説明

密封装置

【課題】 二酸化炭素または二酸化炭素を含む流体を密封対象とするゴム製のシール部材を備えた密封装置において、高温高圧環境下にあっても二酸化炭素の漏れ量を十分に抑えることのできるシール部材を提供する。
【解決手段】 シール部材のゴム表面に、パーハイドロポリシラザン及びポリオルガノシラザンを含む溶液を熱処理して得られる緻密性と柔軟性を併せ持つコーティング層を形成する。あるいは、シール部材のゴム表面に、ポリオルガノシラザンを含む溶液を熱処理して得られる第1のコーティング層(柔軟層)を形成し、さらにその上に、パーハイドロポリシラザン及びポリオルガノシラザンを含む溶液を熱処理して得られる第2のコーティング層(緻密層)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素又は二酸化炭素を含む流体を密封対象とする密封装置に関し、特に、二酸化炭素を冷媒として用いた冷凍空調システムにおける冷媒の漏れを防止する密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーエアコンなどの冷凍空調機においては、オゾン層破壊といった環境問題の観点から主としてフロン系冷媒HFC−134aが冷媒として用いられている。ところが、近年、HFC−134aに対しても地球温暖化への影響が指摘され、使用が制限される方向にある。
【0003】
これに代わるものとして、地球温暖化係数が小さく、かつ自然冷媒である二酸化炭素冷媒が代替候補となっている。二酸化炭素冷媒を使用した冷凍空調システムでは、従来のフロンガス冷媒系と比較し、圧力4〜12MPa、温度120℃以上の高温高圧条件下での使用となる。また、二酸化炭素冷媒が、密封装置に使用されるシール材に対し与える影響もフロン系冷媒とは異なっている。
【0004】
このことから、二酸化炭素冷媒用の密封装置に適用できるシール材につき種々の検討が行われている。例えば、特許文献1には、有機過酸化物で架橋された水素化ニトリルゴムを主体とするシール材が記載されている。しかし、水素化ニトリルゴムを主体としたシール材では、密封装置からの二酸化炭素の漏れ量を低減するにはなお不十分であることが判明した。
【特許文献1】 特開2002−146342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、二酸化炭素又は二酸化炭素を含む流体を密封対象とする密封装置において、高温高圧環境下にあっても密封装置からの二酸化炭素の漏れ量を十分に抑えることのできるシール部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明は、二酸化炭素または二酸化炭素を含む流体を密封対象とするゴム製のシール部材を備えた密封装置において、上記シール部材のゴム表面に、パーハイドロポリシラザン及びポリオルガノシラザンを含む溶液を熱処理して得られるコーティング層を形成したものである。
【0007】
さらに本発明は、二酸化炭素または二酸化炭素を含む流体を密封対象とするゴム製のシール部材を備えた密封装置において、上記シール部材のゴム表面に、ポリオルガノシラザンを含む溶液を熱処理して得られる第1のコーティング層を形成し、さらにその上に、パーハイドロポリシラザン及びポリオルガノシラザンを含む溶液を熱処理して得られる第2のコーティング層を形成したものである。
【発明の効果】
【0008】
上記の如く構成される本発明の密封装置においては、シール部材のコーティング層にパーハイドロポリシラザンを含ませたことにより緻密なコーティング層が形成されるので、高温高圧環境下での使用においても二酸化炭素の漏れ量が極めて少ない密封装置を実現することができる。さらに本発明の密封装置では、コーティング層にポリオルガノシラザンを含ませたことにより柔軟性を持たせることができ、ゴムの変形に対する追従性が向上するので、コーティング層に亀裂が発生し難く、確実な密封性を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、二酸化炭素または二酸化炭素を含む流体を密封対象とするゴム製のシール部材を備えた密封装置において、シール部材のゴム表面に、特殊なコーティング層(膜)を形成してなるものである。
【0010】
本発明の密封装置に用いられるシール部材に適用されるゴムとしては、水素化ニトリルゴム、塩素化ポリエチレン、ブチルゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。
【0011】
本発明において用いられるコーティング材は、膜形成用の成分として少なくともパーハイドロポリシラザンとポリオルガノシラザンの2成分を含み、パーハイドロポリシラザンとポリオルガノシラザンとの組成比により形成された膜の緻密性と柔軟性とを調整できるものである。
【0012】
上記のパーハイドロポリシラザンは、少なくとも分子内にSi−H結合を有するもので、下記化学式(1)
【化1】

で表される骨格を繰り返し単位として鎖状に結合した鎖状ポリマー、あるいは環状に結合した環状ポリマーである。
【0013】
また、ポリオルガノシラザンは、下記化学式(2)
【化2】

で表される骨格を繰り返し単位として鎖状に結合した鎖状ポリマー、あるいは環状に結合した環状ポリマーである。ポリオルガノシラザンとして好ましいものは、R1をアルキル基、R2及びR3を水素原子としたもので、アルキル基の中でもメチル基が特に好ましい。
【0014】
ここで、パーハイドロポリシラザンとポリオルガノシラザンとでそれぞれの含有比率と形成された膜の緻密度との関係について述べると、パーハイドロポリシラザン単体から形成された膜は、緻密度が最も高い極めて緻密な層となり、またポリオルガノシラザン単体から形成された膜は、有機基を含むことから前記の緻密層に比べて原子間結合が疎になり、緻密度が最も低い極めて柔軟な層となる。
【0015】
従って、コーティング液を、パーハイドロポリシラザンとポリオルガノシラザンとの両者を含む混合組成とし、それぞれの含有比を連続的に変化させれば形成される膜の緻密さを上記の極めて緻密な膜から極めて柔軟な膜との間で調整することができる。
【0016】
コーティング液は、各所定量のパーハイドロポリシラザンおよびポリオルガノシラザンを有機溶媒に溶解したもので、パーハイドロポリシラザンの含有量がパーハイドロポリシラザンおよびポリオルガノシラザン全体量1に対して0.65〜0.95の範囲となるように調整される。その理由は、パーハイドロポリシラザンの含有量がポリシラザン全体量1に対して0.95を越えると、硬度が高くなり過ぎて柔軟性を失うからであり、パーハイドロポリシラザンの含有量がポリシラザン全体量1に対して0.65未満であると、柔軟性が高くなるとともに緻密性が大幅に低下するからである。
【0017】
さらにコーティング層を柔軟層と緻密層の2層構造とする場合、柔軟層は、パーハイドロポリシラザンの含有量がパーハイドロポリシラザン及びポリオルガノシラザンを含むポリシラザン全体量1に対して0〜0.65の範囲となるように調整され、また緻密層は、パーハイドロポリシラザンの含有量がパーハイドロポリシラザン及びポリオルガノシラザンを含むポリシラザン全体量1に対して0.65〜0.95の範囲となるように調整される。
【0018】
コーティング液に用いられる有機溶媒は、ポリシラザンの反応に悪影響を与えないもので有ればよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン等の芳香族化合物、シクロブタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等のシクロパラフィン、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−ノナン、n−デカン、i−デカン等の飽和炭化水素化合物、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類が好適に用いられる。
【0019】
コーティング液の塗布方法としては、ディップ法、スピンコート法、スプレー法、刷毛塗り法、静電塗布法、グラビアロール法、バー塗布法、フロー塗布法等がある。
【0020】
コーティング層は、上記いずれかの方法によりコーティング液を塗布し、その後室温にて乾燥し、大気中あるいは水蒸気を含む雰囲気中で、80〜400℃の温度範囲で30〜180分加熱処理をすることにより形成される。このコーティング液は、加熱処理過程で加熱分解した後にガラス化し、二酸化珪素を主成分とするコーティング層となる。
【0021】
この熱処理プロセスでは、加熱処理の初期段階では、パーハイドロポリシラザンやポリオルガノシラザンの反応が進行すると、Si−O結合の他に、Si−N結合、Si−H結合、Si−R結合等を含む重合体が形成される。この段階では、シロキサン結合Si−O−Siが十分形成されていないために、セラミクスへの転化が不十分な状態である。更なる加熱処理の進行に伴い、前記重合体が水分や酸素と反応することで酸化や加水分解が進行し、シロキサン結合あるいはSi−N結合が形成されて、緻密性に加えて柔軟性を有するセラミクスへと転化する。
【0022】
本発明で用いるポリシラザン系重合体を実用的な時間で加熱分解するには450℃以上の温度が必要であるが、ポリシラザン系重合体の一部を改質したり、触媒添加もしくは水蒸気雰囲気中での加熱分解によって、加熱温度は100℃以下の温度で十分な分解反応が進行しシリカ膜が生成する。
【0023】
ポリシラザン系重合体の熱分解温度を低下させることができる触媒としては、無機触媒系では、代表的なもので銀、金、パラジウム、ニッケルなどの金属微粒子があり、特にパラジウム微粒子が触媒効果として優れている。また有機触媒系では、アミン類、ピリジン類、酸類等が挙げられる。
【0024】
本発明におけるシリカ膜の密度は2.1〜2.2g/cm3、膜の硬度は、緻密層で鉛筆硬度9H以上、柔軟層で鉛筆硬度6H以上である。なお、膜の形成法としては、上記加熱処理以外に、大気圧プラズマ処理法や真空紫外エキシマ光照射処理法などがある。
【0025】
本発明の密封装置に適用されるシール部材には、装着時における拡張、使用時におけるシール部材の圧縮または伸張による変形の要素があり、これらに適応して密封性を保持するために弾性体としてゴムが使用されている。このため、ゴム上に形成されたコーティング層においても前述した変形の要素が加わることになる。また、密封装置において対象物を密封するためにはシール部材がシール面に対して効果的に接触していることが必要である。
【0026】
従って本発明では、コーティング層の形成時に、パーハイドロポリシラザンとポリオルガノシラザンの含有比を調整することにより、緻密性と柔軟性を併せ持った層とすることができる。即ちこの場合、緻密性は二酸化炭素の遮蔽性に対して効果があり、柔軟性はゴムの変形に対する追従性に効果がある。
【0027】
さらに本発明では、コーティング層をゴム側から柔軟層、その上の緻密層の2層構造とすることにより、二酸化炭素の透過防止性とゴムの変形に対する追従性とをより効果的に併せ持つことが可能となる。
【0028】
また、コーティング層の構成を緻密度の違いにより緻密度の低い方から高い方へ段階的に変化させた複数の層の重ね合わせ傾斜組成とすることで、二酸化炭素の透過防止性とゴムの変形に対する追従性の効果は格段と優れたものに向上できる。
【0029】
次に、本発明の具体例を以下の実施例1〜2及び比較例1〜3を用いて説明する。なお、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕
実施例1は、シール部材の一例として、弾性体に水素化ニトリルゴム(HNBR)を用いてなるOリングの表面に、コーティング層として1層の緻密層を形成した実施例である。
本実施例における水素化ニトリルゴム(HNBR)製Oリングは、主原料の水素化ニトリルゴム(Zetpol 0020、日本ゼオン株式会社製)100重量部に対して架橋剤の有機過酸化物として1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン4重量部、充填剤としてHAFカーボンブラック15重量部、FEFカーボンブラック65重量部、可塑剤としてトリメリット酸トリメリテート10重量部、架橋助剤としてN,N’−m−フェニレンジマレイミド5重量部、老化防止剤としてアルキル化ジフェニルアミン1.5重量部、金属酸化物として酸化亜鉛3重量部、滑剤としてステアリン酸1重量部合計で204.5重量部を用い、これを公知の混合法で混練してゴム組成物とし、180℃、10分の成型条件で加圧成型して作製した。なお、その形状は、線径φ2mm、内径40.0mmとした。
【0030】
一方、本実施例で使用するコーティング液は、以下の通りにて作成した。即ちこの場合、緻密層形成用のコーティング液として、パーハイドロポリシラザンの含有量とポリメチルハイドロシラザンの含有量の比が0.75:0.25となるようにパーハイドポリロシラザンおよびポリメチルハイドロシラザンそれぞれの含有量を調整したコーティング液を作製した。
【0031】
そしてこのコーティング液を、上記方法で作成した水素化ニトリルゴム(HNBR)製Oリングの表面にスプレー法により塗布し、室温にて乾燥後、180℃で30分加熱処理を行って、コーティング層として1層の緻密層を形成した。
【0032】
〔実施例2〕
実施例2は、実施例1で用いた水素化ニトリルゴム(HNBR)製のOリングの表面に、コーティング層として柔軟層(第1のコーティング層)と緻密層(第2のコーティング層)の2層を形成した実施例である。
本実施例で使用するコーティング液は、以下の通りにて作製した。即ちこの場合、先ず柔軟層形成用コーティング液として、パーハイドポリロシラザンの含有量とポリメチルハイドロシラザンの含有量の比が0.50:0.50となるようにパーハイドロポリシラザンおよびポリメチルハイドロシラザンそれぞれの含有量を調整した塗布液を作製し、次に緻密層形成用コーティング液として、パーハイドロポリシラザンの含有量とポリメチルハイドロシラザンの含有量の比が0.90:0.10となるようにパーハイドロポリシラザンおよびポリメチルハイドロシラザンそれぞれの含有量を調整したコーティング液を作製した。
【0033】
そして、実施例1で作製した水素化ニトリルゴム(HNBR)製Oリングの表面に柔軟層形成用コーティング液をスプレー法により塗布し、室温にて乾燥後、180℃で30分加熱処理を行って、柔軟層を形成した。続いて、この柔軟層の上に緻密層形成用コーティング液をスプレー法により塗布し、室温にて乾燥後、180℃で30分の加熱処理を行って、緻密層を形成した。これにより、Oリングの表面に、柔軟層と緻密層の2層からなるコーティング層を形成した。
【0034】
〔比較例1〕
比較例1は、実施例1で用いた水素化ニトリルゴム(HNBR)製Oリングの表面に、何らのコーティングも施さなかった例である。
【0035】
〔比較例2〕
比較例2は、実施例1で用いた水素化ニトリルゴム(HNBR)製Oリングの表面に、コーティング層として柔軟層の1層のみを形成した例である。
本比較例で使用するコーティング液は、実施例2で使用した柔軟層形成用コーティング液である。この柔軟層形成用コーティング液を、実施例1で作製した水素化ニトリルゴム(HNBR)製Oリングの表面にスプレー法によって塗布し、室温にて乾燥後、180℃で30分加熱処理を行って、柔軟層を形成した。
【0036】
〔比較例3〕
比較例3は、実施例1で用いた水素化ニトリルゴム(HNBR)製Oリングの表面に、コーティング層として緻密層の1層のみを形成した例である。
この場合、緻密層形成用コーティング液として、パーハイドロポリシラザンの含有量とポリメチルハイドロシラザンの含有量の比が0.95:0.05となるようにパーハイドロポリシラザンおよびポリメチルハイドロシラザンそれぞれの含有量を調整したコーティング液を作製し、これを実施例1で作製した水素化ニトリルゴム(HNBR)製Oリングの表面にスプレー法により塗布し、室温にて乾燥後、180℃で30分加熱処理を行って、緻密層を形成した。
【0037】
以上の如く構成される実施例1〜2及び比較例1〜3における二酸化炭素の透過量(漏れ量)及びコーティング層の亀裂発生に対する評価試験は、次のようにして行った。
【0038】
〔二酸化炭素透過量測定〕
容量300mlの本体と蓋体とからなる密封試験容器を使用し、上記の実施例1〜2及び比較例1〜3の各試料(Oリング)をシール部材として本体と蓋体とを螺締め密封すると共に、150℃において内部圧力が8MPaとなるように二酸化炭素を充填し、試験容器全体を温度150℃の恒温槽中に放置した。そして、各試験容器について400時間経過後に試験開始時の総重量との差を測定することにより、その減量分を各試料から透過した二酸化炭素の透過量として求めた。
【0039】
〔コーティング層の亀裂発生評価〕
試料である線径φ2.0mm、内径40.0mmのOリングを、内径に対する比率で15%および30%拡張し、Oリング表面のコーティング層を観察し亀裂の発生の有無を判定した。
【0040】
上記の実施例1〜2及び比較例1〜3における二酸化炭素透過量の測定結果及びコーティング層の亀裂発生に対する評価結果を表1に示す。
【表1】

【0041】
上記表1の結果より、以下のことが確認できた。
実施例1から分かるように、Oリング表面に緻密層の1層からなるコーティング層を形成したシール部材を使用した密封装置では、比較例1に示すコーティング層を持たないOリングの場合及び比較例2に示す柔軟層1層のみをコーティング層として施したOリングを使用した場合と比較し、二酸化炭素の透過量を大幅に低減できることが判明した。
【0042】
また実施例1では、比較例3の緻密層1層からなるコーティング層を形成したOリングを使用した場合と比較してコーティング層における亀裂の発生抑止効果に関して優れることが判明した。これは、用いたコーティング液の組成におけるパーハイドロポリシラザンとポリオルガノシラザンの比率に置いてポリオルガノシラザンの比率が比較例3の緻密層より高いことからより柔軟性に富んだ層となっており、ゴムの変形に対する追従性が向上しているためである。
【0043】
さらに実施例2から分かるように、Oリング表面に柔軟層と緻密層の2層からなるコーティング層を施したシール部材を使用した密封装置では、比較例1に示すコーティング層を持たないOリングの場合及び比較例2に示す柔軟層1層のみをコーティング層として施したOリングを使用した場合と比較し、二酸化炭素の透過量を大幅に低減できることが判明した。また、比較例3の緻密層1層からなるコーティング層を施したOリングを使用した場合と比較して、二酸化炭素の透過量は同等レベルであるが、コーティング層における亀裂の発生抑止効果に関しては優れることが判明した。
【0044】
また実施例2では、実施例1で示す緻密層1層からなるコーティング層を施した場合よりも更に二酸化炭素の透過低減効果及びコーティング層における亀裂の発生抑止効果に関して優れることが判明した。これは、Oリングの表面にゴムの変形に対する追従性に優れた柔軟層と二酸化炭素透過に対する遮蔽効果に優れた緻密層の2層の組成からなるコーティング層を持ち、かつ緻密層の組成が実施例1における場合よりもパーハイドロシラザンの組成比が大きいことにより層の緻密度が高いためである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素または二酸化炭素を含む流体を密封対象とするゴム製のシール部材を備えた密封装置において、上記シール部材のゴム表面に、パーハイドロポリシラザン及びポリオルガノシラザンを含む溶液を熱処理して得られるコーティング層を形成したことを特徴とする密封装置。
【請求項2】
二酸化炭素または二酸化炭素を含む流体を密封対象とするゴム製のシール部材を備えた密封装置において、上記シール部材のゴム表面に、ポリオルガノシラザンを含む溶液を熱処理して得られる第1のコーティング層を形成し、さらにその上に、パーハイドロポリシラザン及びポリオルガノシラザンを含む溶液を熱処理して得られる第2のコーティング層を形成したことを特徴とする密封装置。