説明

密閉型電池

【課題】所定レベルのケース内圧に達した際に効率よく開放されると共に弁開放時には充分な開口面積が確保され得る安全弁と該安全弁を備えた密閉型電池を提供すること。
【解決手段】密閉型電池のケースの一部に形成された安全弁40は、薄肉部42内に所定のパターンで形成された破断溝部50を備えており、該薄肉部はその周縁部43の少なくとも一部が曲線状に形成された曲線周縁部45である横長若しくは縦長形状に形成されており、破断溝部は前記薄肉部の中央部分において該薄肉部の長軸方向に延びる中央直線溝部60と該中央直線溝部の長軸方向の両側に形成され且つ該中央直線溝部の長軸方向端部60A,60Bにそれぞれ繋がる一対のサイド溝部70とを有し、ここでサイド溝部の一部は曲線周縁部に沿って曲線状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉されたケース内に電極体が電解質とともに収容された構成の密閉型電池に関し、詳しくは、ケース内圧が上昇した際に開放する安全弁を備えた密閉型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池その他の密閉型の二次電池は、車両搭載用電源あるいはパソコンや携帯端末等の電源として重要性が高まっている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン電池は、車両搭載用高出力電源として好ましく用いられるものとして期待されている。
かかる密閉型電池には、一般に過充電等によりケース内のガス圧(内圧)が過剰に上昇した場合に該内圧を開放するための内圧開放機構が設けられている。かかる内圧開放機構の一つの代表例として、ケースの一部に他の部分よりも厚みの小さい薄肉部(典型的には金属製)を形成しておき、該ケースの内圧が所定値(開放圧力)以上になると上記薄肉部が破断(開口)して内圧を開放するように構成されたいわゆる安全弁がある。この種の安全弁を備えた電池に関する従来技術文献として特許文献1〜3が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−273640号公報
【特許文献2】特開2001−102024号公報
【特許文献3】特開2001−256944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
密閉型電池のケースの一部に形成された従来の安全弁の構造の一例を図15に示す。この図に示す安全弁2は、電池ケースの他の部分よりも肉厚が薄い横長形状(より具体的には長軸方向の両側が半円形状の長円形状)の薄肉部3と、該薄肉部3に形成された破断溝部(刻印部)4とから構成されている。そして、ケースの内圧が所定値(開放圧力)以上となった場合には、当該内圧によって破断溝部4が破断するとともに、典型的には図16に示すように薄肉部3が外方に捲りあがって開弁される。
【0005】
上述の形態の安全弁2では、図16に示すように薄肉部3のうちで開放される開口部Sの面積が限定され易い。特に横長形状(または縦長形状)の薄肉部における長軸方向の両端部分の開放が困難である。
しかし、この種の安全弁としては、ケース内圧が所定レベルを超えて上昇した際に、できるだけ速やかに開弁されると共に薄肉部がより大きく開口することがケース内部で発生したガスを迅速に電池外部に放出し得るという観点から好ましい。
一方、かかる要求を実現するために、薄肉部に過剰に破断溝部を設けたり、或いは破断溝部の溝深さを過大に深くする(換言すれば溝部の肉厚を極端に薄くする)と、ケース内圧が所定レベル(即ち異常に内圧が高まった場合)を超えないうちから安全弁が開口する虞があり好ましくない。また、個々の電池毎(即ち個々の電池に設けられた安全弁毎)に開弁するときのケース内圧(即ち開弁圧力)がばらつく原因ともなり好ましくない。
また、あまり大きな薄肉部を形成すると、ケースの強度低下を招き不意な振動や衝撃で薄肉部が破損し易くなる虞もあるため好ましくない。
そこで、本発明は、密閉型電池に設けられる安全弁に関する上述したような従来の課題を解決すべく創出されたものであり、所定レベルのケース内圧(即ち予め設定された開弁圧力)に達した際に効率よく開放されると共に、弁開放時には充分な開口面積が確保され得る構造の安全弁を提供することを目的とする。また、そのような安全弁を備える密閉型電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供される一態様の電池は、正極および負極を構成する電極体と、電解質と、該電極体および電解質を収容する密閉されたケースとを備える密閉型電池である。
前記ケースの一部には、該ケースの内圧が所定値以上に上昇した場合に開放される安全弁が形成されている。また、前記安全弁は、該安全弁の周囲の部分よりも薄肉に形成された薄肉部と、該薄肉部内に所定のパターンで形成された破断溝部とを備えている。
前記薄肉部は、長軸方向と短軸方向のサイズが異なり且つ長軸方向の両端又はその近傍の周縁部の少なくとも一部が曲線状に形成された曲線周縁部である横長若しくは縦長形状に形成されている。例えば、一般に、長円形状、楕円形状、長丸長方形状、オバール形状、競技トラック形状、等と呼称される横長(又は縦長)形状が包含され得る。
そして、前記破断溝部は、前記薄肉部の中央部分において該薄肉部の長軸方向に延びる中央直線溝部と、該中央直線溝部の長軸方向の両側に形成され且つ該中央直線溝部の長軸方向端部にそれぞれ繋がる一対のサイド溝部とを有している。ここで、前記サイド溝部の少なくとも一部は前記曲線周縁部に沿って曲線状に形成されていることを特徴とする。
【0007】
かかる構成の密閉型電池は、上記のとおりのパターンの破断溝部が薄肉部に形成されているため、所定レベル以上のケース内圧が生じた場合に、効率よく安全弁を開弁する(即ち破断溝部の破断を契機に薄肉部を開放する)ことができる。このとき、上記パターンにより、薄肉部における所望レベルの開口面積を実現した広い開口部形成(開放)を実現することができる。
即ち、本構成の密閉型電池では、ケース内圧上昇後、先ず、当該内圧の力を最も受ける中央直線溝部がケース内圧によって破断(開裂)する。かかる中央直線溝部の破断(開裂)が契機となり、続いて該中央直線溝部に繋がる両サイド溝部の破断(開裂)を実現することができる。このとき、本構成の安全弁のサイド溝部は、薄肉部の長軸方向の両端部分にある上記曲線周縁部に沿った部分が曲線状に形成されている(好ましくは曲線周縁部と所定の間隔を保って(さらに好ましくは近接して)平行に曲線状に形成されている。)。このため、当該曲線形成部分が破断され或いは外方に折り曲げられることによって、中央直線溝部の両側のみならず、該中央直線溝部に繋がる両サイド溝部の効率的な開裂を実現し、薄肉部の長軸方向両端部分を効率よく大面積で開口することができる。
【0008】
ここで開示される密閉型電池としての好ましい一態様では、前記破断溝部は、前記中央直線溝部の肉厚が前記サイド溝部の肉厚よりも薄くなるように形成されていることを特徴とする。
かかる構成によると、上述した破断溝部のうちの中央直線溝部がサイド溝部よりも先行して破断(開裂)することが、より容易に実現される。このため、薄肉部の効率よい開放を行うことができる。また、電池製品間で安全弁の開弁圧力がばらつくのを防止することができる。
【0009】
また、ここで開示される密閉型電池としての好ましい他の一態様では、前記サイド溝部は、前記中央直線溝部から離れていくほど連続的又は段階的に肉厚になっていくように形成されている(換言すれば中央直線溝部に近づくほど連続的又は段階的に薄肉に形成されている)ことを特徴とする。
かかる構成によると、中央直線溝部の破断(開裂)に続いてサイド溝部を薄肉部の中心寄りから長軸方向の末端に向けて、順次、破断(開裂)を行うことができる。これにより、スムーズで広い開口面積の開弁を実現することができる。
【0010】
また、ここで開示される密閉型電池の特に好ましい一態様では、前記薄肉部は前記長軸方向の両端側の周縁が曲線周縁部で構成される長円形状若しくは楕円形状に形成されており、ここで前記破断溝部のサイド溝部は、前記長円形状若しくは楕円形状の薄肉部の曲線周縁部に沿って曲線状に形成された曲線溝部と、該曲線溝部の両端と前記中央直線溝部の長軸方向端部とを繋ぐ一対の連結直線溝部とから構成されるループ溝部であることを特徴とする。
かかる構成の薄肉部と破断溝部とを備える安全弁によると、所定レベル以上のケース内圧が生じた際に、中央直線溝部と連結直線溝部の破断によって中央直線溝部に沿う両側(即ち長円形状若しくは楕円形状の薄肉部の長軸方向の中央領域)の薄肉部が外方に開放されるとともに、ループ溝部の破断(開裂)によって、長軸方向の両端領域の薄肉部も効率よく外方に開放される(後述する実施形態参照)。従って、本構成の安全弁を備える密閉型電池によると、所定レベル以上のケース内圧が生じた場合に、広い開口部形成(開放)を実現することができる。
【0011】
かかる態様の密閉型電池として特に好ましいものは、前記破断溝部は、前記中央直線溝部の肉厚が前記ループ溝部の肉厚よりも薄くなるように形成され、且つ、前記ループ溝部における前記連結直線溝部の肉厚が前記曲線溝部の肉厚よりも薄くなるように形成されていることを特徴とする。
かかる構成によると、上述した破断溝部のうちの中央直線溝部がループ溝部よりも先行して破断(開裂)し、さらに当該中央直線溝部の破断(開裂)に続いてループ溝部を薄肉部の中心寄りから長軸方向の末端に向けて、順次、破断(開裂)を行うことができる。これにより、スムーズで広い開口面積の開弁を実現することができる。
【0012】
また、ここで開示される密閉型電池の好ましい別の一態様は、前記中央直線溝部は、前記薄肉部の長軸方向の長さの2分の1以下の長さとなるように前記薄肉部の中央部分に該長軸方向に沿って形成されていることを特徴とする。
このように中央直線溝部の長さを規定することによって、ケース内圧の上昇時に中央直線溝部に加わる応力のレベルを、中央直線溝部の全体に亘ってほぼ均等にすることができる。このため、中央直線溝部に加わる応力の程度が当該溝部の位置毎に偏らないため、所定の内圧レベルで正しく中央直線溝部の破断(開裂)が行われ、電池製品間で安全弁の開弁圧力がばらつくのを防止することができる。また、中央直線溝部の破断(開裂)をスムーズに行うことができる。
【0013】
好ましくは、本発明は、ここで開示される密閉型電池として、リチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン電池)を構成する電池を提供することができる。リチウム二次電池は、電池ケース内部においてガスが発生してケース内圧が上昇し易く、本発明を適用する対象として好適である。
【0014】
ここで開示される密閉型電池は、所定レベルのケース内圧に達した際に効率よく開放され充分な開口面積が確保される構造の安全弁を備えており、特に自動車等の車両に搭載されるモーター(電動機)用電源として好適に使用することができる。従って本発明は、ここで開示されるいずれかの密閉型電池(典型的には当該密閉型電池複数個が相互に電気的に接続された組電池)を電源として備える車両(典型的には自動車、特にハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車のような電動機を備える自動車)を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態に係る密閉型電池を模式的に示す斜視図である。
【図2】一実施形態に係る電極体および電極端子を示す模式的側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る密閉型電池の安全弁の構造を模式的に示す斜視図である。
【図4】図3に示す安全弁の表面形状を示す平面図である。
【図5】図4におけるV−V線断面図である。
【図6】図4におけるVI−VI線断面図である。
【図7】図4におけるVII−VII線断面図である。
【図8】図3に示す安全弁の開弁状態を模式的に示す図である。
【図9】薄肉部の長軸方向中心線のミーゼス応力分布を示すグラフ(a)と補助説明用イラスト(b)である。
【図10】一実施形態に係る安全弁の表面形状を示す平面図である。
【図11】一実施形態に係る安全弁の表面形状を示す平面図である。
【図12】一実施形態に係る安全弁の中央直線溝部とサイド溝部の肉厚の変化態様を示すグラフ(a)と補助説明用イラスト(b)である。
【図13】一実施形態に係る安全弁の中央直線溝部とサイド溝部の肉厚の変化態様を示すグラフ(a)と補助説明用イラスト(b)である。
【図14】本発明の一実施形態に係る密閉型電池を搭載した車両を模式的に示す側面図である。
【図15】従来の安全弁の表面形状を示す平面図である。
【図16】図15に示す安全弁の一般的な開弁状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のいくつかの好適な実施形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば電極体の構築方法や当該電極体を構築するために使用する材料)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
特に限定することを意図したものではないが、以下では捲回タイプの電極体(以下「捲回電極体」という。)と非水電解液とを角形(箱形)のケースに収容した形態の密閉型リチウム二次電池(リチウムイオン電池)を例として説明する。なお、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
【0017】
本実施形態に係るリチウムイオン電池10は、図2に示すような捲回電極体30が、図示しない液状電解質(電解液)とともに、図1に示すような扁平な角形の電池ケース(即ち外装容器)20に収容された構成を有する。
ケース20は、一端(本実施形態に係る電池10の通常の使用状態における上側の端部に相当する。)に開口部を有する箱形(すなわち有底四角筒状)のケース本体21と、その開口部に取り付けられて該開口部を塞ぐ蓋体(ケース構成部品)22とから構成される。蓋体22には、外部接続用の正極端子14および負極端子16が固定されている。それらの電極端子14,16の一端(外側端)はケース(蓋体)の外方に突出しており、他端(内側端)は電極体30の正極32および負極34とそれぞれ電気的に接続されている。
【0018】
ケース20の材質は、従来の密閉型電池で使用されるものと同じであればよく、特に制限はない。軽量で熱伝導性の良い金属材料を主体に構成されたケース20が好ましく、このような金属製材料としてアルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルめっき鋼等が例示される。本実施形態に係るケース20(具体的には本体21および蓋体22)はアルミニウム若しくはアルミニウムを主体とする合金によって構成されている。
蓋体22の外形は全体として概ね長方形板状であり、その長手方向の両端部には電極端子14,16を貫通させる端子引出孔(図示せず)が形成されている。
蓋体22のうち、電極端子14,16の間に位置する部分の幅方向の中央部には、ケース20の内圧が所定値(例えば0.3〜1.0MPa程度)以上に上昇した場合に該内圧を開放するように構成された安全弁40が形成されている。本実施形態に係る安全弁40の構造、機構については後述する。
【0019】
図2に示すように、捲回電極体30は通常のリチウムイオン電池の捲回電極体と同様、長尺シート状の正極(正極シート)32および負極(負極シート)34を計二枚の長尺シート状のセパレータ(セパレータシート)36とともに積層して長手方向に捲回し、次いで得られた捲回体を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって作製される。具体的には、正極シート32と負極シート34とは幅方向に位置をややずらしてセパレータシートの幅方向の一端および他端から該シート32,34の幅方向の一端がそれぞれはみ出すように積層された状態で捲回される。その結果として、捲回電極体30の捲回軸方向の一方および他方の端部には、正極シート32の幅方向の一端が捲回コア部31(すなわち正極シート32と負極シート34とセパレータシートとが密に捲回された部分)から外方にはみ出した部分と、負極シート34の幅方向の一端が捲回コア部31から外方にはみ出した部分とがそれぞれ形成されている。該はみ出し部に電極端子14,16が結合される。
【0020】
かかる捲回電極体30を構成する材料および部材自体は、従来のリチウムイオン電池に備えられる電極体と同様でよく、特に制限はない。例えば正極シート32は、長尺状の正極集電体(例えばアルミニウム箔)の上に正極活物質層が形成された構成であり得る。この正極活物質層の形成に用いる正極活物質としては、従来からリチウムイオン電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定なく使用することができる。好適例として、LiMn、LiCoO、LiNiO等のリチウム遷移金属酸化物が挙げられる。負極シート34は、長尺状の負極集電体(例えば銅箔)の上に負極活物質層が形成された構成であり得る。この負極活物質層の形成に用いる負極活物質としては、従来からリチウムイオン電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定なく使用することができる。好適例として、グラファイトカーボン、アモルファスカーボン等の炭素系材料、リチウム遷移金属酸化物、リチウム遷移金属窒化物等が挙げられる。上記セパレータシートの好適例としては、多孔質ポリオレフィン系樹脂で構成されたものが挙げられる。
【0021】
液状電解質(電解液)としては、従来からリチウムイオン電池に用いられる非水電解液と同様のものを特に限定なく使用することができる。かかる非水電解液は、典型的には、適当な非水溶媒に支持塩を含有させた組成を有する。上記非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等からなる群から選択された一種または二種以上を用いることができる。また、上記支持塩としては、例えば、LiPF,LiBF,LiAsF,LiCFSO,LiCSO,LiN(CFSO,LiC(CFSO等のリチウム塩を用いることができる。本実施形態では、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒(例えば質量比1:1)にLiPFを約1mol/リットルの濃度で含有させた電解液を用いている。なお、電解液の代わりに固体状やゲル状の電解質を採用してもよい。
【0022】
上記のような構成の各部材を備えるリチウムイオン電池10を製造する好適な一態様につき簡単に説明する。
まず、正負の電極端子14,16の外側端を蓋体22から外方に突出させて、該端子14,16を蓋体22に固定する。それらの端子14,16の内側端を、捲回電極体30の正極32および負極34に接続(例えば溶接)することにより、蓋体22と電極体30とを結合する。そして、蓋体22に結合された電極体30をケース本体21の開口部から内部に収めるようにして該開口部に蓋体22を被せ、蓋体22とケース本体21との合わせ目を例えばレーザ溶接により封止する。次いで、図示しない電解液注入孔からケース20内に電解液を注入する。その後、上記電解液注入孔を塞いでケース20を封止する。このようにして密閉型リチウムイオン電池10を製造(構築)することができる。なお、電池の構築自体は本発明を特徴付けるものではないため、これ以上の詳細な説明は省略する。以下、本実施形態(第1の実施形態)に係る安全弁について詳細に説明する。
【0023】
図3は、ケース20の蓋体22に形成された安全弁40の付近を拡大して示す斜視図である。図4は、安全弁40の表面側の形状を示す平面図である。また、図5、図6および図7は、それぞれ、図4中のV−V線、VI−VI線およびVII−VII線断面図である。
これら図面に示されているように、本実施形態に係る安全弁はケース20(ここでは蓋体22)の一部に形成されており、その周囲の部分よりも薄肉に形成された薄肉部42と該薄肉部42の内部に所定のパターンで形成された破断溝部(刻印部)50とを備えている。図示されるように、薄肉部42は、周辺のケースの厚み(蓋体の肉厚は概ね0.5mm〜1mm)よりも薄肉(概ね0.1mm〜0.3mmの肉厚)に形成されている。また、薄肉部42は長軸方向と短軸方向のサイズが異なる横長形状に形成されている。具体的には、周縁部43が長軸方向に沿う一対の直線周縁部44と、その両端の半円状の曲線周縁部45とから構成されるいわゆる長円形状(トラック形状ともいう。)に形成されている。
【0024】
一方、その長円形状薄肉部42に形成されている本実施形態に係る破断溝部50は、薄肉部42の中央部分において該薄肉部42の長軸方向に延びる中央直線溝部60と、該中央直線溝部60の長軸方向の両側に形成され且つ該中央直線溝部60の長軸方向端部60A,60Bにそれぞれ繋がる一対のサイド溝部70とから構成されている。かかる溝部の断面形状は、薄肉部42の外表面に開口するV字形状である。
図示されるように、かかるサイド溝部70は、長円形状薄肉部42の曲線周縁部45に沿って同様の曲率でほぼ平行に形成された曲線溝部74と、該曲線溝部74の両端と中央直線溝部60の端部60A,60Bとを繋ぐ一対の連結直線溝部72とから構成されるイチョウの葉状(扇状)のループ状に形成されている(以下「ループ溝部70」ともいう。)。
また、各断面図から明らかなように、本実施形態に係る破断溝部50は、溝部毎に肉厚が異なるように形成されている。具体的には、中央直線溝部60の肉厚がループ溝部70の肉厚よりも薄くなるように形成され、且つ、当該ループ溝部70においては、連結直線溝部72の肉厚が曲線溝部74の肉厚よりも薄くなるように形成されている。なお、各溝部の実際の肉厚は、電池の形状や用途に応じて開弁させたい圧力設定が異なるために特に限定されないが、例えば、中央直線溝部60の肉厚が概ね30μm〜50μm(例えば45μm)、サイド溝部70の肉厚が概ね50μm〜100μm(例えば55μm)であることが好適である。また、サイド溝部70のうち、連結直線溝部72の肉厚が概ね50μm〜80μm(例えば55μm)であり、曲線溝部74の肉厚が概ね80〜100μm(例えば95μm)であることが好適である。
【0025】
上記のような構造の安全弁40を設けることによって、本実施形態に係る密閉型リチウムイオン電池10は、所定レベル以上のケース内圧が生じた場合に効率よく安全弁が開弁され、速やかにケース20の内部で発生したガスを放出することができる。具体的には、図8に示すように、薄肉部42が中央直線溝部60を挟んでその両側42A,42Bが外方に捲り上がり、且つ、ループ溝部70における連結直線溝部72の破断(開裂)と曲線溝部74の少なくとも一部の破断(開裂)によって、薄肉部42の長軸方向両端部分42C,42Dがそれぞれ独立に外方に捲り上がる。これにより、図示されるように、長円形状の薄肉部42は計4つの部位42A,42B,42C,42Dに分断されて開放され、迅速に電池内部のガスを放出して速やかにケース内圧を減少させるのに充分な開口部Sを形成することができる。
【0026】
<試験例>
このことを実験的に確認するため、本実施形態に係る安全弁を備える密閉型電池に代えて、同形状の安全弁を備えるテストピースを作製し、後述する開弁試験を行った。
即ち、厚さ約1mmのアルミニウム製の密閉可能なケースの一部に、図4に示すような長円形状であって、サイズが長軸方向:約13mm、短軸方向:約5mm、厚さが約100μmの薄肉部42を形成した。また、破断溝部50として図4に示すようなパターンのものを形成した。即ち、薄肉部42の中央部分に長軸方向に長さ約4mmの中央直線溝部60を形成した。また、中央直線溝部60の両端60A,60Bからそれぞれ二つの連結直線溝部72を形成した。連結直線溝部72の間の角度は約90度である。連結直線溝部72の端部と周縁部43との距離は約1mmに設定している。その距離を維持しつつ二つの連結直線溝部72の端部を繋ぐようにして曲線周縁部45に沿って曲線溝部74を形成した。以上の形状の安全弁を備えるテストピースを実施例のテストピースとして複数個作製した。
また、比較例のテストピースとして、サイド溝部において上記曲線溝部を有しないことを除いて実施例のテストピースと同様の形状の安全弁(図4参照)を備えるテストピースを複数個作製した。
【0027】
本試験例においては、予め調べておいたケース内圧と安全弁を構成するアルミ材が破断するときの溝深さとの関係から、テストピース毎に設定開弁圧を変えていき、それに応じてテストピース毎に溝部の深さ(即ち溝部の肉厚)を変化させて上記破断溝部を形成した。なお、本試験例は、薄肉部の開口に及ぼす破断溝部の形状(パターン)に着目したものであるから、中央直線溝部とサイド溝部の肉厚は同じとした。
而して、各テストピースについて、ケース内圧を徐々に高めていき、実際に薄肉部(破断溝部)を開裂させたときの内圧(実際の開弁圧)を測定した。また、開弁したときの開口面積を測定し、設定開口面積(即ち、上述した図8に示すような理想的な開口形状をとったときの開口面積)と比較した。本試験例では、実施例のテストピースについては設定開弁圧を0.3〜0.9MPaとし、比較例のテストピースについては設定開弁圧を0.5〜1.1MPaとした。結果を実施例のテストピースについては表1に示し、比較例のテストピースについては表2に示した。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
表1に示すように、サイド溝部70に曲線溝部74を有する安全弁を備える実施例のテストピースについては、全ての設定開弁圧に対してほぼ同じレベルの実際の開弁圧が測定された。また、開弁後の開口面積も設定開口面積にほぼ等しかった。このことは、本実施例のように、サイド溝部70に曲線溝部74を設けることにより(特に曲線溝部74を有するループ溝部70を形成することにより)、所定レベルのケース内圧(ここでは設定開弁圧)に達した際に効率よく開放されると共に、弁開放時には充分な開口面積が確保され得る安全弁40を構築し得ることが確認された。
【0031】
なお、上記試験例では、薄肉部長軸方向の長さ約13mmに対してその2分の1以下のサイズである約4mmの中央直線溝部を形成している。このように中央直線溝部の長さを規定することによって、ケース内圧の上昇時に中央直線溝部に加わる応力のレベルを、中央直線溝部の全体に亘ってほぼ均等にし、よりスムーズな中央直線溝部の破断(開裂)を実現することができる。
このことを実験的に確かめるために、所定の厚さ(約1mm)のアルミニウム板の一部に、図4に示すような長円形状であってサイズが長軸方向:約13mm、短軸方向:約5mm、厚さが200μmの薄肉部を形成した。また、厚さが300μm以外は同形状の薄肉部を形成した。そして、これら形成した薄肉部について、所定レベルの圧を加えることによって、短軸方向の中心を通る中心線の長軸方向に亘る応力分布(ミーゼス応力)を調べた。結果を図9のグラフに示す。縦軸はミーゼス応力の程度を示し、横軸は、供試薄肉部の長軸方向中心線の相対位置を示す。グラフの下に供試薄肉部の長軸方向中心線の相対位置を示すイラストを添付している。
図9のグラフから明らかなように、薄肉部の長軸方向の中心を含む全長の長さの約2分の1(特に3分の1)までは応力が均一に集中していることが分かる。従って、中央直線溝部の全体にほぼ均一に応力が集中するように、薄肉部の長軸方向の中心を含む全長の長さの約2分の1以下(例えば2分の1〜4分の1程度)、特には3分の1以下(例えば3分の1〜4分の1程度)のサイズで中央直線溝部を形成することが好ましい。このことによって、中央直線溝部の破断開始圧力(開弁圧力値)が個々の電池製品毎にばらつくのを防止することができる。
【0032】
以上、第1の実施形態の安全弁と該安全弁を備える電池について説明したが、上述した形状に限定されず、種々の形状の安全弁が本発明に包含され得る。以下、図面を参照しつつ幾つかの実施形態を図に示す。
例えば第2の実施形態として図10に示すような安全弁140であってもよい。図示されるように、この形態の安全弁140の薄肉部142は、その周縁部143が長軸方向および短軸方向に延びるそれぞれ一対の直線周縁部144A,144Bと曲線状に形成された4つの角部の曲線周縁部145とを有するいわゆる角丸長方形状に形成されている。
一方、その角丸長方形状薄肉部142に形成されている本実施形態に係る破断溝部150は、上述した第1の実施形態と同様、薄肉部142の中央部分において該薄肉部142の長軸方向に延びる中央直線溝部160と、該中央直線溝部160の長軸方向の両側に形成され且つ該中央直線溝部160の長軸方向端部160A,160Bにそれぞれ繋がる一対のサイド溝部170とから構成されている。溝部の断面形状は、上記第1の実施形態と同様である。中央直線溝部160の長さは薄肉部142の長軸方向の長さの2分の1以下(例えば2分の1〜4分の1程度)が好ましい。
図示されるように、サイド溝部170は、角丸長方形状の薄肉部142の四隅に相当する曲線周縁部145に沿って(近接して)、同様の曲率でほぼ平行に形成された曲線溝部174と、該曲線溝部174の一方の端部と中央直線溝部160の端部160A,160Bとを繋ぐ一対の連結直線溝部172とから構成される。なお、本実施形態についてはサイド溝部170はループを構成していない。
【0033】
このようなパターンの破断溝部150を備える安全弁140によっても、第1の実施形態と同様に所定レベルにケース内圧が上昇した際にスムーズに開弁され、また広い開口面積を実現することができる。即ち、薄肉部142が中央直線溝部160を挟んでその両側が外方に捲り上がり、引き続きサイド溝部170の連結直線溝部172ならびに曲線溝部174が破断(開裂)することによって、薄肉部142のほぼ全域に亘る開口が実現される。これにより、迅速に電池内部のガスを放出して速やかにケース内圧を減少させることができる。
なお、本実施形態においても部位毎に肉厚が異なるように溝部が形成されていることが好ましい。具体的には、中央直線溝部160の肉厚がサイド溝部170の肉厚よりも薄くなるように形成され、且つ、当該サイド溝部170においては、連結直線溝部172の肉厚が曲線溝部174の肉厚よりも薄くなるように形成されていることが好ましい。好適なサイズの一例は、上述した第1の実施形態と同様であり重複した記載は省略する。
【0034】
また、第3の実施形態として 図11に示すような安全弁240であってもよい。図示されるように、この形態の安全弁240の薄肉部242は、その周縁部243が長軸方向と短軸方向の長さが異なる楕円形状に形成されている。
一方、本実施形態に係る破断溝部250は、上述した第1の実施形態と同様のパターンで形成されている。即ち、薄肉部242の中央部分において該薄肉部242の長軸方向に延びる中央直線溝部260と、該中央直線溝部260の長軸方向の両側に形成され且つ該中央直線溝部260の長軸方向端部260A,260Bにそれぞれ繋がる一対のサイド溝部270とから構成されている。溝部の断面形状は、上記第1の実施形態と同様である。中央直線溝部260の長さは薄肉部242の長軸方向の長さの2分の1以下(例えば2分の1〜4分の1程度)が好ましい。
図示されるように、サイド溝部270は、楕円形状薄肉部242の周縁部243(即ち全周が曲線周縁部)のうち、長軸方向の両端部分において該部分の曲線周縁部245に沿って(近接して)、同様の曲率でほぼ平行に形成された曲線溝部274と、該曲線溝部274の両端と中央直線溝部260の端部260A,260Bとを繋ぐ一対の連結直線溝部272とから構成されるイチョウの葉状(扇状)のループ状に形成されている。
【0035】
上記のような楕円形状の薄肉部242と上記パターンの破断溝部250とを備える安全弁240によっても、第1の実施形態と同様に所定レベルにケース内圧が上昇した際にスムーズに開弁され、また広い開口面積を実現することができる。即ち、薄肉部242が中央直線溝部260を挟んでその両側が外方に捲り上がり、引き続きループ溝部270の連結直線溝部272ならびに曲線溝部274の一部または全部が破断(開裂)することによって、薄肉部242のほぼ全域に亘る開口が実現される(図8参照)。これにより、迅速に電池内部のガスを放出して速やかにケース内圧を減少させることができる。
なお、図示していないが、長軸方向の両端にある二つのループ溝部270の曲線溝部274を連結させるように、周縁部243に沿って(近接して)ほぼ平行に補助的な連結曲線溝部を一方の曲線溝部274から他方の曲線溝部274まで形成してもよい。そのような補助的な連結曲線溝部を形成することにより、より一層スムーズに中央直線溝部260を挟んでその両側部分の薄肉部242を開放することができる。
また、本実施形態においても部位毎に肉厚が異なるように溝部が形成されていることが好ましい。具体的には、中央直線溝部260の肉厚がループ溝部270の肉厚よりも薄くなるように形成され、且つ、当該ループ溝部270においては、連結直線溝部272の肉厚が曲線溝部274の肉厚よりも薄くなるように形成されていることが好ましい。好適なサイズの一例は、上述した第1の実施形態と同様であり重複した記載は省略する。
【0036】
以上、破断溝部のパターンや薄肉部の形状が異なる幾つかの実施形態を説明したが、本発明は、これらに限られない。
上述した実施形態では、溝部の肉厚の差(即ち溝深さ)が中央直線溝部とサイド溝部(ループ溝部)との間で異なり、さらに好ましくはサイド溝部(ループ溝部)における連結直線溝部と曲線溝部との間でも異なる例を説明したが、このような形態に限られない。
例えば、図12のグラフに示すように、中央直線溝部60の肉厚を一定にしつつサイド溝部70の連結直線溝部72の肉厚を、中央直線溝部60から離れていくほど連続的又は段階的に肉厚になっていくように形成してもよい。このような溝部の肉厚形成を行うことにより、中央直線溝部60の破断(開裂)に続いてサイド溝部70を薄肉部42の中心寄りから長軸方向の末端に向けて、順次段階的に破断(開裂)させていくことが容易となり、スムーズで広い開口面積の開弁を容易に実現することができる。
また、他の実施形態(第4の実施形態)の安全弁340として図13の(b)に示すように、破断溝部350のうちの中央直線溝部360をそのまま直線状に長軸方向の両端側、即ちサイド溝部370の曲線溝部に当接するまで延長してもよい。この場合は、当該延長部分372Aが連結直線溝部として機能し得る。なお、中央直線溝部360が長軸方向両端側に延長している点とを除いては、本実施形態に係る安全弁340は第1の実施形態の安全弁40と同様の構成である。
そして、図12に示したものと同様、中央直線溝部360の肉厚を一定にしつつ当該延長部分(一つの連結直線溝部)372Aの肉厚を他の連結直線溝部372とともに、中央直線溝部360から離れていくほど連続的又は段階的に肉厚になっていくように形成してもよい(図13(a)参照)。
【0037】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、電池の種類は上述したリチウムイオン電池に限られず、電極体構成材料や電解質が異なる種々の内容の電池、例えばリチウム金属やリチウム合金を負極とするリチウム二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池であってもよい。
また、ここで開示される密閉型電池は、ケース内圧が過度に上昇した際に内圧を迅速に低減することができる(換言すればケース内で発生したガスを速やかに放出し得る)ため、特に自動車等の車両に搭載されるモータ(電動機)用電源として好適に使用され得る。従って、図14に模式的に示すように、密閉型電池10(典型的には当該電池10を複数電気的に接続して形成される組電池)を電源として備える車両(典型的には自動車、特にハイブリッド自動車、電気自動車等のような電動機を備える自動車)100を提供する。
【0038】
また、本発明は、上記の説明に拘わらず、本明細書ならびに図面に開示した技術的特徴を任意に組み合わせた密閉型電池を提供する。例えば、溝部の肉厚に関する技術的特徴を主体とする以下の構成の電池もまた本発明により提供される密閉型電池の一例である。
即ち、
(1).正極および負極を構成する電極体と、電解質と、該電極体および電解質を収容する密閉されたケースとを備える密閉型電池であって、
前記ケースの一部には、該ケースの内圧が所定値以上に上昇した場合に開放される安全弁が形成されており、
前記安全弁は、該安全弁の周囲の部分よりも薄肉に形成された薄肉部と、該薄肉部内に所定のパターンで形成された破断溝部とを備えており、
前記薄肉部は、長軸方向と短軸方向のサイズが異なる横長若しくは縦長形状に形成されており、
前記破断溝部は、前記薄肉部の中央部分において該薄肉部の長軸方向に延びる中央直線溝部と、該中央直線溝部の長軸方向の両側に形成され且つ該中央直線溝部の長軸方向端部にそれぞれ繋がる一対のサイド溝部とを有しており、
ここで前記破断溝部は、前記中央直線溝部の肉厚が前記サイド溝部の肉厚よりも薄くなるように形成されていることを特徴とする、密閉型電池。
(2).前記サイド溝部は、前記中央直線溝部から離れていくほど連続的又は段階的に肉厚になっていくように形成されていることを特徴とする、前記(1).に記載の密閉型電池。
(3).前記薄肉部は、長軸方向と短軸方向のサイズが異なり且つ長軸方向の両端又はその近傍の周縁部の少なくとも一部が曲線状に形成された曲線周縁部である横長若しくは縦長形状に形成されており、
前記破断溝部のサイド溝部は、前記曲線周縁部に沿って曲線状に形成された曲線溝部と、該曲線溝部の両端と前記中央直線溝部の長軸方向端部とを繋ぐ一対の連結直線溝部とから構成されており、
ここで前記中央直線溝部の肉厚が前記サイド溝部の肉厚よりも薄くなるように形成され、且つ、前記サイド溝部における前記連結直線溝部の肉厚が前記曲線溝部の肉厚よりも薄くなるように形成されていることを特徴とする、前記(1).または(2).に記載の密閉型電池。
(4).前記中央直線溝部は、前記薄肉部の長軸方向の長さの2分の1以下の長さとなるように前記薄肉部の中央部分に該長軸方向に沿って形成されていることを特徴とする、前記(1).または(2).または(3).に記載の密閉型電池。
(5).リチウム二次電池を構成することを特徴とする、前記(1).または(2).または(3).または(4).に記載の密閉型電池。
(6).前記(1).〜(5).のいずれかの密閉型電池を備える車両。
【符号の説明】
【0039】
20 ケース
2,40,140,240,340 安全弁
10 密閉型電池(リチウムイオン電池)
21 ケース本体
22 蓋体
30 電極体
32 正極
34 負極
3,42,142,242,342 薄肉部
43,142,242,342 周縁部
44,144A,144B,344 直線周縁部
45,145,245,345 曲線周縁部
4,50,150,250,350 破断溝部
60,160,260,360 中央直線溝部
70,170,270,370 サイド溝部
72,172,272,372.372A 連結直線溝部
74,174,274,374 曲線溝部
100 車両
S 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極を構成する電極体と、電解質と、該電極体および電解質を収容する密閉されたケースとを備える密閉型電池であって、
前記ケースの一部には、該ケースの内圧が所定値以上に上昇した場合に開放される安全弁が形成されており、
前記安全弁は、該安全弁の周囲の部分よりも薄肉に形成された薄肉部と、該薄肉部内に所定のパターンで形成された破断溝部とを備えており、
前記薄肉部は、長軸方向と短軸方向のサイズが異なり且つ長軸方向の両端又はその近傍の周縁部の少なくとも一部が曲線状に形成された曲線周縁部である横長若しくは縦長形状に形成されており、
前記破断溝部は、前記薄肉部の中央部分において該薄肉部の長軸方向に延びる中央直線溝部と、該中央直線溝部の長軸方向の両側に形成され且つ該中央直線溝部の長軸方向端部にそれぞれ繋がる一対のサイド溝部とを有し、
ここで前記サイド溝部の少なくとも一部は、前記曲線周縁部に沿って曲線状に形成されていることを特徴とする、密閉型電池。
【請求項2】
前記破断溝部は、前記中央直線溝部の肉厚が前記サイド溝部の肉厚よりも薄くなるように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の密閉型電池。
【請求項3】
前記サイド溝部は、前記中央直線溝部から離れていくほど連続的又は段階的に肉厚になっていくように形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の密閉型電池。
【請求項4】
前記薄肉部は、前記長軸方向の両端側の周縁が曲線周縁部で構成される長円形状若しくは楕円形状に形成されており、
ここで前記破断溝部のサイド溝部は、前記長円形状若しくは楕円形状の薄肉部の曲線周縁部に沿って曲線状に形成された曲線溝部と、該曲線溝部の両端と前記中央直線溝部の長軸方向端部とを繋ぐ一対の連結直線溝部とから構成されるループ溝部であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の密閉型電池。
【請求項5】
前記破断溝部は、前記中央直線溝部の肉厚が前記ループ溝部の肉厚よりも薄くなるように形成され、且つ、前記ループ溝部における前記連結直線溝部の肉厚が前記曲線溝部の肉厚よりも薄くなるように形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の密閉型電池。
【請求項6】
前記中央直線溝部は、前記薄肉部の長軸方向の長さの2分の1以下の長さとなるように前記薄肉部の中央部分に該長軸方向に沿って形成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の密閉型電池。
【請求項7】
リチウム二次電池を構成することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の密閉型電池。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の密閉型電池を備える車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−282850(P2010−282850A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135600(P2009−135600)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(592204886)冨士発條株式会社 (11)
【Fターム(参考)】