説明

密封型転がり軸受ユニット及びシール環

【課題】1対の内輪素子11、11の軸方向端面同士の突き当て部の内周面に凹溝18を形成すると共に、この凹溝18内に組み付けたシール環7によって、上記両内輪素子11、11の軸方向端面同士の間を液密に塞いだ構造に於いて、軸受温度が変化しても、転動体設置空間16と外部空間との間に圧力差が生じる事を防止できる構造を実現する。
【解決手段】上記シール環7を、円環状のシール材と、このシール材を補強する円環状又は欠円環状の芯材とを組み合わせて構成する。又、このうちのシール材を、撥水撥油性と通気性と柔軟性とを有する素材により造ると共に、上記芯材を、弾性材により造る。上記シール環7を上記凹溝18内に組み付けた状態で、この凹溝18の底面に上記シール材を、上記芯材の弾力に基づいて押し付ける。この様な構成を採用する事により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば圧延機を構成するロールの両端部に設けたロールネックを支持装置に対して回転自在に支持する為に使用する密封型転がり軸受ユニットと、この密封型転がり軸受ユニットの転動体設置空間を密封する為に使用するシール環との改良に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料に圧延加工を施す為の、圧延機を構成するロールは、軸方向両端面の中心部に設けたロールネックと呼ばれる円柱部を固定の支持装置に対し、例えば図8に示す様な密封型多列円すいころ軸受により回転自在に支持している。この図8に示した密封型多列円すいころ軸受は、特許文献1に記載されたもので、外輪1と、内輪2と、複数個の円すいころ3、3と、1対の円環状のシールホルダ4、4と、1対の摺接型のシールリング5、5と、1対のOリング6、6と、1個のシール環7とを備える。
【0003】
このうちの外輪1は、軸方向中央部に配置した1個の外輪素子8aと、軸方向両端部に配置した2個の外輪素子8b、8bと、軸方向に関して隣り合う、これら各外輪素子8a、8b同士の間に挟持する状態で設けた、それぞれが短円筒状である2個の外輪間座9、9とから成る。上記軸方向中央部に配置した1個の外輪素子8aの内周面には、それぞれが部分円すい凹面状の外輪軌道10、10を、2列形成している。又、上記軸方向両端部に配置した2個の外輪素子8b、8bの内周面にはそれぞれ、部分円すい凹面状の外輪軌道10を、1列ずつ形成している。従って、上記外輪1の内周面には、4列の外輪軌道10、10が設けられている。
【0004】
又、上記内輪2は、互いの軸方向端面同士を突き当てた、1対の内輪素子11、11から成る。これら両内輪素子11、11の外周面にはそれぞれ、部分円すい凸面状の内輪軌道12、12を、2列ずつ形成している。従って、上記内輪2の外周面には、4列の内輪軌道12、12が設けられている。又、上記各円すいころ3、3は、上記4列の外輪軌道10、10と上記4列の内輪軌道12、12との間に、各列毎に複数個ずつ、保持器13、13により保持した状態で転動自在に設けられている。
【0005】
又、上記1対の円環状のシールホルダ4、4は、上記外輪1の軸方向両側に隣接配置している。そして、これら両シールホルダ4、4の内周面と、上記内輪2の軸方向両端部外周面との間に、それぞれ上記両シールリング5、5を組み付けている。これら両シールリング5、5はそれぞれ、円環状の芯金14と、この芯金14の内周縁部分に全周に亙り結合固定した円環状の弾性材15とを備える。そして、このうちの芯金14を上記両シールホルダ4、4に内嵌固定すると共に、上記弾性材15の先端縁を、上記内輪2の軸方向両端部外周面に摺接させている。これにより、上記外輪1の内周面と上記内輪2の外周面との間に存在する、転動体設置空間16の軸方向両端開口を密閉している。又、上記両シールホルダ4、4の外周面には、それぞれ係止溝17、17を全周に亙り形成すると共に、これら各係止溝17、17内に前記各Oリング6、6を係止している。自由状態で、これら各Oリング6、6の外径寸法は、上記各シールホルダ4、4の外径寸法よりも大きくなっている。
【0006】
又、上記両内輪素子11、11の軸方向端面同士の突き当て部の内周面には、これら両内輪素子11、11同士の間に掛け渡す状態で凹溝18を、全周に亙り形成している。そして、この凹溝18内に、前記シール環7を組み付けている。図9に詳示する様に、このシール環7は、ゴムにより全体を円環状に形成したシール材19と、このシール材19を補強する為の、金属製で円環状の芯材22とから成る。このうちのシール材19は、断面略矩形で全体を円環状に形成した基部23と、この基部23の全周から軸方向に延出する状態で形成された、径方向の肉厚が比較的小さい円環状のシールリップ24とを備える。この様なシール環7は、図示の様に凹溝18内に組み付けた状態で、上記シール材19を構成する基部23を、この凹溝18の底面及び軸方向両側壁面のうち、一方(図9の左方)の内輪素子11に対応する部分の全周に弾性的に接触させている。これと共に、上記シール材19を構成するシールリップ24の先端縁を、上記凹溝18の軸方向両側壁面のうち、他方(図9の右方)の内輪素子11に対応する部分の全周に弾性的に接触させている。これにより、上記両内輪素子11、11の軸方向端面同士の間を密閉している。
【0007】
上述の様に構成する密封型多列円すいころ軸受ユニットにより、圧延機を構成するロールの軸方向端面の中心部に設けた円柱状のロールネック(図示せず)を、支持装置を構成するハウジング(図示せず)の内径側に回転自在に支持する場合には、このハウジングに上記外輪1及び1対のシールホルダ4、4を内嵌支持すると共に、上記ロールネックに上記内輪2を外嵌支持する。又、これに伴い、上記各シールホルダ4、4の外周面に形成した係止溝17、17の底面と、上記ハウジングの円筒状の内周面との間で、上記各Oリング6、6を弾性的に圧縮する。これにより、上記各シールホルダ4、4の外周面と上記ハウジングの内周面との間を密閉する。
【0008】
上述の様な密封型多列円すいころ軸受ユニットは、外部に冷却水や塵芥等の異物が存在する環境下で使用される。又、上述の様な密封型多列円すいころ軸受ユニットの場合、メンテナンス時等の交換性を考慮し、上記ロールネックの外周面と上記内輪2の内周面との嵌め合いは、隙間嵌め(ルーズフィット)にしている。この為、これら両周面同士の間で滑りが起こり、摩耗粉が発生する。従って、これら冷却水、塵芥等の異物、摩耗粉が存在する外部空間と、前記転動体設置空間16との間に存在する複数の連通路を、それぞれ前記1対のシールリング5、5と、上記1対のOリング6、6と、上記1個のシール環7とにより塞ぐ事で、上記転動体設置空間16を密封している。そして、この様な構成を採用する事により、上記外部空間から上記転動体設置空間16内に上記冷却水等が入り込む事を防止すると共に、この転動体設置空間16内に封入した潤滑用のグリースが上記外部空間に漏洩する事を防止している。
【0009】
ところで、上述したロールネック用の密封型多列円すいころ軸受ユニットの場合、運転時に高温になる事で、上記転動体設置空間16内の空気が膨張すると、この転動体設置空間16内の空気が、上記1対のシールリング5、5を構成する弾性材15、15の先端縁と上記内輪2の軸方向両端部外周面との摺接部(間部分)や、上記シール環7を構成するシールリップ24の先端縁と上記凹部18の内面との接触部(間部分)を通じて、外部空間に徐々に漏れ出す。尚、上述した従来構造の第1例の場合には、上記内輪2の軸方向両端部外周面に摺接する上記両弾性材15、15の先端縁と、上記凹部18の内面に接触する上記シールリップ24の先端縁とが、それぞれ外部空間側に向いて傾斜している。即ち、上記各摺接部及び上記接触部を通じて、上記転動体設置空間16内の空気が外部空間に漏れ出す傾向となった場合に、上記各摺接部及び上記接触部の一部に隙間が生じ易くなっている。この為、上記空気の漏れ出しは、容易に行われる。
【0010】
一方、その後、運転を停止して低温になる事で、上記転動体設置空間16内の空気が収縮すると、上記各摺接部及び上記接触部を通じて、外部空間の空気が上記転動体設置空間16内に吸い込まれる傾向となる。ところが、上述した従来構造の第1例の場合には、上記内輪2の軸方向両端部外周面に摺接する上記両弾性材15、15の先端縁と、上記凹部18の内面に接触する上記シールリップ24の先端縁とが、それぞれ外部空間側に向いて傾斜している。即ち、上記各摺接部や上記接触部を通じて、外部空間に存在する空気が上記転動体設置空間16内に吸い込まれる傾向となった場合に、上記各摺接部及び上記接触部の一部に隙間が生じにくくなっている。この為、上記空気の吸い込みが殆ど行われず、上記転動体設置空間16が負圧状態となる。そして、この様に転動体設置空間16が負圧状態となる結果、著しい場合には、上記各摺接部及び上記接触部を通じて、外部空間から上記転動体設置空間16内に上記冷却水が吸い込まれると言った不具合が発生する可能性があった。又、上記転動体設置空間16が負圧状態になると、外部空間の大気圧によって、上記両シールリング5、5を構成する弾性材15、15の先端縁が、上記内輪2の軸方向両端部外周面に強く押し付けられる。この結果、これら両弾性材15、15の先端縁の摩耗が促進され、これら両弾性材15、15のシール機能の低下速度が高まる。従って、その分だけ、上記冷却水が上記両摺接部を通じて上記転動体設置空間16内に、より引き込まれ易くなる。
【0011】
上記冷却水が上記転動体設置空間16内に引き込まれると、この転動体設置空間16に存在するグリースの潤滑性能が損なわれ、軸受寿命が低下する。従って、この様な事態が発生するのを回避すべく、上記冷却水が上記両摺接部を通じて上記転動体設置空間16内に引き込まれる事を、有効に防止する必要がある。この為に具体的には、上記転動体設置空間16が負圧状態となる事を防止できる構造を実現する必要がある。
【0012】
この様な事情に鑑みて、特許文献2には、上述の図9に示したシール環7に代えて、図10に示す様なシール環7aを使用する構造が記載されている。この図10に示した従来構造の第2例を構成するシール環7aは、ゴムにより全体を円環状に形成したシール材19aと、このシール材19aの内周面の幅方向中央部に全周に亙り形成した係止溝20内に係止した、芯材である円環状スプリング21とを備える。そして、このうちのシール材19a(図10では便宜上、自由状態で示している。)の一部を、上記凹溝18の底面の幅方向両側部分及び両側壁面に全周に亙り接触させている。これと共に、上記円環状スプリング21の弾力により、上記シール材19aを上記凹溝18の底面に向け、径方向外方に付勢している。そして、この様な構成を採用する事により、上記シール環7aによって、1対の内輪素子11、11の軸方向端面同士の間を密閉している。これと共に、上記凹溝18の内面に対する上記シール材19aの締め代、並びに、上記円環状スプリング21の弾力を適度に調節する事により、高温時及び低温時にそれぞれ、上記凹溝18の内面と上記シール材19aとの接触部を通じて、転動体設置空間16(図8参照)と外部空間との間で空気のみが出入りできる様にし、その他の異物等が出入りするのを防止できる様にしている。
【0013】
この様な従来構造の第2例によれば、上記転動体設置空間16が負圧状態になる事を有効に防止できる為、上述の従来構造の第1例で説明した様な不具合が発生する事を有効に防止できる。ところが、上述の様な従来構造の第2例の場合には、上記凹溝18の内面に対する上記シール材19aの締め代、並びに、上記円環状スプリング21の弾力を適度に調節する事が困難であり、この適度な調整を実現する為に高精度な寸法管理等が必要になる為、製造コストが嵩むと言った問題がある。尚、この調整によって、上記締め代及び弾力が小さくなり過ぎると、上記接触部を通じて外部空間から上記転動体設置空間16内に異物等が入り込み易くなったり、或いは、上記シール環7aの一部が径方向内方に垂れ下がって上記凹溝18外に突出し、メンテナンス時に内輪2の内径側からロールネックを抜き差しする際に、当該突出した部分がこのロールネックに干渉して破損すると言った不具合が発生する。反対に、上記締め代及び弾力が大きくなり過ぎると、低温時の通気性を失って、上述した従来構造の第1例の場合と同様の不具合が発生する。
【0014】
又、前記特許文献1には、上述した従来構造の第1例の改良品として、図11に示す様な構造が記載されている。この図11に示した従来構造の第3例の場合には、シール環7′のシール材19′を構成するシールリップ24の軸方向中間部の円周方向複数個所に、それぞれ円形の薄肉部25を形成すると共に、これら各薄肉部25にそれぞれ、これら各薄肉部25を1対の半円形部分に2分割する、直径方向に亙る切れ目26を形成している。自由状態で、これら各切れ目26部分は、それぞれ閉じた状態になっている。この様に構成する従来構造の第3例の場合には、温度変化に伴って転動体設置空間16(図8参照)と外部空間との間に所定の圧力差が生じた場合に、次の様な圧力差の調整機能が働く。即ち、上記両空間同士の間の圧力差が所定値に達すると、この圧力差によって、上記各切れ目26部分が弾性的に広がる。そして、これら各切れ目26部分を通じて、上記両空間同士の間で空気が出入する事により、上記圧力差が上記所定値以下に抑えられる。この為、上記転動体設置空間16が過度な負圧状態になる事を有効に防止できる。従って、上述の従来構造の第1例で説明した不具合が発生する事を有効に防止できる。
【0015】
ところが、この様な従来構造の第3例の場合には、上記シールリップ24の加工が面倒でコストが嵩む。しかも、上記切れ目26部分の開閉を適切に行わせて、上述した圧力差の調整機能を的確に発揮させる為には、凹溝18の内面に対する上記シールリップ24の締め代を適正に管理して、上記切れ目26部分の応力を適正にしておく必要がある。この為に具体的には、上記凹溝18、並びに、上記シールリップ24を含んで構成するシール材19′の寸法精度及び形状精度を、それぞれ十分に確保する必要がある。従って、その分だけ、上記凹溝18を形成する1対の内輪素子11、11の加工コスト、並びに、上記シール材19′を造る為の成形型のコストが嵩む。
【0016】
【特許文献1】特開2000−104747号公報
【特許文献2】特開平9−329243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の密封型転がり軸受ユニット及びシール環は、上述の様な事情に鑑み、温度変化が生じる状況で、1対の内輪素子の軸方向端面同士の間の液密を保持できると共に、転動体設置空間と外部空間との間の圧力差をなくす事ができ、しかも凹溝を形成する上記各内輪素子の加工コスト、並びに、この凹溝内に組み付けるシール環の製造コストを抑えられる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の対象となる密封型転がり軸受ユニットは、内周面に複列又は多列の外輪軌道を有する外輪と、外周面に複列又は多列の内輪軌道を有する内輪と、これら各外輪軌道とこれら各内輪軌道との間に、各列毎に複数個ずつ、転動自在に設けられた転動体と、上記外輪の内周面と上記内輪の外周面との間に存在する転動体設置空間の軸方向両端開口を塞ぐ1対の摺接型のシールリングとを備える。又、上記内輪は、それぞれがその外周面に上記内輪軌道を1列以上有し、且つ、互いの軸方向端面同士を突き当てた1対の内輪素子を含んで構成している。又、これら両内輪素子の軸方向端面同士の突き当て部の内周面に凹溝を、これら両内輪素子に掛け渡す状態で全周に亙り形成している。又、この凹溝内に、上記両内輪素子の軸方向端面同士の間を液密に塞ぐシール環を組み付けている。
【0019】
特に、請求項1に記載した密封型転がり軸受ユニットに於いては、上記シール環は、撥水撥油性と通気性と弾性等の柔軟性とを有する素材により全体を円環状に構成したシール材と、弾性材により円環状又は欠円環状に構成した、このシール材を補強する為の芯材とを組み合わせる事により、全体を円環状に構成している。そして、上記芯材を弾性変形させる事に伴って上記シール材を一時的に変形させつつ、完成後の上記凹溝に対して着脱可能である。又、この凹溝内に上記シール環を組み付けた状態で、この凹溝の底面のうち上記両内輪素子に対応する部分の全周にそれぞれ、上記シール材が上記芯材の弾力に基づいて押し付けられる。これと共に、同じ状態で、上記シール環の全体が上記凹溝内に収まる。
【0020】
又、請求項2に記載したシール環に於いては、撥水撥油性と通気性と柔軟性とを有する素材により全体を円環状に構成したシール材と、弾性材により円環状又は欠円環状に構成した、このシール材を補強する為の芯材とを組み合わせる事により、全体を円環状に構成している。そして、この芯材を弾性変形させる事に伴って上記シール材を一時的に変形させつつ、完成後の上記凹溝に対して着脱可能である。又、この凹溝内に組み付けた状態で、この凹溝の底面のうち上記両内輪素子に対応する部分の全周にそれぞれ、上記シール材が上記芯材の弾力に基づいて押し付けられる。これと共に、同じ状態で、全体が上記凹溝内に収まる。
【0021】
尚、上記シール材を構成する為の、撥水撥油性と通気性と弾性等の柔軟性とを有する素材としては、例えば、撥水撥油剤を含浸させた耐熱性繊維材料や、コルクチップを固めて成形した、炭化コルクの如き通気性を有するコルク成形物を使用する事ができる。
【0022】
又、上述の様な本発明を実施する場合に、好ましくは、上記シール環を構成する芯材として、通気性を有するもの(例えば、弾性を有する網目状の金属材により造ったもの)を使用する。又、上記芯材として、弾性を有する網目状の金属材により造ったものを使用する場合に、好ましくは、この芯材を、断面形状が外径側に開口するコ字形状であって、全体を欠円環状に構成したものとする。
【発明の効果】
【0023】
上述の様に、本発明の密封型転がり軸受ユニット及びシール環の場合には、シール環のシール材を構成する素材が、撥水撥油性と弾性等の柔軟性とを有しており、且つ、凹溝の底面のうち1対の内輪素子に対応する部分の全周にそれぞれ、上記シール材が芯材の弾力に基づいて押し付けられている(締め代を持って密接している)。この為、このシール材と上記凹溝の底面との間部分や、このシール材の内部を通じて、外部空間に存在する冷却水等の水分や摩耗粉スラッジ等の異物が転動体設置空間内に引き込まれたり、この転動体設置空間内に存在する潤滑用グリース等の油分が外部空間に漏洩したりする事を防止できる。
【0024】
特に、本発明の場合、上記シール材を構成する素材は、通気性を有する為、このシール材によって空気が遮断される事はない。この為、温度変化に伴い、上記転動体設置空間が陽圧又は負圧になる傾向になった場合に、上記シール材の内部を通じて、上記転動体設置空間と外部空間との間で空気が出入できる。従って、これら両空間同士の間に圧力差が生じる事を防止できる。この結果、上記転動体設置空間が過度な負圧状態になる事や、この転動体設置空間の負圧状態が長時間継続して、1対のシールリングを構成する弾性材の先端縁(相手面に摺接させる端縁)の摩耗が促進される事を防止できる。この為、外部空間に存在する冷却水等が、上記両シールリングを構成する弾性材の先端縁と相手面との摺接部(間部分)を通じて、上記転動体設置空間内に引き込まれ易くなると言った不具合が発生する事を防止できる。
【0025】
又、本発明の場合には、完成後の凹溝に対してシール環を着脱できる為、メンテナンス時に軸受ユニットを分解する事なく、上記凹溝内のシール環の交換を行える。又、本発明の場合、上記シール材を構成する素材は、柔軟性を有する。この為、凹溝に多少の寸法誤差及び形状誤差があったとしても、上記シール材が柔軟に変形する事でこれら各誤差を吸収し、このシール材と上記凹溝の内面との接触状態を適正にできる。従って、この凹溝の寸法精度及び形状精度を厳正に管理する必要がない。又、上記シール材は、大判な繊維素材を切り出して造れる為、このシール材を造る際に高価な成形型を使用する必要がない。従って、上記凹溝を形成する1対の内輪素子の加工コスト、並びに、上記シール環の製造コストを十分に抑えらえる。
【0026】
尚、本発明を実施する場合に、上記シール環を構成する芯材として、通気性を有するもの(例えば、弾性を有する網目状の金属材により造ったもの)を使用すれば、このシール環全体の通気性を向上させる事ができる。又、上記芯材として、弾性を有する網目状の金属材により造ったものを使用する場合に、この芯材を、断面形状が外径側に開口するコ字形状であって、全体を欠円環状に構成したものとすれば、この芯材のばね剛性を十分に大きくできる。即ち、上記凹溝の底面に上記シール材を押し付けると共に、上記凹溝内に上記シール環全体を保持しておく為の、上記芯材の外径側に向く弾力を十分に大きくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[実施の形態の第1例]
図1〜2は、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の特徴は、1対の内輪素子11a、11aの軸方向端面同士の突き当て部の内周面に形成した凹溝18内に組み付けた、シール環7bにある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図8に示した従来構造の第1例の場合とほぼ同様である。この為、重複する図示並びに説明は省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分、並びに、上記従来構造の第1例と異なる部分を中心に説明する。
【0028】
本例の場合、上記シール環7bは、撥水撥油剤を含浸させた耐熱性繊維材料により、断面矩形で全体を円環状に形成したシール材19bと、このシール材19bに対し、このシール材19bの内周面の表層部の幅方向中央部に埋め込んだ如き状態で結合した、ばね鋼製で欠円筒状の芯材22bとから成る。この様なシール環7bは、次の様にして上記凹溝18内に組み付ける。先ず、軸受ユニットを組み立てる事により、上記凹溝18を完成させる。そして、この状態で、図2に示す様に、上記芯材22bを矢印イ、イ方向(円周方向)に弾性変形させる(これに伴い上記シール材19bを一時的に変形させる)事に基づいて、上記シール環7bを弾性的に縮径させつつ、このシール環7bを内輪2の内径側に挿入する。そして、このシール環7bを上記凹溝18の内径側に移動させた状態で、このシール環7bの径寸法を弾性的に復元させる。これにより、図1に示す様に、このシール環7bを上記凹溝18内に組み付ける。
【0029】
本例の場合、この様に凹溝18内にシール環7bを組み付けた状態で、この凹溝18の底面のうち1対の内輪素子11a、11aの端部内周面に対応する部分の全周にそれぞれ、上記シール材19bの外周面を、上記芯材22bの弾力に基づいて押し付けている(締め代を持たせて密接させている)。又、上記シール環7bの全体が上記凹溝18内に収まる様にしている。即ち、図1に示した状態で、上記芯材22b(及び上記シール材19b)の内径寸法d22bが、上記両内輪素子11a、11aの内径寸法d11aよりも少しだけ大きく(d22b>d11a)なる様にしている。又、上記シール材19bの幅寸法W19b を上記凹溝18の幅寸法W18よりも僅かに小さく(W19b <W18)する事により、上述の様にして凹溝18内にシール環7bを組み付ける作業を行い易くしている。尚、上記芯材22bの幅寸法W22bは、上記シール材19bの幅寸法W19bよりも小さく(W22b<W19b)なっている為、上記芯材22bによって上記凹溝18の開口部が完全に塞がれる事はない。
【0030】
又、本例の場合には、互いに突き当てた、上記両内輪素子11a、11aの軸方向端面同士の間の円周方向1乃至複数箇所に、それぞれ転動体設置空間16(図8参照)と上記凹溝18とを連通する通気孔27を、径方向に亙り形成している。但し、本発明を実施する場合、この様な通気孔27は、必ずしも設ける必要はない。尚、本例の場合、メンテナンス時に上記凹溝18内から上記シール環7bを取り外す作業は、このシール環7bを弾性的に縮径させる事に基づいて行う事もできるし、軸受ユニットを分解する事に基づいて行う事もできる。
【0031】
上述の様に、本例の密封型転がり軸受ユニットの場合には、凹溝18内にシール環7bを組み付けた状態で、この凹溝18の底面のうち1対の内輪素子11a、11aに対応する部分にそれぞれ、撥水撥油剤を含浸させた耐熱性繊維材料により造ったシール材19bを、芯材22bの弾力に基づいて押し付けている。この為、上記シール材19bと上記凹溝18の底面との間部分や、このシール材19bの内部を通じて、外部空間に存在する冷却水等の水分や摩耗粉スラッジ等の異物が転動体設置空間16(図8参照)内に引き込まれたり、この転動体設置空間16内に存在する潤滑用グリース等の油分が外部空間に漏洩したりする事を防止できる。
【0032】
特に、本例の場合、上記シール材19bを構成する、撥水撥油剤を含浸させた耐熱性繊維材料は、通気性を有する為、このシール材19bによって空気が遮断される事はない。この為、運転時に生じる軸受温度の変化に伴い、上記転動体設置空間16が陽圧又は負圧になる傾向になった場合に、上記シール材19bの内部を通じて、上記転動体設置空間16と外部空間との間で空気が出入できる。特に、本例の場合には、互いに突き当てた、上記両内輪素子11a、11aの軸方向端面同士の間に、上記転動体設置空間16と上記凹溝18とを連通する通気孔27を設けている為、この転動体設置空間16と外部空間との間での空気の出入を円滑に行える。従って、これら両空間同士の間に圧力差が生じる事を防止できる。この結果、上記転動体設置空間16が過度な負圧状態になる事や、この転動体設置空間16の負圧状態が長時間継続して、1対のシールリング5、5を構成する弾性材15、15(図8参照)の先端縁の摩耗が促進される事を防止できる。この為、外部空間に存在する冷却水等が、上記両シールリング5、5を構成する弾性材15、15の先端縁と内輪2(全体構造は図8参照)の軸方向両端部外周面との摺接部(間部分)を通じて、上記転動体設置空間16内に引き込まれ易くなると言った不具合が発生する事を防止できる。
【0033】
又、本例の場合には、完成後の凹溝18に対して上記シール環7bを着脱できる為、メンテナンス時に軸受ユニットを分解する事なく、上記凹溝18内のシール環7bの交換を行える。又、本例の場合、上記シール材19bを構成する、撥水撥油剤を含浸させた耐熱性繊維材料は、柔軟性を有する。この為、上記凹溝18に多少の寸法誤差及び形状誤差があったとしても、上記シール材19bが柔軟に変形する事でこれら各誤差を吸収し、このシール材19bの外周面と上記凹溝18の底面との接触状態を適正にできる。従って、この凹溝18の寸法精度及び形状精度を厳正に管理する必要がない。又、上記シール材19bは、大判な繊維素材を切り出して造れる為、このシール材19bを造る際に高価な成形型を使用する必要がない。従って、上記凹溝18を形成する1対の内輪素子11a、11aの加工コスト、並びに、上記シール環7bの製造コストを十分に抑えらえる。
【0034】
又、本例の場合、上記シール環7bを構成する芯材22bは、ばね鋼により全体を欠円筒状に形成しており、そのばね剛性が、前述の図10に示した従来構造の第2例の環状スプリング21のばね剛性に比べて、十分に大きい。この為、この芯材22bの弾力によって、上記凹溝18の底面に上記シール材19bの外周面を、十分に強く押し付ける事ができる。これと共に、上記凹溝18内に組み付けた上記シール環7bの一部が径方向内方に垂れ下がり、上記両内輪素子11a、11aの内周面よりも径方向内方に突出すると言った不具合が発生する事を、上記芯材22bのばね剛性に基づいて確実に防止できる。従って、メンテナンス時、上記両内輪素子11a、11aの内径側にロールネックを抜き差しする際に、このロールネックが上記シール環7bと干渉すると言った不具合が発生する事を確実に防止できる。
【0035】
[実施の形態の第2例]
図3〜6は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合も、上述した第1例の場合と同様、シール環7cを構成する芯材22cは、全体を欠円環状に形成している。但し、本例の場合には、この芯材22cを、ばね性の良好な網目状の金属材により造ると共に、この芯材22cの断面形状を、外径側を開口させたコ字形としている。そして、径方向外方に開口する、この芯材22cの内側に、シール材19bの径方向内半部を嵌め込む状態で装着している。又、本例の場合、上記芯材22cの幅寸法W22cは、上記シール材19bの径方向外半部の幅寸法W19bと同じく、凹溝18の幅寸法W18よりも僅かに小さい{W22c(=W19b)<W18}程度の大きさとしている。
【0036】
上述の様に構成する本例の場合には、シール環7cを構成する芯材22cの素材が、網目状の金属材である為、この芯材22cの通気性を良好にできて、上記シール環7c全体の通気性を向上させる事ができる。又、上記芯材22cは、素材が網目状の金属材ではあるものの、その断面形状を、外径側を開口させたコ字形としている。この為、上述した第1例の場合と同様、上記芯材22cのばね剛性を、十分に大きくできる。又、この芯材22cの素材が、網目状の金属材である為、この芯材22cを製造する為の加工を容易に行える。更に、本例の場合には、外径側に開口する、上記芯材22cの内側に、上記シール材19bの径方向内半部を嵌め込む状態で装着できる為、上記シール環7cの組立作業を容易に行える。その他の構成及び作用は、上述した第1例の場合と同様である。
【0037】
[実施の形態の第3例]
図7は、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合、シール環7dは、シール材19bの内周面の表層部の軸方向両端寄り部分に、ばね鋼製の線材により全体を円環状に形成した1対の芯材22d、22dを、それぞれ同心に埋め込んだ如き状態で結合して成る。そして、この様な構成を採用する事により、上記両芯材22d、22dを弾性変形させる(これに伴い上記シール材19bを一時的に変形させる)事で、上記シール環7dを弾性的に縮径できる(このシール環7dの外接円の直径を弾性的に小さくできる)様にしている。その他の構成及び作用は、(上記両芯材22d、22dのばね剛性を十分に大きくできる点を含めて、)前述した第1例の場合と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上に述べた様に、上述した実施の形態の各例の芯材22b〜22dのばね剛性は、前述の図10に示した従来構造の第2例の環状スプリング21のばね剛性に比べて、十分に大きくできる。この為、シール環を構成するシール材としてゴムを使用する構造(例えば、上記従来構造の第2例)で、当該シール環を構成する芯材として上記各芯材22b〜22dを(上記環状スプリング21の代わりに)使用すれば、凹溝の底面に対する上記シール材の押し付け力と、この凹溝内に上記シール環全体を保持しておく力とを、それぞれ(上記環状スプリング21を使用する場合に比べて)十分に大きくできる。
【0039】
但し、前述した様に、上記シール環を構成するシール材としてゴムを使用すると、軸受温度が高くなる運転状態で(即ち高温時に)、転動体設置空間内の圧力が陽圧になる。そして、この転動体設置空間内の陽圧値が、1対の摺接型シールリングの封止力を越える値になると、これら両摺接型シールリングの摺接部を通じて、転動体設置空間内の空気が外部空間に漏れ出す。この為、高温時の転動体設置空間内の陽圧値は、上記両摺接型シールリングの封止力に見合った値になる。ところが、これら両摺接型シールリングの封止力に比べて、上記シール環の封止力が小さくなっていると、転動体設置空間内の陽圧値が上記両摺接型シールリングの封止力に見合う値になる前に、上記シール環の接触部を通じて、転動体設置空間内の空気が外部空間に漏れ出す。従って、その分だけ、高温時の転動体設置空間内の陽圧値が小さくなる。
【0040】
一方、高温時には、外部空間に、より多くの冷却水が存在する様になる。この為、高温時には、この冷却水の浸入防止機能を十分に発揮させる事が、特に重要となる。ところが、この冷却水の浸入防止機能は、転動体設置空間内の陽圧値が大きくなる程、高く発揮されるものである。この為、上述の様に高温時の転動体設置空間内の陽圧値が小さくなると、その分だけ、上記冷却水の浸入防止機能が低下すると言った不具合が発生する。又、上述の様に高温時の転動体設置空間内の陽圧値が小さくなる(高温時に転動体設置空間から外部空間に吐き出される空気の量が多くなる)と、その後、軸受温度が低下して、転動体設置空間内の圧力が負圧になった場合に、上記両摺接部を通じて、外部空間から転動体設置空間内に引き込まれる空気の量が多くなる。この為、この空気と共に上記冷却水が転動体設置空間内に、より引き込まれ易くなると言った不具合が発生する。
【0041】
これに対し、上記シール環を構成する芯材として、前述した実施の形態の各例の芯材22b〜22dを使用すれば、凹溝の底面に対するシール材の押し付け力を十分に大きくできる為、上記シール環の封止力が、上記両摺接型シールリングの封止力よりも小さくなる事を有効に防止できる。この為、上述の様に高温時の転動体設置空間内の陽圧値が、上記両摺接型シールリングの封止力に見合う値よりも小さくなる事を、有効に防止できる。従って、上述した様な各不具合が発生する事を有効に防止できる。
【0042】
又、上記シール環を構成する芯材として、アルミニウム若しくはアルミニウム合金により、全体を円環状若しくは欠円環状に形成した芯材を使用すれば、この芯材の熱膨張に基づく拡径量を、同じく凹溝を備えた内輪の拡径量に比べて十分に大きくできる。この為、高温時に、上記凹溝の底面に対するシール材の押し付け力を十分に大きくできる。従って、高温時に、上記シール環の封止力が、上記両摺接型シールリングの封止力よりも小さくなる事を有効に防止できる。この為、高温時に、転動体設置空間内の陽圧値が、上記両摺接型シールリングの封止力に見合う値よりも小さくなる事を、有効に防止できる。従って、上述した様な各不具合が発生する事を有効に防止できる。
【0043】
尚、本発明を実施する場合には、凹溝の底面だけでなく、この凹溝の軸方向両側壁面にも、シール環を構成するシール材を接触させれば、このシール環の封止力をより大きくできる。又、本発明を実施する場合には、シール環を構成する芯材として、前述の図10に示した環状スプリングを使用する事もできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す、図9と同様の図。
【図2】第1例のシール環を構成する芯材を軸方向から見た図。
【図3】本発明の実施の形態の第2例を示す、図1と同様の図。
【図4】第2例のシール環を構成する芯材の斜視図。
【図5】図4のA部拡大図。
【図6】第2例のシール環を構成する芯材を軸方向から見た図。
【図7】本発明の実施の形態の第3例を示す、図1と同様の図。
【図8】密封型多列円すいころ軸受の従来構造の第1例を示す半部断面図。
【図9】図8のB部拡大図。
【図10】従来構造の第2例を示す、図9と同様の図。
【図11】同第3例を示す、図9と同様の図。
【符号の説明】
【0045】
1 外輪
2 内輪
3 円すいころ
4 シールホルダ
5 シールリング
6 Oリング
7、7′、7a〜7d シール環
8a、8b 外輪素子
9 外輪間座
10 外輪軌道
11、11a 内輪素子
12 内輪軌道
13 保持器
14 芯金
15 弾性材
16 転動体設置空間
17 係止溝
18 凹溝
19、19′、19a、19b シール材
20 係止溝
21 環状スプリング
22、22b〜22d 芯材
23 基部
24 シールリップ
25 薄肉部
26 切れ目
27 通気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に複列又は多列の外輪軌道を有する外輪と、外周面に複列又は多列の内輪軌道を有する内輪と、これら各外輪軌道とこれら各内輪軌道との間に、各列毎に複数個ずつ、転動自在に設けられた転動体と、上記外輪の内周面と上記内輪の外周面との間に存在する転動体設置空間の軸方向両端開口を塞ぐ1対の摺接型のシールリングとを備え、上記内輪は、それぞれがその外周面に上記内輪軌道を1列以上有し、且つ、互いの軸方向端面同士を突き当てた1対の内輪素子を含んで構成したもので、これら両内輪素子の軸方向端面同士の突き当て部の内周面に凹溝を、これら両内輪素子に掛け渡す状態で全周に亙り形成しており、この凹溝内に、上記両内輪素子の軸方向端面同士の間を液密に塞ぐシール環を組み付けている密封型転がり軸受ユニットに於いて、このシール環は、撥水撥油性と通気性と柔軟性とを有する素材により全体を円環状に構成したシール材と、弾性材により円環状又は欠円環状に構成した、このシール材を補強する為の芯材とを組み合わせる事により、全体を円環状に構成したもので、この芯材を弾性変形させる事に伴って上記シール材を一時的に変形させつつ、完成後の上記凹溝に対して着脱可能なものであり、この凹溝内に上記シール環を組み付けた状態で、この凹溝の底面のうち上記両内輪素子に対応する部分の全周にそれぞれ、上記シール材が上記芯材の弾力に基づいて押し付けられると共に、上記シール環の全体が上記凹溝内に収まる事を特徴とする密封型転がり軸受ユニット。
【請求項2】
内周面に複列又は多列の外輪軌道を有する外輪と、外周面に複列又は多列の内輪軌道を有する内輪と、これら各外輪軌道とこれら各内輪軌道との間に、各列毎に複数個ずつ、転動自在に設けられた転動体と、上記外輪の内周面と上記内輪の外周面との間に存在する転動体設置空間の軸方向両端開口を塞ぐ1対の摺接型のシールリングとを備え、上記内輪は、それぞれがその外周面に上記内輪軌道を1列以上有し、且つ、互いの軸方向端面同士を突き当てた1対の内輪素子を含んで構成したもので、これら両内輪素子の軸方向端面同士の突き当て部の内周面に凹溝を、これら両内輪素子に掛け渡す状態で全周に亙り形成しており、この凹溝内に、上記両内輪素子の軸方向端面同士の間を液密に塞ぐシール環を組み付けている密封型転がり軸受ユニットを構成する、このシール環に於いて、撥水撥油性と通気性と柔軟性とを有する素材により全体を円環状に構成したシール材と、弾性材により円環状又は欠円環状に構成した、このシール材を補強する為の芯材とを組み合わせる事により、全体を円環状に構成しており、この芯材を弾性変形させる事に伴って上記シール材を一時的に変形させつつ、完成後の上記凹溝に対して着脱可能であり、この凹溝内に組み付けた状態で、この凹溝の底面のうち上記両内輪素子に対応する部分の全周にそれぞれ、上記シール材が上記芯材の弾力に基づいて押し付けられると共に、全体が上記凹溝内に収まる事を特徴とするシール環。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate