説明

密封構造

【課題】 シール部材の装着を作業者が容易に行うことができ、しかも安定した密封性を容易に得ることのできる密封構造を提供する。
【解決手段】 第1の部材2と、第2の部材3と、第3の部材4と、これら3つの部材2、3、4の間を密封するための環状のシール部材5と、第1の部材2と第2の部材3の間に形成されたシール部材5を装着するための環状の装着溝20とを有しており、シール部材5は、シール幅Aを装着溝20の軸方向に対して直交する溝幅Wと等しく、あるいは小さく形成されているとともに、シール高Bさを装着溝20の軸方向に沿う溝深さDより大きく形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1、第2および第3の部材の3つの部材の間をシール部材で密封するのに好適な密封構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1、第2および第3の部材の3つの部材の間の密封構造としてOリングが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は従来の密封構造の一例の要部を示すものであり、従来の密封構造101は、図6の左側に示す第1の部材としての外側部材102と、図6の右上方に示す第2の部材としての第1の内側部材103と、図6の右下方に示す第3の部材としての第2の内側部材104と、これら外側部材102、第1の内側部材103および第2の内側部材104の3つの部材の間を密封するためのゴム様弾性体により形成された環状のシール部材としてのOリング105とを有している。なお、この密封構造101は、図6の右側が中心側とされ、左側が外側とされている。
【0004】
外側部材102は、環状に形成された外側内面111を有している。この外側内面111は、図6上方に示す小径内面111aと、図6下方に示す小径内面111aより若干大きく形成された大径内面111bとがテーパ状の段部111cにより接続された段付き筒状に形成されている。そして、テーパ状の段部111cは、Oリング105を装着する際のガイド面112とされている。
【0005】
第1の内側部材103には、図6に誇張して示すように、小径内面111aと予め設定されたシール隙間としての第1シール隙間114をおいて対向配置された環状の内側外面としての第1外面116が設けられている。また、第1の内側部材103の図6下方に示す下端面103aは、その図6上下方向に示す位置がガイド面112の軸方向の途中位置になるように、すなわち、下端面103aを含む平面がガイド面112を横切るように配置されている。そして、第1外面116の下端角部には、断面矩形状の環状に形成された凹溝117が形成されている。さらに、外側部材102の外側内面111と、凹溝117とにより囲まれた空間がOリング105を装着するための装着溝120とされている。
【0006】
装着溝120の図6の上下方向に示す軸方向(中心線に沿った方向)に対して直交する方向の溝幅Waは、図6の左右方向に示す小径内面111aとこの小径内面111aに対向する凹溝117の側壁117aとの間隔により規制されており、この溝幅Waは、自由状態におけるOリング105の線径dより小さく形成されている。さらに、装着溝120の溝深さDaは、図6の上下方向に示す凹溝117の天壁117bとこの天壁117bに平行に延在する第1の内側部材103の下端面103aとの間隔により規制されている。そして、装着溝120の溝深さDaは、自由状態におけるOリング105の線径とほぼ等しく形成されている。なお、図6に示すOリング105の断面形状は、実際の形状とは異なる模式的な形状である。また、Oリング105のつぶし代を図6中に2点鎖線にて示す。
【0007】
第2の内側部材104は、第1の内側部材103に組み付けられるものであり、図6に誇張して示すように、大径内面111bと予め設定されたシール隙間としての第2シール隙間122をおいて対向配置された環状の内側外面としての第2外面124が設けられている。この第2の内側部材104の図6上方に示す上端面104aは、図6に誇張して示すように、第1の内側部材103の下端面103aと予め設定されたシール隙間としての第3シール隙間126をおいて対向配置されているとともに、その図6上下方向に示す位置がガイド面112の軸方向の途中位置になるように、すなわち、上端面104aを含む平面がガイド面112を横切るように配置されている。
【0008】
このような構成からなる従来の密封構造101によれば、外側部材102および第1の内側部材103により装着溝120を形成した後に、装着溝120にOリング105を挿入し、その後、外側部材102および第1の内側部材103に対して第2の内側部材104、詳しくは第1の内側部材103に第2の内側部材104を組み付ける。これにより、装着溝120内において外側部材102の外側内面111と、第1の内側部材103に形成された装着溝120の側壁117aおよび天壁117bと、第2の内側部材104の上端面104aとの4者により四方から押し潰されて、外側部材102、第1の内側部材103および第2の内側部材104の間、すなわち、第1、第2、および第3シール隙間114、122、126の3つのシール隙間を密封するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2009−500580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述した従来の密封構造101においては、装着溝120の溝幅Waより大きな線径のOリング105を装着溝120に装着しているため、専用の装着治具を必要としたり、装着に多大な労力と時間がかかるという問題点があった。
【0011】
また、従来の密封構造101においては、例えば、図7に示すように、Oリング105を図7の矢印方向に移動させて装着溝120に挿入する場合、図8に示すように、Oリング105が装着溝120に収まらない状態となり、この状態で第1の内側部材103に対して第2の内側部材104を組み付けると、第2の内側部材104の上端面104aでOリング105を装着溝120に押し込むことになる。このときOリング105を装着溝120に装着するときの抵抗によりOリング105の一部が装着溝120からはみ出し、図9に誇張して示すように、装着溝120からはみ出したOリング105の一部を第3シール隙間126に挟み込んでしまい(カジリ)、Oリング105のシール面である表面が欠損して密封性を損なう恐れがあるという問題点があった。
【0012】
なお、装着溝120からはみ出したOリング105の一部を第3シール隙間126に挟み込むと、装着溝120からOリング105がはみ出さない場合に比べて第3シール隙間126が大きくなることもある。
【0013】
そこで、シール部材の装着を作業者が容易に行うことができ、しかも安定した密封性を容易に得ることのできる密封構造が求められている。
【0014】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、シール部材の装着を作業者が容易に行うことができ、しかも安定した密封性を容易に得ることのできる密封構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載の本発明の密封構造の特徴は、第1の部材と、第2の部材と、第3の部材と、前記第1、第2および第3の部材の3つの部材の間を密封するためのゴム様弾性体により形成された環状のシール部材と、前記第1の部材と前記第2の部材の間に形成された前記シール部材を装着するための環状の装着溝とを有しており、前記シール部材は、その軸方向に対して直交する方向のシール幅が、前記装着溝の軸方向に対して直交する溝幅と等しく、あるいは小さく形成されているとともに、軸方向に沿うシール高さが、前記装着溝の軸方向に沿う溝深さより大きく形成されており、前記シール部材は、前記第1および第2の部材に対して前記第3の部材を組み付けたときに、前記装着溝内において前記第2の部材と前記材3の部材との間で圧縮されて弾性変形し、この弾性変形により前記第1、第2および第3の部材のそれぞれに密接される点にある。そして、このような構成を採用したことにより、シール部材のシール幅が装着溝の溝幅と等しく、あるいは小さく形成されているので、シール部材を装着溝に容易に装着することができる。また、シール部材のシール幅が装着溝の溝幅と等しく、あるいは小さく形成されているとともに、シール部材のシール高さが装着溝の溝深さより大きく形成されているから、シール部材が装着溝内において第2の部材と第3の部材との間で圧縮されて弾性変形し、この弾性変形により第1、第2および第3の部材のそれぞれに密接されるように形成されているので、シール部材のはみ出しを防止することができる。その結果、シール部材の装着を作業者が容易に行うことができ、しかも安定した密封性を容易に得ることができる。
【0016】
請求項2に記載の本発明の密封構造の特徴は、請求項1において、前記装着溝は、断面矩形状をなすように形成されており、前記シール部材は、軸方向の両端の中央部と軸方向に対して直交する径方向の両端の中央部とのそれぞれにシールパートが形成されており、前記シール部材の軸方向の両端の中央部に形成されたシールパートが前記第3部材と、前記装着溝の前記第3部材と対向する溝壁とに密接されるとともに、前記シール部材の径方向の両端の中央部に形成されたシールパートが前記第1部材と、前記装着溝の前記第1部材と対向する溝壁とに密接される点にある。そして、このような構成を採用したことにより、シールパートがシール部材の軸方向の両端の中央部と径方向の両端の中央部とのそれぞれに設けられているから、装着溝にシール部材を装着する際に、装着溝に対向するシール部材の軸方向の端部が装着溝に対して多少の位置ずれがあったとしても、シール部材の軸方向の端部に設けられているシールパートの位置を装着溝に対向させることができるので、装着溝にシール部材を円滑に挿入することができる。
【0017】
請求項3に記載の本発明の密封構造の特徴は、請求項1または請求項2において、前記シール部材は、前記各シールパートのうちの隣位の2つのシールパートが軸方向に対して傾斜した傾斜面で接続されている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、傾斜面は、シール部材を装着溝に挿入する際のガイドとして機能するので、装着溝にシール部材をより円滑に挿入することができる。
【0018】
請求項4に記載の本発明の密封構造の特徴は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記第1の部材が外側部材であり、前記第2部材が前記外側部材の内側に配置される第1の内側部材であり、前記第3部材が前記外側部材の内側に配置され、前記第1の内側部材に組み付けられる第2の内側部材である点にある。そして、このような構成を採用したことにより、第1の部材の内側に第2および第3の部材を配置した構造を容易に得ることができる。
【0019】
請求項5に記載の本発明の密封構造の特徴は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記第1の部材が内側部材であり、前記第2部材が前記内側部材の外側に配置される第1の外側部材であり、前記第3部材が前記内側部材の外側に配置され、前記第1の外側部材に組み付けられる第2の外側部材である点にある。そして、このような構成を採用したことにより、第1の部材の外側に第2および第3の部材を配置した構造を容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の密封構造によれば、シール部材の装着を作業者が容易に行うことができ、しかも安定した密封性を容易に得ることができるなどの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る密封構造の第1実施形態の要部を示す分解拡大断面図
【図2】本発明に係る密封構造の第1実施形態の要部を示す拡大断面図
【図3】図1の装着溝に対するシール部材の装着過程におけるシール部材の挿入状態を示す説明図
【図4】図1の装着溝にシール部材の一部が装着溝の内部に挿入された状態を示す説明図
【図5】本発明に係る密封構造の第2実施形態の要部を示す図1と同様の図
【図6】従来の密封構造の一例を示す構成拡大断面図
【図7】図6の装着溝にOリングを対峙させた状態を示す説明図
【図8】図6の装着溝にOリングが収まらない状態を示す説明図
【図9】図6の装着溝からはみ出したOリングの一部をシール隙間に挟み込んだ状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を図面に示す実施形態により説明する。
【0023】
図1および図2は本発明に係る密封構造の第1実施形態を示すものであり、図1は要部を示す分解拡大断面図、図2は拡大断面図である。
【0024】
本実施形態は、第1の部材の内側に第2および第3の部材を配置した構造を例示している。
【0025】
図1および図2に示すように、本実施形態の密封構造1は、図1および図2の左側に示す第1の部材としての外側部材2と、図1および図2の右上方に示す第2の部材としての第1の内側部材3と、図1および図2の右下方に示す第3の部材としての第2の内側部材4と、これら外側部材2、第1の内側部材3および第2の内側部材4の3つの部材の間を密封するためのゴム、熱可塑性エラストマなどのゴム弾性を呈するゴム様弾性体により形成された環状のシール部材5とを有している。なお、本実施形態の密封構造1は、図1および図2の右側が中心側とされ、左側が外側とされている。
【0026】
前記外側部材2は、環状に形成された外側内面11を有している。この外側内面11は、上方に示す小径内面11aと、下方に示す小径内面11aより若干大きく形成された大径内面11bとがテーパ状の段部11cにより接続された段付き筒状に形成されている。そして、テーパ状の段部11cは、シール部材5を装着する際のガイド面12とされている。なお、外側部材2の内面としては、段部11cのない一様なものであってもよい。
【0027】
前記第1の内側部材3には、図1および図2に誇張して示すように、小径内面11aと予め設定されたシール隙間としての第1シール隙間14をおいて対向配置された環状の内側外面としての第1外面16が設けられている。また、第1の内側部材3の下方に示す下面としての下端面3aは、その上下方向に示す位置がガイド面12の軸方向の途中位置になるように、すなわち、下端面3aを含む平面がガイド面12を横切るように配置されている。そして、第1外面16の下端角部には、断面矩形状の環状に形成された凹溝17が形成されている。さらに、外側部材2の外側内面11と、凹溝17とにより囲まれた空間がシール部材5を装着するための装着溝20とされている。
【0028】
前記装着溝20の上下方向に示す軸方向(中心線に沿った方向)に対して直交する方向の溝幅Wは、左右方向に示す小径内面11aとこの小径内面11aに対向する凹溝17の側壁17aとの間隔により規制されており、この溝幅Wは、自由状態におけるシール部材5の図1の左右方向に示すシール幅Aと等しく、あるいは小さく形成されている。さらに、装着溝20の上下方向に沿った溝深さDは、図1の上方に示す凹溝17の天壁17bとこの天壁17bに平行に延在する第1の内側部材3の下端面3aとの間隔により規制されている。そして、装着溝20の溝深さDは、自由状態におけるシール部材5の図1の上下方向に示すシール高さBより小さく形成されている。
【0029】
前記第2の内側部材4は、第1の内側部材3に組み付けられるものであり、図2に誇張して示すように、大径内面11bと予め設定されたシール隙間としての第2シール隙間22をおいて対向配置された環状の内側外面としての第2外面24が設けられている。この第2の内側部材4の図1および図2の上方に示す上面としての上端面4aは、図2に誇張して示すように、第1の内側部材3の下端面3aと予め設定されたシール隙間としての第3シール隙間26をおいて対向配置されているとともに、その上下方向に示す位置がガイド面12の軸方向の途中位置になるように、すなわち、上端面4aを含む平面がガイド面12を横切るように配置されている。
【0030】
前記シール部材5は、図1に示す自由状態において、図1の上下方向に示す軸方向に対して直交する方向のシール幅A、すなわち、環状部分の横幅が、装着溝20の図1の上下方向に示す軸方向に対して直交する溝幅Wと等しく、あるいは小さく形成されているとともに、軸方向に沿うシール高さB(シール厚み)が、装着溝20の軸方向に沿う溝深さDより大きく形成されている。また、シール部材5は、その断面形状が上下方向に長い縦長のほぼ菱形状に形成されており、上半分と下半分とが上下対称に形成され、左半分と右半分とが左右対称に形成されている。そして、シール部材5の上頂部の表面は、軸方向の上面の中央部に配置された上シールパート30a(密接部)とされ、下頂部の表面は、下面の左右方向中央部に形成された下シールパート30bとされている。また、シール部材5の外側頂部の表面は、軸方向に対して直交する径方向(幅方向)の外面の上下方向中央部に配置された外シールパート30cとされ、内側頂部の表面は、軸方向に対して直交する径方向(幅方向)の内面の上下方向中央部に配置された内シールパート30dとされている。
【0031】
すなわち、本実施形態のシール部材5には、上面の左右方向中央部に形成された上シールパート30a、下面の左右方向中央部に形成された下シールパート30b、外面の上下方向中央部に形成された外シールパート30c、および内面の上下方向中央部に形成された内シールパート30dの総計4つのシールパート30(符号30は、上シールパート30a、下シールパート30b、外シールパート30c、および内シールパート30dを総称する)を有している。
【0032】
つまり、本実施形態のシール部材5は、軸方向の断面において、軸方向の両端の中央部、すなわち、上面および下面のそれぞれの中央部と、軸方向に対して直交する径方向(幅方向)の両端の中央部、すなわち、外面および内面のそれぞれの中央部とのそれぞれに環状のシールパート30が形成されている。
【0033】
前記各シールパート30は、隣位の2つのシールパート30が軸方向に対して傾斜した傾斜面32で接続されている。すなわち、上シールパート30aと外シールパート30cとは、上シールパート30aから左斜め下方に向かう左上傾斜面32aで接続されており、上シールパート30aと内シールパート30dとは、上シールパート30aから右斜め下方に向かう右上傾斜面32bで接続されており、下シールパート30bと外シールパート30cとは、下シールパート30bから左斜め上方に向かう左下傾斜面32cで接続されており、下シールパート30bと内シールパート30dとは、下シールパート30bから右斜め上方に向かう右下傾斜面32dで接続されている。また、左上傾斜面32aと左下傾斜面32c、右上傾斜面32bと右下傾斜面32d、左上傾斜面32aと右上傾斜面32b、左下傾斜面32cと右下傾斜面32dとのそれぞれは対称に形成されている(符号32は、左上傾斜面32a、右上傾斜面32b、左下傾斜面32c、および右下傾斜面32dを総称する)。
【0034】
なお、シール部材5の断面形状としては、縦長の楕円、縦長の六角形などの各種の形状を用いることができる。また、シールパート30としては、上下内外の各面において、単数、複数、あるいはこれらを組み合わせて配置してもよい。さらに、シールパート30としては、半円、半楕円、三角形などの各種の断面形状を具備する環状突起を用いることができる。
【0035】
前記シール部材5は、図2に示す装着状態において、下シールパート30bが第2の内側部材4と密接され、上シールパート30aが装着溝20の第2の内側部材4と対向する溝壁としての凹溝17の天壁17bとに密接され、外シールパート30cが外側部材2の小径内面11aと密接され、内シールパート30dが装着溝20の外側部材2と対向する溝壁としての凹溝17の側壁17aと密接されるようになっている。
【0036】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0037】
図3はシール部材の一部が装着溝の内部に挿入された状態を示す説明図、図4はシール部材が装着溝の内部に挿入された状態を示す説明図である。
【0038】
本実施形態の密封構造1は、図1に示すように、外側部材2に第1の内側部材3を、あるいは第1の内側部材3に外側部材2を配置して、外側部材2および第1の内側部材3により装着溝20を形成した後に、形成した装着溝20にシール部材5を対峙させる。
【0039】
ついで、シール部材5を装着溝20に挿入する。このときシール部材5の装着溝20と対峙する傾斜面32が挿入ガイドとして機能するので、専用の装着治具を用いずとも装着溝20に円滑に挿入することができるし、図3の2点鎖線にて示すように、シール部材5の位置がずれていたとしても、装着溝20に円滑に挿入することができる。
【0040】
ついで、シール部材5を装着溝20に挿入すると、図4に示すように、シール部材5の上シールパート30aが装着溝20の第2の内側部材4と対向する溝壁としての凹溝17の天壁17bに当接するとともに、外シールパート30cが外側部材2の小径内面11aに当接あるいはわずかなクリアランスをもって対向し、内シールパート30dが装着溝20の外側部材2と対向する溝壁としての凹溝17の側壁17aに当接あるいはわずかなクリアランスをもって対向あるいは当接する。
【0041】
なお、シール部材5のシール幅Aおよび内外径の大きさにより、外シールパート30cが外側部材2の小径内面11aに当接し、内シールパート30dが凹溝17の側壁17aに当接する場合もあるし、外シールパート30cおよび内シールパート30dの両者が非接触状態となる場合もある。
【0042】
ついで、第1の内側部材3に対して第2の内側部材4を組み付けると、第1の内側部材2の下端面3aに第2の内側部材4の上端面4aが接近し、第3シール隙間26をおいて対向配置される。このとき、第2の内側部材4の上端面4aがシール部材5の下シールパート30bに当接してシール部材5を装着溝20に押し込むことで、装着溝20内においてシール部材5を上下方向に圧縮し、図2に示すように、下シールパート30bが第2の内側部材4の上端面4aに密接し、上シールパート30aが装着溝20の第2の内側部材4と対向する凹溝17の天壁17bに密接し、外シールパート30cが外側部材2の小径内面11aに密接し、内シールパート30dが装着溝20の外側部材2と対向する凹溝17の側壁17aに密接する。これらにより、シール部材5は、外側部材2、第1の内側部材3および第2の内側部材4の3つの部材の間を密封する。このとき、第2の内側部材4の上端面4aと第1の内側部材3の下端面3aとの間に、予め設定された第3シール隙間26が形成されることになる。
【0043】
このように、本実施形態の密封構造1によれば、シール部材5のシール幅Aが装着溝20の溝幅Wと等しく、あるいは小さく形成されているので、専用の装着治具を用いずとも、作業者によりシール部材5を装着溝20に容易に装着することができる。
【0044】
また、本実施形態の密封構造1によれば、シール部材5のシール幅Aが装着溝20の溝幅Wと等しく、あるいは小さく形成されているとともに、シール部材5のシール高さBが装着溝20の溝深さDより大きく形成されているから、シール部材5が装着溝20内において第1の内側部材3と第2の内側部材4との間で圧縮されて弾性変形し、この弾性変形により外側部材2、第1の内側部材3および第2の内側部材4のそれぞれに密接されるように形成されているので、シール部材5のはみ出しを防止することができる。
【0045】
したがって、本実施形態の密封構造1によれば、シール部材5の装着を作業者が容易に行うことができ、しかも安定した密封性を容易に得ることができる。
【0046】
さらに、本実施形態の密封構造1によれば、シール部材5の装着を作業者が容易に行うことができるので、作業者による作業性の向上を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態の密封構造1によれば、シールパート30がシール部材5の軸方向の両端の中央部と径方向の両端の中央部とのそれぞれに設けられているから、装着溝20にシール部材5を装着する際に、装着溝20に対向するシール部材5の軸方向の端部、本実施形態においては上シールパート30aが装着溝20に対して多少の位置ずれがあったとしても、シール部材5の軸方向の端部に設けられているシールパート30である上シールパート30aの位置を装着溝20の内側に対向させることができるので、装着溝20にシール部材5を円滑に挿入することができる。
【0048】
さらに、本実施形態の密封構造1によれば、シール部材5は、各シールパート30のうちの隣位の2つのシールパート30が軸方向に対して傾斜した傾斜面32で接続されているから、傾斜面32のうちの装着溝20と対向する左上傾斜面32a、右上傾斜面32bは、シール部材5を装着溝20に挿入する際のガイドとして機能するので、装着溝20にシール部材5をより円滑に挿入することができる。
【0049】
さらにまた、本実施形態の密封構造1によれば、シール部材5の断面形状が上下方向に長い縦長の菱形状に形成されており、上半分と下半分とが上下対称に形成されているから、装着溝20への挿入に方向性を選ばない。これにより、シール部材5の装着を作業者がより容易に行うことができる。
【0050】
またさらに、本実施形態の密封構造1によれば、外側部材2と第1の内側部材3と第2の内側部材4とを有しているから、外側部材2の内側に第1および第2の内側部材3、4を配置する構造を容易に得ることができる。
【0051】
図5は本発明に係る密封構造の第2実施形態を示すものである。
【0052】
本実施形態の密封構造41は、第1の部材の外側に第2および第3の部材を配置したものである。
【0053】
すなわち、図5に示すように、本実施形態の密封構造41は、図5の右側に示す第1の部材としての内側部材42と、図5の左上方に示す第2の部材としての第1の外側部材43と、図5の左下方に示す第3の部材としての第2の外側部材44と、これら内側部材42、第1の外側部材43および第2の外側部材44の3つの部材の間を密封するための前述した第1実施形態の密封構造1と同様の環状のシール部材5とを有している。なお、本実施形態の密封構造41は、図5の右側が中心側とされ、左側が外側とされている。
【0054】
前記内側部材42は、環状に形成された内側外面51を有している。この内側外面51は、上方に示す大径外面51aと、下方に示す大径外面51aより若干小さく形成された小径外面51bとがテーパ状の段部51cにより接続された段付き筒状に形成されている。そして、テーパ状の段部51cは、シール部材5を装着する際のガイド面52とされている。なお、内側部材42の外面としては、段部51cのない一様なものであってもよい。
【0055】
前記第1の外側部材43には、図5に誇張して示すように、大径外面51aと予め設定されたシール隙間としての第1シール隙間54をおいて対向配置された環状の外側内面としての第1内面56が設けられている。この第1の外側部材43の下方に示す下端面43aは、その上下方向に示す位置がガイド面52の軸方向の途中位置になるように、すなわち、下端面43aを含む平面がガイド面52を横切るように配置されている。そして、第1内面56の下端角部には、断面矩形状の環状に形成された凹溝57が形成されている。さらに、内側部材42の内側外面51と、凹溝57とにより囲まれた空間がシール部材5を装着するための装着溝60とされている。
【0056】
前記装着溝60の上下方向に示す軸方向(中心線に沿った方向)に対して直交する方向の溝幅Wは、左右方向に示す大径外面51aとこの大径外面51aに対向する凹溝57の側壁57aとの間隔により規制されており、この溝幅Wは、前述した第1実施形態の密封構造1と同様に、自由状態におけるシール部材5のシール幅Aと等しく、あるいは若干小さく形成されている(図1参照)。さらに、装着溝60の溝深さDは、前述した第1実施形態の密封構造1と同様に、図5の上方に示す凹溝57の天壁57bとこの天壁57bに平行に延在する第1の外側部材43の下端面43aとの間隔により規制されている。そして、装着溝60の溝深さDは、前述した第1実施形態の密封構造1と同様に、自由状態におけるシール部材5のシール高さBより小さく形成されている(図1参照)。
【0057】
前記第2の外側部材44は、第1の外側部材43に組み付けられるものであり、図5に誇張して示すように、小径外面51bと予め設定されたシール隙間としての第2シール隙間62をおいて対向配置された環状の外側内面としての第2内面64が設けられている。この第2の外側部材44の図5上方に示す上端面44aは、図5に誇張して示すように、第1の外側部材43の下端面43aと予め設定されたシール隙間としての第3シール隙間66をおいて対向配置されているとともに、その図5上下方向に示す位置がガイド面52の軸方向の途中位置になるように、すなわち、上端面44aを含む平面がガイド面52を横切るように配置されている。
【0058】
その他の構成については、前述した第1実施形態の密封構造1と同様とされているので、その詳しい説明については省略する。
【0059】
このような構成からなる本実施形態の密封構造41によれば、前述した第1実施形態の密封構造1における外側部材2の内側に第1および第2の内側部材3、4を配置する構造を容易に得ることができるという効果を除いて、同様の効果を奏することができる。
【0060】
また、本実施形態の密封構造41によれば、前述した第1実施形態の密封構造1における外側部材2の内側に第1および第2の内側部材3、4を配置する構造を容易に得ることができるという効果に代えて、内側部材42の外側に第1および第2の外側部材43、44を配置した構造を容易に得ることができるという効果を奏することができる。
【0061】
本発明の密封構造は、固定用シール(ガスケット)および運動用シール(パッキン)の両者に用いることができる。
【0062】
なお、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1、41 密封構造
2 外側部材(第1の部材)
3 第1の内側部材(第2の部材)
4 第2の内側部材(第3の部材)
5 シール部材
14、54 第1シール隙間
17、57 凹溝
20、60 装着溝
22、62 第2シール隙間
26、66 第3シール隙間
30 シールパート
30a 上シールパート
30b 下シールパート
30c 外シールパート
30d 内シールパート
32 傾斜面
32a 左上傾斜面
32b 右上傾斜面
32c 左下傾斜面
32d 右下傾斜面
42 内側部材(第1の部材)
43 第1の外側部材(第2の部材)
44 第2の外側部材(第3の部材)
A シール幅
B シール高さ
D 溝深さ
W 溝幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と、第2の部材と、第3の部材と、前記第1、第2および第3の部材の3つの部材の間を密封するためのゴム様弾性体により形成された環状のシール部材と、前記第1の部材と前記第2の部材の間に形成された前記シール部材を装着するための環状の装着溝とを有しており、
前記シール部材は、その軸方向に対して直交する方向のシール幅が、前記装着溝の軸方向に対して直交する溝幅と等しく、あるいは小さく形成されているとともに、軸方向に沿うシール高さが、前記装着溝の軸方向に沿う溝深さより大きく形成されており、
前記シール部材は、前記第1および第2の部材に対して前記第3の部材を組み付けたときに、前記装着溝内において前記第2の部材と前記材3の部材との間で圧縮されて弾性変形し、この弾性変形により前記第1、第2および第3の部材のそれぞれに密接されることを特徴とする密封構造。
【請求項2】
前記装着溝は、断面矩形状をなすように形成されており、
前記シール部材は、軸方向の両端の中央部と軸方向に対して直交する径方向の両端の中央部とのそれぞれにシールパートが形成されており、
前記シール部材の軸方向の両端の中央部に形成されたシールパートが前記第3部材と、前記装着溝の前記第3部材と対向する溝壁とに密接されるとともに、前記シール部材の径方向の両端の中央部に形成されたシールパートが前記第1部材と、前記装着溝の前記第1部材と対向する溝壁とに密接されることを特徴とする請求項1に記載の密封構造。
【請求項3】
前記シール部材は、前記各シールパートのうちの隣位の2つのシールパートが軸方向に対して傾斜した傾斜面で接続されていることを特徴とする請求項2に記載の密封構造。
【請求項4】
前記第1の部材が外側部材であり、前記第2部材が前記外側部材の内側に配置される第1の内側部材であり、前記第3部材が前記外側部材の内側に配置され、前記第1の内側部材に組み付けられる第2の内側部材であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の密封構造。
【請求項5】
前記第1の部材が内側部材であり、前記第2部材が前記内側部材の外側に配置される第1の外側部材であり、前記第3部材が前記内側部材の外側に配置され、前記第1の外側部材に組み付けられる第2の外側部材であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の密封構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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