説明

密封容器

【課題】密封性に優れ、かつ搬送作業を簡単に行うことができる。
【解決手段】接続筒部22内に、容器本体11の他端側から空気注入手段を挿入したときに、この空気注入手段によって連結部33が弾性変形させられつつ挿入凸部32が固定部31および接続筒部22に対して容器本体11の一端側に向けて押し下げられることにより、容器本体11の内部と空気注入手段とが、接続筒部22と挿入凸部32との間および栓部材30における周方向で隣り合う連結部33同士の間を通して連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端に注出筒部が設けられるとともに他端に接続筒部を有する接続部材が設けられた密封容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の密封容器として、例えば下記特許文献1に示されるような消化管内検査装置に用いられるシリンジ容器が知られている。このシリンジ容器では、一端に注出口が形成されるとともに、他端側に例えば注射器のようなプランジャ等の可動部材を有する空気注入手段が配設されており、注出口にチューブを装着した状態で可動部材を押圧することによって、シリンジ容器内に収容された染色液がチューブを通して体内に注出されるようになっている。なお、可動部材の押圧量を調整することで染色液の注出量が制御できるようになっている。
【特許文献1】特開2005−103092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前述のシリンジ容器においては、内容物の変質等を防止するために、使用前の状態で高い密封性が求められている。
また、内容物が収容されたシリンジ容器を搬送する際には、内容物が漏れないように可動部材を固定する必要があるため、搬送作業に手間がかかることもあった。
【0004】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、密封性に優れ、かつ搬送作業を簡単に行うことができる密封容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために、本発明の密封容器は、一端に注出筒部が設けられるとともに他端に接続筒部を有する接続部材が設けられた筒状の容器本体と、前記注出筒部を封止する封止部材と、前記接続筒部を封止する栓部材と、が備えられ、前記接続部材は、容器本体の他端側開口面を覆うように配置された環状天板部と、この環状天板部の外周縁に垂設されて容器本体に装着される装着筒部と、前記環状天板部において容器本体の内側を向く裏面に垂設された嵌合筒部と、を備えるとともに、前記接続筒部は、環状天板部において前記裏面と反対側の表面の中央部分に当該環状天板部と同軸に突設され、前記栓部材は、容器本体の他端側開口部内に嵌合されたリング状の固定部と、この固定部の径方向内側に配置されて前記接続筒部内に容器本体の内側から摺動自在に挿入された挿入凸部と、前記固定部と挿入凸部との間に周方向に間隔をあけて複数配置されこれらの固定部および挿入凸部を連結する連結部と、を備え、前記固定部において容器本体の外側を向く表面に前記嵌合筒部が嵌合された環状凹溝が形成されるとともに、当該固定部の外周面には前記環状天板部の裏面と容器本体の他端側開口端縁とで挟まれたフランジ状の係止部が突設され、前記接続筒部内に、容器本体の外側から空気注入手段を挿入したときに、この空気注入手段によって前記連結部が弾性変形させられつつ前記挿入凸部が固定部および接続筒部に対して容器本体の内側に向けて押し下げられることにより、前記容器本体の内部と空気注入手段とが、前記接続筒部と挿入凸部との間および前記栓部材における周方向で隣り合う前記連結部同士の間を通して連通する構成とされたことを特徴とする。
【0006】
この密封容器では、注出筒部が封止部材で封止されるとともに接続筒部が栓部材で封止され、さらに、栓部材の固定部に設けられた係止部が接続部材の環状天板部と容器本体の他端側開口端縁とで挟まれ、かつ栓部材の固定部に形成された環状凹溝に接続部材の嵌合筒部が嵌合された状態で、容器本体の他端側開口面が接続部材の環状天板部で覆われているので、容器本体内の密封性を高めることができる。
また、この密封容器には、例えば注射器のようなプランジャ等の可動部材を有する空気注入手段を接続するための接続筒部が設けられており、この空気注入手段を、密封容器の搬送時には接続しないで内容物を使用する間際になって初めて接続することができるので、搬送時にプランジャ等の可動部材を固定する作業が不要であり、搬送作業を簡単に行うことができる。
さらに、接続筒部を封止する栓部材が、接続筒部内に空気注入手段を挿入することによって容器本体の内部と空気注入手段とを連通させるようになっているので、内容物を使用する前までは容器本体内の密封性を確実に維持することが可能になるとともに、簡単な操作で容器本体の内部と空気注入手段とを連通させることができる。
【0007】
ここで、前記封止部材は、少なくとも容器本体の内側を向く面にポリエチレンテレフタレート製のシート材が配設されたパッキン部材を備え、このパッキン部材が前記シート材を介して前記注出筒部の開口端面に密接してもよい。
この場合、パッキン部材をシート材を介して注出筒部の開口端面に密接させることによって注出筒部が封止されているので、注出筒部を確実に封止することができる。また、パッキン部材において少なくとも容器本体の内側を向く面に、耐薬品性に優れたポリエチレンテレフタレート製のシート材が配設されているので、容器本体の内部に収容された例えば薬剤等の内容物がシート材に接触した場合でもこの内容物の変質等を防止できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、密封性に優れ、かつ搬送作業を簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施形態である密封容器について図1から図4を参照して説明する。
この密封容器10は、例えば薬剤等の内容物を収容するものであり、一端に注出筒部14が設けられるとともに他端に接続筒部22を有する接続部材17が設けられた筒状の容器本体11と、注出筒部14を封止するキャップ(封止部材)40と、接続筒部22を封止する栓部材30と、を備えている。以下、容器本体11の一端側を下側といい、他端側を上側という。
容器本体11は中心軸線Lに沿って延びる円筒状に形成されている。また、容器本体11の外周面において、上側の部分にはその径方向外方に向けて突出した鍔部15が形成されるとともに、この鍔部15よりも上側の上端部に雄ネジ部16が形成されている。
【0010】
ここで本実施形態では、接続部材17は、容器本体11の上端開口面を覆うように配置された環状天板部18と、この環状天板部18の外周縁に垂設されて容器本体11の上端部に装着される装着筒部19と、環状天板部18において容器本体11の内側を向く下面(裏面)に垂設された嵌合筒部21と、前述の接続筒部22と、を備えている。なお、環状天板部18は中心軸線Lと同軸に配置された状態で容器本体11の上端開口面を覆っている。
【0011】
また、装着筒部19の内周面には雌ネジ部20が形成されており、この雌ネジ部20が容器本体11に形成された雄ネジ部16に螺合することにより、接続部材17が容器本体11の上端部に装着されている。
さらに、接続筒部22は、環状天板部18において容器本体11の外側を向く上面(表面)の中央部分に突設されている。なお、図示の例では、環状天板部18の外周縁部に支持筒部23が突設されている。
以上の環状天板部18、装着筒部19、嵌合筒部21、接続筒部22および支持筒部23は中心軸線Lと同軸に配置されるとともに、例えばポリエチレンフタレート(以下,PET)等の樹脂材料で一体に形成されている。
【0012】
ここで、前述の栓部材30は、容器本体11の上端開口部内に嵌合されたリング状の固定部31と、この固定部31の径方向内側に配置されて接続筒部22内に下側(容器本体11の内側)から挿入された挿入凸部32と、固定部31と挿入凸部32との間に周方向に間隔をあけて複数配置されこれらの固定部31および挿入凸部32を連結する板状の連結部33と、を備えている。
これらのうち挿入凸部32は、接続筒部22内に中心軸線L方向に沿って摺動自在でかつ液密状態で挿入されている。また、連結部33は、固定部31の内周面から挿入凸部32の外周面に向かうにしたがい漸次上方に向けて傾斜し、挿入凸部32の下端部外周面に連結されている。さらに、挿入凸部32は、後述のように空気注入手段1の注入口2が接続筒部22内に挿入される前は、固定部31の径方向内側でこの固定部31において容器本体11の外側を向く上面(表面)から上方に突出した状態で、接続筒部22内に挿入されている。
【0013】
また、挿入凸部32の上端部には、上端面の中央部で交差する2つの連通溝32A、32Aが形成されており、これらの連通溝32A、32Aがそれぞれ、挿入凸部32の外周面まで延在している。そして、連通溝32A、32Aにおいて挿入凸部32の外周面に形成された部分は、空気注入手段1の注入口2が接続筒部22内に挿入される前は、接続筒部22の内周面で閉塞されて、栓部材30における周方向で隣り合う連結部33同士の間の隙間33Aと連通していない。
なお、連結部33は、例えばフッ素ゴム等の弾性材料で形成されており、本実施形態では、固定部31、挿入凸部32および連結部33の全体が弾性材料で形成されている。
【0014】
さらに本実施形態では、固定部31の前記上面に、接続部材17の嵌合筒部21が嵌合された環状凹溝31Aが形成されるとともに、当該固定部31の外周面における上端部には、接続部材17の環状天板部18の下面と容器本体11の上端開口端縁とで挟まれたフランジ状の係止部31Bが突設されている。
そして、容器本体11の上端開口縁と固定部31の係止部31Bとが液密状態で当接し、かつ容器本体11の上端部内周面と固定部31の外周面とが液密状態で当接している。
【0015】
ここで、容器本体11の下端部は、下方に向かうに従い漸次縮径した肩部13となっている。そして、本実施形態では、前述の注出筒部14は、肩部13の下端に連結されて下方に向けて中心軸線Lに沿って平行に延在している。図示の例では、この注出筒部14は例えばポリエチレンフタレート(以下,PET)等の樹脂材料で容器本体11と一体に形成されている。また、注出筒部14は、肩部13の下端に連結された上側の大径部14Aと、下側の小径部14Bと、が中心軸線Lと同軸に連結された二段筒状に形成されており、これらのうち大径部14Aの外周面に雄ネジ部が形成されている。
【0016】
ここで、注出筒部14を封止するキャップ40は、内周面に雌ネジ部が形成された周壁部41と、この周壁部41の下端開口面を閉塞する底板部42と、を備えるとともに、底板部42の内側にパッキン部材43が配設されている。このパッキン部材43において少なくとも容器本体11の内側を向く面43Aには、PET製のシート材(図示なし)が貼着されている。本実施形態では、パッキン部材43の両面、すなわち容器本体11の外側を向く面43BにもPET製のシート材が貼着されている。
そして、キャップ40の雌ネジ部と、注出筒部14の大径部14Aの雄ネジ部とを螺合することにより、キャップ40のパッキン部材43を注出筒部14の開口端面に前記シート材を介して密接させた状態で、このキャップ40を注出筒部14に装着できるようになっている。
【0017】
次に、以上のように構成された密封容器10の使用方法について説明する。
まず、キャップ40を中心軸線L回りに回動させて注出筒部14から取り外し、注出筒部14を開口させる。そして、注出筒部14の小径部14Bに、先端に吐出ノズル51が設けられた体内挿入用のチューブ50を装着する。
そして、接続筒部22内に、容器本体11の外側から空気注入手段1の注入口2を挿入する。この際、空気注入手段1の注入口2の先端が、挿入凸部32の上端面を下方に向けて押圧する。これにより、栓部材30の連結部33が弾性変形させられつつ挿入凸部32が固定部31および接続筒部22に対して下方に向けて押し下げられることにより、挿入凸部32に形成された連通溝32A、32Aにおいて挿入凸部32の外周面に形成された部分が接続筒部22内から露呈して開放され、この連通溝32A、32Aと、栓部材30における周方向で隣り合う連結部33同士の間の隙間33Aとが連通する。
以上より、容器本体11の内部と空気注入手段1とが、連通溝32A、32Aつまり接続筒部22と挿入凸部32との間、および栓部材30の前記隙間33Aを通して連通する。
【0018】
このように密封容器10にチューブ50および空気注入手段1を接続した状態で、空気注入手段1によって容器本体11の内部に空気を注入すると、容器本体11の内部に収容されている内容物が空気の圧力によって注出筒部14およびチューブ50をこの順に通過して吐出ノズル51から体内へ吐出される。なお、以上のように空気注入手段1の注入口2で挿入凸部32を押し下げて容器本体11の内部に空気を注入しているときも、挿入凸部32の上端部は接続筒部22内に位置している。
【0019】
以上のように構成された本実施形態の密封容器10では、注出筒部14がキャップ40で封止されるとともに接続筒部22が栓部材30で封止され、さらに、栓部材30の固定部31に設けられた係止部31Bが接続部材17の環状天板部18と容器本体11の上端開口端縁とで挟まれ、かつ栓部材30の固定部31に形成された環状凹溝31Aに接続部材17の嵌合筒部21が嵌合された状態で、容器本体11の上端開口面が接続部材17の環状天板部18で覆われているので、容器本体11内の密封性を高めることができる。
また、この密封容器10には、例えば注射器のようなプランジャ等の可動部材を有する空気注入手段1を接続するための接続筒部22が設けられており、この空気注入手段1を、密封容器10の搬送時には接続しないで内容物を使用する間際になって初めて接続することができるので、搬送時にプランジャ等の可動部材を固定する作業が不要であり、搬送作業を簡単に行うことができる。
【0020】
また、接続筒部22を封止する栓部材30が、接続筒部22内に空気注入手段1を挿入することによって容器本体11の内部と空気注入手段1とを連通させるようになっているので、内容物を使用する前までは容器本体11内の密封性を確実に維持することが可能になるとともに、簡単な操作で容器本体11の内部と空気注入手段1とを連通させることができる。
【0021】
さらに、パッキン部材43をシート材を介して注出筒部14の開口端面に密接させることによって注出筒部14が封止されているので、注出筒部14を確実に封止することができる。また、パッキン部材43に、耐薬品性に優れたポリエチレンテレフタレート製のシート材が配設されているので、容器本体11の内部に収容された例えば薬剤等の内容物がシート材に接触した場合でもこの内容物の変質等を防止できる。
【0022】
以上、本発明の実施形態である密封容器について説明したが、本発明の技術的範囲はこの実施形態に限定されることはなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、栓部材全体をフッ素ゴム等で構成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、汎用樹脂を使用したものや、連結部のみが弾性材料で構成されているものを採用することが可能である。弾性材料としては、フッ素ゴムやゴムにフッ素コートしたものなどが、耐薬品性に優れているので最適である。このように栓部材の材質は内容物を考慮して適宜設定することが好ましい。
さらに、注出筒部の先端にチューブを装着するものとして説明したが、これに限定されることはなく、針状のものや流通管などを装着してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
密封性に優れ、かつ搬送作業を簡単に行うことができる密封容器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態である密封容器の側面部分断面図である。
【図2】図1に示す密封容器に備えられた栓部材の斜視図である。
【図3】図2に示す栓部材の側面部分断面図である。
【図4】図1に示す密封容器の使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 空気注入手段
10 密封容器
11 容器本体
14 注出筒部
17 接続部材
18 環状天板部
19 装着筒部
21 嵌合筒部
22 接続筒部
30 栓部材
31 固定部
31A 環状凹溝
31B 係止部
32 挿入凸部
33 連結部
33A 隙間(連結部同士の間)
40 キャップ(封止部材)
43 パッキン部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に注出筒部が設けられるとともに他端に接続筒部を有する接続部材が設けられた筒状の容器本体と、前記注出筒部を封止する封止部材と、前記接続筒部を封止する栓部材と、が備えられ、
前記接続部材は、容器本体の他端側開口面を覆うように配置された環状天板部と、この環状天板部の外周縁に垂設されて容器本体に装着される装着筒部と、前記環状天板部において容器本体の内側を向く裏面に垂設された嵌合筒部と、を備えるとともに、前記接続筒部は、環状天板部において前記裏面と反対側の表面の中央部分に当該環状天板部と同軸に突設され、
前記栓部材は、容器本体の他端側開口部内に嵌合されたリング状の固定部と、この固定部の径方向内側に配置されて前記接続筒部内に容器本体の内側から摺動自在に挿入された挿入凸部と、前記固定部と挿入凸部との間に周方向に間隔をあけて複数配置されこれらの固定部および挿入凸部を連結する連結部と、を備え、
前記固定部において容器本体の外側を向く表面に前記嵌合筒部が嵌合された環状凹溝が形成されるとともに、当該固定部の外周面には前記環状天板部の裏面と容器本体の他端側開口端縁とで挟まれたフランジ状の係止部が突設され、
前記接続筒部内に、容器本体の外側から空気注入手段を挿入したときに、この空気注入手段によって前記連結部が弾性変形させられつつ前記挿入凸部が固定部および接続筒部に対して容器本体の内側に向けて押し下げられることにより、前記容器本体の内部と空気注入手段とが、前記接続筒部と挿入凸部との間および前記栓部材における周方向で隣り合う前記連結部同士の間を通して連通する構成とされたことを特徴とする密封容器。
【請求項2】
請求項1に記載の密封容器であって、
前記封止部材は、少なくとも容器本体の内側を向く面にポリエチレンテレフタレート製のシート材が配設されたパッキン部材を備え、このパッキン部材が前記シート材を介して前記注出筒部の開口端面に密接していることを特徴とする密封容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−149360(P2009−149360A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331171(P2007−331171)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(593057551)株式会社ピーエムシーコーポレーション (2)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】