説明

密閉形圧縮機

【課題】アキュムレータは下部の配管で圧縮機と連結され、アキュムレータの固定のために圧縮機外周部にアキュムレータ取付用座が固着されている。特開平3−88974号公報などの従来技術では、アキュムレータ固定バンド,固定座が2箇所必要となり、かなりコストアップとなる課題があった。
【解決手段】この目的を達成するため本発明は、アキュミュレータは、上部タンクと下部タンクの2部品で通常構成され、上部と下部の継ぎ目を溶接している。この継ぎ目の位置を最下方に位置し、下部タンクを小さくする。また、下タンクの板厚を、上部タンクの板厚の2倍以上としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキュムレータを具備した密閉形圧縮機において、アキュムレータ部より発生する騒音を小さくして、より低騒音な密閉形圧縮機を提供するための構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の密閉形圧縮機は、図9に示す如く、3は密閉容器であり、圧縮要素および電動要素を内蔵し、5は前記圧縮要素に連なる曲管、6はアキュムレータである。
【0003】
前記密閉容器3の外周部には、アキュムレータ取付用の座8が固着されており、アキュムレータ取付バンド7を介してアキュムレータ6を密閉容器3に固定している。このバンド7およびアキュムレータ取付座8は2個設けてあり、一方のバンド及び座はアキュムレータ下部に、もう一方はアキュムレータ上部に設けてある。
【0004】
このような従来の密閉形圧縮機においては、アキュムレータの上下を固定することにより、固定バンド位置を節とするアキュムレータの捻り振動モードと、アキュムレータ下部の曲間部を節としたアキュムレータの1次振動モードの振動を抑えるような設計が行われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−88974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アキュミュレータは、上部タンクと下部タンクの2部品で通常構成され、上部と下部の継ぎ目を溶接している。上述した従来技術は、図9の密閉形圧縮機では、アキュムレータ固定バンド7,固定座8が2箇所必要となり、かなりコストアップとなる課題があった。
【0007】
本発明は、配管5の振動が、アキュムレータへの振動伝達を減少させる方法を提示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、この継ぎ目の位置を最下方に位置し、下部タンクを小さくする。また、下部タンクの板厚を、上部タンクの板厚の2倍以上にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、アキュムレータの下部タンクの板厚を上げ、剛性を上げていくことで、内部の配管振動による下部タンクの変形が抑えられ、アキュムレータ全体の振動も抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の請求項1の実施例におけるアキュムレータの外観図。
【図2】本発明の請求項1の実施例におけるアキュムレータの断面図。
【図3】一般的なアキュムレータの外観図。
【図4】一般的な密閉形圧縮機外観図。
【図5】アキュムレータ内の配管振動2次モードの変形コンタ図。
【図6】アキュムレータの振動伝達特性(加速度周波数応答)図。
【図7】本発明の請求項2の実施例におけるアキュムレータの断面図。
【図8】本発明の請求項3の実施例におけるアキュムレータの断面図。
【図9】従来の振動対策を施した密閉形圧縮機の外観図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の複数の実施形態について図を用いて説明する。各実施形態の図における同一符号は同一物または相当物を示す。
【実施例1】
【0012】
本発明の実施例1を図を用いて説明する。
【0013】
図3は、一般的なアキュムレータの外観図、図4は、図3のアキュムレータを配設した一般的な密閉形圧縮機外観図を示す。
【0014】
本図では省略してあるが、密閉容器3で圧縮要素および電動要素を内蔵した密閉形圧縮機は、外周に、アキュムレータ取付用の座8が固着されており、アキュムレータ取付バンド7を介してアキュムレータ6を密閉容器に固定している。
【0015】
また、図1は本発明の一実施例を示す密閉形圧縮機に取り付けるアキュムレータの外観図である。本図では省略してあるが、図2と同様に、密閉容器で圧縮要素および電動要素を内蔵した密閉形圧縮機の外周に、アキュムレータ取付用の座8が固着されており、アキュムレータ取付バンド7を介してアキュムレータ6を密閉容器に固定している。
【0016】
また、図2に、本実施例におけるアキュムレータの断面図を示す。配管5はアキュムレータ6内部に挿入され、下タンク6aと溶接されている。また、配管5のもう一方の端部は、前記密閉容器に接続されている。スクリーンホルダー20に、スクリーン21を取り付け、アキュムレータ容器51内に流入する冷媒に混入したオイル及び異質物を濾過により除去している。
【0017】
アキュムレータ6は、上タンク6aと下タンク6bの2部品で構成され、上下タンクの接合部は、各板が重なり合うように溶接されている。
【0018】
本発明では、この上下タンクの接合部を、アキュムレータ6の最下方に位置し、かつ、下タンクの板厚を、上部タンクの板厚の2倍以上とした。
【0019】
アキュムレータ6の振動は、密閉形圧縮機の運転時の振動が、配管5からアキュムレータ6に振動伝播し、更に、アキュムレータ6での振動共振により、アキュムレータ外郭での振動が増幅され、騒音が増大する。アキュムレータ6の主な共振は、アキュムレータ下部からアキュムレータ内部に挿入されている配管5の振動2次モードである。
【0020】
図5に、前記配管5の2次振動モードを示す。
【0021】
振動モードを更に詳細分析し、アキュムレータ内部に挿入される配管5の振動モード(図5に示す)がおおもとの原因となり、アキュムレータ全体を振動させていることを解明した。これについて説明する。
【0022】
この配管振動が、アキュムレータ6の下部タンク6bの変形を誘起し、アキュムレータ6全体の振動となる。アキュムレータ6の下部タンク6bの板厚を上げ、剛性を上げていくことで、内部の配管振動による下部タンクの変形が抑えられ、アキュムレータ全体の振動も抑えることができる。
【0023】
なお、図6に、本発明の効果となる振動伝達率を、配管5の端部に一定の加振力を加えたアキュムレータ外郭での加速度周波数応答特性で示す。
【0024】
仕様1は、板厚は変えず上下タンクの継ぎ目のみ、最下方に移動した仕様である。本仕様において、継ぎ目部は上下タンクの板が重なり合う二重板となるため、下部タンクの強度アップとなる、これにより15%の振動減衰となっている。
【0025】
仕様2は、仕様1の下タンクの板厚を1.5mmから2.3mm(1.5倍の板厚)にアップしたものである。これにより、アキュムレータの24%の振動減衰となっている。
【0026】
同様に、仕様3では、3.0mm(2倍の板厚)で、30%の振動減衰、仕様4では、4.5mm(3倍の板厚)で、40%の振動減衰となっている。
【0027】
振動減衰は必要に応じて、下タンクの板厚を増加させることで、振動減衰を増加させることができる。本発明では下タンクの板厚を、上部タンクの板厚の2倍以上とし、現在構造より30%以上の振動減衰とした。
【0028】
また、上下タンクの継ぎ目を、最下方に移動することで下タンク形状は小さくなり、下部タンク板厚増加による材料増加を最小限とした。
【0029】
本発明では、上部タンクと下部タンクの2部品で構成されるアキュムレータにおいて、上部タンクと下部タンクの溶接継ぎ目の位置を最下方に位置し、下部タンクを小さくする。また、下部タンクを上部タンクと比較し、板厚の厚さを厚くすることを特徴とし、また、その厚さは下部タンクの板厚を、上部タンクの板厚の2倍以上とする。
【0030】
密閉形圧縮機の振動は、アキュムレータ下部に接続している配管からアキュムレータに振動伝播していくが、アキュムレータの振動は、アキュムレータ下部からアキュムレータ内部に挿入されている配管の振動2次モードと共振して増大する。
【0031】
この配管振動が、アキュムレータの下部タンクの変形を誘起し、アキュムレータ全体の振動となる。本発明では、アキュムレータの下部タンクの板厚を上げ、剛性を上げていくことで、内部の配管振動による下部タンクの変形が抑えられ、アキュムレータ全体の振動も抑えることができる。
【実施例2】
【0032】
図7は本発明の請求項2における他の実施例2である。実施例1における、下タンク6bを平板とし、形状を小さくすることで、下タンク6bの板厚増加による材料の増加を軽減した構造を提示している。
【実施例3】
【0033】
図8は本発明の請求項3における他の実施例3である。実施例1および実施例2において、配管5の2次振動モードは、図5に示すように、アキュムレータに内挿されている配管部分中央近傍でも屈折するモードである。
【0034】
アキュムレータに内挿されている配管距離Lの1/3L以上の距離を2重管構造とすることで、2重管接触部,接合部による摩擦損失が増加し、振動減衰が増加するとともに、最も変形量の大きい配管部を振動抑制することで、問題となる振動モードの高周波への移動と減衰効果、ないしは、本振動モード自体の消滅を行うことで、振動の原因を大幅に低減し、アキュムレータから発生する騒音を低減することができる密閉形圧縮機を提供することができる。
【0035】
また、図8では、配管5を上部の配管5aを下部の配管5bに勘合する形状で、該当部の2重配管を構成している。
【符号の説明】
【0036】
3 密閉容器
5 密閉容器内圧縮要素に連なる曲管、かつ、アキュムレータ内に挿入される配管
5a 上部配管
5b 下側配管
6 アキュムレータ
6a 上タンク
6b 下タンク
7 固定バンド
8 アキュムレータ取付用座
9 弾性材
10 ボルト
20 スクリーンホルダー
21 スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器内部に収納された圧縮要素と電動要素とを有する密閉形圧縮機と、前記圧縮要素の吸込口に接続され前記密閉容器の外側に取り付けられたアキュムレータとを備えた密閉形圧縮機において、
前記密閉容器の外側に設けられたアキュムレータは、上タンクと下タンクで構成され、前記上タンクと下タンクの接合部は、アキュムレータの最下方に位置し、下タンクの板厚を、上タンクの板厚の2倍以上としたことを特徴とする密閉形圧縮機。
【請求項2】
前記請求項1の密閉形圧縮機において、
前記アキュムレータの下タンク形状を平板としたことを特徴とする密閉形圧縮機。
【請求項3】
前記請求項1または2の密閉形圧縮機において、
前記アキュムレータ内に挿入される配管において、前記アキュムレータ内挿入配管長の1/3以上の長さを、前記挿入配管長の中心振分けで2重管構造とすることを特徴とする密閉形圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−226573(P2011−226573A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97483(P2010−97483)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】