説明

宿主細胞のユビキチン化の調節を通じたレトロウイルス複製の阻害

本発明は、ユビキチン化調節がレトロウイルスタンパク質(例えば、HIVのVifまたはVpu)によって媒介される場合に、宿主細胞基質タンパク質(例えば、CD4のCEM15)のユビキチン化の調節を阻害することによって、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のようなレトロウイルスの複製を阻害する方法に関する。本発明はまた、宿主細胞ユビキチン化のレトロウイルスタンパク質媒介性の調節を阻害することによってウイルス複製を阻害する因子を同定するためのスクリーニング方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、抗HIV因子(特に、HIVウイルスタンパク質の存在下で宿主細胞ユビキチン化経路を調節することによって作用する因子)の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ユビキチンは、すべての真核細胞中で発現される、高度に保存された76アミノ酸タンパク質である。多くの細胞内タンパク質のレベルは、ユビキチン媒介性のタンパク質分解プロセスによって調節される。このプロセスは、標的タンパク質へのユビキチンの共有結合性の連結を含み、26Sプロテアソームによって急速に探知されかつ分解されるポリユビキチン化標的タンパク質を生じる。
【0003】
これらの標的タンパク質のユビキチン化(ubiquitulation)は、3つのユビキチン因子の酵素活性によって媒介されることが知られている。ユビキチンは、まず、ユビキチン活性化因子(例えば、E1)によって、ATP依存性の様式で活性化される。ユビキチンのC末端は、ユビキチン活性化因子と高エネルギーチオールエステル結合を形成する。
【0004】
次いで、ユビキチンは、ユビキチン活性化因子(E1)からユビキチン結合体化因子(例えば、E2)(ユビキチン部分輸送タンパク質とも呼ばれる)に転移される。このユビキチンは、チオールエステル結合によってユビキチン結合体化因子に連結される。
【0005】
ユビキチンは、最終的に、標的タンパク質(例えば、基質タンパク質)に転移されて、この標的タンパク質と末端イソペプチド結合を形成する。この標的タンパク質へのユビキチンの転移は、ユビキチン連結因子(例えば、E3)によって媒介される。標的タンパク質は、1回以上のこのプロセスによって改変されて、この標的タンパク質へのユビキチンのモノマーまたはオリゴマーの付着を生じ得る。この標的タンパク質の各ユビキチンは、ユビキチン連結因子の活性によって次のユビキチンに共有結合的に連結されて、ユビキチンのポリマーを形成する。
【0006】
ユビキチン化経路の酵素成分は、大きな注目を集めてきた(総説については、例えば、非特許文献1;非特許文献2を参照のこと)。E1ユビキチン活性化因子およびE2ユビキチン結合体化因子のメンバーは、構造上関連しており、かつ十分に特徴付けられたタンパク質である。多種多様なE2ユビキチン結合体化因子が存在し、それらのいくつかは、特定のE3ユビキチン連結因子との好ましい組み合わせで作用して、異なる標的タンパク質に特異性を付与する。E2ユビキチン結合体化因子のための命名法は種を超えて標準化されてはいないが、当該分野の研究者はこの問題に取り組んできており、当業者は、種同族体と同様に、種々のE2ユビキチン結合体化因子を容易に同定し得る(非特許文献3を参照のこと)。
【0007】
ユビキチン因子(例えば、ユビキチン活性化因子、ユビキチン結合体化因子およびユビキチン連結因子)は、標的化されたタンパク質の分解および細胞プロセスの調節を生じるユビキチン媒介性のタンパク質分解経路の重要な決定要因である。従って、このようなユビキチン因子の活性を調節する因子は、特定の宿主細胞タンパク質の活性をアップレギュレートするかまたはダウンレギュレートし得る。
【0008】
最近、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)タンパク質が、感染した宿主細胞におけるタンパク質の分解を調節するという報告があった。例えば、HIV−1付属/調節タンパク質であるVpuは、宿主細胞のCD4にSCFβTrCpユビキチンE3リガーゼを補充し、細胞中のCD4のアベイラビリティを低下させ、そして細胞表面へのHIVエンベロープタンパク質の輸送を増強することによって、CD4分解を調節する(非特許文献4)。関与する細胞のメカニズムは解明されていないが、最近の報告により、HIVビリオン感染性因子(Vif)は、宿主細胞タンパク質CEM15(レトロウイルス核酸中のデオキシシチジン残基のウラシル残基への変換を媒介するデアミナーゼ)のプロテオソーム媒介性の分解を誘導することが示されている(非特許文献5)。
【非特許文献1】Wongら、「Drug Discovery Today」2003年、第8巻:746〜754
【非特許文献2】Weissman、「Nature Reviews」2001年、第2巻:169〜178
【非特許文献3】HaasおよびSiepmann、「FASEB J.」1997年、第11巻:1257〜1268
【非特許文献4】Margottinら、「Molec.Cell」1998年、第1巻:565〜574
【非特許文献5】Sheehyら、「Nature Medicine」2003年、第9巻:1404〜7
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ウイルスタンパク質による宿主細胞プロセスの同時調節を妨げる、抗HIV因子の必要性が存在する。本発明はこの必要性に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(文献)
Guら「Good to CU」Nature 424:21〜22(2003);Simonら「Evidence for a newly discovered cellular anti−HIV−1 phenotype」、Nature Medicine 4:1397〜1400(1998);Sheehyら「Isolation of a human gene that inhibits HIV−1 infection and is suppressed by the viral Vif protein」、Nature 418:646〜650(2003);Mangeatら「Broad antiretroviral defence by human APOBEC3G through lethal editing of nascent reverse transcripts」、Nature 424:99〜103(2003);Harrisら「DNA deamination mediates innate immunity to retroviral infection」、Cell 113:803〜809(2003);Marianiら「Speces−specific exclusion of APOBEC3G from HIV−1 virions by Vif」、Cell 114:21〜31(2003);Phamら「Processive AID−catalysed cytosine deamination on single−stranded DNA simulates somatic hypermutation」、Nature 424:103〜107(2003);Zhangら「The cytidine deaminse CEM15 induces hypermutation in newly synthesized HIV−1 DNA」Nature 424:94〜925(2003);Shindoら「The enzymatic activity of CEM15/Apobec−3G Is essential for the regulation of the infectivity of HIV−1 Virion,but not a sole determinant of Its antiviral activity」、J.Biol.Chem.2003年9月11日[出版に先立って電子公開];Lakeら「The role of Vif during HIV−1 infection:interaction with novel host cellular factors」、J Clin Virol.26(2):143〜52(2003);Sovaら「Efficiency of viral DNA synthesis during infection of permissive and nonpermissive cells with Vif−negative human immunodeficiency virus type 1」、J Virol 67:6322〜6366(1993);Zhangら「Human immunodeficiency virus type 1 Vif protein is an integral component of an mRNP complex of viral RNA and could be involved in the viral RNA folding and packaging process」、J Virol 74:8252〜8261(2000);およびHenzlerら、J Gen Virol 82:561〜573(2001);Henzlerら「Fully functional,naturally occurring and C−terminally truncated variant human immunodeficiency virus(HIV) Vif does not bind to HIV Gag but influences intermediate filament structure」、J Gen Virol 82:561〜573(2001);Croweら「The contribution of monocyte infection and trafficking to viral persistence,and maintenance of the viral reservoir in HIV infection」、J.Leukoc Biol 8月21日[出版に先立って電子公開](2003);Harrisら「DNA deamination mediates innate immunity to retroviral infection」、Cell 113:803〜809(2003);Harrisら「DNA deamination:not just a trigger for antibody diversification but also a mechanism for defense against retroviruses」、Nat.Immunol.4:641〜643(2003);Yuら「Induction of APOBEC3G Ubiquitination and Degradation by an HIV−1 Vif−Cu15−SCF Complex」、Sciencexpress 2003年10月16日、電子公開;Stopakら「HIV−1 Vif Blocks the Antiviral Activity of APOBEC3G by Impairing Both Its Translation and Intracellular Stability」、2003 Molecular Cell 12:591〜601;Marinら「HIV Vif Protein Binds the Editing Enzyme APOBEC3G and Induces its Degradation」、Nat Med.2003 9:1398〜403。
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、ユビキチン化調節がレトロウイルスタンパク質(例えば、HIVのVifまたはVpu)によって媒介される場合に、宿主細胞基質タンパク質(例えば、CEM15)のユビキチン化の調節を阻害することによって、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のようなレトロウイルスの複製を阻害する方法に関する。本発明はまた、宿主細胞ユビキチン化のレトロウイルスタンパク質媒介性の調節を阻害することによってウイルス複製を阻害する因子を同定するためのスクリーニング方法にも関する。
【0012】
本発明のこれらのおよび他の利点、ならびに特徴は、下記により完全に記載されるような本発明の詳細を読む際に、当業者に明白になる。
【0013】
本発明は、添付の図面と併せて読まれる場合、以下の詳細な説明から最も良く理解される。慣例によって、図面の種々の外観は正確な縮尺ではないことが強調される。逆に、種々の外観の寸法は、明確にするために任意に拡大するか縮小される。以下の図が図面に含まれる:
本発明をより詳細に記載する前に、本発明は、記載される特定の実施形態に限定されるものではないことが理解されるべきである。なぜなら、このようなものは当然変化し得るためである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書中で使用される技術用語は、特定の実施形態のみを記載することを目的とするものであり、限定を意図するものではないこともまた理解されるべきである。
【0014】
ある範囲の値が提供される場合、その範囲の上限値と下限値との間に介在する各々の値(文脈が明らかに別のものを指示しない限り、下限値の単位の10分の1まで)もまた具体的に開示されることが理解される。ある明示された範囲内の任意の明示された値または介在する値と、その明示された範囲内の任意の他の明示された値または介在する値との間のより小さな範囲の各々は、本発明に含まれる。これらのより小さな範囲の上限値および下限値は、独立してこの範囲内に含まれていても除外されていてもよく、そしてこのより小さな範囲内に、上限値および下限値のいずれかが含まれる場合、どちらも含まれていない場合、または両方含まれている場合の各々の範囲もまた、この明示された範囲内の任意の具体的に除外された限界に従って、本発明に含まれる。この明示された範囲がこれらの上限値および下限値の一方または両方を含む場合、上限値および下限値を含む範囲のいずれかまたは両方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。
【0015】
他に規定しない限り、本明細書中に使用される全ての技術的および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料に類似しているかまたは等価である任意の方法および材料が、本発明の実施または試験に用いられ得るが、例示的な好ましい方法および材料は、次に記載される。本明細書中で言及される全ての出版物は、方法および/または材料(これに関連して、これらの出版物が引用される)を開示し記載するために、参考として本明細書中に援用される。
【0016】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、その内容が明らかに別のものを指示しない限り、複数の対象を包含することが留意されるべきである。従って、例えば、「1つの候補因子(a candidate agent)」への言及は、複数のこのような候補因子を包含し、そして「その宿主細胞(the host cell)」への言及は、1つ以上のこのような宿主細胞および当業者に公知のそれらの等価物を包含する、などである。
【0017】
本明細書中で議論される出版物は、本願の出願日前のそれらの開示についてのみ提供される。本明細書中のいずれの出版物も、本発明が先行発明に基づいてこのような出版物より前の日付を付ける資格がないという承認として解釈されるべきではない。さらに、提供される公開日は、独立して確認されることを必要とし得る実際の刊行日とは異なってもよい。
【0018】
(定義)
「CEM15」(APOBEC3G、アポリポタンパク質B mRNA編集酵素、および触媒ポリペプチド様3Gとしても公知)とは、哺乳動物宿主細胞タンパク質(特に、ヒト宿主細胞タンパク質)をいい、これは、新たに合成されるHIV−1のDNA中に超変異を誘導するシチジンデアミナーゼである。CEM15は、デアミナーゼとして作用して、レトロウイルス複製中にレトロウイルスRNAから生成されるDNAマイナス鎖中のC’をU’に変換する。CEM15修飾されたウイルス鎖のプラス鎖が生成される場合、このプラス鎖は、GからAへの超変異を含む。
【0019】
タンパク質に関して「ユビキチン化された」または「ユビキチン化」は、ユビキチン(Ub)またはユビキチン様修飾因子(Ub1)への結合体化によって修飾されたタンパク質を含むことを意味する。
【0020】
「ユビキチン因子」とは、ユビキチン結合に関与する分子、最も頻繁には酵素を意味する。ユビキチン因子としては、ユビキチン活性化因子、ユビキチン連結因子およびユビキチン結合体化因子が挙げられ得る。さらに、ユビキチン因子は、以下に記載されるようなユビキチン部分を含み得る。さらに、脱ユビキチン化(de−ubiquitylation)因子(例えば、ユビキチンまたはポリユビキチン鎖を分解または切断するプロテアーゼ)は、本発明における用途を見出す。
【0021】
本明細書中で使用される「Vif」(「ビリオン感染性因子」としても公知)とは、レトロウイルス、特にレンチウイルス(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス、またはネコ白血病ウイルス(FLV))のウイルスタンパク質をいう。特に興味深いのは、HIVのVif、さらに詳細にはHIV1型(HIV−1)のVifである。Vifは、CEM15によって媒介される宿主細胞抗ウイルス活性を妨害することによって、宿主細胞におけるレトロウイルス複製を増強する。
【0022】
「Vpu」(「ウイルスタンパク質U」としても公知)とは、レトロウイルスタンパク質、特にレンチウイルス(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス、またはネコ白血病ウイルス(FLV))をいう。HIVのVpu、さらに詳細にはHIV1型(HIV−1)のVpuが、特に興味深い。Vpuタンパク質は、感染細胞からのウイルス粒子の放出を増強することによって、ウイルス産生を刺激する。Vpuタンパク質は、特にCD4に結合する。Vpuはまた、CD4の細胞質尾部にSCFβTrCpユビキチンE3リガーゼ複合体を補充することによって、プロテアソーム分解のためにCD4を標的化する。
【0023】
本明細書中で使用される「TRAC−1」は、PCT公開番号WO02/081730(2002年10月17日公開)(この刊行物は、その全体が本明細書中に援用される)に記載されるようなE3ユビキチンリガーゼをいう。
【0024】
本明細書中で使用される「USP−25」は、米国特許出願公開第US2003/0036107号(2003年2月23日に公開)および同第US2003/0092605号(2003年5月15日に公開)(これらの各々の刊行物は、その全体が本明細書中に援用される)に記載されるような脱ユビキチン化因子または脱ユビキチン化酵素(または「DUB」)をいう。
【0025】
本明細書中で一般に使用される「アッセイ成分」は、1つの実施形態において、少なくとも1つのユビキチン部分、ユビキチン活性化因子、ユビキチン結合体化因子、ユビキチン連結因子、ユビキチン基質タンパク質、およびレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質、ならびに必要に応じて脱ユビキチン化因子を含む。別の実施形態において、アッセイ成分は、一般に、ユビキチン部分、ユビキチン化基質タンパク質、およびレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質を含む。本発明の方法において、アッセイ成分は候補因子と結合して、ユビキチン化および/または脱ユビキチン化活性に対するこの候補因子の影響を評価する。いくつかの実施形態において、アッセイ成分は細胞中に存在し得る。
【0026】
「単離された」とは、記載の物質が、その天然の状態において通常付随する物質の少なくとも一部(所定のサンプル中の全タンパク質の好ましくは少なくとも約0.5重量%、より好ましくは少なくとも約5重量%を構成している)を付随しないことを意味する。「精製された」とは、記載の物質が、全タンパク質の少なくとも約75重量%、好ましくは約80重量%、そして特に好ましくは約90重量%を構成することを意味する。
【0027】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本願全体にわたって交換可能に使用され、少なくとも2つの共有結合したアミノ酸(タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチドおよびペプチドを含む)を意味する。タンパク質は、天然に存在するアミノ酸およびペプチド結合、または合成のペプチド模倣構造物で構成され得る。従って、「アミノ酸」または「ペプチド残基」は、本明細書中で使用される場合、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸の両方を意味する。例えば、ホモフェニルアラニン、シトルリンおよびノルロイシンは、本発明の目的のためのアミノ酸とみなされる。「アミノ酸」はまた、プロリンおよびヒドロキシプロリンのようなイミノ酸残基も含む。これらの側鎖は、(R)配置または(S)配置のいずれであってもよい。通常、これらのアミノ酸は、(S)またはL−配置にある。天然に存在しない側鎖が使用される場合、非アミノ酸置換基は、例えば、インビボにおける分解を阻止するか遅延させるために使用され得る。天然に存在するアミノ酸が通常使用され、このタンパク質は、内因性であるかまたは組換え発現されるかのいずれかの細胞タンパク質である。
【0028】
組換えタンパク質は、少なくとも1つ以上の特性によって天然に存在するタンパク質と区別される。例えば、この組換えタンパク質は、その野生型宿主において通常付随するタンパク質および化合物の一部または全てから単離または精製され得、従って、実質的に純粋であり得る。例えば、単離されたタンパク質は、その天然の状態において通常付随する物質の少なくとも一部(所定のサンプル中の全タンパク質の好ましくは少なくとも約0.5重量%、より好ましくは少なくとも約5重量%を構成している)を伴わない。実質的に純粋なタンパク質は、全タンパク質の少なくとも約75重量%、好ましくは少なくとも約80重量%、そして特に好ましくは少なくとも約90重量%を構成する。この定義は、種々の生物体の中の1つの生物体または宿主細胞に由来するタンパク質の生成を包含するが、これに限定されない。あるいは、この組換えタンパク質は、誘導可能なプロモーターまたは高発現プロモーターを用いて、通常見られるよりも有意に高い濃度で作製され得、その結果、このタンパク質が増加した濃度レベルで作製される。あるいは、以下で議論するように、この組換えタンパク質は、エピトープタグの付加またはアミノ酸置換、挿入および欠失のような、天然には通常見出されない形態であり得る。
【0029】
本明細書中において「核酸」とは、DNAまたはRNAのいずれか、あるいはデオキシヌクレオチドおよびリボヌクレオチドの両方を含む分子を意味する。核酸は、センスおよびアンチセンス核酸を含むゲノムDNA、cDNAならびにオリゴヌクレオチドを含む。siRNAもまた含まれる。このような核酸はまた、生理環境中のこれらの分子の安定性および半減期を増加させるために、リボース−リン酸骨格に改変を含み得る。
【0030】
核酸は、二本鎖であっても、一本鎖であってもよく、または二本鎖配列もしくは一本鎖配列の両方の部分を含んでいてもよい。当業者に理解されるように、一本鎖の描写(「ワトソン」)は、他方の鎖の配列(「クリック」)をも規定する。本明細書中において用語「組換え核酸」とは、一般に、エンドヌクレアーゼによる核酸の操作によって、天然には通常見出されない形態で、インビトロで独創的に形成される核酸を意味する。従って、直鎖形態で単離された核酸、または通常連結されないDNA分子の連結によってインビトロで形成された発現ベクター中の単離された核酸は、両方とも本発明のための組換え体であるとみなされる。一旦、組換え核酸が作製されて宿主細胞または生物体中に再導入されると、この組換え核酸は、非組換え的に(すなわち、インビトロでの操作ではなく、インビボでの宿主細胞の細胞機構を用いて)複製されることが理解される;しかし、一旦組換え生成されたこのような核酸は、続いて非組換え複製されたとしても、依然として本発明のための組換え体であるとみなされる。
【0031】
用語の他の定義は、本明細書の全体にわたって現われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(発明の詳細な説明)
本発明は、抗ウイルス活性を有する宿主細胞タンパク質(例えば、ウイルス複製に対する細胞の許容性を低下させ得る宿主細胞タンパク質)のユビキチン化を調節することによって、レトロウイルス複製を阻害する抗ウイルス因子の同定に重点的に取り組む。特に、本発明は、感染した宿主細胞から放出されるレトロウイルスビリオン中のユビキチン化されていないCEM15のレベルを増強する因子;すなわち、レトロウイルス(例えば、HIV、特にHIV−1)に感染した宿主細胞中のユビキチン化されていないCEM15のレベルを増強する因子を同定する方法を特色とする。本発明はまた、特に、レトロウイルス(例えば、HIV、特にHIV−1)に感染した宿主細胞中の宿主細胞膜上のユビキチン化されていないCD4のレベルを増強する因子を同定する方法を特色とする。従って同定される因子は、宿主細胞基質タンパク質(例えば、CEM15、CD4)のユビキチン化の調節において、レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質(例えば、HIVのVifおよびVpu)の活性を、ある様式で中和する。
【0033】
本発明は、このような抗ウイルス因子の投与によって、特に、E1によってまたはTRAC−1もしくは他のE3によって促進されるCEM15のユビキチン化を阻害することで、あるいはUSP−25または他の脱ユビキチン化因子によるCEM15の脱ユビキチン化を増強することで、レトロウイルス複製を阻害する方法をさらに特色とする。
【0034】
CEM15は、レトロウイルス複製中にレトロウイルスRNAから生成されるDNAマイナス鎖中のC’をU’に変換するデアミナーゼを示す、宿主細胞タンパク質である。CEM15修飾されたウイルス鎖のプラス鎖が生成される場合、このプラス鎖はGからAへの超変異を含み、この超変異は、(例えば、停止コドンの挿入などによって)ウイルスの複製を妨害し得る。例えば、Harrisら、Nat.Immunol.4:641〜3を参照のこと。
【0035】
(本発明のスクリーニング方法)
1つの態様において、本発明は、例えば、VifまたはVpuのようなレトロウイルスタンパク質の存在下で、CEM15のような宿主細胞基質タンパク質のユビキチン化を調節する因子の同定のためのスクリーニング方法を特色とする。アッセイに有用な成分が以下に記載され、次いで、種々の例示的なアッセイフォーマットが提供される。
【0036】
(本発明の方法に有用なアッセイ成分)
以下の節は、本発明のスクリーニングアッセイ中に含まれ得る種々の成分を記載する。上記のように、本明細書中で使用される「ユビキチン因子」とは、標的タンパク質への、または標的タンパク質からのユビキチン部分の転移、付着または除去を促進する、タンパク質の集団をいう。この場合、目的の標的タンパク質は、宿主タンパク質CEM15である。本明細書中に記載されるアッセイ(コントロールアッセイを除く)の各々において、レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質は、例えば、レトロウイルスのVifまたはVpuタンパク質の少なくとも1つであり得る。
【0037】
ユビキチン因子の例としては、ユビキチン活性化因子、ユビキチン結合体化因子、およびユビキチン連結因子が挙げられる。特定の実施形態において、ユビキチン活性化因子は、好ましくはE1またはその改変体であり;ユビキチン結合体化因子は、好ましくはE2またはその改変体であり;そしてユビキチン連結因子は、好ましくはE3またはその改変体である。
【0038】
本発明は、レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質の存在下で、ユビキチン因子、標的タンパク質、あるいはユビキチン因子または標的タンパク質のモノ−またはポリユビキチン部分への、ユビキチン部分の付着を調節する因子をアッセイする方法を提供する。
【0039】
(ユビキチン部分)
本明細書中において「ユビキチン部分」とは、ユビキチン因子によって別のポリペプチドに転移されるか付着されるポリペプチドを意味する。ユビキチン部分は、ユビキチン分子およびユビキチン様分子の両方を含み、「ユビキチン様修飾因子」としても公知である。好ましい実施形態において、ユビキチン部分は哺乳動物のユビキチンを含み、そしてより好ましくは、ヒトユビキチンを含む。
【0040】
「ユビキチン」または「ユビキチン部分」とは、ユビキチン因子によって別のポリペプチドに転移されるか付着されるポリペプチドを意味する。以下のアッセイで用いられるユビキチンは、任意の種の生物体由来、好ましくは真核生物種由来であり得る。好ましい実施形態において、ユビキチンは哺乳動物のユビキチンを含み、そしてより好ましくは、ヒトユビキチンを含む。1つの実施形態において、このユビキチン部分は、GenBankにおいて入手可能な、76アミノ酸のヒトユビキチン(例えば、ATCC登録番号P02248のもの)を含み得るユビキチンであり、その配列は以下である:
【0041】
【化1】

他の実施形態において、ユビキチン部分は、表1Aにおいて開示されるGENBANK登録番号の1つに対応する配列のアミノ酸配列または核酸配列を有するユビキチン様分子を含む。他の実施形態は、以下にさらに記載されるように、ユビキチンの改変体を利用する。
【0042】
【化2】

本明細書中で使用される場合、「ポリユビキチン部分」とは、2つ以上のユビキチン部分を含むユビキチン部分の鎖をいう。本明細書中で使用される場合、「モノユビキチン部分」とは、単一のユビキチン部分をいう。本発明の方法において、ユビキチン化されていないタンパク質、またはモノ−もしくはポリユビキチン化タンパク質は、ユビキチン部分(それ自体がモノ−またはポリユビキチン部分であり得る)の転移または付着のための基質分子として機能し得る。
【0043】
特に興味深い実施形態において、1つ以上のユビキチン部分が標的タンパク質に付着される場合、そのタンパク質は、26Sプロテアソームによる分解の標的となる。本発明における目的の標的タンパク質は、CEM15である。
【0044】
本発明はまた、標的基質タンパク質に付着され得、および/または標的基質タンパク質から切断され得る、ネイティブのユビキチン部分の特性を保持するユビキチン部分の改変体の使用も企図する。このようなユビキチン部分改変体は、一般に、上記に提供されるユビキチンのアミノ酸配列の好ましくは約75%より大きな、より好ましくは約80%より大きな、さらにより好ましくは約85%より大きな、そして最も好ましくは90%より大きな、アミノ酸配列全体の同一性を有する。いくつかの実施形態において、この配列同一性は、約93〜95または98%の高さである。ユビキチンの改変体、および本発明のアッセイの他の成分は、以下により詳細に記載される。
【0045】
本発明のユビキチン部分は、上に示されるヒトユビキチンのアミノ酸配列より短くても長くてもよいポリペプチドである。従って、ユビキチン部分の定義には、ヒトユビキチンのアミノ酸配列の一部またはフラグメントが含まれる。本明細書中の1つの実施形態において、ユビキチン部分のフラグメントは、それらがユビキチン因子によって別のポリペプチドに付着されている場合、ユビキチン部分とみなされる。
【0046】
さらに、以下により完全に概説されるように、本発明のユビキチン部分は、例えば、タグの付加、他の融合配列の付加、またはさらなるコード配列および非コード配列の解明によって、参照アミノ酸配列よりも長く作製され得るポリペプチドである。以下に記載されるように、緑色蛍光ぺプチド(GFP)のような蛍光ペプチドへのユビキチン部分の融合は、特に興味深い。
【0047】
1つの実施形態において、ユビキチン部分は内因性の分子である。すなわち、アッセイが細胞の使用を含む場合、ユビキチン部分はアッセイされる細胞中で当然発現される。しかし、代替の実施形態において、ユビキチン部分ならびに本発明の他のタンパク質は、外因性(例えば、組換えタンパク質)である。「組換えタンパク質」は、組換え技術を使用して(すなわち、以下に記載されるような組換え核酸の発現によって)作製されるタンパク質である。例示的な実施形態において、本発明のユビキチン部分は、GENBANK登録番号M26880またはAB003730に対応する核酸配列、またはそのフラグメントの発現によって作製され、そして好ましくは、上に示されるヒトユビキチンアミノ酸配列をコードする。
【0048】
(ユビキチン活性化因子)
本明細書中で使用される「ユビキチン活性化因子」とは、ユビキチン結合体化因子にユビキチン部分を転移するか付着するユビキチン因子、好ましくはタンパク質(例えば、ユビキチン活性化酵素)をいう。一般に、ユビキチン活性化因子は、ユビキチン部分と高エネルギーチオールエステル結合を形成し、それによってユビキチン部分を「活性化」し、そしてユビキチン結合体化因子(例えば、E2)にユビキチン部分を転移または付着する。
【0049】
好ましい実施形態において、ユビキチン活性化因子は、以下に定義される、E2にユビキチンを転移し得るかまたは付着し得るE1である。好ましい実施形態において、E1はユビキチンに結合する。好ましい実施形態において、E1は、ユビキチンと高エネルギーチオールエステル結合を形成し、それによって、ユビキチンを「活性化する」。
【0050】
例示的な実施形態において、本発明に有用なE1タンパク質としては、参考として本明細書中に援用される、ATCC登録番号AAA61246、P22314、およびCAA40296を有するポリペプチドのアミノ酸配列を有するE1タンパク質が挙げられる。好ましくは、E1はヒトE1である。E1は、Affiniti Research Products(Exeter,U.K.)から市販されている。
【0051】
さらなる例示的な実施形態において、本発明のためのE1タンパク質の生成に使用され得る核酸としては、参考として本明細書中に援用される、GenBank登録番号M58028およびX56976によって開示される核酸が挙げられるが、これらに限定されない。用語「E1」にも含まれる、引用されるE1タンパク質の改変体は、本明細書中に記載のように作製され得る。
【0052】
さらなる例示的なユビキチン活性化因子としては、以下の表1Bに列挙されるGenbankデータベース登録番号の核酸配列によってコードされるかまたはアミノ酸配列を有する、ユビキチン活性化因子が挙げられる。
【0053】
【化3】

【0054】
【化4】

本発明で用いられるさらなる例示的なE1タンパク質は、PCT公開番号WO01/75145に開示される。用語「E1」にも含まれる、引用されるE1タンパク質の改変体は、本明細書中に記載のように作製され得る。
【0055】
本発明はまた、ユビキチン結合体化因子の活性化を促進し得る、ネイティブのユビキチン活性化因子の特性を保持するユビキチン活性化因子の改変体の使用も企図する。このようなユビキチン活性化因子改変体は、一般に、上記に提供されるユビキチンのアミノ酸配列の好ましくは約75%より大きな、より好ましくは約80%より大きな、さらにより好ましくは約85%より大きな、そして最も好ましくは90%より大きな、アミノ酸配列全体の同一性を有する。いくつかの実施形態において、配列同一性は、活性化因子と同程度に高い約93〜95または98%である。ユビキチン活性化因子改変体および本発明のアッセイの他の成分は、以下により詳細に記載される。
【0056】
(ユビキチン結合体化因子)
本明細書中で使用される「ユビキチン結合体化因子」とは、ユビキチン連結因子との相互作用によって基質タンパク質へのユビキチン部分の転移または付着を促進し得るユビキチン因子、好ましくはタンパク質(例えば、ユビキチン結合酵素)をいう。ある場合には、ユビキチン結合体化因子は、標的基質タンパク質中のリシン残基にユビキチン部分を直接転移し得るかまたは付着し得る。ユビキチン結合体化因子は、モノ−またはポリユビキチン部分へのユビキチン部分の転移または付着を促進し得るユビキチン結合体化因子であり得、これは、次いでユビキチン因子または標的タンパク質に付着され得る。
【0057】
好ましくは、ユビキチン結合体化因子はE2であり、このユビキチン部分はE1からE2に転移され、この転移によってE2とユビキチン部分との間にチオールエステル結合が形成される。好ましい実施形態において、E2は、以下に定義されるE3ユビキチン連結因子との相互作用によって基質タンパク質へのユビキチン部分の転移または付着を促進する。
【0058】
本発明の方法および組成物において、ユビキチン活性化因子は、以下の表2に列挙され、かつ参考として本明細書中に援用される、Genbankデータベース登録番号の配列に対応するアミノ酸配列または核酸配列を含み得る。ヒト細胞のユビキチン結合体化因子(「Hs」で示される)は、特に興味深い。
【0059】
【化5】

【0060】
【化6】

ユビキチン結合体化因子をコードする配列はまた、本発明の方法および組成物における使用に適したユビキチン結合体化因子の改変体を作製するために使用され得る。これらのユビキチン結合体化因子および本発明の方法および組成物における使用に適した改変体は、本明細書中に記載のように作製され得る。
【0061】
例示的な実施形態において、本発明の方法および組成物において使用されるE2は、以下に列挙されるGenbankデータベース登録番号に対応する配列のアミノ酸配列または核酸配列を含む:AC37534、P49427、CAA82525、AAA58466、AAC41750、P51669、AAA91460、AAA91461、CAA63538、AAC50633、P27924、AAB36017、Q16763、AAB86433、AAC26141、CAA04156、BAA11675、Q16781、NP_003333、BAB18652、AAH00468、CAC16955、CAB76865、CAB76864、NP_05536、O00762、XP_009804、XP_009488、XP_006823、XP_006343、XP_005934、XP_002869、XP_003400XP_009365、XP_010361、XP_004699、XP_004019、O14933、P27924、P50550、P52485、P51668、P51669、P49459、P37286、P23567、P56554、およびCAB45853(これらの各々は参考として本明細書中に援用される)。例示的な目的の配列は、Genbankデータベース登録番号NP003331、NP003330、NP003329、P49427、AAB53362、NP008950、XP009488およびAAC41750に対応する配列であり、これらもまた参考として援用される。
【0062】
さらなる例示的な実施形態において、E2は、Ubc5(Ubch5、例えばUbch5c)、Ubc3(Ubch3)、Ubc4(Ubch4)およびUbcX(Ubc10、Ubch10)のうちの1つである。例示的な実施形態において、E2はUbc5cである。例示的な実施形態において、E2を作製するために使用され得る核酸としては、ATCC登録番号L2205、229328、M92670、L40146、U393 17、U393 18、X92962、U58522、S81003、AF03 1141、AF075599、AJ000519、XM009488、NM007019、U73379、L40146およびD83004(これらの各々は本明細書中に参考として援用される)に開示される配列を有する核酸が挙げられるが、これらに限定されない。上記のように、これらおよび他のE2をコードする核酸の改変体も、改変体E2タンパク質を作製するために使用され得る。
【0063】
多くの異なるE2タンパク質およびアイソザイムが当該分野において公知であり、かつ本発明で使用され得る(但し、E2はユビキチン結合活性を有する)ことを、当業者は理解する。詳細には、本明細書中に記載されるように作製され得るE2の改変体もまた、用語「E2」に含まれる。
【0064】
多くの異なるE2タンパク質およびアイソザイムが当該分野において公知であり、かつ本発明で使用され得る(但し、E2はユビキチン結合活性を有する)ことを、当業者は理解する。本発明で使用されるさらなる例示的なE2タンパク質は、PCT公開番号WO01/75145に開示される。詳細には、本明細書中に記載されるように作製され得るE2の改変体もまた、用語「E2」に含まれる。
【0065】
本発明は、ユビキチン活性化因子によって活性化され得、および/またはユビキチン連結因子に関連して標的基質タンパク質のユビキチン化が促進され得る、ネイティブなユビキチン結合体化因子の特性を保持するユビキチン結合体化因子の改変体の使用を企図する。このようなユビキチン結合体化因子改変体は、一般に、上記に提供されるユビキチン結合体化因子のアミノ酸配列の好ましくは約75%より大きな、より好ましくは約80%より大きな、さらにより好ましくは約85%より大きな、そして最も好ましくは90%より大きな、アミノ酸配列全体の同一性を有する。いくつかの実施形態において、この配列同一性は、約93〜95または98%の高さである。ユビキチン結合体化因子の改変体および本発明のアッセイの他の成分は、以下により詳細に記載される。
【0066】
いくつかの実施形態において、E2は、本明細書中で定義されるようなタグを有し、この複合体は、本明細書中で「タグ−E2」と呼ばれる。例示的なE2タグとしては、標識、結合ペアのパートナーおよび基質結合エレメントが挙げられるが、これらに限定されない。特に興味深い1つの実施形態において、タグはHis−タグまたはGST−タグである。
【0067】
(ユビキチン連結因子)
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、ユビキチン連結因子の使用を包含する。本明細書中で使用される「ユビキチン連結因子」とは、ユビキチン結合体化因子から標的基質分子にユビキチン部分の転移または付着を促進し得るユビキチン因子、好ましくはタンパク質(例えば、ユビキチン連結酵素)をいう。好ましい実施形態において、ユビキチン連結因子はE3である。
【0068】
本明細書中で使用される「E3」とは、ユビキチン連結因子としてのE3の活性に関連する(すなわち、標的基質タンパク質へのユビキチン部分の連結または付着の媒介に関連する)1つ以上のサブユニット(好ましくはポリペプチド)を含む、ユビキチン連結因子をいう。
【0069】
特に興味深い1つの実施形態において、E3はTRAC−1である。TRAC−1は、PCT公開番号WO02/081730(その全体が参考として本明細書中に具体的に援用される)に記載される。
【0070】
例示的な実施形態において、E3は、HECTドメインE3連結因子のメンバーである。さらなる例示的な実施形態において、E3は、RINGフィンガードメインE3連結因子のメンバーである。さらなる例示的な実施形態において、E3は、リングフィンガーサブユニットおよびCullinサブユニットを含む。本発明の方法および組成物における使用に適したRINGフィンガーポリペプチドの例としては、ROC1、ROC2およびAPC11が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法および組成物における使用に適したCullinポリペプチドの例としては、CUL1、CUL2、CUL3、CUL4A、CUL4B、CUL5およびAPC2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
本発明のさらなる例示的な実施形態において、ユビキチン連結因子は、下記の表3中の、そして参考として本明細書中に援用される、Genbankデータベース、European Molecular Biology Laboratories(EMBL)データベース、またはENSEMBLデータベース(European Molecular Biology LaboratoriesおよびSanger Instituteの合同事業)中の登録番号に対応する配列のアミノ酸配列または核酸配列を含む。Genbankデータベースからの登録番号は、上記のように見出され得る。EMBLデータベースおよびENSEMBLデータベースからの登録番号は、ワールドワイドウェブ上のそれらの組織に支援されるサイトで見出される。
【0072】
【化7】

【0073】
【化8】

【0074】
【化9】

【0075】
【化10】

【0076】
【化11】

ユビキチン活性化因子をコードする配列はまた、本発明の方法および組成物における使用に適したユビキチン活性化因子の改変体を作製するために使用され得る。これらのユビキチン結合体化因子および本発明の方法および組成物における使用に適した改変体は、本明細書中に記載のように作製され得る。
【0077】
1つの実施形態において、RINGフィンガーサブユニットとしては、Genbank登録番号AAD30147、AAD30146、または6320196(参考として本明細書中に援用される)に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
さらなる実施形態において、Cullinとしては、Genbank登録番号4503161、AAC50544、AAC36681、4503163、AAC51190、AAD23581、4503165、AAC36304、AAC36682、AAD45191、AAC50548、Q13620、4503167、またはAAF05751(これらの各々は本明細書中に参考として援用される)に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本発明との関連で、RINGフィンガータンパク質およびCullinの各々は、本明細書中に記載されるように、公知の配列または列挙した配列の改変体を含む。
【0079】
これらのE3連結因子および改変体は、本明細書中に記載されるように作製され得る。例示的な実施形態において、RINGフィンガータンパク質を作製するのに用いられる核酸としては、Genbank登録番号AF142059、AF142060、およびNC 001136の核酸433493〜433990に開示される核酸配列を有する核酸が挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、Cullinは、Genbank登録番号NM003592、U58087、AF062536、AF126404、NM003591、U83410、NM003590、AB014517、AF062537、AF064087、AF077188、U58091、NM003478、X81882およびAF191337(これらの各々は本明細書中に参考として援用される)に開示される核酸配列を有する核酸が挙げられるがこれらに限定されない核酸から作製される。本明細書中に記載されるように、これらの配列の改変体もまた、本発明に含まれる。
【0080】
さらなる例示的な実施形態において、E3はRINGフィンガータンパク質/Cullinの組み合わせであるAPC11/APC2を含む。別の例示的な実施形態において、E3はRINGフィンガータンパク質/Cullinの組み合わせであるROC1/CUL1を含む。さらなる例示的な実施形態において、E3はRINGフィンガータンパク質/Cullinの組み合わせであるROC1/CUL2を含む。なお別の例示的な実施形態において、E3はRINGフィンガータンパク質/Cullinの組み合わせであるROC2/CUL5を含む。しかし、E3成分の任意の組み合わせが、本明細書中に記載される発明において生成され、かつ使用され得ることを、当業者は理解する。
【0081】
代替の実施形態において、E3は、リガーゼE3α、E3A(E6−AP)、HERC2、SMURF1、TRAF6、Mdm2、Cb1、Sina/Siah、Itchy、IAPまたはNEDD−4を含む。この実施形態において、リガーゼは、Genbank登録番号AAC39845、Q05086、CAA66655、CAA66654、CAA66656、AAD08657、NP_002383、XP_006284、AAC51970、XP_013050、BAB39389、Q00987、AAF08298またはP46934(これらの各々は本明細書中に参考として援用される)に開示されるアミノ酸配列を有する。上記のように、改変体も本発明に含まれる。本実施形態のためのE3を作製するための核酸としては、Genbank登録番号AF061556、XM006284、U76247、XM013050、X898032、X98031、X98033、AF071172、Z12020、AB056663、AF199364およびD42055に開示される配列を有する核酸ならびにその改変体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
E3はまた、SKP1およびF−ボックスタンパク質のような他の成分を含み得る。SKP1のためのアミノ酸配列および核酸配列は、GENBANK登録番号AAC50241およびU33760にそれぞれ相当する。多くのF−ボックスタンパク質が当該分野で公知であり、そしてそれらのアミノ酸配列および核酸配列は、種々の公開された供給源から当業者によって容易に得られる。
【0083】
「E3」は、E3の活性を保持するE3の改変体をさらに含む。例示的な実施形態において、E3成分は、本明細書中に記載されるように組換え産生される。1つの実施形態において、E3成分は同じ宿主細胞中で同時発現される。同時発現は、2つ以上のE3成分をコードする核酸を含むベクターを用いて細胞を形質転換することによって、または所望のE3タンパク質複合体の単一の成分を各々含む別個のベクターを用いて宿主細胞を形質転換することによって達成され得る。1つの実施形態において、RINGフィンガータンパク質およびCullinは、2つのベクター(一方または他方のポリペプチドをコードする核酸を各々含む)でトランスフェクトされた単一の宿主において発現される。
【0084】
本発明は、ビキチン結合因子と関連して標的基質タンパク質へのユビキチン部分の転移または付着を促進し得る、ネイティブのユビキチン連結因子の特性を保持するユビキチン連結因子の改変体の使用を企図する。このようなユビキチン連結因子改変体は、一般に、上記に提供されるユビキチン連結因子のアミノ酸配列の好ましくは約75%より大きな、より好ましくは約80%より大きな、さらにより好ましくは約85%より大きな、そして最も好ましくは90%より大きな、アミノ酸配列全体の同一性を有する。いくつかの実施形態において、この配列同一性は、約93〜95または98%の高さである。ユビキチン連結因子の改変体、および本発明のアッセイの他の成分は、以下により詳細に記載される。
【0085】
(脱ユビキチン化因子)
「脱ユビキチン化因子」とは、ユビキチン化された基質タンパク質からユビキチン部分を除去し得るユビキチン因子、好ましくはタンパク質(例えば、脱ユビキチン化酵素または「DUB」)をいう。好ましくは、脱ユビキチン化因子は、脱ユビキチン化酵素または「DUB」である。
【0086】
本明細書中で使用される場合、「DUB」とは、脱ユビキチン化因子としてのDUBの活性に関連する(すなわち、ユビキチン化された標的基質タンパク質からのユビキチン部分の除去の媒介に関連する)1つ以上のサブユニット(好ましくは、ポリペプチド)を含み得る、脱ユビキチン化因子をいう。好ましくは、脱ユビキチン化因子(例えば、DUB)は、ユビキチン部分間のイソペプチド結合を加水分解する。
【0087】
例示的なDUBは、当該分野で公知であり、本発明の範囲内である。本発明において有用なDUBは、DUBの天然に存在する対立遺伝子および合成改変体を含む。1つの実施形態において、脱ユビキチン化因子は、下記の表4に列挙される、GenbankデータベースまたはENSEMBLデータベース(European Molecular Biology LaboratoriesおよびSanger Instituteの合同事業)中の登録番号に対応する配列のアミノ酸配列または核酸配列を含む。GenbankデータベースおよびENSEMBLデータベースからの登録番号は、これらの組織によって支援されるウェブサイトから得られる。
【0088】
【化12】

【0089】
【化13】

【0090】
【化14】

特に興味深い1つの実施形態において、DUBはUSP−25であり、それは、米国特許出願公開US2003/0036107号および同US2003/0092605号(これらの各々はその全体が本明細書中に参考として援用される)に記載される。
【0091】
多くの異なるDUBタンパク質およびアイソザイムが当該分野において公知であり、かつ本発明で使用され得る(但し、DUBは脱ユビキチン化活性を有する)ことを、当業者は理解する。詳細には、本明細書中に記載されるように作製され得るDUBの改変体もまた、用語「DUB」に含まれる。
【0092】
本発明によって企図される脱ユビキチン化因子改変体は、ユビキチン化された標的基質タンパク質からのユビキチン部分の除去を促進し得る、ネイティブのユビキチン脱ユビキチン化因子の特性を保持する脱ユビキチン化因子改変体を含む。このような脱ユビキチン化因子改変体は、一般に、上記に提供される脱ユビキチン化因子のアミノ酸配列の好ましくは約75%より大きな、より好ましくは約80%より大きな、さらにより好ましくは約85%より大きな、そして最も好ましくは90%より大きな、アミノ酸配列全体の同一性を有する。いくつかの実施形態において、この配列同一性は、約93〜95または98%の高さである。脱ユビキチン化因子の改変体、および本発明のアッセイの他の成分は、以下により詳細に記載される。
【0093】
(標的タンパク質)
本明細書中において「標的タンパク質」または「基質タンパク質」または「ユビキチンリガーゼ基質」とは、ユビキチン因子の活性によって、またはユビキチン化のプロセスによってユビキチン部分が結合されるか付着される、ユビキチン部分以外のタンパク質、および/または、例えば脱ユビキチン化因子の作用によってユビキチン部分が除去される、ユビキチン部分以外のタンパク質を意味する。一般に、標的タンパク質は哺乳動物タンパク質であり、より好ましくはヒトタンパク質である。すなわち、本明細書中で使用される場合、「基質分子」または「標的基質」およびその文法的等価物は、ユビキチン因子の活性によって、またはユビキチン化のプロセスによってユビキチン部分が結合されるか付着される分子(好ましくは、タンパク質)を意味する。
【0094】
ユビキチン因子の活性に関して本明細書中で使用される場合、「付着」とは、モノ−またはポリユビキチンのユビキチン部分の基質分子への転移、結合、連結、および/またはユビキチン化をいう。従って、「ユビキチン化」およびその文法的等価物は、基質分子へのユビキチン部分の付着もしくは転移、結合および/または連結を意味し;そして「ユビキチン化反応」およびその文法的等価物は、ユビキチン化(すなわち、基質分子へのユビキチン部分の付着もしくは転移、結合、および/または連結)を可能にする条件下での成分の結合をいう。
【0095】
目的の宿主細胞基質タンパク質は、細胞のレトロウイルス感染に対する活性を有する宿主細胞基質タンパク質である。この基質タンパク質は、宿主細胞を、レトロウイルス感染(特にレトロウイルス複製)に対して完全にまたは部分的に非許容性にする基質タンパク質であり得る。宿主細胞タンパク質のユビキチン化は、例えばプロテオソーム媒介性の分解によって、その抗ウイルス作用を示すタンパク質のアベイラビリティの低下を引き起こす。
【0096】
1つの実施形態において、基質タンパク質は、宿主細胞シトシンデアミナーゼ(特にCEM15)である。CEM15はまた、APOBEC3G、アポリポタンパク質B mRNA編集酵素、および触媒ポリペプチド様3Gとしても公知である。CEM15は、新たに合成されるHIV−1DNA中に超変異を誘導する、宿主細胞シチジンデアミナーゼである。CEM15は、デアミナーゼとして作用して、レトロウイルス複製中にレトロウイルスRNAから生成されるDNAマイナス鎖中のC’をU’に変換する。CEM15修飾されたウイルス鎖のプラス鎖が生成される場合、このプラス鎖は、GからAへの超変異を含む。ヒトCEM15の例示的なヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、GenBank登録番号NM_021822中に見出される。CEM15に関連するタンパク質が記載されている。総説については、例えば、Wedekindら、Trends Genet.19(4):207〜16(2003)を参照のこと。
【0097】
別の実施形態において、基質タンパク質はCD4である。CD4は、T4/leu3としても公知のT細胞抗原であり、Tリンパ球中のみならず、B細胞、マクロファージ、および顆粒球中においても発現される。CD4はまた、脳の特定領域において発生的に調節された様式で発現される。CD4は、T細胞受容体(TCR)と相互作用する、ペプチド結合溝の外側のクラスII型主要組織適合複合体(MHC)分子上の比較的不変の部位に結合し、抗原に対するT細胞感受性を増強する。CD4は、CCR5またはCXCR5のようなケモカインレセプター(特にCCR5)と共に作用して、感染の初期段階におけるHIV結合および内部移行を媒介する。ヒトCD4の例示的なヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、GenBank登録番号P01730において見出される。
【0098】
宿主細胞基質タンパク質をコードする配列もまた、本発明の方法および組成物における使用に適した宿主細胞基質タンパク質の改変体を作製するために使用され得る。本発明の方法および組成物における使用に適したこのような改変体は、本明細書中に記載のように作製され得る。本発明によって企図される基質タンパク質改変体は、1つ以上のユビキチン化カスケードタンパク質によって促進されるようなユビキチン部分の付着によってユビキチン化され得る、ネイティブの基質タンパク質改変体の特性を保持する基質タンパク質改変体を含む。標的タンパク質がユビキチン化される場合、この改変体は、脱ユビキチン化因子によるユビキチン部分の除去によって改変され得る、ネイティブのユビキチン化されたタンパク質の特性を保持する改変体である。このような標的タンパク質改変体は、一般に、ネイティブの標的タンパク質(例えば、CEM15またはCD4)のアミノ酸配列の好ましくは約75%より大きな、より好ましくは約80%より大きな、さらにより好ましくは約85%より大きな、そして最も好ましくは90%より大きな、アミノ酸配列全体の同一性を有する。いくつかの実施形態において、この配列同一性は、約93〜95または98%の高さである。基質タンパク質の改変体、および本発明のアッセイの他の成分は、以下により詳細に記載される。
【0099】
本発明における使用のために示される他のタンパク質と同様に、基質タンパク質の改変体の産生についてのガイダンスは、このタンパク質のモチーフおよび関連するタンパク質が保存される配列を試験し、そしてそれに従ってアミノ酸の置換、欠失、および/または挿入を行うことによって、達成され得る。
【0100】
CEM15改変体の例示的な議論については、例えば、Shindoら、J.Biol.Chem.2003年、278:44412〜6(これは、CEM15の2つのシチジンデアミナーゼモチーフについての詳細な変異誘発分析、ならびにこのタンパク質の機能のうちビリオン感染性およびDNA編集活性に作用する機能への影響を記載する)を参照のこと。例えば、E259QおよびC291AのようなC末端活性部位中の点突然変異は、ほぼ完全に抗ウイルス機能を抑止したが、その一方で、E67QおよびC100AのようなN末端活性部位中の点突然変異は、野生型の点突然変異と比較して、より低い程度にこの抗ウイルス機能の活性を保持した(ここで使用される命名法は、1文字コードでのネイティブの残基、CEM15内での残基番号、およびその位置する1文字コードで置換された残基を提供する)。E67QおよびE259Qの変異体のDNA編集活性は、両方とも保持されたが、同程度に損なわれた。このことから、CEM15の酵素活性は必須であるが、このタンパク質の抗ウイルス活性の唯一の決定要因ではないことが示される。
【0101】
(レトロウイルスおよびレトロウイルスタンパク質)
本発明のスクリーニング方法は、任意の種々のレトロウイルスに感染した細胞において、または宿主細胞タンパク質(ここで、この宿主細胞タンパク質は、細胞に抗ウイルス活性を与える)のユビキチン化を調節するかまたは調節することが疑われるレトロウイルスタンパク質を(例えば、外因性のポリヌクレオチドの発現または細胞中へのポリペプチドの導入によって)含む細胞において、宿主細胞基質タンパク質(例えば、CEM15)のユビキチン化を調節する因子を同定するのに用いられ得る。一般に、このようなレトロウイルスタンパク質は、レトロウイルス複製に対する宿主細胞の許容性を増強するように、このような抗ウイルス性の宿主細胞タンパク質のユビキチン化を増強する。
【0102】
以下により詳細に議論される1つの実施形態において、アッセイは、目的のレトロウイルスに感染する宿主細胞を用いて行われる。目的のレトロウイルスとしては、レンチウイルス(例えば、HIV(HIV−1およびHIV−2のようなHIVのサブタイプを含む)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EAV)、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ビスナ/マエディウイルス);αレトロウイルス(例えば、トリ白血病ウイルス(ALV);ラウス肉腫ウイルス(RSV));βレトロウイルス(例えば、マウス乳腺癌ウイルス(MMTV)、マソン‐ファイザーサルウイルス(MPMV)、Jaagsiekteヒツジレトロウイルス(JSRV));γレトロウイルス(例えば、マウス白血病ウイルス(MuLv);ネコ白血病ウイルス(FeLv)、テナガザル白血病ウイルス(GALV)、細網内皮症ウイルス(RevT));δレトロウイルス;(例えば、ヒトTリンパ好性ウイルス(HTLV−1およびHTLV−2を含む、HTLV)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、サルTリンパ好性ウイルス(STLV−1、−2、および−3を含む、STLV));εレトロウイルス(例えば、ウォールアイ皮膚肉腫ウイルスおよびウォールアイ表皮過形成ウイルス1);ならびにスプマウイルス属(例えば、ヒト泡沫状ウイルス(HFV))などが挙げられる。
【0103】
別の実施形態において、アッセイは、このアッセイが無細胞アッセイまたは細胞ベースのアッセイのいずれかとして行われる場合、ウイルスのユビキチン化モジュレータータンパク質であるレトロウイルスタンパク質を用いて行われる。「ウイルスのユビキチン化モジュレータータンパク質」とは、宿主細胞基質タンパク質(特に、抗ウイルス活性を有する宿主細胞基質タンパク質)のユビキチン化を調節する(通常、促進する)ウイルスタンパク質をいう。この実施形態において、単離されたレトロウイルスタンパク質またはこの単離されたレトロウイルスタンパク質をコードする核酸が用いられる。
【0104】
(Vif)
Vifは、本発明のスクリーニング方法において特に興味深いレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質である。Vifは、ウイルス複製サイクルの後期に比較的高レベルで合成されるHIVの高度に塩基性のタンパク質である。一般に、ネイティブのVifは、約23KDaおよび約192アミノ酸残基長であり、リン酸化される。Vifは、HIV−1およびサル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)を含む他のレンチウイルスに高度に保存され、インビボにおける増殖性感染に必要である。Vifは、全ての細胞におけるHIV−1の複製に必ずしも必要ではないが、初代Tリンパ球および単球/マクロファージにおけるHIV−1複製に必要である。複製のためのVifの要求性における差異により、初代細胞または細胞株を、Vif欠損ウイルスの複製に対して非許容性(H9、HYT78、A3.0、初代CD4+T細胞)、半許容性(CEM−ss、単球由来マクロファージ(MDM))または許容性(HeLa、293T、Cos−7、SupT1)のいずれかに分類した(例えば、Sovaら、J Viol 67:6322〜6366(1993);Zhangら、J virol 74:8252〜8261(2000)を参照のこと)。Vifに関する総説については、例えば、Lakeら、J Clin Virol.26(2):143−52(2003)を参照のこと。HIV−1のVifは、本発明において特に興味深い。
【0105】
Vifについてのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、当該分野で公知である。HIV−1 Vifについてのコンセンサス配列は、Pfam登録番号pfam00559に提供される。このコンセンサス配列および例示的なVifアミノ酸配列は、図1に提供される。アミノ酸変更についてのガイダンスは、図1に示すようなアラインメント、ならびにHIV−1の他の株および他のレトロウイルスの他のVifアミノ酸配列のアラインメントから得られ得る。
【0106】
本発明は、本発明の方法および組成物で使用されるVif改変体の使用を企図し、これらの改変体は、本明細書中に記載されるように作製され得る。本発明によって企図されるVif改変体は、宿主細胞基質タンパク質(特にCEM15)のユビキチン化の増大を達成するように宿主細胞ユビキチン化カスケードを調節し得る、ネイティブのVifの特性を保持するVif改変体を含む。このようなVif改変体は、一般に、ネイティブのVifタンパク質のアミノ酸配列の好ましくは約75%より大きな、より好ましくは約80%より大きな、さらにより好ましくは約85%より大きな、そして最も好ましくは90%より大きな、アミノ酸配列全体の同一性を有する。いくつかの実施形態において、この配列同一性は、約93〜95または98%の高さである。Vif改変体および本発明のアッセイの他の成分は、以下により詳細に記載される。
【0107】
(Vpu)
Vpuは、本発明のスクリーニング方法において特に興味深いレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質である。Vpuタンパク質は、感染細胞からのウイルス粒子の放出を増強することによって、ウイルス産生を刺激する。Vpuタンパク質は、CD4に特異的に結合する。Vpuはまた、SCFβTrCpユビキチンE3リガーゼ複合体をCD4の細胞質尾部に補充することによって、プロテアソーム分解のためにCD4レセプターを標的化する。
【0108】
一般に、ネイティブのVpuは、約81アミノ酸残基長であり、HIV(特にHIV−1)およびSIV中に存在する。Vpuは、リン酸化されたオリゴマー1型内在性膜タンパク質である。Vpuは、ウイルスの生活環の間に2つの主要な機能を果たす−すなわち、感染細胞からのビリオンの放出を増強し、そして小胞体におけるCD4レセプターの選択的分解を媒介する。Vpuタンパク質は、CD4に特異的に結合する。Vpuはまた、SCFβTrCpユビキチンE3リガーゼ複合体をCD4の細胞質尾部に補充することによって、プロテアソーム分解のためにCD4レセプターを標的化する。HIVのVpu(特にHIV−1)は、本発明において特に興味深い。
【0109】
Vpuについてのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、当該分野で公知である。HIV−1 Vpuについてのコンセンサス配列は、Pfam登録番号pfam00558.8に提供される。このコンセンサス配列および例示的なVpuアミノ酸配列は、図2に提供される。アミノ酸変更についてのガイダンスは、図2に示すようなアラインメント、ならびにHIV−1の他の株および他のレトロウイルスの他のVpuアミノ酸配列のアラインメントから得られ得る。
【0110】
本発明は、本発明の方法および組成物で使用されるVpu改変体の使用を企図し、これらの改変体は、本明細書中に記載されるように作製され得る。本発明によって企図されるVpu改変体は、宿主細胞基質タンパク質(特にCD4)のユビキチン化の増大を達成するように宿主細胞ユビキチン化カスケードを調節し得る、ネイティブのVpuの特性を保持するVpu改変体を含む。このようなVpu改変体は、一般に、ネイティブのVpuタンパク質のアミノ酸配列の好ましくは約75%より大きな、より好ましくは約80%より大きな、さらにより好ましくは約85%より大きな、そして最も好ましくは90%より大きな、アミノ酸配列全体の同一性を有する。いくつかの実施形態において、この配列同一性は、約93〜95または98%の高さである。Vpu改変体および本発明のアッセイの他の成分は、以下により詳細に記載される。
【0111】
(アミノ酸配列が異なる改変体ポリペプチドおよびフラグメント)
上記のように、本明細書中に記載される本発明のアッセイは、ユビキチン、E1、E2、E3、脱ユビキチン化酵素(DUB)、基質タンパク質(例えば、CEM15)、およびレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質(例えば、Vif、Vpu)の改変体を含む、ユビキチン化カスケードに関与する種々のタンパク質の改変体を用いて行なわれ得る。これらの改変体は、一般に、以下の3つのクラスの1つ以上に分類される:置換改変体、挿入改変体または欠失改変体。改変体は、一般に、「参照」配列(例えば、天然に存在するタンパク質の配列)に対して配列類似性(例えば、配列同一性)を有するとされている。アミノ酸配列類似性を共有するタンパク質は、ヌクレオチド配列類似性を共有する核酸によってコードされることも、容易に理解される。
【0112】
当該分野で公知のように、多くの異なるプログラムが、タンパク質(または以下で論じるような核酸)が既知の配列との配列同一性または類似性を有するか否かを確認するために使用され得る。配列同一性および/または類似性は、当該分野で公知の標準技術を使用して決定され、これらの標準技術としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所配列同一性アルゴリズム;Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の配列同一性アライメントアルゴリズムによって;Pearson & Lipman,PNAS USA 85:2444(1988)の類似性検索方法によって;これらのアルゴリズムのコンピューター化された実行(Wisconsin Genetics Software Package中のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,WI)によって;Devereuxら,Nucl.Acid Res.12:387〜395(1984)に記載されるBestFit配列決定プログラム(好ましくはデフォルト設定を用いる);または検査によって。好ましくは、パーセント同一性は、以下のパラメーターに基づいてFastDBによって算出される:1のミスマッチペナルティ;1のギャップペナルティ;0.33のギャップサイズペナルティ;および30の連結ペナルティ、「Current Methods in Sequence Comparison and Analysis」、Macromolecule Sequencing and Synthesis,Selected Methods and Applications,pp127〜149(1988),Alan R.Liss,Inc.。
【0113】
有用なアルゴリズムの一例は、PILEUPである。PILEUPは、累進的な(progressive)、対をなすアライメントを使用して、関連する配列の群から複数の配列アラインメントを作製する。これはまた、アラインメントを作製するために用いられるクラスター化関係を示す系図もプロットし得る。PILEUPは、Feng & Doolittle,J.Mol.Evol.35:351〜360(1987)の累進的アライメント方法(この方法は、Higgins & Sharp CABIOS 5:151〜153(1989)に記載される方法に類似している)の単純化を使用する。有用なPILEUPパラメーターとしては、3.00のデフォルトギャップ加重、0.10のデフォルトギャップ長加重、および加重末端ギャップが挙げられる。
【0114】
有用なアルゴリズムの別の例は、Altschulら,J.Mol.Biol.215,403〜410,(1990)およびKarlinら,PNAS USA 90:5873〜5787(1993)に記載される、BLASTアルゴリズムである。特に有用なBLASTプログラムは、Altschulら、Methods in Enzymology,266:460〜480(1996);http://blast.wustl/edu/blast/README.html]から得られるWU−BLAST−2プログラムである。WU−BLAST−2は、いくつかの検索パラメーターを使用し、それらの検索パラメーターのほとんどは、デフォルト値に設定される。調整可能なパラメーターは以下の値で設定される:重複範囲(overlap span)=1、重複割合(overlap fraction)=0.125、ワード閾値(T)=11。HSP SパラメーターおよびHSP S2パラメーターは、動的な値であり、目的の配列が検索される特定の配列の組成および特定のデータベースの組成に依存して、プログラム自体によって構築される;しかし、これらの値は、感度を増加させるために調節され得る。
【0115】
さらなる有用なアルゴリズムは、Altschulら(Nucleic Acids Res.25:3389〜3402)によって報告されるようなギャップ化BLASTである。ギャップ化BLASTは、BLOSUM−62置換スコア;9に設定した閾値Tパラメーター;非ギャップ化伸長を引き起こす2ヒット法;10+kのコストであるkの加重ギャップ長;16に設定したXu、およびデータベース検索段階用に40に設定し、そしてアルゴリズムの出力段階用に67に設定したXgを使用する。ギャップ化アライメントは、約22ビットに対応するスコアによって引き起こされる。
【0116】
アミノ酸配列同一性パーセント値は、一致する同一残基の数を、整列された領域中の「より長い」配列の残基の総数で割ることによって決定される。「より長い」配列は、整列された領域(アラインメントスコアを最大にするためにWU−Blast−2に導入されるギャップは無視される)中の実質的な残基が最も多い配列である。
【0117】
アライメントは、整列される配列中にギャップの導入を含み得る。さらに、参照アミノ酸配列よりも多いかまたは少ないアミノ酸を含む配列について、1つの実施形態において、配列同一性のパーセントは、アミノ酸の総数に対する同一アミノ酸の数に基づいて決定されることが理解される。同一性パーセントの計算において、相対加重は、種々の配列変異の出現(例えば、挿入、欠失、置換、など)に割り当てられない。
【0118】
1つの実施形態において、同一性のみが正にスコア付け(+1)され、ギャップを含む全ての形態の配列変異には「0」の値が割り当てられる。これにより、配列類似性計算について以下に記載されるような加重したスケールまたはパラメーターの必要性が排除される。配列同一性パーセントは、例えば、一致する同一残基の数を、整列させた領域中の「より短い」配列の残基の総数で割って100を掛けることによって算出され得る。「より長い」配列は、整列させた領域中の実質的な残基が最も多い配列である。
【0119】
目的の改変体は、この改変体をコードするDNAを産生するために、カセットまたはPCR変異誘発あるいは当該分野において周知の他の技術を使用して、本発明の組成物のタンパク質をコードするDNA中のヌクレオチドを部位特異的変異誘発し、その後、上に概説されるような組換え細胞培養物中でこのDNAを発現させることによって、通常調製され得る。しかしながら、最大約100〜150個の残基を有する改変体タンパク質フラグメントは、確立された技術を使用して、インビトロにおける合成によって調製されていてもよい。アミノ酸配列改変体は、変異の所定の性質(これらの変異を、タンパク質アミノ酸配列の天然に存在する対立遺伝子変異または種間変異と区別する特徴)によって特徴付けられる。これらの改変体は、代表的には天然に存在するアナログと質的に同じ生物活性を示すが、以下により完全に概説されるように、改変された特性を有する改変体も選択され得る。
【0120】
アミノ酸配列変異を導入するための部位または領域はあらかじめ決定されるが、突然変異自体はあらかじめ決定される必要はない。例えば、所定の部位での突然変異の性能を最適化するために、ランダム変異誘発が標的コドンまたは領域で行われ得、そしてこれらの発現された改変体が、最適な所望の活性についてスクリーニングされる。既知の配列を有するDNA中の所定の部位で置換突然変異をなすための技術は、周知である(例えば、M13プライマー変異誘発およびPCR変異誘発)。多くの改変体の迅速な産生は、遺伝子シャッフリングの方法のような技術を使用して行われ得、それによってヌクレオチド配列の類似の改変体のフラグメントを組み換えて、新しい改変体の組合せを生成する。そのような技術の例は、米国特許第5,605,703号;同第5,811,238号;同第5,873,458号;同第5,830,696号;同第5,939,250号;同第5,763,239号;同第5,965,408号;および同第5,945,325号(これらの各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に見出される。変異体のスクリーニングは、本発明の活性アッセイを使用して行なわれる。
【0121】
アミノ酸置換は、代表的には単一の残基である;挿入は通常約1〜20アミノ酸程度であるが、相当大きな挿入が許容され得る。欠失は約1〜約20残基の範囲であるが、ある場合には、欠失ははるかに大きくてもよい。
【0122】
置換、欠失、挿入またはそれらの任意の組合せは、最終誘導体に到達するために使用され得る。一般に、これらの変更は少数のアミノ酸で行われ、分子の変更を最小にする。しかし、特定の状況において、より大きな変更が許容され得る。タンパク質の特性の小さな変更が所望される場合、もとの残基の置換は、一般に、以下に列挙される例示的な置換に従って作製される。
【0123】
【化15】

機能または免疫学的同一性の実質的な変更は、上記のリスト中に示される置換ほど保存的ではない置換を選択することによってなされる。例えば、以下により顕著に影響する置換がなされ得る:変更の領域におけるポリペプチド主鎖の構造(例えば、αヘリックスまたはβシート構造);標的部位での分子の電荷または疎水性;あるいは側鎖のかさ。ポリペプチドの特性に最も大きな変化を生じることが一般に予想される置換は、(a)親水性残基(例えば、セリルもしくはトレオニル)が、疎水性残基(例えば、ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリルもしくはアラニル)の代わりに(またはこれらによって)置換されるか;(b)システインもしくはプロリンが、任意の他の残基の代わりに(またはこれらによって)置換されるか;(c)陽性の側鎖を有する残基(例えば、リシル、アルギニル、もしくはヒスチジル)が、陰性の残基(例えば、グルタミルもしくはアスパルチル)の代わりに(またはこれらによって)置換されるか;あるいは(d)嵩高い側鎖を有する残基(例えば、フェニルアラニン)が、側鎖を有さない残基(例えば、グリシン)の代わりに(あるいはこれらによって)置換される、置換である。
【0124】
1つの実施形態において、改変体は、代表的には天然に存在するアナログと質的に同じ生物活性を示し、かつ同じ免疫応答を誘発するが、改変体はまた、必要に応じてタンパク質の特性を改変するために選択される。あるいは、改変体は、タンパク質の生物活性が変更されるように設計され得る。例えば、グリコシル化部位は、変更されても除去されてもよい。
【0125】
例えば改変体のアミノ酸配列および遺伝暗号の知識に基づいて、タンパク質改変体のヌクレオチド配列を容易に決定し得ることが理解される。遺伝暗号の縮重により、タンパク質改変体をコードするヌクレオチド配列は、改変体タンパク質とネイティブタンパク質との間のアミノ酸配列同一性よりも、より低い対応するネイティブヌクレオチド配列との配列同一性を示し得る。例えば、わずか約66%(すなわち約2/3)のヌクレオチド配列同一性しか共有しないヌクレオチド配列が、遺伝暗号の縮重によって同じアミノ酸配列をコードし得る。従って、タンパク質改変体をコードする核酸は、参照核酸(例えば、改変体タンパク質配列が誘導されるネイティブタンパク質(すなわち、改変前のタンパク質)をコードする、対応する核酸)と、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有し得る。
【0126】
本発明はまた、対応する天然に存在するアミノ酸配列より短いかまたはより長い、ユビキチンタンパク質、基質タンパク質、およびレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質の使用も企図する。すなわち、本明細書中に記載されるこれらのタンパク質の一部またはフラグメントは、本発明のアッセイにおいて使用され得る。本発明において使用されるフラグメントは、このフラグメントが誘導されるか、またはこのフラグメントがアミノ酸配列同一性を共有するタンパク質の生物活性を保持する。例えば、本発明において有用なユビキチンフラグメントは、対応するユビキチン因子によって基質タンパク質に転移され得る(あるいは基質タンパク質から取り除かれ得る)ユビキチンフラグメントである。同様に、目的のユビキチン活性化因子のフラグメント(例えば、E1のフラグメント)は、ユビキチン部分によって修飾される活性、およびユビキチン結合体化因子を活性化する活性を保持するフラグメントである。目的のユビキチン結合体化因子のフラグメント(例えば、E2のフラグメント)は、基質タンパク質へのユビキチン部分の転移を促進するためにE3と相互作用する活性を保持するフラグメントである。ユビキチン連結因子フラグメントは、標的タンパク質へのユビキチン部分の転移を促進するために、標的タンパク質および活性化されたE2と相互作用する活性を保持する。目的の標的タンパク質フラグメントは、ユビキチンカスケードの関連成分によるユビキチン部分の付着および/または除去によって修飾され得るフラグメントである。目的のレトロウイルスユビキチン化モジュレーターフラグメントは、ユビキチン化(例えば、CEM15のユビキチン化を増強する活性を保持するVifフラグメント;CD4のユビキチン化を増強する活性を保持するVpuフラグメント)を調節する活性を保持するフラグメントである。
【0127】
(ポリペプチドの産生)
ユビキチン化カスケード因子(例えば、ユビキチン部分および他のユビキチン因子)、および標的基質タンパク質、ならびに本発明の方法および組成物に使用される標的基質タンパク質のユビキチン化を調節するウイルスタンパク質は、当該分野で公知の方法によって産生され得る。さらに、プローブまたは縮重したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー配列は、他の関連するユビキチン部分または改変体ユビキチン部分、ユビキチン因子、およびヒトまたは他の生物体由来の標的タンパク質を見出すために使用され得る。当業者に理解されるように、特に有用なプローブおよび/またはPCRプライマー配列は、核酸配列のユニークな領域を含む。当該分野において一般に公知のように、PCRプライマーは、一般に約15〜約35ヌクレオチド長、通常は約20〜約30ヌクレオチド長であって、必要に応じてイノシンを含み得る。PCR反応のための条件は、当該分野において周知である。従って、本明細書中に引用される配列において、その配列とともに15ヌクレオチド以上のユニークな部分が特に興味深いそれらの配列の一部が提供されることもまた理解される。当業者は、ヌクレオチド配列を所望の長さに慣用的に合成または切断し得る。
【0128】
一旦、その自然源から単離されると(例えば、プラスミドまたは他のベクター中に含まれるか、直鎖状の核酸セグメントとしてそこから切り出されると)、組換え核酸は、他の核酸を同定および単離するためのプローブとしてさらに使用され得る。組換え核酸はまた、改変された核酸およびタンパク質または改変体核酸およびタンパク質を作製するための「前駆体」核酸としても使用され得る。
【0129】
1つの実施形態において、本発明の核酸は、発現ベクターの一部である。タンパク質をコードする本発明の核酸を使用して、種々の発現ベクターが作製される。これらの発現ベクターは、自己複製する染色体外ベクターまたは宿主ゲノムに組み込むベクターのいずれかであり得る。一般に、これらの発現ベクターは、タンパク質をコードする核酸に作動可能に連結される転写および翻訳の調節核酸を含む。用語「制御配列」とは、特定の宿主生物において作動可能に連結するコード配列の発現に必要なDNA配列をいう。例えば、原核生物に適した制御配列としては例えば、プロモーター、必要に応じてオペレーター配列、およびリボソーム結合部位が挙げられる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーを利用することが知られている。
【0130】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係に配置される場合、「作動可能に連結される」。例えば、プレ配列または分泌リーダー配列のDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、このポリペプチドのDNAに作動可能に連結され;プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列の転写に影響する場合、このコード配列に作動可能に連結され;あるいは、リボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置される場合、コード配列に作動可能に連結される。別の例として、作動可能に連結されるとは、連続するように連結されるDNA配列をいい、そして、分泌リーダーの場合には、連続し、かつリーディングフレーム中にあるように連結されるDNA配列をいう。しかし、エンハンサーは連続する必要はない。連結は、好都合な制限部位での連結によって達成される。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが、従来の方法に従って使用される。転写および翻訳の調節核酸は、一般に、タンパク質を発現するために使用される宿主細胞に適合性である;例えば、Bacillus由来の転写および翻訳の調節核酸配列は、Bacillusにおいてタンパク質を発現するために使用され得る。多くのタイプの適切な発現ベクターおよび適切な調節配列が、種々の宿主細胞について当該分野で公知である。
【0131】
一般に、転写および翻訳の調節配列としては、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始および終止配列、翻訳開始および終止配列、ならびにエンハンサーまたはアクチベーター配列が挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、調節配列は、プロモーターならびに転写開始および終止配列を含む。
【0132】
プロモーター配列は、構成プロモーターまたは誘導プロモーターのいずれかをコードする。これらのプロモーターは、天然に存在するプロモーターまたはハイブリッドプロモーターのいずれかであり得る。2つ以上のプロモーターのエレメントを組み合わせるハイブリッドプロモーターも当該分野において公知であり、本発明において有用である。
【0133】
さらに、発現ベクターは、さらなるエレメントを含み得る。例えば、発現ベクターは2つの複製系を有し得、従って、2つの生物体中で(例えば、発現のために哺乳動物細胞または昆虫細胞中で、そしてクローニングおよび増幅のために原核生物宿主中で)維持され得る。さらに、発現ベクターを組み込むために、発現ベクターは、宿主細胞ゲノムに相同な少なくとも1つの配列を含み、そして好ましくは、発現構築物に隣接する2つの相同配列を含む。組み込むベクターは、このベクター中の封入に適切な相同配列を選択することによって、宿主細胞中の特定の遺伝子座に指向され得る。ベクターを組み込むための構築物は、当該分野において周知である。
【0134】
さらに、1つの実施形態において、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にするために選択マーカー遺伝子を含む。選択遺伝子は当該分野において周知であり、使用される宿主細胞に応じて変化する。
【0135】
例示的な発現ベクター系は、PCT/US97/01019およびPCT/US97/01048(これらの両方は、本明細書中に参考として明確に援用される)に一般に記載されるようなレトロウイルスベクター系である。構築物はまた、米国特許第6,153,380号(参考として本明細書中に明確に援用される)に記載される。
【0136】
本発明のタンパク質は、タンパク質の発現を誘導するかまたは引き起こすのに適切な条件下で、タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養することによって産生される。タンパク質発現に適切な条件は、発現ベクターおよび宿主細胞の選択に応じて変化し、当業者による常法に従った実験によって容易に確認される。例えば、発現ベクター中の構成プロモーターの使用は、宿主細胞の成長および増殖を最適化することを必要とするが、一方、誘導プロモーターの使用は、誘導に適した成長条件を必要とする。
【0137】
適切な宿主細胞としては、酵母、細菌、始原細菌、真菌、および昆虫ならびに動物細胞(哺乳動物細胞を含む)が挙げられる。特に興味深いのは、Drosophila melanogaster細胞、Pichia pastorisおよびP.methanolica、Saccharomyces cerevisiaeおよび他の酵母、E.coli、Bacillus subtilis、SF9細胞、SF21細胞、C129細胞、Saos−2細胞、Hi−5細胞、293個の細胞、Neurospora、BHK、CHO、COS、ならびにHeLa細胞である。最も興味深いものは、A549、HeLa、HUVEC、Jurkat、BJAB、CHMC、およびT細胞またはマクロファージに由来する細胞株である。
【0138】
1つの実施形態において、タンパク質は、哺乳動物細胞(特にヒト細胞)中で発現される。哺乳動物発現系はまた、当該分野において公知であり、レトロウイルス系を含む。哺乳動物プロモーター(すなわち、哺乳動物細胞中において機能的なプロモーター)は、哺乳動物RNAポリメラーゼに結合し得、かつタンパク質のコード配列のmRNAへの下流(3’側)転写を開始し得る、任意のDNA配列である。プロモーターは、転写開始領域(これは、コード配列の5’末端の近位に通常位置する)およびTATAボックス(転写開始部位の上流に位置する25〜30塩基対を用いる)を有する。TATAボックスは、正確な部位でRNAポリメラーゼIIにRNA合成を開始させると考えられている。哺乳動物プロモーターはまた、TATAボックスの100〜200塩基対上流の範囲内に通常位置する上流プロモーターエレメント(エンハンサーエレメント)を含む。上流プロモーターエレメントは、転写が開始され、そしていずれかの方向に作用し得る速度を決定する。哺乳動物のプロモーターとして特に有用なものは、哺乳動物ウイルス遺伝子由来のプロモーターである。なぜなら、これらのウイルス遺伝子は、しばしば高度に発現され、そして広い宿主範囲を有するためである。例としては、SV40初期プロモーター、マウス乳癌ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、単純ヘルペスウイルスプロモーター、およびCMVプロモーターが挙げられる。
【0139】
代表的には、哺乳動物細胞によって認識される転写終結配列およびポリアデニル化配列は、翻訳終止コドンに対して3’側に位置する制御領域であり、従って、プロモーターエレメントと共にコード配列に隣接する。成熟mRNAの3’末端は、部位特異的な翻訳後切断およびポリアデニル化によって形成される。転写終結配列およびポリアデニル化シグナルの例としては、SV40から誘導されるものが挙げられる。
【0140】
哺乳動物宿主および他の宿主に外因性の核酸を導入する方法は、当該分野において周知であり、使用される宿主細胞に応じて変化する。技術としては、デキストラン媒介性のトランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介性のトランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ウイルス感染、リポソーム中のポリヌクレオチドのカプセル化、および核中へのDNAの直接マイクロインジェクションが挙げられる。
【0141】
宿主細胞が細菌細胞である場合、適切な細菌プロモーターは、細菌RNAポリメラーゼに結合し得、かつタンパク質のコード配列のmRNAへの下流(3’側)転写を開始し得る、任意の核酸配列である。細菌プロモーターは、転写開始領域(これは、コード配列の5’末端の近位に通常位置する)を有する。この転写開始領域は、代表的にはRNAポリメラーゼ結合部位および転写開始部位を含む。代謝経路酵素をコードする配列は、特に有用なプロモーター配列を提供する。例としては、ガラクトース、ラクトースおよびマルトースのような糖を代謝する酵素に由来するプロモーター配列、およびトリプトファンのような生合成酵素に由来する配列が挙げられる。バクテリオファージ由来のプロモーターも使用され得、当該分野において公知である。さらに、合成プロモーターおよびハイブリッドプロモーターも有用である;例えば、tacプロモーターは、trpプロモーター配列とlacプロモーター配列のハイブリッドである。さらに、細菌プロモーターは、細菌RNAポリメラーゼに結合し、かつ転写を開始する能力を有する、非細菌起源の天然に存在するプロモーターを含み得る。
【0142】
機能するプロモーター配列に加えて、効率的なリボソーム結合部位が所望される。E.coliにおいて、リボソーム結合部位はShine−Delgarno(SD)配列と呼ばれ、開始コドンおよびこの開始コドンの3〜11ヌクレオチド上流に位置する3〜9ヌクレオチド長の配列を含む。
【0143】
発現ベクターはまた、細菌においてタンパク質の分泌を与えるシグナルペプチド配列も含み得る。シグナル配列は、代表的には、当該分野において周知のように、細胞からのタンパク質の分泌を指示する疎水性アミノ酸から構成されるシグナルペプチドをコードする。タンパク質は、増殖培地中に分泌される(グラム陽性菌)か、または細胞の内膜と外膜との間に位置する細胞膜周辺腔中に分泌される(グラム陰性菌)。
【0144】
細菌発現ベクターはまた、形質転換された菌種の選択を可能にするために選択マーカー遺伝子を含み得る。適切な選択遺伝子としては、アンピシリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、カナマイシン、ネオマイシンおよびテトラサイクリンのような薬物に対する耐性を細菌に付与する遺伝子が挙げられる。選択マーカーとしては、生合成遺伝子(例えば、ヒスチジン、トリプトファンおよびロイシン生合成経路における生合成遺伝子)も挙げられる。
【0145】
タンパク質はまた、当該分野において周知の技術を使用して、融合タンパク質として作製され得る。従って、例えば、タンパク質はペプチドをコードする融合核酸から作製され得るか、または発現目的で他の核酸に連結され得る。同様に、本発明のタンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、ルシフェラーゼなどのような、タンパク質標識であるタグに連結し得る。これらの融合物は、2a部位および内部リボソーム侵入部位IRESのような分離部位(これらは、感染細胞の追跡方法を提供するためのIRES標識として、この構築物において特に有用である)を含む、他の構築物も含み得る。
【0146】
細菌のための発現ベクターは当該分野において周知であり、中でも、Bacillus subtilis、E.coli、Streptococcus cremoris、およびStreptococcus lividansのためのベクターが挙げられる。細菌発現ベクターは、塩化カルシウム処理、エレクトロポレーションなどのような、当該分野で周知の技術を用いて細菌宿主細胞に形質転換される。1つの実施形態において、タンパク質は昆虫細胞中で産生される。昆虫細胞の形質転換のための発現ベクター(特に、バキュロウイルス系発現ベクター)は、当該分野において周知である。別の実施形態において、タンパク質は酵母細胞中で産生される。酵母発現系は当該分野で周知であり、Saccharomyces cerevisiae、Candida albicansおよびC.maltosa、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces fragilisおよびK.lactis、Pichia guillerimondii、P.methanolicaおよびP.pastoris、Schizosaccharomyces pombe、ならびにYarrowia lipolyticaのための発現ベクターが挙げられる。酵母における発現のためのプロモーター配列としては、誘導性のGAL1、10プロモーター、アルコール脱水素酵素、エノラーゼ、グルコキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、および酸性ホスファターゼ遺伝子由来のプロモーターが挙げられる。酵母選択マーカーとしては、ADE2、HIS4、LEU2、TW1、およびALG7(これは、ツニカマイシンに対する耐性を付与する);ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(これは、G418に対する耐性を付与する);ならびにCUP1遺伝子(これは、酵母が銅イオンの存在下で増殖することを可能にする)が挙げられる。
【0147】
タンパク質は、サンプルの中に存在する他の成分に依存して、当業者に公知の種々の方法で単離または精製され得る。標準の精製方法としては、イオン交換、疎水性、親和性、および逆相HPLCクロマトグラフィーならびに等電点電気泳動を含む、電気泳動技術、分子技術、免疫学的技術およびクロマトグラフィー技術が挙げられる。例えば、ユビキチンタンパク質は、標準の抗ユビキチン抗体カラムを使用して精製され得る。タンパク濃縮に関連して、限外濾過技術およびダイアフィルトレーション技術もまた有用である。適切な精製技術の一般的なガイダンスについては、Scopes,R.,Protein Purification,Springer−Verlag,NY(1982)を参照のこと。必要な精製度は、タンパク質の用途に応じて変化する。いくつかの場合において、精製は必要ではない。
【0148】
(検出可能に標識されたユビキチン因子を含む、共有結合的に修飾されたタンパク質)
1つの実施形態において、ポリペプチドの共有結合修飾は、本発明の範囲内に含まれる。このような共有結合修飾は、一般に、USSN09/800,770号(2001年3月6日出願)(これは、本明細書中に参考として明確に援用される)により詳細に記載されるようなインビトロアッセイにおける用途が見出されている。
【0149】
(タグ化ポリペプチド)
因子、特にユビキチン化カスケード因子(例えば、ユビキチン化カスケードタンパク質)、宿主細胞ユビキチン化基質タンパク質、およびレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質(例えば、Vif、Vpu)は、タグを含むように改変され得る。「タグ」とは、付着される分子(単数または複数)の同定または単離に有用な付着した分子(単数または複数)を意味し、これは基質結合分子であり得る。例えば、タグは付着タグまたは標識タグであり得る。タグを有する成分は「タグ−X」と呼ばれ、このXは成分である。例えば、タグを含むユビキチン部分は、本明細書中で「タグ−ユビキチン部分」と呼ばれる。好ましくは、タグは、付着される成分に共有結合される。
【0150】
ある組合せの2つ以上の成分がタグを有する場合、これらのタグは、同定のために番号付けされる(例えば、「tag1−ユビキチン部分」)。成分は2つ以上のタグを含み得、この場合、各々のタグが番号付けされる(例えば、「tag1,2−ユビキチン部分」)。例示的なタグとしては、標識、結合対のパートナー、および表面基質結合分子(または付着タグ)が挙げられるが、これらに限定されない。当業者に明らかなように、多くの分子は、どのようにタグが使用されるかに依存して、2つ以上の型のタグとしての用途を見出し得る。1つの実施形態において、以下に記載されるようなタグまたは標識は、融合タンパク質としてポリペプチド中に組み込まれる。
【0151】
当業者に理解されるように、本発明のタグ成分は、タグの形態に大いに依存して種々の方法で作製され得る。本発明の成分およびタグは、好ましくは共有結合によって結合される。タグの例は、以下に記載される。
【0152】
(本発明に有用な例示的なタグ)
上記のように、「タグ」は、任意の種々の標識であり得、この標識は直接的または間接的のいずれかで検出され得る。タグ化ユビキチン化カスケードタンパク質、タグ化基質タンパク質、およびタグ化されたレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質は、以下により詳細に記載される、本発明のスクリーニングアッセイにおいて特定の用途を見出す。
【0153】
「標識」または「検出可能な標識」とは、直接的に検出され得る分子(すなわち、1次標識)または間接的に検出され得る分子(すなわち、2次標識)を意味する;例えば、標識は視覚化および/または測定され得るか、あるいは標識の存在または非存在が分かるように識別され得る。当業者に理解されるように、この検出が行なわれる様式は、標識に依存する。例示的な標識としては、蛍光標識(例えば、GFP)および標識酵素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0154】
1つの実施形態において、タグは、別の異種ポリペプチドまたはアミノ酸配列に融合される第1のポリペプチドを含むキメラ分子の一部として提供されるポリペプチドである。1つの実施形態において、このようなキメラ分子は、第1のポリペプチド(例えば、ユビキチン部分、ユビキチン因子、または標的タンパク質)とタグポリペプチドとの融合物を含む。タグは、一般にポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に配置される。タグポリペプチドは、例えば、抗タグ抗体が選択的に結合し得るエピトープを提供するポリペプチド、レセプターに結合するための(例えば、基質上のキメラ分子の固定化を促進するための)リガンド;酵素標識(例えば、以下にさらに記載されるような);あるいは蛍光標識(例えば、以下にさらに記載されるような)として機能するポリペプチドであり得る。タグポリペプチドは、例えば、このタグポリペプチドに対する抗体を使用する検出、および/またはこのタグ化ポリペプチドを単離または精製する即時的手段(例えば、このタグに結合する抗タグ抗体または別の型のレセプターリガンドマトリックスを使用する、アフィニティー精製による手段)を提供する。代替の実施形態において、キメラ分子は、本明細書中に開示されるポリペプチドと、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの特定の領域との融合物を含み得る。2価形態のキメラ分子について、このような融合は、IgG分子のFc領域に対するものであり得る。本発明の成分のためのタグは、以下に詳細に定義されかつ記載される。
【0155】
組換え手段によるタグポリペプチドの産生は、当該分野における知識および技術の範囲内である。FLAG標識されたタンパク質の産生は、当該分野において周知であり、そのような産生のためのキットは市販されている(例えば、KodakおよびSigmaより)。FLAG標識されたタンパク質の産生および使用のための方法は、例えば、Winstonら、Genes and Devel.13:270〜283(1999)(その全体が本明細書中に援用される)、ならびに前述のキットと共に提供される製品ハンドブックにおいて見出される。
【0156】
組換え手段によってHisタグを有するタンパク質の産生は周知であり、このようなタンパク質を産生するためのキットは市販されている。そのようなキットおよびその使用は、Joanne CroweらによってQiagenのQIAexpressハンドブック(本明細書中に参考として明確に援用される)に記載される。
【0157】
「蛍光標識」とは、その固有の蛍光特性によって検出され得る任意の分子を意味し、この分子には、励起の際の検出可能な蛍光が含まれる。適切な蛍光標識としては、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリトロシン、クマリン、メチルクマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー、カスケードブルー(登録商標)、テキサスレッド、IAEDANS、EDANS、BODIPY FL、LC Red640、Cy5、Cy5.5、LC Red705およびオレゴングリーンが挙げられるが、これらに限定されない。適切な光学色素は、2002年のMolecular Probes Handbook,第9版,Richard P.Haugland著(本明細書中に参考として明確に援用される)に記載される。
【0158】
適切な蛍光標識としては、緑色蛍光タンパク質(GFP;Chalfieら、Science 263(5148):802〜805(1994年2月11日);およびEGFP;Clontech−Genbank登録番号U55762)、青色蛍光タンパク質(BFP;1.Quantum Biotechnologies,Inc.1801 de Maisonneuve Blvd.West,8階,Montreal(Quebec)Canada H3H 1J9;2.Stauber,R.H.Biotechniques 24(3):462−471(1998);3.Heim,R.およびTsien,R.Y.Curr.Biol.6:178〜182(1996))、増強黄色蛍光タンパク質(EYFP;1.Clontech Laboratories,Inc.,1020 East Meadow Circle,Palo Alto,CA 94303)、ルシフェラーゼ(Ichikiら、J.Immunol.150(12):5408〜5417(1993))、−ガラクトシダーゼ(Nolanら、Proc Natl Acad Sci USA85(8):2603〜2607(1988年4月))およびRenilla(WO92/15673;WO95/07463;WO98/14605;WO98/26277;WO99/49019;米国特許第5,292,658号;米国特許第5,418,155号;米国特許第5,683,888号;米国特許第5,741,668号;米国特許第5,777,079号;米国特許第5,804,387号;米国特許第5,874,304号;米国特許第5,876,995号;および米国特許第5,925,558号))、ならびにPtilosarcus緑色蛍光タンパク質(pGFP)(WO99/49019を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。上記参考は全て、本明細書中に参考として明確に援用される。
【0159】
いくつかの場合において、複数の蛍光標識が使用される。1つの実施形態において、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)対のメンバーである少なくとも2つの蛍光標識が使用される。FRETは、例えば、ユビキチン連結因子(例えば、E3)および標的基質タンパク質;ユビキチン結合体化因子(例えば、E2)および標的基質タンパク質;ユビキチン連結因子(例えば、E3)およびユビキチン結合体化因子(例えば、E2);などの会合/解離を検出するために使用され得る。
【0160】
FRETは、1つの蛍光色素の励起が光子を放出することなく別の蛍光色素に転移される、当該分野において公知の現象である。FRET対は、ドナーフルオロフォアおよびアクセプターフルオロフォアからなる。ドナーの蛍光発光スペクトルおよびアクセプターの蛍光吸収スペクトルは、重複していなければならず、かつこれらの2つの分子は近接していなければならない。50%のドナーが非活性化される(エネルギーがアクセプターに転移する)ドナーとアクセプターとの間の距離は、Forster半径によって規定され、その距離は、代表的には10〜100オングストロームである。FRET対を含む蛍光発光スペクトルの変化が検出され得、近接している(すなわち、互いに100オングストローム以内にある)対の数の変化を示している。これは、代表的には、2つの分子の結合または解離によって生じ、これらの2つの分子のうちの1つはFRETドナーで標識され、他方はFRETアクセプターで標識され、このような結合によって、近接したFRET対が得られる。
【0161】
このような分子の結合は、アクセプターの蛍光放出の増加および/またはドナーの蛍光15放出の消光を生じる。本発明に有用なFRET対(ドナー/アクセプター)としては、EDANS/フルオレセイン、IAEDANS/フルオレセイン、フルオレセイン/テトラメチルローダミン、フルオレセイン/LC Red640、フルオレセイン/cy5、フルオレセイン/Cy5.5およびフルオレセイン/LC Redが挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
FRETの別の態様において、蛍光ドナー分子および非蛍光アクセプター分子(「クエンチャー」)が使用され得る。本願では、クエンチャーがドナーの近位から移動される場合、ドナーの蛍光発光は増加し、そしてクエンチャーがドナーの近位に移動される場合、蛍光発光は減少する。有用なクエンチャーとしては、DABCYL、QSY7およびQSY33が挙げられるが、これらに限定されない。有用な蛍光ドナー/クエンチャーの対としては、EDANS/DABCYL、テキサスレッドLDABCYL、BODIPYDABCYL、ルシファーイエローDABCYL、クマリン/DABCYLおよびフルオレセイン/QSY7色素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0163】
FRETおよび蛍光消光は、結合反応の時間経過に関する連続的な情報を提供することにより、経時的な標識分子の結合のモニタリングを可能にすることが、当業者に理解される。ユビキチンは、その末端カルボキシル基がリジン残基(他のユビキチン上のリジン残基を含む)に連結されることによって、基質タンパク質に連結されることを想起することが重要である。従って、標識または他のタグの付着は、ユビキチン上のこれらの活性基のいずれかに干渉するべきでない。アミノ酸は、当該分野で周知でありかつ本明細書中に記載される手段によって、標識に付着点を提供するという明白な目的で、タンパク質の配列に付加され得る。1つの実施形態において、1つ以上のアミノ酸が、特に興味深い蛍光標識と共に、タグを付着するための成分の配列に付加される。1つの実施形態において、蛍光標識が付着されるアミノ酸は、システインである。
【0164】
「標識酵素」とは、検出可能な産物を産生する標識酵素基質の存在下で反応させ得る酵素を意味する。本発明における使用に適した標識酵素としては、ホースラディシュペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼおよびグルコースオキシダーゼが挙げられるが、これらに限定されない。このような基質の使用のための方法は、当該分野において周知である。標識酵素の存在は、同定可能な産物を産生する、標識酵素基質との酵素の反応の触媒作用によって一般に明らかにされる。このような産物は、テトラメチルベンジジンとホースラディシュペルオキシダーゼの反応のように不透明であってもよく、種々の色を有してもよい。蛍光反応産物を生成する他の標識酵素基質(例えば、ルミノール(Pierce Chemical Co.から入手可能))が開発されている。標識酵素基質を用いて標識酵素を同定する方法は、当該分野において周知であり、多くの市販のキットが入手可能である。種々の標識酵素の例および使用方法は、Savageら、Previews 247:6〜9(1998)、Young、J.Virol.Methods 24:227〜236(1989)(各々は、その全体が参考として本明細書中に援用される)に記載される。
【0165】
「放射性同位元素」とは、任意の放射性分子を意味する。本発明における使用に適した放射性同位元素としては、14C、3H、32P、33P、35S、125Iおよび131Iが挙げられるが、これらに限定されない。標識としての放射性同位元素の使用は、当該分野において周知である。
【0166】
さらに、標識は間接的に検出され得る。すなわち、タグは結合対のパートナーである。「結合対のパートナー」とは、第1および第2の部分の1つを意味し、この第1および第2の部分は、互いに特異的結合親和性を有する。本発明における使用に適した結合対としては、抗原/抗体(antigendantibodies)(例えば、ジゴキシゲニン/抗ジゴキシゲニン、ジニトロフェニル(DNP)/抗DNP、ダンシル−X−抗ダンシル、フルオレセイン/抗フルオレセイン、ルシファーイエロー/抗ルシファーイエロー、およびローダミン抗ローダミン)、ビオチン/アビジン(biotirdavid)(またはビオチン/ストレプトアビジン(biotirdstreptavidin))ならびにカルモジュリン結合タンパク質(CBP)/カルモジュリン)が挙げられるが、これらに限定されない。他の適切な結合対としては、FLAGペプチド(Hoppら、BioTechnol,6:1204〜1210(1988));KT3エピトープペプチド(Martinら、Science,255:192〜194(1992));チューブリンエピトープペプチド(Skinnerら、J.Biol.Chem.,266:15 163〜15 166(1991));およびT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ(Lutz−Freyemuthら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,a:6393〜6397(1990))のようなポリペプチドならびにこれらの各々に対する抗体が挙げられる。一般に、1つの実施形態において、ユビキチン連結における立体的考察が重要であり得るので、結合対パートナーのうちより小さなものが、タグとして役立つ。当業者に理解されるように、結合対パートナーは、標識以外の用途(例えば、基質上のタンパク質の固定化および以下に記載されるような他の用途)に使用され得る。
【0167】
当業者に理解されるように、1つの結合対のパートナーは、別の結合対のパートナーであってもよい。例えば、抗原(第1の部分)は、1次抗体(第2の部分)に結合し得、これは次いで、2次抗体(第3の部分)のための抗原であり得る。このような状況により、第1の部分と第3の部分の各々に対する結合対パートナーである中間の第2の部分を介して、第1の部分と第3の部分の間接結合が可能になることが、さらに理解される。当業者に理解されるように、結合対のパートナーは、上記のように標識を含み得る。これにより、標識を含む結合パートナーの結合の際に、タグが間接的に標識されることが可能になることがさらに理解される。このように、結合対のパートナーであるタグに標識を付けることは、本明細書において「間接標識」という。
【0168】
1つの実施形態において、タグは、表面基質結合分子である。「表面基質結合分子」およびその文法的等価物は、特定の表面基質に結合親和性を有する分子を意味し、この基質は一般に、表面に適用されるか、組み込まれるか、あるいは付着される結合対のメンバーである。適切な表面基質結合分子およびそれらの表面基質としては、ポリヒスチジン(ポリ−his)またはポリ−ヒスチジン−グリシン(ポリ−his−gly)タグおよびニッケル基質;グルタチオン−Sトランスフェラーゼタグおよびその抗体基質(Pierce Chemicalから入手可能);flu HAタグポリペプチドおよびその抗体12CA5基質(Fieldら、Mol.Cell.Biol.,8:2159〜2165(1988));c−mycタグおよびこのc−mycタグに対する8F9、3C7、6E107 G4、B7および9E10抗体基質(Evanら、Molecular and Cellular Biol,5:3610〜3616(1985)];ならびに単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体基質(Paborskyら、Protein Engineering,3(6):547〜553(1990))が挙げられるが、これらに限定されない。一般に、本発明において有用な表面結合基質分子としては、ニッケル基質に結合するポリヒスチジン構造(His−タグ)、抗体を含む表面基質に結合する抗原、アビジン基質に結合するハプテン(例えば、ビオチン)およびカルモジュリンを含む表面基質に結合するCBPが挙げられるが、これらに限定されない。
【0169】
抗体を組み込んだ基質の産生は周知である;Slinkinら、Bioconj,Chem.2:342〜348(1991);Torchilinら、前出;Trubetskoyら、Bioconi.Chem.33323〜327(1992);Kingら、Cancer Res.54:6176〜6185(1994);およびWilburら、Bioconjugate Chem.5:220〜235(1994)(これらは全て、本明細書中に参考として明確に援用される)を参照のこと、そして抗原とタンパク質の付着または抗原を含むタンパク質の産生は、上に記載される。カルモジュリンを組み込んだ基質は市販されており、そしてCBPを含むタンパク質の産生は、Simcoxら、Strategies 8:40〜43(1995)(その全体が参考として本明細書中に援用される)に記載される。
【0170】
適切な場合には、チオール、アミン、カルボキシルなどのような化学的に反応性の基を用いた標識の官能化は、一般に当該分野において公知である。1つの実施形態において、タグは共有結合を促進するために官能化される。
【0171】
標的分子および基質のビオチン化が周知であり、例えば、タンパク質、核酸、炭水化物、カルボン酸のビオチン化について、アミン反応性因子およびチオール反応性因子を含めた多数のビオチン化因子が公知である;例えば、Molecular Probes Catalog,Haugland,第6版,1996,第4章(参考として本明細書中に援用される)を参照のこと。ビオチン化される基質は、アビジンまたはストレプトアビジンによってビオチン化された成分に付着され得る。同様に、多数のハプテン化(haptenylation)試薬も公知である。放射性同位元素でタンパク質を標識する方法は、当該分野において公知である。例えば、このような方法は、Ohtaら、Molec.Cell 3:535〜541(1999)(その全体が参考として本明細書中に援用される)において見出される。
【0172】
タグの共有結合は、直接的にかまたはリンカーを介してのいずれかであり得る。1つの実施形態において、リンカーは、分子を付着するために使用される、比較的短いカップリング部分である。カップリング部分は、本発明の成分(例えば、ユビキチン)上に直接合成され得、そしてタグの付着を促進するために少なくとも1つの官能基を含む。あるいは、カップリング部分は、少なくとも2つの官能基(これらは、例えば、官能化タグに官能化成分を付着するために使用される)を有し得る。さらなる実施形態において、リンカーはポリマーである。この実施形態において、共有結合は、直接的に、あるいは成分またはタグ由来の部分のポリマーへのカップリングの使用を介してのいずれかで達成される。
【0173】
1つの実施形態において、共有結合は直接的である(すなわち、リンカーは使用されない)。この実施形態において、成分は、官能化タグへの直接付着に使用されるカルボン酸のような官能基を含み得る。成分およびタグは、上に列挙された方法を含む種々の方法で付着し得ることが理解されるべきである。重要なことは、付着の様式が成分の機能性を有意には変更しないということである。例えば、タグ−ユビキチンにおいて、タグは、ユビキチンがポリユビキチン鎖を形成するために他のユビキチンに共有結合的に結合されることを可能にするような様式で付着されるべきである。
【0174】
当業者によって理解されるように、上記の標識およびユビキチンの共有結合は、実質的に任意の2つの本開示の分子の付着に等しく当てはまる。1つの実施形態において、一般に上記に概説したように、タグは共有結合を促進するために官能化される。従って、多種多様なタグが市販されており、これらのタグは、イソチオシアネート基、アミノ基、ハロアセチル基、マレイミド、スクシンイミジルエステル、およびハロゲン化スルホニル(これらの全ては、本明細書中に記載されるように、タグを第2の分子に共有結合的に付着するために使用され得る)が挙げられるがこれらに限定されない官能基を含む。タグの官能基の選択は、上記に概説したかまたは本発明の成分のような、いずれかのリンカーへの付着部位に依存する。従って、例えばユビキチンのカルボン酸基への直接連結について、アミノ改変されたタグまたはヒドラジン改変されたタグは、カルボジイミドの化学的性質によって(例えば、当該分野で公知のように1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDAC)を使用して)カップリングに使用される(Molecular Probesカタログ(前出)の第9セットおよび第11セットを参照のこと;Pierceの1994年カタログおよびハンドブック,T−155〜T−200頁もまた参照のこと。これらの両方は、本明細書中に参考として援用される)。1つの実施形態において、カルボジイミドは、タグ(例えば、本明細書中に記載される多くのタグについて市販されるタグ)に最初に付着される。
【0175】
1つの実施形態において、ユビキチン部分は、タグ−ユビキチン部分の形態であり、このタグは結合対のパートナーである。一つの例において、タグはFLAGであり、そして結合パートナーは抗FLAGである。この実施形態において、標識は、間接標識によってFLAGに付着される。別の実施形態において、標識は標識酵素であり、これは、例えばホースラディシュペルオキシダーゼ(これは、蛍光標識酵素基質と反応する)であり得る。1つの実施形態において、標識酵素基質はルミノールである。あるいは、標識は蛍光標識である。
【0176】
別の実施形態において、ユビキチン部分は、タグ−ユビキチン部分の形態であり、このタグは蛍光標識である。1つの目的の実施形態において、ユビキチン部分はタグ1−ユビキチンおよびタグ2−ユビキチンの形態であり、このタグ1およびタグ2はFRET対のメンバーである。代替の実施形態において、ユビキチン部分はタグ1−ユビキチンおよびタグ2−ユビキチンの形態であり、このタグ1は蛍光標識であり、かつタグ2はこの蛍光標識のクエンチャーである。関連する実施形態において、タグ1−ユビキチンおよびタグ2−ユビキチン部分がユビキチンリガーゼの活性によって結合される場合、このタグ1およびタグ2は、互いに約100オングストローム、70オングストローム、50オングストローム、40オングストローム、または30オングストローム以下の範囲内にある。
【0177】
別の実施形態において、ユビキチンは、タグ1,2−ユビキチンおよびタグ1,3−ユビキチンの形態であり、ここで、タグ1は結合対(例えば、FLAG)のメンバーであり、タグ2は蛍光標識であり、そしてタグ3は、タグ2およびタグ3がFRET対のメンバーであるか、またはタグ3がタグ2のクエンチャーであるようないずれかの蛍光標識である。1つの実施形態において、タグ(例えば、蛍光標識またはクエンチャー)に付着点を提供するために、本明細書中に記載されるような組換え技術を使用して、1つ以上のアミノ酸がユビキチン配列に付加される。1つの実施形態において、この1つ以上のアミノ酸は、CysまたはAla−Cysである。好ましくは、この1つ以上のアミノ酸は、ユビキチンのN末端に付着される。1つの例示的な実施形態において、この1つ以上のアミノ酸は、FLAGタグおよびユビキチンの配列に介在する。例示的な実施形態において、タグ(例えば、蛍光標識またはクエンチャー)は、付加されたシステインに付着される。
【0178】
(グリコシル化改変体および他の改変体)
本発明の範囲内に含まれるポリペプチドの別の型の共有結合修飾は、ポリペプチドのネイティブなグリコシル化パターンを変更する工程を含む。「ネイティブなグリコシル化パターンを変更する工程」は、本明細書における目的のために、ネイティブ配列のポリペプチド中に見出される1つ以上の炭水化物部分を除去する工程、および/またはネイティブ配列のポリペプチド中に存在しない1つ以上のグリコシル化部位を付加する工程を意味することを意図する。
【0179】
ポリペプチドへのグリコシル化部位の付加は、そのアミノ酸配列を変更することによって達成され得る。変更は、例えば、(O連結グリコシル化部位のための)ネイティブな配列のポリペプチドに対する1つ以上のセリンまたはトレオニン残基の付加によって、あるいは1つ以上のセリンまたはトレオニン残基での置換によって行われ得る。アミノ酸配列は、特に、所望のアミノ酸に翻訳するコドンが生成されるように予め選択された塩基の位置でポリペプチドをコードするDNAを変異させることにより、DNAレベルでの変化によって必要に応じて変更され得る。
【0180】
あるいは、改変体は、タンパク質の生物活性が変更されるように設計され得る。例えば、グリコシル化部位は、変更されても除去されてもよい。ポリペプチドの共有結合修飾は、本発明の範囲内に含まれる。1つの型の共有結合修飾は、ポリペプチドの標的化されたアミノ酸残基を、ポリペプチドの選択された側鎖またはN−末端残基もしくはC−末端残基と反応し得る有機誘導体化試薬と反応させる工程を包含する。二官能性因子を用いた誘導体化は、例えば、以下により完全に記載されるように、水に不溶性の支持体マトリックスまたは表面(スクリーニングアッセイの方法で使用する)にタンパク質を架橋するために有用である。通常使用される架橋剤としては、例えば、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、−ヒドロキシスクシンイミドエステル(例えば、4−アジドサリチル酸とのエステル)、ホモ二官能性イミドエステル(3,3’−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)のようなジスクシンイミジルエステルを含む)、二官能性マレイミド(例えば、ビス−N−マレイミド−1,%オクタン)およびメチル−3−[(p−アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミデートのような因子))が挙げられる。他の改変としては、グルタミニル残基およびアスパラギニル残基の、それぞれ対応するグルタミル残基およびアスパルチル残基への脱アミノ化、プロリンおよびリジンの水酸化、セリル残基またはスレオニル残基の水酸基のリン酸化、リジン側鎖、アルギニン側鎖、およびヒスチジン側鎖の’’−アミノ基のメチル化(Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman & Co.,San Francisco,79〜86頁(1983))、N末端アミンのアセチル化、ならびに任意のC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
【0181】
ポリペプチド上の炭水化物部分の数を増加させるさらなる手段は、ポリペプチドへのグリコシドの化学的カップリングまたは酵素的カップリングによる。このような方法は、当該分野において、例えば、WO87/05330ならびにAplinおよびWriston,CRC Crit.Rev.Biochem.,259〜306頁(1981).25に記載される。ポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的にもしくは酵素的に、またはグリコシル化のための標的を提供するアミノ酸残基をコードするコドンの変異導入置換によって、達成され得る。化学的な脱グリコシル化技術は、当該分野において公知であり、例えば、Hakimuddinら、Arch.Biochem.Biophys.,25952(1987)およびEdgeら、Anal.Biochem.,118:131(1981)によって記載される。ポリペプチド上の炭化水素部分の酵素的切断は、Thotakuraら、Meth.Enzynol.,138:350(1987)によって記載されるように、種々のエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼの使用によって達成され得る。別の型のタンパク質の共有結合修飾は、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号または同第4,179,337号に示される方法において、種々の非タンパク質性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレン)の1つへとポリペプチドを連結する工程を含む。
【0182】
(候補因子)
本発明のアッセイは、ウイルスのユビキチン化モジュレータータンパク質の存在下で宿主細胞基質タンパク質のユビキチン化のモジュレーターとして作用する候補因子を同定するために設計される。「モジュレーター」とは、特に興味深いユビキチン化された宿主細胞抗ウイルスタンパク質の増加を促進するウイルスタンパク質を用いて、ユビキチン化の増加または減少を促進し得る化合物を意味する。ユビキチン化のモジュレーターが、ユビキチン部分の転移または除去における活性、ユビキチンと基質との間の相互作用、あるいはユビキチン化に関連するこれらの生物活性および/または他の生物活性の組合せを含む、ユビキチン化因子の活性に影響し得ることを、当業者は理解する。
【0183】
「候補」、「候補因子」、「候補モジュレーター」、「候補ユビキチン化モジュレーター」または本明細書中の文法的等価物(これらの用語は、本明細書中で交換可能に使用される)は、ユビキチン化モジュレーター活性について試験されるべき任意の分子(例えば、タンパク質(これは、本明細書において、タンパク質、ポリペプチド、およびペプチドを含む)、有機小分子または無機小分子、多糖類、ポリヌクレオチドなど)を意味する。候補因子は、多くの化学物質のクラスを包含する。1つの実施形態において、候補因子は、タンパク質との構造的相互作用(特に、水素結合)に必要な官能基を含む有機分子(特に、有機小分子)であり、代表的には少なくとも1つのアミン基、カルボニル基、水酸基またはカルボキシル基を含み、通常は少なくとも2つの官能性化学基を含む。候補因子は、しばしば、環式炭素もしくはヘテロ環式構造、および/または1つ以上の化学官能基に置換される芳香族またはポリ芳香族構造を含む。
【0184】
候補モジュレーターは、当業者によって理解されるように、合成または天然の化合物のライブラリーを含む多種多様な供給源から得られる。当業者によって理解されるように、本発明は、多種多様な公知のコンビナトリアルケミストリー型ライブラリーを含む、候補モジュレーターの任意のライブラリーをスクリーニングする迅速かつ容易な方法を提供する。
【0185】
1つの実施形態において、候補モジュレーターは合成物である。任意の多数の技術が、ランダム化されたオリゴヌクレオチドの発現を含む、多種多様な有機化合物および生体分子のランダム合成および指定合成(directed synthesis)に利用可能である。例えば、ランダムな化学的方法および酵素的方法を含む、新規化合物を生成する方法について議論する、WO94/24314(本明細書中に参考として明確に援用される)を参照のこと。WO94/24314に記載されるように、本方法の利点の1つは、アッセイの前に候補モジュレーターを特徴付ける必要がないということである;すなわち、目的の標的基質タンパク質のユビキチン化に影響する候補モジュレーターのみが、同定される必要がある。
【0186】
別の実施形態において、候補モジュレーターは、入手可能であるか容易に生成される細菌、真菌、植物および動物抽出物の形態で、天然化合物のライブラリーとして提供される。さらに、天然のライブラリーおよび化合物または合成的に生成されたライブラリーおよび化合物は、従来の化学的、物理学的および生化学的手段によって容易に改変される。公知の薬物は、構造アナログを生成するために、酵素的改変を含む指定の化学的改変またはランダムな化学的改変に供し得る。
【0187】
1つの実施形態において、候補モジュレーターは、タンパク質、核酸、および化学的部分を含む。1つの実施形態において、候補モジュレーターは、天然に存在するタンパク質または天然に存在するタンパク質のフラグメントである。従って、例えば、タンパク質を含む細胞抽出物、あるいはタンパク質性の細胞抽出物のランダムな消化物または指定の消化物は、以下により完全に記載されるように試験され得る。このように、原核生物および真核生物のタンパク質のライブラリーは、多数のユビキチンリガーゼ組成物に対してスクリーニングするために作製され得る。他の実施形態は、細菌、真菌、ウイルス、および哺乳動物のタンパク質(後者の哺乳動物のタンパク質が好ましく、そしてヒトタンパク質が特に好ましい)のライブラリーを含む。
【0188】
1つの実施形態において、候補モジュレーターは、約2〜約50アミノ酸のペプチド、通常は約5〜約30アミノ酸のペプチド、そして特に興味深いのは約8〜約20アミノ酸のペプチドである。ペプチドは、上記に概説したような天然に存在するタンパク質の消化物であるか、ランダムペプチドであるか、または「バイアスをかけた」ランダムペプチドであり得る。本明細書において「ランダム化された」またはその文法的等価物は、各核酸およびペプチドが、それぞれ、ランダムなヌクレオチドおよびアミノ酸から本質的になることを意味する。一般に、これらのランダムペプチド(または以下で議論される核酸)は、化学的に合成されるので、これらは任意の位置で任意のヌクレオチドまたはアミノ酸を組み込み得る。
【0189】
合成プロセスは、ランダム化タンパク質または核酸を生成するために設計され得、この配列の全長にわたる全てまたはほとんどの可能な組合せの形成を可能にし、このようにして、ランダム化された候補の生物活性タンパク質性因子のライブラリーを形成する。本明細書中で一般に提案されるような、7〜20アミノ酸長のペプチドの全ての組合せのライブラリーは、20〜2020個の異なるペプチドをコードする可能性を有する。従って、本方法は、10〜10個の異なる分子のライブラリーを用いて、7アミノ酸の理論上完全な相互作用ライブラリーの「作業」サブセット、および2020個のペプチドライブラリーの形状のサブセットを可能にする。従って、1つの実施形態において、少なくとも10、10または10個である。ライブラリーのサイズおよび多様性を最大限にすることは興味深い。
【0190】
1つの実施形態において、ライブラリーは、任意の位置での配列優先性または定常性なしで、完全にランダム化される。1つの実施形態において、ライブラリーはバイアスをかけられる。すなわち、配列内のいくつかの位置は、定常性が保持されているか、または限定された数の可能性から選択されるかのいずれかである。例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基は、例えば、架橋用の(システインの作製のための)疎水性アミノ酸、親水性の残基、立体的にバイアスをかけた(より小さいかまたはより大きいかのいずれかの)残基、SH−3ドメイン用のプロリン、リン酸化部位用のセリン、トレオニン、チロシンまたはヒスチジンなど、あるいはプリンなどの規定されたクラス内でランダム化される。
【0191】
多数の分子またはタンパク質ドメインが、バイアスをかけてランダム化された候補モジュレーターの生成のための起始点として適切である。共通の機能、構造または親和性を付与する、多数の小分子ドメインが公知である。さらに、当該分野において理解されるように、弱いアミノ酸相同性の領域は、高い構造相同性を有し得る。多数のこれらの分子、ドメイン、および/または対応するコンセンサス配列が公知であり、SH−2ドメイン、SH−3ドメイン、プレクストリン、デスドメイン、プロテアーゼ切断/認識部位、酵素阻害剤、酵素基質、Trafなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0192】
タンパク質について一般に上に記載されるように、核酸候補モジュレーターは、天然に存在する核酸、ランダムな核酸、または「バイアスをかけた」ランダムな核酸であり得る。例えば、タンパク質について上に概説されるように、原核生物ゲノムまたは真核生物ゲノムの消化物が使用され得る。最終発現産物が核酸である場合、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも12ヌクレオチド、より通常少なくとも15ヌクレオチド、標準的に少なくとも21ヌクレオチドの位置がランダム化される必要があり、ランダム化が完全でなければより好ましい。同様に、少なくとも5アミノ酸、少なくとも6アミノ酸、より通常少なくとも7アミノ酸の位置がランダム化される必要がある;再び、ランダム化が完全でなければ多いほど好ましい。環状ポリペプチド(例えば、Kinsellaら、Biol.Chem.2002年、277:37512〜8を参照のこと)は、候補因子として特に興味深い(本明細書中に参考として援用される、米国出願第09/800,770号もまた参照のこと)。
【0193】
1つの実施形態において、候補モジュレーターは有機部分である。この実施形態において、一般にWO94/24314に記載されるように、候補因子は化学的に修飾され得る一連の基質から合成される。本明細書中において「化学的に修飾される」は、従来の化学反応ならびに酵素反応を含む。これらの基質としては、一般に、アルキル基(アルカン、アルケン、アルキンおよびヘテロアルキルを含む)、アリール基(アレーンおよびヘテロアリールを含む)、アルコール、エーテル、アミン、アルデヒド、ケトン、酸、エステル、アミド、環式化合物、複素環式化合物(プリン、ピリミジン、ベンゾジアゼピン、βラクタム、テトラサイクリン、セファロスポリン、および炭水化物を含む)、ステロイド(エストロゲン、アンドロゲン、コルチゾン、エコダイソン(ecodysone)などを含む)、アルカロイド(麦角、ビンカ、クラーレ、ピロリジジン、およびマイトマイシンを含む)、有機金属化合物、ヘテロ原子含有化合物、アミノ酸、ならびにヌクレオシドが挙げられるが、これらに限定されない。化学反応(酵素反応を含む)がこの有機部分で行われて、次いで本発明を使用して試験し得る新しい基質または候補因子を形成し得る。
【0194】
(アッセイ型式)
本発明は、レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質の存在下で基質タンパク質のユビキチン化を評価するための方法、およびレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質の存在下で基質タンパク質ユビキチン化に対する候補因子の影響をさらに評価するための方法を提供する。これらのアッセイにおいて、候補因子の影響、種々の標的基質タンパク質ユビキチン化酵素に対する種々のレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質の影響、および/または種々のレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質の存在下でのユビキチン化調節に対する種々の宿主細胞候補基質タンパク質の感受性が、観察および評価され得る。
【0195】
一般に、本発明のアッセイは、ユビキチン化カスケードの種々の成分を(例えば、細胞内または適切な無細胞環境下で)接触させることによって行われ、その結果、基質タンパク質(例えば、CEM15、CD4)のユビキチン化、およびレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質(例えば、Vif、Vpu)の存在下での基質タンパク質のユビキチン化に対する候補因子の影響が評価され得る。
【0196】
(ユビキチン化を減少させる因子の同定)
1つの実施形態において、この方法は、候補因子、基質タンパク質(例えば、CEM15ポリペプチド、CD4ポリペプチド)、ユビキチン活性化因子、ユビキチン結合体化因子、ユビキチン連結因子、ユビキチン部分、およびレトロウイルスのユビキチン化を調節するタンパク質(例えば、Vif、Vpu)を、基質タンパク質のユビキチン化に適した条件下で混合する工程(例えば、試験サンプル中で)を包含する。関連する実施形態において、脱ユビキチン化因子もこのアッセイに含まれる。ユビキチン化された基質ポリペプチドのレベルは、定性的または定量的のいずれかで評価される。候補因子の非存在下におけるレベルと比較して、候補因子の存在下におけるユビキチン化された基質ポリペプチドの減少は、この候補因子が基質タンパク質のユビキチン化の減少に影響を及ぼすことを示している。
【0197】
基質タンパク質は、宿主細胞に抗ウイルス活性を付与するものであるように選択されるので、しかもこの基質タンパク質のユビキチン化は、その分解を生じるので(例えば、プロテオソーム媒介性の分解によって)、基質タンパク質のユビキチン化を減少させると、宿主細胞における基質タンパク質の抗ウイルス活性を増強するかまたは維持する効果があり、従って、レトロウイルス複製の支持に対する許容性の低い細胞内環境を作り出す。従って、このような基質タンパク質のユビキチン化の減少を促進する候補因子は、レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質を含むレトロウイルスに対する抗ウイルス因子としての活性を本質的に有する。
【0198】
関連する実施形態において、アッセイは、上記のようにタグ化され得るタグ化ユビキチン部分(タグ−Ub)を使用する。特に興味深い別の実施形態において、基質タンパク質はCEM15またはCD4である。特に興味深いさらなる実施形態において、レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のビリオン感染性因子である。関連する実施形態において、レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質はVifまたはVpuである。レトロウイルスのユビキチンモジュレータータンパク質がVifである場合、細胞基質はCEM15であり;レトロウイルスのユビキチンモジュレータータンパク質がVpuである場合、細胞基質はCD4である。
【0199】
以下に記載されるこの実施形態およびさらなる実施形態において、ユビキチン活性化因子はE1であり;ユビキチン結合体化因子はE2であり;および/または、ユビキチン連結因子はE3である。別の例示的な実施形態において、ユビキチン連結因子はTRAC−1である。別の実施形態において、アッセイが脱ユビキチン化因子を含む場合、この脱ユビキチン化因子はUSP−25である。
【0200】
(脱ユビキチン化を増加させる因子の同定)
別のアッセイ実施形態において、アッセイは、脱ユビキチン化された基質タンパク質のレベルの増強を生じるように、脱ユビキチン化因子の活性を増強する候補因子を同定する工程を包含する。このアッセイ方法は、候補因子、ユビキチン部分に結合体化した目的の基質タンパク質を含むユビキチン化複合体、およびレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質を、混合する工程(例えば、試験サンプル中で)を包含する。次いで、ユビキチン化複合体の脱ユビキチン化が検出される。候補因子の非存在下におけるユビキチン化複合体の脱ユビキチン化と比較して、候補因子の存在下におけるユビキチン化複合体の脱ユビキチン化の増加は、この因子が、レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質を有するレトロウイルスに対する抗ウイルス因子であることを示す。
【0201】
関連する実施形態において、アッセイは、上記のようにタグ化され得るタグ化ユビキチン部分(タグ−Ub)を使用する。脱ユビキチン化の検出は、例えば、放出されたタグ−Ubの検出またはタグ−Ubのタグを含まない基質タンパク質の検出によって達成され得る。特に興味深い別の実施形態において、基質タンパク質はCEM15である。特に興味深いさらなる実施形態において、レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のビリオン感染性因子である。さらなる関連する実施形態において、脱ユビキチン化因子はUSP−25ポリペプチドである。
【0202】
脱ユビキチン化活性、または脱ユビキチン化活性の調節は、本明細書中に記載される方法または当該分野で公知の方法を使用して、検出および測定され得る。脱ユビキチン化活性の検出および測定のためのアッセイの例としては、ポリユビキチンまたはユビキチン化タンパク質またはタンパク質レムナントもしくはフラグメントの量の減少を含む、ユビキチン化ポリペプチド(すなわち、ユビキチン複合体)の消失;脱ユビキチン化活性の中間体および最終生産物の出現(例えば、遊離ユビキチンモノマーまたは放出されたか切断されたユビキチン部分の出現);全体的なまたは特定のタンパク質代謝回転;ユビキチン部分への結合;ユビキチン化ポリペプチド(すなわち、ユビキチン複合体)への結合;ATPまたはトランス作動性調節因子のような細胞成分との相互作用;および特定のタンパク質の安定化が挙げられるが、これらに限定されない。
【0203】
基質タンパク質の脱ユビキチン化を増強する因子を検出するための例示的なアッセイは、米国出願第10/232,759号(2002年8月30日出願)に記載され、その出願全体が参考として本明細書中に援用される。さらなる例示的な方法は、例えば、Sjolanderら(1991)Anal.chem.63:2338〜2345;Szaboら、(1995)Curr.Opin.Struct.Biol.5:699〜705;およびKapeller−Libermannらの米国特許第6,329,171号;Zhuら、(1997)Journal of Biological Chemistry 272:51〜57,Mitchら、(1999)American Journal of Physiology 276:C1132〜C1138;Liuら、(1999)Molecular and Cell Biology 19:3029〜3038;Ciechanoverら、(1994)The FASEB Journal 8:182〜192;Chiechanover(1994)Biol.Chem.Hoppe−Seyler 375:565〜581;Hershkoら、(1998)Annual Review of Biochemistry 67:425〜479;Swartz(1999)Annual Review of Medicine 50:57〜74,Ciechanover(1998)EMBO Journal 17:7151〜7160;ならびにD’Andreaら、(1998)Critical Reviews in Biochemistry;and Molecular Biology 33:337〜352)に記載される。
【0204】
(TRAC−1活性を減少させる因子)
別のアッセイ型式において、アッセイは、TRAC−1媒介性のユビキチン化活性に適した条件下でTRAC−1ポリペプチドおよびレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質を含む哺乳動物細胞と候補を接触させる工程を包含し、そしてTRAC−1のユビキチン化活性に対するこの候補因子の影響が評価される。候補因子の非存在下と比較して、この候補因子の存在下におけるTRAC−1媒介性ユビキチン化の減少は、この候補因子がユビキチン化のレトロウイルス媒介性調節を阻害することを示す。
【0205】
関連する実施形態において、レトロウイルス媒介性のユビキチン化は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ビリオン感染性因子(Vif)によって媒介される。別の関連する実施形態において、レトロウイルス媒介性のユビキチン化は、HIV Vpuによって媒介される。さらなる実施形態において、TRAC−1活性は、例えば、細胞基質タンパク質のユビキチン化を検出することによって(例えば、タグ化ユビキチン部分の組込みを検出することによって)、またはユビキチン化E2(これは、タグ−Ubでユビキチン化され得る)とTRAC−1の会合を検出することによって検出される。さらなる関連する実施形態において、細胞基質タンパク質はCEM15である。別の関連する実施形態において、細胞基質タンパク質はCD4である。
【0206】
(レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質と相互作用するユビキチン化因子の同定)
別の実施形態において、アッセイ方法は、宿主細胞基質タンパク質のユビキチン化におけるレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質の影響を促進または阻害することに関与するユビキチン化カスケード因子を同定する工程を包含する。この実施形態は、レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質を含む複数の細胞を培養する工程を包含し、ここで、この複数の細胞は、複数の異なるユビキチン因子を発現し、このユビキチン因子は、ユビキチン部分、ユビキチン活性化因子、ユビキチン結合体化因子、ユビキチン連結因子または脱ユビキチン化因子である。あるいは、またはさらに、複数の細胞は、異なるレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質を含み得る(例えば、レトロウイルス感染によって、または外因性ポリヌクレオチドの発現によって)。次いで、複数の細胞が、変更された表現型についてスクリーニングされる。
【0207】
本明細書中において「変更された表現型」とは、コントロール細胞(例えば、レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質を発現しないかまたは含まない細胞あるいは関連するユビキチン因子を発現しないかまたは含まない細胞)と比較して、細胞の表現型の検出可能な変化を意味する。異なるユビキチン因子の存在下において変更された表現型を有する細胞の検出は、このユビキチン因子が表現型を調節することを示す。この変更された細胞の表現型は、例えば、レトロウイルス複製に対する細胞の許容性、宿主細胞基質タンパク質のユビキチン化のレベルの変更、特に、細胞に抗ウイルス活性を与える宿主細胞基質タンパク質などであり得る。特に興味深い実施形態において、レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ビリオン感染性因子(Vif)である。
【0208】
関連する実施形態において、レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質が複数の細胞間で異なる場合、変更された表現型の検出は、レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質が宿主細胞基質タンパク質のユビキチン化に影響を及ぼすことを示す。
【0209】
(ハイスループットアッセイ)
1つの実施形態において、複数のアッセイが、ハイスループットスクリーニング系で同時に行なわれる。この実施形態において、複数のアッセイが、96ウェルプレートまたは他のマルチウェルプレートのウェルのような、複数の容器中で行われ得る。当業者に理解されるように、このようなシステムは、複数の候補因子および/またはユビキチン化因子とレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質の複数の組合せのアッセイに適用され得る。
【0210】
1つの実施形態において、本発明をハイスループットスクリーニング系に適合させて、ユビキチン因子(例えば、種々のユビキチン部分、ユビキチン活性化因子、ユビキチン連結因子、ユビキチン結合体化因子、脱ユビキチン化因子)と、種々のレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質または候補レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質との種々の組合せの存在下で、宿主細胞基質タンパク質のユビキチン化(例えば、CEM15のユビキチン化)を検出する。
【0211】
別の実施形態において、本発明は、個々の候補因子の影響を同時に試験するためのハイスループットスクリーニング系に適合される。
【0212】
本明細書中に提供されるアッセイの工程の順序が変更され得ることは、当業者に理解される。しかし、種々の選択肢(化合物、選択される特性または工程の順序の選択肢)が本明細書中に提供されるが、これらの選択肢はまた、それぞれ個々に提供され、かつ本明細書中に提供される他の選択肢からそれぞれが個々に隔離され得ることも理解される。さらに、アッセイの感度を増加させる当該分野において明白かつ公知の工程は、本発明の範囲内であることが意図される。例えば、洗浄工程、ブロッキング工程などがさらに存在し得、本明細書中に提供される例示的な実施形態は、本発明の真の範囲をいかなるようにも限定する働きをせず、むしろ例示の目的で示されることが理解される。本明細書中に引用される全ての参考文献は、その全体が、参考として明確に援用される。
【0213】
(無細胞スクリーニングアッセイ)
一般に、この方法は、少なくとも最低限の数の必須のユビキチン因子、レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質(例えば、Vif)、およびユビキチン化活性のレベルを定性的または定量的のいずれかで評価する基質タンパク質(例えば、CEM15)を混合する工程を包含する。ユビキチン化基質タンパク質は、宿主細胞抗ウイルスタンパク質(好ましくはCEM15)である。ユビキチン化は、モノユビキチン化、ポリユビキチン化またはその両方の検出によって評価され得る。
【0214】
ユビキチン化活性の評価は、種々の方法で達成され得る。一般に、アッセイ方法は、ユビキチン因子およびレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質を、候補因子のような他の成分と混合する工程を包含する。「混合する工程」とは、ユビキチン化(または、脱ユビキチン化活性アッセイの場合には、脱ユビキチン化)が起こり得る条件下で、容器中への種々の成分の添加を意味する。
【0215】
1つの実施形態において、この容器は、96ウェルプレートまたは他の市販のマルチウェルプレートのウェルである。別の実施形態において、この容器は、FACS機器の反応槽である。本発明において有用な他の容器としては、384ウェルプレートおよび1536ウェルプレートが挙げられるが、これらに限定されない。本発明において有用な、なお他の容器は、当業者に明らかである。
【0216】
成分は、ユビキチンリガーゼ活性を受けやすい条件が得られる限り、連続的に添加されても所定の順序もしくは分類で添加されてもよい。このような条件は、当該分野において周知であり、かつ、このような条件の最適化は、当該分野において慣用的である。
【0217】
本組成物の成分は、種々の量で組み合わされ得る。1つの実施形態において、ユビキチンは、100μlの反応溶液当たり200ngまでの最終濃度で、好ましくは100μlの反応溶液当たり約100ngで混合される。例えば、ユビキチン活性化因子(例えば、E1)は、100μlの反応溶液当たり1〜50ngの最終濃度で、より好ましくは100μlの反応溶液当たり1ng〜20ngの最終濃度で、最も好ましくは100μlの反応溶液当たり5ng〜10ngの最終濃度で混合され得る。別の例において、ユビキチン結合体化因子(例えば、E2)は、100μlの反応溶液当たり10〜100ngの最終濃度で、より好ましくは100μlの反応溶液当たり10〜50ngの最終濃度で混合される。別の例において、ユビキチン連結因子(例えば、E3)は、100μlの反応溶液当たり1ng〜500ngの最終濃度で、より好ましくは100μlの反応溶液当たり50〜400ngの最終濃度で、なおより好ましくは100μlの反応溶液当たり100ng〜300ngの最終濃度で、最も好ましくは100μlの反応溶液当たり約100ngの最終濃度で混合される。
【0218】
本発明の成分は、ユビキチン化活性(例えば、ユビキチンリガーゼ活性および/または脱ユビキチン化活性)を支持する反応条件下で混合される。一般に、これは生理学的条件である。インキュベーションは、最適な活性を促進する任意の温度(代表的には4℃と40℃との間)で行なわれ得る。インキュベーション期間は、最適の活性のために選択されるが、迅速なハイスループットスクリーニングを促進するために最適化されてもよい。代表的には、0.5時間と1.5時間との間で十分である。
【0219】
種々の他の試薬が、組成物中に含まれ得る。これらの試薬としては、最適なユビキチン化酵素活性を促進し、および/または非特異的な相互作用またはバックグラウンドの相互作用を減少させるために使用され得る、塩類、溶剤、緩衝液、中性タンパク質(例えば、アルブミン)、界面活性剤などのような試薬が挙げられる。あるいは、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼインヒビター、抗菌剤などのような、アッセイの効率を改善する試薬も使用され得る。これらの組成物はまた、アデノシン三リン酸(ATP)も含み得る。
【0220】
成分の混合は、必要に応じてユビキチン化または脱ユビキチン化を促進するか、あるいは候補モジュレーター作用の同定を最適化する、任意の順序で添加され得る。1つの実施形態において、ユビキチンが反応緩衝液中に提供され、続いてユビキチン化酵素が添加される。代替の実施形態において、ユビキチンが反応緩衝液中に提供され、次いで候補モジュレーターが添加され、続いてユビキチン化酵素が添加される。
【0221】
一つの例において、成分の少なくとも1つは、基質(例えば、ユビキチン連結因子(例えば、E3))上に固定される。アッセイ成分の結合は、直接的または間接的に(例えば、基質に結合される成分への共有結合または非共有結合を介して)行われ得る。成分の結合は、タグ部分(このタグ部分は、検出可能なシグナルを提供しても提供しなくてもよい)を介し得る。例示的な方法において、ユビキチン連結因子(例えば、E3)は、表面基質に結合される。別の実施形態において、ユビキチン結合体化因子(例えば、E2)は、表面基質に結合される。一般に、任意の基質結合分子が使用され得る。
【0222】
当業者に理解されるように、表面基質結合エレメントおよびこのエレメントが結合する基質は、アッセイの設計および所望の特性(例えば、結合ユビキチンと非結合ユビキチンの分離を促進するのに有効な、エレメントと基質の組合せ)によって選択され得る。アッセイ成分の固定化に関する実施形態において使用される基質は、任意の適切な基質(例えば、マルチウェルプレートのウェル、ビーズなど)であり得る。
【0223】
別の実施形態において、ユビキチン因子および他のアッセイ成分は、溶液中において遊離している。この実施形態において、ユビキチン化活性は、ユビキチン化の程度に応じて変化するシグナルを生成するシステム(例えば、以下に詳細に記載される、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)システム)を使用してモニターされ得る。1つの実施形態において、ユビキチンは、以下にさらに記載されるように、直接的または間接的のいずれかで標識され、そして標識の量が測定される。これにより、ハイスループットスクリーニング用途に有用なアッセイを行って、連結されたユビキチンの容易かつ迅速な検出および測定が可能になる。1つの実施形態において、標識のシグナルは、例えば以下に記載されるFRETシステムにおいて、ユビキチン化の程度に応じて変化する。ユビキチン化を調節する因子についてのスクリーニングに対する本発明の適用性を、当業者は認識する。
【0224】
関連する実施形態において、アッセイ組成物は、タグ1−ユビキチン、タグ2−ユビキチン、E1、E2およびE3を含む。1つの実施形態において、タグ1およびタグ2は、標識(好ましくは蛍光標識)であり、最も好ましくはタグ1およびタグ2はFRET対である。この実施形態において、ユビキチン化は、蛍光発光スペクトルを測定することによって測定される。この測定は、連続的であってもよく、成分の混合後に1回以上であってもよい。連結されていないユビキチンと比較して、混合されたものの蛍光発光スペクトルの変化は、ユビキチン化の量を示す。この実施形態において、ポリユビキチンの形成によっておよび/またはタンパク質(好ましくは標的タンパク質)上の近くの位置に結合することによってのいずれかで、ユビキチンが、異なるメンバーのFRET対を近接させて担持することにより、蛍光発光スペクトルの変化が生じることが、当業者に理解される。
【0225】
(ユビキチン化活性の検出)
一旦混合されると、ユビキチン化活性のレベルは、種々の方法で評価され得る。例えば、ユビキチン化された基質タンパク質のレベルおよび/または基質タンパク質のユビキチン化の程度が評価され得る;遊離ユビキチンのレベルが評価され得る;基質タンパク質およびユビキチン結合体化因子の会合;基質タンパク質、ユビキチン結合体化因子、およびユビキチン連結因子の会合;ならびに当業者によって容易に理解される他の変法。
また当業者に明らかであるように、結合されたユビキチン結合の検出は、対応するタンパク質(例えば、ユビキチン活性化因子、ユビキチン結合体化因子、ユビキチン連結因子、および/または基質タンパク質)に直接結合される特定のユビキチンのみならず、ポリユビキチン鎖中に結合されるユビキチンタンパク質をも包含する。1つの実施形態において、アッセイは、PCT公開番号WO01/75145(この出願は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、ユビキチンリガーゼ活性を評価することによって行われる。
【0226】
1つの実施形態において、ユビキチン化が測定され、この測定は、例えば、ユビキチン部分に付着されるタグ(例えば、蛍光標識)の検出によって達成され得る。別の実施形態において、このユビキチン部分に付着されるタグは、酵素標識かまたは酵素標識で間接的に標識される結合対メンバーである。この後者の実施形態において、酵素標識基質は、蛍光反応生成物を生成する。これらの実施形態のいずれかにおいて、結合されたユビキチンの量は、ルミネセンスによって測定される。本明細書中で使用される場合、「ルミネセンス」または「蛍光発光」は、蛍光標識からの光子放出を意味する。FRET対が使用される実施形態において、蛍光測定は、連結反応の間に連続的に行っても複数の時点で行っても良い。このような測定用装置は市販されており、このような測定を行うために当業者によって容易に使用される。
【0227】
結合されたユビキチンを測定する他の方法は、当該分野において周知であり、本明細書中に記載される標識の各々について当業者によって容易に同定される。例えば、放射性同位体標識は、シンチレーション計数によって、または写真乳剤への曝露後のデンシトメトリーによって、またはPhosphorImagerのようなデバイスの使用によって測定され得る。同様に、デンシトメトリーは、酵素標識が使用される場合に、不透明な生成物を生成する酵素標識基質との反応後に、結合されたユビキチンを測定するために使用され得る。
【0228】
1つの実施形態において、アッセイは、ユビキチンリガーゼ活性を検出するために行われる。この実施形態において、アッセイは、PCT公開番号WO01/75145(これは、ユビキチンリガーゼ活性を検出するためのアッセイ(無細胞環境下で行われるこのようなアッセイを含む)を記載する)に記載されるアッセイを適合させることによって行われ得る。
【0229】
(細胞ベースのアッセイ)
1つの実施形態において、アッセイは、細胞中で、好ましくは哺乳動物細胞中で、より好ましくはレトロウイルス感染に感受性でありおよび/またはレトロウイルス複製に許容性である哺乳動物細胞中で行われる。
【0230】
この実施形態において、ユビキチン因子、レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質、および基質タンパク質は、例えば、ポリペプチドをコードする内因性または外因性の核酸の発現によって、あるいは、例えばウイルス送達によるポリペプチドの導入によって、宿主細胞中に供給される。レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質は、細胞に機能的なレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質を導入するように、野生型ウイルスまたは改変ウイルスを用いたウイルス感染によって導入され得る。
【0231】
アッセイ成分の同時発現が所望される場合には、同時発現は、2つ以上のアッセイ成分をコードする核酸を含むベクターを細胞に導入することによって、または別個のベクター(各々、所望のアッセイ成分の単一成分を含む)の導入によって達成され得る。1つの実施形態において、候補因子は、宿主細胞中でも発現され得るペプチド(例えば、ランダム化されたペプチド)である。
【0232】
(細胞ベースのアッセイのための宿主細胞)
一般に、本発明の細胞ベースのアッセイにおいて使用される宿主細胞は、目的の宿主細胞基質(例えば、CEM15)を発現し、かつレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質(例えば、Vif)を含む細胞である。レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質は、レトロウイルス感染の結果として、または例えばレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質をコードする外因性のポリヌクレオチドの導入およびその発現によって、細胞中に存在し得る。
【0233】
目的の宿主細胞基質は、内因性の宿主細胞タンパク質であるか、または例えば目的の基質タンパク質をコードする外因性のポリヌクレオチドの導入およびその発現の結果として細胞中に存在し得るかのいずれかであり得る。
【0234】
哺乳動物細胞(特にヒト細胞)は、特に興味深い。哺乳動物細胞が使用される場合、基本的に任意の哺乳動物細胞が使用され得、マウス、ラット、霊長動物およびヒトの細胞が特に好ましい。
【0235】
従って、適切な細胞型としては、レトロウイルス複製を支持し得、そしていくつかの実施形態においては、関連するレトロウイルスによって感染され得る細胞が挙げられるが、これらに限定されない。基質タンパク質(例えば、CEM15)のユビキチン化(これは、次にウイルス複製に影響を及ぼす)を調節する因子を同定するためにアッセイを設計する場合、細胞は、感染に対して感受性の細胞である必要はなく、単にレトロウイルス複製を支持する細胞である。用いられる細胞が感染に感受性の場合には、この細胞は、ウイルス侵入に必要な必須のレセプターまたは他の細胞表面タンパク質(単数または複数)(例えば、HIVのためのCD4およびCCR5(またはCXCR5))をその細胞表面に発現する細胞である。
【0236】
細胞はまた、目的の基質タンパク質の発現のために選択されるか、あるいは目的の基質タンパク質を発現するために改変される。1つの実施形態において、宿主細胞基質タンパク質はCEM15である。発現されるCEM15が内因性のCEM15である場合、内因性のCEM15を発現する宿主細胞が使用に適しており、T細胞(特に、CD4+T細胞)は特に興味深い。別の実施形態において、基質タンパク質はCD4であり;このCD4は内因的に発現され、この宿主細胞は、初代細胞または細胞株であり得る場合には、例えばT細胞、B細胞、または他の免疫細胞である。あるいは、これらの細胞は、標的タンパク質をコードする核酸(例えば、外因性の核酸(例えば、組換え核酸))をさらに含み得る。
【0237】
宿主細胞として使用される哺乳動物細胞は、目的のレトロウイルスの複製を支持する場合、その許容性によって選択されるべきである。要するに、試験細胞は、許容性を減少させる因子が同定され得るように許容性であるべきである(すなわち、レトロウイルス複製を支持するかまたは可能にする)。非許容性または半許容性の細胞は、必要に応じてコントロールとして使用され得る。
【0238】
例えば、レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質がVifである場合、哺乳類宿主細胞は、免疫不全ウイルス(例えば、HIV)の複製を支持するためにVifが存在することを必要とする細胞である。Vifは、必ずしも全ての細胞におけるHIV−1の複製に必要ではないが、初代Tリンパ球および単球/マクロファージにおけるHIV−1複製に必要である。複製のためのVifの要求性の差異により、初代細胞または細胞株を、Vif欠損ウイルスの複製について非許容性(H9、HYT78、A3.0、初代CD4+T細胞)、半許容性(CEM−ss、単球由来マクロファージ(MDM))または許容性(初代Tリンパ球および単球/マクロファージ、HeLa、293T、Cos−7、SupT1)のいずれかに分類した(例えば、Sovaら、J Viol 67:6322〜6366(1993);Zhangら、J virol 74:8252〜8261(2000)を参照のこと)。
【0239】
(アッセイ設計)
アッセイ成分に関する、および上記のユビキチン化活性の検出方法に関する種々のアッセイ設計は、細胞ベースのアッセイでの実施に容易に適合され得ることが、当業者に理解される。
【0240】
1つの実施形態において、アッセイは、PCT公開番号WO01/75145(この出願は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に記載されるようなユビキチンリガーゼ活性の評価によって実施される。ユビキチン化活性を(例えば、機能的アッセイを使用して)評価するためのさらなる方法は、2002年8月30日出願の米国出願第USSN10/232,951号および2003年8月29日出願のPCT出願第PCT/US03/026843号(これらの出願の各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に記載される。脱ユビキチン化活性を検出する方法は、例えば、2002年8月30日出願の米国出願第10/232,759号に記載され、この出願は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0241】
一般に、細胞ベースのアッセイは、アッセイ成分を含む細胞を候補因子と接触させる工程、ならびにこの細胞を、基質タンパク質に関してユビキチン化/脱ユビキチン化活性を生じさせるのに適切な期間および適切な条件下で培養する工程を包含する。正確な培養方法は、例えば、用いられる宿主細胞によって変化し、即時に最適化を受けやすいことが、当業者に理解される。ユビキチン化活性を検出するための方法および手段は、無細胞アッセイのための上記の方法および手段から適合され得る。
【0242】
例えば、代表的な実施形態において、細胞ベースのスクリーニングは、apobec3G−レポーター融合タンパク質(例えば、apobec3G−ルシフェラーゼまたはGFP融合タンパク質)およびvifが同時発現される哺乳動物細胞を使用する。apobec3G−レポーター融合タンパク質のユビキチン媒介性の分解は、上記のように、候補因子(例えば、環状ペプチド)の存在下または非存在下でレポーターシグナルを評価することによって査定され得る。因子は、このようなアッセイにおいて抗vif活性についてスクリーニングされ得る。
【0243】
1つの実施形態において、アッセイは、ハイスループットアッセイにおける使用に容易に適用可能であるように設計される。好ましくは、この実施形態において、ユビキチン化活性は、例えば、ユビキチン化された基質タンパク質の単離または宿主細胞の溶解を必要とすることなく検出され得る。例えば、FRETの実施形態は、ユビキチン化活性のレベルが、検出可能なシグナル(これは、ユビキチン化活性のレベルに外挿され得る)と容易に関連し得るように使用され得る。例えば、検出可能なシグナルの強度は、細胞におけるユビキチン化活性のレベルと関連し得る。
【0244】
細胞は、任意の適切な容器中で、好ましくはハイスループットアッセイに適用可能な容器(例えば、マルチウェルプレート)中で培養され得る。
【0245】
(組み合わせアッセイ)
特定の実施形態において、アッセイは、種々のユビキチン因子、種々の宿主細胞基質タンパク質、および/または種々のレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質間の組み合わせの関係を検討するために適合される。従って、本発明は、機能的なユビキチン化スクリーニングを含む。これらの方法は、ユビキチン活性化因子、ユビキチン結合体化因子またはユビキチン連結因子のような改変体ユビキチン因子をコードする核酸を含む核酸のライブラリーを含む細胞の細胞培養物を提供する工程を包含する。本発明は、コントロール細胞と比較して変更された表現型について細胞培養物をスクリーニングする工程、変更された表現型を有するものを単離する工程、および変更された表現型を生じる改変体ユビキチン因子(単数または複数)を同定する工程をさらに提供する。
【0246】
1つの実施形態において、本発明は、種々のユビキチン因子を発現する細胞を培養する工程、およびこれらのユビキチン因子の活性について機能的読み出しをアッセイする工程を提供する。機能的アッセイの変調は、その経路へのユビキチン因子の関与を示す。
【0247】
一般に、これらの方法は、細胞系においてユビキチン部分、レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質、および1つ以上のユビキチン因子を発現する工程、ならびに機能的アッセイにおいてユビキチン部分、ユビキチン因子、またはユビキチン部分もしくはユビキチン因子の改変体の影響を決定する工程を包含する。機能的アッセイは、細胞の読み出しを含んでもよく、または標的タンパク質上のユビキチンの量を決定する工程を含んでもよい。すなわち、この方法は、以下の基質分子の少なくとも1つに付着されるユビキチン部分の量を測定する工程を包含する:ユビキチン因子;標的タンパク質;あるいは、好ましくはユビキチン因子または標的タンパク質に付着されるモノ−またはポリユビキチン部分。
【0248】
従って、本発明は、複数の異なるユビキチン部分を有する複数の細胞、複数の異なるユビキチン活性化因子を有する複数の細胞、複数の異なるユビキチン結合体化因子を有する複数の細胞、複数の異なるユビキチン連結因子を有する複数の細胞、複数の異なる標的基質タンパク質を有する複数の細胞、および/または複数の異なるレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質を有する複数の細胞を使用するアッセイを含み得る。多数の細胞のこれらの種々のライブラリーは、例えば、宿主細胞におけるユビキチン化活性に対する異なるユビキチン因子、異なるレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質、および/または異なる候補因子の影響を決定するために、本明細書中に記載されるようなアッセイにおいて使用され得る。
【0249】
(インビボスクリーニング)
本発明のアッセイは、非ヒト動物モデルにおいて実施され得るように適合され得る。さらに、培養細胞ベースのアッセイにおいて所望の活性を有すると認定された因子は、非ヒト動物モデルにおいてさらに試験され得る。レトロウイルス感染のための非ヒト動物モデルは、当該分野において公知である。例えば、サルのサル免疫不全ウイルス感染は、AIDSの病原性、処置、および予防に関する研究のためのモデル系として役立ち得る(例えば、Hirschら、Adv Pharmacol.2000;49:437〜77を参照のこと)。
【0250】
非ヒト動物に移植される中空繊維中のレトロウイルス感染細胞の使用を含む、中空繊維ベースのアッセイは、当該分野で記載される(例えば、Dursanoら「Pharmacodynamics of abacavir in an in vitro hollow−fiber model system」、Antimicrob Agents Chemother.2002年2月;46(2):464〜70;Drusanoら「Hollow−fiber unit evaluation of a new human immunodeficiency virus type 1 protease inhibitor,BMS−232632,for determination of the linked pharmacodynamic variable.」、J Infect Dis.2001年4月1日;183(7):1126〜9、2001年3月1日電子公開;Ranaら「Intracellular phosphorylation of zidovudine in an in vitro hollow fiber model.」Pharmacotherapy.1999年8月;19(8):979〜83;Quenelleら「Evaluation of anti−AIDS drugs in conventional mice implanted with a permeable membrane device containing human T cells infected with HIV.」Antiviral Res.1997年7月;35(2):123〜9;Hollingsheadら「In vivo drug screening applications of HIV−infected cells cultivated within hollow fibers in two physiologic compartments of mice.」Antiviral Res.1995年11月;28(3):265〜79;Bilelloら「Effect of 2’,3’−didehydro−3’−deoxy−thymidine in an in vitro hollow−fiber pharmacodynamic model system correlates with results of dose−ranging clinical studies.」Antimicrob Agents Chemother.1994年6月;38(6):1386〜91を参照のこと)。中空繊維アッセイは、上述のアッセイに基づいてインビボアッセイに使用され得る。例えば、上述の宿主細胞は、中空繊維中に配置されて、非ヒト動物宿主(例えば、ラットまたはマウス)中に移植され、候補因子が投与され、そして中空繊維中の細胞に対する影響および/またはウイルス感染が評価され得る。中空繊維モデルはまた、上述のアッセイにおいて所望の活性を有することによって同定される因子をさらにスクリーニングするために使用され得る。
【0251】
(キット)
上記方法の1つ以上を実行するために、その試薬およびそのキットもまた提供される。本発明の試薬およびそのキットは、大きく異なり得る。代表的には、これらのキットは、最小限のユビキチン因子、ユビキチン化基質タンパク質、およびレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質を少なくとも含み、ここで、これらの成分の少なくとも1つは、ユビキチン化活性の検出を促進するのに適したタグを含む。本発明のキットはまた、1つ以上のさらなる試薬(例えば、タグを検出するのに使用される試薬)を含み得る。
【0252】
上記の成分に加えて、本発明のキットは、本発明の方法を実行するための説明書をさらに含み得る。これらの説明書は、種々の形態で本発明のキット中に存在し得、それらの1つ以上がキット中に存在し得る。これらの説明書が存在し得る1つの形態は、キットのパッケージング中、添付文書中などの適切な媒体または被印刷物(例えば、情報が印刷される1枚以上の紙)上の印刷情報としてである。なお別の手段は、情報が記録されているコンピューター読取り可能なメディア(例えば、ディスケット、CDなど)である。存在し得るなお別の手段は、離れたサイトで情報にアクセスするためにインターネットを経由して使用され得るウェブサイトアドレスである。任意の便利な手段が、キット中に存在し得る。
【0253】
(HIV複製を阻害する方法)
別の態様において、本発明は、ユビキチン化カスケードの特定の選択されたユビキチン因子に影響を与えることによって、細胞中のレトロウイルス複製を阻害する方法を特徴とする。
【0254】
1つの実施形態において、宿主細胞におけるレトロウイルス複製は、レトロウイルスに感染した哺乳動物細胞を、感染細胞におけるE1のユビキチン化活性を阻害する因子と接触させることによって阻害され、この因子は、この細胞におけるレトロウイルスの複製を阻害するのに有効な量で提供される。関連する実施形態において、レトロウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)(例えば、HIV−1)である。関連する実施形態において、レトロウイルスは、宿主細胞中にビリオン感染性因子(Vif)を送達する。
【0255】
本発明の方法に使用可能な例示的なユビキチン化阻害剤としては、以下に記載されるものが挙げられる:PCT/US03/36747、2003年11月13日出願「Rhodanine Derivatives and Pharmaceutical Compositions Containing Them」(代理人整理番号P.0131.03.WO);米国特許第10/858,537号、2004年6月1日出願「Ubiquitin Ligase Inhibitors」(代理人整理番号P.0137.02.US);米国特許出願、表題「BENZOTHIAZOLE COMPOSITIONS AND THEIR USE AS UBIQUITIN LIGATION INHIBITORS」、2004年10月18日出願(代理人整理番号P.0152.02.US);米国特許出願、表題「RHODANINE COMPOSITIONS FOR USE AS ANTIVIRAL AGENTS」、2004年10月28日出願(代理人整理番号P.0154.02.US;および米国特許出願第60/582,261号、2004年6月22日出願「Ubiquitin Ligase TRAF6 Inhibitors」(代理人整理番号P.0163.00.US)。前述の特許出願の各々は、全ての目的のためにその全体が参考として具体的に援用される。
【0256】
本発明はまた、感染した宿主細胞を、感染細胞におけるTRAC−1媒介性のユビキチン化を阻害する因子と接触させることによって、この宿主細胞におけるレトロウイルス複製を阻害する方法を提供し、この因子は、この細胞におけるレトロウイルスの複製を阻害するのに有効な量で提供される。関連する実施形態において、レトロウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)(例えば、HIV−1)である。関連する実施形態において、レトロウイルスは、宿主細胞中にビリオン感染性因子(Vif)を送達する。
【0257】
本発明はまた、感染した宿主細胞を、感染細胞におけるCEM15のUSP−25媒介性の脱ユビキチン化を促進する因子と接触させることによって、この細胞におけるレトロウイルス複製を阻害する方法を提供し、この因子は、USP−25媒介性の脱ユビキチン化を増強し、かつこの細胞におけるレトロウイルス複製を阻害するのに有効な量で提供される。関連する実施形態において、レトロウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)(例えば、HIV−1)である。関連する実施形態において、レトロウイルスは、宿主細胞中にビリオン感染性因子(Vif)を送達する。
【0258】
上記の各々に関連する実施形態において、因子は、この因子によって標的化される実際のユビキチン因子にかかわらず、究極的には、細胞におけるCEM15ポリペプチドのユビキチン化を阻害する因子である。例えば、この因子は、ユビキチン連結因子(例えば、E3)とともに細胞におけるCEM15のユビキチン化を促進する、ユビキチン結合体化因子のE1媒介性の活性化を阻害する。別の例において、E1媒介性のユビキチン化カスケードに関与するユビキチン結合体化因子は、TRAC−1である。なお別の例において、この因子は、CEM15のUSP−25媒介性の脱ユビキチン化を促進するかまたは増強する。
【0259】
一般に、レトロウイルス複製の阻害について上述される方法の各々において、この因子は、レトロウイルスの感染細胞と接触するように投与される。
【0260】
(処置される被験体)
レトロウイルスに感染している任意の被験体は、本発明に従って処置され得る。哺乳動物の被験体(特に、ヒト被験体)は、特に興味深い。本明細書中で交換可能に使用される用語「個体」、「宿主」、「被験体」および「患者」は、哺乳動物(マウス、サル、ヒト、哺乳動物の家畜、哺乳動物の競技用動物、および哺乳動物のペットが挙げられるが、これらに限定されない)をいう。
【0261】
本明細書中で使用される場合、用語「処置」、「処置すること」などは、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることをいう。この効果は、その疾患または症状を完全にまたは部分的に予防することに関して予防的であり得、および/または、疾患および/またはその疾患に起因する悪影響の部分治癒または完全治癒に関して治療的であり得る。「処置」は、本明細書中で使用される場合、哺乳動物(特に、ヒト)における疾患の任意の処置を包含し、そして以下の工程を包含する:(a)疾患に罹患しやすいが、まだその疾患を有していると診断されていない被験体において、疾患の発症を予防する工程;(b)疾患を抑制する工程(すなわち、疾患の進行を妨げる工程);および(c)疾患を軽減する工程(すなわち、疾患の退行を引き起こす工程)。
【0262】
従って、処置される被験体としては、レトロウイルスに感染しているかまたはレトロウイルス感染の危険性がある被験体が挙げられる。被験体は、症候性であっても無症候性であってもよい。レトロウイルス感染に関連する疾患および症状としては、免疫不全、細胞変性応答、白血病誘発、ならびに他の臨床病理学および症状が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法は、所望の臨床エンドポイント(例えば、症状の軽減または改善、ウイルスクリアランス(例えば、ウイルスの力価の低下または検出不可能なウイルスの力価などによって検出されるような))が達成されるまで、継続され得る。
【0263】
(処方物および投与経路)
本明細書中に記載されるようなレトロウイルス複製を阻害する方法において、本発明における使用に適した抗ウイルス因子(便宜上、本明細書において「因子」または「活性因子」と呼ばれる)は、投与に適した種々の方法で処方され得る。一般に、これらの化合物は、薬学的に受容可能な賦形剤(単数または複数)と組み合わせて、同じかまたは別個の処方物中に提供される。多種多様の薬学的に受容可能な賦形剤は、当該分野において公知であり、本明細書中に詳細に論じられる必要はない。薬学的に受容可能な賦形剤は、種々の出版物(例えば、A.Gennaro(2000)「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」、第20版,Lippincott,Williams,& Wilkins;Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(1999)H.C.Anselら編,第7版,Lippincott,Williams,& Wilkins;およびHandbook of Pharmaceutical Excipients(2000)A.H.Kibbeら編,第3版,Amer.Pharmaceutical Assoc.が挙げられる)中に十分に記載されている。
【0264】
薬学的に受容可能な賦形剤(例えば、ビヒクル、アジュバント、キャリアまたは希釈剤)は、一般に容易に入手可能である。さらに、薬学的に受容可能な補助物質(例えば、pH調整剤および緩衝剤、等張化剤、安定剤、湿潤剤など)は、一般に容易に入手可能である。
【0265】
いくつかの実施形態において、これらの因子は、別々にかまたは組み合わせて(例えば、水性または非水性処方物中に)処方され、これはさらに緩衝液を含み得る。適切な水性の緩衝液としては、5mM〜100mMの種々の濃度の酢酸緩衝液、コハク酸緩衝液、クエン酸緩衝液、およびリン酸緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、水性の緩衝液は、等張液をもたらす試薬を含む。このような試薬としては、塩化ナトリウム、および糖(例えば、マンニトール、デキストロース、スクロースなど)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、水性の緩衝液としては、ポリソルベート20または80のような非イオン性界面活性剤がさらに挙げられる。
【0266】
必要に応じて、これらの処方物は、防腐剤をさらに含み得る。適切な防腐剤としては、ベンジルアルコール、フェノール、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。多くの場合において、処方物は、約4℃で保存される。処方物は凍結乾燥されてもよく、この場合、これらの処方物は、一般に、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、マンニトールなどのような凍結保護物質を含む。凍結乾燥された処方物は、周囲温度でも長期間の保存が可能である。
【0267】
本発明の方法において、活性因子は、所望の治療効果を生じ得る任意の便利な手段を用いて、宿主に投与され得る。従って、これらの因子は、治療的投与のための種々の処方物中に組み込まれ得る。より詳細には、本発明の因子は、適切な薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤との組み合わせによって薬学的組成物中に処方され得、そして固体、半固体、液体またはガス状の形態(例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、果粒剤、軟膏剤、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤およびエアゾール剤)の調製物中に処方され得る。
【0268】
薬学的投薬形態において、因子は、薬学的に受容可能な塩の形態で投与され得るか、あるいはこれらの因子はまた、単独で使用されても、または他の薬学的に活性な化合物と適切に会合して使用されても、組み合わせて使用されてもよい。以下の方法および賦形剤は、単なる例示であって、決して限定ではない。
【0269】
これらの因子は、水性溶媒または非水溶媒(例えば、植物性もしくは他の同種の油、合成脂肪族系酸グリセリド、高級脂肪族系酸のエステルまたはプロピレングリコール)中に;そして所望ならば、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤および防腐剤のような従来の添加物とともに、溶解するか、懸濁するか、または乳化することによって、注射用調製物中に処方され得る。
【0270】
経口用調製物について、これらの因子は、単独で使用され得るか、あるいは錠剤、散剤、果粒剤またはカプセル剤を作製するために適切な添加物と組み合わせて、例えば、従来の添加物(例えば、ラクトース、マンニトール、コーンスターチまたはジャガイモデンプン)と組み合わせて;結合剤(例えば、結晶セルロース、セルロース誘導体、アラビアゴム、コーンスターチまたはゼラチン)と組み合わせて;崩壊剤(例えば、コーンスターチ、ジャガイモデンプンまたはカルボキシメチルセルロースナトリウム)と組み合わせて;潤滑剤(例えば、滑石またはステアリン酸マグネシウム)と組み合わせて;そして所望であれば、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、防腐剤および香料と組み合わせて使用され得る。
【0271】
さらに、これらの因子は、乳化性基剤または水溶性基剤のような種々の基剤と混合することによって、坐薬に作製され得る。本発明の化合物は、坐薬によって直腸に投与され得る。坐薬は、カカオバター、カーボワックスおよびポリエチレングリコールのようなビヒクル(これらは、体温で融解するが、室温では凝固される)を含み得る。因子はまた、例えば、経時的にかつ所望量の(例えば、所望の治療効果または有益な効果をもたらすのに有効な量の)因子の放出を提供するために、徐放性処方物または制御放出処方物中に提供され得る。
【0272】
経口投与または直腸投与のための単位投薬形態(例えば、シロップ剤、エリキシル剤、および懸濁液)が提供され得、ここで、各投薬単位(例えば、小さじ1杯、大さじ1杯、錠剤または坐薬)は、1つ以上のインヒビターを含む所定量の組成物を含む。同様に、注射用または静脈内投与用の単位投薬形態は、滅菌水、生理食塩水または別の薬学的に受容可能なキャリア中の溶液として、組成物中にインヒビター(単数または複数)を含み得る。
【0273】
用語「単位投薬形態」は、本明細書中で使用される場合、ヒト被験体および動物被験体のための単位投薬量として適切な、物理的に別個の単位をいい、各単位は、薬学的に受容可能な希釈剤、キャリアまたはビヒクルに関連して所望の効果を生じるのに十分な量に計算された所定量の因子を含む。本発明において使用される単位投薬形態についての仕様は、用いられる特定の化合物および達成されるべき効果、宿主中の各化合物に関連する薬力学などに依存する。
【0274】
特に興味深い投薬形態としては、静脈内投与または経口投与を達成するのに適切な投薬形態、ならびに経鼻または肺経路(例えば、吸入)による送達を提供するための投薬形態(例えば、計量式吸入器などの使用による)が挙げられる。
【0275】
一般に、本発明で使用される因子は、非経口形態または経腸形態のいずれか、通常は経腸処方物、より詳細には経口処方物で処方される。本発明で使用される因子は、例えば、皮下注射、皮内注射、腹腔内注射、静脈内注射、または筋肉注射によって、非経口投与のために処方される。投与はまた、例えば、経腸、経口、バッカル、直腸、経皮、気管内、吸入(例えば、米国特許第5,354,934号を参照のこと)などによっても達成され得る。
【0276】
本発明はまた、本発明による抗ウイルス因子と共にさらなる因子(例えば、同じかまたは異なるメカニズムによって作用する他の抗ウイルス因子)の投与も企図する。
【実施例】
【0277】
以下の実施例は、本発明を行いかつ使用する方法の完全な開示および記載を当業者に提供するために出されるものであって、発明者が発明と見なすものの範囲を限定することを意図するものでも、下記の実験が、実施した全てまたは唯一の実験であることを示すことを意図するものでもない。使用する数(例えば、量、温度など)に関して正確性を確実にするように努力がなされているが、いくらかの実験誤差および偏差は、許容されるべきである。他に示されない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度であり、そして圧力は大気圧または大気圧付近である。
【0278】
(実施例1)
(vif活性を評価するための細胞アッセイ)
ルシフェラーゼ/apobec3G融合タンパク質をコードする構築物を、Phoenix細胞およびHeLa細胞中に導入し、そしてルシフェラーゼ/apobec3G融合タンパク質の一過性発現を、化学発光を検出することによってモニターした。結果は、アッセイした細胞数に対して正規化した。図3Aおよび3Bは、ルシフェラーゼ/apobec3G融合タンパク質(「A3G」で示される)が哺乳動物細胞において容易に発現されることを示す。図3Aおよび3Bの両方の上部に示されるゲルは、抗体を用いた細胞抽出物のウェスタンブロットから得られた結果を示す。抗apobec3G抗体および抗乳酸脱水素酵素抗体を用いて得られた結果を、それぞれ「3G」および「LDH」として示す。
【0279】
ルシフェラーゼ/apobec3Gを含む細胞中へvifをコードする第2の構築物を相対比1:1、2:1、10:1で同時導入することにより、ルシフェラーゼ活性の劇的な減少が生じ、このことは、vifが、ルシフェラーゼ/apobec3G融合タンパク質のユビキチン化および引き続く分解を調節することを実証する。この現象は、MG132(プロテオソーム媒介性タンパク質分解の公知のインヒビター)の添加によって阻害される(ウェスタンブロットの各々の最終レーンにおいて観察されるバンドを参照のこと)。従って、vifおよびルシフェラーゼ/apobec3Gレポーターの両方を含む細胞は、vif抑制活性のための因子を試験するのに用いられ得る。
【0280】
細胞を、10μMもしくは20μMのMG132またはALLN(プロテオソーム媒介性タンパク質分解の公知のインヒビター)の存在下あるいは非存在下で、2:1、25:1、50:1および100:1(ルシフェラーゼ/apobec3G:vif)の相対濃度のルシフェラーゼ/apobec3G構築物およびvif構築物で同時トランスフェクトした。図4に示されるように、ルシフェラーゼ/apobec3G構築物の相対濃度が50:1であった場合、MG132およびALLNは、ルシフェラーゼ活性を最大に増加させた(斜線バーによって示されるデータ)。
【0281】
pCMV、pcDNA6、構成的輸送エレメント(CTE)を含むpcDNA6、pEF6、およびCTEを含むpEF6を含めたいくつかのベクターを試験して、これらのベクターが、細胞中でのvifとルシフェラーゼ/apobec3Gの同時発現に適するか否か、およびこれらの構築物によってコードされるvif活性が、ユビキチン化インヒビターによって調節され得るか否かを決定した。図5A〜5Eは、全ての構築物が細胞中でのvifとルシフェラーゼ/apobec3Gの同時発現に適していたこと、およびこれらの細胞中でのvif活性がMG132によって調節され得ることを示す。
【0282】
HeLa細胞を、ルシフェラーゼ/apobec3G融合タンパク質をコードするレトロウイルスの構築物で安定にトランスフェクトし、そして発光細胞株(FD3株)を、vif活性アッセイのために選択した。図6のグラフは、FD3が検出可能なレベルのルシフェラーゼ/apobec3Gタンパク質を産生することを示す。
【0283】
(実施例2)
(vif活性を評価するための無細胞アッセイ)
図7は、フラッグタグ化されたユビキチン、vif、hisタグ化されたapobec3Gおよび他のアッセイ成分を使用する、無細胞のvif活性測定方法の略図を示す。これらの成分を産生するために使用される発現系を図8に示す。
【0284】
hisタグ化されたapobec3Gの産生および精製を示すゲルを図9に示す。BL21(DE3)細胞をpET27b:Apobec3Gによって形質転換した。細菌を37℃でOD600が約0.7に達するまで増殖させ、1mMのIPTGを用いて誘導し、次いで18℃の振盪機に移して一晩増殖させた。
【0285】
図10〜13は、他のアッセイ成分の産生および精製を示す。同時に、これらの精製したアッセイ成分は、図7に概略的に示した方法において使用され得る。
【0286】
前述のものは、単に本発明の原理を例証する。当業者は、本発明の原理を具体化し、かつその精神および範囲内に含まれる種々の配置(ただし、本明細書中に明確に記載または示されない)を考案し得ることが理解される。さらに、本明細書中に記載される全ての例および条件付き語法は、本発明の原理および本発明者らによって当該技術の促進に寄与される概念を読者が理解するのを補助することを主に意図し、このような具体的に記載された例および条件に限定されないと解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、態様、および実施形態ならびにその特定の実施例を記載する、本明細書中の全ての記述は、その構造的等価物および機能的等価物の両方を包含することが意図される。さらに、このような等価物は、現在公知の等価物、および今後開発される等価物(すなわち、構造にかかわらず同じ機能を果たす、開発される任意のエレメント)の両方を包含することが意図される。従って、本発明の範囲は、本明細書中に示されかつ記載される例示的な実施形態に限定されることを意図するものではない。むしろ、本発明の範囲および精神は、添付の特許請求の範囲によって具体化される。
【図面の簡単な説明】
【0287】
【図1】図1は、レトロウイルスのVifタンパク質のコンセンサス配列、および例示的なVifアミノ酸配列を示す概略図である。図1に示される配列は全て、それぞれ配列番号1〜10として配列リスト中に存在する。
【図2】図2は、レトロウイルスのVpuタンパク質のコンセンサス配列、および例示的なVpuアミノ酸配列を示す概略図である。図2に示される配列は全て、それぞれ配列番号11〜20として配列リスト中に存在する。
【図3A】図3Aおよび3Bは、vifが、apobec3G(A3G)−ルシフェラーゼレポーター融合タンパク質を含むPhoenix細胞およびHeLa細胞の両方において活性であることを示す編集図である。
【図3B】図3Aおよび3Bは、vifが、apobec3G(A3G)−ルシフェラーゼレポーター融合タンパク質を含むPhoenix細胞およびHeLa細胞の両方において活性であることを示す編集図である。
【図4】図4は、HeLa細胞において、apobec3G/vifの存在下で、apobec3G−ルシフェラーゼのMG132との融合の活性の増大を示す編集図である。
【図5−1】図5A〜5Eは、種々のベクターを用いて、本発明のアッセイの細胞中でvifを発現し得ることを示す編集図である。
【図5−2】図5A〜5Eは、種々のベクターを用いて、本発明のアッセイの細胞中でvifを発現し得ることを示す編集図である。
【図5−3】図5A〜5Eは、種々のベクターを用いて、本発明のアッセイの細胞中でvifを発現し得ることを示す編集図である。
【図6】図6は、安定なHeLaクローンFD3が、高いA3Gルシフェラーゼレポーター活性およびタンパク質レベルを有することを示す編集図である。
【図7】図7は、vif媒介性のapobec3Gユビキチン結合を検出するための無細胞生化学アッセイの略図である
【図8】図8は、図7に示される無細胞アッセイの成分およびそれらの発現に使用される例示的な発現系の略図である。
【図9】図9は、E.coliからのapobec3G−His6の発現および精製を示すゲルのイメージである。
【図10】図10は、E.coliからのGST−elongin Bの発現、精製および切断を示す2枚のゲルのパネルである。
【図11】図11は、SF9細胞からのGST−elongin Bの発現、精製および切断を示す2枚のゲルのパネルである。
【図12】図12は、SF9細胞からのGST−elongin Cの発現、精製および切断を示す2枚のゲルのパネルである。
【図13】図13は、E.coliおよびSF9細胞からのGST−vifの発現および精製を示す2枚のゲルのパネルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主細胞におけるレトロウイルスの複製を阻害する方法であって、該方法は以下の工程:
レトロウイルスに感染した哺乳動物細胞を、該感染細胞におけるE1のユビキチン化活性を阻害する因子と接触させる工程であって、該接触工程は、該細胞における該レトロウイルスの複製を阻害するのに有効である、工程
を包含する、方法。
【請求項2】
前記レトロウイルスが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記HIVが、HIV−1である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記レトロウイルスが、前記宿主細胞にビリオン感染性因子(Vif)を送達する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記哺乳動物細胞が、CD4細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記因子が、前記細胞においてCEM15ポリペプチドのE1媒介性のユビキチン化を阻害する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記因子が、ユビキチン連結因子とともに、前記細胞においてCEM15のユビキチン化を促進するユビキチン結合体化因子のE1媒介性の活性化を阻害する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ユビキチン連結因子がE3である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ユビキチン結合体化因子がTRAC−1である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
宿主細胞におけるレトロウイルスの複製を阻害する方法であって、該方法は以下の工程:
レトロウイルスに感染した哺乳動物細胞を、該感染細胞におけるTRAC−1媒介性のユビキチン化を阻害する因子と接触させる工程であって、該接触工程は、該細胞における該レトロウイルスの複製を阻害するのに有効である、工程
を包含する、方法。
【請求項11】
前記レトロウイルスが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記HIVが、HIV−1である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記レトロウイルスが、前記宿主細胞にビリオン感染性因子(Vif)を送達する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記哺乳動物細胞が、CD4細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
宿主細胞におけるレトロウイルスの複製を阻害する方法であって、該方法は以下の工程:
レトロウイルスに感染した哺乳動物細胞を、該感染細胞におけるCEM15のUSP−25媒介性の脱ユビキチン化を促進する因子と接触させる工程であって、該接触工程は、該細胞におけるUSP−25媒介性の脱ユビキチン化を増強し、かつレトロウイルス複製を阻害するのに有効である、工程
を包含する、方法。
【請求項16】
前記レトロウイルスが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記HIVが、HIV−1である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記レトロウイルスが、前記宿主細胞にビリオン感染性因子(Vif)を送達する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記哺乳動物細胞が、CD4細胞である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
抗ウイルス因子についてスクリーニングする方法であって、該方法は、以下の工程:
試験サンプル中で、
候補因子、
ユビキチン化基質ポリペプチド(SP)、
ユビキチン活性化因子、
ユビキチン結合体化因子、
ユビキチン連結因子、
タグ化ユビキチン(タグ−Ub)、および
レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質
を混合する工程であって、該混合工程は、タグ−Ub−SPを産生するために該SPのユビキチン化に適した条件下で行われる、工程;
タグ−Ub−SPのレベルを検出する工程;
を包含し、
ここで、該候補因子の非存在下におけるタグ−Ub−SPのレベルと比較して該因子の存在下において低下したタグ−Ub−SPのレベルは、該因子が、該レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質を有するレトロウイルスに対する抗ウイルス因子であることを示す、方法。
【請求項21】
前記ユビキチン化基質ポリペプチドがCEM15である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のVifである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ユビキチン化基質ポリペプチドがCD4である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記ウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のVpuである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記ユビキチン活性化因子がE1である、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記ユビキチン結合体化因子がE2である、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記ユビキチン連結因子がE3である、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記ユビキチン連結因子がTRAC−1である、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記試験サンプルが、脱ユビキチン化因子をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
前記脱ユビキチン化因子がUSP−25である、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
抗ウイルス因子についてスクリーニングする方法であって、該方法は、以下の工程:
試験サンプル中で、
候補因子、
検出可能に標識されたユビキチン(タグ−Ub)に結合体化されたユビキチン化基質ポリペプチド(SP)を含む、ユビキチン化複合体、
脱ユビキチン化因子、および
レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質
を混合する工程であって、該混合工程は、タグを放出するために該ユビキチン化複合体の脱ユビキチン化に適した条件下で行われる、工程;
該ユビキチン化複合体の脱ユビキチン化を検出する工程;
を包含し、
ここで、該候補因子の非存在下における該ユビキチン化複合体の脱ユビキチン化に対する、該因子の存在下における該ユビキチン化複合体の脱ユビキチン化の増大は、該因子が、該レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質を有するレトロウイルスに対する抗ウイルス因子であることを示す、方法。
【請求項32】
前記ユビキチン化基質ポリペプチドがCEM15である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のVifである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ユビキチン化基質ポリペプチドがCD4である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記ウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のVpuである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記脱ユビキチン化因子が、USP−25ポリペプチドである、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記ユビキチン化複合体の脱ユビキチン化が、該複合体から放出されたタグ−Ubを検出することによって検出される、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
哺乳動物細胞におけるユビキチン化のレトロウイルス媒介性調節を阻害する因子についてスクリーニングする方法であって、該方法は以下の工程:
候補因子を、TRAC−1ポリペプチドおよびレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質を含む哺乳動物細胞と接触させる工程であって、該接触工程は、TRAC−1媒介性のユビキチン化活性に適した条件下で行われる、工程;ならびに
TRAC−1のユビキチン化活性に対する該候補因子の影響を決定する工程;
を包含し、
ここで、該候補因子の非存在下におけるTRAC−1媒介性のユビキチン化と比較した該因子の存在下におけるTRAC−1媒介性のユビキチン化の減少は、該候補因子が、ユビキチン化のレトロウイルス媒介性調節を阻害することを示す、方法。
【請求項39】
レトロウイルス媒介性のユビキチン化が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のビリオン感染性因子(Vif)によって媒介される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
レトロウイルス媒介性のユビキチン化が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のVpuによって媒介される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記決定工程が、ユビキチン化基質タンパク質のユビキチン化を検出することによって行われる、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記ユビキチン化基質タンパク質がCEM15である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ユビキチン化基質タンパク質がCD4である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記決定工程が、TRAC−1とユビキチン化E2との会合を検出することによって行われる、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記ユビキチン化E2が、検出可能に標識されたユビキチンでユビキチン化される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
哺乳動物細胞におけるユビキチン化のレトロウイルス媒介性調節を阻害する因子についてスクリーニングする方法であって、該方法は以下の工程:
候補因子を、脱ユビキチン化(DUB)ポリペプチドおよびレトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質を含む哺乳動物細胞と接触させる工程であって、該接触工程は、脱ユビキチン化活性に適した条件下で行われる、工程;ならびに
DUBポリペプチドの脱ユビキチン化活性に対する該候補因子の影響を決定する工程;
を包含し、
ここで、該候補因子の非存在下における脱ユビキチン化と比較した該因子の存在下における脱ユビキチン化の増大は、該候補因子が、ユビキチン化のレトロウイルス媒介性調節を阻害することを示す、方法。
【請求項47】
前記決定工程が、ユビキチン化された基質タンパク質の脱ユビキチン化を検出することによって行われる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ユビキチン化された基質タンパク質が、CEM15である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のVifである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記ユビキチン化された基質タンパク質が、CD4である、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のVpuである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記DUBがUSP−25である、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
前記決定工程が、細胞基質からの検出可能に標識されたユビキチンポリペプチドの放出を検出することによって行われる、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質によって改変されるユビキチン化カスケードにおいて活性を有するユビキチン因子についてスクリーニングする方法であって、該方法は以下の工程:
レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質を含む複数の細胞を培養する工程であって、ここで、該複数の細胞は複数の異なるユビキチン因子を発現し、該ユビキチン因子は、ユビキチン部分、ユビキチン活性化因子、ユビキチン結合体化因子、ユビキチン連結因子、または脱ユビキチン化因子である、工程;および
該複数の細胞を、変化した表現型についてスクリーニングする工程であって、ここで、該ユビキチン因子は、該表現型のモジュレーターとして同定される、工程
を包含する、方法。
【請求項55】
前記レトロウイルスユビキチン化モジュレータータンパク質が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のビリオン感染性因子(Vif)である、請求項54に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−513878(P2007−513878A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539796(P2006−539796)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/037477
【国際公開番号】WO2005/047476
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(504294145)ライジェル ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (63)
【Fターム(参考)】