説明

密閉式混練機およびそれに用いられている混練ロータ

【課題】
本発明は、発熱による被混練材料の品質低下を抑制し、且つ混練機の本来有する処理能力を減殺することなく、翼数を増加して生産性を向上させることができる密閉式混練機およびそれに用いられる混練ロータを提供する。
【解決手段】
断面まゆ型のチャンバー2内に接線式非かみ合いとなるよう収納される複数の混練ロータ4であって、前記混練ロータ4の翼部には、複数の長翼23、及び短翼24が設けられている。前記長翼23、及び短翼24は各々、複数の異なるチップクリアランスを有し、且つ前記長翼の捩じれ角は軸方向で変化しており、混合効率と分散効率とを両立させている。さらに、チャンバー2と混練ロータ4の内部に冷却媒体用通路12,13をそれぞれ設けて、被混練材料の過剰な昇温を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックやゴムなどの高分子樹脂材料を混練するための密閉式混練機とこれに用いられる混練ロータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
密閉式混練機は、ゴムやプラスチックなどの被混練材料をフローティングウェイトによりチャンバー内に圧入した後、チャンバー内に設けられた一対の混練ロータにより混練し、被混練材料が所望の混練状態になったときに、この被混練材料をチャンバー内からドロップドアを介して外部に排出するという一連の動作により1バッチ分の混練物を製造するようになっている。
【0003】
この種の混練機として、多種の被混練材料に混練ロータの取替えなしで対応できると同時に、本来所有している処理能力を犠牲にせずに、得られる被混練材料の品質を確保できる密閉式混練機(特許文献1参照)や、一つの混練翼が担う被混練材料の混合と分散のバランスを効率よく取れるようにして、混合と分散の双方が両立した適切な混練制御をできるようにした混練機(特許文献2参照)などが知られている。
【0004】
特許文献1に示す混練ロータは、密閉式混練機に使用されるものであるが、その混練ロータは、長翼と短翼からなる翼部が周方向に2以上形成され、その翼部における軸方向及び周方向の翼頂部とチャンバー内壁面との間隙(チップクリアランス)が大・中・小と2以上に変化しているものである。
【0005】
混練ロータの翼部のチップクリアランスを変化させる理由は以下の通りである。すなわち、チップクリアランスの狭い翼は、このチップクリアランスの前進側に存在する被混練材料の大部分を軸方向へ流動させると共に、被混練材料に強い剪断力を付与して分散を促進し、天然ゴムの素練り効果を高めることができる。又、チャンバー内壁面に付着する被混練材料の表層を掻き落とすことにより、冷却構造を有したチャンバー内壁面による冷却効率を高め、強い剪断力により生じる過剰な温度上昇を抑制することができる。
【0006】
一方、チップクリアランスの広い翼は、そのチップクリアランスの前進側に存在する被混練材料の大部分を通過させることで周方向の流動を促進し、被混練材料に均等な剪断作用を加えるよう混合すると共に、その翼での被混練材料に加わる剪断力が低く抑えられることで、混練ロータの翼数が増加しても混練物の過剰な温度上昇を抑制することができる。
【0007】
他方、特許文献2に示す混練ロータは密閉式混練機及び連続式混練機に使用されるものである。その混練ロータでは、その軸心回りで平面状態に展開した場合の、混練翼の始点から終点までの展開形状が実質的に非線形となるように、当該混練翼の捩じれ角がその始点から終点までの間で変化している。これにより被混練材料の軸方向及び周方向の流れを制御し、混合効果及び分散効果をバランスよく両立させることができる。
すなわち、当該混練翼の捩じれ角が大きい始点側部分によって、被混練材料の軸方向の材料流れを発生させて被混練材料の混合効果を高めつつ、捩じれ角が小さい終点側部分において、チップクリアランスでの被混練材料の通過量を確保して、被混練材料の分散効果を高めることができる。
【特許文献1】特公平11−48239号広報
【特許文献2】特願平11−54570号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1,2の構成では、被混練材料のチャンバーへの噛込み速度を上げて生産効率を向上するために翼数を3以上に増加させた場合、剪断による発熱量の増加により被混練材料の温度が上昇して混練物の混練品質が低下することと、ロータのチャンバー内に占める容積が増加するためチャンバーの有効容積が低下して生産効率が低下することと、さらに隣接する混練翼間の距離が短くなると共にロータ表面積が増加することから混練翼表面へ被混練材料が付着して混練品質及び生産効率が低下することと、が発生することになる。
【0009】
一般的に、被混練材料の温度上昇に対しては、被混練材料のチャンバーへの投入量を減らすか、又は、ロータの回転数を下げることにより対応しており、同様に、混練翼表面への被混練材料の付着には被混練材料のチャンバーへの投入量を減らすことで対応している。
【0010】
しかしながら、生産効率の向上と混練品質の維持・向上を両立させるために、混練ロータの回転数を下げ、或いは、被混練材料の投入量を少なくするなど、混練機が本来保有している処理能力を犠牲にすることは、非実用的な対策である。
【0011】
従って、本発明は、発熱による被混練材料の品質低下を抑制し、且つ混練機の本来有する処理能力を減殺することなく、翼数を増加して生産性を向上させることができる密閉式混練機及びそれに用いられる混練ロータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0012】
上記課題を解決するために、第1の発明は、互いに逆方向に回転する一対の混練ロータと、前記一対の混練ロータを非かみ合い状態で収納する断面まゆ型のチャンバーと、前記チャンバー内面を冷却するための冷却構造とを備えた密閉式混練機において、
前記一対の混練ロータの各々が、その混練部の一端側端部を始点とし、回転方向後方へ捩じれるように混練部中央を越えて延在する長翼であって、円周方向に配設された3枚以上の長翼と、
混練部の他端側端部を始点とし、回転方向後方へ捩じれるように混練部中央手前まで延在する短翼であって、円周方向に配設された3枚以上の短翼とを有し、
前記3枚以上の長翼の軸方向に、狭いチップクリアランスとそれより広いチップクリアランスの1以上とを出現させ、
前記3枚以上の長翼の一端側端部における捩じれ角が30°〜65°であると共に、前記3枚以上の長翼は一端側端部から離れるに従って捩じれ角が小さくなる曲線捩じれに形成され、
前記3枚以上の短翼は、少なくとも周方向に狭いチップクリアランスとそれより広いチップクリアランスの1以上とを混在させており、
前記長翼の狭いチップクリアランスと前記短翼の狭いチップクリアランスとは、前記混練ロータを一回転させると、前記混練部の軸方向の全長を少なくとも一回通過するように配設されている特徴としている。
【0013】
(翼数増大による容積減少への対応)
これにより、前記一対の混練ロータを接線式非かみ合い状態でチャンバー内に収納することで、翼数増加に伴うチャンバーの有効容積の減少を最大限防止し、生産効率を向上させる。従来まで用いられてきた、かみ合い式ロータ型の密閉式混練機は、被混練材料に対する冷却能力が高いとされてきたが、その有効容積は接線式非かみ合いロータ型のものに比べて小さく生産性が劣る。本発明では、後述する複合的な対策により冷却能力を向上させることで、接線式非かみ合いロータを採用する場合でも、混練品質を低下させることなく生産効率を向上させることができる。
【0014】
(充填率向上)
前記長翼の軸方向に、狭いチップクリアランスとそれより広いチップクリアランスの1以上とを出現させ、前記短翼は、少なくとも周方向に狭いチップクリアランスとそれより広いチップクリアランスの1以上とを混在させ、且つ前記長翼は一端側端部から離れるに従って捩じれ角が小さくなる曲線捩じれに形成されることで、被混練材料のチャンバー内への噛込み性が向上する。
すなわち、広狭異なるチップクリアランスは大小異なる被混練材料を効率よくチャンバーへ噛込むことができ、又、チャンバー中央部で捩じれ角が小さくなるように混練翼が形成されることで、チャンバー中央部では被混練材料の軸方向への流動促進よりも噛込み性に重点が置かれている。これにより、混練時間は短縮され、チャンバーへの被混練材料の充填率が向上し、生産性が向上する。
【0015】
(滞留防止)
前記混練ロータの翼数増加に伴い、隣合う混練翼間の距離が短縮されることで、被混練材料が混練翼表面に付着しやすくなり、且つ、被混練材料の滞留が発生しやすくなる。そこで、前記長翼の一端側端部における捩じれ角を30°〜65°とすることで、チャンバーの一端側端部を始点とする混練ロータ軸方向の被混練材料の流れが促進され、これにより被混練材料の混練翼表面への付着や、混練翼間における滞留が抑制される。
【0016】
(混練品質の向上)
前記長翼の一端側端部における捩じれ角を30°〜65°とすることで、チャンバーの一端側端部を始点とする、混練ロータ軸方向の被混練材料の流れを促進し混合効率を向上させ、
一方、チャンバー中央部では、前記長翼の捩じれ角をその始点側捩じれ角と比べて小さくすることにより、被混練材料の軸方向の流動性よりも分散能力に重点を置くことで、分散効率を向上させた。
又、前記長翼の軸方向に、狭いチップクリアランスとそれより広いチップクリアランスの1以上とを出現させ、さらに前記短翼は、少なくとも周方向に狭いチップクリアランスとそれより広いチップクリアランスの1以上とを混在させることで、被混練材料の周方向への流れを促進し混合効率を向上させ、
一方、前記長翼の狭いチップクリアランスと前期短翼の狭いチップクリアランスとが、前記混練ロータを一回転させると、前記混練部の軸方向の全長を少なくとも一回通過するようにしたことにより、分散効率を向上させた。
又、各混練翼に多様なチップクリアランスと多様な捩じれ角とを付与することにより、多種多様な特性の被混練材料に対応でき、且つ、バランスよく混合し、分散できるようにした。
【0017】
(冷却効率向上)
翼数を増加させたことに伴い、混練翼とチャンバー内壁面との間で剪断による発熱が全体として増加するが、被混練材料の過剰な昇温は混練品質を劣化させるため、それを抑制する必要がある。
そこで、前記混練ロータを一回転させると、前記長翼の狭いチップクリアランスと前期短翼の狭いチップクリアランスとが、前記混練部の軸方向の全長を少なくとも一回通過するようにした。これにより、冷却媒体用通路を有するチャンバー内壁面に付着した被混練材料をまんべんなく掻き落とすことができ、チャンバーの被混練材料に対する冷却効率を向上させた。
又、前記長翼および前記短翼に広いチップクリアランスを含有させたことで、被混練材料の過剰な発熱を抑制させた。
さらに、前記長翼の一端側端部における捩じれ角を大きくすることで流動性を向上させ、それにより被混練材料の混練翼表面に対する付着や滞留を抑制し、冷却効率を向上させた。
【0018】
以上の相乗作用により、発熱による被混練材料の品質低下を抑制し、且つ混練機の本来有する処理能力を減殺することなく、翼数を増加して生産性を向上させることができる。
【0019】
第2の発明は、第1発明記載の密閉式混練機であって、前記長翼の一端側端部から離れる先端の捩じれ角が10°〜55°であり、前記短翼の他端側端部における捩じれ角が、20°〜45°であると共に、前記長翼の一端側端部の捩じれ角より小さく形成されていることを特徴としている。
【0020】
これにより、前記長翼の一端側端部から離れる先端の捩じれ角を10°〜55°とすることで、被混練材料の噛込み性を損なうことがなく、又、被混練材料が混練ロータ軸方向へ流れることで発生する過大な圧力が抑制されるため、他端側端部における軸封シール部への被混練材料の流入を抑制することができ、さらに前記短翼の他端側端部における捩じれ角が20°〜45°であると共に前記長翼の一端側端部の捩じれ角より小さく形成されていることで、前記短翼においても被混練材料の他端側から一端側への流動性を促進して被混練材料の滞留を抑制すると共に、前記長翼と前記短翼との間における被混練材料の流動性を確保している。これにより、被混練材料の噛込み性と流動性を確保することで、生産効率と混練品質を向上することができる。
【0021】
第3の発明は、第1発明又は第2発明記載の密閉式混練機であって、前記狭いチップクリアランスの、チャンバー内径に対する比率は、0.005〜0.025であり、前記広いチップクリアランスの前記比率は、0.01〜0.05、0.02〜0.1、0.025〜0.15のいずれから選ばれた1以上であることを特徴としている。
これにより、大小異なるチップクリアランスが当該混練部の軸方向の全長に出現することで、確実に被混練材料に剪断力が作用して被混練材料を分散させると共に、被混練材料を混合させることができる。これにより、各種の被混練材料を常に所望の混練状態の混練物とすることができ、混練品質を向上することができる。
【0022】
第4の発明は、第3発明記載の密閉式混練機であって、前記長翼は4枚又は5枚であり、各長翼の軸方向に、チャンバー内径に対する比率が0.005〜0.025、0.01〜0.05、0.02〜0.1、0.025〜0.15であるチップクリアランスを含み、
前記短翼は4枚又は5枚であり、その周方向の各短翼は、前期比率が0.005〜0.025、0.01〜0.05、0.02〜0.1、0.025〜0.15であるチップクリアランスを含むことを特徴としている。
前記長翼及び前記短翼を4枚又は5枚とすることで被混練材料の分散性と混合性が向上し、混練品質が向上する。又、被混練材料によってはバッチ重量が増加し、或いは、混練時間が短縮されることにより、生産効率が向上する。さらに、翼数増加に伴うロータ表面積の増加により、冷却能力が向上する。
【0023】
第5の発明は、第4発明記載の密閉式混練機であって、前記長翼と前記短翼とは同じ枚数であり、
前記長翼の各々はその枚数と一致する数のチップクリアランスを出現させ、
前記長翼はその周方向の各翼にも、前記軸方向のチップクリアランスと対応させて異なるチップクリアランスを出現させ、
前記短翼はその周方向の各翼に、その枚数と一致する異なるチップクリアランスを出現させることを特徴としている。
これにより、軸方向および周方向に異なる複数のチップクリアランスを混練ロータにバランスよく配置することができる。又、前記長翼は一端側端部から離れるに従って捩じれ角が小さくなる曲線捩じれに形成されており、同一チップクリアランスでも異なる捩じれ角となる混練翼部分が多数出現する。従って、高い生産性と混練品質を維持しながら、幅広い混練条件に対応することができる。
【0024】
第6の発明は、第4発明又は第5発明記載の密閉式混練機であって、前記混練ロータは、内部に冷却媒体を通す通路を有していることを特徴としている。
これにより、混練翼が4枚以上の場合において、被混練材料の混練に伴う過剰な温度上昇を抑制することができる。
【0025】
第7の発明は、第6発明記載の密閉式混練機であって、前記冷却媒体用通路の断面は前記混練ロータ断面に類似する形状に形成されていることを特徴としている。
これにより、前記冷却媒体用通路から混練ロータ表面までの距離の差、すなわちロータ肉厚の差を小さくすることで、被混練材料をロータ表面で均一に冷却することができる。
【0026】
第8の発明は、チャンバー内部との間でチップクリアランスを形成する翼を混練部に備えた混練ロータであって、
前記翼は、混練部の一端側端部を始点とし、回転方向後方へ捩じれるように混練部中央を越えて延在する長翼であって、円周方向に配設された3枚以上の長翼と、
混練部の他端側端部を始点とし、回転方向後方へ捩じれるように混練部中央手前まで延在する短翼であって、円周方向に配設された3枚以上の短翼とからなり、
前記3枚以上の長翼の各々の軸方向および前記3枚以上の長翼の周方向毎に、狭いチップクリアランスとそれより広いチップクリアランスの1以上とを出現させ、
前記3枚以上の長翼は一端側端部から離れるに従って捩じれ角が小さくなる曲線捩じれに形成され、
前記3枚以上の短翼は、少なくとも周方向に狭いチップクリアランスとそれより広いチップクリアランスの1以上とを混在させていることを特徴としている。
【0027】
(充填率と生産性)
前記長翼の軸方向に、狭いチップクリアランスとそれより広いチップクリアランスの1以上とを出現させ、前記短翼は、少なくとも周方向に狭いチップクリアランスとそれより広いチップクリアランスの1以上とを混在させ、且つ前記長翼は一端側端部から離れるに従って捩じれ角が小さくなる曲線捩じれに形成されることで、被混練材料のチャンバーへの噛込み性が向上する。すなわち、広狭異なるチップクリアランスは大小異なる被混練材料を効率よく噛込むことができ、又、混練ロータ中央部では捩じれ角が小さくなるように混練翼が形成されることで、混練ロータ中央部では被混練材料の軸方向への流動促進よりも噛込み性に重点が置かれている。
【0028】
(滞留防止と流動促進)
前記混練ロータの翼数増加に伴い、隣合う混練翼間の距離が短縮されることで、被混練材料が混練翼表面に付着しやすくなり、又は被混練材料の滞留が発生しやすくなる。そこで、前記長翼の一端側端部における捩じれ角を30°〜65°とすることで、混練部の一端側端部を始点とする混練ロータ軸方向の被混練材料の流れを促進させ、これにより、被混練材料の混練翼表面への付着や、混練翼間における滞留を抑制させる。
【0029】
(混練品質の向上)
前記長翼の一端側端部における捩じれ角を30°〜65°とすることで、混練部の一端側端部を始点とする混練ロータ軸方向の被混練材料の流れを促進し混合効率が向上し、
一方、チャンバー中央部では、前記長翼の捩じれ角をその始点側捩じれ角と比べて小さくして、被混練材料の混練ロータ軸方向の流動性よりも分散能力に重点を置くことにより、分散効率が向上する。
又、前記長翼の軸方向に、狭いチップクリアランスとそれより広いチップクリアランスの1以上とを出現させ、さらに前記短翼は、少なくとも周方向に狭いチップクリアランスとそれより広いチップクリアランスの1以上とを混在させることで、被混練材料の周方向への流れを促進し混合効率が向上し、
一方、前記長翼の狭いチップクリアランスと前期短翼の狭いチップクリアランスとが、前記混練ロータを一回転させると、前記混練部の軸方向の全長を少なくとも一回通過することにより、分散効率が向上する。
又、各混練翼に多様なチップクリアランスと多様な捩じれ角とを付与することにより、多種多様な特性の被混練材料に対応でき、且つバランスよく混合し、分散できる。
【0030】
第9の発明は、第8発明記載の混練ロータであって、前記長翼の狭いチップクリアランスと前期短翼の狭いチップクリアランスとは、ロータを一回転させると、前記混練部の軸方向の全長を少なくとも一回通過するように配設されていることを特徴としている。
これにより、冷却媒体用通路を有するチャンバー内壁面への被混練材料の付着を抑制することで、チャンバーの被混練材料に対する冷却効率を向上させることができる。
【0031】
第10の発明は、第9発明記載の混練ロータであって、前記狭いチップクリアランスは、チップクリアランスのチャンバー内径に対する比率で0.005〜0.025であり、前記広いチップクリアランスは、前記比率が0.01〜0.05、0.02〜0.1、0.025〜0.15のいずれから選ばれた1以上であることを特徴としている。
これにより、被混練材料の過剰な発熱を抑制し、さらに前記長翼および前記短翼の備える複数のチップクリアランスによりバランスよく被混練材料を混合し分散することができる。
【0032】
第11の発明は、第10発明記載の混練ロータであって、前記短翼は4枚又は5枚であり、その周方向の各翼で、チャンバー内径に対する比率が0.005〜0.025、0.01〜0.05、0.02〜0.1、0.025〜0.15であるチップクリアランスを含むことを特徴としている。
混練翼数を増加したことにより、被混練材料の分散性と混合性が向上し、混練品質が向上する。又、被混練材料によってはバッチ重量が増加し、或いは、混練時間が短縮されることにより、生産効率が向上する。又、大小異なるチップクリアランスがロータ混練部の軸方向の全長に出現することで、被混練材料の種類が変わっても確実に被混練材料に剪断力が作用して被混練材料を分散させることができる。これにより、各種の被混練材料を常に所望の混練状態の混練物とすることができ、混練品質を向上させることができる。
【0033】
第12の発明は、第10又は11発明記載の混練ロータであって、内部に冷却媒体を通す通路を有していることを特徴としている。
これにより、被混練材料の混練に伴う過剰な温度上昇を抑制することができる。
【0034】
第13の発明は、第12発明記載の混練ロータであって、前記冷却媒体用通路の断面は前記混練ロータ断面に類似する形状に形成されていることを特徴としている。
これにより、前記冷却媒体用通路から混練ロータ表面までの距離の差、すなわちロータ肉厚の差を小さくすることで、被混練材料をロータ表面で均一に冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明を実施するための最良の形態を図1ないし図6に基づいて以下に説明する。このうち、図3は本発明の混練ロータを採用した密閉式混練機の一例として接線式非かみ合いロータ型の密閉式混練機を示しており、この密閉式混練機1は、断面まゆ型で且つ冷却媒体用通路12を備えたチャンバー2を有するケース3と、チャンバー2内に非かみ合い状態で、且つ回転自在に挿通された左右一対の第1及び第2混練ロータ4a,4bと、チャンバー2の上方開口部に立設されたホッパー5付きの材料供給筒6と、この供給筒6内に上下動自在に挿通されたフローティングウェイト7と、を備えている。
【0036】
材料供給筒6の上部には空圧シリンダ8が連結されていて、この空圧シリンダ8内のピストン9は空圧シリンダ8の下蓋を気密に貫通するピストンロッド10を介してフローティングウェイト7に連結されている。このため、空圧シリンダ8の上部を加圧してフローティングウェイト7を下降させることによりホッパー5から供給された材料供給筒6内の被混練材料をチャンバー2に押し込めるようになっている。
チャンバー2の底部に設けた排出口は上下動自在なドロップドア11によって閉塞されており、このドロップドア11を開放することにより、チャンバー2内において所定時間だけ混練された被混練材料を機外に排出することができる。
【0037】
上記チャンバー2は、図3に示すように混練ロータ4を取り囲むように断面まゆ型をしており、各混練ロータ4a,4bの回転領域は互いに干渉せず、その円周線の対向する点での接線が近接する(以下、接線式非かみ合いという)ようになっていて、チャンバー2の有効容積を大きく確保している。又、チャンバー2は、その周囲に沿って軸方向交互(ジグザグ)に配設された冷却媒体用通路12を有する冷却構造を備えており、混練時の過剰な昇温を抑制し、被混練材料の混練品質の劣化を防止している。各混練ロータ4a,4bの両軸方向には、図1に示すようにエンドプレート20が軸に対して垂直に嵌設されており、各混練ロータ4a,4bの支持部22を回転自在に支持している。
【0038】
上記各混練ロータ4a,4bは、図1に示すように、軸方向中央部に混練部21を、又、その両端に支持部22を有し、混練部21に後述するような長翼23及び短翼24を有した同一形状に形成されている。
前記各混練ロータ4a,4bは、軸心同士が平行で、且つ接線式非かみ合いをなし、さらに互いに逆向きに配設され、各支持部22は前記チャンバー2に嵌設されたエンドプレート20に回転自在に挿通されており、図示しない駆動機構により相対向内側部分が下方に移動するように互いに異なる方向に回転駆動されるようになっている。
前記各混練ロータ4a,4b内部には、図5にその断面を示すように、冷却媒体用通路13が設けられており、混練翼増加に伴う被混練材料の昇温を抑制している。前記冷却媒体用通路13の断面は、図5に示すようにいずれも混練翼表面と略相似しており、前記冷却媒体用通路13の中央に設けられたパイプから配給された冷却媒体は、前期冷却媒体用通路13に沿って混練ロータ軸方向に流れるようになっている。これにより、混練翼表面を介して冷却媒体は被混練材料を均一に冷却できるようになっている。
【0039】
混練部21には、被混練材料に剪断力を付与して分散させるために、チャンバー2の内壁面との間にチップクリアランスを形成するような長翼23及び短翼24が各4枚、混練ロータ軸方向に延設されている。
前記長翼23及び前期短翼24は、図2に示すように、チャンバー2内で被混練材料に流動40,41を発生させ被混練材料の混合を促進するために、軸方向で互いに分断されかつ周方向にずれた位置に突設されていると共に、その捩じれ方向は互いに逆向きになっている。すなわち、前記長翼23は、混練部21の一端側端部を始点とし、回転方向後方へ捩じれるように混練部21の中央を越えて延在し、一方短翼24は、混練部21の他端側端部を始点とし、回転方向後方へ捩じれるように混練部21の中央手前まで延在している。
ただし、被混練材料の流動性を促進するために、前記長翼23の他端側終端と前記短翼24の一端側終端とは、周方向に45°ずつずれて交互に出現するように、前記長翼23と前記短翼24は配設されている。
又、長翼23は短翼24と比較して軸方向の長さが4倍となっており、図4に示すように、長翼23は軸方向に4等分割されている。
【0040】
上記の長翼23は、図2に示すように、翼頂部のチップが高いチップ部23Sと、やや高いチップ部23Mと、やや低いチップ部23Lと、低いチップ部23LLと、に区分され、軸方向に4種類の高さのチップ部が出現する。さらに各長翼の周方向にも4種類の高さのチップ部が交互に出現するようになっている。そして、各チップ部23S,23M,23L,23LLは、チャンバー2との内壁面の間隙であるチップクリアランスが小チップクリアランス→中チップクリアランス→大チップクリアランス→特大チップクリアランスとこの順に大きくなるようにそれぞれ設定されている。
【表1】

【0041】
すわなち、高いチップ部23Sは、もっとも小さなチップクリアランスとなるようにチャンバー2の内壁面に近接されており、混練ロータ4が回転したときに、大きな剪断力を被混練材料に付与して分散効率を向上させると共に、チャンバー2の内壁面に付着した被混練材料の表層を掻き落としてチャンバー2の被混練材料に対する冷却効率を向上させるようになっている。さらに、この高いチップ部23Sは、前進側に位置する被混練材料の大部分を軸方向に流動させることにより軸方向の流動を促進させるようになっている。
【0042】
一方、低いチップ部23LLは、最も大きなチップクリアランスとなるようにチャンバー2の内壁面から十分に離隔されており、各混練ロータ4a,4bが回転したときにチップクリアランスにおける被混練材料の通過量を増加させ、周方向への流動を促進させることで混合効率を向上させると共に、局部的な大きな剪断力の付与を防止して被混練材料の過剰な昇温を抑制するようになっている。又、やや低いチップ部23Lとやや高いチップ部23Mは、低いチップ部23LLと高いチップ部23Sとの中間のチップクリアランスとなるように設定されており、低いチップ部23LLと高いチップ部23Sの被混練材料に対する剪断および流動を調整するようになっている。
【0043】
又、長翼23の他端側に配置された短翼24は、図2に示すように、高いチップ24Sとやや高いチップ24Mとやや低いチップ24Lと低いチップ24LLとを有するように形成されている。そして、高いチップ24Sは、上述の長翼23の高いチップ部23Sと同様に、最も小さなチップクリアランスとなるようにチャンバー2の内壁面に近接されており、混練物に対する大きな剪断力の付与と、チャンバー2の内壁面に付着した被混練材料の掻き落としと、混練ロータ軸方向への被混練材料の流動を促進することと、を目的としている。
又、低いチップ部24LLは、上述の長翼23の低いチップ部23LLと同様に、最も大きなチップクリアランスとなるようにチャンバー2の内壁面から十分に離隔されており、チップクリアランスにおける被混練材料の通過量の増加と、周方向への流動を促進させることにより、混合効率を向上させると共に、局部的な大きな剪断力の付与を防止して被混練材料の過剰な昇温を抑制するようになっている。
又、やや低いチップ部24Lとやや高いチップ部24Mは、上述の長翼23のチップ部23Mや23Lと同様に、低いチップ部24LLと高いチップ部24Sとの中間のチップクリアランスとなるように設定されており、低いチップ部24LLと高いチップ部24Sの被混練材料に対する剪断および流動を調整するようになっている。
【0044】
さらに、上記長翼23は、図2にその展開図を示すように、捩じれ角が混練ロータ一端側端部の始点Pから混練ロータ中央部側の終点Qに向かうに従って次第に小さくなるように連続的に変化させることにより、その始点Pから終点Qまでの展開形状が非線形な曲線捩じれとなるように形成されている。すなわち、図2に示すように、長翼23の始点側部分42は、その始点Pと終点Qとを結んだ場合の仮想直線Aの傾斜角度よりも大きくなっており、又、長翼23の終点側部分43は、前記仮想直線Aの傾斜角度よりも小さくなっている。
【0045】
このため、長翼23の始点側部分42においては、前記仮想直線Aに相当する展開形状を有する翼の場合に比べて捩じれ角が大きくなっているので、その翼の場合よりも大きい材料流れ40をこの部分42で発生させることができ、従って、被混練材料の混合効率はより高められる。他方、長翼23の終点側部分43においては、前記仮想直線Aに相当する展開形状を有する翼の場合に比べて捩じれ角度が小さくなっているので、その翼の場合よりも大きい材料通過量がこの終点側部分43のチップクリアランスにおいて確保され、被混練材料の分散効率が高められることになる。
【0046】
従って、曲線捻じりに形成された長翼23を有する混練ロータ4によれば、図2に示すような、始点Pと終点Qとを最短距離で結んだ仮想直線Aに相当する展開形状を有する翼の場合に比べて被混練材料の混合性能および分散性能を双方とも向上させることができ、被混練材料に対する混合と分散の双方が両立した適切な混練制御を行えるようになる。又、上記混練ロータ4によれば、ロータ軸方向端側における長翼23の始点側部分42の捩じれ角が従来より大きくなっているので、チャンバー2のロータ軸方向端側に対する被混練材料の圧力が緩和され、チャンバー2と混練ロータ4との間の軸受け部分のシール性能を向上できるという付加的効果もある。さらに、上記混練ロータ4によれば、混練ロータのロータ軸方向中央部分における捩じれ角が従来より小さくなっていることにより、例えばゴムのような塊状の被混練材料をチャンバー2に取り込む際に、その被混練材料のチャンバー2への噛込み性も改善される。このため、被混練材料の取り込み時間が短くなり、生産性を向上できるという付加的効果もある。
【0047】
上記の構成において、密閉式混練機1の動作について説明する。まず、図3に示すように、ケース3にドロップドア11を密接させた状態でフローティングウェイト7をケース3から離隔させることによって、チャンバー2の上面を開口する。そして、この開口からゴムやプラスチック、充填剤などの被混練材料をチャンバー2内に装填した後、フローティングウェイト7をケース3に密着させてチャンバー2へ圧入する。又、この圧入に前後して、図3や図5に示すように、ケース3及び混練ロータ4内部に設けられた冷却媒体用通路12及び13に冷却水などの冷却媒体を流通させ、チャンバー2内の被混練材料を冷却する。又、チャンバー2内に収納される一対の混練ロータ4a,4bを接線式非かみ合い型とすることで、翼数増加に伴う有効容積の減少を抑制し、高い生産性を確保している。
【0048】
次に、各被混練材料を混合及び分散しながら所望の混練状態の混練物となるように、各混練ロータ4a,4bを互いに逆方向に回転させることにより混練を開始する。各混練ロータ4a,4bが回転すると、長翼23の高いチップ部23S及び短翼24の高いチップ部24Sが小さなチップクリアランスに設定されているため、例えばブロック状のゴムが被混練材料として連通部2cに装填されていても、前述したようにこれらの被混練材料が噛込み力により左右の第1及び第2混練室2a・2bに移動する。従って、被混練材料の形状やサイズが多種多様であっても、常に混練の開始から短時間のうちにチャンバー2内の全空間に被混練材料を流動させることができる。
【0049】
上記のようにして被混練材料がチャンバー2内に混合及び分散されながら混練されると、長翼23の異なる捩じれ角を有する各チップ部23S,23M,23L,23LL、及び短翼24の各チップ部24S・24M・24L・24LLがそれぞれ下記のように被混練材料に対して作用する。
すなわち、図6において、ハッチング部は混練翼の各チップ部の翼頂のランド部を示し、ベクトルは被混練材料の流量と方向を示し、白抜き矢印は第1及び第2混練室2a,2bを連通する連通部2cにおける被混練材料の流れの流量と方向とを模式的に示す展開図である。
【0050】
(狭いチップクリアランス)
長翼23の高いチップ部23S及び短翼24の高いチップ部24Sは、もっとも小さなチップクリアランスとなるようにチャンバー2の内壁面に近接されており、混練ロータ4が回転したときに、それらが混練部21の軸方向の全長に出現することで、まんべんなく大きな剪断力を付与して被混練材料を分散させる。又、前記高いチップ部23S,24Sは、チャンバー2の内壁面に付着した被混練材料の表層を掻き落とすことにより、冷却媒体用通路12を有するチャンバー2の被混練材料に対する冷却効率を向上させるようになっている。さらに、この高いチップ部23S,24Sは、前進側に位置する被混練材料の大部分を軸方向に隣接した異なるチップ部へ流動させることにより軸方向の流動を促進させるようになっている。
さらに、長翼23の高いチップ部23S及び短翼24の高いチップ部24Sは連通部2cを移動するとき、被混練材料を一方の第1又は第2混練室2a,2bから他方の第2又は第1混練室2b,2aに大きな押圧力で押し出すため、第1及び第2混練室2a,2b間における被混練材料の流動も促進することになる。
【0051】
(広いチップクリアランス)
一方、長翼23の低いチップ部23LL及び短翼24の低いチップ部24LLは、最も大きなチップクリアランスとなるようにチャンバー2の内壁面から十分に離隔されており、混練ロータ4が回転したときにチップクリアランスにおける被混練材料の通過量を増加させ、周方向への流動を促進させることで混合効率を向上させる。さらに、局部的な大きな剪断力の付与を抑制して全体として被混練材料の過剰な昇温を抑制するようになっている。
また、チップクリアランスが広いので、低温度な固い材料、或いは粒状の大きな材料も容易に該チップクリアランスを通過することができ、従って被混練材料であるゴム、或いはプラスチックの可塑化、或いは溶融を促進する。
さらに、長翼23の低いチップ部23LL及び短翼24の低いチップ部24LLは、被混練材料を押し出す押圧力が小さなものであるため、連通部2cを移動する際の他方側の第1及び第2混練室2a,2bへの流動を抑制する。従って、同一混練室内における混練物の流動のみを促進することになっている。
【0052】
(中間チップクリアランス)
又、長翼23のやや低いチップ部23Lとやや高いチップ部23M及び短翼24のやや低いチップ部24Lとやや高いチップ部24Mは、長翼及び短翼の低いチップ部23LL,24LLと高いチップ部23S,24Sとの中間のチップクリアランスとなるように設定されており、長翼及び短翼の低いチップ部23LL,24LLと高いチップ部23S,24Sの被混練材料に対する分散および混合を調整するようになっている。
【0053】
(翼の捩じれ)
さらに、上記長翼23は、図2にその展開図を示すように、捩じれ角が混練ロータ一端側端部の始点Pから混練ロータ他端側端部の終点Qに向かうに従って次第に小さくなるように連続的に変化させることにより、その始点Pから終点Qまでの展開形状が非線形な曲線捩じれとなるように形成されている。すなわち、図2に示すように、長翼23始点側部分42は、その始点Pと終点Qとを結んだ場合の仮想直線Aの傾斜角度よりも大きくなっており、又、長翼23の終点側部分43は、その始点Pと終点Qとを結んだ場合の仮想直線Aの傾斜角度よりも小さくなっている。
このため、図6に被混練材料の流量と方向を示すように、長翼23の始点側部分42においては、仮想直線Aに相当する展開形状を有する翼の場合に比べて捩じれ角が大きくなっていることにより、その翼の場合に比べてロータ軸方向への流動がより促進されている。これにより、被混練材料の混合効率が向上されると共に、被混練材料の混練翼表面への付着や滞留が抑制される。さらには、図5に示すように、混練ロータ4内に設けられた冷却媒体用通路13による冷却効率を向上させる。
【0054】
(翼の捩じれ)
他方、長翼23の終点側部分43においては、仮想直線Aに相当する展開形状を有する翼の場合に比べて捩じれ角度が小さくなっている。これにより、材料のロータ軸方向への流動促進よりも、被混練材料のチャンバー2内への噛込み性や、被混練材料の分散効率に重点が置かれている。又、被混練材料が混練ロータ軸方向へ流れることで発生する過大な圧力が緩和されるため、他端側端部における軸封シール部への被混練材料の流入を抑制することができる。
【0055】
以上のように、接線式非かみ合いとするチャンバー2内において、広狭異なるチップクリアランスと異なる捩じれ角を有する混練翼を用いることにより、下記のような効果が得られる。
すなわち、翼数増加に伴うチャンバー2の有効容積の減少を防止し、又、大小異なる被混練材料を効率よくチャンバー2へ噛込むことができる。又、多方向への幅広い流動性が生じることで、混練翼への被混練材料の付着や滞留も出現せずに、より高い混合効率と冷却効率が実現される。さらには、被混練材料の過剰な昇温を抑制しつつ、効率的な分散が促進される。
以上の相乗作用により、発熱による被混練材料の品質低下を抑制し、且つ混練機の本来有する処理能力を減殺することなく、翼数を増加して生産性を向上させることができる。
【0056】
以上のように、チャンバー2内で所定時間だけ混練が行われ、所望の混練状態の混練物が得られたら、ドロップドア11が開放されることにより、前記混練物は機外に排出される。
【0057】
尚、本実施形態においては、2本の混練ロータが、チャンバー内において接線式非かみ合い状態で収納されるように、密閉式混練機に適用されているが、本発明にかかる混練ロータはこれに限定されるものではなく、例えば、チャンバー内において混練翼の翼頂が一部かみ合う状態、すなわち部分かみ合い状態で収納されるように、前記2本の混練ロータが密閉式混練機に適用されていても良い。ただし、チャンバー内において完全にかみ合う状態で前記2本の混練ロータを収納する密閉式混練機は対象としない。
又、本実施形態においては、周方向に4か所に等分配設された各4枚の長翼と短翼とを出現させているが、それぞれ3枚以上が周方向に出現するものであれば、長翼23及び短翼24の配置や数量、翼部分の軸方向長さ、などを任意に選択することができる。
【0058】
又、本実施形態では、短翼の捩じれ角を一定としているが、短翼についてもその始点側から終点側へ向かって捩じれ角を変化させても良い。これにより、短翼の始点側で軸方向の流動が促進されることで、混合効率が向上され滞留が抑制されると共に、軸封部に加わる被混練材料の圧力を軽減させることができる。
【0059】
又、長翼にはその翼数と同数の異なるチップクリアランスを軸方向へ出現させ、さらに前記長翼の周方向の各翼にも、前記軸方向のチップクリアランスと対応させて異なるチップクリアランスを出現させている。さらに、前記短翼は、その周方向にその枚数と一致する数の異なるチップクリアランスを出現させている。
しかし、前記長翼の軸方向に、狭いチップクリアランスとそれより広いチップクリアランスの1以上とを出現させ、前記短翼は、少なくとも周方向に狭いチップクリアランスとそれより広いチップクリアランスの1以上とを混在させ、前記長翼の狭いチップクリアランスと前記短翼の狭いチップクリアランスとは、混練ロータを一回転させると、混練部の軸方向の全長を少なくとも一回は通過するように配設されていれば、チップクリアランスの数、配置などは任意に選択することができる。
【0060】
又、本実施形態では、チャンバー内の被混練材料を冷却するために、ケースや混練ロータに設けられた冷却媒体用通路に冷却媒体を流通させているが、被混練材料の構成や種類によっては、被混練材料を加熱させるために、前期冷却媒体用通路に熱水や蒸気などの熱媒体を流動させても良い。
【0061】
尚、図1及び図5に示すように、本実施形態における上記ロータは翼部全体を複数に等分分割して構成する、所謂分割セグメント方式を作用しているが、各分割セグメントの幅は均等でも不均等でも良く、或いは上記ロータを一体鋳造或いは削り出しにて製作することができ、本願発明の技術的思考を逸脱しない範囲において自由に設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】密閉式混練機のチャンバー2における混練ロータの上面図である。
【図2】混練ロータの展開図である。
【図3】密閉式混練機の全体図である。
【図4】混練ロータの正面図である。
【図5】混練ロータの断面図である。
【図6】被混練材料の流動状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1 密閉式混練機
2 チャンバー
2a 第1混練室
2b 第2混練室
2c 連通部
3 ケース
4 混練ロータ
4a 第1混練ロータ
4b 第2混練ロータ
5 ホッパー
6 材料供給筒
7 フローティングウェイト
8 空圧シリンダ
9 ピストン
10 ピストンロッド
11 ドロップドア
12 冷却媒体用通路
13 冷却媒体用通路
20 エンドプレート
21 混練部
22 支持部
23 長翼
23S 高いチップ部
23M やや高いチップ部
23L やや低いチップ部
23LL 低いチップ部
24 短翼
24S 高いチップ部
24M やや高いチップ部
24L やや低いチップ部
24LL 低いチップ部
S 高いチップ部
M やや高いチップ部
L やや低いチップ部
LL 低いチップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに逆方向に回転する一対の混練ロータと、前記一対の混練ロータを非かみ合い状態で収納する断面まゆ型のチャンバーと、前記チャンバー内面を冷却するための冷却構造とを備えた密閉式混練機であって、
前記一対の混練ロータの各々が、その混練部の一端側端部を始点とし、回転方向後方へ捩じれるように混練部中央を越えて延在する長翼であって、円周方向に配設された3枚以上の長翼と、
混練部の他端側端部を始点とし、回転方向後方へ捩じれるように混練部中央手前まで延在する短翼であって、円周方向に配設された3枚以上の短翼とを有し、
前記3枚以上の長翼の軸方向に、狭いチップクリアランスとそれより広いチップクリアランスの1以上とを出現させ、
前記3枚以上の長翼の一端側端部における捩じれ角が30°〜65°であると共に、前記3枚以上の長翼は一端側端部から離れるに従って捩じれ角が小さくなる曲線捩じれに形成され、
前記3枚以上の短翼は、少なくとも周方向に狭いチップクリアランスとそれより広いチップクリアランスの1以上とを混在させており、
前記長翼の狭いチップクリアランスと前記短翼の狭いチップクリアランスとは、前記混練ロータを一回転させると、前記混練部の軸方向の全長を少なくとも一回通過するように配設されている密閉式混練機。
【請求項2】
前記長翼の一端側端部から離れる先端の捩じれ角が10°〜55°であり、前記短翼の他端側端部における捩じれ角が、20°〜45°であると共に、前記長翼の一端側端部の捩じれ角より小さく形成されている請求項1記載の密閉式混練機。
【請求項3】
前記狭いチップクリアランスの、チャンバー内径に対する比率は、0.005〜0.025であり、前記広いチップクリアランスの前記比率は、0.01〜0.05、0.02〜0.1、0.025〜0.15のいずれから選ばれた1以上である請求項1又は2記載の密閉式混練機。
【請求項4】
前記長翼は4枚又は5枚であり、各長翼の軸方向に、チャンバー内径に対する比率が0.005〜0.025、0.01〜0.05、0.02〜0.1、0.025〜0.15であるチップクリアランスを含み、
前記短翼は4枚又は5枚であり、その周方向の各短翼は、前期比率が0.005〜0.025、0.01〜0.05、0.02〜0.1、0.025〜0.15であるチップクリアランスを含む請求項3記載の密閉式混練機。
【請求項5】
前記長翼と前記短翼とは同じ枚数であり、
前記長翼の各々はその枚数と一致する数のチップクリアランスを出現させ、
前記長翼はその周方向の各翼にも、前記軸方向のチップクリアランスと対応させて異なるチップクリアランスを出現させ、
前記短翼はその周方向の各翼に、その枚数と一致する異なるチップクリアランスを出現させる請求項4記載の密閉式混練機。
【請求項6】
前記混練ロータは、内部に冷却媒体を通す通路を有している請求項4又は5記載の密閉式混練機。
【請求項7】
前記冷却媒体用通路の断面は、前記混練ロータ断面に類似する形状に形成されている請求項6記載の密閉式混練機。
【請求項8】
チャンバー内部との間でチップクリアランスを形成する翼を混練部に備えた混練ロータであって、
前記翼は、混練部の一端側端部を始点とし、回転方向後方へ捩じれるように混練部中央を越えて延在する長翼であって、円周方向に配設された3枚以上の長翼と、
混練部の他端側端部を始点とし、回転方向後方へ捩じれるように混練部中央手前まで延在する短翼であって、円周方向に配設された3枚以上の短翼とからなり、
前記3枚以上の長翼の各々の軸方向および前記3枚以上の長翼の周方向毎に、狭いチップクリアランスとそれより広いチップクリアランスの1以上とを出現させ、
前記3枚以上の長翼は一端側端部から離れるに従って捩じれ角が小さくなる曲線捩じれに形成され、
前記3枚以上の短翼は、少なくとも周方向に狭いチップクリアランスとそれより広いチップクリアランスの1以上とを混在させている混練ロータ。
【請求項9】
前記長翼の狭いチップクリアランスと前期短翼の狭いチップクリアランスとは、ロータを一回転させると、前記混練部の軸方向の全長を少なくとも一回通過するように配設されている請求項8記載の混練ロータ。
【請求項10】
前記狭いチップクリアランスは、チップクリアランスのチャンバー内径に対する比率で0.005〜0.025であり、前記広いチップクリアランスは、前記比率が0.01〜0.05、0.02〜0.1、0.025〜0.15のいずれから選ばれた1以上である請求項9記載の混練ロータ。
【請求項11】
前記短翼は4枚又は5枚であり、その周方向の各翼で、チャンバー内径に対する比率が0.005〜0.025、0.01〜0.05、0.02〜0.1、0.025〜0.15であるチップクリアランスを含む請求項9記載の混練ロータ。
【請求項12】
前記混練ロータは、内部に冷却媒体を通す通路を有している請求項10又は11記載の混練ロータ。
【請求項13】
前記冷却媒体用通路の断面は、前記混練ロータ断面に類似する形状に形成されている請求項12記載の混練ロータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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