説明

容量測定装置および容量測定方法

【課題】 リーク電流の測定精度を上げて被測定対象の容量値を精度良く測定することのできる容量測定装置を提供する。
【解決手段】 被測定対象の充電時のリーク電流が印加電圧に比例することから、被測定対象の充電電流の測定と同時に印加電圧の測定を行って、この印加電圧の値を被測定対象の充電時のリーク電流値の算出に利用し、この充電時のリーク電流値を被測定対象の容量値の算出に利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスや半導体プロセスの開発において容量素子の擬似静的な容量測定に用いられる容量測定装置および容量測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや半導体プロセスの開発では、半導体デバイスや半導体プロセスの評価のために被測定対象(DUT:Device Under Test)の容量測定が行われている。被測定対象の容量測定には、大きく分けて、高周波での容量測定と低周波(quasi-static)での容量測定とがある。低周波での容量測定においては、近年の半導体プロセスの微細化などにより、測定する容量も小さくなり、高精度の測定を行える技術が要求されている。
【0003】
ステップ電圧法は、被測定対象に印加する電圧を変化させることにより生じる充電電荷の変化量を測定し、その充電電荷の変化量と印加電圧の変化量から被測定対象の容量値を求める手法であり、例えば特許文献1などに、このステップ電圧法に関連する技術が開示されている。
【0004】
ところで、半導体プロセスの微細化に伴い、特に低周波での容量測定の場合には、被測定対象に流れる充電電流を測定するための電流計に、被測定対象の抵抗成分による大きなリーク電流が流れ込み、これが容量測定に誤差をもたらすという課題がある。図5にこのリーク電流の影響の例を示す。被測定対象に印加する電圧を変化させると被測定対象に充電電流が流れて充電電荷(図5の電流(I)グラフの面積部分)が変化する。リーク電流がない場合には、電流計に流れ込む電流は被測定対象を通して流れる充電電流のみであるが、リーク電流が発生している場合には被測定対象を通して流れる充電電流に加えてリーク電流も電流計に流れ込み、結果的に被測定対象の充電電荷の変化量を正しく測定できない。そこで、このリーク電流分の電荷の補正を行うことが可能な容量測定方法が求められている。以下に、リーク電流分の補正を行うことが可能な容量測定方法の従来例を示す。
【0005】
被測定対象の容量C(単位F)、充電電荷Q(単位C)、印加電圧V(単位V)の関係は下式で表される。
Q=CV ・・・(1)
【0006】
被測定対象の容量Cが一定であると仮定した場合、被測定対象への印加電圧Vをある電圧Vset1から異なる電圧Vset2に変化させると、被測定対象の充電電荷もある値Q1から異なる値Q2に変化する。すなわち、充電電荷はΔQ(=Q2−Q1)だけ変化する。この充電電荷の変化量ΔQは、次式のように充電電流Iを積分して求められる。
ΔQ=∫Idt ・・・(2)
【0007】
図6は印加電圧を変化させたときの充電電荷の変化量ΔQをPLC(Power Line Cycle)の所定の整数倍として定められた期間ΔtPLCごとの区間の長方形近似によって求める場合の例を示す図である。ΔtPLCは、電源電圧の周波数が50Hzである時には例えば20msであり、電源電圧の周波数が60Hzである時には例えば16.67msである。この場合、充電電荷の変化量ΔQは次式で近似的に表される。
ΔQ≒ΣI*ΔtPLC ・・・(3)
ただし、k=1,2,…,Tcinteg/ΔtPLCである。Tcintegは充電電流の積分時間である。
【0008】
図9は、従来のステップ電圧法による測定を行う際のブロック図であり、可変電圧源82の出力が被測定対象(DUT)81の一端に接続され、被測定対象81の他端には、電流計84を介して接地端子に接続されている。他方、可変電圧源82の出力には、電圧計83が接続されている。図7は従来のステップ電圧法による測定シーケンスを示す図であり、一回の測定ステップの印加電圧の変化を示している。まず、可変電圧源82で印加電圧の値がある値Vset1に設定される。印加電圧の設定から予め決められた時間delay1が経過したとき、電圧計83による印加電圧V1の測定が行われ、続いて電流計84によるリーク電流IL1の測定が行われる。このように印加電圧V1の測定とリーク電流IL1の測定とが順に行われるのは、電圧計83と電流計84とが一つのA/D変換器を共有しているためである。印加電圧V1の測定後、電流計84による充電電流の測定が開始されるとともに、印加電圧の設定値が異なる値Vset2に変更される。これにより印加電圧が増加して行く。
【0009】
電流計84による充電電流の測定はΔtPLC間隔でTcinteg/ΔtPLCの回数繰り返され、その積分値が充電電荷の変化量ΔQtotalとして求められる。充電電流の測定が終了すると、電圧計83で印加電圧V2の測定が行われ、次いで、電流計84でリーク電流IL2の測定が行われる。
【0010】
容量値Cは以下の式を用いて求められる。
C=ΔQ/ΔV=(ΔQtotal−ΔQLeak+Qcorrection)/(V2−V1) ・・・(4)
={(ΣI*ΔtPLC)−ΔQLeak}/(V2−V1) ・・・(5)
ここで、ΔQLeakはリーク電流による充電電荷の変化量であり、これは図8に示すように、充電電荷が時間的に線形に増加するという仮定をもとに、台形近似を使って次式により求められる。
【0011】
ΔQLeak=1/2(IL1+IL2)τ+IL2(Tcinteg−τ) ・・・(6)
ここで、τは被測定対象への充電時間であり、この時間は以下のようにして決められる。
【0012】
本測定では、電流計84が充電電流を期間ΔtPLCごとに測定すると同時に電流計84の状態をモニターすなわち監視し、出力電圧と設定電圧値とが等しくないなら充電中であると判断し、出力電圧と設定電圧値とが等しくなった時点(以下、この状態をVloop状態と呼ぶ)をもって充電が完了したとみなしている。
【0013】
なお、期間ΔtPLCごとに充電電流を測定することおよび電流計84の状態をモニターするのは、パワーラインノイズによる影響をキャンセルするためである。
【0014】
式(4)においてQcorrectionは、電流計84の内部のレンジ抵抗並列容量に充電される電荷量である。
【0015】
電流計84でのリーク電流IL2の測定が完了したとき、決められた時間delay2の経過を待って、次のステップすなわち電圧設定値を上げて同様の測定が行われる。
【特許文献1】特開2002−168893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記従来の容量測定方法では、電流計84は充電電流の測定時にVLoop状態、すなわち出力電圧と設定電圧値が等しい状態に遷移したか否かをΔtPLC期間ごとに検出するため、そのVLoop状態へ変化したタイミングの検出精度は検出の分解能による制約を受ける。この制約はリーク電流の測定精度に響き、ひいては容量の測定精度にも影響していた。
【0017】
また、上記従来の容量測定方法では、充電量が時間的に線形に増加するという仮定を前提としているが、実際に充電量が時間的に線形に増加するとは限らない。したがって、容量測定に台形近似を用いる従来の測定方法では、充電量が時間的に線形に増加しない場合に測定誤差を生じていた。
【0018】
本発明はかかる事情を鑑み、リーク電流の測定精度を上げて被測定対象の容量値を精度良く測定することのできる容量測定装置および容量測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するために、本発明の容量測定装置は、被測定対象に第1の設定電圧から第2の設定電圧への電圧変動を付与する電圧印加手段と、前記電圧変動の前後に前記被測定対象を流れるリーク電流及び前記電圧変動によって前記被測定対象を流れる充電電流を測定する電流測定手段と、前記電圧変動によって前記被測定対象を充電電流が流れる期間の印加電圧を測定する電圧測定手段と、前記電流測定手段の電流測定結果及び前記電圧測定手段の電圧測定結果をもとに前記被測定対象の充電時のリーク電流値を算出し、このリーク電流値を用いて前記被測定対象の容量値を算出する演算手段とを具備するものである。
【0020】
すなわち、本発明の容量測定装置は、被測定対象の充電時のリーク電流が印加電圧に比例することから、被測定対象の充電電流の測定と同時に印加電圧の測定を行って、この印加電圧の値を被測定対象の充電時のリーク電流値の算出に利用し、この充電時のリーク電流値を被測定対象の容量値の算出に利用するものである。
【0021】
本発明によれば、台形近似を使ってリーク電流による充電電荷の変化量を求めるために必要な充電時間の判定が不要であるため、被測定対象の容量値を精度良く測定できる。また、被測定対象の充電量が時間的に線形に増加しない場合であっても、被測定対象の容量値を精度良く測定できる。
【0022】
また、本発明の別の態様において、電圧測定手段は、電圧変動によって被測定対象を充電電流が流れる期間の印加電圧の測定に加えて、電圧変動の前後の印加電圧を測定することとし、演算手段は、電流測定手段の電流測定結果と、電圧測定手段の測定結果である、被測定対象を充電電流が流れる期間の印加電圧及び電圧変動の前後の印加電圧とをもとに、被測定対象の充電時のリーク電流値を算出することとしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の容量測定装置および容量測定方法によれば、リーク電流を高精度に測定して被測定対象の容量値を精度良く測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面をもとに説明する。
図1は本発明の実施の形態にかかる容量測定装置と被測定対象との接続の構成を示す図である。同図に示すように、この容量測定装置は、被測定対象1に電圧変動を与えるようにステップ電圧を印加するステップ電圧源などとして動作する第1の測定ユニット2と、被測定対象1への印加電圧の変動の前後と変動中に被測定対象1を流れる電流を測定する電流計として動作する第2の測定ユニット3とで構成される。Cxは被測定対象1の容量成分、Rxは被測定対象1の抵抗成分である。
【0025】
図2は第1の測定ユニット2及び第2の測定ユニット3の構成を示す図である。第1の測定ユニット2及び第2の測定ユニット3は同じハードウェアで構成される。なお、図2には第1の測定ユニット2または第2の測定ユニット3の一方の構成だけが示されている。
【0026】
第1の測定ユニット2及び第2の測定ユニット3は、VDAC(電圧値デジタル/アナログコンバータ)11、IDAC(電流値デジタル/アナログコンバータ)12、V/I誤差アンプ13、パワーアンプ14、電流モニター回路15、VMバッファアンプ16、電流モニターアンプ17、電圧モニターアンプ18、及び電圧測定用ADC(アナログ/デジタルコンバータ)19、制御ロジック部21で構成される。これとは別に、本容量測定装置は、各測定ユニットから利用される共用リソースとして、電流測定用ADC20を装置内に少なくとも一つ備える。
【0027】
VDAC11は、制御ロジック部21を通じてコントローラ22より与えられたデジタルの電圧値をアナログ値に変換してV/I誤差アンプ13に出力する。IDAC12は、制御ロジック部21を通じてコントローラ22より与えられたデジタルの電流値をアナログ値に変換してV/I誤差アンプ13に出力する。
【0028】
V/I誤差アンプ13は、VLoop状態、すなわち出力電圧と設定電圧値が等しい状態においてVDAC11より出力された電圧値とVMバッファアンプ16の出力との差分をとって設定電圧値が被測定対象1の接続端子23に出力されるようにパワーアンプ14を制御する。また、V/I誤差アンプ13は、非VLoop状態、すなわち出力電圧と設定電圧値が等しくない状態において、IDAC12より出力された電流値と電流モニターアンプ17の出力との差分をとって設定電流値が被測定対象1の接続端子23に出力されるようにパワーアンプ14を制御する。
【0029】
パワーアンプ14は、V/I誤差アンプ13の出力をもとに被測定対象1の接続端子23に出力する電圧または電流を制御する。電流モニター回路15は、被測定対象1に流れる電流を観測する回路である。この電流モニター回路15は被測定対象1に流れる電流に応じて電流感度(電流レンジ)を切り替える機能を持つ。
【0030】
VMバッファアンプ16は、被測定対象1の接続端子23の電圧を観測する。電流モニターアンプ17は、電流モニター回路15で測定された電流値をA/D変換できるように正規化するアンプである。電圧モニターアンプ18は、VMバッファアンプ16で測定された電圧値をA/D変換できるように正規化するアンプである。
【0031】
ADC19,20のうちの一方のADC19は、各々の測定ユニットに備えられ、電圧モニターアンプ18で正規化されたアナログの電圧値をデジタルの電圧値に変換する回路である。他方のADC20は、各々の測定ユニットから利用される共用の回路で、各々の測定ユニットに備えられた接続端子27を介して接続され、各測定ユニットの電流モニターアンプ17で正規化されたアナログの電流値をデジタルの電流値に変換する回路である。
【0032】
制御ロジック部21は、コントローラ22からの制御命令を処理する論理回路である。制御ロジック部21は、コントローラ22からの制御命令に従って、例えば、VDAC11に対する電圧値の設定、IDAC12に対する電流値の設定などや、2つのADC19,20の出力をコントローラ22に伝送する制御などを行う。
【0033】
上記の構成を有することによって、第1の測定ユニット2は、電流制限を行う機能、被測定対象1に印加する電圧値を設定する機能、印加電圧を測定する機能を有する電圧源として動作し、第2の測定ユニット3は、被測定対象1の充電電流を測定する電流計として動作する。
【0034】
コントローラ22は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力部などで構成されている。ROMにはステップ電圧法による容量測定のための処理手順であるプログラム及び各種のパラメータ情報などのファームウェアが格納されている。コントローラ22は、入出力部を通じて、第1の測定ユニット2及び第2の測定ユニット3それぞれの制御ロジック部21や、マンマシンインタフェース24、外部インタフェース25などと通信が可能なように接続されている。CPUはROMに格納されたファームウェアに従って、第1の測定ユニット2及び第2の測定ユニット3の出力をもとに被測定対象1の容量を測定するための制御命令の発行及び演算処理を実行し、その容量の測定結果を、入出力部を通じてマンマシンインタフェース24、外部インタフェース25などに出力する。
【0035】
マンマシンインタフェース24は、ユーザとの間で入出力を行うためのインタフェースであり、具体的にはディスプレイなどの表示装置、キーボードなどの入力装置などを含むものである。外部インタフェース25は、本測定装置に通信ケーブルを介して接続された機器との間で入出力を行うためのインタフェースである。接続された機器としては、記録媒体に記録を行うための記録装置などである。
【0036】
次に、この実施形態の容量測定装置の動作を説明する。
被測定対象1のリーク電流が印加電圧に比例することから、本実施形態の容量測定装置による容量測定では、被測定対象1の充電電流の測定と同時に印加電圧を測定して、この印加電圧の値を被測定対象1の充電時のリーク電流値の算出に利用し、この充電時のリーク電流値を用いて被測定対象1の容量値を算出する。
【0037】
図3は本実施形態の容量測定装置による容量測定のシーケンスであり、一回の測定ステップの印加電圧の変化を示している。また、図4は連続する測定ステップと各測定ステップごとの印加電圧と充電電流を示す図である。
【0038】
まず、コントローラ22からの制御のもとで第1の測定ユニット2は被測定対象1の印加電圧の値を決められた設定値Vset1に設定する。その後、コントローラ22は、予め決められた時間delay1が経過するのを待って、第2の測定ユニット3によって測定された電流値を電圧変動前のリーク電流の値IL1として取り込むとともに、第1の測定ユニット2にて測定された電圧値を電圧変動前の印加電圧の値V1として取り込む。このように第1の測定ユニット2の測定結果と第2の測定ユニット3の測定結果を同時に取り込むことが出来るように、第1の測定ユニット2及び第2の測定ユニット3が、それぞれ独立に動作して測定結果を出力できる構成を有している。
【0039】
次に、コントローラ22は、印加電圧の設定値を予め決められた異なる設定値Vset2に変更する。この電圧変動によって被測定対象1に容量測定のための充電電流が流れはじめる。被測定対象1の充電開始と同時あるいはほぼ同時に、コントローラ22は、第1の測定ユニット2にて測定された電圧値を充電時の印加電圧の値として取り込むことを開始するとともに、第2の測定ユニット3にて測定された電流値を充電電流の値として取り込むことを開始する。この充電時の印加電圧及び充電電流の各測定は予め決められた時間T 続けられる。この時間Tは、Vset1からVset2への電圧変動に対して被測定対象1の印加電圧がVset2まで達するまでの見込み時間にマージンを加えた値とされている。
【0040】
次に、コントローラ22は、第1の測定ユニット2によって測定された電圧値を電圧変動後の印加電圧V2の値として取り込むとともに、第2の測定ユニット3によって測定された電流値を電圧変動後のリーク電流IL2の値として取り込む。この後、コントローラ22は、決められた時間delay2が経過するのを待って、次のステップすなわち電圧設定値を上げて同様の測定を行うように制御を行う。
【0041】
コントローラ22は、上記のように第1の測定ユニット2の測定結果及び第2の測定ユニット3の測定結果をそれぞれ取り込んでRAMに記憶し、ROMに格納されたファームウェアに従って被測定対象1の容量値Cを計算するための演算を実行する。容量値Cは以下の式で求められる。
【0042】
C=ΔQ/ΔV={(I−ILeak)*Tcinteg+Qcorrection}/(V2−V1) ・・・(7)
【0043】
ここで、Iは第2の測定ユニット3でTcinteg 時間の間に測定された充電電流値、ILeakは充電時のリーク電流、Tcintegは充電時間、Qcorrectionは第2の測定ユニット3の内部のレンジ抵抗並列容量に充電される電荷量である。充電時のリーク電流ILeakは、充電電流の測定と同時に測定された印加電圧からその平均値Vavrgを求め、この印加電圧の平均値Vavrgを用いて次式により求められる。
【0044】
Leak=IL1+(IL2−IL1)*(Vavrg−V1)/(V2 −V1 ) ・・・(8)
【0045】
1は電圧変動前の第1の測定ユニット2の測定電圧、V2は電圧変動後の第1の測定ユニット2の測定電圧、IL1は電圧変動前の第2の測定ユニット3によって測定されたリーク電流、IL2は電圧変動後に第2の測定ユニット3によって測定されたリーク電流である。
【0046】
なお、(7)式、(8)式で、容量値C、リーク電流値ILeakのそれぞれの計算に、測定された印加電圧の値V1、V2を使用しているのは、電圧設定の分解能より印加電圧の測定分解能の方が高いためである。電圧設定の分解能が十分高いのならば、設定電圧の値Vset1、Vset2を用いてもよい。
【0047】
以上説明したように、この実施形態の容量測定装置によれば、電圧変動によって被測定対象1を充電電流が流れる期間の印加電圧をもとに被測定対象1の充電時のリーク電流値ILeakを求め、被測定対象1の容量値Cを求めるので、従来の台形近似を使ってリーク電流による充電電荷の変化量ΔQLeakを求めるために必要な充電時間τの判定が不要である。従来のこの充電時間τの判定においては、VLoop状態へ変化したタイミングの検出分解能がΔtPLC間隔に制限されるが、本実施形態の容量測定装置ではそのような分解能による制約を受けず、容量値Cの測定精度を向上させることができる。
【0048】
また、従来の容量測定方法では、充電量が時間的に線形に増加するという仮定を前提としているので、充電量が実際には時間的に線形に増加しない場合に容量値Cの測定誤差を発生していたが、本実施形態の容量測定装置では、そのような測定誤差が発生することはない。
【0049】
なお、本発明は、上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ADC20は、上述の実施形態では容量測定装置に1つだけ備わっていると説明したが、これに限らず、各々の測定ユニット内に備えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態にかかる容量測定装置と被測定対象との接続を示す図である。
【図2】図1における第1の測定ユニット及び第2の測定ユニットの構成を示す図である。
【図3】本実施形態の容量測定装置による容量測定シーケンスである。
【図4】連続する測定ステップと各測定ステップごとの印加電圧と充電電流を示す図である。
【図5】被測定対象の充電電流へのリーク電流の影響を示す図である。
【図6】充電電荷の変化量の測定方法を示す図である。
【図7】従来のステップ電圧法による測定シーケンスを示す図である。
【図8】図7の測定方法において想定されるリーク電流の変化を示す図である。
【図9】従来のステップ電圧法による容量測定装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0051】
1 被測定対象
2 第1の測定ユニット
3 第2の測定ユニット
11 VDAC
12 IDAC
13 V/I誤差アンプ
14 パワーアンプ
15 電流モニター回路
16 VMバッファアンプ
17 電流モニターアンプ
18 電圧モニターアンプ
19,20 ADC
21 制御ロジック部
22 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定対象に第1の設定電圧から第2の設定電圧への電圧変動を付与する電圧印加手段と、
前記電圧変動の前後に前記被測定対象量を流れるリーク電流及び前記電圧変動によって前記被測定対象を流れる充電電流を測定する電流測定手段と、
前記電圧変動によって前記被測定対象を充電電流が流れる期間の印加電圧を測定する電圧測定手段と、
前記電流測定手段の電流測定結果及び前記電圧測定手段の電圧測定結果をもとに前記被測定対象の充電時のリーク電流値を算出し、このリーク電流値を用いて前記被測定対象の容量値を算出する演算手段と
を具備することを特徴とする容量測定装置。
【請求項2】
前記電圧測定手段は、前記電圧変動によって前記被測定対象を充電電流が流れる期間の印加電圧の測定に加えて、前記電圧変動の前後の印加電圧を測定し、
前記演算手段は、前記電流測定手段の電流測定結果と、前記電圧測定手段の測定結果である、前記被測定対象を充電電流が流れる期間の印加電圧及び電圧変動の前後の印加電圧とをもとに、前記被測定対象の充電時の前記リーク電流値を算出することを特徴とする請求項1に記載の容量測定装置。
【請求項3】
被測定対象に第1の設定電圧から第2の設定電圧への電圧変動を付与するステップと、
前記電圧変動の前後に前記被測定対象を流れるリーク電流を測定するステップと、
前記電圧変動によって前記被測定対象を流れる充電電流を測定するステップと、
前記電圧変動によって前記被測定対象を充電電流が流れる期間の印加電圧を測定するステップと、
前記リーク電流、前記充電電流、及び前記印加電圧の測定結果をもとに前記被測定対象の充電時のリーク電流値を算出し、このリーク電流値を用いて前記被測定対象の容量値を算出するステップと
を具備することを特徴とする容量測定方法。
【請求項4】
前記電圧変動の前後の印加電圧を監視するステップをさらに有し、
前記容量値を算出するステップは、前記リーク電流、前記充電電流、前記被測定対象を充電電流が流れる期間の印加電圧、及び前記電圧変動の前後の印加電圧のそれぞれの測定結果をもとに、前記被測定対象の充電時のリーク電流値を算出することを特徴とする請求項3に記載の容量測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−58167(P2008−58167A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235880(P2006−235880)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【Fターム(参考)】