うように形成されている。
なお、取出口22が設けられた側を容器本体2の前方L1とし、充填口21が設けられた側を容器本体2の後方L2とする。また、径方向に沿って前方L1と後方L2とを結ぶ方向をスライド方向Sとし、このスライド方向Sに蓋体3は往復移動(前方L1側又は後方L2側にスライド移動)するようになっている。
【0024】
本実施形態の充填口21は、平面視略三日月状に大きく開口するように形成されている。一方、取出口22は平面視楕円状に形成されており、そのサイズは内容物Mを1個、2個程度同時に取り出せる程度の小サイズとされている。
【0025】
また、外壁部20aの下端部には、充填口21に対向するように平面視略三日月状の底板20cが連設されており、上下方向(容器軸方向)に伸びる2本の平行な柱部20dによって、底板20cと天板20bとが連結されている。これにより、充填口21によって大きく開口された天板20bは、上下に撓む等の不正変形が生じないように設計されている。この点に関しては、底板20cも同様である。
このように構成されているため、充填口21から充填された内容物Mは、底板20c上に載った状態で収容されたり、天板20bと下カバー10との間の空間内に収容されたりするようになっている。
【0026】
また、天板20b上の中心部には、台座部23が設けられている。この台座部23は、平面視略直方体状に形成されており、スライド方向Sに沿って縦長に配設されている。
台座部23の後方L2側は、後方L2に向けて高さが2段階に分けて段階的に小さくなるように形成されており、頂上部23aより1段低くなった部分が第1段差部23bとされ、この第1段差部23bよりもさらに1段低くなった部分が第2段差部23cとされている。
【0027】
これら第1段差部23bと頂上部23aとの間の段差壁、第1段差部23bと第2段差部23cとの間の段差壁、第2段差部23cの側壁は、蓋体3を前方L1側にスライド移動させて充填口21を開放させたときに、該蓋体3の下面側に接触してそれ以上のスライド移動を規制する役割を果たしている。
特に、第1段差部23bと頂上部23aとの間の段差壁は、後述する蓋体3のストッパ爪56が押し当たる当接壁としての役割も果たしている。
【0028】
また、天板20b上には、台座部23を間に挟んで向かい合うように一対のガイド部25が設けられている。これら一対のガイド部25は、スライド方向Sに延在するように配設されていると共に、その上端部には全長に亘って鍵状の爪部25aが内向きに形成されている。なお、この一対のガイド部25は、蓋体3をスライド自在に案内支持する役割を担っている。
【0029】
蓋体3は、図1及び図2に示すように、有頂筒状の皿状に形成された樹脂製或いは金属製などの上カバー40と、この上カバー40内に嵌め込まれる蓋体本体部50と、で平面視略八角形状に構成されており、上述したようにスライド方向Sにスライド移動可能とされている。なお、図4は、蓋体本体部50の上面図である。
【0030】
特に、蓋体3は、図5に示すように、充填口21及び取出口22を覆っているノーマル位置から、図6及び図7に示すようにスライド方向Sに沿って前方L1(他方向)側にスライド移動させられたときに充填口21を開放させ、図8及び図9に示すように後方L2(一方向)側にスライド移動させられたときに取出口22を開放させるようになっている。
【0031】
なお、図5は、蓋体3と容器本体2とが組み合わされた状態を上方から見た図であり、蓋体3が充填口21及び取出口22を覆うノーマル位置にセットされている図である。図6は、図5に示す状態から蓋体3を前方L1側にスライド移動させて充填口21を開放させた状態の容器1の縦断面図である。図7は、図6に示す容器1を上方から見た図である。図8は、図5に示す状態から蓋体3を後方L2側にスライド移動させて取出口22を開放させた状態の容器1の縦断面図である。図9は、図8に示す容器1を上方から見た図である。但し、図5、図7及び図9では、蓋体3の上カバー40の図示を省略している。
【0032】
図1及び図2に示すように、上カバー40は、平面視略八角形状の天壁部40aと、この天壁部40aの外周縁部から下側に垂下した周壁部40bと、で構成されている。天壁部40aには、蓋体3をスライド移動させる際に、指先を押し当てる指当て用凹部41が形成されている。この指当て用凹部41は、前方L1側に開放されるように形成されており、指先を引っ掛け可能な側壁部41aが主に後方L2側に形成されている。
【0033】
蓋体本体部50は、図1、図2及び図4に示すように、プレート状であって、上カバー40の周壁部40bの内周に沿って外周縁部が形成されると共に、上カバー40内に収まる厚みで平面視略八角形状に形成されている。
【0034】
この蓋体本体部50には、容器本体2側の一対のガイド部25がそれぞれ入り込む一対のスライド開口51がスライド方向Sに延在するように形成されている。このスライド開口51内の側壁には、図5に示すように、ガイド部25の爪部25aがスライド移動自在に引っ掛かる案内壁51aが形成されている。これにより、蓋体3は、図7及び図9に示すように、一対のガイド部25に案内支持されながらスライド方向Sに沿ってスライド移動(前方L1移動或いは後方L2移動)するようになっている。
【0035】
また、図1及び図4に示すように、一対のスライド開口51の間における蓋体本体部50の中央前方L1寄りには、平面視略正方形状の貫通孔52が形成されており、この貫通孔52の内周面には、後方L2側に向けて延びる片支持部53が、貫通孔52内に収まるように突設されている。
【0036】
また図4に示すように、本実施形態では、蓋体3には、その平面視において中心軸Oに直交する直交面に沿ってスライド方向Sに直交する幅方向Wに延びる弾性係合片54が延設されている。弾性係合片54は、片支持部53の後方L2側に、片支持部53との間に隙間をあけた状態で配置されている。弾性係合片54は、片支持部53の幅方向Wの内側に位置する棒状体であり、弾性係合片54の基端部は、片支持部53の先端部の下面に連結され後方L2側に向けて延びる支持突起55の先端部に連結されている。
【0037】
また、蓋体本体部50には、図1、図2および図4に示すように、弾性係合片54に対して間隔を開けて向かい合うようにストッパ爪56が形成されている。
このストッパ爪56は、弾性係合片54に向かって突出するように形成されていると共に、その先端部は下方に丸みを帯びて膨らんでいる。そして、蓋体3がノーマル位置にある場合には、図2に示すように台座部23の頂上部23aと第1段差部23bとの間の段差壁に当接している。これにより、蓋体3は、一定の抵抗力が付与された状態となっており、ノーマル位置から前方L1側にスライド移動し難く、ノーマル位置に位置決めされた形となっている。
【0038】
しかしながら、蓋体3を上記抵抗力に抗する力でノーマル位置から前方L1側に向けてスライド移動させると、ストッパ爪56は頂上部23aを乗り越えた後、図6及び図7に示すように、前方L1側にスライド移動するようになっている。
また、このストッパ爪56は、蓋体3をノーマル位置から後方L2側にスライド移動させると、図8及び図9に示すように、該蓋体3に伴って移動するので、台座部23の頂上部23aと第1段差部23bとの間の段差壁から離反する。そして、後方L2側にスライド移動した蓋体3を、再び前方L1側にスライド移動させると、図5に示すように、ストッパ爪56は再度段差壁に当接して、蓋体3をノーマル位置に位置決めさせるようになっている。
【0039】
このように、ストッパ爪56及び台座部23は、ノーマル位置においてスライド方向Sに互いに係合することで、蓋体3の容器本体2に対する前方L1側に向けたスライド移動を規制して蓋体3をノーマル位置で位置決めさせる位置決め手段57として機能する。しかも、本実施形態では、蓋体3をノーマル位置から前方L1側に移動させる際に、蓋体3に一定の抵抗力を付与しており、蓋体3をノーマル位置から前方L1側にスライド移動し難くさせている。
【0040】
なお図6に示すように、蓋体本体部50の下側は、充填口21が開放された際、容器本体2側の台座部23の第1段差部23bと頂上部23aとの間の段差壁、第1段差部23bと第2段差部23cとの間の段差壁、第2段差部23cの側壁に接触するように凹み形成されている。よって、蓋体3は、それ以上のスライド移動が規制される。
また図8および図9に示すように、容器本体2および蓋体3には、蓋体3が開放端位置に移動したときに、互いに当接して蓋体3の容器本体2に対する後方L2側へのスライド移動を規制する規制部60、61が各別に設けられている。本実施形態では、台座部23が、容器本体2側の規制部60を兼ねるとともに、弾性係合片54が、蓋体3側の規制部61を兼ねており、台座部23(規制部60)において前側を向く平坦な当接壁23dと、弾性係合片54(規制部61)と、が互いに当接することで、スライド移動が規制される。
【0041】
ここで、図2および図3に示すように、本実施形態では、容器本体2には、弾性係合片54が容器本体2に対して後方L2側へスライド移動するときに弾性係合片54の先端部に乗り越えられる係合突起58、59が配設されている。係合突起58、59は、スライド方向Sに間隔をあけて複数配設されており、図示の例では、係合突起58、59として、前方L1側に位置し、蓋体3がノーマル位置にあるときに蓋体3の容器本体2に対する後方L2側へのスライド移動を規制する第1係合突起58と、後方L2側に位置し、蓋体3が開放端位置にあるときに蓋体3の容器本体2に対する前方L1側へのスライド移動を規制する第2係合突起59と、を備えている。
【0042】
これらの係合突起58、59は、容器本体2の天板20b上から上方に向けて突出するとともに、幅方向Wに沿って延びる同形同大の板状体とされ、両係合突起58、59の幅方向Wの位置は、互いに一致している。係合突起58、59の上端は、片支持部53の下面よりも下側に位置しており、第1係合突起58は、スライド方向Sで弾性係合片54の先端部に対向している。
【0043】
次に、以上のように構成された容器1の作用について説明する。
まず、容器1に内容物Mを収容する場合について説明する。
この場合には、まず、蓋体3を図5に示すノーマル位置から、図6及び図7に示すように前方L1側にスライド移動させる。この際、ストッパ爪56が台座部23の頂上部23aと第1段差部23bとの間の段差壁に当接しているので、一定の抵抗力を感じる。よって、この抵抗力に抗する力でスライド移動させる。これにより、ストッパ爪56が頂上部23aを乗り越えるように、蓋体3を前方L1側にスライド移動させることができ、充填口21を開放させることができる。
【0044】
なお、ストッパ爪56が頂上部23aを乗り越える際に、クリック感を感じることができる。従って、蓋体3をノーマル位置から前方L1側に移動させたことを触覚により明確に感じることができる。
また、充填口21が開放された後、蓋体3は容器本体2側の台座部23の第1段差部23bと頂上部23aとの間の段差壁、第1段差部23bと第2段差部23cとの間の段差壁、第2段差部23cの側壁に接触する。そのため、蓋体3は、それ以上のスライド移動が規制される。
【0045】
そして、充填口21が開放された後、この充填口21を通じて内容物Mを充填でき、容器本体2への収容を行うことができる。
内容物Mの充填終了後、蓋体3を後方L2側にスライド移動させて、図5に示すようにノーマル位置に戻す。この際、ストッパ爪56が、再度頂上部23aを乗り越えた後、頂上部23aと第1段差部23bとの間の段差壁に当接した状態となる。
なお、ストッパ爪56が頂上部23aを乗り越える際に、再度クリック感を感じることができる。従って、蓋体3がノーマル位置に戻ったことを触覚として明確に感じることができる。
【0046】
ここで、蓋体3がノーマル位置にある場合には、弾性係合片54と第1係合突起58とが互いに係合することで、蓋体3の容器本体2に対する後方L2側へのスライド移動が規制される。これにより、取出口22が不用意に開放されるのを抑制することができる。
【0047】
次に、内容物Mが収容された容器本体2から、内容物Mを取り出す場合について説明する。
この場合には、指当て用凹部41の側壁部41aに指先を引っ掛けながら、蓋体3をノーマル位置から後方L2側にスライド移動させる。これにより、図8及び図9に示すように、取出口22を開放させることができる。よって、この取出口22を通じて収容されている内容物Mを取り出すことができる。
【0048】
ところで、内容物Mの取り出しを行うにあたって、蓋体3を容器本体2に対して後方L2側にスライド移動させると、まず、弾性係合片54および第1係合突起58が互いに当接し、その後、弾性係合片54がスライド方向Sに弾性変形し、弾性係合片54の先端部および第1係合突起58が互いに乗り越えることとなる。その後、さらにスライド移動を継続すると、弾性係合片54が弾性変形しながら、弾性係合片54の先端部と第2係合突起59とが互いに乗り越え、図8および図9に示すように、取出口22が開放される。この際、蓋体3が開放端位置までスライド移動されると、規制部60、61によってそれ以上のスライド移動が規制されることとなる。
【0049】
ここで、弾性係合片54の先端部および係合突起58、59が互いに乗り越えるときに、弾性係合片54が弾性変形するので、聴覚的および触覚的に乗り超えを認識することができる。したがって、蓋体3の容器本体2に対するスライド移動を、途中でやめることなく、取出口22が開放されるまで確実に行うことが可能になり、取出口22を確実に開放させることができる。
また、弾性係合片54が、幅方向Wに向けて延設されているので、弾性係合片54の先端部がスライド方向Sに弾性変形しても、容器本体2および蓋体3が、上下方向に互いに離間してしまうことが抑えられる。
【0050】
さらに、開放された取出口22から内容物Mを取り出すときには、前述のように、弾性係合片54の先端部および第2係合突起59が互いに乗り越えていることから、弾性係合片54および第2係合突起59が互いに係合することで、蓋体3の容器本体2に対するスライド方向Sの前方L1側へのスライド移動が規制されることとなる。したがって、蓋体3が不用意にスライド移動して取出口22を塞いでしまうことが抑制され、取出口22が開放された状態を確保することができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る容器1によれば、取出口22が不用意に開放されるのを抑制しつつ、内容物Mを取り出すときに取出口22を確実に開放させることができる。
【0052】
また、係合突起58、59が、スライド方向Sに間隔をあけて複数配設されているので、本実施形態のように、係合突起58、59として、第1係合突起58と、第2係合突起59と、を備えることで、前述の作用効果を確実に奏功させることができる。またこのように、第1係合突起58と第2係合突起59とを備えることで、例えば、スライド方向Sに長い1つの係合突起を備える場合に比べて、係合突起58、59のスライド方向Sに沿った大きさを小さくすることが可能になり、例えば、弾性係合片54だけでなく係合突起58、59も弾性変形させることができる。したがって、弾性係合片54が係合突起58、59を乗り越えるときに生じる抵抗力を小さくすることが可能になり、蓋体3の容器本体2に対するスライド移動を円滑に行うことができる。
【0053】
また、容器本体2および蓋体3に、上記規制部60、61が各別に設けられているので、蓋体3が開放端位置よりも後方L2側にスライド移動してしまうのを確実に規制することができる。
また、弾性係合片54が、規制部61を兼ねているので、前述の作用効果を奏功させつつ、部品点数の増加、形状の複雑化を抑制することができる。
【0054】
また、蓋体3がノーマル位置にある場合、ストッパ爪56は台座部23の頂上部23aと第1段差部23bとの段差壁に当接している。そのため、内容物Mの取り出しを行うために、蓋体3をノーマル位置からスライド移動させるときに、誤って充填口21が開放されてしまう前方L1側にスライド移動させようとすると、一定の抵抗力を感じることができる。従って、蓋体3のスライド移動方向の間違いに容易に気づくことができる。よって、内容物Mの取り出し操作を確実に行うことができ、使い易さをより向上することができる。つまり、弾性係合片54と係合突起58、59との乗り越え時に生じる抵抗力よりも、ストッパ爪56と台座部23(頂上部23a)との乗り越え時に生じる抵抗力の方が大きくなるように設計されている。
【0055】
また、蓋体3の上カバー40には指当て用凹部41が形成されているので、蓋体3をスライド操作し易く、内容物Mの取り出し操作をスムーズに行える。しかも、この指当て用凹部41は、前方L1側に開放されるように形成されており、主に後方L2側に側壁部41aが形成されている。そのため、側壁部41aに指先を引っ掛けると、蓋体3をノーマル位置から後方L2側にスライド移動させる方向に自然と指先が誘導され易い。従って、この点においても、内容物Mの取り出しを行う際に蓋体3のスライド方向Sを間違え難い。よって、使い易さをより向上することができる。
【0056】
なお、本発明の技術的範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、全体を平面視八角形状の形状としたが、この形状に限定されるものではなく、自由に設計して構わない。
【0057】
また、上記実施形態では、天板20bに充填口21が形成されているものとしたが充填口21はなくても良い。この場合、蓋体3がノーマル位置にあるときに、蓋体3が容器本体2に対して前方L1側にスライド移動不能な構成としていても良い。
さらに、上記実施形態では、蓋体3の上カバー40に指当て用凹部41が形成されているものとしたが、指当て用凹部41はなくても良い。
【0058】
また、上記実施形態では、弾性係合片54が幅方向Wに向けて延設されているものとしたが、これに限られるものではなく、上記直交面に沿ってスライド方向Sに交差する方向に向けて延設されていれば良い。
さらに、上記実施形態では、弾性係合片54が規制部61を兼ねているものとしたが、これに限られるものではない。例えば、係合突起が規制部を兼ねていても良く、弾性係合片および係合突起がいずれも規制部を兼ねていなくても良い。さらにまた、規制部60、61はなくても良い。
【0059】
また、上記実施形態では、係合突起58、59が、スライド方向Sに間隔をあけて2つ配設されているものとしたが、これに限られるものではない。例えば、3つ以上の係合突起が配設されていても良く、また、スライド方向Sに延びる1つの係合突起が配設されていても良い。
さらに、上記実施形態では、係合突起58、59が、容器本体2の天板20b上から上方に向けて突出しているものとしたが、これに限られるものではない。例えば、容器本体2上に、幅方向Wに向けて延設され、幅方向Wの一端部が容器本体2に連結された構成であっても良い。
【0060】
また、上記実施形態では、容器本体2に係合突起58、59が設けられ、蓋体3に弾性係合片54が設けられているものとしたが、これに限られるものではない。例えば、容器本体2に弾性係合片が設けられ、蓋体3に係合突起が設けられていても良い。
【0061】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、上記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
L1…前方(スライド方向の他方向)
L2…後方(スライド方向の一方向)
M…内容物
S…スライド方向
W…幅方向(直交面に沿ってスライド方向に交差する方向)
1…容器
2…容器本体
3…蓋体
20b…天板
22…取出口
41…指当て用凹部
41a…側壁部
54…弾性係合片
58、59…係合突起
60、61…規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状の内容物を収容すると共に、天板に取出口が形成された箱型の容器本体と、
前記天板上に重ねられると共に、前記容器本体に対して、容器軸に直交するスライド方向にスライド移動可能に組み合わされた蓋体と、を備え、
前記蓋体は、前記容器本体に対して前記スライド方向の一方向側にスライド移動させられたときに、前記取出口を開放し、
前記容器本体および前記蓋体のいずれか一方には、その平面視において容器軸に直交する直交面に沿って前記スライド方向に交差する方向に延びる弾性係合片が延設されると共に、いずれか他方には、前記蓋体が前記容器本体に対して前記一方向側へスライド移動するときに前記弾性係合片の先端部に乗り越えられる係合突起が配設されていることを特徴とする容器。
【請求項2】
請求項1記載の容器であって、
前記係合突起は、前記スライド方向に間隔をあけて複数配設されていることを特徴とする容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の容器であって、
前記容器本体および前記蓋体には、前記蓋体が開放端位置に移動したときに、互いに当接して前記蓋体の前記容器本体に対する前記一方向側へのスライド移動を規制する規制部が各別に設けられ、
前記弾性係合片および前記係合突起のうちの一方は、前記規制部を兼ねていることを特徴とする容器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の容器において、
前記蓋体の天壁部には、指先を引っ掛け可能な側壁部を有し、前記スライド方向の他方向側に開放されている指当て用凹部が形成されていることを特徴とする容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−111224(P2011−111224A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272464(P2009−272464)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】