説明

寛容誘導標的特異性抗体の生成

【課題】動物の免疫応答を免疫学的に弱いかまたは稀な抗原に向けなおす方法の提供。
【解決手段】(a)動物に、抗原の第一のセットを投与しそして第一および第二の免疫応答を可能にする工程、(b)動物に、急速に増殖する免疫細胞の成長を阻害する免疫抑制剤を投与する工程、(c)動物に、抗原の第一のセットに類似または関連しているがそれとは別個の抗原の第二のセットを投与する工程、そして(d)抗原の第二のセットに対する抗体の力価を上昇させるのに十分なそして抗原の第二のセットに対する抗体を分泌する形質細胞の動物の脾臓への増大した移入を生じさせるのに十分な抗原の第二のセットのブースター注入を投与する工程からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の免疫応答を向けなおす方法に関する。特に、本発明は、動物の免疫応答を免疫学的に弱いかまたは稀な抗原例えば腫瘍抗原に向けなおす方法に関する。方法は、消去式免疫と超免疫とを組み合わせたものであり、標的特異性抗体、ヘルパーT細胞(CD4−Tリンパ細胞)および細胞毒性T細胞(CD8−Tリンパ細胞)のコントロールされたまたはそれらに向けられた生成物を生ずる。得られた抗体は、特に、診断および治療の応用に有用である。
【背景技術】
【0002】
20年を超える間、mAbは、哺乳動物、鳥類および両生類の組織から、植物、寄生虫、細菌およびウイルスからの種々の細胞に存在する抗原並びに合成の抗原の同定のための強力な手段として使用されてきている。前世紀の前半におけるK.Landsteinerの先駆的研究から、抗体は、それらの能力によって2つの外見上ほとんど同じ蛋白の間を区別して蛋白の一次、二次および/または三次の構造における微細な相違を特異的に認識(反応)することが知られている(エピトープ)。従って、蛋白における唯一のアミノ酸の変化は、それが特定の蛋白について遺伝子コーディング中への単一の点突然変異の導入により生ずるとき、Bリンパ細胞の表面に存在する抗体により認識されて、形質細胞への免疫細胞の増殖そして抗原特異性抗体(エピトープ)の分泌が生ずる。その例として、抗体は、ブタインスリンを注入された糖尿病で生成し、ブタインスリンは、唯一のアミノ酸によりヒトインスリンとは別個のものである。
【0003】
非特許文献1によるハイブリドーマ融合方法の開発は、これらの精製された認識特異性を有する抗体の同定、永久的な培養における生成した形質細胞の維持そして従って望ましい特異性を有するmAbの工業的な方法の探究および同定を可能にした。その結果、診断薬そしてさらに最近では治療薬の伝達並びに治療薬としてのそれらの用途に使用される多数のmAbが増加しつつある。
【0004】
融合方法は、十分にコントロールされた日常的に行われる方法になっているが、未処置細胞のような抗原のコンプレックス混合物による免疫脾細胞の(動物)ドナーを免疫化する方法は、ほとんどの場合、純粋に実験的な方法(「標準的」免疫方法)のままであった。それゆえ、これらの動物の脾臓における(望ましい)抗原特異性抗体分泌形質細胞の存在および頻度についてほとんど予想されていない。「標準的」免疫化の使用は、しばしば、望ましい特異性を有するmAbを分泌する唯一のまたはそのようなハイブリドーマの同定をもたらす。しばしば、問題のmAb分泌ハイブリドーマは、まったく同定されていない。たとえ見かけ上望ましい特異性のmAbが見いだされたとしも、生成したmAbの多くをテストすると、それぞれの1つ以上の抗原が、ほとんどの場合、標的とする器官のそれらよりも多くの細胞に存在し、そして免疫化方法において抗原として使用されることが立証される。明らかに、これらの結果は、生体外で器官特異性または細胞特異性の媒体としてのmAbの有用性をかなり制限する。
【0005】
標的特異性mAbの生成に現在使用される方法は、特異的な免疫学的寛容の導入を含む。この方法では、免疫優性の抗原に対する免疫応答は、(a)新生児寛容の導入、(b)低投与量の抗原の投与の繰り返し、(c)抗原の第一のセットの単一の注入中またはその直前直後の免疫抑制剤の投与および主な免疫応答の導入により抑制される(非特許文献2−9)。しかし、これらの方法は、問題により妨げられる。例えば、しばしば、腫瘍特異性抗原(TSA)および腫瘍関連抗原(TAA)は、未形質転換の母細胞に既に存在する分子の僅かな改変(上記参照)から由来し、そのため、存在する数限りない他の免疫優性の抗原内で認識できない。さらに、TSA/TAAは、かなり数が少ないので、受動免疫応答は宿主で全くまたはほとんど発生しない。
【0006】
診断または治療の目的で標的に向かう媒体としてmAbの潜在的な識別特異性を完全に利用するには、免疫化動物の応答の操作が非常に望まれ、2つの主な目的が達成される。第一に、Bリンパ細胞の応答そしてその結果抗体の生成は、圧倒的に細胞および/または器官特異性の抗原の1つ以上に向かわなければならない。さらに、融合の時点で、所望の1つ以上の抗体を生成する最大の可能な数のこれらの形質細胞は、免疫化ドナー動物の脾臓に移動しそして存在しなければならない。第一の目的は、問題とする抗原に応答するBリンパ細胞のみの増殖を生ずるだろうが、第二の目的は、脾臓における多数の非常に選択された(抗体特異性に関して)形質細胞のかなりな増加により、これらの(所望の)形質細胞の1つ以上と骨髄腫細胞の1つ以上との間の融合のかなり高い頻度をもたらす。本発明は、両方の目的を達成し、そして生体外で成長する非常に多数のハイブリドーマをもたらすばかりか、正確に所望の抗原特異性を有する予想できる高い頻度のハイブリドーマ分泌mAbをもたらす。
【0007】
【非特許文献1】KoehlerおよびMilstein(1975)Nature 256、495−497
【非特許文献2】Manyら、Clin.Exptl.Immunol.1970、6:87−99
【非特許文献3】Hanaiら、Cancer Res.1986、46:4438−4443
【非特許文献4】Middelonら、Fed.Proc.1984、39:926
【非特許文献5】Golumbiskiら、Anal.Biochem.1986、154:373
【非特許文献6】Matthewら、1987、J.Immunol.Meth.100:73−82
【非特許文献7】Pytowskiら、J.Exp.Med.1988、167:421
【非特許文献8】Williamsら、Biotechnique、1992、12:842−847
【非特許文献9】Brooksら、J.Cell Biol.1993、122:1351−1359
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、両方の目的を達成し、そして生体外で成長する非常に多数のハイブリドーマをもたらすばかりか、正確に所望の抗原特異性を有する予想できる高い頻度のハイブリドーマ分泌mAbをもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、動物の免疫応答を免疫学的に弱いかまたは稀な抗原に向けなおす方法を提供する。その方法は、(a)動物に、抗原の第一のセットを投与しそして第一および第二の免疫応答を可能にする工程、(b)動物に、急速に増殖する免疫細胞の成長を阻害する免疫抑制剤を投与する工程、(c)動物に、抗原の第一のセットに類似または関連しているがそれとは別個の抗原の第二のセットを投与する工程、そして(d)抗原の第二のセットに対する抗体の力価を上昇させるのに十分なそして抗原の第二のセットに対する抗体を分泌する形質細胞の動物の脾臓への増大した移入を生じさせるのに十分な抗原の第二のセットのブースター注入を投与する工程からなる。
【0010】
本発明の他の構成では、免疫学的に弱いまたは稀な抗原と特異的に応答するモノクローナル抗原を生成する方法が提供される。その方法は、(a)動物に、抗原の第一のセットを投与しそして第一および第二の免疫応答を可能にする工程、(b)動物に、急速に増殖する免疫細胞の成長を阻害する免疫抑制剤を投与する工程、(c)動物に、抗原の第一のセットに類似または関連しているがそれとは別個の抗原の第二のセットを投与する工程、(d)抗原の第二のセットに対する抗体の力価を上昇させるのに十分なそして抗原の第二のセットに対する抗体を分泌する形質細胞の動物の脾臓への増大した移入を生じさせるのに十分な抗原の第二のセットのブースター注入を投与する工程、(e)脾細胞を動物から単離する工程、そして(f)単離した脾細胞を培養で無期限に複製できる形質転換細胞または骨髄腫細胞と融合して、免疫学的に弱いかまたは稀な抗原と特異的に応答するモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを生成する工程からなる。好ましくは、免疫抑制剤はシクロホスファミドである。好ましい態様では、抗原の第一のセットは未形質変換細胞からなるが、一方抗原の第二のセットは腫瘍的に形質転換された該細胞から由来する細胞からなる。例えば、抗原の第一のセットは、BMRPA1(BMPRA.430)細胞からなり、そして抗原の第二のセットは、BMRPA.NNK細胞からなる。本明細書で使用されるとき、「BMRPA1」細胞および「BMRPA.430」細胞は、同義的である。他の例では、抗原の第一のセットは、BMRPA1(BMPRA.430)細胞からなることができ、そして抗原の第二のセットは、TUC3(BMRPA1.K−rasVal12)細胞からなることができる。抗原の第二のセットの例は、腫瘍関連抗原または腫瘍特異性抗原である。ガン関連抗原の例は、膵臓ガン関連抗原である。
【0011】
本発明の他の構成では、上記の方法により生成されるモノクローナル抗体が提供される。
【0012】
分化状態でBMRPA1細胞を維持できる培地も本発明により提供される。培地は、約0.02Mのグルタミン、約0.01−約0.1MのHEPES緩衝液、培地1Lあたりの酢酸1mLあたり約0.001−約0.01mgの範囲の酢酸に溶解したウシインスリン、約1−約8×10−7MのZnSO、約1−約8×10−10MのNiSO6HO、5×10−7−約5×10−6MのCuSO、5×10−7−約5×10−6MのFeSO、約5×10−7−約5×10−6MのMnSO、約5×10−7−約5×10−6Mの(NHMn24、培地1Lあたり約3−約0.7mgのNaSeO、約1×10−10−約8×10−10MのSnCl2HOおよび約5×10−4−約5×10−5Mのカルバミルコリンからなり、該培地は約6.8−7.4の範囲に調節されたpHを有する。
【0013】
好ましくは、培地は、約0.02Mのグルタミン、約0.02MのHEPES緩衝液、酢酸に溶解したウシインスリン(培地1Lあたりの酢酸1mLあたり約0.004mg)、約5×10−7MのZnSO、約5×10−10MのNiSO6HO、約5×10−6MのCuSO、約5×10−6MのFeSO、約5×10−9MのMnSO、約5×10−7Mの(NHMn24、培地1Lあたり約0.5mgのNaSeO、約5×10−10MのSnCl2HOおよび約5×10−5Mのカルバミルコリンからなり、該培地は約7.3の範囲に調節されたpHを有する。
【0014】
本発明は、また約16時間培地1mLあたり1μgのNNKに曝された形質転換されたBMRPA1(BMPRA.430)細胞を提供する。これらの細胞の例は、細胞系BMRPA1.NNKである。BMRPA1.NNKを注入されたマウスの腫瘍から由来する細胞系TUNNKも、また本発明により提供される。
【0015】
本発明は、またSDS−PAGEにより測定されて約39.0kDまたは2Dゲル電気泳動により測定されて約41.2kDの分子量、約5.9−約6.9の等電点電気泳動のpI、そしてBMRPA1.NNK細胞、BMRPA1.TUC3細胞、BMRPA1.TUNNK細胞、ヒト膵臓ガン細胞系CAPAN1、CAPAN2、A549ヒト肺ガン細胞およびB16マウス黒色腫細胞で検出可能を特徴とする実質的に純粋な形のガン関連抗原3D4−Agを提供する。
【0016】
ガン関連抗原3D4−Agへの特異的な結合特異性を有する抗体も本発明により提供される。抗原は、SDS−PAGEにより測定されて約41.2kDの分子量、約5.9−約6.9の等電点電気泳動のpI、そしてBMRPA1.NNK細胞、BMRPA1.TUC3細胞、BMRPA1.TUNNK細胞、ヒト膵臓ガン細胞系CAPAN1、CAPAN2、A549ヒト肺ガン細胞およびB16マウス黒色腫細胞で検出可能であることを特徴とする。抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルである。また提供されるのは、モノクローナル抗体mAb3Dである。
【0017】
本発明の他の構成では、抗原3D4−Agと特異的に免疫応答可能なモノクロール抗体を生成するネズミ科のハイブリドーマ細胞系が提供される。
【0018】
本発明は、また本明細書で記述された方法により生成されるハイブリドーマを提供し、そのハイブリドーマは、未形質転換細胞例えばBMRPA1そして形質転換細胞例えばBMRPA1.NNK細胞の表面で抗原に結合する抗体を生成する。
【0019】
これらの抗体が形質転換および未形質転換の細胞に結合するハイブリドーマにより生成される抗体例えばモノクローナル抗体mAb4AB1およびmAb2B5も提供される。
【0020】
ハイブリドーマがBMRPA1.NNK細胞の抗原に結合するが未形質変換BMRPA1細胞とは結合しない抗体を生成する、本発明の方法により生成されるハイブリドーマも提供される。
【0021】
この抗体が形質転換細胞と結合するが未形質転換細胞と結合しないハイブリドーマにより生成される抗体例えばmAb3A2も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、動物の免疫応答を免疫学的に弱いまたは稀な抗原に向けなおすことに関する。本発明によれば、(i)例えば単一の点突然変異の結果として、2つのさもなければ相同の蛋白抗原が異なるかもしれないほとんどすべての抗原性エピトープの1つ以上に対して、または(ii)コンプレックス抗原の混合物内で低い頻度で存在するかまたは弱い免疫原性である任意の抗原に対して、多数の標的特異性mAbを生成する方法が提供される。得られる抗体は、動物特にヒトの種々の病状を診断および治療するのに使用できる。さらに、本発明は、標的特異性ヘルパーT細胞(CD4−Tリンパ細胞)および細胞毒性T細胞(CD8−Tリンパ細胞)を提供する。
【0023】
本発明によれば、免疫抑制剤は、抗原の第一のセットによる宿主の完全な免疫化後すなわち一次および二次の免疫応答が完了した後に投与される。これは、以下のことを生ずる。(i)初期(一次)応答B細胞クローン(免疫抑制剤を使用する他の方法におけるように)のみならず、最初のコンプレックス抗原混合物に存在する少ない免疫原、または二次免疫応答中のみすなわち第二および/または第三のブースト後のさらに低い頻度で存在する免疫原に応答するこれらのB細胞クローンの抑制/排除、(ii)クラススイッチをおこない、そして偶然の遭遇により新しい抗原(第二または第三のブースト)がコンプレックス抗原混合物に存在する免疫原の任意のものに対する高い親和性の抗体を生成しがちな記憶細胞を生成した応答/増殖B細胞クローンの排除、(iii)コンプレックス抗原混合物から処理された抗原のAP(樹状細胞>>マクロファージ)によるプレゼンテーションに応答する増殖するヘルパーCD4リンパ細胞の排除。従って、関連するB細胞による混合物中の抗原のいくつかの最初の認識後のこれらのTリンパ細胞の除去は、増殖するB細胞がクラススイッチ、より高い親和性および長期にわたって有効な抗体、そして特異的な記憶Bリンパ細胞の生成を必要とする助けを除くだろう。さらに、(iv)最初のコンプレックス抗原混合物に向かう長期にわたる(>4月)免疫抑制の生成がある。
【0024】
そのため、本発明の方法は、本発明が、さらに、天然および変性の形でそして抗原の1つ以上の第一のセットへの寛容化による免疫化後、所望の抗原の1つ以上の第二のセットによる免疫および超免疫の急速な連続を用いる点で、現在の方法とは異なる。これは、以下のことをもたらす。(i)第一のコンプレックス抗原混合物に存在した抗原に対する動物の応答の連続する抑制の期間中抗原の第二のセットに対する抗体の力価の顕著な上昇、(ii)宿主動物の脾臓中への抗原の第二のセットに特異的な高い親和性の1つ以上の抗体を分泌する形質細胞の移動の増大。従って、宿主動物の脾臓中の形質細胞の比が、他の特異性に対して抗原の第二のセットに特異的なものを増加させる。その結果、ハイブリドーマ融合中、抗原の第二のセットに特異的な高い親和性の抗体を生成する形質細胞の数の脾細胞内の存在を増大させ、そしてそれは骨髄腫細胞と融合するだろう。これは、抗原の第二のセットに存在するユニークな抗原性決定因子に特異的な抗体を分泌するハイブリドーマを同定する機会を改善する。さらに、また(iii)抗原の第二のセットの分子の天然および変性の両方の形に対するモノクロール抗体(mAb)の生成がある。二次後の免疫応答の免疫抑制剤による処理の繰り返しにより導入される、抗原の第一のセットに対する長期にわたる寛容の発生に加えて、関連するが別個の抗原の第二のセットによる選択的に免疫不全の宿主動物の次に急速な超免疫は、強いが制限されたすなわち標的に向かう免疫応答、並びに任意の新規な1つ以上の抗原および抗原性エピトープに対する抗体の生成を導く。超免疫された宿主動物中の抗原の高いレベルの第二のセットの連続する存在は、応答するB細胞に力を働かせて、多数に増殖させ、クラススイッチにより動かし、そして抗原の第二のセット内のユニークな抗原性決定因子の天然および/または変性した形と反応性の高い親和性の抗体を生成する形質細胞を選択する。次のハイブリドーマ融合のために選択される宿主動物の脾細胞内のこれら形質細胞の高頻度での存在は、望ましい1つ以上の特異性のmAbを分泌するハイブリドーマの頻度を顕著に上げる。それゆえ、すべてを考えると、本発明の方法は、抗原のコンプレックス混合物内の抗原性決定因子を選択するmAbを生成するのに、標準の免疫方法の使用よりも大きな利点をもたらす。
【0025】
従って、本発明は、以下の工程からなる標的特異性モノクローナル抗体を生成する方法を提供する。始めに、動物は、抗原の第一のセットにより免疫化され、そして完全な免疫化に十分なようにブーストされて一次および二次の免疫応答が完了する。次に、Bリンパ細胞およびTリンパ細胞のクローンを含む急速に増殖する免疫細胞(細胞毒性/サプレッサー細胞、ヘルパー細胞)の成長を阻害する免疫抑制剤が、免疫化動物に投与される。免疫抑制された動物は、次に抗原の第一のセットに関連するがそれとは別個の抗原(天然および変性された形)の第二のセットにより免疫化され、そしてその後十分にブーストされる。超免疫プロトコールは、抗原の第二のセットの追加のブースターを短時間内に受ける動物について続く。脾細胞は、動物から単離され、そしてハイブリドーマを生成する培養で無限に複製できる形質転換細胞または骨髄腫細胞と融合される。得られるハイブリドーマは、培養され、得られたコロニーは、所望のモノクローナル抗体の生成についてスクリーニングされる。抗体生成コロニーは、多量の所望の抗体を生成するために生体内または生体外で成長させる。
【0026】
本発明の方法で使用される免疫抑制剤は、Bリンパ細胞およびTリンパ細胞のクローンを含む急速に増殖する免疫細胞の成長を阻害するものでなければならない。特に有用な化合物は、アルキル化剤、代謝拮抗薬および天然物質のクラスのものを含む。これら化合物の例は、シクロスポリンA、ミコフェノレート、モフェチル、アザチオプリン、タクロリムス、レフルノミド、ミコフェノール酸、メルファラン、クロラムブシル、メトトレキサート、フルオルラシル、ビンクリスチン、ブスルファンおよびシクロホスファミドを含むがこれらに限定されない。好ましくは、シクロホスファミドが、本発明の方法の免疫抑制剤として使用される。
【0027】
本発明の方法で使用される抗原は、脊椎生物の免疫応答を刺激するのに有効な任意の物質を含むことができる。従って、例えば、抗原は感染因子例えば細菌またはウイルスである。本発明で使用される抗原は、また単離された蛋白、ペプチドまたはこれらのフラグメントを含む。これらの蛋白、ペプチドまたはこれらのフラグメントは、感染因子または他の生体の源から単離されたものでも、化学的に合成されるかまたは組み換えにより生成されたものでもよい。さらに、小分子例えばハプテンは、本発明の方法において使用される抗原として機能できる。好ましくは、抗原は、感染因子または腫瘍細胞の表面蛋白である。さらに好ましくは、抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)または腫瘍特異性抗原(TSA)である。TAAは、黒色腫、乳腺ガン、前立腺腺ガン、食道ガン、リンパ腫および多くの他のものを含む多数の腫瘍について同定されてきている。Shawlerら(1997)Advances in Pharmacology 40:309−337、Academic Press参照。
【0028】
それゆえ、本発明の方法で使用される抗原は、(i)それにより2つのさもなければ相同の1つ以上の蛋白抗原が例えば単一の点突然変異の結果として異なるほとんどすべての抗原性決定因子(エピトープ)、または(ii)コンプレックス抗原の混合物内で低頻度で存在するかまたは弱い免疫原性である任意の抗原からなる。2つの蛋白抗原は、もしそれらが付加、欠損または置換の任意の組み合わせによりアミノ酸配列に変異を有するが、それ以外では同じ官能性を有するか、または同じ官能性を共通にする蛋白から由来するフラグメントであるならば、相同である。それにより2つのさもなければ相同である1つ以上の蛋白抗原が異なる抗原性決定因子(エピトープ)の特異的なモノクローナル抗体、またはコンプレックス抗原の混合物内で低頻度で存在するかまたは弱い免疫原性である抗原に特異的であるモノクローナル抗体を生成するために、関連するが別個の抗原の2つのセットが使用される。
【0029】
抗原の2つの関連するが別個のセットは、いくつかの手段により得ることができる。例えば、細胞は、第一の組織源から単離されそして抗原の第一のセットとして使用できるが、一方同じ生物からの第二の組織源からの細胞は、抗原の第二のセットとして使用できる。抗原の第一のセットおよび第二のセットの源として利用できる細胞の例は、異なる膵臓の組織からの細胞例えば管細胞、中心腺房細胞、腺房細胞および島細胞を含む。他の例では、多くのタイプの脳細胞が前駆細胞から由来するとき、脳組織の異なる層が使用できる。なお他の例では、甲状腺細胞および上皮小体細胞が抗原の第一および第二のセットとして利用できる。副腎の組織も、抗原の第一および第二のセットとして働くことのできる異なる細胞のタイプから作られる。また他の例では、卵巣ガン特異性抗原は、一次抗原として患者から病気にかかっていない卵巣から単離された細胞そして二次抗原として同じ患者から単離された細胞を使用して単離できる。
【0030】
本発明の方法は、TSAおよびTAAに対するmAbを生成するのに特に有用であり、TSAおよびTAAは、上記のように、しばしば、未形質変換母細胞に既に存在している分子の僅かな改変により由来する。これらTSAおよびTAAは、従って、多数の存在する他の免疫優性の抗原の中で認識できない。TSAおよびTAAは、また、受動免疫応答のみが宿主に発生するかまたは全く免疫応答が発生しないような小さい数で存在する。そのため、例えば、TSAおよびTAAについて、未形質転換細胞系および形質転換腫瘍細胞系は、類似の抗原または関連するが別個の抗原の第一および第二のセットとして使用できる。腫瘍形質変換は、K−rasガン突然変異およびp16腫瘍サプレッサー遺伝子プロモーターを経て生じ、p16蛋白発現の損失を招くことが知られている(Belinskyら、1998)。従って、細胞は、K−rasガン突然変異からなるプラスミドまたはヌクレオチド配列からなるプラスミドのようなベクター(p16腫瘍サプレッサー遺伝子を不活性化できる)により形質転換される。さらに、細胞を種々のニトロソアミン(4−(メチル−ニトロソアミノ)−1−(3−ピリジル)−1ブタノン(NKK)を含む)に曝すことは、DNAおよび蛋白の付加物、DNA鎖切断および遺伝子の突然変異の形成を生ずることが示されている(Curpheyら、1987、Van Benthemら、1994、Staretzら、1995、Hecht、1996)。ニコチン由来NNKおよびその代謝物4−(メチル−ニトロソアミノ)−1−(3−ピリジル)−1−ブタノール(NNAL)は、実験室動物で膵臓腫瘍を生成するのに有用であり(Hoffmanら、1994)、そして膵細胞の腫瘍形質転換を誘導するのに特に有用である。膵細胞をNNKに曝す時間は、約6時間から約60時間の任意の時間に及ぶ。暴露の好ましい範囲は、約12−約24時間である。約16時間の暴露時間が特に好ましい。
【0031】
正常の細胞を腫瘍細胞に形質転換することが知られている広範囲の発ガン性物資が存在する。本発明によれば、細胞は、腫瘍細胞を生成するために、種々の化合物に曝される。これら化合物の例は、ニトロソアミン例えばNNK並びに他の群例えばアルキル化剤、アルアルキル化剤、アリールアルキル化剤、アリールアミン化剤および多環芳香族炭化水素を含むが、これらに限定されない。これらの化合物および腫瘍細胞を生ずるためのこれらの化合物の使用は、種々の文献、例えばDevita Jr.V.T.ら編「Cancer,Principles and Practice of Oncology」Lippincott Williams and Wilkens,Piladelphia,6th ed.中のYuspa,S.H.ら、「Etiology of cancer;chemical factors」pp.179−193(この記述は、本明細書で参考として引用される)に記載されている。前記の発ガン性物質は、限定的なものではなく、ただの例示に過ぎない。多くの異なる発ガン性物質が使用されて、本発明の方法を実施するのに有用なTAAまたはTSAを発生するための腫瘍細胞を生成できる。
【0032】
動物の源から直接採られた腫瘍性組織または細胞は、しばしば、正常細胞およびガン細胞の混合物並びに結合組織およびプロテアーゼを含む。そのため、形質転換された細胞系は、好ましくとは、本発明の方法では抗原または抗原の源として使用される。未形質転換の母細胞系は、抗原の第一のセットとして使用でき、一方腫瘍形質転換されたそれらから由来する細胞系は、関連(類似)しているが別個の抗原の第二のセットとして使用できる。
【0033】
本発明の方法によれば、上記の消去式免疫(immunosubtractive)超免疫プロトコール(「ISHIP」)が、標的に向かう抗体を生成するのに使用されてきている。一般的な方法は、「寛容導入の標的に向かう抗体の生成」ともよばれるが、さらに以下に詳述される。
【0034】
プロトコールの開始(0日目)で、動物は、免疫前の血清を採血される。好ましくはマウスである動物は、コンプレックス抗原プロフィル「A」とよばれる抗原の第一のセットにより免疫化される。好ましくは、抗原の第一のセットは、腹腔内(ip)または皮下(sc)の注入により投与される。さらに、生細胞および固定細胞の混合物は、好ましくは、抗原の第一のセットすなわちコンプレックス抗原プロフィル「A」として使用される。例えば、infraと記載されるBMPRA.430細胞は、コンプレックス抗原プロフィル「A」として使用できる。固定細胞に使用できる化合物およびこれら化合物の処方は、当業者に周知であり、そして例えばホルムアルデヒド、グルタールアルデヒドおよびパラホルムアルデヒドを含む。パラホルムアルデヒドが、本発明の方法で細胞を固定するのに使用される。
【0035】
動物は、次に生および固定のコンプレックス抗原プロフィル「A」の混合物により2倍にブーストされる。12−15日目に、第一のブースター注入は、0日目の注入に使用された細胞数または蛋白濃度の50%での例えば生/固定コンプレックス抗原プロフィル「A」の腹腔内注入により、行われる。18−21日目で、第二のブースター注入がなされ、そして0日目と同じ濃度での生/固定コンプレックス抗原プロフィル「A」からなる。好ましくは、第二のブースターは、皮下投与による。
【0036】
動物は、次にベースラインの体重を求めるために体重を測られ、それは、以後免疫抑制剤の効果を決定するのに使用される(以下に詳細に述べられる)。第二のブースター注入約4−24時間後に、動物は、免疫血清を得るために採血され、そして血清は抗原プロフィル「A」に対する抗体についてテストされる。
【0037】
次の5日間(23−26日目)、動物は、毎日秤量され、次に免疫抑制剤例えばシクロホスファミドを、滅菌生理学的食塩水で希釈された60mg/kg体重で投与される。好ましくは、シクロホスファミドの投与は、腹腔内(ip)注入による。処置の代表的なスケジュールは、以下の通りである。第二のブースター注入24時間後に、動物を秤量し、シクロホスファミドを60mg/kg体重で腹腔内に投与する。第二のブースター注入48時間後、動物を再び秤量し、そして、シクロホスファミドを60mg/kg体重で腹腔内に投与する。第二のブースター注入72時間後、動物を再び秤量し、そして、シクロホスファミドを60mg/kg体重で腹腔内に投与する。第二のブースター注入96時間後、動物を再び秤量し、そして、シクロホスファミドを60mg/kg体重で腹腔内に投与する。最後に、第二のブースター注入120時間後、動物を再び秤量し、そして、シクロホスファミドを60mg/kg体重で腹腔内に投与する。好ましくは、シクロホスファミドの投与は、i.p.による。
【0038】
シクロホスファミド処置動物における2−10%の観察された体重の損失は、この薬剤による処置が、動物の飼料および液体の摂取を低下させる効果を有するため、薬剤の作用の一般的な指標である。シクロホスファミドの最後の注入後、動物は、約10−12日間毎日秤量される。この期間の終わりに、動物は、処置前の体重を回復する。シクロホスファミド以外の免疫抑制剤の効果の指標は、適切な場合、もちろん使用できる。例えば、血液サンプルを採り、血小板および白血球細胞(WBC)のレベルを測り、そのレベルは、免疫抑制剤の処置後低下することが予想されるだろう。血液を次に免疫化動物から集め(33−36日目)、そして免疫血清中の抗体の力価は、抗原プロフィルA(例えば、BMRPA.430細胞)に対し、そして密接に関連するが別個の抗原の第二のセットに対して得られる。それに対して動物が免疫応答をするように向けられつつあるのは抗原のこのセットであり、すなわち改変抗原プロフィル「A+」または「A+na」である。好ましくは、抗原の第二のセットは、形質変換した細胞、例えばBMRPA.430.NNKまたはBMRPA1.NNK(infraと記載される)とよばれる形質転換した細胞系からなる。血液サンプルは、免疫前の血清並びに第二のブースト5時間後すなわち第一のシクロホスファミド注入直前に採られた血清によりテストされる。予想される結果は、以下の表1に示される。
表 1
テスト抗原
Agプロフィル「A」 Agプロフィル「A+」または「A+na」
免疫前血清 0 0
血清、18−21日目 +++ ++/+++
血清、33−36日目 0 0
免疫抑制されたマウスは、抗原プロフィル「A+」または「A+na」細胞(例えば、生(50%)およびパラホルムアルデヒド固定(50%)細胞の混合物、ここではBMRPA.430.NNK細胞)による37日目の腹腔内または皮下注入により免疫化される。
【0039】
抗原プロフィル「A+」または「A+na」(すなわち、生/固定細胞混合物)の第一のブースターは、37日目の注入の細胞数の50%で49−52日目に腹腔内注入により投与される。抗原プロフィル「A+」または「A+na」(すなわち、生/固定細胞混合物)の第二のブースターは、37日目の注入の細胞数の75%で55−58日目に腹腔内注入により投与される。
【0040】
血清は、次にテストのために集められ、そして以下の超免疫プロトコールが行われる。60−63日目に、抗原プロフィル「A+」または「A+na」のブースターが、37日目に使用された投与レベルで投与される。62−65日目に、第四のブースター注入が、60−63日目の注入の繰り返しとして投与される。好ましくは、投与は、s.c.注入による。64−67日目に、第五のブースター注入が、37日目に注入された抗原プロフィル「A+」または「A+na」の1.5倍の量で投与される。66−69日目に、第六のブースター注入が投与され、それは64−67日目の注入の繰り返しである。これら最後の2つのブースターは、好ましくはi.p.注入により投与される。
【0041】
68−71日目に、第七のブースター注入が投与され、それは64−67日目の注入の繰り返しである。70−73日目(融合日−2日)に、第八のブースター注入が投与され、それは64−67日目の注入の繰り返しである。
【0042】
71−74日目に、血清を免疫化した動物から採取し、そして個々に、抗原プロフィル「A+」および「A+na」並びに「A」そしてそれに対して動物が曝されていない抗原すなわち無関係な抗原または細胞(Ir−Ag)の群に対し抗体の存在についてテストした。予想された結果を以下の表2に示す。
表 2
テストされたAgプロフィル
「A」 「A+」または「A+na」 「Ir−Ag」
血清、33−36日目 0 0 0/+
血清、55−58日目 0 ++ 0
血清、71−74日目 0/+ ++++ 0/+
72−75日目に、脾細胞が、71−74日目のテストにおける血清抗体の力価により規定されるように、1匹以上のマウスから融合について単離され、そして血清を、抗原プロフィル「A+」および「A+na」並びに「A」および「Ir−Ag」に対する抗体の存在に関する追加のテストのために集める。
【0043】
上記のように、免疫化動物から得られた脾細胞は、培養で無期限に複製可能な形質転換された細胞または骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを生成する。ハイブリドーマを生成する方法は、当業者に周知であり、そして例えばKoehlerおよびMilstein(1975)およびPytowski(1988)(これらの記述は本明細書で参考として引用される)に記載された方法を含む。個々のハイブリドーマ細胞はクローン化され、そしてクローンは、「A+」または「A+na」に対する抗体の生成についてテストされる。例えば、ハイブリドーマの上澄み物は、抗原特異性抗体反応物についてスクリーニングされる。一度抗原「A+」または「A+na」と反応する抗体を生成するハイブリドーマ細胞系が同定されると、細胞は凍結保存されて、長期間の供給を確かめる。これらの細胞系は、次にさらなる抗体が必要なとき解凍されて、長期の供給を確実にする。
【0044】
目的とする抗体は、診断薬および治療薬において異なる用途を見いだす。診断の用途では、本発明により生成した抗体は、抗原との交差反応性を免疫学的に決定する手段として使用できる。例えば、本発明により生成した抗体は、同じ抗原の異なる抗原性決定因子(エピトープ)と反応でき、そして診断薬またはコントロールとして有用である。さらに、腫瘍細胞のあるタイプに特異的な目的とする抗体は、そのような腫瘍細胞に生ずる変化を示すのに有用であり、そして患者の治療をモニターするのに有用である。例えば、腫瘍細胞が死ぬと、抗原は血液および血清中に流れ、そのため目的とする抗体は、腫瘍細胞に生ずるこのような変化を決定するのに有用である。さらに、本発明により生成した抗体は、特異的な抗原例えば腫瘍特異性抗原と反応し、単独で投与されるかまたは細胞毒性薬剤と一緒に投与されて、治療薬として有用である。
【0045】
以下の実施例は、本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0046】
膵細胞系BMRPA.430の腫瘍形質転換による細胞系BMRPA.430.NNK(BMRPA1.NNK)の生成
材料:1640RPMI培地、ペニシリン−ストレプトマイシン原料溶液(10000U/10000mg/mL)(P/S)、N−ヒドロキシエチルピペラジン−N´−2−エタンスルホン酸(HEPES)緩衝液、2mMエチレンジアミン四酢酸を含む0.2%トリブシン(トリプシン−EDTA)並びにトリパンブルーは、すべてGIBCO(ニューヨーク)から得た。胎児ウシ血清(FBS)は、Atlanta Biologicals(アトランタ、GA)から得た。DulbeccoのCa2+およびMg2+なしのPhosphate Buffered Saline(PBS)並びに完全な培地用のすべての微量元素は、Sigma Chemical Company(セント・ルイス、MO)から購入した。組織培養フラスコ(TCF)は、Falcon−Becton Dickinson(マウンテン ビュー、CA)から得られ、組織培養皿(TCD)は、Corning(カミング、NY)から得られ、24穴組織培養プレート(TCP)および96穴TCPは、Costar(ケンブリッジ、MA)から得られた。フィルターはNalgene(ロチェスター、NY)から得られた。
【0047】
コンプレックスRPMI(cRPMI)細胞培地の調製:cRPMIは、RPMI、グルタミン(0.02M)、HEPES緩衝液(0.02M)、酢酸に溶解したウシインスリン(0.02mg/mL酢酸/L培地)、ヒドロコーチゾン(0.1μg/mL)、ZnSO(5×10−7M)、NiSO6HO(5×10−10M)、CuSO(10−8M)、FeSO(10−6M)、MnSO(10−9M)、(NHMn24(10−7M)、NaSeO(培地1Lあたり0.5mg)、SnCl2HO(5×10−10M)を含む微量元素およびカルバミルコリン(10−5M)により調製され、そしてpHは7.3に調節された。培地は滅菌濾過された。
【0048】
細胞および培養:BMRPA.430(BMRPA1)は、正常のラットの膵臓から確立された自発的に不死にされた細胞系である(Baoら、1994)。TUC3(BMRPA1.K−rasVal12)は、コドン12(Gly−>Val)で発ガン性突然変異を有する活性化されたヒトK−rasを含むプラスミドによるトランスフェクションにより形質転換されたBMRPA1細胞である(Dr.M.Perucho、California Institute for Biological Research、La Jolla)。すべての細胞系は、cRPMI(10%FBS)を用い95%空気−5%COインキュベーター(Forma Scientific)中で37℃で日常的に維持される。細胞は、トリプシン−EDTAにより継代される。細胞は、有効成分のない(spent)培地50%、並びに10%FBSおよび10%DMSOを有する新鮮なcRPMIを含む凍結培地50%からつくられた混合物中で凍結保存される。細胞の生存は、トリパンブルーの排除により評価された。
【0049】
NNK暴露:発ガン物質を含む培地のすべての調製物は、規定された保護的手段を使用してNCIによりデザインされしかも証明された化学フード内で別の実験室内でつくられた。NNK(American Health Foundation、NY)は、PBS中の10mgのNNKの原料溶液として調製され、そしてFBSを含まないcRPMIに添加して、100、50、10、5および1μg/mLの最終濃度にした。継代36(p36)のBMRPA1細胞を10/60mmTCDで接種し、そして6日間成長させた。次に、培地を取り出し、異なる濃度のNNKを含むFBSのないcRPMI(4mL/TCD)により細胞を処理する前に、予め加温した(37℃)FBSのないcRPMIにより細胞を2回洗った。BMRPA1細胞を含むTCDの6番目のセットを、NNKなしのFBSを含まないcRPMIでインキュベートし、そしてコントロールとして使用した。異なる培養条件の6つのセットのそれぞれについて使用される8つのTCDは、37℃かつ95%空気−5%COのインキュベーターに戻した。16時間後、NNK含有培地をすべてのTCDから取り出し、細胞をPBSにより3回洗い、次に新鮮なcRPMI−10%FBS(4mL/TCD)を添加し、そしてインキュベーションを続けた。NNKのないコントロール培地は、平行して処理された。有効成分のない培地の1/2を新鮮なcRPMI−10%FBSにより置換することにより2日置きに細胞に養分を与えた。十分に密集成長したとき、細胞をすべてのTCDから集め、それぞれの群の細胞をプールし、そして新鮮なTCDに2×10で継代した。
【0050】
コロニーの単離:形質転換した細胞の個々のコロニーから細胞を取り出すことを助けるために、コロニーを含む細胞培養物を10細胞/100mmTCDで再接種し、そして7日間成長させた。滅菌パスツールピペットの細い末端を火にあて、急に延ばし、そしてその最も細い点で壊して、細胞の多いコロニーの芯のみを拾い上げるのに十分なほど細かく延伸されたガラス針を作った。NNK処理細胞のみが細胞の多いボール状のコロニーを含んだ。8つの顕著なコロニーの中心の芯を取り出し、〜80−200の緊密に詰まった細胞からなるそれぞれの芯を、24穴の皿のそれぞれである別々の穴に入れた。このように移された4つのコロニーの細胞は、生存しそして増殖した。
【0051】
細胞成長のアッセイ:10%FBSでの細胞の成長を測るために、細胞を、4mLのcRPMI−10%FBSを含むTCD60mmあたり5×10細胞で接種した。3日置きに、3つのTCDを、検討中のそれぞれの細胞系について取り出し、細胞をトリプシン−EDTAにより離し、そしてトリパンブルーの存在下カウントした。低下したFBS濃度を含むcRPMIの細胞成長に対する効果を評価するために、同じ数(1.5×10細胞/mL/穴)のNNK処理および未処理のBMRPA1細胞を、24穴TCDの3つの穴に接種した。細胞をcRPMI 10%FBSで1晩接着させ、PBSにより洗い、そして指示された%のFBSを含むcRPMIにより再インキュベートした。細胞の成長を、クリスタルバイオレット相対的増殖アッセイ(Serrano、1997)の改変により評価した。簡単にいえば、細胞をPBSで洗い、10%緩衝液含有ホルマリンで固定し、次に蒸留水で濯ぐ。細胞を次に0.1%クリスタルバイオレットにより30分間室温(RT)で染色し、dHOにより洗い、そして乾燥した。細胞に結合した染料は、1mLの10%酢酸により抽出され、dHOにより1:2に希釈され、そしてOD600nm測定のために96穴のマイクロタイタープレートに移された。細胞の成長は、24時間でのOD600nm値の読みに対して計算された。
【0052】
BrdUの組み込み:細胞(5×10)を60mmのTCDに置き、そしてcRPMI−10%FBSで成長させた。3日後、BrdU(10uM)を含む新鮮な培地を3時間加え、細胞を洗い、トリプシン−EDTAにより離し、そして組み込まれたBrdUを、製造者(Becton Dickinson)により示唆されたように、FACS分析によりFITC共役抗BrdU抗体(Becton Dickinson)により検出した。簡単にいえば、10トリプシン−EDTA離脱細胞をPBS−1%BSAにより2回洗い、70%エタノールで30分間固定し、そしてRNAアーゼ(0.1mg/mL)中に30分間37℃で再懸濁した。細胞を洗った後、それらのDNAを2NのHCl/トリトンX−100により30分間変性し、そして0.1MのNa10HO、pH8.5により中和した。細胞を次に0.5%ツィーン20を含むPBS−1%BSAで洗い、そして20μLのFITC−抗BrdU抗体を含むPBS−1%BSA溶液中の0.5%ツィーン50μLに再懸濁した。37℃で45分後、細胞を洗い、プロピジウムヨーダイド(0.005mg/mL)およびRNAアーゼA(0.1mg/mL)を含むクエン酸ナトリウム緩衝液1mLに再懸濁した。組み込んだBrdUおよびPI染色を検出するための蛍光活性化細胞選別またはフローサイトメトリー(FACS)分析は、488nmの励起波長を使用してアルゴンイオンレーザーを備えたBecton Dickinson Co.からのFACScan分析器を使用することにより、行われた。データの分析は、LYSYS IIプログラムを使用して行われた。
【0053】
独立したサンプルテストは、BrdUを組み込む未形質変換および形質転換の細胞の統計上有意差%(p<0.05)を示すのに使用された。DNA指標は、(未形質転換BMRPA1細胞のG0/G1ピークに関するPI染色測定)により(調べられた形質転換細胞のG0/G1ピークに関するPI染色測定)を除した比として、DNAヒストグラムから既述(Barlogieら、1983、Alanenら、1990)されたように計算された。
【0054】
足場非依存性成長:4mLの0.5%寒天−培地混合物(寒天は64mLのHO中でオートクレーブにかけられ、水浴中で50℃に冷やされ、そして15mLの5×cRPMI、19mLのFBSおよび1mLのP/Sに添加された)を、25cmのTCFに注ぎ、そして1晩4℃で硬化した。細胞を植える前に、フラスコをCO−空気のインキュベーターに5時間まで37℃で置き、pHおよび温度の平衡を助けた。細胞をトリプシン−EDTAで集め、0.1mLの細胞懸濁物(cRPMI中の40000/mL細胞)をそれぞれのフラスコの寒天の表面上に注意深く分散させ、そして培養物を95%O−5%COを含む37℃のインキュベーターに戻した。24時間後、寒天で被覆されたTCFを逆さにして、過剰の培地を流した。培養物を、ツアイスの倒立顕微鏡を使用してコロニーの成長について9日後および14日後に顕微鏡で調べた。
【0055】
Nu/Nuマウスの腫瘍発生性:Nu/Nuマウス(7週令)をHarlan Laboratories(インディアナポリス、IN)から得た。注入に使用される細胞は、トリプシン−EDTAにより離され、cRPMIで洗い、そして10細胞/mLでPBSに再懸濁された。テストされるそれぞれのマウスに、0.1mLのこの細胞懸濁物を皮下(s.c.)注入した。動物について始めの4週間毎日腫瘍の進展を調べ、次に1週の間隔で調べた。小片の腫瘍(1−2mm)を腫瘍の芯から切り取り、そして4%パラホルムアルデヒドに1晩4℃で置いた。組織を次にPBSで洗い、そして30%しょ糖にさらに24時間置いた。LIpshaw包埋マトリックス(ピッツバーグ、PA)で冷凍された腫瘍の組織の切片をJungクリオスタット(Leica)で作り、ゼラチン被覆スライドに置き、そして−20℃で貯蔵した。H&E染色は、標準の方法により行われた。
【0056】
切除したNu/Nuマウスの腫瘍からのTUNNK細胞系の確立:Nu/Nuマウス中に皮下に移植されたBMRPA1.NNK細胞から成長した腫瘍から細胞を単離することは、いくつかの方法上の変化をともなうAmsterdam,A.ら、1974,J.Cell Biol.63:1037−1056により記載された方法に類似した方法でなされた。腫瘍を有するNu/Nuマウスを、CO窒息により殺し、氷冷したベッドに置き、腫瘍を覆っている皮膚を開き、そして腫瘍を急速に外科的および滅菌的に取り出し、そして急速な処置のため氷上のL−15培地(GIBCO、グランドランド、NY)に入れた。氷冷のL−15培地にある間、組織を小さい片に刻み、次に2サイクルの酵素的消化および機械的な破壊を行った。L−15培地の消化混合物は、コラゲナーゼ(1.5mg/mL)(136U/mg、Worthington Biochem.Corp.)、大豆トリプシン阻害剤(SBTI)(0.2mg/mL)(Sigma Chem.Corp.)、並びにウシ血清アルブミン(BSA;結晶化)(2mg/mL)(Sigma)からなった。始めの消化サイクル(25分、37℃)後、細胞を組織のフラグメントを250×gでペレット化し、そしてSBTI(0.2mg/mL)、BSA(2mg/mL)、EDTA(0.002M)およびHEPES(0.02M)(Boehringer Mannheim Biochem.インディアナポリス)を含む氷冷のCa++およびMg++のないホスフェート緩衝塩水(PD)(S−Buffer)で1回洗った。細胞を再びペレット化し、消化混合物に再懸濁し、そして第二の消化サイクル(50分、37℃)にかけた。まだ消化混合物にある間、残った細胞の塊を、サイズが小さくなる針を付けた注射器およびピペットを使用して細胞懸濁物をピペットで移すことを繰り返して破壊した。細胞懸濁物を次に滅菌200μメッシュおよび20μメッシュのナイロン製Nytex格子(Tetko Inc.エルムスホード、NY)を通して逐次分け、S−Bufferで洗い、そして2−3mLのL−15培地に再懸濁し、50×gで5分間4℃で遠心分離した。細胞のペレットを集め、PBSで洗い、そしてcRPMIに再懸濁した。フラクションのサンプルを、トリパンブルー(Fisher Sci.)排除(Michl J.ら、1976、J.Exp.Med.144(6)、1484−93)によるJo生存細胞カウンティングについて、そして細胞化学的分析について処理した。細胞を、6穴TCDの35mmあたり10細胞でcRPMIに接種し成長させた。
【0057】
顕微鏡写真:細胞培養物のすべての観察および写真は、Leitzカメラおよび位相差光学装置を備えたLeitzの倒立顕微鏡でなされた。観察は、TMX ASA100モノクロームフィルムに記録された。
【実施例2】
【0058】
NNKのBMRPA1形態に対する効果:NNKおよびニトロソアミンへの暴露の繰り返しは、膵臓ガンの種々のけっ歯動物およびヒトの生体外実験モデルにおいて細胞毒性およびガンの形態上の改変を誘導することが観察された(Jones、1981、Parsa、1985、Curphey、1987、Baskaranら、1994)。これらの変化がNNKへの単一の暴露そして比較的低いNNK濃度で誘導されるかどうかを決定する目的で、細胞を、16時間の1回の期間100、50、10、5および1μgNNK/mLを含む無血清培地に曝した。膵細胞による従来の研究で観察されるように、高い濃度のNNKは、弱く付着し退化した死んだ細胞からなる細胞毒性の変化を生じ、そして細胞の成長を遅くし、一方これらの変化は、5および1μgNNK/mLに曝された細胞においてかなり少ないことが観察された。100、50および10μgNNK/mLによる処理の退化的変化は、1週以内に、紡錘体の形態および巣状過密のような腫瘍性の形質転換を示す表現型の変化を出現させた。1μg/mLでNNKにより処理されたBMRPA1細胞は、また腫瘍性の形質転換を特徴とする表現型の変化を示したが、遅い速度で数週間を要した。他の突然変異原について示唆されたように(Strivastavaら、1988)、低い投与量で観察された変化は、ヒトの環境で遭遇するそれらに近い投与量で、NNK誘導病変の特異的かつ選択的な分子部位をより反映していると思われる。その上、1μg/mLにおけるこれらの変化の漸進的な速度は、NKK誘導形質転換の過程における初期および後期の両者の事象の継代毎の研究を可能にする。従って、以下に示される結果は、1μg/mL無FBS培地に1回16時間曝されたBMRPA1細胞により得られた。
【0059】
35継代で培地で連続的に成長したBMRPA1細胞を、形質転換し接触阻害された上皮細胞の代表的な単層の丸石様のパターンに整えた(図1A)。1μgNNK/mLへの暴露2週間後、BMRP1細胞は、細かい形態上の変化を示し、いくつかの分かれた領域における細胞は、それらの多角形の形状を失い始め、そして細胞の島は、細胞質の少ない紡錘形の細胞からなり、そしてより黒い核が形成し始めた(図1B、p2)。継代6(p6)から始まって、密に詰まった紡錘細胞の鎖の頂部およびその内部の円形細胞の数が増加することが観察可能であり(p6−8)、接触阻害剤の損失を示唆した(図1C)。
【0060】
密集細胞の島状領域(細胞増殖巣)は、p7までに明らかになり(図1D、矢印の先端)、そして細胞のボール状凝集は、コロニーとしてこれらの細胞増殖巣の頂部に形成し始めた(p7−11)。第一の明らかに明確なコロニーが、NNK暴露約3月後、p8−9で見られた。最初に、コロニーは小さく(図1D、矢印)そして数は僅かに過ぎないが、それらは、NNK処理BMRPA1細胞が継代されたすべての6TCFで存在した。コロニーは、遙かに低下した付着性を有する密集した塊(図1E)として水平かつ垂直に成長し続け、例えば密集した細胞は、トリプシン処理および繰り返されたピペット処理により容易に分離可能であり、それは、これらの培養物は腫瘍細胞からなると思われることを示している。これらのコロニーのトリプシン処理による急速な破壊は、形質転換BMRP430(BMRPA1)細胞とは直接的に反する。NNKなしの無FBSのcRPMIへ16時間暴露後に平行に連続的に培養されたコントロールBMRPA1細胞は、どんな変化も示さず、そしてBMRPA1細胞の最初の単層から区別できなかった。
【0061】
コロニー形成細胞の表現型および分子の特徴の研究を助けるために、いくつかのコロニーの芯は、細かく延伸されたガラス針により単離され、そして80−200細胞の単離物は、「クローン化BMRPA1.NNK」とよばれる細胞系として別々に成長させた。単離された細胞は、紡錘形から三角形を示し、そしてしばしば、1つ以上の顕著な仁を含む異なるサイズの核を有する多核化された。新しいフラスコに再接種したとき、これらの細胞は、細胞増殖巣およびコロニーを形成する能力を維持した(図1F)。興味のあることに、NNK形質転換BMRPA1に見られるNNK誘導表現型の変化は、ヒトの発ガン性K−rasVal12によるBMRPA1の形質転換中観察されるものと同じであるかまたはそれよりも顕著ではない。H&E染色後肉眼的(図2A)および顕微鏡的(図2C)で容易に観察できるNNK誘導好塩基性細胞増殖巣は、また発ガン性のK−rasVal12によるトランスフェクションにより形質転換されたBMRPA1細胞により形成されるものと類似している(図2Aおよび2D)。対照的に、細胞増殖巣またはコロニーの何れも、未処理BMRPA1細胞の成長中形成されなかった(図2AおよびB)。BMRPA1細胞におけるNNKにより誘導された形態上の変化は、また生体外で培養された他の形質転換した細胞の十分に確立された特徴、すなわち低細胞密度での紡錘形および三角形の細胞の形状、高細胞密度での輪状の外見を有する円形の細胞の形状並びに細胞増殖巣およびそれらの隣接する細胞の頂部の成長により示される接触阻害の損失に類似している(Chung、1986)。
【0062】
NNK誘導超増殖:BMRPA1細胞の増殖に対するNNKの長期の永久的な効果は、最初に、10%FBSを補給されたコンプレックス培地(cRPMI)で培養されたNNK処理および未処理の細胞の細胞成長を比較することにより評価された。BMRPA1、未クローン化NNK処理BMRPA1細胞および「クローン化」BMRPA1NNK細胞すなわちこの実施例で上記で生成された単離された細胞を、TCDに等しい密度で接種された。予定された日で、TCDの細胞は、トリプシン−EDTAにより離され、集められ、そしてトリパンブルーの存在下カウントされた。図3に示されるように、継代46(p46)での未処理BMRPA1細胞は、約9日目でプラトーに達し、接触阻害された成長を示した。対照的に、NNK処理11継代後に関する平行に成長させたNNK処理細胞は、始めの9日間早い成長を示し(図3)、そしてその後成長は、恐らくNNKにより影響をうけなかった未形質転換BMRPA1細胞の連続した存在により、遅くなった。NNK誘導コロニーの芯から単離したクローン化BMRPA.1NNK細胞は、未処理BMRPA1細胞よりかなり早い速度で培養の12日を通して妨げられることなく成長を続け、非常に密な密集過密を生じた。
【0063】
細胞の成長曲線は、接触阻害された成長および細胞死が、観察された細胞の成長に顕著に寄与していると思われるもっぱら高い細胞密度のみでのNNK処理および未処理のBMRPA1細胞の間の顕著な成長を明らかにできたため、低細胞密度で増殖するNNK処理細胞の増加した内在する能力は、BrdUを組み込むこれらの細胞の能力を測ることによりさらに評価された。RNAアーゼ処理細胞におけるBrdU組み込みの測定は、増殖する細胞のS相中のDNA合成を評価するのに日常的に使用されている(Alberts B.ら、2002、Molecular Biology of the Cell、Garland Science、Taylor and Francis、4th ed.NY)。未形質転換BMRPA1.p58、形質転換されかつ未クローンのBMRPA.NNK、p11および形質転換されかつクローン化BMRPA.NNK、p23におけるBrdU組み込みのFACS分析により得られた結果は、NNK処理がBMRPA1における永久的な超増殖性変化を生じたさらなる証拠となった(図4A−4E)。これらの観察は、NNKが、接触阻害の損失および超増殖の両者を誘導することにより、BMRPA1細胞を形質転換できるという実験的証拠をもたらす。
【0064】
未形質転換およびNNK形質転換BMRPA1細胞に対する血清欠損の効果:形質転換細胞の1つのしばしば引用される特徴は、低濃度の成長因子および血清、一次および未形質転換細胞の成長をほとんど支持しない条件でのそれらの選択的な成長の有利さである(Chung、1986、Friessら、1996、Katzら、1997)。未形質転換およびNNK形質転換BMRPA1細胞の血清依存性を確かめるために、細胞を1%、5%および10%のFBSを補給されたcRPMI培地に移し、等しい細胞数で24穴TCPに接種し、そして12日間成長させた。クリスタルバイオレットアッセイを使用して相対的な細胞の成長を評価した(Serrano、1997)。このアッセイは、トリプシン−EDTAにより放出される細胞のカウンティングより顕著な利点をもたらす。それは、それが、低血清濃度でのTCDへの強い細胞の接着により生ずる細胞の損失(不完全な放出および細胞死)を排除するからである。
【0065】
図5でわかるように、形質転換したBMRPA1NNK細胞は、調べられたすべてのFBS濃度で、未処理細胞より選択的な成長の利点を有する。たとえ1%FBSを含むcRPMI培地においてすら、NNK形質転換細胞は、10%FBSを含むcRPMIで培養された未処理cRPMI細胞より良好に成長した。極めて血清を除いた条件で細胞の成長を維持するBMRPA1.NNK細胞の観察された能力は、NNKへの暴露によりBMRPA1細胞の形質転換をさらに支持する。
【0066】
足場非依存性細胞の成長:多くの細胞の悪性の形質転換は、足場非依存性条件下で寒天に成長する新しく獲得した能力を生ずることが示されている(Chung、1986)。寒天上で成長するクローン化BMRPA1.NKKおよび未処理BMRPA1細胞の能力は、細胞を低密度でソフト寒天上に分散させることによって調べられた(実施例1参照)。これらの細胞が14日間にわたってコロニーを形成する能力は、表3に示される。
表 3
コントロールBMRPA1およびNNK処理BMRPA1細胞による寒天上の足場非依存性コロニーの形成
細胞 接種後の日 形成されたコロニーの数
<50細胞 >50細胞 合計
BMRPA1 9 0 0 0
14 0 0 0
BMRPA1.NNK 9 14 15±2.5 17.3±5.2
接眼レンズ計数格子を使用して、コロニーは、一連の30の連続1mmの視野でカウントされた。5TCF+/−SEMからのコロニーの平均カウントが示される。
【0067】
従来の観察(Baoら、1994)と一致するように、BMRPA1細胞は、寒天上に成長できず、そして死んでしまう。逆に、BMRPA1.NNK細胞は、成長しコロニーを形成する強い能力を示した。事実、接種されたBMRPA1.NNK細胞の4つに約1つは、50細胞より大きなコロニーを形成した。寒天上の成長は、腫瘍形質転換を示す。
【0068】
Nu/Nuマウスにおける免疫原性:寒天上に成長した細胞は、Nu/Nuマウスにおいて腫瘍として成長する能力を有する(Shinら、1975、Colburnら、1978)。腫瘍としてNu/Nuマウスにおいて成長する細胞の能力は、悪性形質転換の強い指標であると考えられている(Chung、1986)。その結果、10のクローン化生存BMRPA1.NNK細胞を、Nu/Nuマウスの後側腹部に皮下(s.c.)注入した。マウスの他の群には、未形質転換BMRPA1細胞を同様な条件でs.c.で注入した。Nu/Nuマウスの第三の群には、正のコントロールの目的のために、BMRPA1.K−rasVal12細胞を注入した。それは、これらの細胞が、Nu/Nuマウスにおいて腫瘍を形成することが既に示されているからである。


表 4
Nu/NuマウスにおけるBMRPA1.NNKの腫瘍原性
細胞 腫瘍を有するマウスの数 転移を有するマウスの数
テストされたマウスの数 テストされたマウスの数
BMRPA1 0/5 0/5
BMRPA1.NNK 3/6 1/6
BMRPA1.K−rasVal12 5/5 1/5
BMRPA1細胞は、注入された5Nu/Nuマウスにおいて腫瘍を形成できず、一方BMRPA1.K−rasVal12は、接種4週以内に腫瘍(>1cm)になった急速に成長する小結節(<0.5cm)を形成した。明確に異なったことは、クローン化BMRPA1.NNK細胞を注入されたNu/Nuマウスにおける腫瘍の形成の推移であった。クローン化BMRPA1.NNK細胞を注入された後1週間内では、2−3mmの小結節が、すべての6匹のマウスの注入部位に形成した。小結節は、2ヶ月以内に動物の3匹で消失した。それにもかかわらず、4ヶ月以内の休眠の期間後、残りの3匹の動物の小結節は、次の12−14週以内で、直径1cmより大きい腫瘍に発展した。大きな腫瘍の塊を有するこれらのマウスの1匹は、さらに、腹水を生じ、転移腫瘍細胞の存在を示唆した。BMRPA1.NNK細胞によりそしてBMRPA1.K−ras細胞により形成された腫瘍の病理学的所見は、図6Aおよび6Bに示される。
【0069】
TUNNKと命名された細胞系は、機械的な破壊およびコラゲナーゼ消化を組み合わせた方法により、BMRPA1.NNK注入Nu/Nuマウスで成長する腫瘍の1つから確立された。TUNNKは、Nu/Nuマウス中に注入されたクローン化BMRPA1.NNK細胞に類似の形質転換した形態学的特徴を有する。今までのところ、これら2つの間の唯一の顕著な区別できる表現型の特徴は、細胞の凝集として生体外で浮遊するTUNNKの傾向であり、細胞の接着性における顕著な変化が、生体内の選択的な成長過程中生じたことを示唆した。Nu/NuマウスにおけるNNK形質転換細胞の選択的な成長が、最初のNNK誘導超増殖をさらに増加させたかどうかを確かめるために、TUNNK細胞のBrdU組み込みも、図4に示されたものと同じ条件下で決定された。TUNNKの増殖は、Nu/Nuマウス中に皮下で最初に導入されたクローン化BMRPA1.NNKのそれより僅かに少なかった(図4)。それにもかかわらず、Nu/Nuマウスにおいて腫瘍を形成するNNK形質転換細胞の観察された能力は、1μgNNK/mLへの僅か16時間の暴露でもBMRPA1細胞の悪性の形質転換における重要かつ速度を制限する段階に影響したことを示した
【実施例3】
【0070】
腫瘍関連抗原を同定するための寛容誘導抗体の生成の使用
材料および方法
材料:RPMI 1640、5.5mMのグルコース(DMEM−G+)を含むDMEM、ペニシリン−ストレプトマイシン、HEPES緩衝液、2mMのEDTAを含む0.2%トリプシン、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヤギ血清およびトリプシンブルーは、GIBCO(ニューヨーク)から得た。胎児ウシ血清(FBS)は、Atlanta Biologicals(アトランタ、GA)。選択性HATおよびHTの培地のためのヒポキサンチン(H)、アミノプテリン(A)、およびチミジン(T)並びにPEG1500は、Boehringer Mannheim(ドイツ)から購入した。ジアミノベンジジン(DAB)は、BioGenex(ダブリン、CA)から得た。PBSおよび西洋ワサビペルオキシダーゼラベルヤギ抗マウスIgG[F(ab´)HRP−GαMIgG]は、Cappel Laboratories(コクランビル、PA)から得た。アプロチニン、ペプスタチン、PMSF、ナトリウムデオキシコレート、ヨードアセトアミド、パラホルムアルデヒド、Triton X−100、Trizmaベース、OPD、HRP−GαMIgG、並びに完全な培地のためのすべての微量元素は、Sigma(セントルイス、MO)から購入した。過硫酸アンモニウム、ナトリウムドデシルサルフェート(SDS)、ジチオスレイトール(DTT)、尿素、CHAPS、低分子量マーカーおよび予め染めた(Kaleidoscope)マーカーは、BIORAD(リッチモンド、CA)から得た。増強した化学発光(ECL)キットは、Amersham(アーリントンハイツ、IL)から得た。メルカプトエタノール(2−ME)およびフィルムは、Eastman Kodak(ロチェスター、NY)から得た。組織培養フラスコ(TCF)は、Falcon(マウンテンビュー、CA)から得られ、組織培養皿(TCD)は、Corning(コーニング、NY)から得られ、24穴TCプレート(TCP)および96穴TCPは、Costar(ケンブリッジ、MA)から得た。組織培養チェンバー/スライド(それぞれ8室)は、Miles(ナッパービル、IL)から得た。
【0071】
細胞および培養:すべてのラットの膵細胞系は、10%FBSを含むcRPMIで成長した。他の細胞系は、American Tissue Culture Collection(ATCC)から得たが、ただしラット脈管内皮細胞(E49)は、M.DelPiano博士(Max Planck Institute、ドルトムント、ドイツ)から得た。白血球は、健康なボランティアのドナーから得られ、そしてヒト膵臓組織(マッチングしていない形質転換組織)は、Downstate Medical CenterのOrgan Transplantation DivisionからSommers博士から提供された。細胞の生存は、トリパンブルー排除により調べた。
【0072】
消去式免疫超免疫プロトコール(ISHIP);生存(10)およびパラホルムアルデヒド固定および洗浄(10)細胞の混合物を、腹腔内(ip)でそれぞれの免疫化に使用した。6匹の雌Balb/cマウス(〜12週齢)(Barlan−Sprague Dawley Labs、セントルイス)を使用し、2匹のマウスに、BMRPA1細胞を標準の免疫化中4回注入した。他の4匹のマウスには、同様に3回BMRPA1細胞を注入し、そして最後のブースター注入5時間後、それらに60μgのシクロホスファミド/日/g体重を次の5日間ipで注入した。これらの免疫抑制されたマウスの2匹に、最後のシクロホスファミド注入後BMRPA1細胞を注入した。他の2匹の免疫抑制されたマウスに、1週1回でさらに3回形質転換BMRPA1.NNK細胞を注入し、そして1週後にマウスを、融合前10日間の形質転換BMRPA1.NNK細胞の5回の追加の注入により超免疫化した(ISHIPマウス)。血清を、指示された数の免疫化後1週以内にすべてのマウスから得た。
【0073】
ハイブリドーマおよびmAb増殖:ハイブリドーマは、ほとんど免疫抑制されたISHIPマウスからの脾細胞によるP3U1骨髄腫細胞の融合により、既述(KoehlerおよびMilstein、1975、Pytowskiら、1988)通り得られた。ハイブリドーマ細胞を24穴TCPの288穴で培養した。ハイブリドーマを、10日間HAT DMEM−G+(20%FBS)で最初に成長させ、次に8日間HT含有培地で成長させ、次いでDMEM−G+(20%FBS)で成長させた。ハイブリドーマの上澄みを、免疫蛍光顕微鏡法および免疫組織化学によるさらなる分析のための特異的mAb含有上澄みの選択が行われる前で特異的反応性の存在のための融合3週間後に始まる細胞酵素免疫アッセイ(Cell−EIA)により3回テストした。mAb3D4は、ハイブリドーマ上澄みの50%飽和硫酸アンモニウム中の沈殿により精製され、そしてその後沈殿物をPBSに溶解し、そしてPBSに対して透析した。mAb3D4は、マウスIgG抗体として同定され、そして前記のように(Pytowskiら、1988)、セファロース−ブルークロマトグラフィーにより透析された物質から分離された。IgGフラクションは、Bradfordのアッセイ(BioRad)により測定して、〜10.5mg蛋白/mLを含んだ。
【0074】
細胞−酵素免疫アッセイ(Cell−EIA):BMRPA1およびBMRPA1.NNK細胞を、0.1mLのcRPMI−10%FBSにより3×10/穴でTCP(96穴)に接種した。細胞を24時間接着させ、風乾し、そして室温で真空下貯蔵した。細胞を次にPBS−1%BSAにより再水和し、次にハイブリドーマ上澄みまたはマウス血清の2倍の連続希釈の何れかを各穴へ45分間室温で添加した。PBS−BSAによる洗浄後、HRP−GαMIgG(PBS−1%BSA中1:100)を45分間室温で各穴へ添加した。未結合抗体を次に洗って除き、そしてOPD基質を45分間室温で添加した。基質の色の推移を、マイクロプレートリーダー(Bio−Rad 3550)によりOD490nmで測定した。ハイブリドーマの上澄みについて、0.20より大きいOD490nmの価(未反応血清により得られる負のコントロールODの5倍)は、正と考えられた。
【0075】
未処理細胞に対する間接免疫蛍光アッセイ(IFA):細胞をPBS中の0.02M EDTAによるインキュベーションにより解放し、PBS−1%BSAにより洗い、そして免疫蛍光分析のために氷冷温度で生存したまま処理した。細胞を1時間ハイブリドーマ上澄みまたは血清による懸濁中でインキュベートされ、PBS−1%BSAで洗い(3×)、そしてPBS−1%BSA中で1:40に希釈されたFITC−GαMIgGに曝した。45分後、未結合抗体を洗って除き、そして細胞をエピ蛍光顕微鏡法により調べた。
【0076】
浸透可能化細胞および組織の切片の免疫ペルオキシダーゼ染色:細胞および組織の調製:形質転換および未形質転換のBMRPA1細胞を、組織培養チェンバー中で1×10細胞/0.3mLcRPMI/チェンバーで接種した。2日後、細胞をPBS中4%パラホルムアルデヒドで1晩4℃で固定した。細胞を次にPBS−1%BSAにより2回洗い、そして免疫組織化学染色に使用した。免疫組織化学染色用の膵臓の組織は、0.1Mホスフェート緩衝液pH7.2中の4%パラホルムアルデヒドを濯流したラットの成獣から調製した。固定した膵臓を固定したラットから取り出し、そして1晩4%緩衝したパラホルムアルデヒド中に4℃で保存した。膵臓を次に洗いそして30%しょ糖中に1晩置いた。凍結した組織の切片(10μm)を、Jungクリスタット(Leica)により作成し、ゼラチン被覆ガラススライドに置き、そして−20℃で保存した。細胞系または組織切片を次に1分間4%緩衝したパラホルムアルデヒドで後固定し、トリス緩衝液(TrisB)(0.1M、pH7.6)で洗い、そして15分間室温でTriton X−100(TrisB中0.25%)に置いた。次に、免疫組織化学を既述のように行った(Guzら、1995)。
【0077】
3D4−Agのウエスタンブロット分析:3D4−Agの存在に関してテストされた細胞系を、25cmTCDで密集成長させ、氷冷PBSで洗い、そして50mMのトリス−HCl、1%NP40、0.5%ナトリウムデオキシコレート、0.1%SDS、5mMのEDTA、1μg/mLのペプスタチン、2μg/mLのアプロチニン、1mMのPMSFおよび5mMのヨードアセトアミドからなる0.5mLのRIPA溶解緩衝液(pH8)により氷上でインキュベートした。30分後、残った細胞の残存物を溶解溶液中にこすり落とし、細胞のライゼートを11500×gで15分間遠心分離して不溶の残存物を除いた。膵臓組織からの細胞ライゼートを、ウエスタンブロット分析のために同様な方法で処理したが、異なる点は、組織タイプ1つあたり〜2mmの2つの片を、氷温で1mLのRIPA溶解緩衝液中でDounzeホモゲナイザーでホモゲナイズした。各ライゼートの蛋白濃度は、Bradfordの分析(BioRad)により決定した。細胞の抽出物を、等容量のサンプル緩衝液(125mMのトリス−HCl、2%(v/v)の2−メルカプトエタノール、2%のSDS、0.1%のブロモフェノールブルー、20%v/vのグリセロール、pH6.8)と混合した。各サンプル(20μg/穴)からの蛋白を、既述されたようにSDS−PAGEにより分離し(Laemmli、1970)、そしてニトロセルロース膜上に電気移動させた。膜をTBS−T中の5%(w/v)ドライミルクと1時間インキュベートし、mAb3D4(1:200)およびHRP−GαMIgGを添加し、そして製造者(Amersham)により示唆されたように、化学発光をECLキットを使用して増幅した。テストされたそれぞれの化学発光による関心のある蛋白の存在は、X−OMATフィルム(Kodak)に露出することにより検出された。
【0078】
2D等電点電気泳動/SDS−デュラアクリルゲル電気泳動ポリペプチド分離:未形質転換およびNNK形質転換の細胞を、10細胞/25cmTCFで接種し、3日置きに養分を与え、そして未形質転換細胞が密集に達するまで成長させた。フラスコ中の細胞は、次にBradfordの蛋白測定のためにRIPA緩衝液で、または0.1gのDTT、0.4gのCHAPS、5.4gの尿素、500μLのBio−lyte両性電解質、6mLのddHO、5mMのEDTA、1μg/mLのペプスタチン、2μg/mLのアプロチニン、1mMのPMSFおよび5mMのヨードアセトアミドから作成された溶解緩衝溶液の何れかで溶解された。細胞のライゼートを11500×gで15分間遠心分離して、不溶性の残存物を除いた。Genomic Solution(MA)からのプレキャストの一次元および二次元のゲルおよび装置を次に使用した。蛋白(100μg)を一次元(pI3−10)に入れ、それを300Vで3時間次に1000Vで17時間作動した。それぞれの実験に関する二次元は、20mA/ゲルでプレキャスト10%SDS−デュラアクリルゲル(Genomics Solutions、MA)を使用して作動した。分離されたポリペプチドを、1.25mA/cm(484mA)で1時間半乾燥条件下ニトロセルロース膜上に急速に移すか、または製造者(Genomic Solutions、MA)に従って銀染色するかの何れかを行った。ニトロセルロース膜を次にウエスタンブロット分析による3D4−Ag検出に使用し、後でRev Pro(Genomic Solutions、MA)またはAmido Black(Sigma)の何れかで染色した。一次元のゲルからの0.5cm切片のpH勾配は、前述(O´Farrell、1975)のように測定された。2D分離ポリペプチドの銀染色は、100ASAモノクロ(Kodak)フィルムを使用して写真を作成した。
【0079】
顕微鏡写真:染色された細胞培養または組織サンプルのすべての観察および写真は、125ASAモノクロ、400ASAエクタクローム(Kodak)または1600ASA PROVA(富士)フィルムを使用して、カメラおよび位相差光学装置を備えたLeitzの倒立顕微鏡により行われた。
【実施例4】
【0080】
結果
消去式免疫超免疫プロトコール(ISHIP):2つの密接に関連するコンプレックス抗原間の相違を認識できる抗体を生成するように開発された消去式免疫法は、コンプレックスAgにより共有される免疫優性エピトープに主として応じて増殖するように刺激されたB細胞を選別的に殺す、うまく規定された量のシクロホスファミドの能力を利用する(Aisenberg、1967、Aisenbergら、1968、Williamsら、1992、Mathewら、1987、Pytowskiら、1988)。過去において、ヒツジ赤血球の形の多量のAgによる免疫後のシクロホスファミドの投与は、非常に有効なAg特異性免疫学的寛容を生じたが、一方もし薬剤が少ない量のAgの後に投与されたならば、特異的な免疫学的寛容は有効ではなかった(Aisenberg、1967、Aisenbergら、1968、Playfair、1969)。未形質転換BMRPA1細胞に存在するAg(「寛容原性抗原」)に応じて増殖する免疫細胞のクローンの排除におけるシクロホスファミドの有効性を改善するために、免疫化のプロトコールがデザインされ、それは、BMRPA1細胞による3回の免疫化後にシクロホスファミドが投与された(図7)。シクロホスファミドによる免疫抑制の程度は、最初に、乾燥されたBMRPA1細胞に対する免疫化かつシクロホスファミド処理されたマウスからの血清によるCell−EIAにより評価された。BMRPA1細胞により4回i.p.で免疫化されたマウスから集められた血清は、これらの細胞についてかなりな抗体力価を含んだ(図7A)。対照的に、BMRPA1細胞の3つの注入後、5時間後で次の5日間シクロホスファミドをi.p.注入したとき、強い免疫抑制が、調べられた4匹のマウスすべてに観察された。驚くべきことに、シクロホスファミド処理後のBMRPA1細胞によるブースター注入は、寛容原性抗原に対する抗体力価の回復を生じなかった(図7A)。これらの結果は、ラットの膵臓組織の免疫組織化学により確認された(図7B)。BMRPA1細胞により免疫化されたマウスからの血清の強い交差反応性は、ラット膵臓組織により観察されたが(図7B、左)、一方BMRPA1により免疫化され次にシクロホスファミド処理マウスからの血清は、ラット膵臓組織の染色はほとんど示されなかった(図7B、右)。
【0081】
この研究に使用された投与量でのシクロホスファミドは、Ag特異性の増殖するB細胞およびT細胞を選択的に殺すことがマウスで示されたが、それはまた脾細胞に対する追加の非特異性の細胞毒性効果を有する(Aisenberg、1967、Aisenbergら、1968、Turkら、1927、Lagrangeら、1974,Marinova−Mutafchievaら、1990、Pantelら、1990)。これらの既に記載された非特異性の免疫抑制は、シクロホスファミド処理3−7週後消去式免疫プロトコールに存在することが報告され(Aisenberg、1967、1968)、それは、形質転換BMRPA1.NNK細胞(新規なAg)が未形質転換BMRPA1細胞(寛容原性抗原)に寛容化された動物に導入される時間である。非特異性免疫抑制のこの不完全な状態は、融合に使用される動物の脾臓に存在する形質転換Agに特異的なB細胞の数を低下させ、恐らく所望のmAbの生成を減少させる。その上、たとえ古典的な免疫化において処理されていない免疫系を有する動物がガン細胞を注入されるとき、形質転換に関連するAgが、低い免疫原性を有することが観察された(Old、1981、Shenら、1994)。これらの潜在的な問題を極力解決しそして腫瘍抗原により増殖するように刺激されたB細胞の数を増やすために、シクロホスファミドによるBMRPA1細胞への二次免疫応答の免疫抑制は、10日および16日後の2回のブースター注入のBMRPA1.NNK細胞によるi.p.免疫化を伴い、そしてハイブリドーマ融合に先立つ日に形質転換細胞の他の5つのブースター注入による急速な超免疫化を伴う。ハイブリドーマ融合に使用されるマウスからの超免疫前後に集められた血清で行われたCell−EIAは、BMRPA1.NNK細胞の5回の注入による急速な超免疫がBMRPA1.NNK細胞に対する抗体力価を増大させたことを示した(図7C)。
【0082】
NNK形質転換および未形質転換のBMRPA1細胞間の抗原の相違の検出:288穴から集めたハイブリドーマ上澄みは、乾燥したNNK形質転換および未形質転換のBMRPA1細胞と反応性のIgG抗体の存在下でCell−EIAによりテストされた。融合18−21日目の評価は、調べられた288穴の265(92%)が1つ以上の成長するハイブリドーマを含んだことを確かめた。Cell−EIAにより、穴の73(または23.5%)からの上澄みは、形質転換BMRPA1.NNK細胞と反応した抗体を含んだ。逆に、僅か47(または16.3%)の上澄みはBMRPA1細胞と反応し、BMRPA1.NNK細胞が、未形質転換BMRPA1細胞により発現しない抗原を発現することを示す。その上、BMRPA1細胞と反応性の47ハイブリドーマ上澄みすべては、形質転換BMRPA1.NNK細胞との交差反応性を示した。
【0083】
未処理かつ未形質転換BMRPA1細胞および形質転換BMRPA1細胞との選択されたハイブリドーマ上澄みの免疫反応性:Cell−EIAテストが、乾燥かつ破壊された細胞で実施されたため、上澄み中の抗体は、細胞内および血漿膜の両者のAgに接近し結合できた。認識されたAgの細胞の位置に関する最初の情報を得るために、5ハイブリドーマ上澄みを最初に未処理の細胞のIFAによるさらなるテストについて選択した。それは、Cell−EIAにより、これらの上澄みが、常にBMRPA1.NNK細胞のみ(上澄み3A2、3C4、3D4)によるかまたはBMRPA1.NNKおよびBMRPA1の両者の細胞(上澄み4AB1、2B5)によるかの何れかにより見込みのある強い反応性を示したからである。表5に要約されているように、上澄み3C4、4AB1および2B5は、Cell−EIAの結果と一致して未処理細胞の細胞表面を染色した。驚くべきことに、3C4は、輪状のパターンでBMRPA1.NNK(図8D)およびBMRPA1.K−rasVal12細胞(図8F)を染めたが、未形質転換BMRPA1細胞の細胞表面を染めず(図8H)、形質転換細胞のみの表面膜上の3C4−Agの存在を示した。
表 5
免疫蛍光による未処理細胞による選択された上澄みの免疫反応性
細胞 上澄み
3D4 3A2 4AB1 2B5 3C4
BMRPA1 − − 3+ +/2+ −
BMRPA1.NNK − − 3+ 3+ 3+
BMRPA1.K−rasVal12 − − 3+ +/2+ 3+
*間接免疫蛍光染色の強度は、超免疫マウス(正のコントロール、IFA=3+)および未反応性の有効成分のないハイブリドーマ上澄み(負のコントロール、IFA=(−))からの血清により染められた細胞の平行する調製物に見られるそれと、各サンプルの蛍光強度を比較することによって決定された。
【0084】
EDTAにより放出された未処理の細胞の表面上のAgを認識する他のハイブリドーマ上澄み(2B5および4AB1)は、小斑点状のパターンで形質転換および未形質転換の細胞の血漿膜抗原と反応した(表5)。興味のあることに、ハイブリドーマ上澄み3D4および3A2は、未処理でしかもEDTAにより放出された生きた未形質転換または形質転換のBMRPA1細胞を染めなかった。BMRPA1.NNK乾燥細胞によるCell−EIAによる3D4および3A2の強いしかも持続性の反応性から見て、間接免疫蛍光によるEDTA放出の未処理の細胞との同様な反応性がないことは、3D4および3A2のAgが、恐らく形質転換BMRPA1細胞において細胞内の配置を有することを示した。
【0085】
浸透化されたBMRPA1.NNK細胞の3D4による免疫細胞化学染色:BMRPA1.NNK細胞における3D4−Agの可能な細胞内の位置を確認するために、免疫細胞化学染色を、固定したTriton X−100浸透化された細胞について実施した。図9に示されるように、正のコントロールの血清は、全細胞体、並びに広がった浸透化されたBMRPA1.NNK細胞の拡大する血漿膜を含む細胞の成分のほとんどを染色した(図9F)。おもしろいことに、mAb3D4による染色は、浸透化されたBMRPA1.NNK細胞(図9E)およびBMRPA1.K−rasVal12細胞の細胞質そして特に周辺核の領域に主として維持され、特に強い染色は、活発に分割している細胞であった。逆に、mAb3Dは、浸透化されたが未形質転換BMRPA1細胞と反応せず(図9C)、ガラススライド上のその単層の上皮の外見は、これらの細胞に対して明るくされた免疫マウス血清による染色後、正確に見ることができる(図9D)。最も重要なことは、mAb3D4は、管、腺房および島細胞を含む正常のラットの膵臓組織に存在する異なる細胞タイプと反応せず(図9A)、3D4−Agが形質転換関連抗原であることを示唆している。
【0086】
3D4Agは、41.2kDのけっ歯動物およびヒトのガン関連抗原である。mAb3D4によるウエスタンブロット染色は、K−RasおよびNKK形質転換BMRPA1細胞において〜41.2kDの唯一のバンドを示したが、未形質転換BMRPA1細胞ではそうではなかった(図10)。驚くべきことに、強い3D4−Ag発現は、またBMRPA1.K−rasVal12細胞において観察されるものと同様な分子量のバンドとしてヒト膵臓ガン細胞CAPAN1(図11、レーン6)およびCAPAN2(図示せず)において見られた(図11、レーン2)。3D4−Agは、未形質転換ヒト腺房(図11、レーン4)および管細胞(図11、レーン5)から由来する細胞ライゼートに見いだせなかった。さらに、どんな3D4−Ag発現も、外分泌ラット膵臓腫瘍の一次培養から由来した細胞系であるARIPでは観察されなかった(図5、レーン3)。ラット膵臓腫瘍から由来するARIP細胞が、正常な細胞の行動を示しそして玉石の外観を有する単層として成長しそしてヌードマウスに腫瘍を生成しないことは、注目に値する。
【0087】
ヒト肺ガン(A549)、形質転換原発性胎生期腎ガン(293)、子宮頸類上皮(Hela)、結腸腺ガン(CaCo−2)、正常ヒト白血球(WBC)、マウス線維芽細胞(L929)およびマウス黒色腫細胞(B16)からの細胞における3D4−Agの発現は、またウエスタンブロット分析により調べられた(図12)。強い3D4−Agの発現は、A549ヒト肺ガンおよびB16マウス黒色腫細胞においてのみ観察された(図12、レーン1、7)。3D4のどんな発現も、ヒトガン細胞系の残り、L929マウス線維芽細胞(図12)およびE49ラット脳脈管内皮細胞(図示せず)ではなかった。3D4−Agは、正常のヒト白血球細胞(図12、レーン5)、および原発性ヒト臍帯内皮細胞HUVEC(図示せず)では検出されなかった。これらの結果は、3D4−Agが、そのエピトープおよび分子量がマウス、ラットおよびヒトにおいて数少ない選択されたガン細胞に保存されているガン関連抗原であることを示している。
【0088】
2Dポリペプチド分離次いで銀染色およびウエスタンブロットによる3D4−Agの特徴確認:2次元(2D)ゲル電気泳動は、分子量および等電点に従って全細胞ライゼートからの多数のポリペプチドの分離を可能にしている(O´Farrell、1975)。技術的な進歩がなされて、多量の蛋白の分離を可能にし、結果をさらに再現可能にし、そして検出方法および2Dパターンの解釈の両者を改善することにより、2D分離技術の能力を増大させている(Bauwら、1989、Kovaovaら、1994)。3D4−Agの特徴をよりよく確認するために、100μgの全細胞ライゼート蛋白を、3−10のpH勾配で一次元でpIに従って分離し、次にデュラアクリル電気泳動により二次元で分子量によって分離した。NNK形質転換および未形質転換のBMRPA1細胞からの2D分離ポリペプチドを含むゲルの銀染色は、再現可能な2D分離およびポリペプチドプロフィルを示した(図13Aおよび13B)。NNK形質転換および未形質転換の細胞からの2D分離ポリペプチドの銀染色は、ほとんどのポリペプチドが、未形質転換細胞およびNNK形質転換細胞の何れも同様なレベルで発現することを明らかにした。それにもかかわらず、定量および定性の両方のポリペプチド発現の相違は、BMRPA1細胞とBMRPA1.NNK細胞との間で明確に知ることができた。
【0089】
未染色ゲルからニトロセルロース膜への分離されたポリペプチドの移動次にmAb3D4によるウエスタンブロット分析は、ラット(pI〜6.24+/−0.25、6.30+/−0.20、および6.48+/−0.25)、およびヒト(pI〜6.6、6.7および6.9)の両者の膵臓ガン細胞系における3つの電荷変異型を有するポリペプチドとして3D4−Agを同定した。Rev−ProおよびAmido Blackによる同じ膜のポリペプチド染色は、また、平行して行われるゲルからのポリペプチドの感度のさらに高い銀染色により検出され、全細胞ライゼートにおける他の蛋白に対する3D4−Agの位置を確かめるのに助けとなった(図13D、13C)。容易に認識できる主な蛋白例えばアクチンの位置(43kDにおける)および使用される分子量の標準(ともに2Dおよび1D)は、ヒトおよびラットの両者の細胞における3D4−Agに関する〜41.2kDの分子量を確かめるのに助けになった。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】AからDは、BMRPA1細胞におけるNNKにより誘導された形態学的変化を示す顕微鏡写真である。(図1A)未処理BMRPA1の代表的な上皮の玉石様単層。(図1B−1F)NNK処理BMRPA1細胞。16時間無FBScRPMI中の1μgNNK/mLへの暴露後の連続細胞継代(p2−9)。(図1B)p2、上皮単層中の紡錘体細胞の外観。(図1C)p6、紡錘体細胞の鎖内および頂部の円形細胞。(図1D)p7、TCD全体の細胞増殖巣(矢印)およびコロニーの開始(矢印の先端)。(図1E)p9、多くのコロニーから成長した、示されたもののような細胞の密な塊。(図1F)細いガラス針中への吸引によりコロニーの芯(「クローン化」)から単離されそして紡錘形で接種されさらに細胞の細胞増殖巣および密な塊を形成する能力を維持している細胞。
【図2】Aは、BMRPA1(BMRPA.430)、BMRPA1.NNKおよびBMRPA1.K−rasVal12(TUC3)細胞の培養プレートを示す。細胞増殖巣は、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色により顕微鏡で観察された。BからDは、H&E染色による細胞増殖巣を示す顕微鏡写真である。好塩基性細胞増殖巣からのBMRPA1.NNK細胞(図2C)は、形質転換BMRPA1.K−rasVal12(TUC)細胞の培養で観察されるものと同様である(図2D)。細胞増殖巣は、同じ条件下で成長し染色されたBMRPA1細胞では存在しない(図2B)。
【図3】10%FBSでのBMRPA1.NNKおよびBMRPA1細胞の細胞成長を示したグラフである。細胞(5×10)を60mmTCDに接種し、そして10%FBSを有するcRPMIで成長させた。指示された時間の間隔で、3枚の皿の細胞をトリプシン−EDTAにより離し、そしてカウントした。図3では、黒い三角はBMRPA1、p48細胞を表し、黒い逆三角は、未クローンBMRPA1.NNK、p11細胞を表し、そして白い四角はクローン化BMRPA1.NNK、p23を表す。それぞれの実験は、2回行われ、そして表示された結果は、両方の試験を表す。それぞれの時点について、3枚の細胞のカウント±SDの平均が示される。
【図4】AからDは、細胞の成長を立証するFACS分析の結果である。BrdUは、BMRPA1、p54(図4B)、未クローンBMRPA1.NNK、p13(図4C)およびクローン化BMRPA1.NNK、p23(図4D)に添加された。細胞は同様に処理されたが、BrdU不存在は、負のコントロールとして使用された(図A)。細胞(5×10)を、60mmTCDに接種し、そして10%FBS添加cRPMIで成長させた。3日後、BrdUを新鮮な培地に添加し、そして配合されたBrdUをFACS分析により検出した。それぞれの実験を2回行い、そして示された結果は、両方の実験を示す。Eは、AからDのFACS分析からのデータからなる棒状グラフである。テストされた細胞系のそれぞれに関する配合されたBrdU+/−SDの%は、結果のセクションに含まれている。
【図5】NNK形質転換および未形質転換のBMRPA1細胞における血清損失の効果を示すグラフである。BMRPA1.NNKおよびBMRPA1の細胞は、1.5×10/穴で24穴TCP中に接種され、そして1、5および10%FBSを含むcRPMIで成長させた。指示された時間の間隔で、相対的な細胞の成長は、クリスタルバイオレット分析(Serranoら、1997)により3つの穴で評価された。NNK形質転換および未形質転換のBMRPA1細胞に関する1日目のOD600nm値は、ほとんど同じであった。わずか1%のFBSでのBMRPA1.NNK細胞の成長の利点は、BMRPA1細胞の成長を比較するとき、非常に明らかである。それぞれの実験は、2回行われ、そして示された結果は、両方の実験を表す。それぞれの時点は、1日目に読み取られたOD600nmに対する指示された時点における3つの穴からのOD600nm値の平均の比を示す。
【図6】AおよびBは、(A)BMRPA1.NNK、p23細胞および(B)BMRPA1.K−rasの皮下接種から由来するNu/Nuマウス腫瘍切片のH&E染色を示す顕微鏡写真である。
【図7−A】Cell−EIAにより測定された、未形質転換細胞により発現された抗原に対する抗体の応答の有効なシクロホスファミド排除を示すグラフである。BMRPA1抗原に対する強い免疫抑制はBMRPA細胞のみにより4回免疫化されたマウス(三角、4I(430))と比較して、それぞれ、BMRPA1細胞(またはここではBMRP.430細胞と呼ばれる)により3回免疫化され次にシクロホスファミド(丸、3免疫化(3I)BMPRA.430細胞(430)+Cy)を注入されそして同じ細胞(四角、3I(430+Cy+I(430))を1回再注入されたマウスについて観察された。相対的な抗体の力価は、連続的に希釈された血清およびBMRPA1(BMRP.430)細胞に対するCell−EIAを使用して、2回測定された。
【図7−B】ラット膵臓の免疫組織化学を示す顕微鏡写真であり、シクロホスファミドによる免疫抑制を確認している。BMRPA1細胞による4回の連続した免疫化後得られた血清は、その場でラットの膵細胞を強く染色した(左)。3回免疫化され次にCy処理されそしてBMRPA1細胞により再免疫化されたマウスからの血清による染色の不存在は、BMRPA1細胞に対する免疫応答のシクロホスファミド誘導抑制の有効性を確実にしている。
【図7−C】BMRPA1.NNK細胞(またここではBMRPA.430.NNK細胞と呼ばれる)による超免疫化が抗体の生成を増加することを示すグラフである。ハイブリドーマ融合前の日時におけるBMRPA1.NNK細胞による追加の5免疫化(5I)は、BMRPA1.NNKによる3I次にシクロホスファミド免疫抑制の標準のプロトコールにより得られたAb力価をさらに増大した。BMRPA1.NNK細胞に関するCell−EIAは、それぞれ3I(430)+Cy+3I(BMRPA1.NNK、四角)および3I(430)+Cy+8I(BMRPA1.NNK、丸)後の血清についてそして免疫前コントロール血清(三角)についてなされた。2つの穴の光学密度(OD490nm)の読み取りは、±SDで平均されて、BMRPA1.NNK細胞の追加の5注入(シクロホスファミド処理後合計8注入)による急速な超免疫化後の抗体力価を測定した。
【図8】AからJは、ハイブリドーマ上澄み3C4が、2つの独立した形質転換細胞系の細胞表面に位置するAgを認識することを示す顕微鏡写真である。細胞はEDTAにより離脱され、そして氷上の未処理かつ生きている細胞は3C4上澄みおよびFITC−GαMIgGと次々と反応した。細胞は、洗浄されそしてガラススライドに置かれ、そして可視(図8A、8C、8E、8Gおよび8I)および紫外線(図8B、8D、8F、8Hおよび8J)の下で写真にとった。線状の輪のような染色パターンが、形質転換BMRPA1.NNK細胞(図8D)およびBMRPA1.K−rasVal12細胞(図8F)で観察され、BMRPA1細胞における染色が全くないこと(図8H)は、3C4が細胞表面形質転換関連抗原を認識していることを示す。図8Bは、BMRPA1.NNK細胞の強い染色が、BMRPA1.NNK細胞により超免疫化されたマウスからの融合前の血清で観察されることを示している(正のコントロール)。図8Jは、形質転換BMRPA1.K−rasVal12TUC3の染色が、未反応の有効成分のないハイブリドーマ上澄みにより進み、そしてFITC−GαMIgGは観察されない(特異性コントロール)ことを示す。
【図9】AからFは、3D4が、未形質転換ラット膵細胞から存在していないBMRPA1.NNK細胞中の細胞内抗原を認識することを示す顕微鏡写真である。mAb3D4または免疫血清を使用し次にHRPGαMIgGおよびHRP反応基質ジアミノベンジジン(DAB)によって検出する免疫細胞化学染色は、固定したTriton X−100(1%)浸透可能化細胞系(図9C−9F)およびラット膵臓の凍結切片(図9Aおよび9B)について行われた。図9A、9Cおよび9Eに使用されるサンプルは、mAb3D4により処理され、図9B、9Dおよび9Fにおけるサンプルは、BMRPA1.NNK細胞により直接免疫化されたマウスからの血清により処理された。染色は、浸透可能化されたBMRPA1.NNK細胞(図9E)で観察されたが、浸透可能化された未形質転換BMRPA1細胞(図9C)または浸透可能化正常ラット膵細胞(図9A)ではそうではなかった。予想されたとおり、BMRPA1.NNK細胞により直接免疫化されたマウスからの血清は、正常な膵臓組織(B)、BMRPA1(D)およびBMRPA1.NNK細胞(図9F)と広範囲な交差反応性を示す。
【図10】形質転換BMRPA1細胞における約39kD抗原として3D4抗原の同定を示すウエスタンブロットである。10%SDS−PAGEゲルで分離されたそれぞれの細胞ライゼート(30μg)から等量の蛋白をニトロセルロースに移し、次にmAb3D4およびHRP−GaMIgGとの連続するインキュベーションを行った。Ag−Abコンプレックスの位置を次に増大したECLおよびXomatフィルムへの露出により可視化された。レーン1、BMRPA1細胞、レーン2、BMRPA1.NNK細胞、レーン3、BMRPA1.K−rasVal12細胞。レーン4では、有効成分のないP3U−1骨髄腫培地は、BMRPA1.NNK細胞ライゼート(特異性コントロール)の免疫ブロティング中mAb3D4を置換した。
【図11】正常の管および腺房のヒト膵細胞においてではないCAPAN−1における3D4−Agの存在の同定を示すウエスタンブロットである。ウエスタンブロット分析は、図10で記載したように行ったが、ただしそれぞれ細胞ライゼートからの蛋白20μgが12%SDS−PAGEゲルで分離された。レーン1、BMRPA1.K−rasVal12細胞(負のコントロール、mAb3D4なし)、レーン2、BMRPA1.K−rasVal12細胞、レーン3、ARIP細胞、レーン4、ヒト膵臓腺房組織、レーン5、ヒト膵臓管組織、レーン6、CAPAN−1細胞、レーン7、MIA PaCa−2細胞。
【図12】ヒト肺ガンおよびマウス黒色腫から由来する細胞系における3D4−Agの同定を示すウエスタンブロットである。ウエスタンブロット分析は、図11に記載したように行われるが、ただしレーン1、ヒト肺ガンA549細胞、レーン2、ヒト結腸ガンCaCO−2細胞、レーン3、ヒト子宮頸ガンHeLa細胞、レーン4、ヒト胚腎臓293細胞、レーン5、ヒト白血球(WBC)、レーン6、マウス線維芽細胞L929細胞、レーン7、マウス黒色腫B16細胞、レーン8、有効成分のないP3U−1黒色腫培地に曝されたヒト肺ガンA549細胞(特異性コントロール)である。
【図13】A、BおよびCは、2Dポリペプチド分離2D等電点電気泳動/全細胞ライゼートからのポリペプチド100μgのデュラアクリルゲル電気泳動分離次いでBMRPA1(図13A)およびBMRPA1.NNK(図13B)の銀染色によるラット3D4−Agの特性測定を示す。銀染色したゲルと平行して行われた未染色ゲルからの分離されたポリペプチドは、ニトロセルロース膜に移された。膜のウエスタンブロット分析(図13D)は、ラット3D4−Agが、3つの電荷イソ型(6.24+/−0.25、6.3+/−0.20、6.5+/−0.25のpI)を有することが明らかにされ、そしてBMRPA1.NNK細胞における41.2kDの分子量を確認した。ニトロセルロース膜は、Amino BlackまたはRevProの何れかで染色されて、その発現パターンが銀染色ゲルで認識可能な主な蛋白に関連して3D4−Agの位置を明らかにした。ラット3D4−Agは、3つの別々の実験で同じ位置で見いだされた(図113C、矢印の先端)。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)動物に、抗原の第一のセットを投与しそして第一および第二の免疫応答を可能にし、
(b)動物に、急速に増殖する免疫細胞の成長を阻害する免疫抑制剤を投与し、
(c)動物に、抗原の第一のセットに類似または関連しているがそれとは別個の抗原の第二のセットを投与し、そして
(d)抗原の第二のセットに対する抗体の力価を上昇させるのに十分なそして抗原の第二のセットに対する抗体を分泌する形質細胞の動物の脾臓への増大した移入を生じさせるのに十分な抗原の第二のセットのブースター注入を投与する
ことからなることを特徴とする動物の免疫応答を免疫学的に弱いかまたは稀な抗原に向けなおす方法。
【請求項2】
(a)動物に、抗原の第一のセットを投与しそして第一および第二の免疫応答を可能にし、
(b)動物に、急速に増殖する免疫細胞の成長を阻害する免疫抑制剤を投与し、
(c)動物に、抗原の第一のセットに類似または関連しているがそれとは別個の抗原の第二のセットを投与し、
(d)抗原の第二のセットに対する抗体の力価を上昇させるのに十分なそして抗原の第二のセットに対する抗体を分泌する形質細胞の動物の脾臓への増大した移入を生じさせるのに十分な抗原の第二のセットのブースター注入を投与し、
(e)脾細胞を動物から単離し、そして
(f)単離した脾細胞を培養で無期限に複製できる骨髄腫細胞または形質転換細胞と融合して、免疫学的に弱いかまたは稀な抗原と特異的に応答するモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを生成する
ことを特徴とする免疫学的に弱いまたは稀な抗原と特異的に応答するモノクローナル抗原を生成する方法。
【請求項3】
免疫抑制剤がシクロホスファミドである請求項1または2の方法。
【請求項4】
抗原の第一のセットが、未形質転換細胞からなり、そして抗原の第二のセットが、腫瘍的に形質転換された該細胞から由来する細胞からなる請求項1または2の方法。
【請求項5】
抗原の第二のセットが、天然の形および変性された形の両方の抗原からなる請求項1または2の方法。
【請求項6】
抗原の第一のセットが、BMRPA1(BMPRA.430)細胞からなり、そして抗原の第二のセットが、BMRPA1.NNK細胞からなる請求項4の方法。
【請求項7】
抗原の第一のセットが、BMRPA1(BMPRA.430)細胞からなり、そして抗原の第二のセットが、TUC3(BMRPA1.K−rasval12)細胞である請求項4の方法。
【請求項8】
抗原の第二のセットが、腫瘍関連抗原または腫瘍特異抗原からなる請求項4の方法。
【請求項9】
がん関連抗原が膵臓がん関連抗原である請求項8の方法。
【請求項10】
腫瘍関連抗原が膵臓腫瘍関連抗原である請求項8の方法。
【請求項11】
培養培地が、約0.02Mのグルタミン、約0.01−約0.1MのHEPES緩衝液、培地1Lあたりの酢酸1mLあたり約0.001−約0.01mgの範囲の酢酸に溶解したウシインスリン、約1−約8×10−7MのZnSO、約1−約8×10−10MのNiSO6HO、5×10−7−約5×10−6MのCuSO、5×10−7−約5×10−6MのFeSO、約5×10−7−約5×10−6MのMnSO、約5×10−7−約5×10−6Mの(NHMn24、培地1Lあたり約3−約0.7mgのNaSeO、約1×10−10−約8×10−10MのSnCl2HOおよび約5×10−4−約5×10−5Mのカルバミルコリンからなり、該培地が約6.8−7.4の範囲に調節されたpHを有することを特徴とする分化状態でBMRPA1細胞を維持できる培地。
【請求項12】
請求項2の方法により生成されたモノクローナル抗体。
【請求項13】
約12−約24時間1μgのNNK/mL培地に曝された形質転換したBMRPA1(BMPRA.430)細胞。
【請求項14】
請求項13の細胞から由来する細胞系BMRPA1.NNK。
【請求項15】
BMRPA1.NNK細胞を注入されたマウスの腫瘍から由来する細胞系TUNNK。
【請求項16】
SDS−PAGEにより測定されて約41.2kDの分子量、
約5.9−約6.9の等電点電気泳動のpI、そして
BMRPA1.NNK細胞、BMRPA1.TUC3細胞、BMRPA1.TUNNK細胞、ヒト膵臓ガン細胞系CAPAN1、CAPAN2、A549ヒト肺ガン細胞およびB16マウス黒色腫細胞で検出可能
を特徴とする実質的に純粋な形のガン関連抗原3D4−Ag。
【請求項17】
抗原が、
SDS−PAGEにより測定されて約41.2kDの分子量、
約5.9−約6.9の等電点電気泳動のpI、そして
BMRPA1.NNK細胞、BMRPA1.TUC3細胞、BMRPA1.TUNNK細胞、ヒト膵臓ガン細胞系CAPAN1、CAPAN2、A549ヒト肺ガン細胞およびB16マウス黒色腫細胞で検出可能である
ことを特徴とするガン関連抗原3D4−Agへの特異的な結合特異性を有する抗体。
【請求項18】
モノクロール抗体である請求項17の抗体。
【請求項19】
請求項16の3D4−Agと特異的に免疫応答可能なモノクロール抗体を生成するネズミ科のハイブリドーマ細胞。
【請求項20】
請求項19のハイブリドーマにより分泌されるモノクロール抗体mAb3D4。
【請求項21】
ハイブリドーマが、BMRPA1およびBMRPA1.NNK細胞の表面で抗原に結合する抗体を生成する請求項6の方法により生成したハイブリドーマ。
【請求項22】
該抗体がmAb4AB1またはmAb2B5である請求項21のハイブリドーマにより生成された抗体。
【請求項23】
ハイブリドーマが、BMRPA1.NNK細胞の抗原に結合するが未形質変換BMRPA1細胞とは結合しない抗体を生成する請求項6の方法により生成されたハイブリドーマ。
【請求項24】
抗体がmAb3A2である請求項23のハイブリドーマにより生成される抗体。

【図3】
image rotate

image rotate

【図5】
image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

image rotate


【公表番号】特表2006−521095(P2006−521095A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503160(P2006−503160)
【出願日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/002562
【国際公開番号】WO2004/067553
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(504344842)ザ リサーチ ファンデーション オブ ステイト ユニバーシティ オブ ニューヨーク (8)
【Fターム(参考)】