容量力センサーを有する感知デバイス
【課題】優れた感知デバイスを得る。
【解決手段】基材とインタラクションを行うための感知デバイスが実現される。この感知デバイスは、当該感知デバイスが基材とインタラクションを行っているかどうかを検出するための力センサーと、基材上に配置された符号化データを感知するためのイメージセンサーとを有する。力センサーは、容量センサー回路を有し、この容量センサー回路は、当該容量センサー回路の出力が1/Csenに比例するように配列された可変静電容量Csenを有するセンサーキャパシタを組み込んでいる。
【解決手段】基材とインタラクションを行うための感知デバイスが実現される。この感知デバイスは、当該感知デバイスが基材とインタラクションを行っているかどうかを検出するための力センサーと、基材上に配置された符号化データを感知するためのイメージセンサーとを有する。力センサーは、容量センサー回路を有し、この容量センサー回路は、当該容量センサー回路の出力が1/Csenに比例するように配列された可変静電容量Csenを有するセンサーキャパシタを組み込んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力センサーに関する。本発明は、主に、ペン、ポインタ、及び同類のものなどの光感知デバイスにおいて使用するための力センサーを実現するために開発された。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、以下で詳述されるネットページシステムを開発した。本発明は、特にこのシステム用の感知デバイスに適しているので、ネットページの文脈において説明することにする。しかし、力センサーは、多くの用途に利用されていることは理解されるであろう。特に、ハンドヘルド型光センサーには、さまざまな分野における幅広い用途があり、本発明は、ネットページシステムつまり実際には光感知デバイスの中での使用に限定されるわけではない。
【0003】
ネットページシステムは、ペンと紙を使用したインターフェースを介してユーザーとコンピュータネットワーク(又はスタンドアロンコンピュータ)との間のインタラクションを伴う。「ペン」とは、マーキング又はノンマーキングのペン先と紙(又は他の表面)上の符号化データのパターンを読み取るための光センサーとを備える電子スタイラスのことである。
【0004】
ネットページペンの主要な特徴の1つは、マウスを使って画面上のインタラクティブ要素(例えば、ハイパーリンクなど)をクリックするのと同じようにしてネットページ上のインタラクティブ要素を「クリック」できることである。しかし、ネットページペンの場合、ユーザーは、単にペン先をクリックしたいインタラクティブ要素上に置くだけである。光センサーは、ペン先がページに対して押し付けられたときに力センサーが「ペンダウン」状態を登録する間に、その要素をその一意的なページ及び位置IDを介して識別する。「ペンダウン」及び「ペンアップ」の登録は、さらに、ネットページ入力フィールドへのユーザーの手書きを取り込むうえで基本的なものである。力に関係する幅及び不透明度が可変である手描きストロークを再現するために非2値力信号も取り込まれる。また力の変化も、署名照合時に調べられる次元のうちの1つの次元として使用されうる。
【0005】
力センサーは、正確に比較的軽い力(ペン先に対する手書きの力など)を感知するために必要である。また、これは、最小限度の電力を必要とし、ハンドヘルド型感知デバイスに組み込むのに適したものであるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6929186号
【発明の概要】
【0007】
第1の態様では、本発明は、容量センサー回路を備える力センサーであって、その容量センサー回路が、その容量センサー回路の出力が1/Csenに比例するように配列された可変静電容量Csenを有するセンサーキャパシタを組み込んでいる力センサーを実現する。
【0008】
適宜、センサーキャパシタは、1つの固定された板と、1つの移動可能な板とを有する平行板キャパシタである。
【0009】
適宜、移動可能な板は、その移動可能な板に加えられる圧力によって、固定された板に相対的に移動し、これにより板の分離距離と前記静電容量Csenを変化させるように構成される。
【0010】
適宜、圧縮バネが、移動可能な板に連結される。
【0011】
適宜、センサーキャパシタは、そのセンサーキャパシタの板の1つが容量センサー回路に直結されるように容量センサー回路の容量帰還回路内に配置される。
【0012】
適宜、容量センサー回路は、シグマ/デルタコンバータ回路である。
【0013】
第2の態様では、本発明は、基材とのインタラクションを行うための感知デバイスであって、当該感知デバイスが基材とインタラクションを行っているかどうかを検出するための力センサーと、基材上に配置されている符号化データを感知するためのイメージセンサーとを備え、前記力センサーが容量センサー回路を備え、その容量センサー回路が、その容量センサー回路の出力が1/Csenに比例するように配列された可変静電容量Csenを有するセンサーキャパシタを組み込んでいる感知デバイスを実現する。
【0014】
さらなる態様では、感知された符号化データを使用してインタラクションデータを生成するように構成されたプロセッサを備える感知デバイスが実現される。
【0015】
他の態様では、感知デバイスが基材とインタラクションを行っていることを力センサーが検出したときのみイメージセンサーが符号化データを感知するように構成された感知デバイスが実現される。
【0016】
さらなる態様では、ペン先又はスタイラスを持たないクリッカー、ノンマーキングスタイラスを有するポインタ、及びマーキング用ペン先を有するペンからなる群から選択される感知デバイスが実現される。
【0017】
適宜、センサーキャパシタは、1つの固定された板と、1つの移動可能な板とを有する平行板キャパシタである。
【0018】
適宜、移動可能な板は、その移動可能な板に加えられる圧力によって、固定された板に相対的に移動し、これにより板の分離距離と前記静電容量Csenを変化させるように構成される。
【0019】
適宜、圧縮バネが、移動可能な板に連結される。
【0020】
適宜、センサーキャパシタは、そのセンサーキャパシタの板の1つが容量センサー回路に直結されるように容量センサー回路の容量帰還回路内に配置される。
【0021】
適宜、容量センサー回路は、シグマ/デルタコンバータ回路である。
【0022】
第3の態様では、本発明は、可変静電容量Csenを有するセンサーキャパシタと、Csenが最小予測値をとるときに容量センサー回路が飽和に近づくように相対的に配列された基準キャパシタとを組み込んだ容量センサー回路を備える力センサーを実現する。
【0023】
適宜、センサーキャパシタは、1つの固定された板と、1つの移動可能な板とを有する平行板キャパシタである。
【0024】
適宜、移動可能な板は、その移動可能な板に加えられる圧力によって、固定された板に相対的に移動し、これにより板の分離距離と前記静電容量Csenを変化させるように構成される。
【0025】
適宜、圧縮バネが、移動可能な板に連結される。
【0026】
適宜、容量センサー回路は、シグマ/デルタコンバータ回路である。
【0027】
適宜、相関二重サンプリングが、シグマ/デルタコンバータ回路の積分器に適用される。
【0028】
第4の態様では、本発明は、基材とのインタラクションを行うための感知デバイスであって、当該感知デバイスが基材とインタラクションを行っているかどうかを検出するための力センサーと、基材上に配置されている符号化データを感知するためのイメージセンサーとを備え、前記力センサーが容量センサー回路を備え、その容量センサー回路が、可変静電容量Csenを有するセンサーキャパシタと、Csenが最小予測値をとるときに容量センサー回路が飽和に近づくように相対的に配列された基準キャパシタとを組み込んでいる感知デバイスを実現する。
【0029】
さらなる態様では、感知された符号化データを使用してインタラクションデータを生成するように構成されたプロセッサを備える感知デバイスが実現される。
【0030】
他の態様では、感知デバイスが基材とインタラクションを行っていることを力センサーが検出したときのみイメージセンサーが符号化データを感知するように構成された感知デバイスが実現される。
【0031】
さらなる態様では、ペン先又はスタイラスを持たないクリッカー、ノンマーキングスタイラスを有するポインタ、及びマーキング用ペン先を有するペンからなる群から選択される感知デバイスが実現される。
【0032】
適宜、センサーキャパシタは、1つの固定された板と、1つの移動可能な板とを有する平行板キャパシタである。
【0033】
適宜、移動可能な板は、その移動可能な板に加えられる圧力によって、固定された板に相対的に移動し、これにより板の分離距離と前記静電容量Csenを変化させるように構成される。
【0034】
適宜、圧縮バネが、移動可能な板に連結される。
【0035】
適宜、容量センサー回路は、シグマ/デルタコンバータ回路である。
【0036】
適宜、相関二重サンプリングが、シグマ/デルタコンバータ回路の積分器に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】基本的なネットページアーキテクチャの一実施形態を示す図である。
【図2】サンプルの印刷されたネットページとそのオンラインページ記述との間の関係を示す略図である。
【図3】リレーデバイスのさまざまな代替え形態を持つ基本ネットページアーキテクチャの一実施形態を示す図である。
【図3A】ネットワークを介して相互接続されているネットページサーバ、Web端末、プリンタ、及びリレーの集合体を示す図である。
【図4】印刷されたネットページとそのオンラインページ記述の高水準構造を示す略図である。
【図5A】ネットページタグの構造を示す平面図である。
【図5B】図5Aに示されているタグの集合とネットページペンの形態のネットページ感知デバイスの視野との間の関係を示す平面図である。
【図6A】ネットページタグの代替えの構造を示す平面図である。
【図6B】図6Aに示されているタグの集合とネットページペンの形態のネットページ感知デバイスの視野との間の関係を示す平面図である。
【図6C】ターゲットが隣接するタグ間で共有される図6aに示されているタグのうちの9つのタグの配列を示す平面図である。
【図6D】図6Aに示されているタグの4つのコードワードのシンボルのインタリーブ及び回転を示す平面図である。
【図7】タグイメージ処理及び復号化アルゴリズムの流れ図である。
【図8】ネットページペン及びその関連するタグ感知視野円錐を示す斜視図である。
【図9】図8に示されているネットページペンの分解組立斜視図である。
【図10】図8及び9に示されているネットページペン用のペンコントローラの概略ブロック図である。
【図11】ペンクラスダイアグラムの略図である。
【図12】ドキュメント及びページ記述クラスダイアグラムの略図である。
【図13】ドキュメント及びページ所有クラスダイアグラムの略図である。
【図14】端末要素特化クラスダイアグラムの略図である。
【図15】静的要素特化クラスダイアグラムの略図である。
【図16】ハイパーリンク要素クラスダイアグラムの略図である。
【図17】ハイパーリンク要素特化クラスダイアグラムの略図である。
【図18】ハイパーリンクグループクラスダイアグラムの略図である。
【図19】フォームクラスダイアグラムの略図である。
【図20】デジタルインククラスダイアグラムの略図である。
【図21】フィールド要素特化クラスダイアグラムの略図である。
【図22】チェックボックスフィールドクラスダイアグラムの略図である。
【図23】テキストフィールドクラスダイアグラムの略図である。
【図24】署名フィールドクラスダイアグラムの略図である。
【図25】入力処理アルゴリズムの流れ図である。
【図25A】図25の流れ図の1つのステップの詳細な流れ図である。
【図26】ハイパーリンクリクエストクラスダイアグラムの略図である。
【図27】ローデジタルインククラスダイアグラムの略図である。
【図28】固定された板と移動可能な板とを持つ平行板キャパシタの略図である。
【図29】従来の(Csenに比例する)センサーを示す略図である。
【図30】1/Cセンサーの略図である。
【図31】出力される符号と外力との関係を示す図である。
【図32】量子化による測定誤差を示す図である。
【図33】2次の1/C CDCを示す略図である。
【図34】2次回路に対する従来の改善を示す略図である。
【図35】オフセット2次回路を示す略図である。
【図36】CDS演算を示す図である。
【図37】Cinlの誤差を示す図である。
【図38】Ccanの誤差を示す図である。
【図39】漏れ電流±50nA、チョッピング周波数clk/2の積分器1の出力を示す図である。
【図40】センサー並列抵抗(18MΩ)の効果を示す図である。
【図41】コモンモード電圧を示す図である。
【図42】加え合わせ点電圧を示す図である。
【図43】センサー等価回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の任意の実施形態は、限定されない実施例のみを使って、付属の図面を参照しつつ説明される。注記:メムジェット(Memjet)(商標)は、オーストラリア所在のSilverbrook Research Pty Ltd社の商標である。
【0039】
好ましい実施形態では、本発明は、ネットページネットワーク接続コンピュータシステムと連携するように構成されており、これらの詳細な概要について以下に示す。すべての実装が、基本システムに関して以下で説明されている具体的な詳細及び拡張の全部を、又は大部分であっても、必ずしも具現化するとは限らないことは理解されるであろう。しかし、システムは、本発明の好ましい実施形態及び態様が動作する背景状況を理解しようとしたときに外部の参考文献をあまり参照しなくて済むように最も完全な形で説明されている。
【0040】
簡単に述べると、ネットページシステムの好ましい形態では、マッピングされた表面、つまり、コンピュータシステム内に保持されている表面のマップへの参照を含む物理的表面の形態のコンピュータインターフェースを使用する。マップ参照に対するクエリーが、適切な感知デバイスによって行われうる。特定の実装に応じて、マップ参照は、可視的に、又は不可視的に符号化され、マッピングされた表面上のローカルクエリーがマップ内及び異なるマップ間の両方において曖昧でないマップ参照を生成するように定義されうる。コンピュータシステムは、マッピングされた表面上の特徴に関する情報を格納することができ、そのような情報は、マッピングされた表面とともに使用される感知デバイスによって供給されるマップ参照に基づいて取り出すことができる。こうして取り出された情報は、オペレータと表面特徴とのインタラクションに応じてオペレータの代わりにコンピュータシステムによって起動されるアクションの形態をとりうる。
【0041】
好ましい形態では、ネットページシステムは、ネットページの生成及びネットページに対するヒューマンインタラクションを利用する。これらは、通常の紙に印刷された、ただしインタラクティブなWebページのように機能する数ページ分のテキスト、グラフィックス、及びイメージである。情報は、肉眼では実質的に見えないインクを使用してそれぞれのページ上に符号化される。しかし、インクは、したがって符号化されたデータは、光学式撮像感知デバイスによって感知され、ネットページシステムに伝送されるようにできる。感知デバイスは、クリッカー(表面上の特定の位置をクリックするため)、スタイラス(ポインタストロークを使用して表面上でポイントするか、又はジェスチャーを使用するため)を有するポインタ、又はマーキング用ペン先(表面上でポイントしたり、ジェスチャーを使用したり、書いたりするときに表面にインクでマーキングするため)を有するペンの形態をとりうる。
【0042】
一実施形態では、それぞれのページ上のアクティブボタン及びハイパーリンクは、ネットワークに情報を要求するか、又はネットワークサーバにプリファレンスを信号で伝えるために、感知デバイスでクリックされうる。一実施形態では、ネットページ上に手書きされたテキストは、ネットページシステム内で自動的に認識され、コンピュータテキストに変換され、これによりフォームへの書き込みが可能になる。他の実施形態では、ネットページ上に記録された署名は、自動的に照合され、eコマース取引を安全に認証することができる。他の実施形態では、ユーザーによって指示されたキーワードに基づき検索を開始するために、ネットページ上のテキストがクリックされるか、又はテキストに対しジェスチャーが使用されうる。
【0043】
図2に例示されているように、印刷されたネットページ1は、ユーザーによって、印刷されたページ上に、物理的に書き込まれるだけでなく、ペンとネットページシステムとの間の通信を介して「電子的に」書き込まれうるインタラクティブフォームを表すことができる。この実施例は、名前及びアドレスのいくつかのフィールドと送信ボタンを含む「リクエスト」フォームを示している。ネットページは、可視インクを使用して印刷されたグラフィックデータ2と、不可視インクを使用してタグ4の集合体として印刷された符号化データ3とからなる。ネットページネットワーク上に格納されている、対応するページ記述5で、ネットページの個別要素を記述する。特に、これは、ネットページシステムがネットページを介して入力を正しく解釈できるように、それぞれのインタラクティブ要素(つまり、実施例におけるテキストフィールド又はボタン)のタイプ及び空間的広がり(ゾーン)を記述する。例えば、サブミットボタン6は、対応するグラフィック8の空間的広がりに対応するゾーン7を有する。
【0044】
図1及び3に例示されているように、図8及び9に示され、以下でさらに詳しく説明されているペンなどのネットページ感知デバイス101は、家庭で使用する、事務所で使用する、又は移動中に使用するためのインターネット接続デバイスであるネットページリレーデバイス601と連携動作する。ペンは、無線通信を行い、短距離無線リンク9を介してネットページリレーデバイス601と安全に通信する。代替えの一実施形態では、ネットページペン101は、リレーデバイス601に対しUSB又は他のシリアル接続などの有線接続を使用する。
【0045】
リレーデバイス601は、インタラクションデータを解釈する、ページサーバ10にインタラクションデータを中継する基本機能を実行する。図3に示されているように、リレーデバイス601は、例えば、パーソナルコンピュータ601a、ネットページプリンタ601b、又は他の何らかのリレー601cの形態をとりうる。
【0046】
ネットページプリンタ601bは、定期的に、又はオンデマンドで、個人向け新聞、雑誌、カタログ、冊子、及び他の刊行物を、すべてインタラクティブネットページとして高品位印刷して配布することができる。パーソナルコンピュータとは異なり、ネットページプリンタは、例えば、ユーザーの台所で、朝食のテーブルの近くで、又はその日1日の家庭の出発点の近くでなど、朝のニュースが最初に消費される領域に隣接して壁掛けできるアプライアンスである。さらに、テーブルの上に置くバージョン、机の上に置くバージョン、携帯型バージョン、及び小型バージョンのものもある。消費の時点においてオンデマンドで印刷されるネットページは、紙の使いやすさとインタラクティブ媒体の即時性及び双方向性とを兼ね備える。
【0047】
それとは別に、ネットページリレーデバイス601は、携帯電話若しくはPDAなどの携帯型デバイス、ラップトップ若しくはデスクトップコンピュータ、又はテレビなどの共有ディスプレイに接続された情報アプライアンスとしてもよい。リレーデバイス601が、ネットページをオンデマンドでデジタル印刷するネットページプリンタ601bでない場合、ネットページは、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、凸版印刷、及び輪転グラビア印刷などの技術を使用する伝統的なアナログ印刷機によって、さらにはドロップオンデマンドインクジェット、連続インクジェット、転染、及びレーザー印刷などの技術を使用するデジタル印刷機によって印刷されうる。
【0048】
図3に示されているように、ネットページ感知デバイス101は、印刷されたネットページ1上の、又は製品251のラベルなどの他の印刷された基材上の符号化データとのインタラクションを実行し、短距離無線リンク9を介してそのインタラクションをリレーデバイス601に伝える。リレー601は、解釈のため対応するインタラクションデータを関連するネットページページサーバ10に送信する。感知デバイス101から受信されたローデータは、インタラクションデータとしてページサーバ10に直接中継されうる。それとは別に、インタラクションデータは、インタラクションURIの形で符号化され、ユーザーのWebブラウザを介してページサーバ10に送信されうる。もちろん、リレーデバイス601(例えば、携帯電話)は、Webブラウザとユーザーディスプレイを組み込むことができる。
【0049】
該当する状況において、ページサーバは、対応するメッセージをネットページアプリケーションサーバ13上で実行中のアプリケーションコンピュータソフトウェアに送信する。アプリケーションサーバは、次いで、応答を送信することができ、この応答は、リレー601に関連付けられているユーザーディスプレイデバイス上に表示されるか、又は発信元のネットページプリンタ上で印刷される。
【0050】
ネットページリレーデバイス601は、任意の数の感知デバイスをサポートするように構成することができ、感知デバイスは、任意の数のネットページリレーと連携動作しうる。好ましい実装では、それぞれのネットページ感知デバイス101は一意的な識別子を有する。これにより、それぞれのユーザーは、ネットページページサーバ10又はアプリケーションサーバ13に関して異なるプロファイルを維持することができる。
【0051】
ネットページ1のデジタルオンデマンド配布は、利用が高まっているブロードバンドインターネットアクセスを利用するネットページプリンタ601bによって実行されうる。ネットページネットワーク上のネットページパブリケーションサーバ14は、印刷品質の刊行物をネットページプリンタに配信するように構成される。定期刊行物は、ポイントキャスト及びマルチキャストのインターネットプロトコルを介してサブスクライブするネットページプリンタに自動的に配信される。個人向け刊行物は、個々のユーザープロファイルに従ってフィルタ処理され、フォーマットされる。
【0052】
ネットページペンは、ネットページ登録サーバ11に登録され、1つ又は複数の決済カード口座にリンクされうる。これにより、ネットページペンを使用してeコマース決済を安全に認証することができる。ネットページ登録サーバは、ネットページペンによって取り込まれた署名とすでに登録されている署名との比較を行い、eコマースサーバに対しユーザーIDを認証することができる。他のバイオメトリクスも、本人確認に使用できる。ネットページペンの一バージョンは、ネットページ登録サーバによって類似の方法で確認される、指紋スキャニングを含む。
【0053】
ネットページシステムのアーキテクチャ
システムにおけるそれぞれのオブジェクトモデルは、統一モデリング言語(UML)クラスダイアグラムを使用して記述される。クラスダイアグラムは、関係によって接続されたオブジェクトクラスの集合からなり、ここでは、関連と汎化という2つの種類の関係に注目する。関連は、オブジェクト間のある種の関係、つまりクラスのインスタンス間のある種の関係を表す。汎化は、実際のクラスを関係付けるもので、クラスがそのクラスのすべてのオブジェクトの集合と考えられ、クラスAがクラスBの汎化であれば、Bは、単に、Aの部分集合であるというように理解できる。UMLでは、2次モデリング、つまり、クラスのクラスを直接的にはサポートしていない。
【0054】
それぞれのクラスは、クラスの名称をラベル付けされた矩形として描画される。これは、水平線で名前から区切られている、クラスの属性のリストと、水平線で属性リストから区切られている、クラスのオペレーションのリストとを含む。しかし、以下のクラスダイアグラムでは、オペレーションは決してモデル化されない。
【0055】
関連は、関連の多重度をいずれかの端に適宜ラベルとして付けられた、2つのクラスを結合する1本の直線として描画される。デフォルトの多重度は、1である。アスタリスク(*)は、「多」の多重度、つまり、0若しくはそれ以上を示す。それぞれの関連は、適宜その名前をラベル付けされ、また適宜いずれかの端で対応するクラスの役割をラベル付けされる。白抜きの菱形は、集約関連(「is−part−of」(の一部である))を示し、関連線のアグリゲータ端に描画される。
【0056】
汎化関係(「is−a」)は、2つのクラスを結合する1本の実線として描画され、汎化端に矢印(白抜きの三角形の形)がある。
【0057】
クラスダイアグラムが、複数のダイアグラムに分解される場合、複製されるクラスは、それを定義する主ダイアグラムを除くすべてにおいて破線の輪郭で示される。これは、定義されている場合にのみ属性とともに示される。
【0058】
1 ネットページ
ネットページは、ネットページネットワークを構築するための基礎である。ネットページは、公開された情報及びインタラクティブサービスに対する紙を利用したユーザーインターフェースを構成する。
【0059】
ネットページは、ページのオンライン記述を参照しつつ不可視タグが付けられた印刷されたページ(又は他の表面領域)からなる。オンラインページ記述は、ネットページページサーバ10によって永続的に保持される。ページ記述は、テキスト、グラフィックス、及びイメージを含む、ページの可視レイアウト及びコンテンツを記述するものである。また、ボタン、ハイパーリンク、及び入力フィールドを含む、ページ上の入力要素も記述する。ネットページを使用すると、表面上にネットページペンで付けられたマーキングが、ネットページシステムによって同時に取り込まれ、処理されるようにできる。
【0060】
複数のネットページ(例えば、アナログ印刷機によって印刷されたネットページ)は、同じページ記述を共有することができる。しかし、他の何らかの形で同一のページを通じての入力を区別できるように、それぞれのネットページに、一意的なページ識別子を割り当てることができる。このページIDは、非常に多くのネットページを区別できる十分に高い精度を有する。
【0061】
ページ記述に対するそれぞれの参照は、印刷されたタグに符号化される。それぞれのタグは、それが出現する一意的なページを識別し、それにより、ページ記述を間接的に識別する。タグは、さらに、ページ上のそれ固有の位置を識別する。タグの特性については、以下でさらに詳しく説明される。
【0062】
タグは、典型的には、通常の紙などの赤外線を反射する基材上に赤外線吸収インクで印刷されるか、又は赤外線蛍光インクで印刷される。近赤外線波長は、人の目には不可視であるが、適切なフィルタを使った固体イメージセンサーを使用すれば容易に感知される。
【0063】
タグは、ネットページ感知デバイス内のエリアイメージセンサーによって感知され、タグデータは、最も近い位置にあるネットページリレーデバイスを介してネットページシステムに伝送される。ペンは、無線通信を行い、短距離無線リンクを介してネットページリレーデバイスと通信する。タグは、十分に小さく、またページ上でシングルクリックしただけでも感知デバイスが少なくとも1つのタグを確実に撮像できる程度に密に配列されている。インタラクションはステートレスなので、ペン側でページとのインタラクション毎にページのID及び位置を認識することが重要である。タグは、表面の損傷に対する部分的耐性を持たせるために誤り訂正可能なように符号化される。
【0064】
ネットページページサーバ10は、それぞれの一意的な印刷されたネットページについて一意的なページインスタンスを保持し、これにより、印刷されたネットページ毎にページ記述の入力フィールドに対しユーザーが指定する値の異なる集合を保持することができる。
【0065】
ページ記述、ページインスタンス、及び印刷されたネットページの間の関係は、図4に示されている。印刷されたネットページは、印刷されたネットページドキュメント45の一部とすることができる。ページインスタンスは、それを印刷したネットページプリンタと、もし知られているならば、それを要求したネットページユーザーの両方に関連付けることができる。
【0066】
2 ネットページタグ
2.1 タグデータのコンテンツ
好ましい一実施形態では、それぞれのタグは、それが出現する領域、及び領域内におけるそのタグの位置を識別する。タグは、さらに、全体として領域に関係するか、又はそのタグに関係するフラグを含むこともできる。例えば、1つ又は複数のフラグビットは、タグ感知デバイス側で領域の記述を参照しなくても、タグの即時領域に関連する機能を示すフィードバックを返すようにタグ感知デバイスに通知することができる。例えば、ネットページペンは、ハイパーリンクのゾーン内にあるときに「アクティブ領域」LEDを点灯させることができる。
【0067】
以下でさらに詳しく説明するように、好ましい一実施形態では、それぞれのタグは、初期検出を補助し、表面によって、又は感知プロセスによって引き起こされる反りの効果を最小限に抑えるのを助ける、容易に認識される不変構造を含む。これらのタグは、好ましくはページ全体をタイリングし、十分に小さく、またページ上でシングルクリックしただけでもペンが少なくとも1つのタグを確実に撮像できる程度に密に配列されている。インタラクションはステートレスなので、ペン側でページとのインタラクション毎にページのID及び位置を認識することが重要である。
【0068】
好ましい一実施形態では、タグが参照する領域は、ページ全体と一致し、したがって、タグ内に符号化されている領域IDは、タグが出現するページのページIDと同義である。他の実施形態では、タグが参照する領域は、ページの任意の部分領域であるか、又は他の表面であってもよい。例えば、これは、インタラクティブ要素のゾーンと一致してもよく、この場合、領域IDはインタラクティブ要素を直接的に識別することができる。
【表1】
それぞれのタグは、120ビットの情報を含み、これらは典型的には表1に示されているように割り当てられている。最大タグ密度が64/平方インチであると仮定すると、16ビットタグIDは、最大1024平方インチまでの領域サイズをサポートする。単に隣接する領域とマップを使用するだけでタグIDの精度を高めることなく、より大きな領域を連続的にマッピングできる。100ビット領域IDを使用すると、2100(約1030つまり、100万の1兆倍の1兆倍)個の異なる領域を一意的に識別することができる。
【0069】
2.2 タグデータの符号化
120ビットのタグデータは、(15,5)リードソロモン符号を使用して冗長符号化される。これにより、それぞれ15個の4ビットシンボルからなる6個のコードワードからなる360個の符号化ビットが得られる。(15,5)符号を使用すると、最大5個のまでのシンボル誤りをコードワード毎に訂正することができる、つまり、1コードワード当たり最大33%までのシンボル誤り率に耐える。
【0070】
それぞれの4ビットシンボルは、空間的にコヒーレントな方法でタグ内に表現され、6個のコードワードのシンボルは、そのタグ内で空間的にインタリーブされる。これにより、バースト誤り(複数の空間的に隣接するビットに影響を及ぼす誤り)が損なう、全体的なシンボルの数及び任意の1つのコードワード内のシンボルの数が最小限に抑えられることが保証され、したがって、バースト誤りが完全に訂正されうる可能性が最大になる。
【0071】
好適な誤り訂正符号を(15,5)リードソロモン符号の代わりに使用することができ、例えば、冗長度を増やした、又は減らした、同じ又は異なるシンボル及びコードワードサイズを使用するリードソロモン符号、他のブロック符号、又は畳み込み符号などの異なる種類の符号を代わりに使用できる(例えば、相互参照により本明細書に内容が組み込まれている、Stephen B.Wicker、「Error Control Systems for Digital Communication and Storage」、Prentice−Hall 1995年を参照のこと)。
【0072】
2.3 物理的タグ構造
図5aに示されている、タグの物理的表現は、固定ターゲット構造15、16、17、及び可変データ領域18を含む。固定ターゲット構造を使用すると、ネットページペンなどの感知デバイスでタグを検出し、センサーに相対的な3次元の配向を推論することができる。データ領域は、符号化されたタグデータの個別のビットの表現を含む。
【0073】
タグの再現性を適切なものとするために、タグは256×256ドットの分解能でレンダリングされる。1600ドット/インチで印刷した場合、これにより、直径約4mmのタグが得られる。この分解能で、タグは半径16ドットの「静かな領域」によって囲まれるように設計されている。この静かな領域には、隣接するタグも寄与するので、タグの有効径に16ドットを加えるのみである。
【0074】
タグは、6個のターゲット構造を含む。検出リング15により、感知デバイスは最初にタグを検出することができる。リングは、回転に対し不変であるため、またそのアスペクト比の単純な補正で、遠近歪みの影響の大半が取り除かれるため、検出が容易である。配向軸16を使用することで、感知デバイスはセンサーのヨーによるタグの近似的平面配向を決定することができる。配向軸は、一意的な配向が得られるように傾いている。4つの透視ターゲット17により、感知デバイスはタグの正確な2次元透視変換、したがってセンサーに相対的なタグの正確な3次元位置及び配向を推論することができる。
【0075】
すべてのターゲット構造は、ノイズに対する耐性を増すために大きさに冗長性を持たせてある。
【0076】
全体的なタグ形状は円形である。これは、とりわけ、不規則三角形格子上で最適なタグ充填をサポートする。円形検出リングと併用することで、これにより、タグ内のデータビットの円形配列を最適にものにできる。そのサイズを最大化するために、それぞれのデータビットは、2本の半径方向の直線と2つの同心円の円弧を境界線とする領域形態において半径方向のウェッジによって表される。それぞれのウェッジは、1600dpiで最小寸法8ドットを有し、その基部(その内弧)がこの最小寸法に少なくとも等しくなるように設計される。半径方向のウェッジの高さは、常に最小寸法に等しい。それぞれの4ビットデータシンボルは、2×2のウェッジのアレイによって表される。
【0077】
6個のコードワードのそれぞれの15個の4ビットデータシンボルは、インタリーブされた形で4つの同心円シンボルリング18aから18dに割り当てられる。シンボルは、タグの周りを円にそって進みつつ交互に割り当てられる。
【0078】
インタリーブは、同一コードワードの2つのシンボルの間の平均空間距離を最大にするように設計される。
【0079】
感知デバイスを介してタグ付き領域との「シングルクリック」インタラクションをサポートするために、感知デバイスは、領域内のどこに位置しようと、又はどのような配向で位置しようと、視野内で少なくとも1つのタグ全体が見えるようになっていなければならない。したがって、感知デバイスの視野の必要な直径は、タグのサイズ及び間隔の関数として表される。
【0080】
円形のタグ形状を仮定すると、センサー視野の最小直径は、タグが図5bに示されているように等辺三角形格子上にタイリングされるときに得られる。
【0081】
2.4 タグのイメージ処理及び復号化
ネットページペンなどの感知デバイスによって実行されるタグのイメージ処理及び復号化は、図7に示されている。取り込まれたイメージがイメージセンサーから取得されている間に、イメージのダイナミックレンジが決定される(20で)。そこで、範囲の中心は、イメージ21のバイナリ閾値として選択される。次いで、イメージは閾値化されて、複数の連結ピクセル領域(つまり、形状23)にセグメント分割される(22で)。小さすぎてタグターゲット構造を表現できない形状は、破棄される。それぞれの形状のサイズ及び重心も、計算される。
【0082】
次いで、形状毎に2値形状モーメント25が計算され(24で)、これらは、その後ターゲット構造を特定するための基礎となる。中心形状モーメントは、その性質上、位置の不変量であり、縮尺、アスペクト比、及び回転の不変量に容易にできる。
【0083】
リングターゲット構造15は、最初に特定されるべきものである(26で)。リングは、遠近歪みが生じたときに非常によい振る舞いをするという利点を有する。マッチングは、それぞれの形状のモーメントをアスペクト正規化し、回転正規化することにより進行する。2次モーメントが正規化されると、リングは、遠近歪みが大きかったとしても容易に認識できる。リングの元のアスペクト及び回転27は、一緒になって、透視変換の有用な近似を与える。
【0084】
軸ターゲット構造16は、次に特定されるべきものである(28で)。マッチングは、それぞれの形状のモーメントにリングの正規化を適用し、その結果得られるモーメントを回転正規化することにより進行する。2次モーメントが正規化された後、軸ターゲットは容易に認識される。軸の2つの可能な配向の曖昧さをなくすには、3次モーメントが1つ必要であることに留意されたい。これが可能なように、形状は片側へ故意に傾けられている。また、遠近歪みが軸ターゲットの軸を隠すことができるため、リングの正規化を適用された後に軸ターゲットを回転正規化することのみ可能であることにも留意されたい。軸ターゲットの元の回転は、ペンのヨー29によりタグの回転の有用な近似を与える。
【0085】
4つの透視ターゲット構造17は、最後に特定されるべきものである(30で)。リング及び軸ターゲットに対する知られている空間的関係、リングのアスペクト及び回転、並びに軸の回転に基づき、これらの位置のよい推定値が計算される。マッチングは、それぞれの形状のモーメントにリングの正規化を適用することにより進行する。2次モーメントが正規化された後、円形透視ターゲットは容易に認識され、それぞれの推定された位置に最も近い位置にあるターゲットが一致とみなされる。次いで、4つの透視ターゲットの元の重心は、タグ空間内の知られているサイズの正方形の遠近歪みのあるコーナー31とみなされ、自由度8の透視変換33は、4つのタグ空間とイメージ空間点対との関係を定めるよく理解されている式を解くことに基づき(32で)推論される(相互参照により本明細書に内容が組み込まれている、Heckbert、P.、「Fundamentals of Texture Mapping and Image Warping」、Masters Thesis、Dept.of EECS、U.of California at Berkeley、Technical Report No.UCB/CSD89/516、1989年6月を参照のこと)。
【0086】
タグ空間内のそれぞれの知られているデータビット位置をイメージ空間内に(36で)射影するために推論されたタグ空間/イメージ空間透視変換が使用されるが、その際に入力イメージ内の4つの関連する隣接ピクセルを(36で)双線形補間するために実数値をとる位置が使用される。すでに計算されているイメージ閾値21は、その結果を閾値化して最終的なビット値37を出力するために使用される。
【0087】
360個すべてのデータビット37が、このようにして得られた後、6つの60ビットリードソロモンコードワードのそれぞれが復号化され(38で)、20個の復号化されたビット39、つまり合計120個の復号化されたビットが得られる。コードワードシンボルは、コードワード順序でサンプリングされ、したがってコードワードは、サンプリングプロセスにおいて暗黙のうちに逆インタリーブされることに留意されたい。
【0088】
リングターゲット15は、リングがもし見つかれば完全なタグの一部であることを保証するイメージとの関係を持つイメージの部分領域内でのみ探索される。完全なタグが見つからず、正常に復号化された場合、現在のフレームについてペン位置はいっさい記録されない。適切な処理能力があり、理想的には最小でない視野193を持つ場合、代替え戦略として、現在のイメージ内で他のタグを探す必要がある。
【0089】
得られたタグデータは、タグを含む領域の識別及びその領域内のタグの位置を示す。次いで、領域内のペン先の正確な位置35とともにペンの全体的配向35が、タグ上で観察された透視変換33及びペンの物理的軸とペンの光軸との間の知られている空間的関係から(34で)推論される。
【0090】
2.5 代替えのタグ構造
上述のタグ構造は、タグの規則正しいタイリングが可能でない場合のある非平面の表面のタグ付けをサポートするように設計されている。より一般的である、タグの規則正しいタイリングが可能な平面の表面、つまり、用紙などの表面の場合には、タイリングの規則正しさを利用する、より効率的なタグ構造が使用されうる。
【0091】
図6aは、4つの透視ターゲット17を持つ正方形のタグ4を示している。構造に関してはBennettらの米国特許第5051746号明細書で説明されているタグと似ている。タグは、合計240ビットについて、60個の4ビットリードソロモンシンボル47を表す。タグは、それぞれの1ビットをドット48として表し、それぞれのゼロビットを、対応するドットが存在しないことで表す。透視ターゲットは、図6b及び6cに示されているように、隣接するタグの間で共有されるように設計されている。図6bは、16個のタグの正方形のタイリング及び対応する最小視野193を示しているが、これは、2つのタグの対角線にわたっていなければならない。図6cは、9つのタグの正方形のタイリングを示しているが、例示のためすべての1ビットを含む。
【0092】
112ビットのタグデータは、(15,7)リードソロモン符号を使用して冗長符号化され、240個の符号化ビットを生成する。4つのコードワードは、バースト誤りに対する回復力が最大になるようにタグ内で空間的にインタリーブされる。16ビットタグIDを前のように仮定すると、これにより、最大92ビットまでの領域IDが得られる。
【0093】
タグのデータを保持するドット48は、隣接要素と重ならないように設計されており、したがって、タグのグループがターゲットに似た構造を生成することはありえない。また、これによりインクが節約される。したがって、透視ターゲットでは、タグを検出することができ、したがって他のターゲットは不要である。タグイメージ処理は、上の第1.2.4節で説明されているように進行するが、ただし、ステップ26及び28は省かれる。
【0094】
タグは、センサーに相対的なタグの4つの可能な配向の曖昧さの除去を可能にする配向機能を備えることができるけれども、タグデータ中に配向データを埋め込むことも可能である。例えば、これら4つのコードワードは、それぞれのタグ配向が、図6dに示されているように、その配向に置かれている1つのコードワードを含むように配列することができ、それぞれのシンボルは、そのコードワードの数(1〜4)及びコードワード内のシンボルの位置(A〜O)をラベル付けされる。次いで、タグ復号化は、それぞれの配向で1つのコードワードを復号化することからなる。それぞれのコードワードは、それが第1のコードワードであるかどうかを示す単一のビットを含むか、又はそれがどのコードワードであるかを示す2つのビットを含むことができる。後者のアプローチには、例えば、ただ1つのコードワードからなるデータコンテンツが必要な場合に、所望のデータを得るために高々2つのコードワードを復号化すればよいという利点がある。これは、領域IDが1つのストローク内で変化するとは予想されず、したがってストロークの開始時にのみ復号化される場合であると考えられる。次いで、1つのストローク内で、タグIDを含むコードワードのみが望まれる。さらに、感知デバイスの回転は、1つのストローク内でゆっくりと予測可能なように変化するため、典型的には、ただ1つのコードワードがフレーム毎に復号化されるだけでよい。
【0095】
まったく透視ターゲットなしで済ますことが可能であり、代わりに、データ表現が自己登録することに依存することが可能である。この場合、それぞれのビット値(又は多ビット値)は、典型的には、明示的グリフによって表される、つまり、どのビット値も、グリフが存在しないことによって表されることはない。これにより、データ格子は適切に埋められることが保証され、したがって、その格子を確実に識別し、その遠近歪みを検出し、その後、データサンプリング時に訂正することができる。タグ境界を検出できるようにするために、それぞれのタグデータは、マーカーパターンを含んでいなければならず、またこれらは、確実に検出できるように冗長符号化されなければならない。このようなマーカーパターンのオーバーヘッドは、明示的な透視ターゲットのオーバーヘッドに似ている。このようなスキームの1つでは、格子頂点に相対的なさまざまな点に位置するドットを使用して、異なるグリフを表し、したがって異なる多ビット値を表す(Anoto Technology Description、Anoto 2000年4月を参照のこと)。
【0096】
追加のタグ構造は、本発明の出願人又は譲受人によって出願された米国特許の公報(前述した特許文献1)において開示されている。
【0097】
2.6 タグマップ
タグを復号化すると、その結果、領域ID、タグID、及びタグ相対的ペン変換が得られる。タグID及びタグ相対的ペン配置をタグ付き領域内の絶対配置に変換する前に、その領域内のタグの配置が知られていなければならない。この配置は、タグマップによって与えられるが、これは、タグ付き領域内のそれぞれのタグIDを対応する配置にマッピングする機能である。タグマップクラスダイアグラムは、ネットページプリンタクラスダイアグラムの一部として図22に示されている。
【0098】
タグマップは、タグを含む表面領域をタイリングするために使用されるスキームを反映し、これは表面の種類に応じて異なりうる。複数のタグ付き領域が、同じタイリングスキーム及び同じタグナンバリングスキームを共有する場合、これらは、さらに、同じタグマップも共有しうる。
【0099】
1つの領域に対するタグマップは、領域IDを介して取り出せなければならない。したがって、領域ID、タグID、及びペン変換が与えられた場合、タグマップが取り出され、タグIDがその領域内の絶対タグ配置に変換され、タグ相対的ペン配置がタグ配置に追加され、これによりその領域内の絶対ペン配置が得られる。
【0100】
タグIDは、タグマップを介した変換を補助する構造を有していてもよい。例えば、タグIDが出現する表面の種類に応じて、直交座標(x−y)又は極座標を符号化することができる。タグID構造は、タグマップによって指示され、タグマップに認識され、したがって、異なるタグマップに関連付けられたタグIDは、異なる構造を持つことができる。
【0101】
2.7 タグ付けスキーム
好ましい符号化スキームでは、すでに説明したように「配置指示」タグを使用する。代替え符号化スキームでは、オブジェクト指示タグを使用する。
【0102】
配置指示タグは、タグ付き領域に関連付けられているタグマップを介して変換されたときに、その領域内で一意的なタグ配置を生成するタグIDを含む。ペンのタグ相対的配置が、このタグ配置に加えられ、これにより、領域内のペンの配置が求められる。次いで、これは、その領域に関連付けられているページ記述におけるユーザーインターフェース要素に相対的なペンの配置を決定するために使用される。ユーザーインターフェース要素それ自体が識別されるだけでなく、ユーザーインターフェース要素に相対的な配置も識別される。したがって、配置指示タグが、特定のユーザーインターフェース要素のゾーン内の絶対ペン経路の取り込みをサポートするのは自明である。
【0103】
オブジェクト指示タグは、その領域に関連付けられているページ記述でユーザーインターフェース要素を直接識別するタグIDを含む。ユーザーインターフェース要素のゾーン内のすべてのタグは、そのユーザーインターフェース要素を識別し、それらをすべて同じものにし、したがって、区別できなくする。したがって、オブジェクト指示タグは、絶対ペン経路の取り込みをサポートしない。しかし、相対的ペン経路の取り込みは、サポートする。位置サンプリング頻度が、遭遇するタグの頻度の2倍を超える限り、1つのストローク内での一方のサンプリングされたペン位置から次の位置への変位は、明確に決定されうる。
【0104】
いずれかのタグ付けスキームを使用することで、タグは、タグデータが感知デバイスによって読み取られ、適切な応答がネットページシステム内に生成されるようにユーザーが適切な感知デバイスを使用して印刷されたページとのインタラクションを行うことができるという点でユーザーインタラクティブ要素としてネットページ上の関連する視覚的要素と連携して機能する。
【0105】
3 ドキュメント及びページ記述
ドキュメント及びページ記述クラスダイアグラムの好ましい一実施形態は、図12及び13に示されている。
【0106】
ネットページシステムでは、ドキュメントは3つのレベルで記述される。最も抽象的なレベルにおいて、ドキュメント836は階層構造をなし、この構造の終端要素839はテキストオブジェクト、テキストスタイルオブジェクト、イメージオブジェクトなどのコンテンツオブジェクト840に関連付けられている。ドキュメントがプリンタで特定のページサイズに印刷されると、ドキュメントはページ番号を付けられ、また他の何らかの形でフォーマットされる。フォーマットされた終端要素835は、場合によっては、特にコンテンツオブジェクトがスタイルに関係付けられている場合に、対応する終端要素に関連付けられているものと異なるコンテンツオブジェクトに関連付けられる。ドキュメント及びページのそれぞれの印刷インスタンスは、さらに、別々に記述され、これにより、特定のページインスタンス830を通じて取り込まれた入力を同じページ記述の他のインスタンスを通じて取り込まれた入力とは別に記録することができる。
【0107】
ページサーバ上に最も抽象的なドキュメント記述が存在するため、ソースドキュメントの特定のフォーマットを無理矢理受け入れさせずともドキュメントのコピーを印刷することができる。ユーザー又は印刷機は、例えば、異なるページサイズでプリンタ用のコピーを要求している場合がある。逆に、ページサーバ上にフォーマットされたドキュメント記述が存在することにより、ページサーバは、特定の印刷されたページ上のユーザーアクションを効率よく解釈することができる。
【0108】
フォーマットされたドキュメント834は、一組のフォーマットされたページ記述5からなり、それぞれの記述は一組のフォーマットされた終端要素835からなる。それぞれのフォーマットされた要素は、ページ上に1つの空間的広がりつまりゾーン58を有する。これにより、ハイパーリンク及び入力フィールドなどの入力要素のアクティブ領域が定義される。
【0109】
ドキュメントインスタンス831は、フォーマットされたドキュメント834に対応する。これは、一組のページインスタンス830からなり、それぞれのインスタンスは、フォーマットされたドキュメントのページ記述5に対応する。それぞれのページインスタンス830は、単一の一意的な印刷ネットページ1を記述し、ネットページのページID 50を記録する。ページインスタンスは、別に要求されたページのコピーを表す場合にはドキュメントインスタンスの一部ではない。
【0110】
ページインスタンスは、一組の終端要素インスタンス832からなる。要素インスタンスは、インスタンス特有の情報を記録する場合にのみ存在する。したがって、ハイパーリンクインスタンスは、そのページインスタンスに特有のトランザクションID 55を記録するのでハイパーリンク要素に対し存在し、フィールドインスタンスは、そのページインスタンスに特有の入力を記録するのでフィールド要素に対し存在する。しかし、要素インスタンスは、テキストフローなどの静的要素については存在しない。
【0111】
終端要素839は、視覚的要素又は入力要素とすることができる。視覚的要素は、静的要素843又は動的要素846とすることができる。入力要素は、図14に示されているように、ハイパーリンク要素844又はフィールド要素845とすることができる。静的要素843は、図15に示されているように、関連するスタイルオブジェクト854を有するスタイル要素847、関連するスタイル化されたテキストオブジェクト855を有するテキストフロー要素848、関連するイメージオブジェクト856を有するイメージ要素849、関連するグラフィックオブジェクト857を有するグラフィック要素850、関連するビデオクリップオブジェクト858を有するビデオクリップ要素851、関連するオーディオクリップオブジェクト859を有するオーディオクリップ要素852、又は関連するスクリプトオブジェクト860を有するスクリプト要素853とすることができる。
【0112】
ページインスタンスは、特定の入力要素に適用されないページ上で取り込まれた任意のデジタルインクを記録するために使用されるバックグラウンドフィールド833を有する。
【0113】
本発明の好ましい形態では、タグマップ811が、ページ上のタグをページ上の配置に変換できるようにそれぞれのページインスタンスに関連付けられている。
【0114】
4 ネットページネットワーク
好ましい一実施形態では、ネットページネットワークは、図3に示されているように、インターネットなどのネットワーク19を介して接続されている、ネットページページサーバ10、ネットページ登録サーバ11、ネットページIDサーバ12、ネットページアプリケーションサーバ13、及びネットページリレーデバイス601の分散型の集合体からなる。
【0115】
ネットページ登録サーバ11は、ユーザー、ペン、プリンタ、及びアプリケーションの間の関係を記録するサーバであり、これにより、さまざまなネットワーク活動の許可を行う。これは、ユーザーを認証し、アプリケーショントランザクションにおいて認証されたユーザーに代わってサイニングプロキシとして動作する。これはまた、手書き認識サービスも提供する。上述のように、ネットページページサーバ10は、ページ記述及びページインスタンスに関する永続的情報を保持する。ネットページネットワークは、任意の数のページサーバを備え、それぞれのサーバはページインスタンスの部分集合を処理する。ページサーバは、さらに、ページインスタンス毎にユーザー入力値を維持するので、ネットページリレー601などのクライアントは、ネットページ入力を直接、適切なページサーバに送信する。ページサーバは、対応するページの記述に関してそのような入力を解釈する。
【0116】
ネットページIDサーバ12は、オンデマンドでドキュメントID 51を割り当て、そのID割当てスキームを用いてページサーバの負荷分散を行う。
【0117】
ネットページリレーは、インターネット分散型ネームシステム(DNS)、又は同様のものを使用して、ネットページID 50を、対応するページインスタンスを処理するネットページページサーバのネットワークアドレスに帰着させる。
【0118】
ネットページアプリケーションサーバ13は、インタラクティブネットページアプリケーションをホストするサーバである。
【0119】
ネットページサーバは、IBM、Hewlett−Packard、及びSunなどのメーカー製のさまざまなネットワークサーバプラットフォーム上でホストされうる。複数のネットページサーバを単一のホスト上で同時実行させることができ、また単一のサーバを多数のホスト上に分散させることができる。ネットページサーバによって提供される機能の一部又は全部、並びに特にIDサーバ及びページサーバによって提供される機能は、また、ネットページプリンタなどのネットページアプライアンスにおいて、又はコンピュータワークステーションにおいて、又はローカルネットワーク上でも直接提供されうる。
【0120】
5 ネットページペン
ネットページシステムのアクティブな感知デバイスは、クリッカー(表面上の特定の位置をクリックするため)、スタイラス(ポインタストロークを使用して表面上でポイントするか、又はジェスチャーを使用するため)を有するポインタ、又はマーキング用ペン先(表面上でポイントしたり、ジェスチャーを使用したり、書いたりするときに表面にインクでマーキングするため)を有するペンの形態をとりうる。本明細書では、ペン101が説明されているけれども、クリッカー及びポインタは、類似の構造を持つものとしてもよいことは理解されるであろう。ペン101では、組込コントローラ134を使用して、イメージセンサーを介して1つのページからネットページタグを取り込んで復号化する。イメージセンサーは、近赤外線波長でのみ感知を許す適切なフィルタを備えた固体デバイスである。以下でさらに詳しく説明されるように、システムは、ペン先が表面といつ接触したかを感知することができ、ペンは、人間の手書きを取り込む十分なレートで(つまり、200dpi又はそれ以上、及び100Hz又はそれ以上の速さで)タグを感知することができる。ペンによって取り込まれた情報は、暗号化されて、無線によりプリンタ(又は基地局)に送信され、プリンタ又は基地局が(知られている)ページ構造に照らしてデータを解釈することができる。
【0121】
ネットページペン101の好ましい実施形態は、通常のマーキングインクペンとしての動作及びノンマーキングスタイラスとして(つまり、ポインタとして)の動作の両方を行う。しかし、マーキングの態様は、インターネットインターフェースとして使用される場合などには、ネットページシステムをブラウジングシステムとして使用するうえでは不要である。それぞれのネットページペンは、ネットページシステムに登録され、一意的なペンID 61を有する。図11は、ネットページペンクラスダイアグラムを示しており、これはネットページネットワーク上で登録サーバ11によって保持されるペン関連情報を反映する。
【0122】
ペン先がネットページと接触すると、ペンは、その位置及び配向をページに相対的に決定する。ペン先は、力センサーに取り付けられ、ペン先にかかる力は、閾値に関して解釈され、ペンが「上がっている(アップ)」のか「降りている(ダウン)」のかを示す。このため、ペン先で押すことによりページ上のインタラクティブ要素を「クリック」し、例えば、ネットワークに情報を要求することができる。さらに、力は連続値として取り込まれ、例えば、署名の力学的プロセス全体を照合することができる。力センサーについては、第8節でさらに詳しく説明される。
【0123】
ペンは、赤外線スペクトルで、ペン先の近くにあるページの一領域193を撮像することにより、ネットページ上のそのペン先の位置及び配向を決定する。これは、最も近い位置にあるタグを復号化し、撮像されたタグ上の観察された遠近歪み及びペンの光学系の知られている幾何学的形状からタグに相対的なペン先の位置を計算する。タグの位置分解能は、低い場合があるけれども、ページ上のタグ密度は、タグサイズに反比例するので、調整された位置分解能は、極めて高く、正確な手書き認識に必要な最小分解能を超える。
【0124】
ネットページに関するペンアクションは、一連のストロークとして取り込まれる。ストロークは、ペンダウンイベントによって開始され、その後のペンアップイベントによって完了する、ページ上のタイムスタンプが記録されたペン位置の1つの系列からなる。ストロークは、さらに、ページIDが変化したときに必ずネットページのページID 50をタグとして付けられ、通常の状況下では、ストロークの開始時に行われる。
【0125】
それぞれのネットページペンには、現在の選択826が関連付けられており、これにより、ユーザーは、コピー及び貼り付けオペレーションなどを実行できる。選択には、タイムスタンプが付けられており、これにより、システムは定められた期間を過ぎた後にその選択を破棄することができる。現在の選択では、ページインスタンスの一領域を記述する。これは、ページのバックグラウンド領域に関してペンを通じて取り込まれた一番最近のデジタルインクストロークからなる。これは、選択ハイパーリンクアクティブ化を介してアプリケーションにサブミットされた後にアプリケーション特有の方法で解釈される。
【0126】
それぞれのペンは、現在のペン先824を有する。これは、ペンによってシステムに最後に通知されたペン先である。上述のデフォルトのネットページペンの場合、マーキング用黒色インクペン先又はノンマーキングスタイラスペン先のいずれかが現在のペン先である。それぞれのペンは、さらに、現在のペン先スタイル825を有する。これは、例えば、ユーザーがパレットから色を選択したことに対する応答として、アプリケーションによってペンに最後に関連付けられたペン先スタイルである。デフォルトのペン先スタイルは、現在のペン先に関連付けられているペン先スタイルである。ペンを通じて取り込まれたストロークは、現在のペン先スタイルをタグ付けされる。ストロークは、その後再現される場合に、タグ付けに使用されたペン先スタイルで再現される。
【0127】
ペン101は、1つ又は複数のボタン209を有する場合があり、これらのボタンは、ペンのモードを選択するためにユーザーによって押される。ペンの挙動を決定するために(1つ又は複数の)ボタンが使用され、次いでペンの挙動はページサーバ10によってストロークがどのように解釈されるかを決定する。
【0128】
ペンが、通信できるリレーデバイス601の範囲内にある限り、ペンは、「オンライン」LEDをゆっくり点滅させる。ペンがページに関してストロークを復号化することに失敗した場合、「エラー」LEDを一瞬点灯させる。ペンがページに関してストロークを復号化することに成功した場合、「ok」LEDを一瞬点灯させる。
【0129】
取り込まれたストロークのシーケンスが、デジタルインクと称される。デジタルインクは、手書きのオンライン認識及び署名のオンライン照合のための描画及び手書きのデジタル交換の基盤をなす。
【0130】
ペンは、無線通信を行い、短距離無線リンクを介してリレーデバイス601にデジタルインクを送信する。送信されたデジタルインクは、プライバシー及び機密保護のため暗号化され、効率よく伝送できるようにパケット化されるが、プリンタでタイミングよく処理できるようにペンアップイベント発生時に常にフラッシュされる。
【0131】
ペンは、リレーデバイス601の範囲外にある場合、これは、デジタルインクを、10分を超える連続する手書きの容量を有する、内部メモリにバッファリングする。ペンがもう一度リレーデバイスの範囲内に入ったら、これはバッファリングされているデジタルインクを転送する。
【0132】
ペンを登録できるリレーデバイスの数に制限はないが、すべての状態データが紙とネットワークの両方のネットページ内に置かれるため、特定の時点においてペンがどのリレーデバイスと通信しているかは、概して重要でない。
【0133】
ペンの一実施形態は、図8から図10を参照しつつ、以下の第7節でさらに詳しく説明される。
【0134】
6 ネットページのインタラクション
ネットページリレーデバイス601は、ネットページ1とのインタラクションのためにペンが使用される場合にペン101からのストロークに関係するデータを受け取る。タグ4の符号化データ3は、ストロークなどの移動を実行するために使用される場合にペンによって読み取られる。このデータによって、特定のページの識別を決定し、そのページに関するペンの位置決めの指示を得ることができる。ページID 50及びペンの少なくとも1つの位置を含むインタラクションデータは、リレーデバイス601に送信され、そこで、DNSを介して、ストロークのページID 50を、対応するページインスタンス830を保持するネットページページサーバ10のネットワークアドレスに帰着させる。次いで、ストロークをページサーバに送信する。ページが前の方のストロークにおいて最近識別されていた場合、リレーデバイスは、すでに、キャッシュ内に関連するページサーバのアドレスを有している可能性がある。それぞれのネットページは、ネットページページサーバによって永続的に保持されるコンパクトページレイアウトからなる(以下を参照のこと)。ページレイアウトとは、典型的にはネットページネットワーク上の他の場所に格納されている、イメージ、フォント、テキスト断片などのオブジェクトのことである。
【0135】
ページサーバは、ペンからストロークを受け取ると、ストロークの適用先となるページ記述を取り出し、そのストロークが交差するページ記述の要素を決定する。そこで、関連する要素の型に関してストロークを解釈することができる。
【0136】
「クリック」とは、ペンダウン位置とその後のペンアップ位置との間の距離と時間が両方とも何らかの小さな最大値よりも小さいストロークのことである。クリックによってアクティブ化されるオブジェクトは、典型的には、クリックがアクティブ化されることを必要とし、したがって、長引いたストロークは無視される。「ぞんざいな」クリックなどペンアクションの登録失敗は、ペンの「ok」LEDからの応答がないことでわかる。
【0137】
ネットページページ記述には、ハイパーリンクとフォームフィールドの2種類の入力要素がある。フォームフィールドによる入力も、関連付けられているハイパーリンクのアクティブ化をトリガしうる。
【0138】
6.1 ハイパーリンク
ハイパーリンクは、メッセージをリモートアプリケーションに送信する一手段であり、典型的には、ネットページシステムにおける表示又は印刷による応答を引き出す。
【0139】
ハイパーリンク要素844は、ハイパーリンクのアクティブ化を取り扱うアプリケーション71、アプリケーションへのハイパーリンクを識別するリンクID 54、ユーザーのアプリケーションエイリアスID 65をハイパーリンクアクティブ化に含めるようシステムに求める「エイリアス要求」フラグ、及びハイパーリンクがお気に入りとして記録されるか、又はユーザーの履歴に現れるときに使用される記述を識別する。ハイパーリンク要素クラスダイアグラムは、図16に示されている。
【0140】
ハイパーリンクがアクティブ化されると、ページサーバは、ネットワーク上のどこかにあるアプリケーションに要求を送信する。アプリケーションは、アプリケーションID 64によって識別され、アプリケーションIDは、DNSを介して通常の方法で帰着させられる。ハイパーリンクには、図17に示されているように、一般ハイパーリンク863、フォームハイパーリンク865、及び選択ハイパーリンク864の3種類がある。一般ハイパーリンクは、リンクドキュメントの要求を実行するか、或いは単純に、サーバにプリファレンスを信号として送ることができる。フォームハイパーリンクは、対応するフォームをアプリケーションにサブミットする。選択ハイパーリンクは、現在の選択をアプリケーションにサブミットする。現在の選択に、単語テキスト断片が含まれる場合、例えば、アプリケーションは、その単語が出現する文脈内での単語の意味を示す単一ページのドキュメント、又は異なる言語への翻訳を返すことができる。それぞれのハイパーリンクの種類は、どのような情報がアプリケーションにサブミットされるかにより特徴付けられる。
【0141】
対応するハイパーリンクインスタンス862は、ハイパーリンクインスタンスが出現するページインスタンスに特有のものとすることができるトランザクションID 55を記録する。トランザクションIDを使用すると、ユーザー特有のデータをアプリケーション、例えばユーザーの代わりに購入アプリケーションによって保持される購入保留中の「ショッピングカート」に対し識別することができる。
【0142】
システムは、ペンの現在の選択826を選択ハイパーリンクアクティブ化に含める。システムは、関連付けられているフォームインスタンス868のコンテンツをフォームハイパーリンクアクティブ化に含めるが、ハイパーリンクに「submit delta」属性が設定されている場合には、最後のフォームサブミット以降の入力のみが含まれる。システムは、有効なリターンパスをすべてのハイパーリンクアクティブ化に含める。
【0143】
ハイパーリンク付きグループ866は、図18に示されているように、関連付けられたハイパーリンクを有するグループ要素838である。入力が、グループ内のフィールド要素を通じて実行される場合、そのグループに関連付けられているハイパーリンク844がアクティブ化される。ハイパーリンク付きグループは、ハイパーリンクの挙動をチェックボックスなどのフィールドに関連付けるために使用されうる。また、連続する入力をアプリケーションに送るために、フォームハイパーリンクの「submit delta」属性とともに使用されうる。したがって、これは、「黒板」インタラクションモデルをサポートするために、つまり、入力が取り込まれ、出現するとすぐに共有される場合に、使用されうる。
【0144】
6.2 ハイパーリンクアクティブ化プロトコル
ハイパーリンクアクティブ化プロトコルの好ましい一実施形態は、図42に示されている。
【0145】
ユーザーが、ネットページペンでネットページをクリックすると、ペンは、そのクリックをインタラクションデータの形式で最も近い位置にあるネットページリレーデバイス601に伝達する。このクリックで、ページとそのページ上の配置が識別される。リレーデバイス601では、ペン接続プロトコルからペンのID 61をすでに認識している。
【0146】
リレーデバイス601は、DNSを介して、特定のページID 50を取り扱うページサーバ10のネットワークアドレスを決定する。そのアドレスは、ユーザーが同じページとのインタラクションを最近行っていた場合にキャッシュ内にすでに入っている可能性がある。次いで、リレーデバイス601は、ペンID、その固有のデバイスID 62、ページID及びクリック配置をページサーバに転送する。
【0147】
ページサーバは、ページIDによって識別されたページ記述5をロードし、クリックが、もしあればどの入力要素のゾーン58内で行われているかを決定する。関連する入力要素が、ハイパーリンク要素844であると仮定した場合、ページサーバは、関連付けられているアプリケーションID 64及びリンクID54を取得し、DNSを介して、アプリケーション71をホストするアプリケーションサーバのネットワークアドレスを決定する。
【0148】
ページサーバは、ペンID 61を使用して、登録サーバ11から対応するユーザーID 60を取得し、次いで、大域的に一意的なハイパーリンクリクエストID 52を割り当て、ハイパーリンクリクエスト934を構成する。ハイパーリンクリクエストクラスダイアグラムは、図26に示されている。ハイパーリンクリクエストは、要求側のユーザー及びリレーデバイスのIDを記録し、クリックされたハイパーリンクインスタンス862を識別する。次いで、ページサーバは、それ固有のサーバID 53、ハイパーリンクリクエストID、及びリンクIDをアプリケーションに送信する。
【0149】
アプリケーション側では、アプリケーション特有のロジックに従って応答ドキュメントを生成し、IDサーバ12からドキュメントID 51を取得する。次いで、アプリケーションは、ドキュメントを、ドキュメントの新規に割り当てられたIDに関わるページサーバ10bに、要求側ページサーバのID及びハイパーリンクリクエストIDと一緒に送信する。
【0150】
第2のページサーバは、ハイパーリンクリクエストID及びアプリケーションIDを第1のページサーバに送信して、対応するユーザーID及びデバイスID 62を取得する。第1のページサーバは、そのハイパーリンクリクエストが失効しているか、又は異なるアプリケーションに対するものである場合にそのリクエストを拒絶する。
【0151】
第2のページサーバは、ドキュメントインスタンス及びページID 50を割り当てて、新規に割り当てられたページIDをアプリケーションに返し、完全なドキュメントを自データベースに追加し、最後に、ページ記述を要求側リレーデバイスに送信する。
【0152】
ハイパーリンクインスタンスは、意味のあるトランザクションID 55を含むことができ、この場合、第1のページサーバは、アプリケーションに送信されるメッセージ中にトランザクションIDを含める。これにより、アプリケーションは、ハイパーリンクアクティブ化のためトランザクション特有のコンテキストを確立することができる。
【0153】
ハイパーリンクが、ユーザーエイリアスを必要とする、つまり、その「alias required」属性が設定された場合、第1のページサーバは、ペンID 61とハイパーリンクのアプリケーションID 64の両方を登録サーバ11に送信し、ペンIDに対応するユーザーIDだけでなくアプリケーションIDとユーザーIDに対応するエイリアスID 65も取得する。これは、アプリケーションに送信されるメッセージ中にエイリアスIDを含み、これにより、アプリケーションはハイパーリンクアクティブ化のためユーザー特有のコンテキストを確立することができる。
【0154】
6.3 フォーム
フォームは、印刷されたネットページを通じて関係する一組の入力を取り込むために使用される関連する入力フィールドの集合体を定めるものである。フォームにより、ユーザーは1つ又は複数のパラメータを、サーバ上で実行中のアプリケーションソフトウェアプログラムにサブミットすることができる。
【0155】
フォーム867は、ドキュメント階層内の一グループ要素838である。これは、最終的には一組の終端フィールド要素839を含む。フォームインスタンス868は、フォームの印刷インスタンスを表す。これは、フォームのフィールド要素845に対応する一組のフィールドインスタンス870からなる。それぞれのフィールドインスタンスは、関連付けられた値871を有し、その型は対応するフィールド要素の型に依存する。それぞれのフィールド値は、特定の印刷フォームインスタンスを通じて、つまり、1つ又は複数の印刷ネットページを通じて入力を記録する。フォームクラスダイアグラムは、図19に示されている。
【0156】
それぞれのフォームインスタンスは、そのフォームがアクティブであるか、フリーズしているか、サブミットされたか、無効であるか、又は失効しているかを示すステータス872を有する。フォームは、最初に印刷されるときにはアクティブである。フォームは、いったん署名されるか、又はフリーズ時間に達すると、フリーズする。フォームは、その複数のサブミットハイパーリンクのうちの1つがアクティブ化された後、ハイパーリンクにその「submit delta」属性が設定されていない限り、サブミットされる。フォームは、ユーザーがvoid form、reset form、又はduplicate formページコマンドを呼び出すと無効になる。フォームは、その指定された失効時間に達すると、つまり、フォームがアクティブである時間がフォームの指定寿命を超えた場合に、失効する。フォームがアクティブである場合、フォーム入力が許可される。アクティブでないフォームを介した入力は、代わりに、関連するページインスタンスのバックグラウンドフィールド833において取り込まれる。フォームがアクティブであるか、又はフリーズしている場合、フォームサブミットが許可される。フォームがアクティブ又はフリーズの状態でないときにフォームをサブミットしようとしても、拒絶され、代わりに、フォームステータスレポートを引き出す。
【0157】
それぞれのフォームインスタンスは、それから導出されるフォームインスタンスに関連付けられ(59で)、バージョン履歴を提供する。これにより、特定の期間のフォームの最新バージョンを除くすべてを検索から除外することができる。
【0158】
入力はすべて、デジタルインクとして取り込まれる。デジタルインク873は、一組のタイムスタンプ付きストロークグループ874からなり、それぞれは一組のスタイル付きストローク875からなる。それぞれのストロークは、一組のタイムスタンプ付きペン位置876からなり、それぞれの位置はさらにペンの配向及びペン先の力を含む。デジタルインククラスダイアグラムは、図20に示されている。
【0159】
フィールド要素845は、チェックボックスフィールド877、テキストフィールド878、描画フィールド879、又は署名フィールド880とすることができる。フィールド要素クラスダイアグラムは、図21に示されている。フィールドのゾーン58内に取り込まれるデジタルインクが、フィールドに割り当てられる。
【0160】
チェックボックスフィールドは、図22に示されているように、関連付けられたブール値881を有する。チェックボックスフィールドのゾーン内に取り込まれたマーク(チェックマーク、十字形、ストローク、塗りつぶしジグザグなど)によって、真値がフィールドの値に割り当てられる。
【0161】
テキストフィールドは、図23に示されているように、関連付けられたテキスト値882を有する。テキストフィールドのゾーン内に取り込まれたデジタルインクは、オンライン手書き認識により自動的にテキストに変換され、そのテキストがフィールドの値に割り当てられる。オンライン手書き認識は、よく理解されている(例えば、相互参照により本明細書に組み込まれているTappert、C.、C.Y.Suen並びにT.Wakahara、「The State of the Art in On−Line Handwriting Recognition」、IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence、Vol.12、No.8、1990年8月を参照のこと)。
【0162】
署名フィールドは、図24に示されているように、関連付けられたデジタル署名値883を有する。署名フィールドのゾーン内に取り込まれたデジタルインクは、ペンの所有者の識別に関して自動的に照合され、フィールドが一部となっているフォームのコンテンツのデジタル署名が生成され、フィールドの値に割り当てられる。デジタル署名は、そのフォームを所有するアプリケーションに特有のペンユーザーの秘密署名鍵を使用して生成される。オンライン署名照合はよく理解されている(例えば、相互参照により本明細書に組み込まれているPlamondon、R.及びG.Lorette、「Automatic Signature Verification and Writer Identification − The State of the Art」、Pattern Recognition、Vol.22、No.2、1989年を参照のこと)。
【0163】
フィールド要素は、「hidden」属性が設定されている場合に隠される。隠しフィールド要素は、ページ上に入力ゾーンを持たず、入力を受け付けない。これは、フィールドを含むフォームがサブミットされたときにフォームデータに含まれる関連付けられているフィールド値を持つことができる。
【0164】
削除を示す取り消し線などの「Editing」コマンドも、フォームフィールド内で認識可能である。
【0165】
手書き認識アルゴリズムは、「オフライン」(つまり、ペンマーキングのビットマップにのみアクセスできる)ではなく、「オンライン」(つまり、ペン移動の力学的プロセスにアクセスできる)で動作するので、改行なしでばらばらに書かれた文字を、書き込む人に依存する学習フェーズなしで比較的高い精度で認識できる。しかし、書き込む人に依存する手書きモデルは、時間の経過とともに自動的に生成され、必要ならば前もって生成されるようにできる。
【0166】
デジタルインクは、すでに述べたように、一連のストロークからなる。特定の要素のゾーン内で始まるストロークが、要素のデジタルインクストリームに付加され、解釈に備える。オブジェクトのデジタルインクストリームに付加されていないストロークは、バックグラウンドフィールドのデジタルインクストリームに付加される。
【0167】
バックグラウンドフィールド内に取り込まれたデジタルインクは、選択ジェスチャーとして解釈される。1つ又は複数のオブジェクトの周囲は、概して、外接オブジェクトの選択として解釈されるが、実際の解釈はアプリケーションによって異なる。
【0168】
表2は、ペンとネットページとのいくつかの典型的なインタラクションをまとめたものである。
【表2】
システムは、それぞれのペンに対する現在の選択を保持する。選択は、単純に、バックグラウンドフィールド内に取り込まれた一番最近のストロークからなる。選択は、必ず予測可能な挙動となるように不活動タイムアウトの後にクリアされる。
【0169】
すべてのフィールド内に取り込まれたローデジタルインクは、ネットページページサーバ上に保持され、適宜、フォームがアプリケーションにサブミットされるとフォームデータとともに送信される。これにより、アプリケーションは、手書きされたテキストの変換など、元の変換が疑わしい点がある場合にローデジタルインクの問い合わせを行うことができる。これは、例えば、いくつかのアプリケーション固有の一貫性チェックに通らないフォームに対するアプリケーションレベルの人間の介入を伴いうる。これの拡張として、フォームのバックグラウンド領域全体が、描画フィールドとして指定されうる。次いで、アプリケーションは、フォームの明示的フィールドの外にデジタルインクが存在するということに基づき、フォームを人間のオペレータに送ることを決定することができるが、ただし、ユーザーがこれらのフィールドの外で記入済みフィールドへの修正を示している可能性のあることを仮定する。
【0170】
図25は、ネットページに相対的なペン入力の取り扱いプロセスの流れ図を示している。このプロセスは、ペンからストロークを(884で)受け取ることと、ストローク内のページID 50が指しているページインスタンス830を(885で)識別することと、ページ記述5を(886で)取り出すことと、ストロークが交差するゾーン58のフォーマット済み要素839を(887で)識別することと、フォーマット済み要素がフィールド要素に対応しているかどうかを(888で)判定し、もしそうならば、受け取ったストロークをフィールド値871のデジタルインクに(892で)付加し、フィールドの累積したデジタルインクを(893で)解釈し、フィールドがハイパーリンク付きグループ866の一部であるかどうかを(894で)判定し、もしそうならば、関連付けられているハイパーリンクを(895で)アクティブ化することと、それとは別に、フォーマット済み要素がハイパーリンク要素に対応しているかどうかを(889で)判定し、もしそうならば、対応するハイパーリンクを(895で)アクティブ化することと、それとは別に、入力フィールド又はハイパーリンクが存在しない場合に、受け取ったストロークをバックグラウンドフィールド833のデジタルインクに(890で)付加することと、受け取ったストロークを、登録サーバによって保持されているような、現在のペンの現在の選択826に(891で)コピーすることとからなる。
【0171】
図25Aは、図25に示されているプロセスにおけるステップ893の詳細流れ図を示しており、フィールドの蓄積されたデジタルインクは、フィールドの種類に応じて解釈される。このプロセスは、フィールドがチェックボックスであるかどうかを(896で)判定し、またデジタルインクがチェックマークを表しているかどうかを(897で)判定し、もしそうならば、真値をフィールド値に(898で)割り当てることと、それとは別に、フィールドがテキストフィールドであるかどうかを(899で)判定し、もしそうならば、適切な登録サーバの助けを借りて、デジタルインクをコンピュータテキストに(900で)変換し、変換されたコンピュータテキストをフィールド値に(901で)割り当てることと、それとは別に、フィールドが署名フィールドであるかどうかを(902で)判定し、もしそうならば、適切な登録サーバの助けを借りて、デジタルインクをペンの所有者の署名として(903で)照合し、これもまた登録サーバの助けを借り、対応するアプリケーションに関係するペン所有者の秘密署名鍵を使用して、対応するフォームのコンテンツのデジタル署名を(904で)作成し、デジタル署名をフィールド値に(905で)割り当てることとからなる。
【0172】
7 ネットページペン及びプリンタの説明
7.1 ペンの機構
図8及び図9を参照すると、一般的に参照番号101で示されているペンは、ペンコンポーネントを装着するための内部空間104を定める壁103を有するプラスチック成形物の形態のハウジング102を備えている。ハウジング102上にモードセレクターボタン209が備えられている。ペン頂部105は、ハウジング102の一端106に回転可能なように装着されて動作する。半透明カバー107は、ハウジング102の対向端108に固定される。カバー107はまた、成形プラスチック製であり、ハウジング102内に装着されたLEDのステータスをユーザーが見られるようにするために半透明材料を使って形成されている。カバー107は、ハウジング102の端部108を実質的に囲んでいる主部109及び主部109から後ろへ突き出て、ハウジング102の壁103内に形成された対応する溝111内に嵌る突起部110を備える。無線アンテナ112は、ハウジング102内の突起部110の背後に装着される。カバー107上の開口113Aを囲むネジ山113は、対応するネジ山115を含む形で金属末端部114を受け入れるように配置されている。金属末端部114は、インクカートリッジを交換できるように取り外し可能である。
【0173】
さらに、カバー107内には、フレックスPCB 117上に3色ステータスLED 116が装着されている。アンテナ112も、フレックスPCB 117上に装着されている。ステータスLED 116は、全方位にわたってよく見えるようにペン101の頂部に装着される。
【0174】
ペンは、通常のマーキングインクペン及びノンマーキングスタイラスの両方として動作しうる。ペン先119を伴うインクペンカートリッジ118及びスタイラス先端121を伴うスタイラス120が、ハウジング102内に並べて装着される。インクカートリッジペン先119又はスタイラスペン先121のいずれかが、ペン頂部105を回転させることにより、金属末端部114の開放端122を通して前方に出されうる。それぞれのスライダーブロック123及び124は、それぞれ、インクカートリッジ118及びスタイラス120に装着される。回転可能なカム筒125は、動作時にペン頂部105に固定され、それと一緒に回転するように配列される。カム筒125は、カム筒の壁181内に溝の形でカム126を備える。スライダーブロック123及び124から突き出ているカム従動子127及び128は、カム溝126内に収まる。カム筒125が回転すると、スライダーブロック123又は124は、互いに相対的に移動し、金属末端部114内の孔122を通してペン先119又はスタイラスペン先121を突き出す。ペン101は3つの動作状態を有する。頂部105を90度ステップまで回すことにより、これら3つの状態は以下のようになる。
・スタイラス120のペン先121が出る。
・インクカートリッジ118のペン先119が出る。
・インクカートリッジ118のペン先119も、スタイラス120のペン先121も出ない。
【0175】
第2のフレックスPCB 129は、ハウジング102内に収まっている電子回路シャシ130上に装着される。第2のフレックスPCB 129は、表面上に投影する赤外線を送るための赤外線LED 131を装着する。イメージセンサー132は、表面から反射した放射線を受け取るために第2のフレックスPCB 129上に装着されるように構成されている。第2のフレックスPCB 129は、さらに、RF送信機及びRF受信機を備える無線周波数チップ133、並びにペン101の動作を制御するためのコントローラチップ134を装着する。光学系ブロック135(成型透明プラスチックで形成されている)は、カバー107内に配置され、赤外線ビームを表面上に投射し、イメージセンサー132上へのイメージを受け取る。電源線136は、第2のフレックスPCB 129上のコンポーネントを、カム筒125内に取り付けられている電池接点137に接続する。端子138は、電池接点137とカム筒125に接続する。3ボルト充電式電池139が、カム筒125内に配置され、電池接点と接触する。誘導充電コイル140は、第2のフレックスPCB 129の周りに装着されており、これで、誘導作用を介して電池139の充電を行うことができる。第2のフレックスPCB 129は、さらに、スタイラス120又はインクカートリッジ118のいずれかが書くために使用されたときにカム筒125内の変位を検出するための力センサー143を装着し、ペン先119又はスタイラスペン先121によって表面に加えられる力を測定することができるようにしている。力センサー143の例示的な配置については、第8節でさらに詳しく説明される。
【0176】
ゴム製グリップパッド141及び142は、ペン101の握りを補助するためにハウジング102の端部108に向けて備えられており、頂部105は、さらに、ペン101をポケットに留めるためのクリップ142も備える。
【0177】
7.2 ペンコントローラ
ペン101は、赤外線スペクトルで、ペン先の近くにある表面の一領域を撮像することにより、ペン先(スタイラスペン先121又はインクカートリッジペン先119)の位置を決定するように配列されている。これは、最も近い位置にある配置タグから配置データを記録し、また光学系135及びコントローラチップ134を使用して配置タブからペン先121又は119の距離を計算するように配列される。コントローラチップ134は、ペンの配向及び撮像されたタグ上で観察される遠近歪みからのペン先−タグ間距離を計算する。
【0178】
ペン101は、RFチップ133及びアンテナ112を使用して、デジタルインクデータ(機密保護のため暗号化され、効率よく伝送できるようにパッケージ化されている)をコンピューティングシステムに送信することができる。
【0179】
ペンがリレーデバイス601の範囲内にある場合、デジタルインクデータは、形成されるのと同時に送信される。ペン101が、範囲外に移動すると、デジタルインクデータは、ペン101内にバッファリングされ(ペン101の回路は、表面上の約12分間のペンの動作に対するデジタルインクデータを格納するように配置されたバッファを備える)、後から送信できる。
【0180】
参照により本明細書に内容が組み込まれている出願人の米国特許第6,870,966号明細書では、交換可能なインクカートリッジペン先及びスタイラスペン先を有しているペン101について説明されていた。これにより、また図27を参照すると、ペン101がコンピューティングシステムに接続すると、コントローラ134は、ペンID、ペン先ID 175、現在の絶対時間176、及びオフラインになる前にシステムから最後に行われた取得の絶対時間をシステムに通知する。ペンIDを使用することで、コンピューティングシステムは、複数のペンがコンピューティングシステム内で動作しているときにペンを識別することができる。
【0181】
ペン先IDを使用することにより、コンピューティングシステムはどのペン先(スタイラスペン先121又はインクカートリッジペン先119)が現在使用されているかを識別することができる。コンピューティングシステムは、どのペン先が使用されているかに応じてシステムのオペレーションを変えることができる。例えば、インクカートリッジペン先119が使用されている場合、表面に対しなされたインクマーキングによって即時フィードバックが返されるため、コンピューティングシステムはフィードバック出力の生成を遅らせることができる。スタイラスペン先121が使用されている場合、コンピューティングシステムは、即時フィードバック出力を生成することができる。
【0182】
ユーザーが前のストロークと次のストロークとの間でペン先119、121を変えることができるため、ペン101は、適宜、ストローク175についてペン先IDを記録する。これは、後のストロークに暗黙のうちに関連付けられているペン先IDとなる。
【0183】
特定のペン先特性を有するカートリッジは、ペン内で交換可能であってよい。ペンコントローラ134は、カートリッジのペン先ID 175を取得するためにカートリッジに問い合わせを行うことができる。ペン先ID 175は、ROM又はカートリッジ上のバーコードに格納されうる。コントローラ134は、変更するときには必ずシステムにペン先IDを通知する。これにより、システムは、ストローク175を発生するために使用されるペン先の特性を判定することができ、これにより、その後、ストロークそれ自体の特性を再現することができる。
【0184】
コントローラチップ134は、ペン101内の第2のフレックスPCB 129上に装着される。図10は、コントローラチップ134のアーキテクチャをより詳細に例示するブロック図である。図10は、さらに、RFチップ133、イメージセンサー132、3色ステータスLED 116、IR照明LED 131、及び力センサー143の図である。
【0185】
ペンコントローラチップ134は、制御用プロセッサ145を備える。バス146は、コントローラチップ134のコンポーネント間のデータのやり取りを可能にする。フラッシュメモリ147及び512KB DRAM 148も備える。アナログ/デジタルコンバータ149は、力センサー143からのアナログ信号をデジタル信号に変換するように構成されている。
【0186】
イメージセンサーインターフェース152は、イメージセンサー132とインターフェースをとる。トランシーバコントローラ153及びベースバンド回路154も、RF回路155並びにアンテナ112に接続されているRF共振回路及びインダクタ156を備えるRFチップ133とインターフェースをとるように含まれている。
【0187】
制御用プロセッサ145は、イメージセンサー132を介して表面からタグからの配置データを取り込んで復号化し、力センサー143を監視し、LED 116及び131を制御し、無線トランシーバ153を介して短距離無線通信を処理する。これは、中程度の性能(約40MHz)の汎用RISCプロセッサである。
【0188】
プロセッサ145、デジタルトランシーバコンポーネント(トランシーバコントローラ153及びベースバンド回路154)、イメージセンサーインターフェース152、フラッシュメモリ147、及び512KB DRAM 148は、単一コントローラASICとして集積化されている。アナログRFコンポーネント(RF回路155並びにRF共振回路及びインダクタ156)は、別のRFチップ内に用意される。
【0189】
イメージセンサーは、IRフィルタを備える215×215ピクセルのCCD(このようなセンサーは、Matsushita Electronic Corporation製であり、参照により本明細書に組み込まれているItakura、K T Nobusada、N Okusenya、R Nagayoshi、及びM Ozakiの論文「A 1mm 50k−Pixel IT CCD Image Sensor for Miniature Camera System」、IEEE Transactions on Electronic Devices、Vol.47、No.1、2000年1月において説明されている)である。
【0190】
コントローラASIC 134は、ペン101が表面と接触していないときに一定の不活動期間の後に静止状態に入る。これは、力センサー143を監視する専用回路150を組み込んでおり、ペンダウンイベントが発生するとパワーマネージャ151を介してコントローラ134を目覚めさせる。
【0191】
無線トランシーバは、コードレスホンによって通常使用される免許不要の900MHz帯で、又はそれとは別に免許不要の2.4GHz工業科学医療(ISM)帯で通信し、周波数ホッピング及び衝突検出を用いて、干渉のない通信を可能にする。
【0192】
代替えの一実施形態では、ペンは、基地局又はネットページプリンタとの短距離通信用のIrDA(Infrared Data Association(赤外線通信協会))インターフェースを組み込んでいる。
【0193】
他の実施形態では、ペン101は、ペン101の軸の法平面内に取り付けられている一対の直交加速度計を備える。加速度計190は、図9及び10に点線の輪郭で示されている。
【0194】
加速度計を備えることにより、ペン101のこの実施形態は、表面配置タグを参照せずに運動を感知することができ、これにより、低いレートで配置タグをサンプリングすることができる。次いで、それぞれの配置タグIDは、表面上の位置ではなく、注目するオブジェクトを識別することができる。例えば、オブジェクトがユーザーインターフェース入力要素(例えば、コマンドボタン)である場合、入力要素の領域内にあるそれぞれの配置タグのタグIDで、入力要素を直接識別することができる。
【0195】
x及びy方向のそれぞれにおいて加速度計によって測定される加速度は、瞬間速度及び位置を出力するために時間に関して積分される。
【0196】
ストロークの開始位置は、知られていないため、ストローク内の相対的位置のみが計算される。位置積分により感知された加速度の誤差が累積するけれども、加速度計は、典型的には高分解能であり、誤差が累積するストロークの持続時間は短い。
【0197】
8 力センサー
ペンのペン先に接続するのに適している力センサーは、図28に例示されているように、1つの固定された板と少なくとも1つのバネに取り付けられている1つの移動可能な板とを有する平行板キャパシタである。外力がバネを圧縮し、これらの板の間の距離を変化させ、したがって静電容量を変化させる。静電容量の変化を測定することにより、外力の量を知ることができる。
【0198】
図28では、板の分離距離をバランスよく変えるのを補助するために、2つのバネが示されているが、1つのバネ又は2つよりも多いバネを使用することもできる。さらに、図28では、単にわかりやすくするために、バネは固定された板と移動可能な板との間に配置されているように示されており、(1つ又は複数の)バネは、これらの板に関して外部配置されうる。さらに、当業者であれば、他の平行キャパシタ配列、つまり他の機械的配列も、力センサーに利用できることを理解するであろう。また、当業者であれば、この例示的な力センサーをネットページシステム以外の状況及び環境に応用できることを理解するであろう。
【0199】
図28のこのような平行板キャパシタの可変静電容量は、
【数1】
により近似できるが、ただし、式中、K1は、与えられたセンサーに対する定数であり、dは、板の間の距離である。距離dは、バネへの外力fによって制御され、一配列では、圧縮し、外力に比例して距離dを縮めるバネに加えられる力を測定する。次いで、
【数2】
であるが、ただし、式中、K2は、外力なしの場合の板の間の初期距離であり、K3は、バネ定数に関係する。次いで、
【数3】
となる。
【0200】
静電容量Csenを測定し、それにより、外力fを決定する一方法では、デルタ/シグマ変調装置又はコンバータなどの容量センサー回路を使用する。従来のデルタ/シグマコンバータは、図29に例示されており、本発明の一実施形態によるデルタ/シグマ変調装置の第1の実施例は、図30に例示されている。両方の事例は、簡素化された形式で示されている、つまり、スイッチドキャパシタ回路のスイッチは、示されていない。これは、さらに、以下で説明されている他の回路図についても同様である。
【0201】
図29の回路では、励起信号Vexが平行板キャパシタCsenに印加され、信号bsは、平均値Voutがコンバータの出力を表すビットストリームである。デシメーションフィルタは、単一(又は多)ビット信号bsをコンバータの出力である多ビットデジタル信号に変換するために使用される。
【0202】
回路が平衡状態(つまり、Csen=0)である場合、デルタ/シグマコンバータは、そのビットストリームのデューティサイクルを50:50となるように調節する。積分器intの利得は、出力を直線的範囲に残せるフィードバックキャパシタCfにより制御される。キャパシタCsenの静電容量変化に対する感度は、基準キャパシタCrefによって制御される。コンパレータの方形波励起信号Vex及び出力Voutが同じ電圧振幅を有する場合、変換利得は、振幅と無関係になる。次いで、コンバータ出力は、
【数4】
として表すことができ、ただし、式中、Kdigは、出力のところにあるデシメーションフィルタの利得である。そこで、
【数5】
となるが、ただし、式中、K4=K2K3及びK5=K1K3Kdig/Crefである。
【0203】
次いで、Vdigからの測定された力fmeasの計算は、除算と減算を必要とする。
【0204】
本発明の実施形態では、この計算は、図30に例示されているように、平行板キャパシタCsenをデルタ/シグマコンバータのフィードバック経路内に置くことにより回避される。特に、平行板キャパシタCsen及び基準キャパシタCrefの位置は、キャパシタCsenの板のうちの1つは、コンバータの出力に直接接続され、基準キャパシタCrefは、コンバータの入力のところに置かれるように、従来のコンバータ回路における位置から逆にされている。
【0205】
次に、Vdigを単極信号として生成するコンバータの出力のところにデシメーションフィルタを使用することで、ビットストリームを反転することができ、
【数6】
となるように減算を行うと、
(式7) fmeas=K6Vdig
となるが、ただし、式中、
【数7】
である。
【0206】
f=0のときに成り立つCref=Csenminの場合、
【数8】
となる。
【0207】
式4及び6からわかるように、従来のコンバータ構成では、Cに比例する出力を発生するが、本発明の構成では、距離に比例する1/Cに比例する出力を発生する。したがって、本発明の構成では、従来の構成に比べて小さな距離変化に対してより大きな静電容量変化を測定することができる。その結果、本発明の力センサーは、必要な電力を最小限に抑えつつ感知デバイスのペン先に加わる手書きの力などの比較的軽い力を正確に感知することができる。
【0208】
比較例の結果は、図31及び33に示されている。この実施例では、両方の種類のコンバータが同じ力及び出力符号範囲を取り扱うように利得が調整されている10ビットコンバータが使用される。図31は、Cに比例するコンバータについて非線形出力符号対外力の関係を示しており、図32は、Cに比例するコンバータについて量子化による誤差が力の減少とともに増大するが、誤差は1/Cコンバータについては一定していることを示している。つまり、Cに比例する構成では、(ネットページペンアプリケーションでは精度に関して最も重要なものである)範囲の力の低い側で分解能が失われる。
【0209】
本発明の上述の構成は、1次のシグマ/デルタ容量センサーである。しかし、高次のセンサーも可能であり、本発明の範囲内にある。例えば、可能な2次シグマ/デルタ容量センサーは、図33に示されている。
【0210】
2次センサーでは、図33に例示されているようなキャパシタCcanの追加を通じて力のゼロ調整を使用し、これにより、キャパシタCsen上の寄生容量を相殺できる。この構成では、1次構成に比べて最適化できるパラメータが増えている。入力信号に対するコンバータのローパス応答は、より明瞭になり、カットオフ周波数は、ペン先を上げたときに、Csenに比例し、つまりCsenの最小値をとり、コンバータが大半のフィルタ処理を行う。
【0211】
1次(又は2次)構成のさらなる改善については、図34及び35に関して説明されている。従来の回路は、図34に例示されており、そこでは相関二重サンプリング(CDS)がオフセットの低減のため適用されている。Csenが増大してゆくと、従来のデータ/シグマコンバータは、信号bsで50%のデューティサイクルを有する平衡状態に達する。したがって、変換範囲の半分(0%から50%)しか利用可能でない。
【0212】
他方で、図35に例示されている本発明の他の構成では、CDSが再び適用されるが、キャパシタCsenの信号bsは、0(ゼロ)で置き換えられ、コンバータの平衡状態を100%デューティサイクルに変える。したがって、変換範囲全体が利用可能になる。
【0213】
特に、キャパシタCrefは、Csenが最小予測値にあるときにシグマ/デルタコンバータが飽和に近くなるように調整されなければならないオフセットを設定するために使用される。キャパシタCsenでゼロ入力信号とともに積分器intでCDSが使用される場合、キャパシタCsenに印加されるビットストリームは、コンバータの実質的に全範囲を使用できるように変更される。
【0214】
CDSは、図36に示されているように、サンプリングと評価の2つのフェーズで動作し、積分器intへの入力(キャパシタCsenを通じて)は、Vint=Veval−Vsampである。信号bsが値0及び1をとることができること、並びに回路の平均Vint=0が平衡することが仮定される。Vintは、図34の従来の回路については表3、図35のオフセット回路については表4において計算される。
【表3】
したがって、平衡に関して、信号bsは、平均Vint=0を維持するためにデューティサイクル50%を必要とする。
【表4】
したがって、平衡に関して、平均Vint=0を維持するために信号bs=1(時間の100%)である。
【0215】
8.1 挙動モデリング
ネットページシステムの力センサーのいくつかの要件を以下に示す。
・ペンダウン遅延時間<1.5ms
・最終サンプリングレート50Hzから150Hz
・10ビットを単調に出力する
・消費電力<100uW(55uA@1.8V)
・動作温度範囲−10℃から55℃
・6グラムでペンダウン検出
・精度<20%
これらの要件を考慮して、VHDLモデリングが実行された。
【0216】
8.1.1 1次のVHDL
1次シグマ/デルタ容量センサーについて書かれたVHDLモデルでは、本発明の、距離に比例する(1/C)構成を調べる。
【0217】
テストベンチでは、dを5距離単位で直線的に段階的に増分して、式1を計算した(最初の値を除き、0ではなく0.5とした)。このシミュレーションの結果、Cf=8pF及びCref=0.49pFとしてCsenに応じて一組の直線的ステップが得られた。積分器intの出力の振幅は、キャパシタCsenによって制御され、Csen=20pFのときに飽和する。
【0218】
出力電圧は、Cref/Csen(例えば、0.08pF/0.1pF=0.8V)で与えられる。この構成では、オフセットを設定することしかできない(フィードバックキャパシタCfは積分器利得を制御するだけである)。利得は、キャパシタCsenと平行に他のキャパシタを接続することにより低減されうるが、これにより、非線形性が持ち込まれる。
【0219】
フィードバックキャパシタCfにより、積分器のダイナミックレンジを最適化することができる。クリッピングが許容される場合に積分器が適切に機能すると、クリッピングがCsenの最大値で生じるようにCfに対する最小値を使用すべきである。
【0220】
モードを制御する選択ビットで、両方の構成を実装することも可能である。機械的公差があるため、実用的なセンサーは、オフセットと利得を設定するために2点較正を必要とする。
【0221】
8.1.2 2次のVHDL
すでに説明されているように、図33の2次構成では、1次設計に比べて最適化できるパラメータが増えている。
【0222】
積分器int1の出力のdcレベルは、比Cbs2/Cin2によって制御できる。これにより、クリッピングなしでできる限り高くなければならない積分器int1の利得の設定に自由度をある程度持たせることができる。ペンアップではクリッピングが生じないことが重要であり、さもなければ、ペンダウン閾値のマージンが減少する。Cin1は、コンバータがクリッピングなしで変換範囲の下限に近くなるように設定される。ビットストリームにおけるデューティサイクルが低すぎると、結果として、積分器int2に非常に大きな偏移が生じる。常にADCの範囲内に留まることを保証するためにセンサーのゼロ力静電容量の長期間ドリフトに関してある程度の斟酌が必要である。
【0223】
このモデルでは、センサーは、キャパシタCsenの板距離が50umから150umの範囲内にある場合に3:1の静電容量変化を生じると仮定される。50umでの静電容量は、1pFであった。次いで、静電容量(pF単位)は、d(um)を板距離として、
【数9】
で与えられる。dの値は、
【数10】
で与えられる。次いで、
【数11】
となる。
【0224】
Ccanの値は、センサー上の寄生容量を相殺するように調整される。Ccanの量子化による残っている誤差が、結果として利得誤差となる。他方、必要な利得精度は、<20%である。Ccanの分解能が、100fFであり、残っているオフセットがCint1で除外された場合、コンバータは、500gではなく455gを読み取る、つまり−9%の利得誤差(ソフトウェアで補正可能)となるであろう。
【0225】
3つのデシメータを試したが、通常は、ステップ応答が整定に約3サンプルを要する最適なノイズフィルタリングが行われるように、3次デシメータを2次コンバータとともに使用すべきである。<2msのペンダウン検出時間要件を満たすために、出力サンプルは、1.5kHzに設定された。42のデシメーション係数は、64kHzの入力サンプリングクロックで使用された。1次デシメータでは、このデシメーション係数で、必要な10ビットの分解能は得られない。2次デシメータでは、10.8ビットの分解能が得られ、平均すると、1.33msで1サンプル分早くペンダウンを検出することが可能であるが、確度は落ちる。
【0226】
この実装では、CDSを使用して、OTAオフセットを相殺し、最も重要なのは積分器int1のものである。CDSは、さらに、キャパシタCsen及びキャパシタCin1に由来する1/fノイズも減衰させるべきである。しかし、チョッピングされたCDS信号を渡さなければならないので、積分器1の入力にアンチエイリアスフィルタを加えた場合に問題が生じる。3つの正規化されたカットオフであっても、ADC利得は約5%減少する。さらに、入力における不要信号は、サンプリング周波数の高調波で生じた場合にdcにエイリアスされる。これは、ふつうと違うスイッチドキャパシタ回路であるが、それは、スイッチドキャパシタの1つが外部にあり、アンチエイリアスフィルタがスイッチドキャパシタ回路の内部にしか配置されえないためである。非CDS実装についても同じことが言え、アンチエイリアスフィルタによって、積分器入力電流を1/2クロックサイクル以内に整定させなければならない。したがって、このフィルタの機能は、サンプリング周波数よりも十分に高いrf信号を減衰させることのみとしてよい。ナイキスト周波数のすぐ上の信号を減衰させるためには使用できない。
【0227】
8.1.3 デジタル出力の計算
この節では、CDC出力符号を計算する式の解析表示を与える。
【0228】
8.1.3.1 デシメータ利得
コンバータの両方のモードについて同じである、デシメータ利得は、
【数12】
で与えられるが、ただし、式中、dec=デシメーション係数、n=デシメータの次数、scale=デシメータ出力における倍率であり、2の累乗でなければならない。デジタル出力は、10ビットであり、scaleは、有用なデータをこれらの10ビット内に収めるように調整されなければならない(又は、これが許容可能な場合に何らかのクリッピングを行えるようにする)。典型的には、シグマ/デルタCDCは、デシメータ出力がフルスケールに達しないように内部クリッピングを回避するためにフルスケールの10%から90%までの範囲内でのみ動作すべきである。
【0229】
例えば、Fin=64kHz及びFout=1.5kHz、dec=42及びn=3とする。これにより、最大出力423=74088が得られるが、最大許容可能出力符号は、1023である。倍率=128の場合、最大出力は、579となるが、<1023である。しかし、最大アナログ信号範囲が、フルスケールの最大80%までであると仮定すると、倍率は、64に設定することができ、74088*0.8/64=926<1024(範囲)となり、デジタル範囲を使用しやすくなる。この場合、Kdig=74088/64=1157.625である。
【0230】
CDC範囲を出力範囲の中心に置くために、デジタルオフセットが行われ、したがって、使用されないCDC範囲の下側10%は、除去されうる。
【0231】
8.1.3.2 Cに比例
2次に対して、
【数13】
が適用される。
【0232】
Cin1は、変換利得を設定し、Ccanは、Csenの範囲を利用可能な変換範囲内の中心に置くことができる。Vdigは、スケーリングされオフセットされたセンサー容量を表す。外側括弧内の項は、0.1から0.9までの範囲内になければならない。
【0233】
力は、式12から
【数14】
として計算され、力に関するCsenは、
【数15】
によって与えられる。
【0234】
式14でCsenを置き換え、オフセットがないと仮定し、K1=K5及びK2=K4Kdig/Cin1とすると、
【数16】
となる。
【0235】
8.1.3.3 1/Cに比例
2次に対して、
【数17】
が適用される。
【0236】
外側括弧内の項は、0.1から0.9までの範囲内になければならない。力は、(オフセットがないものと仮定して)
(式19) f=K3Vdig
から計算される。
【0237】
K3は、
【数18】
によって与えられるCDCの勾配であり、fmin(0g)は最小の力、fmax(500g)は最大の力である。
【0238】
式17において式16からのCsenを置き換え、式20中のVdigを置き換えると、
【数19】
が得られる。
【0239】
例えば、Cin1=Csensmin=1/3pfと仮定すると、K3=250×64×3/74088=0.64788である。実際には、CDCがクリップしないように、Cin1<Csensminであることに留意されたい。
【0240】
Cin1の値に誤差があるため、結果として、CDC出力にオフセット誤差と利得誤差の両方が現れる。式12を修正して、Cin1の値の誤差eを許すと、
【数20】
が得られる。
【0241】
次いで、近似式
【数21】
を使用すると
【数22】
となり、勾配誤差は、
【数23】
によって与えられるか、又は
【数24】
のようにパーセント誤差として表される。
【0242】
e=1fFならば、利得誤差は、Cin1=1/3pFに対して0.3%である。
【0243】
8.1.4 MATLAB
図37及び38にプロットされているグラフは、第8.1.3節の式から導き出されたもので、指定されたキャパシタ値誤差による測定された力誤差を示している。
【0244】
シミュレーションでは、利得とオフセットに対し2点較正を仮定し、その後、2fFのステップで最大+10pFまでの誤差がCin1に追加される。
【0245】
8.1.5 ノイズ分析
ペン先は、100uまで移動することが許されており、したがって、50uから150uまでの範囲が実用的である。センサー静電容量は、0.333pFから1pFまでの範囲内にあると予想される。次いで、Cref=0.333pFとすると、出力は、1Vから0.333Vまでの範囲内となる(全範囲の変更形態では−0.34V)。フルスケールに到達できないことによるS/N損失は、20*log(2/3)=3.5dBにすぎない。
【0246】
ADCの増分利得は、Csen=0.333pFのときに−3V/pf、Csen=1pFのときに−1V/pfである。
【0247】
主ノイズ源は、センサーキャパシタであり、rmsノイズ電圧は、
【数25】
で与えられるが、ただし、式中、k=1.38×10−23、T=300、Csen=0.333pFであり、したがってVn=117uVrmsである。
【0248】
このノイズすべてが、シグマ/デルタコンバータのパスバンドに折り込まれると仮定すると、デシメーションフィルタによって一定割合のノイズが除去される。このノイズは、入力のところに存在するので、ノイズ整形は行われず、またフィルタ出力における信号対雑音比の改善は、OSRをオーバーサンプリング比として、10log(OSR)によって与えられる。クロック周波数が64kHz、出力サンプルレートが1.3kHzの場合、OSR=49.23とすると、16.92dBの改善となる。
【0249】
Csenから出力へのコンバータの電圧利得は、挙動モデルにおいてチェックされた。Csen=0.333pFについては、利得は0.5である(フルスケール=0から+1Vの場合)。したがって、キャパシタによって発生するノイズは、出力では6dB低減される。しかし、Crefは、さらに0.333pFであるので等しい量のノイズをもたらし、出力のところでノイズを3dBだけ増やす。例示的なコンバータは、低周波キャパシタノイズを低減するCDSを実装することに留意されたい。
【0250】
プレデシメーションフィルタ出力ノイズは、Csen=0.333pF=117uV/2=58.5uVrms、出力信号=1Vの場合である。Csen=1pF=0.333Vで出力する。S/N=20log((1−0.333)/58.5uV)=81.1dBである。デシメーションフィルタの後、S/N=81.1+16.92=98dB又は16.3ENOBである。コンバータ出力は、ペンダウンを検出するために閾値化される必要があり、ピークノイズを考慮することが適している。ノイズのpk対rms比を13dBと仮定すると、コンバータの分解能は、14.2ENOBまで下がることになる。
【0251】
Csen=0.333pFの場合、全体的なS/Nは、シグマ/デルタコンバータのOSRによって、kT/Cノイズではなく約70dB(11.6ENOB)に制限されることに留意されたい。
【0252】
8.2 設計基準
回路シミュレーションは、容量性インターフェースを実装するための基準のいくつかを示している。
【0253】
8.2.1 入力インピーダンス
センサーに接続されているステージは、このノードでグラウンドへの寄生容量の効果を解消することができなければならない。入力抵抗は、1/gmで与えられ、Cpar/gmの時定数を持つRCフィルタを形成する。この時定数は、積分器の整定時間に支配的であり、第1のステージの最小gm要件を決定するために使用されうる。電圧ステップ応答は、
【数26】
によって与えられる。すると、
(式29) gmmin=−2CparFsln(1−V)
となる。
【0254】
C=50pF及びFs=64kHzの場合の1%の最終誤差について、gmmin=29uMhoとなる。第1ステージの消費電力は、サンプリングレート及びCparに比例することに留意されたい。
【0255】
センサーを第1の積分器に接続することが可能であるけれども、寄生容量に打ち勝つために低入力インピーダンスにする要件では、第1の積分器中に大電流を必要とする。バッファ及びシグマ/デルタコンバータを独立に最適化できる緩衝増幅器を使用するのはかなりよいことである。第1の積分器の電流は、実質的に低減され、全体的な消費電力は、バッファを追加することにより低減されうる。
【0256】
グラウンドへの寄生容量が存在する場合、バッファのgmによって回路の整定時間が実質的に制御され、開ループ電圧利得によって精度が決まる。gmとRoとの間には何らかのトレードオフがありえ、同じ低周波Avを維持する。よいターゲットは、Av=80dBとなるようにgm=100uMho及びRo=100MΩである。
【0257】
利得増大折り返しカスコードでは、4.3uのテール電流で動作する場合に(1uAが基準回路に入る)gm=55uMho及びRo=140Mとし、Av=78dBを得る。センサーからの入力はシングルエンドであるため、電力を節約するシングルエンド出力OTAのみが必要である。次いで、非反転入力がvcmに直結され、これにより、入力インピーダンスが最低となることを保証できる。
【0258】
8.2.2 INNからVCMへの接続
第1の積分器が、容量センサーと直接インターフェースするために使用される場合、未使用の差動入力をコモンモード電圧vcmに直接接続して、仮想アース加算ノードでの抵抗を最低にすることが望ましい。しかし、OTAにおけるオフセットのため、この接続は、サンプリングフェーズで格納され、評価フェーズで相殺されるように、キャパシタとなされなければならない。
【0259】
8.2.3 CAPDACユニットキャパシタ
20fFでは小さすぎる場合がある。慎重なレイアウト及び良好な抽出を必要とする。
【0260】
8.2.4 マルチプレクサ
マルチプレクサによっては、積分器の加算点に直接接続されるものもある。この場合、ボディソースダイオード及びサブスレッショルド電流による漏れは、最小限度に抑えられなければならない。十分な絶縁を得るために、capdacと変調装置入力マルチプレクサの両方にT字型スイッチが使用されうる。
【0261】
T字型スイッチが使用される場合、T字型スイッチの中点は、vcmにバイアスされなければならず、給電側の1つにバイアスされてはならない。これにより、サブスレッショルド電流は、マルチプレクサの出力ノードがvcmでないときにのみ流れることが保証される。積分器加算点は、vcmでバイアスされ、これにより、サブスレッショルド漏れ電流が最小になる。
【0262】
励起信号を供給するフロントエンドマルチプレクサは、深さが3レベルであり、よりロジック度の高い1レベルの多重化で置き換えることが可能である。
【0263】
8.2.5 センサーノードの漏れ電流
センサーノードへのDC漏れ電流は、回路の精度を落とす。アナログ入力パッドは、最大のソースになると予想される。1nAの漏れ電流の場合、積分器1ステップ当たりの誤差はlnA*15.625us/3pF=5.2mVとなる。両方のモードにおいて、この電流により、結果として、ペンアップの力誤差は20gとなる。これは、励起信号及び変調装置入力をチョッピングすることにより解決できる。チョッピング信号は、デシメーションフィルタの出力期間内に偶数個のサイクルを含んでいなければならない。この漏れ電流が変換範囲の一部を使い切るので、コンバータがその動作範囲内に収まっていることを保証されなければならない。コンバータが飽和(これはペンアップ時に発生する可能性が最も高い)しないことを前提として、シグマ/デルタ変調装置内のフィードバックにより、範囲損失が最小限に抑えられる。
【0264】
パッド漏れ電流は、最大50nAまでであると予想されうる。NMOS保護デバイスとPMOS保護デバイスの両方を使用し、漏れ電流のすべてがコンバータに流れ込むことのないようにする必要がある。
【0265】
図39は、1サイクルおきに得られる補正された結果による50nAの漏れ電流の相殺を示している。
【0266】
チョップ信号は、結果として大きな誤差を生じるので2相クロック発生器の入力クロックが変化したときでなく、ph0と同時に変化すべきである。最良の解決策は、ph0でクロック動作し、デシメーションフィルタと同じクロックで動作するプログラム可能な分周器からイネーブル信号をとる、イネーブルされるトグル機能を用意することである。
【0267】
8.2.6 センサーの並列抵抗
センサーの並列抵抗は、チョッピングでは補正されえず、時間依存の電荷注入を行う。これは、センサーと並列につないだキャパシタのように見えるが、ただし、このキャパシタの値はクロック周波数に依存する。漏れ電流が50nAである、値1.8/(2*50nA)=18MΩの抵抗器をとると、図40は、並列抵抗器なしで、数サイクル後にビットパターンが基準からずれることを示している。
【0268】
同等の静電容量は、
【数27】
によって与えられるが、ただし、式中、Fsはサンプリング周波数であり、Rpは並列抵抗である。2の係数が2つで4の係数となる。第1は、漏れ電流の積分は、サイクル時間の半分である積分器の評価フェーズでのみ実行されることである。第2に、CDSのため、キャパシタに対するクロックの両方のフェーズで電荷が考慮される。事実上、センサーキャパシタは、vddの電圧振幅に従うが、抵抗器は、vdd/2にのみ従う。これは、仮想アース点が、vdd/2に保持され、抵抗器は0又はvddで駆動されるからである。Fs=64kHz及びRp=1GΩでは、Ceq=3.9fFとなる。
【0269】
これは、アナログデバイスのデータシートによって確認され、これで、少なくとも1GΩは8fF又は6gmの静電容量変化に相当すると推論する(Fs=32kHzの場合)。
【0270】
ペンダウン閾値が、12gmに設定された場合、静電容量変化は、5.42fFとなる。次いで、Rpによる誤差が10%又は0.54fFであることが許容された場合、Rpは>7.2GΩである必要がある。Rpは較正されうるため、したがって、重要になるのはRpの変化である。
【0271】
Ceqは、サンプリング周波数依存キャパシタであるため、2つの異なる周波数で測定を行い、現実の寄生容量から絶縁することも可能であろう。可能な最も高いサンプリング周波数を使用すると、その効果は最小に抑えられるが、これは電力消費を最小にしようとすることに反する。
【0272】
8.2.7 センサーの直列抵抗
これは、本発明の構成について考慮される場合のある設計基準のうちの他方の基準である。
【0273】
8.2.8 ドライバの寄生容量
ドライバ出力は、クロックサイクルの半分の期間内に整定しなければならない。式
(式31) Imin=2FsCparVd
において定電流駆動であると仮定すると、Fs=64kHzについて、Cpar=50pF、Vd=1.8V、Imin=11.5uAである。
抵抗性の駆動であると仮定すると、
【数28】
である。
【0274】
センサー並列寄生容量を相殺するために、駆動波形は、高い精度で整定する必要がある。この静電容量が2pFのときに誤差が1%だと、相殺誤差は20fFとなる。シミュレーションから、最大10KΩまでのソース抵抗が電圧基準において許容されなければならないことがわかり、これによりスイッチ内の抵抗を追加できる。
【0275】
8.2.9 RFフィルタ
これは、アンチエイリアシングフィルタではない。スイッチドキャパシタ回路内部にあるため、そのカットオフ周波数は、整定時間に直接影響を及ぼす。近似として、カットオフ周波数は、約10Fsでなければならない。カットオフ及び最高サンプリング周波数が1MHz固定である場合、これは、10MHzに設定されるべきである。
【0276】
8.2.10 節電
クロックバイアスを使用することにより、出力が入力に接続されているときに低い電圧利得が許容可能なので、積分器のサンプルフェーズ(クロックph0=1)において電流を節約することが可能である。このサンプルフェーズで、電流消費量を10%まで削減することが可能である。
【0277】
コモンモード増幅器は、バイアス電流が変化する毎にその出力を適応させなければならなかったので、コモンモード増幅器には問題があった。図41に例示されているように、出力におけるコモンモード電圧は、小電流のときに600mVまで低下し、それが回復するには時間が不十分であった。
【0278】
元のOTAは、OTAの出力分岐中のバイアス電流をオフセットするコモンモード増幅器に依存していた。オフセットは、バイアス電流に依存し、したがって、バイアス電流が切り替えられる毎に補正が必要であった。これは、コモンモード増幅器をプッシュプルにし、主OTAの出力分岐中の電流のバランスをとることにより解決された。したがって、シグマ/デルタ変調装置は、低電流で非常に性能が高い。
【表5】
表5は、2クロック位相における電流消費及び64kHzクロックによる平均を示している。緩衝増幅器にはメリットがないため、クロックバイアス機能は、シグマ/デルタコンバータにのみ適用された。バンドギャップ基準及び低消費電力発振器ではさらに電流を必要とする。
【0279】
8.2.11 PSRR
DCでは、インターフェースの式中で相殺されるので、回路の動作範囲以外ではvddへの依存はない。しかし、フィードバックループは、前のクロックサイクルから次のクロックサイクルまでの間の変動を相殺できないけれども、ある種の平均化がデシメーションフィルタ内で生じる可能性がある。これは、VHDLモデルにおいて見られるが、電源電圧除去の量は、センサー静電容量とともに変化するので簡単には推定できない。
【0280】
解決策は、CDCにおける基準レベルを安定化させることである。これにより、基準レベルはそれぞれ電源から400mV程度離れていなければならないため、CDCのSNRがわずかに減少する。
【0281】
コモンモード電圧vcmも、安定化される必要があり、VDDから直接的に導かれない。vcmは、VDDmin又は約800mVで最適な動作をするように設定されなければならない。
【0282】
基準及びvcm電圧に対するレジスタ制御が、行われるべきである。
【0283】
アナログデバイスのデータシートに、DC、50Hz及び60Hz以外の電源電圧除去に関する情報は載っていない。AD7745ボードの測定が実行されうる。
【0284】
8.2.12 積分器のリセット
主にシミュレーションのためである。追加の手間を省くため、すべてのスイッチは閉じられる。
【0285】
8.2.13 加算点
1.8Vの入力振幅では、図42に示されている加算点電圧は、OTAが応答する前に0.9V±1.8Vに瞬時に到達しうる。この結果、クリッピング及び電荷減少が生じ、積分器の出力に大きな誤差が発生する。これは、駆動波形の立ち上がり及び立ち下がり時間のいずれかを延ばすことにより解決されうるが、これは、低インピーダンススルーレート制限ドライバが必要になるため望ましいものではない。それとは別に、キャパシタを加算点のところでグラウンドに追加することができる。これが、入力キャパシタに等しい場合、電圧振幅は、0.9V±0.9Vに制限されるであろう。これは、パッド及びグラウンドの寄生容量によって与えられる。
【0286】
Cref及びCfから出力への直接経路が、そこにグリッチが現れる理由となっている。
【0287】
8.2.14 INNからVCMへの接続
バッファ加算点における平均電圧は、センサーが正常に動作している場合にvcmでなければならない。板と板の間にショートが発生する場合、電圧はGNDとVDDとの間でトグルする。これは、vcm±Vtの基準レベルを使用するコンパレータと単純なローパスフィルタを組み合わせたものにより検出されうる。これは、さらに、GND又はVDDへの感知入力のショートをも検出できる。
【0288】
又は、単純に、加算点がGND+Vtより低くなるか、又はVDD−Vtよりも高くなる場合を検出する。電流消費を最小にする。
【0289】
8.3 センサーの要件
図43は、センサーの要件を決定するためのセンサー等価回路を例示している。
【0290】
以下の表6において、一度に1つだけ機能低下が適用される。
【表6】
8.4 較正手順
必要なデシメーション係数及び対応するデシメータシフトが、最初に設定されなければならない。ADCオフセットは、0に設定されなければならない。動作モードは両方とも、利得とオフセット誤差を取り出すために2点較正を必要とする。500gmの1つの較正済みの力のみが適用される必要がある。
【0291】
CDCの利得は、絶対キャパシタ値に依存し、プロセス変動の影響を受ける(典型的には、MiMキャパシタの±10%)。オフセットは、センサー寄生容量Cpar及びセンサー機械的許容誤差によって決まる。また、Rparは、有意な場合があり、適切な設計で最大化されなければならない。動的較正が使用される場合、コンバータが通常の動作範囲内に残るようにCcanのみを使用してRparをオフセットすべきである。
【0292】
8.4.1 1/Cモード
以下の手順要素が使用される。
【0293】
公称ゼロ力静電容量Csenminが知られていなければならず、これは、力センサーの設計パラメータである。
【0294】
Cin1は、コンバータが、ゼロ力条件の下、フルスケールの10%で動作するように設定されなければならない。Csensminが与えられたときに、この値を計算できる。式18を使用し、Cparが相殺されていると仮定すると、Cin1=0.9Csensminである。例えば、Csensmin=0.3333pFであれば、Cin1=0.3pFと設定する。
【0295】
コンバータの読み取りがスケールの10%になるまでCcanを調整してCparを相殺する。Cparの標準値が知られ、これにより、コンバータは飽和から抜け出る。第8.1.3.1節の実施例を使用すると、スケール=64では、10%での読み取り値は116となる。
【0296】
ADCオフセットを設定し、コンバータのゼロ調整をする。コンバータ出力は、負であってはならないので、10%点を設定する前にではなく、今このステップを実行する。較正された力を加えて、出力を記録し、これにより、利得較正係数を設定する。
【0297】
8.4.2 Cモード
以下の手順要素が使用される。
【0298】
式17で使用されているパラメータK4及びK5はすでに決定されており、したがって、センサー及びコンバータは、それと一致するように較正される必要がある。
【0299】
Cpar及びCin1をその標準値に設定して、コンバータを動作範囲内に入れる。
【0300】
現在のコンバータ出力から力を計算する。
【0301】
較正された力を加えて、計算された出力を記録すると、2つの計算結果の差が利得較正を定める。
【0302】
必要な利得補正を与えるCin1に対する値を計算し、この値を設定する。
【0303】
力を加えない状態で、力を計算し、力をゼロに設定するCcanに対する必要な値を計算して、この値を設定する。
【0304】
8.4.3 動的較正
Ccanのステップサイズは、約20fFとなる可能性が高く、これは、42gmの力変化を表す。ペンダウン閾値が正確であるように、Ccanの調整とADCオフセットの組合せが使用されなければならない。1/Cの動作の場合、利得較正係数を再計算する必要がある。再計算しないと、Ccanのステップサイズの結果、利得誤差は10%となる(許容可能である場合がある)。
【0305】
8.5 AD7745の測定
AD7745の干渉信号に対する耐性を評価するためにいくつかの測定が行われた。不要信号が、39pFのキャパシタを介して、センサーキャパシタの出力側であるCIN1ピンに注入された。このキャパシタの追加は、測定されるセンサーキャパシタが信号発生器の出力インピーダンスを介してグラウンドに接続されているため、測定されるセンサーキャパシタに及ぼす影響は無視できるくらい小さい。センサー静電容量は、大部分約60fFの寄生容量である。
【0306】
ボードは、90Hzの最大サンプリングレートを出力するようにセットアップされ、両方のCAPDACは、スイッチオフされた。励起レベルは、±VDD/2の最大であり、シングルエンドモードで動作した。励起周波数は約33kHzであった。
【0307】
測定されたキャパシタを変えるために必要な信号レベル(CIN1上で測定される)は、−20fFの誤差となるように調節された。以下の表7を参照のこと。
【表7】
8.5.1 観察結果
・2MHzより上では、注入信号は、測定静電容量を下げる。
・1MHzより下では、注入信号は、測定静電容量を上げる。
・1MHzから2MHzの間では、周波数と振幅に応じて、静電容量誤差はいずれの方向にも進みうる。
・励起周波数の高調波に近い周波数の場合、感度は最大となる(これらは、通過帯域へエイリアスされる)。
・チョップイネーブルが選択されている場合、耐性は、約3倍高まる。最大出力サンプリングレートは、49.8Hzであった。
【0308】
約3MHzのところに極があるように見えるが、これは、入力RCフィルタとして実装されるか、又は積分器OPアンプの帯域幅によるものである。データシートでは、C=53pF(いくぶん大きい)を持つRFフィルタを暗示する1K以下の入力直列抵抗を追加することも可能であることを推奨している。
【0309】
最も可能性の高い干渉源は、35MHzの直列インターフェース及び2.4GHzのBluetoothであり、これらは3MHzから十分離れている。
【0310】
8.5.2 ノイズ測定
これらの測定は、容量近接検出器の機械式モックアップを使用して行われた。センサーの寄生容量をオフセットするために、CAPDACAが最大値16.87pFに設定された。約0.75pFの静電容量変化が、直線領域において観察され、範囲の末端で粘着テープを誘電体として使用すると、1.75pFであった。90Hzのサンプリング及び±VDD/2の励起により、ノイズレベルは、「ペンアップ」で1000個のサンプルを使って、0.00036pFrms及び0.0032pFpk−pkと測定された。
【0311】
ホワイトノイズを仮定すると、90Hzから1.3kHzまでの倍率は、10*log(1300/90)=11.6dBである。
【0312】
0.75pFの範囲については、pk−pk信号対rmsノイズのS/Nは、S/N=20*log(0.75/0.00036)=66.4dBとなる。(AD7745では、13ビット又は78dBのS/Nのrms分解能を与えた場合に8pFの静電容量範囲についてS/Nを計算することに留意されたい。)1.3kHzの倍率については、S/N=66.4dB−11.6dB=54.8dB(9.1ENOB)である。
【0313】
センサーを外し、CAPDACAをオフにした状態では、測定された静電容量は0.0052pFであった。測定されたrmsノイズは、0.0000654pFrmsになり、これは14.8dBの改善である。
【0314】
8.6 結論
本発明のシグマ/デルタ静電容量インターフェース構成は、特にネットページ感知デバイスのペン先に対する、力感知の問題に対する確実な解決策をもたらす。上述の構成には、外力に正比例するコンバータ出力を発生することを利用し、コンバータ出力からの力の計算におけるハードウェア除算を回避し、力の範囲全体にわたって一定の精度を維持し、コンバータの全範囲を使用するという利点がある。
【0315】
特定の、またモデル化された実施例の他の利点は以下のとおりである。
・センサーキャパシタへの駆動(励起)が低インピーダンスであり、電圧ピックアップの耐性がある
・センサーキャパシタは仮想アースを駆動し、電圧ピックアップ耐性がある
・センサーキャパシタの両側においてグラウンドへの寄生容量に対する許容差が高い
・能動的なガードが不要である
・1/Cに比例する出力を発生するように設計されうる(Cが大きくなると出力を圧縮し、逆に、Cの小さな値に対し十分な分解能をもたらす)
・RF(>10MHz)誘導電圧に対する耐性が良好である
・正確なクロックを必要としない
・正確な電圧基準を必要とせず、したがって、最大励起±VDD/2が使用されうる
・シグマ/デルタ変換の通常の利点を活かせる
・消費電力を十分に低くできる場合(プロセッサのスリープモード)、デジタル領域においてペンダウンオフセットを適用することができる
・サンプリングレートは、不要信号除去を改善するためにプロセッサがオンであるときに高められる。
【0316】
もちろん、本発明は、純粋に例によってのみ説明されていること、また詳細の修正は、本明細書で説明されているような本発明の範囲内において行うことができることは理解されるであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、力センサーに関する。本発明は、主に、ペン、ポインタ、及び同類のものなどの光感知デバイスにおいて使用するための力センサーを実現するために開発された。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、以下で詳述されるネットページシステムを開発した。本発明は、特にこのシステム用の感知デバイスに適しているので、ネットページの文脈において説明することにする。しかし、力センサーは、多くの用途に利用されていることは理解されるであろう。特に、ハンドヘルド型光センサーには、さまざまな分野における幅広い用途があり、本発明は、ネットページシステムつまり実際には光感知デバイスの中での使用に限定されるわけではない。
【0003】
ネットページシステムは、ペンと紙を使用したインターフェースを介してユーザーとコンピュータネットワーク(又はスタンドアロンコンピュータ)との間のインタラクションを伴う。「ペン」とは、マーキング又はノンマーキングのペン先と紙(又は他の表面)上の符号化データのパターンを読み取るための光センサーとを備える電子スタイラスのことである。
【0004】
ネットページペンの主要な特徴の1つは、マウスを使って画面上のインタラクティブ要素(例えば、ハイパーリンクなど)をクリックするのと同じようにしてネットページ上のインタラクティブ要素を「クリック」できることである。しかし、ネットページペンの場合、ユーザーは、単にペン先をクリックしたいインタラクティブ要素上に置くだけである。光センサーは、ペン先がページに対して押し付けられたときに力センサーが「ペンダウン」状態を登録する間に、その要素をその一意的なページ及び位置IDを介して識別する。「ペンダウン」及び「ペンアップ」の登録は、さらに、ネットページ入力フィールドへのユーザーの手書きを取り込むうえで基本的なものである。力に関係する幅及び不透明度が可変である手描きストロークを再現するために非2値力信号も取り込まれる。また力の変化も、署名照合時に調べられる次元のうちの1つの次元として使用されうる。
【0005】
力センサーは、正確に比較的軽い力(ペン先に対する手書きの力など)を感知するために必要である。また、これは、最小限度の電力を必要とし、ハンドヘルド型感知デバイスに組み込むのに適したものであるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6929186号
【発明の概要】
【0007】
第1の態様では、本発明は、容量センサー回路を備える力センサーであって、その容量センサー回路が、その容量センサー回路の出力が1/Csenに比例するように配列された可変静電容量Csenを有するセンサーキャパシタを組み込んでいる力センサーを実現する。
【0008】
適宜、センサーキャパシタは、1つの固定された板と、1つの移動可能な板とを有する平行板キャパシタである。
【0009】
適宜、移動可能な板は、その移動可能な板に加えられる圧力によって、固定された板に相対的に移動し、これにより板の分離距離と前記静電容量Csenを変化させるように構成される。
【0010】
適宜、圧縮バネが、移動可能な板に連結される。
【0011】
適宜、センサーキャパシタは、そのセンサーキャパシタの板の1つが容量センサー回路に直結されるように容量センサー回路の容量帰還回路内に配置される。
【0012】
適宜、容量センサー回路は、シグマ/デルタコンバータ回路である。
【0013】
第2の態様では、本発明は、基材とのインタラクションを行うための感知デバイスであって、当該感知デバイスが基材とインタラクションを行っているかどうかを検出するための力センサーと、基材上に配置されている符号化データを感知するためのイメージセンサーとを備え、前記力センサーが容量センサー回路を備え、その容量センサー回路が、その容量センサー回路の出力が1/Csenに比例するように配列された可変静電容量Csenを有するセンサーキャパシタを組み込んでいる感知デバイスを実現する。
【0014】
さらなる態様では、感知された符号化データを使用してインタラクションデータを生成するように構成されたプロセッサを備える感知デバイスが実現される。
【0015】
他の態様では、感知デバイスが基材とインタラクションを行っていることを力センサーが検出したときのみイメージセンサーが符号化データを感知するように構成された感知デバイスが実現される。
【0016】
さらなる態様では、ペン先又はスタイラスを持たないクリッカー、ノンマーキングスタイラスを有するポインタ、及びマーキング用ペン先を有するペンからなる群から選択される感知デバイスが実現される。
【0017】
適宜、センサーキャパシタは、1つの固定された板と、1つの移動可能な板とを有する平行板キャパシタである。
【0018】
適宜、移動可能な板は、その移動可能な板に加えられる圧力によって、固定された板に相対的に移動し、これにより板の分離距離と前記静電容量Csenを変化させるように構成される。
【0019】
適宜、圧縮バネが、移動可能な板に連結される。
【0020】
適宜、センサーキャパシタは、そのセンサーキャパシタの板の1つが容量センサー回路に直結されるように容量センサー回路の容量帰還回路内に配置される。
【0021】
適宜、容量センサー回路は、シグマ/デルタコンバータ回路である。
【0022】
第3の態様では、本発明は、可変静電容量Csenを有するセンサーキャパシタと、Csenが最小予測値をとるときに容量センサー回路が飽和に近づくように相対的に配列された基準キャパシタとを組み込んだ容量センサー回路を備える力センサーを実現する。
【0023】
適宜、センサーキャパシタは、1つの固定された板と、1つの移動可能な板とを有する平行板キャパシタである。
【0024】
適宜、移動可能な板は、その移動可能な板に加えられる圧力によって、固定された板に相対的に移動し、これにより板の分離距離と前記静電容量Csenを変化させるように構成される。
【0025】
適宜、圧縮バネが、移動可能な板に連結される。
【0026】
適宜、容量センサー回路は、シグマ/デルタコンバータ回路である。
【0027】
適宜、相関二重サンプリングが、シグマ/デルタコンバータ回路の積分器に適用される。
【0028】
第4の態様では、本発明は、基材とのインタラクションを行うための感知デバイスであって、当該感知デバイスが基材とインタラクションを行っているかどうかを検出するための力センサーと、基材上に配置されている符号化データを感知するためのイメージセンサーとを備え、前記力センサーが容量センサー回路を備え、その容量センサー回路が、可変静電容量Csenを有するセンサーキャパシタと、Csenが最小予測値をとるときに容量センサー回路が飽和に近づくように相対的に配列された基準キャパシタとを組み込んでいる感知デバイスを実現する。
【0029】
さらなる態様では、感知された符号化データを使用してインタラクションデータを生成するように構成されたプロセッサを備える感知デバイスが実現される。
【0030】
他の態様では、感知デバイスが基材とインタラクションを行っていることを力センサーが検出したときのみイメージセンサーが符号化データを感知するように構成された感知デバイスが実現される。
【0031】
さらなる態様では、ペン先又はスタイラスを持たないクリッカー、ノンマーキングスタイラスを有するポインタ、及びマーキング用ペン先を有するペンからなる群から選択される感知デバイスが実現される。
【0032】
適宜、センサーキャパシタは、1つの固定された板と、1つの移動可能な板とを有する平行板キャパシタである。
【0033】
適宜、移動可能な板は、その移動可能な板に加えられる圧力によって、固定された板に相対的に移動し、これにより板の分離距離と前記静電容量Csenを変化させるように構成される。
【0034】
適宜、圧縮バネが、移動可能な板に連結される。
【0035】
適宜、容量センサー回路は、シグマ/デルタコンバータ回路である。
【0036】
適宜、相関二重サンプリングが、シグマ/デルタコンバータ回路の積分器に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】基本的なネットページアーキテクチャの一実施形態を示す図である。
【図2】サンプルの印刷されたネットページとそのオンラインページ記述との間の関係を示す略図である。
【図3】リレーデバイスのさまざまな代替え形態を持つ基本ネットページアーキテクチャの一実施形態を示す図である。
【図3A】ネットワークを介して相互接続されているネットページサーバ、Web端末、プリンタ、及びリレーの集合体を示す図である。
【図4】印刷されたネットページとそのオンラインページ記述の高水準構造を示す略図である。
【図5A】ネットページタグの構造を示す平面図である。
【図5B】図5Aに示されているタグの集合とネットページペンの形態のネットページ感知デバイスの視野との間の関係を示す平面図である。
【図6A】ネットページタグの代替えの構造を示す平面図である。
【図6B】図6Aに示されているタグの集合とネットページペンの形態のネットページ感知デバイスの視野との間の関係を示す平面図である。
【図6C】ターゲットが隣接するタグ間で共有される図6aに示されているタグのうちの9つのタグの配列を示す平面図である。
【図6D】図6Aに示されているタグの4つのコードワードのシンボルのインタリーブ及び回転を示す平面図である。
【図7】タグイメージ処理及び復号化アルゴリズムの流れ図である。
【図8】ネットページペン及びその関連するタグ感知視野円錐を示す斜視図である。
【図9】図8に示されているネットページペンの分解組立斜視図である。
【図10】図8及び9に示されているネットページペン用のペンコントローラの概略ブロック図である。
【図11】ペンクラスダイアグラムの略図である。
【図12】ドキュメント及びページ記述クラスダイアグラムの略図である。
【図13】ドキュメント及びページ所有クラスダイアグラムの略図である。
【図14】端末要素特化クラスダイアグラムの略図である。
【図15】静的要素特化クラスダイアグラムの略図である。
【図16】ハイパーリンク要素クラスダイアグラムの略図である。
【図17】ハイパーリンク要素特化クラスダイアグラムの略図である。
【図18】ハイパーリンクグループクラスダイアグラムの略図である。
【図19】フォームクラスダイアグラムの略図である。
【図20】デジタルインククラスダイアグラムの略図である。
【図21】フィールド要素特化クラスダイアグラムの略図である。
【図22】チェックボックスフィールドクラスダイアグラムの略図である。
【図23】テキストフィールドクラスダイアグラムの略図である。
【図24】署名フィールドクラスダイアグラムの略図である。
【図25】入力処理アルゴリズムの流れ図である。
【図25A】図25の流れ図の1つのステップの詳細な流れ図である。
【図26】ハイパーリンクリクエストクラスダイアグラムの略図である。
【図27】ローデジタルインククラスダイアグラムの略図である。
【図28】固定された板と移動可能な板とを持つ平行板キャパシタの略図である。
【図29】従来の(Csenに比例する)センサーを示す略図である。
【図30】1/Cセンサーの略図である。
【図31】出力される符号と外力との関係を示す図である。
【図32】量子化による測定誤差を示す図である。
【図33】2次の1/C CDCを示す略図である。
【図34】2次回路に対する従来の改善を示す略図である。
【図35】オフセット2次回路を示す略図である。
【図36】CDS演算を示す図である。
【図37】Cinlの誤差を示す図である。
【図38】Ccanの誤差を示す図である。
【図39】漏れ電流±50nA、チョッピング周波数clk/2の積分器1の出力を示す図である。
【図40】センサー並列抵抗(18MΩ)の効果を示す図である。
【図41】コモンモード電圧を示す図である。
【図42】加え合わせ点電圧を示す図である。
【図43】センサー等価回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の任意の実施形態は、限定されない実施例のみを使って、付属の図面を参照しつつ説明される。注記:メムジェット(Memjet)(商標)は、オーストラリア所在のSilverbrook Research Pty Ltd社の商標である。
【0039】
好ましい実施形態では、本発明は、ネットページネットワーク接続コンピュータシステムと連携するように構成されており、これらの詳細な概要について以下に示す。すべての実装が、基本システムに関して以下で説明されている具体的な詳細及び拡張の全部を、又は大部分であっても、必ずしも具現化するとは限らないことは理解されるであろう。しかし、システムは、本発明の好ましい実施形態及び態様が動作する背景状況を理解しようとしたときに外部の参考文献をあまり参照しなくて済むように最も完全な形で説明されている。
【0040】
簡単に述べると、ネットページシステムの好ましい形態では、マッピングされた表面、つまり、コンピュータシステム内に保持されている表面のマップへの参照を含む物理的表面の形態のコンピュータインターフェースを使用する。マップ参照に対するクエリーが、適切な感知デバイスによって行われうる。特定の実装に応じて、マップ参照は、可視的に、又は不可視的に符号化され、マッピングされた表面上のローカルクエリーがマップ内及び異なるマップ間の両方において曖昧でないマップ参照を生成するように定義されうる。コンピュータシステムは、マッピングされた表面上の特徴に関する情報を格納することができ、そのような情報は、マッピングされた表面とともに使用される感知デバイスによって供給されるマップ参照に基づいて取り出すことができる。こうして取り出された情報は、オペレータと表面特徴とのインタラクションに応じてオペレータの代わりにコンピュータシステムによって起動されるアクションの形態をとりうる。
【0041】
好ましい形態では、ネットページシステムは、ネットページの生成及びネットページに対するヒューマンインタラクションを利用する。これらは、通常の紙に印刷された、ただしインタラクティブなWebページのように機能する数ページ分のテキスト、グラフィックス、及びイメージである。情報は、肉眼では実質的に見えないインクを使用してそれぞれのページ上に符号化される。しかし、インクは、したがって符号化されたデータは、光学式撮像感知デバイスによって感知され、ネットページシステムに伝送されるようにできる。感知デバイスは、クリッカー(表面上の特定の位置をクリックするため)、スタイラス(ポインタストロークを使用して表面上でポイントするか、又はジェスチャーを使用するため)を有するポインタ、又はマーキング用ペン先(表面上でポイントしたり、ジェスチャーを使用したり、書いたりするときに表面にインクでマーキングするため)を有するペンの形態をとりうる。
【0042】
一実施形態では、それぞれのページ上のアクティブボタン及びハイパーリンクは、ネットワークに情報を要求するか、又はネットワークサーバにプリファレンスを信号で伝えるために、感知デバイスでクリックされうる。一実施形態では、ネットページ上に手書きされたテキストは、ネットページシステム内で自動的に認識され、コンピュータテキストに変換され、これによりフォームへの書き込みが可能になる。他の実施形態では、ネットページ上に記録された署名は、自動的に照合され、eコマース取引を安全に認証することができる。他の実施形態では、ユーザーによって指示されたキーワードに基づき検索を開始するために、ネットページ上のテキストがクリックされるか、又はテキストに対しジェスチャーが使用されうる。
【0043】
図2に例示されているように、印刷されたネットページ1は、ユーザーによって、印刷されたページ上に、物理的に書き込まれるだけでなく、ペンとネットページシステムとの間の通信を介して「電子的に」書き込まれうるインタラクティブフォームを表すことができる。この実施例は、名前及びアドレスのいくつかのフィールドと送信ボタンを含む「リクエスト」フォームを示している。ネットページは、可視インクを使用して印刷されたグラフィックデータ2と、不可視インクを使用してタグ4の集合体として印刷された符号化データ3とからなる。ネットページネットワーク上に格納されている、対応するページ記述5で、ネットページの個別要素を記述する。特に、これは、ネットページシステムがネットページを介して入力を正しく解釈できるように、それぞれのインタラクティブ要素(つまり、実施例におけるテキストフィールド又はボタン)のタイプ及び空間的広がり(ゾーン)を記述する。例えば、サブミットボタン6は、対応するグラフィック8の空間的広がりに対応するゾーン7を有する。
【0044】
図1及び3に例示されているように、図8及び9に示され、以下でさらに詳しく説明されているペンなどのネットページ感知デバイス101は、家庭で使用する、事務所で使用する、又は移動中に使用するためのインターネット接続デバイスであるネットページリレーデバイス601と連携動作する。ペンは、無線通信を行い、短距離無線リンク9を介してネットページリレーデバイス601と安全に通信する。代替えの一実施形態では、ネットページペン101は、リレーデバイス601に対しUSB又は他のシリアル接続などの有線接続を使用する。
【0045】
リレーデバイス601は、インタラクションデータを解釈する、ページサーバ10にインタラクションデータを中継する基本機能を実行する。図3に示されているように、リレーデバイス601は、例えば、パーソナルコンピュータ601a、ネットページプリンタ601b、又は他の何らかのリレー601cの形態をとりうる。
【0046】
ネットページプリンタ601bは、定期的に、又はオンデマンドで、個人向け新聞、雑誌、カタログ、冊子、及び他の刊行物を、すべてインタラクティブネットページとして高品位印刷して配布することができる。パーソナルコンピュータとは異なり、ネットページプリンタは、例えば、ユーザーの台所で、朝食のテーブルの近くで、又はその日1日の家庭の出発点の近くでなど、朝のニュースが最初に消費される領域に隣接して壁掛けできるアプライアンスである。さらに、テーブルの上に置くバージョン、机の上に置くバージョン、携帯型バージョン、及び小型バージョンのものもある。消費の時点においてオンデマンドで印刷されるネットページは、紙の使いやすさとインタラクティブ媒体の即時性及び双方向性とを兼ね備える。
【0047】
それとは別に、ネットページリレーデバイス601は、携帯電話若しくはPDAなどの携帯型デバイス、ラップトップ若しくはデスクトップコンピュータ、又はテレビなどの共有ディスプレイに接続された情報アプライアンスとしてもよい。リレーデバイス601が、ネットページをオンデマンドでデジタル印刷するネットページプリンタ601bでない場合、ネットページは、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、凸版印刷、及び輪転グラビア印刷などの技術を使用する伝統的なアナログ印刷機によって、さらにはドロップオンデマンドインクジェット、連続インクジェット、転染、及びレーザー印刷などの技術を使用するデジタル印刷機によって印刷されうる。
【0048】
図3に示されているように、ネットページ感知デバイス101は、印刷されたネットページ1上の、又は製品251のラベルなどの他の印刷された基材上の符号化データとのインタラクションを実行し、短距離無線リンク9を介してそのインタラクションをリレーデバイス601に伝える。リレー601は、解釈のため対応するインタラクションデータを関連するネットページページサーバ10に送信する。感知デバイス101から受信されたローデータは、インタラクションデータとしてページサーバ10に直接中継されうる。それとは別に、インタラクションデータは、インタラクションURIの形で符号化され、ユーザーのWebブラウザを介してページサーバ10に送信されうる。もちろん、リレーデバイス601(例えば、携帯電話)は、Webブラウザとユーザーディスプレイを組み込むことができる。
【0049】
該当する状況において、ページサーバは、対応するメッセージをネットページアプリケーションサーバ13上で実行中のアプリケーションコンピュータソフトウェアに送信する。アプリケーションサーバは、次いで、応答を送信することができ、この応答は、リレー601に関連付けられているユーザーディスプレイデバイス上に表示されるか、又は発信元のネットページプリンタ上で印刷される。
【0050】
ネットページリレーデバイス601は、任意の数の感知デバイスをサポートするように構成することができ、感知デバイスは、任意の数のネットページリレーと連携動作しうる。好ましい実装では、それぞれのネットページ感知デバイス101は一意的な識別子を有する。これにより、それぞれのユーザーは、ネットページページサーバ10又はアプリケーションサーバ13に関して異なるプロファイルを維持することができる。
【0051】
ネットページ1のデジタルオンデマンド配布は、利用が高まっているブロードバンドインターネットアクセスを利用するネットページプリンタ601bによって実行されうる。ネットページネットワーク上のネットページパブリケーションサーバ14は、印刷品質の刊行物をネットページプリンタに配信するように構成される。定期刊行物は、ポイントキャスト及びマルチキャストのインターネットプロトコルを介してサブスクライブするネットページプリンタに自動的に配信される。個人向け刊行物は、個々のユーザープロファイルに従ってフィルタ処理され、フォーマットされる。
【0052】
ネットページペンは、ネットページ登録サーバ11に登録され、1つ又は複数の決済カード口座にリンクされうる。これにより、ネットページペンを使用してeコマース決済を安全に認証することができる。ネットページ登録サーバは、ネットページペンによって取り込まれた署名とすでに登録されている署名との比較を行い、eコマースサーバに対しユーザーIDを認証することができる。他のバイオメトリクスも、本人確認に使用できる。ネットページペンの一バージョンは、ネットページ登録サーバによって類似の方法で確認される、指紋スキャニングを含む。
【0053】
ネットページシステムのアーキテクチャ
システムにおけるそれぞれのオブジェクトモデルは、統一モデリング言語(UML)クラスダイアグラムを使用して記述される。クラスダイアグラムは、関係によって接続されたオブジェクトクラスの集合からなり、ここでは、関連と汎化という2つの種類の関係に注目する。関連は、オブジェクト間のある種の関係、つまりクラスのインスタンス間のある種の関係を表す。汎化は、実際のクラスを関係付けるもので、クラスがそのクラスのすべてのオブジェクトの集合と考えられ、クラスAがクラスBの汎化であれば、Bは、単に、Aの部分集合であるというように理解できる。UMLでは、2次モデリング、つまり、クラスのクラスを直接的にはサポートしていない。
【0054】
それぞれのクラスは、クラスの名称をラベル付けされた矩形として描画される。これは、水平線で名前から区切られている、クラスの属性のリストと、水平線で属性リストから区切られている、クラスのオペレーションのリストとを含む。しかし、以下のクラスダイアグラムでは、オペレーションは決してモデル化されない。
【0055】
関連は、関連の多重度をいずれかの端に適宜ラベルとして付けられた、2つのクラスを結合する1本の直線として描画される。デフォルトの多重度は、1である。アスタリスク(*)は、「多」の多重度、つまり、0若しくはそれ以上を示す。それぞれの関連は、適宜その名前をラベル付けされ、また適宜いずれかの端で対応するクラスの役割をラベル付けされる。白抜きの菱形は、集約関連(「is−part−of」(の一部である))を示し、関連線のアグリゲータ端に描画される。
【0056】
汎化関係(「is−a」)は、2つのクラスを結合する1本の実線として描画され、汎化端に矢印(白抜きの三角形の形)がある。
【0057】
クラスダイアグラムが、複数のダイアグラムに分解される場合、複製されるクラスは、それを定義する主ダイアグラムを除くすべてにおいて破線の輪郭で示される。これは、定義されている場合にのみ属性とともに示される。
【0058】
1 ネットページ
ネットページは、ネットページネットワークを構築するための基礎である。ネットページは、公開された情報及びインタラクティブサービスに対する紙を利用したユーザーインターフェースを構成する。
【0059】
ネットページは、ページのオンライン記述を参照しつつ不可視タグが付けられた印刷されたページ(又は他の表面領域)からなる。オンラインページ記述は、ネットページページサーバ10によって永続的に保持される。ページ記述は、テキスト、グラフィックス、及びイメージを含む、ページの可視レイアウト及びコンテンツを記述するものである。また、ボタン、ハイパーリンク、及び入力フィールドを含む、ページ上の入力要素も記述する。ネットページを使用すると、表面上にネットページペンで付けられたマーキングが、ネットページシステムによって同時に取り込まれ、処理されるようにできる。
【0060】
複数のネットページ(例えば、アナログ印刷機によって印刷されたネットページ)は、同じページ記述を共有することができる。しかし、他の何らかの形で同一のページを通じての入力を区別できるように、それぞれのネットページに、一意的なページ識別子を割り当てることができる。このページIDは、非常に多くのネットページを区別できる十分に高い精度を有する。
【0061】
ページ記述に対するそれぞれの参照は、印刷されたタグに符号化される。それぞれのタグは、それが出現する一意的なページを識別し、それにより、ページ記述を間接的に識別する。タグは、さらに、ページ上のそれ固有の位置を識別する。タグの特性については、以下でさらに詳しく説明される。
【0062】
タグは、典型的には、通常の紙などの赤外線を反射する基材上に赤外線吸収インクで印刷されるか、又は赤外線蛍光インクで印刷される。近赤外線波長は、人の目には不可視であるが、適切なフィルタを使った固体イメージセンサーを使用すれば容易に感知される。
【0063】
タグは、ネットページ感知デバイス内のエリアイメージセンサーによって感知され、タグデータは、最も近い位置にあるネットページリレーデバイスを介してネットページシステムに伝送される。ペンは、無線通信を行い、短距離無線リンクを介してネットページリレーデバイスと通信する。タグは、十分に小さく、またページ上でシングルクリックしただけでも感知デバイスが少なくとも1つのタグを確実に撮像できる程度に密に配列されている。インタラクションはステートレスなので、ペン側でページとのインタラクション毎にページのID及び位置を認識することが重要である。タグは、表面の損傷に対する部分的耐性を持たせるために誤り訂正可能なように符号化される。
【0064】
ネットページページサーバ10は、それぞれの一意的な印刷されたネットページについて一意的なページインスタンスを保持し、これにより、印刷されたネットページ毎にページ記述の入力フィールドに対しユーザーが指定する値の異なる集合を保持することができる。
【0065】
ページ記述、ページインスタンス、及び印刷されたネットページの間の関係は、図4に示されている。印刷されたネットページは、印刷されたネットページドキュメント45の一部とすることができる。ページインスタンスは、それを印刷したネットページプリンタと、もし知られているならば、それを要求したネットページユーザーの両方に関連付けることができる。
【0066】
2 ネットページタグ
2.1 タグデータのコンテンツ
好ましい一実施形態では、それぞれのタグは、それが出現する領域、及び領域内におけるそのタグの位置を識別する。タグは、さらに、全体として領域に関係するか、又はそのタグに関係するフラグを含むこともできる。例えば、1つ又は複数のフラグビットは、タグ感知デバイス側で領域の記述を参照しなくても、タグの即時領域に関連する機能を示すフィードバックを返すようにタグ感知デバイスに通知することができる。例えば、ネットページペンは、ハイパーリンクのゾーン内にあるときに「アクティブ領域」LEDを点灯させることができる。
【0067】
以下でさらに詳しく説明するように、好ましい一実施形態では、それぞれのタグは、初期検出を補助し、表面によって、又は感知プロセスによって引き起こされる反りの効果を最小限に抑えるのを助ける、容易に認識される不変構造を含む。これらのタグは、好ましくはページ全体をタイリングし、十分に小さく、またページ上でシングルクリックしただけでもペンが少なくとも1つのタグを確実に撮像できる程度に密に配列されている。インタラクションはステートレスなので、ペン側でページとのインタラクション毎にページのID及び位置を認識することが重要である。
【0068】
好ましい一実施形態では、タグが参照する領域は、ページ全体と一致し、したがって、タグ内に符号化されている領域IDは、タグが出現するページのページIDと同義である。他の実施形態では、タグが参照する領域は、ページの任意の部分領域であるか、又は他の表面であってもよい。例えば、これは、インタラクティブ要素のゾーンと一致してもよく、この場合、領域IDはインタラクティブ要素を直接的に識別することができる。
【表1】
それぞれのタグは、120ビットの情報を含み、これらは典型的には表1に示されているように割り当てられている。最大タグ密度が64/平方インチであると仮定すると、16ビットタグIDは、最大1024平方インチまでの領域サイズをサポートする。単に隣接する領域とマップを使用するだけでタグIDの精度を高めることなく、より大きな領域を連続的にマッピングできる。100ビット領域IDを使用すると、2100(約1030つまり、100万の1兆倍の1兆倍)個の異なる領域を一意的に識別することができる。
【0069】
2.2 タグデータの符号化
120ビットのタグデータは、(15,5)リードソロモン符号を使用して冗長符号化される。これにより、それぞれ15個の4ビットシンボルからなる6個のコードワードからなる360個の符号化ビットが得られる。(15,5)符号を使用すると、最大5個のまでのシンボル誤りをコードワード毎に訂正することができる、つまり、1コードワード当たり最大33%までのシンボル誤り率に耐える。
【0070】
それぞれの4ビットシンボルは、空間的にコヒーレントな方法でタグ内に表現され、6個のコードワードのシンボルは、そのタグ内で空間的にインタリーブされる。これにより、バースト誤り(複数の空間的に隣接するビットに影響を及ぼす誤り)が損なう、全体的なシンボルの数及び任意の1つのコードワード内のシンボルの数が最小限に抑えられることが保証され、したがって、バースト誤りが完全に訂正されうる可能性が最大になる。
【0071】
好適な誤り訂正符号を(15,5)リードソロモン符号の代わりに使用することができ、例えば、冗長度を増やした、又は減らした、同じ又は異なるシンボル及びコードワードサイズを使用するリードソロモン符号、他のブロック符号、又は畳み込み符号などの異なる種類の符号を代わりに使用できる(例えば、相互参照により本明細書に内容が組み込まれている、Stephen B.Wicker、「Error Control Systems for Digital Communication and Storage」、Prentice−Hall 1995年を参照のこと)。
【0072】
2.3 物理的タグ構造
図5aに示されている、タグの物理的表現は、固定ターゲット構造15、16、17、及び可変データ領域18を含む。固定ターゲット構造を使用すると、ネットページペンなどの感知デバイスでタグを検出し、センサーに相対的な3次元の配向を推論することができる。データ領域は、符号化されたタグデータの個別のビットの表現を含む。
【0073】
タグの再現性を適切なものとするために、タグは256×256ドットの分解能でレンダリングされる。1600ドット/インチで印刷した場合、これにより、直径約4mmのタグが得られる。この分解能で、タグは半径16ドットの「静かな領域」によって囲まれるように設計されている。この静かな領域には、隣接するタグも寄与するので、タグの有効径に16ドットを加えるのみである。
【0074】
タグは、6個のターゲット構造を含む。検出リング15により、感知デバイスは最初にタグを検出することができる。リングは、回転に対し不変であるため、またそのアスペクト比の単純な補正で、遠近歪みの影響の大半が取り除かれるため、検出が容易である。配向軸16を使用することで、感知デバイスはセンサーのヨーによるタグの近似的平面配向を決定することができる。配向軸は、一意的な配向が得られるように傾いている。4つの透視ターゲット17により、感知デバイスはタグの正確な2次元透視変換、したがってセンサーに相対的なタグの正確な3次元位置及び配向を推論することができる。
【0075】
すべてのターゲット構造は、ノイズに対する耐性を増すために大きさに冗長性を持たせてある。
【0076】
全体的なタグ形状は円形である。これは、とりわけ、不規則三角形格子上で最適なタグ充填をサポートする。円形検出リングと併用することで、これにより、タグ内のデータビットの円形配列を最適にものにできる。そのサイズを最大化するために、それぞれのデータビットは、2本の半径方向の直線と2つの同心円の円弧を境界線とする領域形態において半径方向のウェッジによって表される。それぞれのウェッジは、1600dpiで最小寸法8ドットを有し、その基部(その内弧)がこの最小寸法に少なくとも等しくなるように設計される。半径方向のウェッジの高さは、常に最小寸法に等しい。それぞれの4ビットデータシンボルは、2×2のウェッジのアレイによって表される。
【0077】
6個のコードワードのそれぞれの15個の4ビットデータシンボルは、インタリーブされた形で4つの同心円シンボルリング18aから18dに割り当てられる。シンボルは、タグの周りを円にそって進みつつ交互に割り当てられる。
【0078】
インタリーブは、同一コードワードの2つのシンボルの間の平均空間距離を最大にするように設計される。
【0079】
感知デバイスを介してタグ付き領域との「シングルクリック」インタラクションをサポートするために、感知デバイスは、領域内のどこに位置しようと、又はどのような配向で位置しようと、視野内で少なくとも1つのタグ全体が見えるようになっていなければならない。したがって、感知デバイスの視野の必要な直径は、タグのサイズ及び間隔の関数として表される。
【0080】
円形のタグ形状を仮定すると、センサー視野の最小直径は、タグが図5bに示されているように等辺三角形格子上にタイリングされるときに得られる。
【0081】
2.4 タグのイメージ処理及び復号化
ネットページペンなどの感知デバイスによって実行されるタグのイメージ処理及び復号化は、図7に示されている。取り込まれたイメージがイメージセンサーから取得されている間に、イメージのダイナミックレンジが決定される(20で)。そこで、範囲の中心は、イメージ21のバイナリ閾値として選択される。次いで、イメージは閾値化されて、複数の連結ピクセル領域(つまり、形状23)にセグメント分割される(22で)。小さすぎてタグターゲット構造を表現できない形状は、破棄される。それぞれの形状のサイズ及び重心も、計算される。
【0082】
次いで、形状毎に2値形状モーメント25が計算され(24で)、これらは、その後ターゲット構造を特定するための基礎となる。中心形状モーメントは、その性質上、位置の不変量であり、縮尺、アスペクト比、及び回転の不変量に容易にできる。
【0083】
リングターゲット構造15は、最初に特定されるべきものである(26で)。リングは、遠近歪みが生じたときに非常によい振る舞いをするという利点を有する。マッチングは、それぞれの形状のモーメントをアスペクト正規化し、回転正規化することにより進行する。2次モーメントが正規化されると、リングは、遠近歪みが大きかったとしても容易に認識できる。リングの元のアスペクト及び回転27は、一緒になって、透視変換の有用な近似を与える。
【0084】
軸ターゲット構造16は、次に特定されるべきものである(28で)。マッチングは、それぞれの形状のモーメントにリングの正規化を適用し、その結果得られるモーメントを回転正規化することにより進行する。2次モーメントが正規化された後、軸ターゲットは容易に認識される。軸の2つの可能な配向の曖昧さをなくすには、3次モーメントが1つ必要であることに留意されたい。これが可能なように、形状は片側へ故意に傾けられている。また、遠近歪みが軸ターゲットの軸を隠すことができるため、リングの正規化を適用された後に軸ターゲットを回転正規化することのみ可能であることにも留意されたい。軸ターゲットの元の回転は、ペンのヨー29によりタグの回転の有用な近似を与える。
【0085】
4つの透視ターゲット構造17は、最後に特定されるべきものである(30で)。リング及び軸ターゲットに対する知られている空間的関係、リングのアスペクト及び回転、並びに軸の回転に基づき、これらの位置のよい推定値が計算される。マッチングは、それぞれの形状のモーメントにリングの正規化を適用することにより進行する。2次モーメントが正規化された後、円形透視ターゲットは容易に認識され、それぞれの推定された位置に最も近い位置にあるターゲットが一致とみなされる。次いで、4つの透視ターゲットの元の重心は、タグ空間内の知られているサイズの正方形の遠近歪みのあるコーナー31とみなされ、自由度8の透視変換33は、4つのタグ空間とイメージ空間点対との関係を定めるよく理解されている式を解くことに基づき(32で)推論される(相互参照により本明細書に内容が組み込まれている、Heckbert、P.、「Fundamentals of Texture Mapping and Image Warping」、Masters Thesis、Dept.of EECS、U.of California at Berkeley、Technical Report No.UCB/CSD89/516、1989年6月を参照のこと)。
【0086】
タグ空間内のそれぞれの知られているデータビット位置をイメージ空間内に(36で)射影するために推論されたタグ空間/イメージ空間透視変換が使用されるが、その際に入力イメージ内の4つの関連する隣接ピクセルを(36で)双線形補間するために実数値をとる位置が使用される。すでに計算されているイメージ閾値21は、その結果を閾値化して最終的なビット値37を出力するために使用される。
【0087】
360個すべてのデータビット37が、このようにして得られた後、6つの60ビットリードソロモンコードワードのそれぞれが復号化され(38で)、20個の復号化されたビット39、つまり合計120個の復号化されたビットが得られる。コードワードシンボルは、コードワード順序でサンプリングされ、したがってコードワードは、サンプリングプロセスにおいて暗黙のうちに逆インタリーブされることに留意されたい。
【0088】
リングターゲット15は、リングがもし見つかれば完全なタグの一部であることを保証するイメージとの関係を持つイメージの部分領域内でのみ探索される。完全なタグが見つからず、正常に復号化された場合、現在のフレームについてペン位置はいっさい記録されない。適切な処理能力があり、理想的には最小でない視野193を持つ場合、代替え戦略として、現在のイメージ内で他のタグを探す必要がある。
【0089】
得られたタグデータは、タグを含む領域の識別及びその領域内のタグの位置を示す。次いで、領域内のペン先の正確な位置35とともにペンの全体的配向35が、タグ上で観察された透視変換33及びペンの物理的軸とペンの光軸との間の知られている空間的関係から(34で)推論される。
【0090】
2.5 代替えのタグ構造
上述のタグ構造は、タグの規則正しいタイリングが可能でない場合のある非平面の表面のタグ付けをサポートするように設計されている。より一般的である、タグの規則正しいタイリングが可能な平面の表面、つまり、用紙などの表面の場合には、タイリングの規則正しさを利用する、より効率的なタグ構造が使用されうる。
【0091】
図6aは、4つの透視ターゲット17を持つ正方形のタグ4を示している。構造に関してはBennettらの米国特許第5051746号明細書で説明されているタグと似ている。タグは、合計240ビットについて、60個の4ビットリードソロモンシンボル47を表す。タグは、それぞれの1ビットをドット48として表し、それぞれのゼロビットを、対応するドットが存在しないことで表す。透視ターゲットは、図6b及び6cに示されているように、隣接するタグの間で共有されるように設計されている。図6bは、16個のタグの正方形のタイリング及び対応する最小視野193を示しているが、これは、2つのタグの対角線にわたっていなければならない。図6cは、9つのタグの正方形のタイリングを示しているが、例示のためすべての1ビットを含む。
【0092】
112ビットのタグデータは、(15,7)リードソロモン符号を使用して冗長符号化され、240個の符号化ビットを生成する。4つのコードワードは、バースト誤りに対する回復力が最大になるようにタグ内で空間的にインタリーブされる。16ビットタグIDを前のように仮定すると、これにより、最大92ビットまでの領域IDが得られる。
【0093】
タグのデータを保持するドット48は、隣接要素と重ならないように設計されており、したがって、タグのグループがターゲットに似た構造を生成することはありえない。また、これによりインクが節約される。したがって、透視ターゲットでは、タグを検出することができ、したがって他のターゲットは不要である。タグイメージ処理は、上の第1.2.4節で説明されているように進行するが、ただし、ステップ26及び28は省かれる。
【0094】
タグは、センサーに相対的なタグの4つの可能な配向の曖昧さの除去を可能にする配向機能を備えることができるけれども、タグデータ中に配向データを埋め込むことも可能である。例えば、これら4つのコードワードは、それぞれのタグ配向が、図6dに示されているように、その配向に置かれている1つのコードワードを含むように配列することができ、それぞれのシンボルは、そのコードワードの数(1〜4)及びコードワード内のシンボルの位置(A〜O)をラベル付けされる。次いで、タグ復号化は、それぞれの配向で1つのコードワードを復号化することからなる。それぞれのコードワードは、それが第1のコードワードであるかどうかを示す単一のビットを含むか、又はそれがどのコードワードであるかを示す2つのビットを含むことができる。後者のアプローチには、例えば、ただ1つのコードワードからなるデータコンテンツが必要な場合に、所望のデータを得るために高々2つのコードワードを復号化すればよいという利点がある。これは、領域IDが1つのストローク内で変化するとは予想されず、したがってストロークの開始時にのみ復号化される場合であると考えられる。次いで、1つのストローク内で、タグIDを含むコードワードのみが望まれる。さらに、感知デバイスの回転は、1つのストローク内でゆっくりと予測可能なように変化するため、典型的には、ただ1つのコードワードがフレーム毎に復号化されるだけでよい。
【0095】
まったく透視ターゲットなしで済ますことが可能であり、代わりに、データ表現が自己登録することに依存することが可能である。この場合、それぞれのビット値(又は多ビット値)は、典型的には、明示的グリフによって表される、つまり、どのビット値も、グリフが存在しないことによって表されることはない。これにより、データ格子は適切に埋められることが保証され、したがって、その格子を確実に識別し、その遠近歪みを検出し、その後、データサンプリング時に訂正することができる。タグ境界を検出できるようにするために、それぞれのタグデータは、マーカーパターンを含んでいなければならず、またこれらは、確実に検出できるように冗長符号化されなければならない。このようなマーカーパターンのオーバーヘッドは、明示的な透視ターゲットのオーバーヘッドに似ている。このようなスキームの1つでは、格子頂点に相対的なさまざまな点に位置するドットを使用して、異なるグリフを表し、したがって異なる多ビット値を表す(Anoto Technology Description、Anoto 2000年4月を参照のこと)。
【0096】
追加のタグ構造は、本発明の出願人又は譲受人によって出願された米国特許の公報(前述した特許文献1)において開示されている。
【0097】
2.6 タグマップ
タグを復号化すると、その結果、領域ID、タグID、及びタグ相対的ペン変換が得られる。タグID及びタグ相対的ペン配置をタグ付き領域内の絶対配置に変換する前に、その領域内のタグの配置が知られていなければならない。この配置は、タグマップによって与えられるが、これは、タグ付き領域内のそれぞれのタグIDを対応する配置にマッピングする機能である。タグマップクラスダイアグラムは、ネットページプリンタクラスダイアグラムの一部として図22に示されている。
【0098】
タグマップは、タグを含む表面領域をタイリングするために使用されるスキームを反映し、これは表面の種類に応じて異なりうる。複数のタグ付き領域が、同じタイリングスキーム及び同じタグナンバリングスキームを共有する場合、これらは、さらに、同じタグマップも共有しうる。
【0099】
1つの領域に対するタグマップは、領域IDを介して取り出せなければならない。したがって、領域ID、タグID、及びペン変換が与えられた場合、タグマップが取り出され、タグIDがその領域内の絶対タグ配置に変換され、タグ相対的ペン配置がタグ配置に追加され、これによりその領域内の絶対ペン配置が得られる。
【0100】
タグIDは、タグマップを介した変換を補助する構造を有していてもよい。例えば、タグIDが出現する表面の種類に応じて、直交座標(x−y)又は極座標を符号化することができる。タグID構造は、タグマップによって指示され、タグマップに認識され、したがって、異なるタグマップに関連付けられたタグIDは、異なる構造を持つことができる。
【0101】
2.7 タグ付けスキーム
好ましい符号化スキームでは、すでに説明したように「配置指示」タグを使用する。代替え符号化スキームでは、オブジェクト指示タグを使用する。
【0102】
配置指示タグは、タグ付き領域に関連付けられているタグマップを介して変換されたときに、その領域内で一意的なタグ配置を生成するタグIDを含む。ペンのタグ相対的配置が、このタグ配置に加えられ、これにより、領域内のペンの配置が求められる。次いで、これは、その領域に関連付けられているページ記述におけるユーザーインターフェース要素に相対的なペンの配置を決定するために使用される。ユーザーインターフェース要素それ自体が識別されるだけでなく、ユーザーインターフェース要素に相対的な配置も識別される。したがって、配置指示タグが、特定のユーザーインターフェース要素のゾーン内の絶対ペン経路の取り込みをサポートするのは自明である。
【0103】
オブジェクト指示タグは、その領域に関連付けられているページ記述でユーザーインターフェース要素を直接識別するタグIDを含む。ユーザーインターフェース要素のゾーン内のすべてのタグは、そのユーザーインターフェース要素を識別し、それらをすべて同じものにし、したがって、区別できなくする。したがって、オブジェクト指示タグは、絶対ペン経路の取り込みをサポートしない。しかし、相対的ペン経路の取り込みは、サポートする。位置サンプリング頻度が、遭遇するタグの頻度の2倍を超える限り、1つのストローク内での一方のサンプリングされたペン位置から次の位置への変位は、明確に決定されうる。
【0104】
いずれかのタグ付けスキームを使用することで、タグは、タグデータが感知デバイスによって読み取られ、適切な応答がネットページシステム内に生成されるようにユーザーが適切な感知デバイスを使用して印刷されたページとのインタラクションを行うことができるという点でユーザーインタラクティブ要素としてネットページ上の関連する視覚的要素と連携して機能する。
【0105】
3 ドキュメント及びページ記述
ドキュメント及びページ記述クラスダイアグラムの好ましい一実施形態は、図12及び13に示されている。
【0106】
ネットページシステムでは、ドキュメントは3つのレベルで記述される。最も抽象的なレベルにおいて、ドキュメント836は階層構造をなし、この構造の終端要素839はテキストオブジェクト、テキストスタイルオブジェクト、イメージオブジェクトなどのコンテンツオブジェクト840に関連付けられている。ドキュメントがプリンタで特定のページサイズに印刷されると、ドキュメントはページ番号を付けられ、また他の何らかの形でフォーマットされる。フォーマットされた終端要素835は、場合によっては、特にコンテンツオブジェクトがスタイルに関係付けられている場合に、対応する終端要素に関連付けられているものと異なるコンテンツオブジェクトに関連付けられる。ドキュメント及びページのそれぞれの印刷インスタンスは、さらに、別々に記述され、これにより、特定のページインスタンス830を通じて取り込まれた入力を同じページ記述の他のインスタンスを通じて取り込まれた入力とは別に記録することができる。
【0107】
ページサーバ上に最も抽象的なドキュメント記述が存在するため、ソースドキュメントの特定のフォーマットを無理矢理受け入れさせずともドキュメントのコピーを印刷することができる。ユーザー又は印刷機は、例えば、異なるページサイズでプリンタ用のコピーを要求している場合がある。逆に、ページサーバ上にフォーマットされたドキュメント記述が存在することにより、ページサーバは、特定の印刷されたページ上のユーザーアクションを効率よく解釈することができる。
【0108】
フォーマットされたドキュメント834は、一組のフォーマットされたページ記述5からなり、それぞれの記述は一組のフォーマットされた終端要素835からなる。それぞれのフォーマットされた要素は、ページ上に1つの空間的広がりつまりゾーン58を有する。これにより、ハイパーリンク及び入力フィールドなどの入力要素のアクティブ領域が定義される。
【0109】
ドキュメントインスタンス831は、フォーマットされたドキュメント834に対応する。これは、一組のページインスタンス830からなり、それぞれのインスタンスは、フォーマットされたドキュメントのページ記述5に対応する。それぞれのページインスタンス830は、単一の一意的な印刷ネットページ1を記述し、ネットページのページID 50を記録する。ページインスタンスは、別に要求されたページのコピーを表す場合にはドキュメントインスタンスの一部ではない。
【0110】
ページインスタンスは、一組の終端要素インスタンス832からなる。要素インスタンスは、インスタンス特有の情報を記録する場合にのみ存在する。したがって、ハイパーリンクインスタンスは、そのページインスタンスに特有のトランザクションID 55を記録するのでハイパーリンク要素に対し存在し、フィールドインスタンスは、そのページインスタンスに特有の入力を記録するのでフィールド要素に対し存在する。しかし、要素インスタンスは、テキストフローなどの静的要素については存在しない。
【0111】
終端要素839は、視覚的要素又は入力要素とすることができる。視覚的要素は、静的要素843又は動的要素846とすることができる。入力要素は、図14に示されているように、ハイパーリンク要素844又はフィールド要素845とすることができる。静的要素843は、図15に示されているように、関連するスタイルオブジェクト854を有するスタイル要素847、関連するスタイル化されたテキストオブジェクト855を有するテキストフロー要素848、関連するイメージオブジェクト856を有するイメージ要素849、関連するグラフィックオブジェクト857を有するグラフィック要素850、関連するビデオクリップオブジェクト858を有するビデオクリップ要素851、関連するオーディオクリップオブジェクト859を有するオーディオクリップ要素852、又は関連するスクリプトオブジェクト860を有するスクリプト要素853とすることができる。
【0112】
ページインスタンスは、特定の入力要素に適用されないページ上で取り込まれた任意のデジタルインクを記録するために使用されるバックグラウンドフィールド833を有する。
【0113】
本発明の好ましい形態では、タグマップ811が、ページ上のタグをページ上の配置に変換できるようにそれぞれのページインスタンスに関連付けられている。
【0114】
4 ネットページネットワーク
好ましい一実施形態では、ネットページネットワークは、図3に示されているように、インターネットなどのネットワーク19を介して接続されている、ネットページページサーバ10、ネットページ登録サーバ11、ネットページIDサーバ12、ネットページアプリケーションサーバ13、及びネットページリレーデバイス601の分散型の集合体からなる。
【0115】
ネットページ登録サーバ11は、ユーザー、ペン、プリンタ、及びアプリケーションの間の関係を記録するサーバであり、これにより、さまざまなネットワーク活動の許可を行う。これは、ユーザーを認証し、アプリケーショントランザクションにおいて認証されたユーザーに代わってサイニングプロキシとして動作する。これはまた、手書き認識サービスも提供する。上述のように、ネットページページサーバ10は、ページ記述及びページインスタンスに関する永続的情報を保持する。ネットページネットワークは、任意の数のページサーバを備え、それぞれのサーバはページインスタンスの部分集合を処理する。ページサーバは、さらに、ページインスタンス毎にユーザー入力値を維持するので、ネットページリレー601などのクライアントは、ネットページ入力を直接、適切なページサーバに送信する。ページサーバは、対応するページの記述に関してそのような入力を解釈する。
【0116】
ネットページIDサーバ12は、オンデマンドでドキュメントID 51を割り当て、そのID割当てスキームを用いてページサーバの負荷分散を行う。
【0117】
ネットページリレーは、インターネット分散型ネームシステム(DNS)、又は同様のものを使用して、ネットページID 50を、対応するページインスタンスを処理するネットページページサーバのネットワークアドレスに帰着させる。
【0118】
ネットページアプリケーションサーバ13は、インタラクティブネットページアプリケーションをホストするサーバである。
【0119】
ネットページサーバは、IBM、Hewlett−Packard、及びSunなどのメーカー製のさまざまなネットワークサーバプラットフォーム上でホストされうる。複数のネットページサーバを単一のホスト上で同時実行させることができ、また単一のサーバを多数のホスト上に分散させることができる。ネットページサーバによって提供される機能の一部又は全部、並びに特にIDサーバ及びページサーバによって提供される機能は、また、ネットページプリンタなどのネットページアプライアンスにおいて、又はコンピュータワークステーションにおいて、又はローカルネットワーク上でも直接提供されうる。
【0120】
5 ネットページペン
ネットページシステムのアクティブな感知デバイスは、クリッカー(表面上の特定の位置をクリックするため)、スタイラス(ポインタストロークを使用して表面上でポイントするか、又はジェスチャーを使用するため)を有するポインタ、又はマーキング用ペン先(表面上でポイントしたり、ジェスチャーを使用したり、書いたりするときに表面にインクでマーキングするため)を有するペンの形態をとりうる。本明細書では、ペン101が説明されているけれども、クリッカー及びポインタは、類似の構造を持つものとしてもよいことは理解されるであろう。ペン101では、組込コントローラ134を使用して、イメージセンサーを介して1つのページからネットページタグを取り込んで復号化する。イメージセンサーは、近赤外線波長でのみ感知を許す適切なフィルタを備えた固体デバイスである。以下でさらに詳しく説明されるように、システムは、ペン先が表面といつ接触したかを感知することができ、ペンは、人間の手書きを取り込む十分なレートで(つまり、200dpi又はそれ以上、及び100Hz又はそれ以上の速さで)タグを感知することができる。ペンによって取り込まれた情報は、暗号化されて、無線によりプリンタ(又は基地局)に送信され、プリンタ又は基地局が(知られている)ページ構造に照らしてデータを解釈することができる。
【0121】
ネットページペン101の好ましい実施形態は、通常のマーキングインクペンとしての動作及びノンマーキングスタイラスとして(つまり、ポインタとして)の動作の両方を行う。しかし、マーキングの態様は、インターネットインターフェースとして使用される場合などには、ネットページシステムをブラウジングシステムとして使用するうえでは不要である。それぞれのネットページペンは、ネットページシステムに登録され、一意的なペンID 61を有する。図11は、ネットページペンクラスダイアグラムを示しており、これはネットページネットワーク上で登録サーバ11によって保持されるペン関連情報を反映する。
【0122】
ペン先がネットページと接触すると、ペンは、その位置及び配向をページに相対的に決定する。ペン先は、力センサーに取り付けられ、ペン先にかかる力は、閾値に関して解釈され、ペンが「上がっている(アップ)」のか「降りている(ダウン)」のかを示す。このため、ペン先で押すことによりページ上のインタラクティブ要素を「クリック」し、例えば、ネットワークに情報を要求することができる。さらに、力は連続値として取り込まれ、例えば、署名の力学的プロセス全体を照合することができる。力センサーについては、第8節でさらに詳しく説明される。
【0123】
ペンは、赤外線スペクトルで、ペン先の近くにあるページの一領域193を撮像することにより、ネットページ上のそのペン先の位置及び配向を決定する。これは、最も近い位置にあるタグを復号化し、撮像されたタグ上の観察された遠近歪み及びペンの光学系の知られている幾何学的形状からタグに相対的なペン先の位置を計算する。タグの位置分解能は、低い場合があるけれども、ページ上のタグ密度は、タグサイズに反比例するので、調整された位置分解能は、極めて高く、正確な手書き認識に必要な最小分解能を超える。
【0124】
ネットページに関するペンアクションは、一連のストロークとして取り込まれる。ストロークは、ペンダウンイベントによって開始され、その後のペンアップイベントによって完了する、ページ上のタイムスタンプが記録されたペン位置の1つの系列からなる。ストロークは、さらに、ページIDが変化したときに必ずネットページのページID 50をタグとして付けられ、通常の状況下では、ストロークの開始時に行われる。
【0125】
それぞれのネットページペンには、現在の選択826が関連付けられており、これにより、ユーザーは、コピー及び貼り付けオペレーションなどを実行できる。選択には、タイムスタンプが付けられており、これにより、システムは定められた期間を過ぎた後にその選択を破棄することができる。現在の選択では、ページインスタンスの一領域を記述する。これは、ページのバックグラウンド領域に関してペンを通じて取り込まれた一番最近のデジタルインクストロークからなる。これは、選択ハイパーリンクアクティブ化を介してアプリケーションにサブミットされた後にアプリケーション特有の方法で解釈される。
【0126】
それぞれのペンは、現在のペン先824を有する。これは、ペンによってシステムに最後に通知されたペン先である。上述のデフォルトのネットページペンの場合、マーキング用黒色インクペン先又はノンマーキングスタイラスペン先のいずれかが現在のペン先である。それぞれのペンは、さらに、現在のペン先スタイル825を有する。これは、例えば、ユーザーがパレットから色を選択したことに対する応答として、アプリケーションによってペンに最後に関連付けられたペン先スタイルである。デフォルトのペン先スタイルは、現在のペン先に関連付けられているペン先スタイルである。ペンを通じて取り込まれたストロークは、現在のペン先スタイルをタグ付けされる。ストロークは、その後再現される場合に、タグ付けに使用されたペン先スタイルで再現される。
【0127】
ペン101は、1つ又は複数のボタン209を有する場合があり、これらのボタンは、ペンのモードを選択するためにユーザーによって押される。ペンの挙動を決定するために(1つ又は複数の)ボタンが使用され、次いでペンの挙動はページサーバ10によってストロークがどのように解釈されるかを決定する。
【0128】
ペンが、通信できるリレーデバイス601の範囲内にある限り、ペンは、「オンライン」LEDをゆっくり点滅させる。ペンがページに関してストロークを復号化することに失敗した場合、「エラー」LEDを一瞬点灯させる。ペンがページに関してストロークを復号化することに成功した場合、「ok」LEDを一瞬点灯させる。
【0129】
取り込まれたストロークのシーケンスが、デジタルインクと称される。デジタルインクは、手書きのオンライン認識及び署名のオンライン照合のための描画及び手書きのデジタル交換の基盤をなす。
【0130】
ペンは、無線通信を行い、短距離無線リンクを介してリレーデバイス601にデジタルインクを送信する。送信されたデジタルインクは、プライバシー及び機密保護のため暗号化され、効率よく伝送できるようにパケット化されるが、プリンタでタイミングよく処理できるようにペンアップイベント発生時に常にフラッシュされる。
【0131】
ペンは、リレーデバイス601の範囲外にある場合、これは、デジタルインクを、10分を超える連続する手書きの容量を有する、内部メモリにバッファリングする。ペンがもう一度リレーデバイスの範囲内に入ったら、これはバッファリングされているデジタルインクを転送する。
【0132】
ペンを登録できるリレーデバイスの数に制限はないが、すべての状態データが紙とネットワークの両方のネットページ内に置かれるため、特定の時点においてペンがどのリレーデバイスと通信しているかは、概して重要でない。
【0133】
ペンの一実施形態は、図8から図10を参照しつつ、以下の第7節でさらに詳しく説明される。
【0134】
6 ネットページのインタラクション
ネットページリレーデバイス601は、ネットページ1とのインタラクションのためにペンが使用される場合にペン101からのストロークに関係するデータを受け取る。タグ4の符号化データ3は、ストロークなどの移動を実行するために使用される場合にペンによって読み取られる。このデータによって、特定のページの識別を決定し、そのページに関するペンの位置決めの指示を得ることができる。ページID 50及びペンの少なくとも1つの位置を含むインタラクションデータは、リレーデバイス601に送信され、そこで、DNSを介して、ストロークのページID 50を、対応するページインスタンス830を保持するネットページページサーバ10のネットワークアドレスに帰着させる。次いで、ストロークをページサーバに送信する。ページが前の方のストロークにおいて最近識別されていた場合、リレーデバイスは、すでに、キャッシュ内に関連するページサーバのアドレスを有している可能性がある。それぞれのネットページは、ネットページページサーバによって永続的に保持されるコンパクトページレイアウトからなる(以下を参照のこと)。ページレイアウトとは、典型的にはネットページネットワーク上の他の場所に格納されている、イメージ、フォント、テキスト断片などのオブジェクトのことである。
【0135】
ページサーバは、ペンからストロークを受け取ると、ストロークの適用先となるページ記述を取り出し、そのストロークが交差するページ記述の要素を決定する。そこで、関連する要素の型に関してストロークを解釈することができる。
【0136】
「クリック」とは、ペンダウン位置とその後のペンアップ位置との間の距離と時間が両方とも何らかの小さな最大値よりも小さいストロークのことである。クリックによってアクティブ化されるオブジェクトは、典型的には、クリックがアクティブ化されることを必要とし、したがって、長引いたストロークは無視される。「ぞんざいな」クリックなどペンアクションの登録失敗は、ペンの「ok」LEDからの応答がないことでわかる。
【0137】
ネットページページ記述には、ハイパーリンクとフォームフィールドの2種類の入力要素がある。フォームフィールドによる入力も、関連付けられているハイパーリンクのアクティブ化をトリガしうる。
【0138】
6.1 ハイパーリンク
ハイパーリンクは、メッセージをリモートアプリケーションに送信する一手段であり、典型的には、ネットページシステムにおける表示又は印刷による応答を引き出す。
【0139】
ハイパーリンク要素844は、ハイパーリンクのアクティブ化を取り扱うアプリケーション71、アプリケーションへのハイパーリンクを識別するリンクID 54、ユーザーのアプリケーションエイリアスID 65をハイパーリンクアクティブ化に含めるようシステムに求める「エイリアス要求」フラグ、及びハイパーリンクがお気に入りとして記録されるか、又はユーザーの履歴に現れるときに使用される記述を識別する。ハイパーリンク要素クラスダイアグラムは、図16に示されている。
【0140】
ハイパーリンクがアクティブ化されると、ページサーバは、ネットワーク上のどこかにあるアプリケーションに要求を送信する。アプリケーションは、アプリケーションID 64によって識別され、アプリケーションIDは、DNSを介して通常の方法で帰着させられる。ハイパーリンクには、図17に示されているように、一般ハイパーリンク863、フォームハイパーリンク865、及び選択ハイパーリンク864の3種類がある。一般ハイパーリンクは、リンクドキュメントの要求を実行するか、或いは単純に、サーバにプリファレンスを信号として送ることができる。フォームハイパーリンクは、対応するフォームをアプリケーションにサブミットする。選択ハイパーリンクは、現在の選択をアプリケーションにサブミットする。現在の選択に、単語テキスト断片が含まれる場合、例えば、アプリケーションは、その単語が出現する文脈内での単語の意味を示す単一ページのドキュメント、又は異なる言語への翻訳を返すことができる。それぞれのハイパーリンクの種類は、どのような情報がアプリケーションにサブミットされるかにより特徴付けられる。
【0141】
対応するハイパーリンクインスタンス862は、ハイパーリンクインスタンスが出現するページインスタンスに特有のものとすることができるトランザクションID 55を記録する。トランザクションIDを使用すると、ユーザー特有のデータをアプリケーション、例えばユーザーの代わりに購入アプリケーションによって保持される購入保留中の「ショッピングカート」に対し識別することができる。
【0142】
システムは、ペンの現在の選択826を選択ハイパーリンクアクティブ化に含める。システムは、関連付けられているフォームインスタンス868のコンテンツをフォームハイパーリンクアクティブ化に含めるが、ハイパーリンクに「submit delta」属性が設定されている場合には、最後のフォームサブミット以降の入力のみが含まれる。システムは、有効なリターンパスをすべてのハイパーリンクアクティブ化に含める。
【0143】
ハイパーリンク付きグループ866は、図18に示されているように、関連付けられたハイパーリンクを有するグループ要素838である。入力が、グループ内のフィールド要素を通じて実行される場合、そのグループに関連付けられているハイパーリンク844がアクティブ化される。ハイパーリンク付きグループは、ハイパーリンクの挙動をチェックボックスなどのフィールドに関連付けるために使用されうる。また、連続する入力をアプリケーションに送るために、フォームハイパーリンクの「submit delta」属性とともに使用されうる。したがって、これは、「黒板」インタラクションモデルをサポートするために、つまり、入力が取り込まれ、出現するとすぐに共有される場合に、使用されうる。
【0144】
6.2 ハイパーリンクアクティブ化プロトコル
ハイパーリンクアクティブ化プロトコルの好ましい一実施形態は、図42に示されている。
【0145】
ユーザーが、ネットページペンでネットページをクリックすると、ペンは、そのクリックをインタラクションデータの形式で最も近い位置にあるネットページリレーデバイス601に伝達する。このクリックで、ページとそのページ上の配置が識別される。リレーデバイス601では、ペン接続プロトコルからペンのID 61をすでに認識している。
【0146】
リレーデバイス601は、DNSを介して、特定のページID 50を取り扱うページサーバ10のネットワークアドレスを決定する。そのアドレスは、ユーザーが同じページとのインタラクションを最近行っていた場合にキャッシュ内にすでに入っている可能性がある。次いで、リレーデバイス601は、ペンID、その固有のデバイスID 62、ページID及びクリック配置をページサーバに転送する。
【0147】
ページサーバは、ページIDによって識別されたページ記述5をロードし、クリックが、もしあればどの入力要素のゾーン58内で行われているかを決定する。関連する入力要素が、ハイパーリンク要素844であると仮定した場合、ページサーバは、関連付けられているアプリケーションID 64及びリンクID54を取得し、DNSを介して、アプリケーション71をホストするアプリケーションサーバのネットワークアドレスを決定する。
【0148】
ページサーバは、ペンID 61を使用して、登録サーバ11から対応するユーザーID 60を取得し、次いで、大域的に一意的なハイパーリンクリクエストID 52を割り当て、ハイパーリンクリクエスト934を構成する。ハイパーリンクリクエストクラスダイアグラムは、図26に示されている。ハイパーリンクリクエストは、要求側のユーザー及びリレーデバイスのIDを記録し、クリックされたハイパーリンクインスタンス862を識別する。次いで、ページサーバは、それ固有のサーバID 53、ハイパーリンクリクエストID、及びリンクIDをアプリケーションに送信する。
【0149】
アプリケーション側では、アプリケーション特有のロジックに従って応答ドキュメントを生成し、IDサーバ12からドキュメントID 51を取得する。次いで、アプリケーションは、ドキュメントを、ドキュメントの新規に割り当てられたIDに関わるページサーバ10bに、要求側ページサーバのID及びハイパーリンクリクエストIDと一緒に送信する。
【0150】
第2のページサーバは、ハイパーリンクリクエストID及びアプリケーションIDを第1のページサーバに送信して、対応するユーザーID及びデバイスID 62を取得する。第1のページサーバは、そのハイパーリンクリクエストが失効しているか、又は異なるアプリケーションに対するものである場合にそのリクエストを拒絶する。
【0151】
第2のページサーバは、ドキュメントインスタンス及びページID 50を割り当てて、新規に割り当てられたページIDをアプリケーションに返し、完全なドキュメントを自データベースに追加し、最後に、ページ記述を要求側リレーデバイスに送信する。
【0152】
ハイパーリンクインスタンスは、意味のあるトランザクションID 55を含むことができ、この場合、第1のページサーバは、アプリケーションに送信されるメッセージ中にトランザクションIDを含める。これにより、アプリケーションは、ハイパーリンクアクティブ化のためトランザクション特有のコンテキストを確立することができる。
【0153】
ハイパーリンクが、ユーザーエイリアスを必要とする、つまり、その「alias required」属性が設定された場合、第1のページサーバは、ペンID 61とハイパーリンクのアプリケーションID 64の両方を登録サーバ11に送信し、ペンIDに対応するユーザーIDだけでなくアプリケーションIDとユーザーIDに対応するエイリアスID 65も取得する。これは、アプリケーションに送信されるメッセージ中にエイリアスIDを含み、これにより、アプリケーションはハイパーリンクアクティブ化のためユーザー特有のコンテキストを確立することができる。
【0154】
6.3 フォーム
フォームは、印刷されたネットページを通じて関係する一組の入力を取り込むために使用される関連する入力フィールドの集合体を定めるものである。フォームにより、ユーザーは1つ又は複数のパラメータを、サーバ上で実行中のアプリケーションソフトウェアプログラムにサブミットすることができる。
【0155】
フォーム867は、ドキュメント階層内の一グループ要素838である。これは、最終的には一組の終端フィールド要素839を含む。フォームインスタンス868は、フォームの印刷インスタンスを表す。これは、フォームのフィールド要素845に対応する一組のフィールドインスタンス870からなる。それぞれのフィールドインスタンスは、関連付けられた値871を有し、その型は対応するフィールド要素の型に依存する。それぞれのフィールド値は、特定の印刷フォームインスタンスを通じて、つまり、1つ又は複数の印刷ネットページを通じて入力を記録する。フォームクラスダイアグラムは、図19に示されている。
【0156】
それぞれのフォームインスタンスは、そのフォームがアクティブであるか、フリーズしているか、サブミットされたか、無効であるか、又は失効しているかを示すステータス872を有する。フォームは、最初に印刷されるときにはアクティブである。フォームは、いったん署名されるか、又はフリーズ時間に達すると、フリーズする。フォームは、その複数のサブミットハイパーリンクのうちの1つがアクティブ化された後、ハイパーリンクにその「submit delta」属性が設定されていない限り、サブミットされる。フォームは、ユーザーがvoid form、reset form、又はduplicate formページコマンドを呼び出すと無効になる。フォームは、その指定された失効時間に達すると、つまり、フォームがアクティブである時間がフォームの指定寿命を超えた場合に、失効する。フォームがアクティブである場合、フォーム入力が許可される。アクティブでないフォームを介した入力は、代わりに、関連するページインスタンスのバックグラウンドフィールド833において取り込まれる。フォームがアクティブであるか、又はフリーズしている場合、フォームサブミットが許可される。フォームがアクティブ又はフリーズの状態でないときにフォームをサブミットしようとしても、拒絶され、代わりに、フォームステータスレポートを引き出す。
【0157】
それぞれのフォームインスタンスは、それから導出されるフォームインスタンスに関連付けられ(59で)、バージョン履歴を提供する。これにより、特定の期間のフォームの最新バージョンを除くすべてを検索から除外することができる。
【0158】
入力はすべて、デジタルインクとして取り込まれる。デジタルインク873は、一組のタイムスタンプ付きストロークグループ874からなり、それぞれは一組のスタイル付きストローク875からなる。それぞれのストロークは、一組のタイムスタンプ付きペン位置876からなり、それぞれの位置はさらにペンの配向及びペン先の力を含む。デジタルインククラスダイアグラムは、図20に示されている。
【0159】
フィールド要素845は、チェックボックスフィールド877、テキストフィールド878、描画フィールド879、又は署名フィールド880とすることができる。フィールド要素クラスダイアグラムは、図21に示されている。フィールドのゾーン58内に取り込まれるデジタルインクが、フィールドに割り当てられる。
【0160】
チェックボックスフィールドは、図22に示されているように、関連付けられたブール値881を有する。チェックボックスフィールドのゾーン内に取り込まれたマーク(チェックマーク、十字形、ストローク、塗りつぶしジグザグなど)によって、真値がフィールドの値に割り当てられる。
【0161】
テキストフィールドは、図23に示されているように、関連付けられたテキスト値882を有する。テキストフィールドのゾーン内に取り込まれたデジタルインクは、オンライン手書き認識により自動的にテキストに変換され、そのテキストがフィールドの値に割り当てられる。オンライン手書き認識は、よく理解されている(例えば、相互参照により本明細書に組み込まれているTappert、C.、C.Y.Suen並びにT.Wakahara、「The State of the Art in On−Line Handwriting Recognition」、IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence、Vol.12、No.8、1990年8月を参照のこと)。
【0162】
署名フィールドは、図24に示されているように、関連付けられたデジタル署名値883を有する。署名フィールドのゾーン内に取り込まれたデジタルインクは、ペンの所有者の識別に関して自動的に照合され、フィールドが一部となっているフォームのコンテンツのデジタル署名が生成され、フィールドの値に割り当てられる。デジタル署名は、そのフォームを所有するアプリケーションに特有のペンユーザーの秘密署名鍵を使用して生成される。オンライン署名照合はよく理解されている(例えば、相互参照により本明細書に組み込まれているPlamondon、R.及びG.Lorette、「Automatic Signature Verification and Writer Identification − The State of the Art」、Pattern Recognition、Vol.22、No.2、1989年を参照のこと)。
【0163】
フィールド要素は、「hidden」属性が設定されている場合に隠される。隠しフィールド要素は、ページ上に入力ゾーンを持たず、入力を受け付けない。これは、フィールドを含むフォームがサブミットされたときにフォームデータに含まれる関連付けられているフィールド値を持つことができる。
【0164】
削除を示す取り消し線などの「Editing」コマンドも、フォームフィールド内で認識可能である。
【0165】
手書き認識アルゴリズムは、「オフライン」(つまり、ペンマーキングのビットマップにのみアクセスできる)ではなく、「オンライン」(つまり、ペン移動の力学的プロセスにアクセスできる)で動作するので、改行なしでばらばらに書かれた文字を、書き込む人に依存する学習フェーズなしで比較的高い精度で認識できる。しかし、書き込む人に依存する手書きモデルは、時間の経過とともに自動的に生成され、必要ならば前もって生成されるようにできる。
【0166】
デジタルインクは、すでに述べたように、一連のストロークからなる。特定の要素のゾーン内で始まるストロークが、要素のデジタルインクストリームに付加され、解釈に備える。オブジェクトのデジタルインクストリームに付加されていないストロークは、バックグラウンドフィールドのデジタルインクストリームに付加される。
【0167】
バックグラウンドフィールド内に取り込まれたデジタルインクは、選択ジェスチャーとして解釈される。1つ又は複数のオブジェクトの周囲は、概して、外接オブジェクトの選択として解釈されるが、実際の解釈はアプリケーションによって異なる。
【0168】
表2は、ペンとネットページとのいくつかの典型的なインタラクションをまとめたものである。
【表2】
システムは、それぞれのペンに対する現在の選択を保持する。選択は、単純に、バックグラウンドフィールド内に取り込まれた一番最近のストロークからなる。選択は、必ず予測可能な挙動となるように不活動タイムアウトの後にクリアされる。
【0169】
すべてのフィールド内に取り込まれたローデジタルインクは、ネットページページサーバ上に保持され、適宜、フォームがアプリケーションにサブミットされるとフォームデータとともに送信される。これにより、アプリケーションは、手書きされたテキストの変換など、元の変換が疑わしい点がある場合にローデジタルインクの問い合わせを行うことができる。これは、例えば、いくつかのアプリケーション固有の一貫性チェックに通らないフォームに対するアプリケーションレベルの人間の介入を伴いうる。これの拡張として、フォームのバックグラウンド領域全体が、描画フィールドとして指定されうる。次いで、アプリケーションは、フォームの明示的フィールドの外にデジタルインクが存在するということに基づき、フォームを人間のオペレータに送ることを決定することができるが、ただし、ユーザーがこれらのフィールドの外で記入済みフィールドへの修正を示している可能性のあることを仮定する。
【0170】
図25は、ネットページに相対的なペン入力の取り扱いプロセスの流れ図を示している。このプロセスは、ペンからストロークを(884で)受け取ることと、ストローク内のページID 50が指しているページインスタンス830を(885で)識別することと、ページ記述5を(886で)取り出すことと、ストロークが交差するゾーン58のフォーマット済み要素839を(887で)識別することと、フォーマット済み要素がフィールド要素に対応しているかどうかを(888で)判定し、もしそうならば、受け取ったストロークをフィールド値871のデジタルインクに(892で)付加し、フィールドの累積したデジタルインクを(893で)解釈し、フィールドがハイパーリンク付きグループ866の一部であるかどうかを(894で)判定し、もしそうならば、関連付けられているハイパーリンクを(895で)アクティブ化することと、それとは別に、フォーマット済み要素がハイパーリンク要素に対応しているかどうかを(889で)判定し、もしそうならば、対応するハイパーリンクを(895で)アクティブ化することと、それとは別に、入力フィールド又はハイパーリンクが存在しない場合に、受け取ったストロークをバックグラウンドフィールド833のデジタルインクに(890で)付加することと、受け取ったストロークを、登録サーバによって保持されているような、現在のペンの現在の選択826に(891で)コピーすることとからなる。
【0171】
図25Aは、図25に示されているプロセスにおけるステップ893の詳細流れ図を示しており、フィールドの蓄積されたデジタルインクは、フィールドの種類に応じて解釈される。このプロセスは、フィールドがチェックボックスであるかどうかを(896で)判定し、またデジタルインクがチェックマークを表しているかどうかを(897で)判定し、もしそうならば、真値をフィールド値に(898で)割り当てることと、それとは別に、フィールドがテキストフィールドであるかどうかを(899で)判定し、もしそうならば、適切な登録サーバの助けを借りて、デジタルインクをコンピュータテキストに(900で)変換し、変換されたコンピュータテキストをフィールド値に(901で)割り当てることと、それとは別に、フィールドが署名フィールドであるかどうかを(902で)判定し、もしそうならば、適切な登録サーバの助けを借りて、デジタルインクをペンの所有者の署名として(903で)照合し、これもまた登録サーバの助けを借り、対応するアプリケーションに関係するペン所有者の秘密署名鍵を使用して、対応するフォームのコンテンツのデジタル署名を(904で)作成し、デジタル署名をフィールド値に(905で)割り当てることとからなる。
【0172】
7 ネットページペン及びプリンタの説明
7.1 ペンの機構
図8及び図9を参照すると、一般的に参照番号101で示されているペンは、ペンコンポーネントを装着するための内部空間104を定める壁103を有するプラスチック成形物の形態のハウジング102を備えている。ハウジング102上にモードセレクターボタン209が備えられている。ペン頂部105は、ハウジング102の一端106に回転可能なように装着されて動作する。半透明カバー107は、ハウジング102の対向端108に固定される。カバー107はまた、成形プラスチック製であり、ハウジング102内に装着されたLEDのステータスをユーザーが見られるようにするために半透明材料を使って形成されている。カバー107は、ハウジング102の端部108を実質的に囲んでいる主部109及び主部109から後ろへ突き出て、ハウジング102の壁103内に形成された対応する溝111内に嵌る突起部110を備える。無線アンテナ112は、ハウジング102内の突起部110の背後に装着される。カバー107上の開口113Aを囲むネジ山113は、対応するネジ山115を含む形で金属末端部114を受け入れるように配置されている。金属末端部114は、インクカートリッジを交換できるように取り外し可能である。
【0173】
さらに、カバー107内には、フレックスPCB 117上に3色ステータスLED 116が装着されている。アンテナ112も、フレックスPCB 117上に装着されている。ステータスLED 116は、全方位にわたってよく見えるようにペン101の頂部に装着される。
【0174】
ペンは、通常のマーキングインクペン及びノンマーキングスタイラスの両方として動作しうる。ペン先119を伴うインクペンカートリッジ118及びスタイラス先端121を伴うスタイラス120が、ハウジング102内に並べて装着される。インクカートリッジペン先119又はスタイラスペン先121のいずれかが、ペン頂部105を回転させることにより、金属末端部114の開放端122を通して前方に出されうる。それぞれのスライダーブロック123及び124は、それぞれ、インクカートリッジ118及びスタイラス120に装着される。回転可能なカム筒125は、動作時にペン頂部105に固定され、それと一緒に回転するように配列される。カム筒125は、カム筒の壁181内に溝の形でカム126を備える。スライダーブロック123及び124から突き出ているカム従動子127及び128は、カム溝126内に収まる。カム筒125が回転すると、スライダーブロック123又は124は、互いに相対的に移動し、金属末端部114内の孔122を通してペン先119又はスタイラスペン先121を突き出す。ペン101は3つの動作状態を有する。頂部105を90度ステップまで回すことにより、これら3つの状態は以下のようになる。
・スタイラス120のペン先121が出る。
・インクカートリッジ118のペン先119が出る。
・インクカートリッジ118のペン先119も、スタイラス120のペン先121も出ない。
【0175】
第2のフレックスPCB 129は、ハウジング102内に収まっている電子回路シャシ130上に装着される。第2のフレックスPCB 129は、表面上に投影する赤外線を送るための赤外線LED 131を装着する。イメージセンサー132は、表面から反射した放射線を受け取るために第2のフレックスPCB 129上に装着されるように構成されている。第2のフレックスPCB 129は、さらに、RF送信機及びRF受信機を備える無線周波数チップ133、並びにペン101の動作を制御するためのコントローラチップ134を装着する。光学系ブロック135(成型透明プラスチックで形成されている)は、カバー107内に配置され、赤外線ビームを表面上に投射し、イメージセンサー132上へのイメージを受け取る。電源線136は、第2のフレックスPCB 129上のコンポーネントを、カム筒125内に取り付けられている電池接点137に接続する。端子138は、電池接点137とカム筒125に接続する。3ボルト充電式電池139が、カム筒125内に配置され、電池接点と接触する。誘導充電コイル140は、第2のフレックスPCB 129の周りに装着されており、これで、誘導作用を介して電池139の充電を行うことができる。第2のフレックスPCB 129は、さらに、スタイラス120又はインクカートリッジ118のいずれかが書くために使用されたときにカム筒125内の変位を検出するための力センサー143を装着し、ペン先119又はスタイラスペン先121によって表面に加えられる力を測定することができるようにしている。力センサー143の例示的な配置については、第8節でさらに詳しく説明される。
【0176】
ゴム製グリップパッド141及び142は、ペン101の握りを補助するためにハウジング102の端部108に向けて備えられており、頂部105は、さらに、ペン101をポケットに留めるためのクリップ142も備える。
【0177】
7.2 ペンコントローラ
ペン101は、赤外線スペクトルで、ペン先の近くにある表面の一領域を撮像することにより、ペン先(スタイラスペン先121又はインクカートリッジペン先119)の位置を決定するように配列されている。これは、最も近い位置にある配置タグから配置データを記録し、また光学系135及びコントローラチップ134を使用して配置タブからペン先121又は119の距離を計算するように配列される。コントローラチップ134は、ペンの配向及び撮像されたタグ上で観察される遠近歪みからのペン先−タグ間距離を計算する。
【0178】
ペン101は、RFチップ133及びアンテナ112を使用して、デジタルインクデータ(機密保護のため暗号化され、効率よく伝送できるようにパッケージ化されている)をコンピューティングシステムに送信することができる。
【0179】
ペンがリレーデバイス601の範囲内にある場合、デジタルインクデータは、形成されるのと同時に送信される。ペン101が、範囲外に移動すると、デジタルインクデータは、ペン101内にバッファリングされ(ペン101の回路は、表面上の約12分間のペンの動作に対するデジタルインクデータを格納するように配置されたバッファを備える)、後から送信できる。
【0180】
参照により本明細書に内容が組み込まれている出願人の米国特許第6,870,966号明細書では、交換可能なインクカートリッジペン先及びスタイラスペン先を有しているペン101について説明されていた。これにより、また図27を参照すると、ペン101がコンピューティングシステムに接続すると、コントローラ134は、ペンID、ペン先ID 175、現在の絶対時間176、及びオフラインになる前にシステムから最後に行われた取得の絶対時間をシステムに通知する。ペンIDを使用することで、コンピューティングシステムは、複数のペンがコンピューティングシステム内で動作しているときにペンを識別することができる。
【0181】
ペン先IDを使用することにより、コンピューティングシステムはどのペン先(スタイラスペン先121又はインクカートリッジペン先119)が現在使用されているかを識別することができる。コンピューティングシステムは、どのペン先が使用されているかに応じてシステムのオペレーションを変えることができる。例えば、インクカートリッジペン先119が使用されている場合、表面に対しなされたインクマーキングによって即時フィードバックが返されるため、コンピューティングシステムはフィードバック出力の生成を遅らせることができる。スタイラスペン先121が使用されている場合、コンピューティングシステムは、即時フィードバック出力を生成することができる。
【0182】
ユーザーが前のストロークと次のストロークとの間でペン先119、121を変えることができるため、ペン101は、適宜、ストローク175についてペン先IDを記録する。これは、後のストロークに暗黙のうちに関連付けられているペン先IDとなる。
【0183】
特定のペン先特性を有するカートリッジは、ペン内で交換可能であってよい。ペンコントローラ134は、カートリッジのペン先ID 175を取得するためにカートリッジに問い合わせを行うことができる。ペン先ID 175は、ROM又はカートリッジ上のバーコードに格納されうる。コントローラ134は、変更するときには必ずシステムにペン先IDを通知する。これにより、システムは、ストローク175を発生するために使用されるペン先の特性を判定することができ、これにより、その後、ストロークそれ自体の特性を再現することができる。
【0184】
コントローラチップ134は、ペン101内の第2のフレックスPCB 129上に装着される。図10は、コントローラチップ134のアーキテクチャをより詳細に例示するブロック図である。図10は、さらに、RFチップ133、イメージセンサー132、3色ステータスLED 116、IR照明LED 131、及び力センサー143の図である。
【0185】
ペンコントローラチップ134は、制御用プロセッサ145を備える。バス146は、コントローラチップ134のコンポーネント間のデータのやり取りを可能にする。フラッシュメモリ147及び512KB DRAM 148も備える。アナログ/デジタルコンバータ149は、力センサー143からのアナログ信号をデジタル信号に変換するように構成されている。
【0186】
イメージセンサーインターフェース152は、イメージセンサー132とインターフェースをとる。トランシーバコントローラ153及びベースバンド回路154も、RF回路155並びにアンテナ112に接続されているRF共振回路及びインダクタ156を備えるRFチップ133とインターフェースをとるように含まれている。
【0187】
制御用プロセッサ145は、イメージセンサー132を介して表面からタグからの配置データを取り込んで復号化し、力センサー143を監視し、LED 116及び131を制御し、無線トランシーバ153を介して短距離無線通信を処理する。これは、中程度の性能(約40MHz)の汎用RISCプロセッサである。
【0188】
プロセッサ145、デジタルトランシーバコンポーネント(トランシーバコントローラ153及びベースバンド回路154)、イメージセンサーインターフェース152、フラッシュメモリ147、及び512KB DRAM 148は、単一コントローラASICとして集積化されている。アナログRFコンポーネント(RF回路155並びにRF共振回路及びインダクタ156)は、別のRFチップ内に用意される。
【0189】
イメージセンサーは、IRフィルタを備える215×215ピクセルのCCD(このようなセンサーは、Matsushita Electronic Corporation製であり、参照により本明細書に組み込まれているItakura、K T Nobusada、N Okusenya、R Nagayoshi、及びM Ozakiの論文「A 1mm 50k−Pixel IT CCD Image Sensor for Miniature Camera System」、IEEE Transactions on Electronic Devices、Vol.47、No.1、2000年1月において説明されている)である。
【0190】
コントローラASIC 134は、ペン101が表面と接触していないときに一定の不活動期間の後に静止状態に入る。これは、力センサー143を監視する専用回路150を組み込んでおり、ペンダウンイベントが発生するとパワーマネージャ151を介してコントローラ134を目覚めさせる。
【0191】
無線トランシーバは、コードレスホンによって通常使用される免許不要の900MHz帯で、又はそれとは別に免許不要の2.4GHz工業科学医療(ISM)帯で通信し、周波数ホッピング及び衝突検出を用いて、干渉のない通信を可能にする。
【0192】
代替えの一実施形態では、ペンは、基地局又はネットページプリンタとの短距離通信用のIrDA(Infrared Data Association(赤外線通信協会))インターフェースを組み込んでいる。
【0193】
他の実施形態では、ペン101は、ペン101の軸の法平面内に取り付けられている一対の直交加速度計を備える。加速度計190は、図9及び10に点線の輪郭で示されている。
【0194】
加速度計を備えることにより、ペン101のこの実施形態は、表面配置タグを参照せずに運動を感知することができ、これにより、低いレートで配置タグをサンプリングすることができる。次いで、それぞれの配置タグIDは、表面上の位置ではなく、注目するオブジェクトを識別することができる。例えば、オブジェクトがユーザーインターフェース入力要素(例えば、コマンドボタン)である場合、入力要素の領域内にあるそれぞれの配置タグのタグIDで、入力要素を直接識別することができる。
【0195】
x及びy方向のそれぞれにおいて加速度計によって測定される加速度は、瞬間速度及び位置を出力するために時間に関して積分される。
【0196】
ストロークの開始位置は、知られていないため、ストローク内の相対的位置のみが計算される。位置積分により感知された加速度の誤差が累積するけれども、加速度計は、典型的には高分解能であり、誤差が累積するストロークの持続時間は短い。
【0197】
8 力センサー
ペンのペン先に接続するのに適している力センサーは、図28に例示されているように、1つの固定された板と少なくとも1つのバネに取り付けられている1つの移動可能な板とを有する平行板キャパシタである。外力がバネを圧縮し、これらの板の間の距離を変化させ、したがって静電容量を変化させる。静電容量の変化を測定することにより、外力の量を知ることができる。
【0198】
図28では、板の分離距離をバランスよく変えるのを補助するために、2つのバネが示されているが、1つのバネ又は2つよりも多いバネを使用することもできる。さらに、図28では、単にわかりやすくするために、バネは固定された板と移動可能な板との間に配置されているように示されており、(1つ又は複数の)バネは、これらの板に関して外部配置されうる。さらに、当業者であれば、他の平行キャパシタ配列、つまり他の機械的配列も、力センサーに利用できることを理解するであろう。また、当業者であれば、この例示的な力センサーをネットページシステム以外の状況及び環境に応用できることを理解するであろう。
【0199】
図28のこのような平行板キャパシタの可変静電容量は、
【数1】
により近似できるが、ただし、式中、K1は、与えられたセンサーに対する定数であり、dは、板の間の距離である。距離dは、バネへの外力fによって制御され、一配列では、圧縮し、外力に比例して距離dを縮めるバネに加えられる力を測定する。次いで、
【数2】
であるが、ただし、式中、K2は、外力なしの場合の板の間の初期距離であり、K3は、バネ定数に関係する。次いで、
【数3】
となる。
【0200】
静電容量Csenを測定し、それにより、外力fを決定する一方法では、デルタ/シグマ変調装置又はコンバータなどの容量センサー回路を使用する。従来のデルタ/シグマコンバータは、図29に例示されており、本発明の一実施形態によるデルタ/シグマ変調装置の第1の実施例は、図30に例示されている。両方の事例は、簡素化された形式で示されている、つまり、スイッチドキャパシタ回路のスイッチは、示されていない。これは、さらに、以下で説明されている他の回路図についても同様である。
【0201】
図29の回路では、励起信号Vexが平行板キャパシタCsenに印加され、信号bsは、平均値Voutがコンバータの出力を表すビットストリームである。デシメーションフィルタは、単一(又は多)ビット信号bsをコンバータの出力である多ビットデジタル信号に変換するために使用される。
【0202】
回路が平衡状態(つまり、Csen=0)である場合、デルタ/シグマコンバータは、そのビットストリームのデューティサイクルを50:50となるように調節する。積分器intの利得は、出力を直線的範囲に残せるフィードバックキャパシタCfにより制御される。キャパシタCsenの静電容量変化に対する感度は、基準キャパシタCrefによって制御される。コンパレータの方形波励起信号Vex及び出力Voutが同じ電圧振幅を有する場合、変換利得は、振幅と無関係になる。次いで、コンバータ出力は、
【数4】
として表すことができ、ただし、式中、Kdigは、出力のところにあるデシメーションフィルタの利得である。そこで、
【数5】
となるが、ただし、式中、K4=K2K3及びK5=K1K3Kdig/Crefである。
【0203】
次いで、Vdigからの測定された力fmeasの計算は、除算と減算を必要とする。
【0204】
本発明の実施形態では、この計算は、図30に例示されているように、平行板キャパシタCsenをデルタ/シグマコンバータのフィードバック経路内に置くことにより回避される。特に、平行板キャパシタCsen及び基準キャパシタCrefの位置は、キャパシタCsenの板のうちの1つは、コンバータの出力に直接接続され、基準キャパシタCrefは、コンバータの入力のところに置かれるように、従来のコンバータ回路における位置から逆にされている。
【0205】
次に、Vdigを単極信号として生成するコンバータの出力のところにデシメーションフィルタを使用することで、ビットストリームを反転することができ、
【数6】
となるように減算を行うと、
(式7) fmeas=K6Vdig
となるが、ただし、式中、
【数7】
である。
【0206】
f=0のときに成り立つCref=Csenminの場合、
【数8】
となる。
【0207】
式4及び6からわかるように、従来のコンバータ構成では、Cに比例する出力を発生するが、本発明の構成では、距離に比例する1/Cに比例する出力を発生する。したがって、本発明の構成では、従来の構成に比べて小さな距離変化に対してより大きな静電容量変化を測定することができる。その結果、本発明の力センサーは、必要な電力を最小限に抑えつつ感知デバイスのペン先に加わる手書きの力などの比較的軽い力を正確に感知することができる。
【0208】
比較例の結果は、図31及び33に示されている。この実施例では、両方の種類のコンバータが同じ力及び出力符号範囲を取り扱うように利得が調整されている10ビットコンバータが使用される。図31は、Cに比例するコンバータについて非線形出力符号対外力の関係を示しており、図32は、Cに比例するコンバータについて量子化による誤差が力の減少とともに増大するが、誤差は1/Cコンバータについては一定していることを示している。つまり、Cに比例する構成では、(ネットページペンアプリケーションでは精度に関して最も重要なものである)範囲の力の低い側で分解能が失われる。
【0209】
本発明の上述の構成は、1次のシグマ/デルタ容量センサーである。しかし、高次のセンサーも可能であり、本発明の範囲内にある。例えば、可能な2次シグマ/デルタ容量センサーは、図33に示されている。
【0210】
2次センサーでは、図33に例示されているようなキャパシタCcanの追加を通じて力のゼロ調整を使用し、これにより、キャパシタCsen上の寄生容量を相殺できる。この構成では、1次構成に比べて最適化できるパラメータが増えている。入力信号に対するコンバータのローパス応答は、より明瞭になり、カットオフ周波数は、ペン先を上げたときに、Csenに比例し、つまりCsenの最小値をとり、コンバータが大半のフィルタ処理を行う。
【0211】
1次(又は2次)構成のさらなる改善については、図34及び35に関して説明されている。従来の回路は、図34に例示されており、そこでは相関二重サンプリング(CDS)がオフセットの低減のため適用されている。Csenが増大してゆくと、従来のデータ/シグマコンバータは、信号bsで50%のデューティサイクルを有する平衡状態に達する。したがって、変換範囲の半分(0%から50%)しか利用可能でない。
【0212】
他方で、図35に例示されている本発明の他の構成では、CDSが再び適用されるが、キャパシタCsenの信号bsは、0(ゼロ)で置き換えられ、コンバータの平衡状態を100%デューティサイクルに変える。したがって、変換範囲全体が利用可能になる。
【0213】
特に、キャパシタCrefは、Csenが最小予測値にあるときにシグマ/デルタコンバータが飽和に近くなるように調整されなければならないオフセットを設定するために使用される。キャパシタCsenでゼロ入力信号とともに積分器intでCDSが使用される場合、キャパシタCsenに印加されるビットストリームは、コンバータの実質的に全範囲を使用できるように変更される。
【0214】
CDSは、図36に示されているように、サンプリングと評価の2つのフェーズで動作し、積分器intへの入力(キャパシタCsenを通じて)は、Vint=Veval−Vsampである。信号bsが値0及び1をとることができること、並びに回路の平均Vint=0が平衡することが仮定される。Vintは、図34の従来の回路については表3、図35のオフセット回路については表4において計算される。
【表3】
したがって、平衡に関して、信号bsは、平均Vint=0を維持するためにデューティサイクル50%を必要とする。
【表4】
したがって、平衡に関して、平均Vint=0を維持するために信号bs=1(時間の100%)である。
【0215】
8.1 挙動モデリング
ネットページシステムの力センサーのいくつかの要件を以下に示す。
・ペンダウン遅延時間<1.5ms
・最終サンプリングレート50Hzから150Hz
・10ビットを単調に出力する
・消費電力<100uW(55uA@1.8V)
・動作温度範囲−10℃から55℃
・6グラムでペンダウン検出
・精度<20%
これらの要件を考慮して、VHDLモデリングが実行された。
【0216】
8.1.1 1次のVHDL
1次シグマ/デルタ容量センサーについて書かれたVHDLモデルでは、本発明の、距離に比例する(1/C)構成を調べる。
【0217】
テストベンチでは、dを5距離単位で直線的に段階的に増分して、式1を計算した(最初の値を除き、0ではなく0.5とした)。このシミュレーションの結果、Cf=8pF及びCref=0.49pFとしてCsenに応じて一組の直線的ステップが得られた。積分器intの出力の振幅は、キャパシタCsenによって制御され、Csen=20pFのときに飽和する。
【0218】
出力電圧は、Cref/Csen(例えば、0.08pF/0.1pF=0.8V)で与えられる。この構成では、オフセットを設定することしかできない(フィードバックキャパシタCfは積分器利得を制御するだけである)。利得は、キャパシタCsenと平行に他のキャパシタを接続することにより低減されうるが、これにより、非線形性が持ち込まれる。
【0219】
フィードバックキャパシタCfにより、積分器のダイナミックレンジを最適化することができる。クリッピングが許容される場合に積分器が適切に機能すると、クリッピングがCsenの最大値で生じるようにCfに対する最小値を使用すべきである。
【0220】
モードを制御する選択ビットで、両方の構成を実装することも可能である。機械的公差があるため、実用的なセンサーは、オフセットと利得を設定するために2点較正を必要とする。
【0221】
8.1.2 2次のVHDL
すでに説明されているように、図33の2次構成では、1次設計に比べて最適化できるパラメータが増えている。
【0222】
積分器int1の出力のdcレベルは、比Cbs2/Cin2によって制御できる。これにより、クリッピングなしでできる限り高くなければならない積分器int1の利得の設定に自由度をある程度持たせることができる。ペンアップではクリッピングが生じないことが重要であり、さもなければ、ペンダウン閾値のマージンが減少する。Cin1は、コンバータがクリッピングなしで変換範囲の下限に近くなるように設定される。ビットストリームにおけるデューティサイクルが低すぎると、結果として、積分器int2に非常に大きな偏移が生じる。常にADCの範囲内に留まることを保証するためにセンサーのゼロ力静電容量の長期間ドリフトに関してある程度の斟酌が必要である。
【0223】
このモデルでは、センサーは、キャパシタCsenの板距離が50umから150umの範囲内にある場合に3:1の静電容量変化を生じると仮定される。50umでの静電容量は、1pFであった。次いで、静電容量(pF単位)は、d(um)を板距離として、
【数9】
で与えられる。dの値は、
【数10】
で与えられる。次いで、
【数11】
となる。
【0224】
Ccanの値は、センサー上の寄生容量を相殺するように調整される。Ccanの量子化による残っている誤差が、結果として利得誤差となる。他方、必要な利得精度は、<20%である。Ccanの分解能が、100fFであり、残っているオフセットがCint1で除外された場合、コンバータは、500gではなく455gを読み取る、つまり−9%の利得誤差(ソフトウェアで補正可能)となるであろう。
【0225】
3つのデシメータを試したが、通常は、ステップ応答が整定に約3サンプルを要する最適なノイズフィルタリングが行われるように、3次デシメータを2次コンバータとともに使用すべきである。<2msのペンダウン検出時間要件を満たすために、出力サンプルは、1.5kHzに設定された。42のデシメーション係数は、64kHzの入力サンプリングクロックで使用された。1次デシメータでは、このデシメーション係数で、必要な10ビットの分解能は得られない。2次デシメータでは、10.8ビットの分解能が得られ、平均すると、1.33msで1サンプル分早くペンダウンを検出することが可能であるが、確度は落ちる。
【0226】
この実装では、CDSを使用して、OTAオフセットを相殺し、最も重要なのは積分器int1のものである。CDSは、さらに、キャパシタCsen及びキャパシタCin1に由来する1/fノイズも減衰させるべきである。しかし、チョッピングされたCDS信号を渡さなければならないので、積分器1の入力にアンチエイリアスフィルタを加えた場合に問題が生じる。3つの正規化されたカットオフであっても、ADC利得は約5%減少する。さらに、入力における不要信号は、サンプリング周波数の高調波で生じた場合にdcにエイリアスされる。これは、ふつうと違うスイッチドキャパシタ回路であるが、それは、スイッチドキャパシタの1つが外部にあり、アンチエイリアスフィルタがスイッチドキャパシタ回路の内部にしか配置されえないためである。非CDS実装についても同じことが言え、アンチエイリアスフィルタによって、積分器入力電流を1/2クロックサイクル以内に整定させなければならない。したがって、このフィルタの機能は、サンプリング周波数よりも十分に高いrf信号を減衰させることのみとしてよい。ナイキスト周波数のすぐ上の信号を減衰させるためには使用できない。
【0227】
8.1.3 デジタル出力の計算
この節では、CDC出力符号を計算する式の解析表示を与える。
【0228】
8.1.3.1 デシメータ利得
コンバータの両方のモードについて同じである、デシメータ利得は、
【数12】
で与えられるが、ただし、式中、dec=デシメーション係数、n=デシメータの次数、scale=デシメータ出力における倍率であり、2の累乗でなければならない。デジタル出力は、10ビットであり、scaleは、有用なデータをこれらの10ビット内に収めるように調整されなければならない(又は、これが許容可能な場合に何らかのクリッピングを行えるようにする)。典型的には、シグマ/デルタCDCは、デシメータ出力がフルスケールに達しないように内部クリッピングを回避するためにフルスケールの10%から90%までの範囲内でのみ動作すべきである。
【0229】
例えば、Fin=64kHz及びFout=1.5kHz、dec=42及びn=3とする。これにより、最大出力423=74088が得られるが、最大許容可能出力符号は、1023である。倍率=128の場合、最大出力は、579となるが、<1023である。しかし、最大アナログ信号範囲が、フルスケールの最大80%までであると仮定すると、倍率は、64に設定することができ、74088*0.8/64=926<1024(範囲)となり、デジタル範囲を使用しやすくなる。この場合、Kdig=74088/64=1157.625である。
【0230】
CDC範囲を出力範囲の中心に置くために、デジタルオフセットが行われ、したがって、使用されないCDC範囲の下側10%は、除去されうる。
【0231】
8.1.3.2 Cに比例
2次に対して、
【数13】
が適用される。
【0232】
Cin1は、変換利得を設定し、Ccanは、Csenの範囲を利用可能な変換範囲内の中心に置くことができる。Vdigは、スケーリングされオフセットされたセンサー容量を表す。外側括弧内の項は、0.1から0.9までの範囲内になければならない。
【0233】
力は、式12から
【数14】
として計算され、力に関するCsenは、
【数15】
によって与えられる。
【0234】
式14でCsenを置き換え、オフセットがないと仮定し、K1=K5及びK2=K4Kdig/Cin1とすると、
【数16】
となる。
【0235】
8.1.3.3 1/Cに比例
2次に対して、
【数17】
が適用される。
【0236】
外側括弧内の項は、0.1から0.9までの範囲内になければならない。力は、(オフセットがないものと仮定して)
(式19) f=K3Vdig
から計算される。
【0237】
K3は、
【数18】
によって与えられるCDCの勾配であり、fmin(0g)は最小の力、fmax(500g)は最大の力である。
【0238】
式17において式16からのCsenを置き換え、式20中のVdigを置き換えると、
【数19】
が得られる。
【0239】
例えば、Cin1=Csensmin=1/3pfと仮定すると、K3=250×64×3/74088=0.64788である。実際には、CDCがクリップしないように、Cin1<Csensminであることに留意されたい。
【0240】
Cin1の値に誤差があるため、結果として、CDC出力にオフセット誤差と利得誤差の両方が現れる。式12を修正して、Cin1の値の誤差eを許すと、
【数20】
が得られる。
【0241】
次いで、近似式
【数21】
を使用すると
【数22】
となり、勾配誤差は、
【数23】
によって与えられるか、又は
【数24】
のようにパーセント誤差として表される。
【0242】
e=1fFならば、利得誤差は、Cin1=1/3pFに対して0.3%である。
【0243】
8.1.4 MATLAB
図37及び38にプロットされているグラフは、第8.1.3節の式から導き出されたもので、指定されたキャパシタ値誤差による測定された力誤差を示している。
【0244】
シミュレーションでは、利得とオフセットに対し2点較正を仮定し、その後、2fFのステップで最大+10pFまでの誤差がCin1に追加される。
【0245】
8.1.5 ノイズ分析
ペン先は、100uまで移動することが許されており、したがって、50uから150uまでの範囲が実用的である。センサー静電容量は、0.333pFから1pFまでの範囲内にあると予想される。次いで、Cref=0.333pFとすると、出力は、1Vから0.333Vまでの範囲内となる(全範囲の変更形態では−0.34V)。フルスケールに到達できないことによるS/N損失は、20*log(2/3)=3.5dBにすぎない。
【0246】
ADCの増分利得は、Csen=0.333pFのときに−3V/pf、Csen=1pFのときに−1V/pfである。
【0247】
主ノイズ源は、センサーキャパシタであり、rmsノイズ電圧は、
【数25】
で与えられるが、ただし、式中、k=1.38×10−23、T=300、Csen=0.333pFであり、したがってVn=117uVrmsである。
【0248】
このノイズすべてが、シグマ/デルタコンバータのパスバンドに折り込まれると仮定すると、デシメーションフィルタによって一定割合のノイズが除去される。このノイズは、入力のところに存在するので、ノイズ整形は行われず、またフィルタ出力における信号対雑音比の改善は、OSRをオーバーサンプリング比として、10log(OSR)によって与えられる。クロック周波数が64kHz、出力サンプルレートが1.3kHzの場合、OSR=49.23とすると、16.92dBの改善となる。
【0249】
Csenから出力へのコンバータの電圧利得は、挙動モデルにおいてチェックされた。Csen=0.333pFについては、利得は0.5である(フルスケール=0から+1Vの場合)。したがって、キャパシタによって発生するノイズは、出力では6dB低減される。しかし、Crefは、さらに0.333pFであるので等しい量のノイズをもたらし、出力のところでノイズを3dBだけ増やす。例示的なコンバータは、低周波キャパシタノイズを低減するCDSを実装することに留意されたい。
【0250】
プレデシメーションフィルタ出力ノイズは、Csen=0.333pF=117uV/2=58.5uVrms、出力信号=1Vの場合である。Csen=1pF=0.333Vで出力する。S/N=20log((1−0.333)/58.5uV)=81.1dBである。デシメーションフィルタの後、S/N=81.1+16.92=98dB又は16.3ENOBである。コンバータ出力は、ペンダウンを検出するために閾値化される必要があり、ピークノイズを考慮することが適している。ノイズのpk対rms比を13dBと仮定すると、コンバータの分解能は、14.2ENOBまで下がることになる。
【0251】
Csen=0.333pFの場合、全体的なS/Nは、シグマ/デルタコンバータのOSRによって、kT/Cノイズではなく約70dB(11.6ENOB)に制限されることに留意されたい。
【0252】
8.2 設計基準
回路シミュレーションは、容量性インターフェースを実装するための基準のいくつかを示している。
【0253】
8.2.1 入力インピーダンス
センサーに接続されているステージは、このノードでグラウンドへの寄生容量の効果を解消することができなければならない。入力抵抗は、1/gmで与えられ、Cpar/gmの時定数を持つRCフィルタを形成する。この時定数は、積分器の整定時間に支配的であり、第1のステージの最小gm要件を決定するために使用されうる。電圧ステップ応答は、
【数26】
によって与えられる。すると、
(式29) gmmin=−2CparFsln(1−V)
となる。
【0254】
C=50pF及びFs=64kHzの場合の1%の最終誤差について、gmmin=29uMhoとなる。第1ステージの消費電力は、サンプリングレート及びCparに比例することに留意されたい。
【0255】
センサーを第1の積分器に接続することが可能であるけれども、寄生容量に打ち勝つために低入力インピーダンスにする要件では、第1の積分器中に大電流を必要とする。バッファ及びシグマ/デルタコンバータを独立に最適化できる緩衝増幅器を使用するのはかなりよいことである。第1の積分器の電流は、実質的に低減され、全体的な消費電力は、バッファを追加することにより低減されうる。
【0256】
グラウンドへの寄生容量が存在する場合、バッファのgmによって回路の整定時間が実質的に制御され、開ループ電圧利得によって精度が決まる。gmとRoとの間には何らかのトレードオフがありえ、同じ低周波Avを維持する。よいターゲットは、Av=80dBとなるようにgm=100uMho及びRo=100MΩである。
【0257】
利得増大折り返しカスコードでは、4.3uのテール電流で動作する場合に(1uAが基準回路に入る)gm=55uMho及びRo=140Mとし、Av=78dBを得る。センサーからの入力はシングルエンドであるため、電力を節約するシングルエンド出力OTAのみが必要である。次いで、非反転入力がvcmに直結され、これにより、入力インピーダンスが最低となることを保証できる。
【0258】
8.2.2 INNからVCMへの接続
第1の積分器が、容量センサーと直接インターフェースするために使用される場合、未使用の差動入力をコモンモード電圧vcmに直接接続して、仮想アース加算ノードでの抵抗を最低にすることが望ましい。しかし、OTAにおけるオフセットのため、この接続は、サンプリングフェーズで格納され、評価フェーズで相殺されるように、キャパシタとなされなければならない。
【0259】
8.2.3 CAPDACユニットキャパシタ
20fFでは小さすぎる場合がある。慎重なレイアウト及び良好な抽出を必要とする。
【0260】
8.2.4 マルチプレクサ
マルチプレクサによっては、積分器の加算点に直接接続されるものもある。この場合、ボディソースダイオード及びサブスレッショルド電流による漏れは、最小限度に抑えられなければならない。十分な絶縁を得るために、capdacと変調装置入力マルチプレクサの両方にT字型スイッチが使用されうる。
【0261】
T字型スイッチが使用される場合、T字型スイッチの中点は、vcmにバイアスされなければならず、給電側の1つにバイアスされてはならない。これにより、サブスレッショルド電流は、マルチプレクサの出力ノードがvcmでないときにのみ流れることが保証される。積分器加算点は、vcmでバイアスされ、これにより、サブスレッショルド漏れ電流が最小になる。
【0262】
励起信号を供給するフロントエンドマルチプレクサは、深さが3レベルであり、よりロジック度の高い1レベルの多重化で置き換えることが可能である。
【0263】
8.2.5 センサーノードの漏れ電流
センサーノードへのDC漏れ電流は、回路の精度を落とす。アナログ入力パッドは、最大のソースになると予想される。1nAの漏れ電流の場合、積分器1ステップ当たりの誤差はlnA*15.625us/3pF=5.2mVとなる。両方のモードにおいて、この電流により、結果として、ペンアップの力誤差は20gとなる。これは、励起信号及び変調装置入力をチョッピングすることにより解決できる。チョッピング信号は、デシメーションフィルタの出力期間内に偶数個のサイクルを含んでいなければならない。この漏れ電流が変換範囲の一部を使い切るので、コンバータがその動作範囲内に収まっていることを保証されなければならない。コンバータが飽和(これはペンアップ時に発生する可能性が最も高い)しないことを前提として、シグマ/デルタ変調装置内のフィードバックにより、範囲損失が最小限に抑えられる。
【0264】
パッド漏れ電流は、最大50nAまでであると予想されうる。NMOS保護デバイスとPMOS保護デバイスの両方を使用し、漏れ電流のすべてがコンバータに流れ込むことのないようにする必要がある。
【0265】
図39は、1サイクルおきに得られる補正された結果による50nAの漏れ電流の相殺を示している。
【0266】
チョップ信号は、結果として大きな誤差を生じるので2相クロック発生器の入力クロックが変化したときでなく、ph0と同時に変化すべきである。最良の解決策は、ph0でクロック動作し、デシメーションフィルタと同じクロックで動作するプログラム可能な分周器からイネーブル信号をとる、イネーブルされるトグル機能を用意することである。
【0267】
8.2.6 センサーの並列抵抗
センサーの並列抵抗は、チョッピングでは補正されえず、時間依存の電荷注入を行う。これは、センサーと並列につないだキャパシタのように見えるが、ただし、このキャパシタの値はクロック周波数に依存する。漏れ電流が50nAである、値1.8/(2*50nA)=18MΩの抵抗器をとると、図40は、並列抵抗器なしで、数サイクル後にビットパターンが基準からずれることを示している。
【0268】
同等の静電容量は、
【数27】
によって与えられるが、ただし、式中、Fsはサンプリング周波数であり、Rpは並列抵抗である。2の係数が2つで4の係数となる。第1は、漏れ電流の積分は、サイクル時間の半分である積分器の評価フェーズでのみ実行されることである。第2に、CDSのため、キャパシタに対するクロックの両方のフェーズで電荷が考慮される。事実上、センサーキャパシタは、vddの電圧振幅に従うが、抵抗器は、vdd/2にのみ従う。これは、仮想アース点が、vdd/2に保持され、抵抗器は0又はvddで駆動されるからである。Fs=64kHz及びRp=1GΩでは、Ceq=3.9fFとなる。
【0269】
これは、アナログデバイスのデータシートによって確認され、これで、少なくとも1GΩは8fF又は6gmの静電容量変化に相当すると推論する(Fs=32kHzの場合)。
【0270】
ペンダウン閾値が、12gmに設定された場合、静電容量変化は、5.42fFとなる。次いで、Rpによる誤差が10%又は0.54fFであることが許容された場合、Rpは>7.2GΩである必要がある。Rpは較正されうるため、したがって、重要になるのはRpの変化である。
【0271】
Ceqは、サンプリング周波数依存キャパシタであるため、2つの異なる周波数で測定を行い、現実の寄生容量から絶縁することも可能であろう。可能な最も高いサンプリング周波数を使用すると、その効果は最小に抑えられるが、これは電力消費を最小にしようとすることに反する。
【0272】
8.2.7 センサーの直列抵抗
これは、本発明の構成について考慮される場合のある設計基準のうちの他方の基準である。
【0273】
8.2.8 ドライバの寄生容量
ドライバ出力は、クロックサイクルの半分の期間内に整定しなければならない。式
(式31) Imin=2FsCparVd
において定電流駆動であると仮定すると、Fs=64kHzについて、Cpar=50pF、Vd=1.8V、Imin=11.5uAである。
抵抗性の駆動であると仮定すると、
【数28】
である。
【0274】
センサー並列寄生容量を相殺するために、駆動波形は、高い精度で整定する必要がある。この静電容量が2pFのときに誤差が1%だと、相殺誤差は20fFとなる。シミュレーションから、最大10KΩまでのソース抵抗が電圧基準において許容されなければならないことがわかり、これによりスイッチ内の抵抗を追加できる。
【0275】
8.2.9 RFフィルタ
これは、アンチエイリアシングフィルタではない。スイッチドキャパシタ回路内部にあるため、そのカットオフ周波数は、整定時間に直接影響を及ぼす。近似として、カットオフ周波数は、約10Fsでなければならない。カットオフ及び最高サンプリング周波数が1MHz固定である場合、これは、10MHzに設定されるべきである。
【0276】
8.2.10 節電
クロックバイアスを使用することにより、出力が入力に接続されているときに低い電圧利得が許容可能なので、積分器のサンプルフェーズ(クロックph0=1)において電流を節約することが可能である。このサンプルフェーズで、電流消費量を10%まで削減することが可能である。
【0277】
コモンモード増幅器は、バイアス電流が変化する毎にその出力を適応させなければならなかったので、コモンモード増幅器には問題があった。図41に例示されているように、出力におけるコモンモード電圧は、小電流のときに600mVまで低下し、それが回復するには時間が不十分であった。
【0278】
元のOTAは、OTAの出力分岐中のバイアス電流をオフセットするコモンモード増幅器に依存していた。オフセットは、バイアス電流に依存し、したがって、バイアス電流が切り替えられる毎に補正が必要であった。これは、コモンモード増幅器をプッシュプルにし、主OTAの出力分岐中の電流のバランスをとることにより解決された。したがって、シグマ/デルタ変調装置は、低電流で非常に性能が高い。
【表5】
表5は、2クロック位相における電流消費及び64kHzクロックによる平均を示している。緩衝増幅器にはメリットがないため、クロックバイアス機能は、シグマ/デルタコンバータにのみ適用された。バンドギャップ基準及び低消費電力発振器ではさらに電流を必要とする。
【0279】
8.2.11 PSRR
DCでは、インターフェースの式中で相殺されるので、回路の動作範囲以外ではvddへの依存はない。しかし、フィードバックループは、前のクロックサイクルから次のクロックサイクルまでの間の変動を相殺できないけれども、ある種の平均化がデシメーションフィルタ内で生じる可能性がある。これは、VHDLモデルにおいて見られるが、電源電圧除去の量は、センサー静電容量とともに変化するので簡単には推定できない。
【0280】
解決策は、CDCにおける基準レベルを安定化させることである。これにより、基準レベルはそれぞれ電源から400mV程度離れていなければならないため、CDCのSNRがわずかに減少する。
【0281】
コモンモード電圧vcmも、安定化される必要があり、VDDから直接的に導かれない。vcmは、VDDmin又は約800mVで最適な動作をするように設定されなければならない。
【0282】
基準及びvcm電圧に対するレジスタ制御が、行われるべきである。
【0283】
アナログデバイスのデータシートに、DC、50Hz及び60Hz以外の電源電圧除去に関する情報は載っていない。AD7745ボードの測定が実行されうる。
【0284】
8.2.12 積分器のリセット
主にシミュレーションのためである。追加の手間を省くため、すべてのスイッチは閉じられる。
【0285】
8.2.13 加算点
1.8Vの入力振幅では、図42に示されている加算点電圧は、OTAが応答する前に0.9V±1.8Vに瞬時に到達しうる。この結果、クリッピング及び電荷減少が生じ、積分器の出力に大きな誤差が発生する。これは、駆動波形の立ち上がり及び立ち下がり時間のいずれかを延ばすことにより解決されうるが、これは、低インピーダンススルーレート制限ドライバが必要になるため望ましいものではない。それとは別に、キャパシタを加算点のところでグラウンドに追加することができる。これが、入力キャパシタに等しい場合、電圧振幅は、0.9V±0.9Vに制限されるであろう。これは、パッド及びグラウンドの寄生容量によって与えられる。
【0286】
Cref及びCfから出力への直接経路が、そこにグリッチが現れる理由となっている。
【0287】
8.2.14 INNからVCMへの接続
バッファ加算点における平均電圧は、センサーが正常に動作している場合にvcmでなければならない。板と板の間にショートが発生する場合、電圧はGNDとVDDとの間でトグルする。これは、vcm±Vtの基準レベルを使用するコンパレータと単純なローパスフィルタを組み合わせたものにより検出されうる。これは、さらに、GND又はVDDへの感知入力のショートをも検出できる。
【0288】
又は、単純に、加算点がGND+Vtより低くなるか、又はVDD−Vtよりも高くなる場合を検出する。電流消費を最小にする。
【0289】
8.3 センサーの要件
図43は、センサーの要件を決定するためのセンサー等価回路を例示している。
【0290】
以下の表6において、一度に1つだけ機能低下が適用される。
【表6】
8.4 較正手順
必要なデシメーション係数及び対応するデシメータシフトが、最初に設定されなければならない。ADCオフセットは、0に設定されなければならない。動作モードは両方とも、利得とオフセット誤差を取り出すために2点較正を必要とする。500gmの1つの較正済みの力のみが適用される必要がある。
【0291】
CDCの利得は、絶対キャパシタ値に依存し、プロセス変動の影響を受ける(典型的には、MiMキャパシタの±10%)。オフセットは、センサー寄生容量Cpar及びセンサー機械的許容誤差によって決まる。また、Rparは、有意な場合があり、適切な設計で最大化されなければならない。動的較正が使用される場合、コンバータが通常の動作範囲内に残るようにCcanのみを使用してRparをオフセットすべきである。
【0292】
8.4.1 1/Cモード
以下の手順要素が使用される。
【0293】
公称ゼロ力静電容量Csenminが知られていなければならず、これは、力センサーの設計パラメータである。
【0294】
Cin1は、コンバータが、ゼロ力条件の下、フルスケールの10%で動作するように設定されなければならない。Csensminが与えられたときに、この値を計算できる。式18を使用し、Cparが相殺されていると仮定すると、Cin1=0.9Csensminである。例えば、Csensmin=0.3333pFであれば、Cin1=0.3pFと設定する。
【0295】
コンバータの読み取りがスケールの10%になるまでCcanを調整してCparを相殺する。Cparの標準値が知られ、これにより、コンバータは飽和から抜け出る。第8.1.3.1節の実施例を使用すると、スケール=64では、10%での読み取り値は116となる。
【0296】
ADCオフセットを設定し、コンバータのゼロ調整をする。コンバータ出力は、負であってはならないので、10%点を設定する前にではなく、今このステップを実行する。較正された力を加えて、出力を記録し、これにより、利得較正係数を設定する。
【0297】
8.4.2 Cモード
以下の手順要素が使用される。
【0298】
式17で使用されているパラメータK4及びK5はすでに決定されており、したがって、センサー及びコンバータは、それと一致するように較正される必要がある。
【0299】
Cpar及びCin1をその標準値に設定して、コンバータを動作範囲内に入れる。
【0300】
現在のコンバータ出力から力を計算する。
【0301】
較正された力を加えて、計算された出力を記録すると、2つの計算結果の差が利得較正を定める。
【0302】
必要な利得補正を与えるCin1に対する値を計算し、この値を設定する。
【0303】
力を加えない状態で、力を計算し、力をゼロに設定するCcanに対する必要な値を計算して、この値を設定する。
【0304】
8.4.3 動的較正
Ccanのステップサイズは、約20fFとなる可能性が高く、これは、42gmの力変化を表す。ペンダウン閾値が正確であるように、Ccanの調整とADCオフセットの組合せが使用されなければならない。1/Cの動作の場合、利得較正係数を再計算する必要がある。再計算しないと、Ccanのステップサイズの結果、利得誤差は10%となる(許容可能である場合がある)。
【0305】
8.5 AD7745の測定
AD7745の干渉信号に対する耐性を評価するためにいくつかの測定が行われた。不要信号が、39pFのキャパシタを介して、センサーキャパシタの出力側であるCIN1ピンに注入された。このキャパシタの追加は、測定されるセンサーキャパシタが信号発生器の出力インピーダンスを介してグラウンドに接続されているため、測定されるセンサーキャパシタに及ぼす影響は無視できるくらい小さい。センサー静電容量は、大部分約60fFの寄生容量である。
【0306】
ボードは、90Hzの最大サンプリングレートを出力するようにセットアップされ、両方のCAPDACは、スイッチオフされた。励起レベルは、±VDD/2の最大であり、シングルエンドモードで動作した。励起周波数は約33kHzであった。
【0307】
測定されたキャパシタを変えるために必要な信号レベル(CIN1上で測定される)は、−20fFの誤差となるように調節された。以下の表7を参照のこと。
【表7】
8.5.1 観察結果
・2MHzより上では、注入信号は、測定静電容量を下げる。
・1MHzより下では、注入信号は、測定静電容量を上げる。
・1MHzから2MHzの間では、周波数と振幅に応じて、静電容量誤差はいずれの方向にも進みうる。
・励起周波数の高調波に近い周波数の場合、感度は最大となる(これらは、通過帯域へエイリアスされる)。
・チョップイネーブルが選択されている場合、耐性は、約3倍高まる。最大出力サンプリングレートは、49.8Hzであった。
【0308】
約3MHzのところに極があるように見えるが、これは、入力RCフィルタとして実装されるか、又は積分器OPアンプの帯域幅によるものである。データシートでは、C=53pF(いくぶん大きい)を持つRFフィルタを暗示する1K以下の入力直列抵抗を追加することも可能であることを推奨している。
【0309】
最も可能性の高い干渉源は、35MHzの直列インターフェース及び2.4GHzのBluetoothであり、これらは3MHzから十分離れている。
【0310】
8.5.2 ノイズ測定
これらの測定は、容量近接検出器の機械式モックアップを使用して行われた。センサーの寄生容量をオフセットするために、CAPDACAが最大値16.87pFに設定された。約0.75pFの静電容量変化が、直線領域において観察され、範囲の末端で粘着テープを誘電体として使用すると、1.75pFであった。90Hzのサンプリング及び±VDD/2の励起により、ノイズレベルは、「ペンアップ」で1000個のサンプルを使って、0.00036pFrms及び0.0032pFpk−pkと測定された。
【0311】
ホワイトノイズを仮定すると、90Hzから1.3kHzまでの倍率は、10*log(1300/90)=11.6dBである。
【0312】
0.75pFの範囲については、pk−pk信号対rmsノイズのS/Nは、S/N=20*log(0.75/0.00036)=66.4dBとなる。(AD7745では、13ビット又は78dBのS/Nのrms分解能を与えた場合に8pFの静電容量範囲についてS/Nを計算することに留意されたい。)1.3kHzの倍率については、S/N=66.4dB−11.6dB=54.8dB(9.1ENOB)である。
【0313】
センサーを外し、CAPDACAをオフにした状態では、測定された静電容量は0.0052pFであった。測定されたrmsノイズは、0.0000654pFrmsになり、これは14.8dBの改善である。
【0314】
8.6 結論
本発明のシグマ/デルタ静電容量インターフェース構成は、特にネットページ感知デバイスのペン先に対する、力感知の問題に対する確実な解決策をもたらす。上述の構成には、外力に正比例するコンバータ出力を発生することを利用し、コンバータ出力からの力の計算におけるハードウェア除算を回避し、力の範囲全体にわたって一定の精度を維持し、コンバータの全範囲を使用するという利点がある。
【0315】
特定の、またモデル化された実施例の他の利点は以下のとおりである。
・センサーキャパシタへの駆動(励起)が低インピーダンスであり、電圧ピックアップの耐性がある
・センサーキャパシタは仮想アースを駆動し、電圧ピックアップ耐性がある
・センサーキャパシタの両側においてグラウンドへの寄生容量に対する許容差が高い
・能動的なガードが不要である
・1/Cに比例する出力を発生するように設計されうる(Cが大きくなると出力を圧縮し、逆に、Cの小さな値に対し十分な分解能をもたらす)
・RF(>10MHz)誘導電圧に対する耐性が良好である
・正確なクロックを必要としない
・正確な電圧基準を必要とせず、したがって、最大励起±VDD/2が使用されうる
・シグマ/デルタ変換の通常の利点を活かせる
・消費電力を十分に低くできる場合(プロセッサのスリープモード)、デジタル領域においてペンダウンオフセットを適用することができる
・サンプリングレートは、不要信号除去を改善するためにプロセッサがオンであるときに高められる。
【0316】
もちろん、本発明は、純粋に例によってのみ説明されていること、また詳細の修正は、本明細書で説明されているような本発明の範囲内において行うことができることは理解されるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とインタラクションを行うための感知デバイスであって、
当該感知デバイスが前記基材とインタラクションを行っているかどうかを検出するための力センサーと、
前記基材上に配置されている符号化データを感知するためのイメージセンサーと、
を備え、
前記力センサーが容量センサー回路を備え、
前記容量センサー回路には、
前記容量センサー回路の出力が1/Csenに比例するように配列された可変静電容量Csenを有するセンサーキャパシタ、が組み込まれている、
感知デバイス。
【請求項2】
前記感知された符号化データを使用してインタラクションデータを生成するように構成されたプロセッサをさらに備える請求項1に記載の感知デバイス。
【請求項3】
前記感知デバイスが前記基材とインタラクションを行っていることを前記力センサーが検出したときのみ、前記イメージセンサーが前記符号化データを感知するように構成されている請求項1に記載の感知デバイス。
【請求項4】
ペン先又はスタイラスを持たないクリッカー、
ノンマーキングスタイラスを有するポインタ、及び
マーキング用ペン先を有するペン
を含む群から選択される請求項1に記載の感知デバイス。
【請求項5】
前記センサーキャパシタは、1つの固定された板と1つの移動可能な板とを有する平行板キャパシタ、である請求項1に記載の感知デバイス。
【請求項6】
前記移動可能な板は、前記移動可能な板に加えられる圧力によって前記固定された板に対し相対的に移動し、これにより、前記移動可能な板と前記固定された板との間の分離距離と、前記静電容量Csenとを変化させるように構成される請求項5に記載の感知デバイス。
【請求項7】
圧縮バネが前記移動可能な板に連結されている請求項5に記載の感知デバイス。
【請求項8】
前記センサーキャパシタは、
前記センサーキャパシタの前記移動可能な板と前記固定された板のうち1つが前記容量センサー回路に直結されるように、前記容量センサー回路の容量帰還回路内に配置される請求項1に記載の感知デバイス。
【請求項9】
前記容量センサー回路が、シグマ/デルタコンバータ回路である請求項8に記載の感知デバイス。
【請求項1】
基材とインタラクションを行うための感知デバイスであって、
当該感知デバイスが前記基材とインタラクションを行っているかどうかを検出するための力センサーと、
前記基材上に配置されている符号化データを感知するためのイメージセンサーと、
を備え、
前記力センサーが容量センサー回路を備え、
前記容量センサー回路には、
前記容量センサー回路の出力が1/Csenに比例するように配列された可変静電容量Csenを有するセンサーキャパシタ、が組み込まれている、
感知デバイス。
【請求項2】
前記感知された符号化データを使用してインタラクションデータを生成するように構成されたプロセッサをさらに備える請求項1に記載の感知デバイス。
【請求項3】
前記感知デバイスが前記基材とインタラクションを行っていることを前記力センサーが検出したときのみ、前記イメージセンサーが前記符号化データを感知するように構成されている請求項1に記載の感知デバイス。
【請求項4】
ペン先又はスタイラスを持たないクリッカー、
ノンマーキングスタイラスを有するポインタ、及び
マーキング用ペン先を有するペン
を含む群から選択される請求項1に記載の感知デバイス。
【請求項5】
前記センサーキャパシタは、1つの固定された板と1つの移動可能な板とを有する平行板キャパシタ、である請求項1に記載の感知デバイス。
【請求項6】
前記移動可能な板は、前記移動可能な板に加えられる圧力によって前記固定された板に対し相対的に移動し、これにより、前記移動可能な板と前記固定された板との間の分離距離と、前記静電容量Csenとを変化させるように構成される請求項5に記載の感知デバイス。
【請求項7】
圧縮バネが前記移動可能な板に連結されている請求項5に記載の感知デバイス。
【請求項8】
前記センサーキャパシタは、
前記センサーキャパシタの前記移動可能な板と前記固定された板のうち1つが前記容量センサー回路に直結されるように、前記容量センサー回路の容量帰還回路内に配置される請求項1に記載の感知デバイス。
【請求項9】
前記容量センサー回路が、シグマ/デルタコンバータ回路である請求項8に記載の感知デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図3A】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図25A】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図2】
【図3】
【図3A】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図25A】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【公表番号】特表2010−524097(P2010−524097A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502391(P2010−502391)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際出願番号】PCT/AU2008/000502
【国際公開番号】WO2008/124866
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(303024600)シルバーブルック リサーチ ピーティワイ リミテッド (150)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際出願番号】PCT/AU2008/000502
【国際公開番号】WO2008/124866
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(303024600)シルバーブルック リサーチ ピーティワイ リミテッド (150)
【Fターム(参考)】
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