説明

寸法安定性不織布繊維ウェブ並びにその製造及び使用方法

寸法安定性不織布繊維ウェブには、1つ以上の熱可塑性ポリエステルと、ウェブの重量に対して0重量%超えて10重量%以下の量のポリプロピレンとから形成される複数の連続繊維が含まれる。このウェブは、繊維のガラス転移温度を超える温度まで加熱されたときに、ウェブの平面内で少なくとも1つの寸法の減少が10%以下である。熱可塑性ポリエステルが脂肪族ポリエステル及び芳香族ポリエステルから選択された場合は、分子配向を呈する実質的な連続繊維を製造するのに、スパンボンドプロセスが使用できる。熱可塑性ポリエステルが脂肪族ポリエステルから選択された場合は、分子配向を呈さない不連続繊維を製造するのに、メルトブローンプロセスが使用できる。このウェブは、濾過、音吸収、断熱、表面洗浄、細胞成長支援、薬物送達、個人用衛生、医療用衣類、又は創傷包帯のための物品として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2009年3月31日出願の米国特許仮出願第61/165,316号及び2009年6月11日出願の同第61/186,374号の利益を主張し、その開示事項は参照によりその全体が本願に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は寸法安定性不織布繊維ウェブ、並びに、かかるウェブの製造及び使用方法に関する。本開示は更に、例えば生分解性物品及び生体適合性物品などの物品を製造するのに有用な、ポリプロピレンと脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルとの配合物を含む寸法安定性不織布繊維ウェブに関する。
【背景技術】
【0003】
溶融紡糸(又はスパンボンドプロセス)は、ダイの小さな開口部から溶融したポリマーを押し出すことによって繊維を形成し、そのスパンフィラメントを均一な無作為状態でベルト上に集め、その繊維を結合させて凝集性ウェブを形成する、プロセスである。メルトブロー(又はMB)は、加熱された高速のガスジェットに囲まれた小さな開口部から溶融したポリマーを押し出すことによって繊維を形成し、その吹き出されたフィラメントを凝集ウェブとして集めるプロセスである。このプロセスは吹込マイクロファイバー(又はBMF)プロセスとも呼ばれる。
【0004】
ポリ(エチレン)テレフタレート(PET)などのポリエステル、及びポリ(プロピレン)(PP)などのポリオレフィンは、BMF及びスパンボンドなどのプロセスにより、布地繊維、パッケージングフィルム、飲料用ボトル、及び射出成形物品の商業用生産において、一般的に使用される2つの石油系ポリマーである。PETは、他の商業的に有用なポリマーに比べ、より高い融点と優れた機械的及び物理的特性を有しているが、ガラス転移温度を上回る温度において寸法安定性に劣っている。例えば、PET及びポリ(エチレン)テレフタレートグリコール(PETG)などの芳香族ポリエステル、並びに/又はポリ(乳酸)(PLA)などの脂肪族ポリエステルのポリエステル繊維、並びにそのような繊維を含むウェブは、高温に曝されると、元の長さの最大40%縮むことがあり、これは、配向された分子のアモルファス部分が、熱に曝されることにより、弛緩するためである(Narayanan,V.、Bhat,G.S.及びL.C.Wadsworth、TAPPI Proceedings:Nonwovens Conference & Trade Fair.(1998)29〜36)。
【0005】
更に、PETは一般に、溶融状態からの結晶化が遅いため、高速プロセスが含まれる用途に好適であるとは見なされていない。商業用製造速度では、このポリマーは十分に成長した結晶を形成する機会が極めて少ない。PET繊維から調製される物品は通常、生産される構造の寸法を安定させるために、繊維の紡糸プロセス中に延伸及び熱固定(例えば焼きなまし)の追加段階を実施する必要がある。
【0006】
加えて、例えば、PET及びPPなどの石油系ポリマーを、資源再生可能なポリマー、すなわち、植物系材料に由来するポリマーに置き換えることへの関心も高まっている。理想的な資源再生可能なポリマーは「二酸化炭素ニュートラル」であり、植物系材料を生成するときに消費される二酸化炭素の量は、製品が製造され、廃棄されるときに排出されるのと同じ量である、ということを意味する。生分解性物質は、堆肥化を導く条件に曝されたとき、分解されるのに適切な特性を有する。生分解性であると考えられる物質の例としては、PLA、ポリ(グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)、ラクチドとグリコリドとのコポリマー、ポリ(コハク酸エチレン)及びこれらの組み合わせなどの脂肪族ポリエステルが挙げられる。
【0007】
しかしながら、比較的高い溶融粘度を有する熱可塑性脂肪族ポリエステル樹脂は、一般に、ポリプロピレンで可能な同じ繊維直径では不織布ウェブを作ることができないため、ポリ(乳酸)などの脂肪族ポリエステルをBMFに使用する際には、困難がしばしば生じる。ポリエステルウェブのより粗い繊維直径は、繊維直径によって最終製品の特性が制御されるため、それらの用途を制限する場合がある。例えば、粗い(course)繊維は著しく硬く、皮膚と接触する用途には魅力が小さいものとなる。更に、粗い繊維は、より低いバリア特性を有する(例えば、水性流体に対して撥水性の低い)ウェブにつながる場合がある、より高い多孔率を備えるウェブを製造する。
【0008】
マイクロファイバーなどの脂肪族ポリエステルの処理については、米国特許第6,645,618号(Hobbsら)に記載されている。米国特許番号第6,111,160号(Gruberら)は、メルトブローン及びスパンボンドプロセスを介して不織布物品を形成するための、溶融安定性ポリラクチドの使用を開示している。第JP6466943A号(Shigemitsuら)は低収縮特性のポリエステル系及びその製造の取り組みについて記述している。米国特許出願公開第2008/0160861号(Berriganら)は、ポリエチレンテレフタレート及びポリ乳酸のメルトブローン繊維を押し出すことと、そのメルトブローン繊維を最初の不織布繊維ウェブとして集めることと、その最初の不織布繊維ウェブを、制御された加熱及び冷却操作によって焼きなますこととを含む、結合した不織布繊維ウェブの製造方法を記述している。米国特許第5,364,694号(Okadaら)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)系メルトブローン不織布及びその製造を記述している。米国特許第5,753,736号(Bhatら)は、核生成剤、強化材及びこれらの組み合わせの使用により、縮みを低減したポリエチレンテレフタレート繊維の製造を記述している。米国特許第5,585,056号及び同第6,005,019号は、吸収性ポリマー繊維、並びにステアリン酸及びその塩を含有する可塑剤を含む外科用物品を記述している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
全般に、本開示の発明は、寸法安定性不織布繊維ウェブ、並びにそのようなウェブの製造及び使用の方法に関する。一態様において、本開示は、脂肪族ポリエステル及び芳香族ポリエステルから選択される1つ以上の熱可塑性ポリエステルを含む複数の連続繊維と、ウェブの重量に対して0重量%超えて10重量%以下の量のポリプロピレンと、を含むウェブに関連し、この繊維は分子配向を呈し、ウェブ全体で実質的にエンドレスに延在し、更に、ウェブが、繊維のガラス転移温度を超えるが繊維の融点よりは低い温度まで加熱されたときに、ウェブの平面内で少なくとも1つの寸法の減少が10%以下である。幾つかの代表的な実施形態において、繊維の分子配向は、少なくとも0.01の複屈折値をもたらす。多くの実施形態において、この繊維はマイクロファイバーであり、特に微細繊維である。
【0010】
幾つかの代表的な実施形態において、熱可塑性ポリエステルは、少なくとも1つの芳香族ポリエステルを含む。特定の代表的な実施形態において、この芳香族ポリエステルは、ポリ(エチレン)テレフタレート(PET)、ポリ(エチレン)テレフタレートグリコール(PETG)、ポリ(ブチレン)テレフタレート(PBT)、ポリ(トリメチル)テレフタレート(PTT)、これらのコポリマー、又はこれらの組み合わせから選択される。他の代表的な実施形態において、熱可塑性ポリエステルは、少なくとも1つの脂肪族ポリエステルを含む。特定の代表的な実施形態において、この脂肪族ポリマーは、1つ以上のポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、これらの配合物、及びこれらのコポリマーから選択される。特定の代表的な実施形態において、この脂肪族ポリエステルは半結晶質(semicrystalline)である。
【0011】
別の一態様において、本開示は、脂肪族ポリエステルから選択される1つ以上の熱可塑性ポリエステルを含む複数の繊維と、ウェブの重量に対して0重量%超えて10重量%以下の量のポリプロピレンとを含むウェブに関連し、この繊維は分子配向を呈さず、更に、ウェブが、繊維のガラス転移温度を超えるが繊維の融点よりは低い温度まで加熱されたときに、ウェブの平面内で少なくとも1つの寸法の減少が10%以下である。特定の代表的な実施形態において、この熱可塑性ポリエステルは、1つ以上のポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、これらの配合物、及びこれらのコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの脂肪族ポリエステルを含む。特定の代表的な実施形態において、この脂肪族ポリエステルは半結晶質である。多くの実施形態において、この繊維はマイクロファイバーであり、特に微細繊維である。
【0012】
本開示の前述の態様の両方に関する追加の代表的な実施形態において、複数の繊維は、熱可塑性ポリエステルとは異なる熱可塑性(コ)ポリマーを含み得る。更なる代表的な実施形態において、この繊維は、可塑剤、希釈剤、界面活性剤、粘度調整剤、抗菌成分、又はこれらの組み合わせのうち少なくとも1つを含み得る。幾つかの特定の代表的な実施形態において、この繊維は、メジアン繊維径が約25μm以下を呈する。これら実施形態の特定のものにおいて、この繊維は、メジアン繊維径が少なくとも1μmを呈する。追加の代表的な実施形態において、ウェブは生体適合性である。
【0013】
更なる実施形態において、寸法安定性不織布ウェブは、例えばPLAなどの、脂肪族ポリエステルの粘度を低減させるための粘度調整剤の使用によって形成され得る。特定の代表的な実施形態において、この粘度調整剤は、アルキルカルボキシレート、アルケニルカルボキシレート、アラルキルカルボキシレート、アルキルエトキシ化カルボキシレート、アラルキルエトキシ化カルボキシレート、アルキルラクチレート、アルケニルラクチレート、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0014】
幾つかの代表的な実施形態において、このウェブは、熱可塑性ポリエステル及びポリプロピレンの溶融混合物から形成された、寸法安定性不織布繊維ウェブである。更なる代表的な実施形態において、この寸法安定性不織布繊維ウェブは、スパンボンドウェブ、吹込マイクロファイバーウェブ、水流交絡ウェブ、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0015】
更なる態様において、本開示は、脂肪族ポリエステルから選択される1つ以上の熱可塑性ポリエステルと、混合物の重量に対して0重量%を超えて10重量%以下の量のポリプロピレンとの混合物を形成する工程と、この混合物から複数の繊維を形成する工程と、この繊維の少なくとも一部を回収してウェブを形成する工程と、を含む、寸法安定性不織布繊維ウェブの製造方法に関連し、この繊維は分子配向を呈し、ウェブ全体で実質的にエンドレスに延在し、更に、ウェブが、繊維のガラス転移温度を超えるが繊維の融点よりは低い温度まで加熱されたときに、ウェブの平面内で少なくとも1つの寸法の減少が10%以下である。幾つかの実施形態において、この繊維は、溶融紡糸、フィラメント押出成形、電界紡糸、ガスジェット繊維形成、又はこれらの組み合わせを使用して形成され得る。
【0016】
更なる別の態様において、本開示は、1つ以上の熱可塑性脂肪族ポリエステルと、混合物の重量に対して0重量%超えて10重量%以下の量のポリプロピレンとの混合物を形成する工程と、この混合物から複数の繊維を形成する工程と、この繊維の少なくとも一部を回収してウェブを形成する工程と、を含む、寸法安定性不織布繊維ウェブの製造方法に関連し、この繊維は分子配向を呈さず、更に、ウェブが、繊維のガラス転移温度を超えるが繊維の融点よりは低い温度まで加熱されたときに、ウェブの平面内で少なくとも1つの寸法の減少が10%以下である。幾つかの代表的な実施形態において、繊維はメルトブロー(例えばBMF)プロセスを使用して形成され得る。
【0017】
幾つかの代表的な実施形態において、この方法は更に、例えばウェブの加熱又は冷却を制御することによる、寸法安定性不織布繊維ウェブのポストヒーリング(post healing)を含み得る。
【0018】
更なる一態様において、本開示は、上述の寸法安定性不織布繊維ウェブを含む物品に関連し、この物品は、気体濾過物品、液体濾過物品、音吸収物品、断熱物品、表面洗浄物品、細胞成長支持物品、薬物送達物品、個人用衛生物品、創傷包帯物品、及び歯科衛生物品から選択される。特定の代表的な実施形態において、この物品は外科用ドレープである。他の代表的な実施形態において、この物品は外科用ガウンである。他の代表的な実施形態において、この物品は殺菌ラップである。更なる代表的な実施形態において、この物品は創傷接触材料である。
【0019】
本開示による寸法安定性不織布繊維ウェブの代表的実施形態は、様々な用途での使用を可能にする構造的特徴を有し、非常に優れた吸収特性を有し、低ソリディティによる高い気孔率及び透過性を示し、及び/又はコスト面で効率的な方法で製造し得る。形成される繊維の直径が小さいため、ウェブはポリオレフィンウェブに似た柔らかな感触を有し得るが、多くの場合、使用されるポリエステルの高弾性率により、優れた引張り強度を呈する。
【0020】
例えば芯鞘型構造又は並列構造などの2成分繊維を調製することができ、これはサブマイクロファイバーを含む、2成分マイクロファイバーであり得る。しかしながら、本開示の代表的な実施形態は特に、単一成分繊維で有用かつ有利であり得る。他の利益のなかでも、単一成分繊維が使用可能であることにより、製造の複雑さが緩和され、ウェブ使用に対する制限がより少なくなる。
【0021】
本開示による、寸法安定性不織布繊維ウェブを製造する代表的な方法は、より高い製造速度、より高い製造効率、より低い製造コスト、及び同様の観点により、有利であり得る。
【0022】
以上が本発明の代表的実施形態の様々な様態及び効果の要約である。上記の概要は、本発明の図解された各実施形態、又は本発明のあらゆる実施を記載するものではない。以下の「発明を実施するための形態」及び「実施例」により、本明細書に開示される原理を利用した特定の現在好ましい実施形態をより具体的に例示する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は全般に寸法安定性不織布繊維ウェブ又は布地に関する。このウェブには、押し出し成形可能であるように好ましい融解プロセスが可能なコポリマー混合物から形成された複数の繊維が含まれる。寸法安定性不織布繊維ウェブは、押し出しの前又は押し出しの最中に、脂肪族及び/又は芳香族ポリエステルを、ウェブの重量に対して0重量%超えて10重量%以下の量のポリプロピレン(PP)と混合することによって調製され得る。結果として得られるウェブは、ウェブがその繊維のガラス転移温度を超えて加熱されたときに、ウェブの平面内で少なくとも1つの寸法の減少が10%以下である。特定の実施形態において、繊維は分子配向を呈し得る。
【0024】
ウェブの平面内とは、ウェブのx−y平面を指し、またこれはウェブの機械方向及び/又は横断方向としても参照され得る。よって、本明細書において記述される繊維及びウェブは、ウェブの平面内の少なくとも1つの寸法方向、例えば機械方向又は横断方向を有し、この寸法は、ウェブがその繊維のガラス転移温度を超えて加熱されたときに、減少が10%以下である。
【0025】
本明細書において記述される繊維ウェブ又は布地は、ウェブがその繊維のガラス転移温度を超えて加熱されたときに、寸法安定性である。このウェブは、芳香族及び/又は脂肪族ポリエステル繊維のガラス転移温度を15℃、20℃、30℃、45℃及び更には55℃上回って加熱されてよく、このウェブは寸法安定性を維持する。すなわち、ウェブ平面内の減少が10%以下である少なくとも1つの寸法方向を有する。ウェブは、繊維を融解させる温度まで加熱されるべきではなく、それによって、分子量の喪失又は変色などの特性によって示されるような、明らかな劣化が繊維に生じるからである。
【0026】
理論に束縛されるものではないが、PPの凝集体はここで、フィラメントの芯を通って均一に分配され得ると考えられ、ポリオレフィンは選択的な相溶性添加物として作用すると考えられる。PPは、ウェブに対して低い重量パーセントでポリエステルと混合し、鎖の動きを物理的に阻害するため、これにより冷却結晶化を抑制し、巨視的な収縮が観察されなくなる。PPの重量パーセントが更に増えて10重量パーセントを超えると、PP及びポリエステル相が分離し、ポリエステルの再構成は影響を受けない。
【0027】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば「化合物(a compound)」を含有する微細繊維への言及は、2種以上の化合物の混合物を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、用語「又は」は、その内容が特に明確に指示しない限り、一般的に「及び/又は」を包含する意味で用いられる。
【0028】
本明細書で使用するとき、末端値による数値範囲での記述には、その範囲内に包含されるあらゆる数値が含まれる(例えば1〜5には1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、及び5が含まれる)。
【0029】
特に指示がない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用されている量又は成分、及び性質の測定値などを表わす全ての数は、全ての例において、用語「約」により修飾されていることを理解されたい。したがって、特に指示がない限り、先行の本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数値的パラメータは、本発明の教示を利用して当業者が得ようとする所望の性質に応じて変化する場合がある近似値である。最低限でも、また、特許請求の範囲への同等物の原則の適用を限定する試行としてではなく、少なくとも各数値パラメータは、報告された有効数字の数を考慮して、そして通常のまるめ方を適用することによって解釈されなければならない。
【0030】
以下の定義された用語に関して、別の定義が特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所において示されない限り、これらの定義が適用される。
【0031】
用語解説
「2成分繊維」又は「多成分繊維」という用語は、2つ又はそれ以上の構成成分を備え、それぞれの構成成分がファイバー断面積の一部を占め、繊維の実質的な長さにわたって延在するような繊維を意味する。好適な多成分繊維構造は、芯鞘型構造、並列構造、海島型構造(例えば株式会社クラレ(日本・岡山県)が製造する繊維)を含むが、これらに限定されない。
【0032】
「単一成分繊維」という用語は、断面にわたって本質的に同じ組成物を有するが、単一成分には、実質的に均一な組成物の連続相が断面にわたって及び繊維の長さを超えて延びている配合物又は添加剤含有材料を含むような繊維を意味する。
【0033】
「生分解性」という用語は、細菌、真菌及び藻などの天然微生物の作用並びに/又は加水分解、エステル交換、紫外線若しくは可視光線(光分解性)及び酵素機構への曝露などの天然環境因子又はこれらの組み合わせにより分解可能であることを意味する。
【0034】
「生体適合性」という用語は、生体組織内で、毒性、有害性又は免疫応答を発生させないことにより、生物学的に適合性があることを意味する。生体適合性物質はまた、生化学的及び/又は加水分解プロセスにより分解し、生体組織に吸収され得る。用いる試験方法としては、微細繊維を、皮膚、創傷、並びに、食道又は尿道のような開口部に含まれる粘膜組織などの組織と接触させる用途のためのASTM F719及び微細繊維を組織内に注入する用途のためのASTM F763が挙げられる。
【0035】
「メジアン繊維径」という用語は、例えば走査電子顕微鏡を用いることにより、繊維構造の画像を1つ以上生成することと、1つ以上の画像において明確に視認できる繊維の繊維直径を測定して繊維径の合計数、xを結果的に得ることと、そのxの繊維直径のメジアン繊維径を算出することによって定められる繊維径を意味する。典型的にxは約20を超え、より好ましくは約50を超え、望ましくは約50〜約200の範囲である。
【0036】
「微細繊維」という用語は全般的に、メジアン繊維径が約50マイクロメートル(μm)以下、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、いっそう好ましくは15μm以下、更にいっそう好ましくは10μm以下、最も好ましくは5μm以下である繊維を指す。
【0037】
「マイクロファイバー」とは、メジアン繊維径が1μm以上100μm以下である繊維集団である。
【0038】
「極細マイクロファイバー」とは、メジアン繊維径が2μm以下である繊維集団である。
【0039】
「サブマイクロファイバー」とは、メジアン繊維径が1μm以下である繊維集団である。
【0040】
本明細書中で特定の種類のマイクロファイバーのバッチ、群、アレイといった表現を用いる場合(例、サブマイクロファイバーのアレイ)、そのアレイにおけるマイクロファイバーの完全な集団か、又は単一のバッチのマイクロファイバーの完全な集団を意味し、そのアレイ又はバッチのサブマイクロメータ径の部分のみを意味するものではない。
【0041】
本明細書中の「配向された連続マイクロファイバー」とは、ダイから出て、処理ステーションを通り、そこで繊維が引き延ばされ、繊維内の分子の少なくとも一部が繊維の長手方向軸に対して整列するように配向される本質的に連続な繊維のことを指す(繊維に関して使用される「配向された」とは、繊維の分子の少なくとも一部が繊維の長手方向軸に沿って整列していることを意味する)。
【0042】
本明細書中の「メルトブローン繊維」とは、溶融した繊維形成材料をダイの開口部から高速気流の中に押し出すことによって調製された繊維を指し、押し出された材料はまず細径化されてから繊維塊として固結する。
【0043】
「別々に調製されるサブマイクロファイバー」とは、サブマイクロファイバー形成装置(例えばダイ)から生成されたサブマイクロファイバー流を意味し、このサブマイクロファイバー繊維形成装置は、サブマイクロファイバー流が、より寸法の大きいマイクロファイバーの流れから最初は空間的に(例えば約1インチ(25mm)以上の距離で)離間しているが、飛翔中に合流しその中に分散するように、配置される。
【0044】
「自己結合」とは、点結合又はカレンダ加工におけるように直接接触で加圧することなしにオーブン中又は通気結合機を用いて得られるような高温での繊維間結合、と定義される。
【0045】
「分子的に同じ」ポリマーとは、本質的に同じ反復分子単位を有するが、分子量、製造方法、市販形態などは異なっていてもよいポリマーを指す。
【0046】
ウェブの記述において「自己支持」又は「自立型」は、そのウェブが、例えば支持層又は他の支持支援なしにそれ自体で保持、取扱い及び加工ができることを意味する。
【0047】
「ソリディティ」とは、密度に反比例する不織布ウェブの特性であり、ウェブの透過性及び気孔率を示し(低ソリディティは高透過率及び高気孔率に相当し)、次の式で定義される。
【0048】
【数1】

【0049】
「ウェブ坪量」は、10cm×10cmのウェブサンプルを元に計算される。
【0050】
「ウェブ厚さ」は、150Paの圧力を付加した5cm×12.5cmの寸法の試験器フット部を有する厚さ試験ゲージを用いて、10cm×10cmのウェブサンプルで測定される。
【0051】
「かさ比重」は、文献から採用される、ウェブが作られるポリマー又はポリマー配合物のかさ比重である。
【0052】
ここで本開示の様々な実施形態が記述される。本発明の代表的実施形態は、開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正や変更が可能である。したがって、本発明の実施形態は以下に説明する代表的実施形態に限定されるべきではなく、請求項及びそのいずれかの同等物に規定される限定によって制限されると理解されるべきである。
【0053】
本明細書全体において、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」又は「ある実施形態」というときは、「実施形態」という用語の前に「代表的」という用語を含むか否かにかかわらず、実施形態に関して説明される具体的な特徴、構造、材料、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の随所における「1つ以上の実施形態では」、「特定の実施形態では」、「一実施形態では」又は「ある実施形態では」といった表現があっても、必ずしも本発明の同一の実施形態を指すわけではない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、任意の好適な方法で1つ以上の実施形態に組み合わされてもよい。
【0054】
A.寸法安定性不織布繊維ウェブ
幾つかの実施形態において、寸法安定性不織布繊維ウェブは、熱可塑性ポリエステルとポリプロピレンの溶融混合物から形成することができる。特定の実施形態において、寸法安定性不織布ウェブは、スパンボンドウェブ、吹込マイクロファイバーウェブ、水流交絡ウェブ、及びこれらの組み合わせであり得る。
【0055】
1.分子配向された繊維
特定の実施形態において、寸法安定性不織布繊維ウェブは、繊維形成材料のフィラメントが、脂肪族及び芳香族ポリエステルから選択される1つ以上の熱可塑性ポリエステルをポリプロピレンと合わせた混合物(混合物の重量に対して0重量%を超え10重量%以下の量)を押出成形することによって形成され、これに配向力をかけた後、押し出されたフィラメントの少なくとも一部が柔らかい状態になっている間にガス流の乱流領域を通過し、この乱流領域にある間に凝固点(例えばフィラメントの繊維形成材料が固化する温度)に達するような、繊維形成プロセスによって調製され得る。そのような繊維形成プロセスには、例えば、溶融紡糸(すなわちスパンボンド)、フィラメント押出成形、電界紡糸、ガスジェット繊維形成、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0056】
結果として得られるウェブは、ウェブが繊維のガラス転移温度を超える温度まで加熱されたときに、ウェブの平面内で少なくとも1つの寸法の減少が10%以下である。繊維のガラス転移温度は、当該技術分野において既知であるように、例えば示差走査熱量測定(DSC)又は改変DSCを使用して、従来の技法で測定することができる。特定の代表的な実施形態において、熱可塑性ポリエステルは、芳香族ポリエステルを少なくとも1つ含むように選択され得る。別の代表的な実施形態において、この芳香族ポリエステルには、PET、PETG、ポリ(ブチレン)テレフタレート(PBT)、ポリ(トリメチル)テレフタレート(PTT)、又はこれらの組み合わせから選択され得る。
【0057】
上述のように、繊維は好ましくは分子的に配向されている。すなわち、この繊維は好ましくは、繊維の長さ方向に整列し、その整列に固定されている(すなわち、熱によって封止されている)分子を含む。配向された繊維とは、繊維内に分子の配向がある繊維である。完全に配向されたポリマー繊維及び部分的に配向されたポリマー繊維は既知であり、市販のものが入手可能である。繊維の配向は、複屈折、熱収縮、X線散乱、及び弾性率を含む数々の方法で測定可能である(例えば、Principles of Polymer Processing、Zehev Tadmor及びCostas Gogos、John Wiley and Sons,New York,1979,pp.77〜84を参照)。注意すべき重要なことは、結晶質及び非晶質の材料の両方が結晶化度から独立して分子配向を呈することができるので、分子配向が結晶化度とは異なることである。したがって、メルトブロー又は電界紡糸によって作製された商業的に既知のサブマイクロファイバーがたとえ配向されていなくとも、これらのプロセスを用いて作製された繊維に分子の配向を与える既知の方法がある。
【0058】
開示の代表的な実施形態によって調製された配向された繊維は、セグメントによって異なる複屈折率を示し得る。偏光顕微鏡を通して単繊維を観察し、ミシェル・レヴィ干渉色図表(「On−Line Determination of Density and Crystallinity During Melt Spinning」、Vishal Bansalら、Polymer Engineering and Science,November 1996,Vol.36,No.2,pp.2785〜2798を参照)を用いて遅延値を見積もることにより、複屈折率は次の式:複屈折率=遅延値(nm)/1000D、で得られ、式中、Dはマイクロメートル単位の繊維直径である。複屈折率測定を受ける対象となる代表的な繊維には一般に、複屈折率が少なくとも5%、及び好ましくは少なくとも10%異なるセグメントが含まれる。幾つかの代表的な繊維には、20パーセント、又は50パーセントも屈折率が異なるセグメントが含まれ得る。幾つかの代表的な実施形態において、繊維の分子配向は、少なくとも0.00001、より好ましくは少なくとも約0.0001、更に好ましくは少なくとも約0.001、最も好ましくは少なくとも約0.01の複屈折率値をもたらす。
【0059】
異なる配向の繊維、又は異なる配向の繊維部分は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定される特性において差を呈することがある。例えば、本開示に従って調製された代表的なウェブに対するDSC試験は、二重融点の存在による鎖延長結晶化の存在を明らかにし得る。鎖が延長された、又はひずみが誘発された、結晶質部分の融点は、より高い温度ピークが得られることがあるが、一方、鎖が延長されていない、又は整列度が低い、結晶質部分の融点は、一般により低い温度ピークになり得る。本明細書において「ピーク」という用語は、例えば鎖延長部分などの、繊維の特定の分子部分を融解する、といった単独プロセスに属する加熱曲線の一部を意味する。このピークは、1つのピークが別のピークを画定する曲線の肩を生じているが、これらは別個の分子分画の融点を表わすため、依然として別個のピークとして見なされる。
【0060】
特定の代表的な実施形態において、繊維の受動的(passive)長手方向セグメントは、典型的なスパンボンド繊維ウェブによって示される程度まで配向され得る。結晶質又は半結晶質ポリマーにおいて、そのようなセグメントは好ましくは、ひずみが誘発された、又は鎖延長された(すなわち、繊維内の分子鎖が、繊維軸に全体的に沿って配列されている結晶構造を有する)結晶化を呈する。全体として、ウェブはスパンボンドウェブで得られるもののような強度特性を呈することができ、同時に、典型的なスパンボンドウェブでは結合できないような方法で強く結合することが可能である。本発明の自己結合したウェブは、スパンボンドウェブで一般に使用されているポイント結合又はカレンダ加工では得られないようなかさばりと均一性をウェブ全体にわたって有することができる。
【0061】
理論に束縛されるものではないが、分子配向は、当該技術分野において既知であるような繊維減衰(fiber attenuation)の使用により改善されると考えられる(U.W.Gedde、Polymer Physics,1st Ed.Chapman & Hall,London,1995,298を参照)。これにより、減衰された繊維では結晶化度のパーセンテージ増大が観察され得る。クリスタリットは、鎖の動きや、堅い非晶質分画の再配列及び結晶化を阻害する、錨の働きをすることによりフィラメントを安定化し、結晶化度のパーセンテージが増大するほど、堅い非晶質及び非晶質分画は減少する。半結晶質の直鎖ポリマーは、結晶質及び非晶質相から成り、この両方の相が結合分子により接続されている。結合分子は両方の相に見られる。ひずみは接合面に蓄積され、特に非晶質相で明らかである。これは、半結晶質ポリマーにおいてガラス転移が高温側に広くなることが観察されることからわかる。強い結合の場合、影響を受けた分子セグメントは、堅い非晶質分画と呼ばれる非晶質相の別の中間相を生成する。この中間相は、結晶質相と非晶質相との間に長い境界面を形成し、完全な非晶質相よりも局所的エントロピーが低いことによって特徴づけられる。
【0062】
材料のガラス転移温度より高く融解温度よりも低い温度では、堅い非晶質分画は再配列及び結晶化し、低温結晶化が起こる。繊維中に存在する結晶質及び堅い非晶質材料のパーセンテージは、巨視的な収縮値を決定する。結晶質のパーセンテージは、錨又は結合ポイントとして作用することによりフィラメントを安定化させ、鎖の動きを阻害するよう作用し得る。
【0063】
更に、PETが高温で寸法安定性を示すには、合計で少なくとも約30%以上の結晶化度が必要であると現在考えられている。この結晶化度レベルは、一般に、繊維形成プロセスの後、ウェブを熱的に焼きなますことによってのみ、純粋なポリエステル系中に得られる。加えて、従来の溶融紡糸において、何らかのタイプの添加剤を加えない場合は、インラインで結晶化を誘発させるのに、0.08g/デニール(0.720g/g/km)の応力が一般に必要である。1g/ダイ孔/分の製造速度での典型的なスパンボンド操作においては、必要な糸ライン張力を生成するために、毎分紡糸速度6000mが一般に必要である。しかしながら多くのスパンボンド系では、毎分3,000〜5,000m(m/分)のフィラメント速度しか提供されない。
【0064】
よって、本開示の代表的な実施形態は、製造速度が高速のスパンボンドプロセスを用いた、分子配向された繊維を含む寸法安定性不織布繊維ウェブの形成に特に有用であり得る。例えば、本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブは、幾つかの実施形態において、少なくとも5,000m/分、より好ましくは少なくとも6,000m/分の速度でのスパンボンドプロセスを使用して調製され得る。
【0065】
2.分子配向されていない繊維
別の実施形態において、寸法安定性不織布繊維ウェブは、実質的に分子配向されていない繊維形成材料のフィラメントが、押出成形前又は押出成形中に、混合物の重量に対して0%重量超えて10重量%以下の量のポリプロピレンを伴う、脂肪族ポリエステルから選択される1つ以上の熱可塑性ポリエステル混合物から形成されるような、繊維形成プロセスから調製され得る。結果として得られるウェブは、ウェブが繊維のガラス転移温度を超える温度まで加熱されたときに、ウェブの平面内で少なくとも1つの寸法の減少が10%以下である。幾つかの代表的な実施形態において、繊維はメルトブロー(例えばBMF)プロセスを使用して形成され得る。
【0066】
3.繊維サイズ
寸法安定性不織布繊維ウェブを生成するのに使用される、上に参照した繊維形成プロセスの、幾つかの代表的な実施形態において、好ましい繊維構成要素は微細繊維である。特定の好ましい実施形態においては、微細繊維構成要素は、メジアン繊維径が1マイクロメートル(μm)以下である繊維を含む、サブマイクロファイバー構成要素である。よって、特定の代表的な実施形態において、繊維は、メジアン径が約1マイクロメートル(μm)以下を呈する。幾つかの代表的な実施形態では、サブマイクロファイバー成分は約0.2μm〜約0.9μmの範囲のメジアン繊維径を有する繊維を含む。他の代表的な実施形態では、サブマイクロファイバー成分は約0.5μm〜約0.7μmの範囲のメジアン繊維径を有する繊維を含む。
【0067】
サブマイクロメータ繊維構成要素は、上述のポリマー又はコポリマー(すなわち共重合体)を含む単一成分繊維を含み得る。この代表的な実施形態において、単一成分繊維は、後述するように添加剤をも含み得る。あるいは、形成される繊維は、多成分繊維であり得る。
【0068】
他の代表的な実施形態において、本開示の不織布繊維ウェブは、例えばマイクロファイバー構成要素など、1つ以上の粗い繊維構成要素を、追加として又は代替として含み得る。幾つかの代表的な実施形態において、粗い繊維構成要素は、メジアン径が約50μm以下、より好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、更により好ましくは15μm以下、更にいっそう好ましくは10μm以下、最も好ましくは5μm以下を呈し得る。他の代表的な実施形態において、好ましい粗い繊維構成要素は、メジアン繊維径が少なくとも1μm、より好ましくは少なくとも5μm、更により好ましくは少なくとも10μm、更にいっそう好ましくは少なくとも20μm、最も好ましくは少なくとも25μmである繊維を含むマイクロファイバー構成要素である。特定の代表的な実施形態において、マイクロファイバー構成要素は約1μm〜約100μmの範囲のメジアン繊維径を有する繊維を含む。他の代表的な実施形態では、マイクロファイバー構成要素は約5μm〜約50μmの範囲のメジアン繊維径を有する繊維を含む。
【0069】
4.層状構造
他の代表的実施形態においては、サブマイクロファイバー集団を含む下層の上にマイクロファイバーの上層を含む寸法安定性不織布繊維ウェブを、支持層上に、単層不織布ウェブの主表面において少なくともサブマイクロファイバーの一部が支持層に接触するようにして、積層することにより、多層不織布ウェブが形成され得る。多層不織布繊維ウェブのそのような実施形態において、用語「積層」は、多層複合ウェブ内で少なくとも1層が別の層に重なる実施形態を説明するためのものであることが理解されよう。しかしながら、いずれの多層不織布繊維ウェブも、中央線を軸に180度反転させることにより、上層として説明されていたものが下層となり得るが、例示した実施形態へのそのような改変も本開示の範囲に入ることが、理解されよう更に、「層」への言及は、少なくとも1つの層を意味するとされ、それゆえ多層不織布繊維ウェブの例示されたそれぞれの実施形態は、本開示の範囲内で、1つ以上の追加的な層(図示せず)を含んでもよい。加えて、「層」への言及は、1つ以上の追加的な層(図示せず)を少なくとも部分的に覆う層を説明するものとする。
【0070】
本開示による寸法安定性不織布繊維ウェブの先に説明した代表的実施形態のいずれの場合も、ウェブはある坪量を呈するが、これはウェブの特定の最終用途に応じて変化させることができる。一般的に、寸法安定性不織布繊維ウェブの坪量は、1平方メートル当たり約1000グラム(gsm)以下である。幾つかの実施形態においては、この不織布繊維ウェブは、約1.0gsm〜約500gsmの坪量を有する。別の実施形態においては、寸法安定性不織布繊維ウェブは、約10gsm〜約300gsmの坪量を有する。
【0071】
この不織布繊維ウェブは、坪量の場合と同じく、ウェブの具体的な最終用途に依存して変化し得る厚さを呈する。典型的に、寸法安定性不織布繊維ウェブは約300ミリメートル(mm)以下の厚さを有する。幾つかの実施形態では、寸法安定性不織布繊維ウェブは、約0.5mm〜約150mmの厚さを有する。他の実施形態では、寸法安定性不織布繊維ウェブは、約1.0mm〜約50mmの厚さを有する。
【0072】
5.任意の支持層
本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブは更に、支持層を含み得る。支持層は、存在するとき、不織布繊維物品のほとんどの強度を提供することができる。幾つかの実施形態では、前述のサブマイクロファイバー成分は、非常に低い強度を有する傾向があり、通常の処理中に損傷する可能性がある。サブマイクロファイバー成分を支持層に取り付けることは、サブマイクロファイバー成分に強度を与える一方、ソリディティを低く保持するので、サブマイクロファイバー成分に望まれる吸収特性を保持する。多層寸法安定性不織布繊維ウェブ構造はまた、ロール形状へのウェブの巻き取り、ロールからのウェブの取り出し、成型、ひだ付け、折りたたみ、ステープル処理、織り込み、及びその他を含み得るがこれらに限定されない、以降の処理に対する十分な強度をもたらし得る。
【0073】
本開示では様々な支持層を利用してよい。適した支持層としては、不織布、織布、ニット織物、発泡体層、フィルム、紙の層、裏面粘着層、箔、メッシュ、弾性のある布地(すなわち、弾性特性を有する前述の織布、ニット織物、若しくは不織布のうちいずれか)、有孔ウェブ、裏面粘着層、又はこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。一つの代表的な実施形態では、支持層はポリマー不織布を含む。適した不織布ポリマー布地としては、スパンボンド布地、メルトブローン布地、短繊維長の繊維(すなわち、約100mm以下の繊維長を有する繊維)のカードウェブ、ニードルパンチ布地、スピリットフィルムウェブ、水流交絡ウェブ、エアレイド短繊維ウェブ、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。特定の代表的な実施形態では、支持層は、結合された短繊維のウェブを含む。以下に詳述するように、結合は、例えば、熱接着、接着剤結合、粉末結合剤による結合、水流交絡、ニードルパンチ加工、カレンダ加工、又はこれらの組み合わせを使用して実行することができる。
【0074】
支持層は、不織布繊維物品の特定の最終用途に応じた坪量及び厚さを有することができる。本開示の幾つかの実施形態では、不織布繊維物品の全体の坪量及び/又は厚さは最小レベルで保持されるのが望ましい。別の実施形態では、全体の最小坪量及び/又は厚さが所定の用途において要求される場合がある。典型的には、支持層は、平方メートル当たり約150グラム(gsm)以下の坪量を有する。幾つかの実施形態では、支持層の坪量は約5.0gsm〜約100gsmである。別の実施形態では、支持層の坪量は約10gsm〜約75gsmである。
【0075】
坪量と同様に、支持層はある厚さを有してよく、この厚さは、不織繊維物品の特定の最終用途に応じて変化する。典型的には、支持層の厚さは約150ミリメートル(mm)以下である。幾つかの実施形態では、支持層の厚さは約1.0mm〜約35mmである。別の実施形態では、支持層の厚さは約2.0mm〜約25mmである。
【0076】
特定の代表的な実施形態では、支持層は、例えば、複数のマイクロファイバーであるマイクロファイバー成分を含む場合がある。このような実施形態においては、上述のサブマイクロファイバー集団を直接マイクロファイバー支持層に堆積させて、多層寸法安定性不織布繊維ウェブを形成するのが望ましい場合がある。任意に、上述のマイクロファイバー集団を、マイクロファイバー支持層上のサブマイクロファイバー集団と共に又はその上を覆って、配置することができる。特定の代表的実施形態においては、支持層を成す複数のマイクロファイバーが、上層を形成するマイクロファイバー集団と組成的に同一である。
【0077】
サブマイクロファイバー成分は、所与の支持層に恒久的に又は一時的に結合される場合がある。本開示の幾つかの実施形態では、サブマイクロファイバー成分は、支持層へ恒久的に結合される(すなわち、サブマイクロファイバー成分は支持層へ、それと恒久的に結合されることを意図して、取り付けられる)。
【0078】
本開示の幾つかの実施形態では、上述のサブマイクロファイバー成分は、剥離ライナーのように支持層に暫定的に(すなわち支持層から取り外し可能に)結合される場合がある。そのような実施形態では、サブマイクロファイバー成分は、暫定支持層上に所望の長さの間、支持されてよく、また所望により暫定支持層上で更に加工された後、第2の支持層へ恒久的に結合されてもよい。
【0079】
本開示の代表的な実施形態では、支持層は、ポリプロピレン繊維を含むスパンボンド布地を含む。本開示の更なる代表的な実施形態では、支持層は、短繊維長の繊維のカードウェブを含み、この場合、短繊維長の繊維は、(i)低融点繊維若しくはバインダー繊維と(ii)高融点繊維若しくは構造繊維とを含む。典型的に、バインダー繊維の融点と構造繊維の融点との差は10℃超えるが、バインダー繊維の融点は、構造繊維の融点よりも少なくとも10℃高い。適したバインダー繊維としては、これらに限定されないが、前述のポリマー繊維のうちのいずれかが挙げられる。適した構造繊維としては、これらに限定されないが、前述のポリマー繊維のうちのいずれか、並びにセラミック繊維、ガラス繊維、及び金属繊維などの無機繊維、及びセルロース繊維などの有機繊維が挙げられる。
【0080】
上述のように、支持層は、1層以上を互いに組み合わせて含んでよい。代表的な一実施形態では、支持層は、不織布又はフィルムなどの第1層と、サブマイクロファイバー構成要素とは反対側の第1層上に接着剤層とを含む。この実施形態では、接着剤層は、第1層の外表面の一部又は全体を覆っていてよい。接着剤は、感圧接着剤、熱活性化接着剤などを包含するいかなる既知の接着剤を含んでもよい。接着剤層が感圧接着剤を含む場合は、不織布繊維物品は、感圧接着剤を一時的に保護するため剥離ライナーを更に含んでいてもよい。
【0081】
6.任意の追加層
本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブは、サブマイクロファイバー構成要素、支持層、又はこの双方と組み合わせた追加層を含んでいてもよい。1層以上の追加層が、サブマイクロファイバー構成要素の外側表面の上又は下、支持層の外側表面の下、又はこれらの上下に存在してもよい。
【0082】
好適な追加層は、色含有層(例えば、印刷層)、上述の支持層のうちいずれか、別個のメジアン繊維径及び/又は物理的組成物を有する1つ以上の追加のサブマイクロファイバー構成要素、絶縁性能を向上させるための1つ以上の二次微細サブマイクロファイバー層(例えば、メルトブローンウェブ又はガラス繊維布)、発泡体、微粒子層、箔層、フィルム、装飾布層、膜(即ち、透析膜、逆浸透性膜など、透過性を制御されたフィルム)、網、メッシュ、配線網状組織及び管状の網状組織(即ち、電気伝達用のワイヤー層、若しくは、様々な流体搬送用の管/パイプ群、例えば、電気毛布用の配線網状組織、及び冷却毛布内を流れる冷却剤用の管状の網状組織、の層)、又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0083】
7.任意の取り付け手段
特定の代表的な実施形態において、本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブは、不織布繊維物品を基材に取り付けることができるよう1つ以上の取り付け手段を更に備えていてもよい。上述のように、接着剤を使用して不織布繊維物品を取り付けることができる。接着剤に加えて、その他の取り付け手段を使用してもよい。好適な取り付け手段には、ネジ、釘、クリップ、ステープル、ステッチ、ねじ切り、フック及びループ材料などの機械的なファスナが含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
不織布繊維物品を各種の基材に取り付けるために、1つ以上の取り付け手段を使用することができる。代表的な基材には、自動車の構成要素、自動車の内装(即ち、パッセンジャー・コンパートメント、エンジン・コンパートメント、トランクなど)、建物の壁面(即ち、内装の壁面あるいは外装の壁面)、建物の天井(即ち、室内の天井面あるいは屋外の天井面)、建物の壁あるいは天井のための建設材料(天井タイル、木材要素、石膏ボードなど)、部屋の区切り、金属板、ガラス基材、ドア、窓、機械の構成要素、電気機器の構成要素(即ち、室内用電気機器の表面あるいは屋外用電気機器の表面)、パイプ若しくはホースの表面、コンピューター若しくは電気機器の表面、音響録音若しくは再生装置、電気部品、コンピューター等のハウジング若しくはケースが含まれるが、これらに限定されない。
【0085】
B.寸法安定性不織布繊維ウェブ構成要素
本開示による代表的な寸法安定性不織布繊維ウェブの様々な構成要素についてこれより説明する。幾つかの代表的な実施形態において、寸法安定性不織布繊維ウェブには、脂肪族ポリエステル及び芳香族ポリエステルから選択される1つ以上の熱可塑性ポリエステルを含む複数の連続繊維と、ウェブの重量に対して0重量%超えて10重量%以下の量のポリプロピレンとが含まれ得、この繊維は分子配向を呈し、ウェブ全体で実質的にエンドレスに延在し、更に、ウェブが、繊維のガラス転移温度を超える温度まで加熱されたときに、ウェブの平面内で少なくとも1つの寸法の減少が10%以下である。そのような寸法安定性不織布繊維ウェブは、特定の代表的な実施形態において、スパンボンド又は溶融紡糸プロセスを使用して製造され得る。
【0086】
他の代表的な実施形態において、寸法安定性不織布繊維ウェブには、脂肪族ポリエステルから選択される1つ以上の熱可塑性ポリエステルを含む複数の繊維と、ウェブの重量に対して0重量%超えて10重量%以下の量のポリプロピレンとが含まれ得、この繊維は分子配向を呈さず、更に、ウェブが、繊維のガラス転移温度を超える温度まで加熱されたときに、ウェブの平面内で少なくとも1つの寸法の減少が10%以下である。そのような寸法安定性不織布繊維ウェブは、特定の代表的な実施形態において、メルトブローン又はBMFプロセスを使用して製造され得る。
【0087】
1.熱可塑性ポリエステル
本開示の繊維ウェブには、少なくとも1つの熱可塑性ポリエステルが含まれる。幾つかの代表的な実施形態において、芳香族ポリエステルが、繊維形成混合物の主な構成要素として使用される。特定の代表的な実施形態において、この芳香族ポリエステルは、ポリ(エチレン)テレフタレート(PET)、ポリ(エチレン)テレフタレートグリコール(PETG)、ポリ(ブチレン)テレフタレート(PBT)、ポリ(トリメチル)テレフタレート(PTT)、これらのコポリマー、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0088】
他の代表的な実施形態において、脂肪族ポリエステルが、繊維形成混合物の主な構成要素として使用される。本発明の実施形態実用化において有用な脂肪族ポリエステルには、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)のホモポリマー及びコポリマー、並びに、1種以上のポリオールと1種以上のポリカルボン酸との反応生成物から誘導されるこれらの脂肪族ポリエステルのホモ及びコポリマーが挙げられ、これは典型的には、1種以上のアルカンジオールと1種以上のアルカンジカルボン酸(又はアシル誘導体)との反応生成物から形成される。ポリエステルは、更に、分枝鎖、星型及びグラフトホモポリマー及びコポリマーを形成するために、多官能性ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール及びこれらの組み合わせから誘導してもよい。脂肪族ポリエステルと1つ以上の追加の半結晶質又は非晶質ポリマーとの混和性及び不混和性配合物を使用してもよい。
【0089】
代表的な脂肪族ポリエステルは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、これらの配合物、及びこれらのコポリマーである。脂肪族ポリエステルの特に有用な1つの部類は、ヒドロキシ酸の縮合若しくは開環重合によって誘導されるポリ(ヒドロキシアルカノエート)、又はそれらの誘導体である。好適なポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、下式:
H(O−R−C(O)−)OH
により表わすことができ、式中、Rは、所望によりカテナリー(炭素鎖内で炭素原子に結合している)酸素原子に置換されている、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖であってよいアルキレン部分であり、nはエステルがポリマーであるような数であり、好ましくは、脂肪族ポリエステルの分子量が少なくとも10,000ダルトン、好ましくは少なくとも30,000ダルトン、最も好ましくは少なくとも50,000ダルトンであるような数である。高分子量ポリマーは、一般に、溶融加工されたポリマー及び溶媒流延ポリマーの両方で、より良好な機械的特性を有するフィルムを生じるが、過剰な粘度は望ましくない。脂肪族ポリエステルの分子量は典型的に、1,000,000ダルトン以下、好ましくは500,000ダルトン以下、最も好ましくは300,000ダルトン以下である。Rは、1つ以上のカテナリー(すなわち、鎖内の)エーテル酸素原子を更に含んでもよい。一般に、ヒドロキシ酸のR基は、ペンダントヒドロキシル基が一級又は二級ヒドロキシル基であるようなものである。
【0090】
有用なポリ(ヒドロキシアルカノエート)としては、例えば、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(乳酸)(ポリラクチドとして知られる)、ポリ(3−ヒドロキシプロパノエート)、ポリ(4−ヒドロペンタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシペンタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシオクタノエート)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、及びポリグリコール酸(すなわち、ポリグリコリド)のホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。上記ヒドロキシ酸の2つ以上のコポリマー、例えば、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(ラクテート−コ−3−ヒドロキシプロパノエート)、ポリ(グリコリド−コ−p−ジオキサノン)及びポリ(乳酸−コ−グリコール酸)を用いてもよい。また、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)の2種以上の配合物、並びに1種以上のポリマー及び/又はコポリマーとの配合物も使用することができる。
【0091】
脂肪族ポリエステルは、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)のブロックコポリマーであってよい。本発明の微細繊維で有用な脂肪族ポリエステルとしては、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、星型分枝ランダムコポリマー、星型分枝ブロックコポリマー、樹状コポリマー、超分枝コポリマー、グラフトコポリマー及びこれらの組み合わせを挙げてもよい。
【0092】
脂肪族ポリエステルの別の有用な分類には、1つ以上のアルカンジオールと1つ以上のアルカンジカルボン酸(若しくはアシル誘導体)との反応生成物に由来する脂肪族ポリエステルが包含される。かかるポリエステルは、次の一般式:
【0093】
【化1】

【0094】
を有し、式中、R’及びR”はそれぞれ1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖であってよいアルキレン部分であり、mは、エステルがポリマーであるような数であり、脂肪族ポリエステルの分子量が好ましくは少なくとも10,000ダルトン、好ましくは少なくとも30,000ダルトン、最も好ましくは少なくとも50,000ダルトンであるが、1,000,000ダルトン以下、好ましくは500,000ダルトン以下、最も好ましくは300,000ダルトン以下満であるような数である。nはそれぞれ独立して0又は1である。R’及びR”は、1個以上のカテナリー(すなわち、鎖内の)エーテル酸素原子を更に含んでよい。
【0095】
脂肪族ポリエステルの例としては、(a)以下の二塩基酸(又はその誘導体):コハク酸、アジピン酸、1,12ジカルボキシドデカン、フマル酸、グルタル酸、ジグリコール酸、及びマレイン酸のうち1種以上と(b)以下のジオール:エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、5〜12個の炭素原子を有する1,2アルカンジオール、ジエチレングリコール、300〜10,000ダルトン、好ましくは400〜8,000ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコール、300〜4000ダルトンの分子量を有するプロピレングリコール、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシドから誘導されるブロック又はランダムコポリマー、ジプロピレングリコール及びポリプロピレングリコールのうち1種以上と;(c)所望により、すなわち0.5〜7.0モル%の、グリセロール、ネオペンチルグリコール及びペンタエリスリトールのような2個を超える官能基を有するポオール、から誘導される少量と、から誘導されるホモ及びコポリマーが挙げられる。
【0096】
このようなポリマーとしては、ポリブチレンサクシネートホモポリマー、ポリブチレンアジペートホモポリマー、ポリブチレンアジペート−サクシネートコポリマー、ポリエチレンサクシネート−アジペートコポリマー、ポリエチレングリコールサクシネートホモポリマー、及びポリエチレンアジペートホモポリマーが挙げられる。
【0097】
市販の脂肪族ポリエステルには、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(L−ラクチド−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ブチレンサクシネート)及びポリ(ブチレンアジペート)が挙げられる。
【0098】
有用な脂肪族ポリエステルには、半結晶質ポリ乳酸から誘導されるものが挙げられる。ポリ(乳酸)すなわちポリラクチドは、その主要分解産物として乳酸を有しており、これは、一般に自然界に見られ、非毒性であり、食品、製薬、及び医療業界で広く使用されている。ポリマーは、乳酸二量体であるラクチドの開環重合によって調製され得る。乳酸は、光学的に活性であり、二量体には4種類の異なった形態:L,L−ラクチド、D,D−ラクチド、D,L−ラクチド(メソラクチド)及びL,L−ラクチドとD,D−ラクチドとのラセミ混合物が存在する。純粋化合物又は配合物としてこれらのラクチドを重合することによって、異なる立体化学及び異なる物理的特性(結晶化度を含む)を有するポリ(ラクチド)ポリマーを得ることができる。L,L又はD,D−ラクチドからは半結晶質ポリ(ラクチド)が生じるが、D,L−ラクチドから誘導されるポリ(ラクチド)は非晶質である。
【0099】
ポリラクチドは、好ましくは、ポリマーの固有結晶化度を最大にする高いエナンチオマー比を有する。ポリ(乳酸)の結晶化度の程度は、ポリマー主鎖の規則性及び他のポリマー鎖と結晶化する能力に基づく。比較的少量の1つの鏡像異性体(D−など)が反対の鏡像異性体(L−など)と共重合する場合、ポリマー鎖は、不規則な形状となり、結晶化度が低下する。これらの理由から、結晶化が好ましいとき、結晶化度を最大にするために、少なくとも85%が1つの異性体、少なくとも90%が1つの異性体、又は少なくとも95%が1つの異性体であるポリ(乳酸)を有することが望ましい。
【0100】
D−ポリラクチドとL−ポリラクチドとの、およそ等モルの配合物もまた有用である。この配合物は、D−ポリ(ラクチド)及びL−(ポリラクチド)のいずれか単独(約160℃)より高い融点(約210℃)を有する固有の結晶構造を形成し、改善された熱安定性を有する(H.Tsujiら、Polymer,40(1999)6699〜6708を参照)。
【0101】
また、ポリ(乳酸)と他の脂肪族ポリエステルとの、ブロックコポリマー及びランダムコポリマーを含むコポリマーを使用してもよい。有用なコモノマーには、グリコリド、β−プロピオラクトン、テトラメチルグリコリド、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、2−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸、α−ヒドロキシイソ吉草酸、α−ヒドロキシカプロン酸、α−ヒドロキシエチル酪酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸、α−ヒドロキシ−β−メチル吉草酸、α−ヒドロキシオクタン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシミリスチン酸、及びα−ヒドロキシステアリン酸が挙げられる。
【0102】
また、ポリ(乳酸)と、1つ以上の他の脂肪族ポリエステル、又は1つ以上の他のポリマーとの配合物を使用してもよい。有用な配合物の例には、ポリ(乳酸)及びポリ(ビニルアルコール)、ポリエチレングリコール/ポリサクシネート、ポリエチレンオキシド、ポリカプロラクトン並びにポリグリコリドが挙げられる。
【0103】
ポリ(ラクチド)は、米国特許第6,111,060号(Gruberら)、同第5,997,568号(Liu)、同第4,744,365号(Kaplanら)、同第5,475,063号(Kaplanら)、同第6143863号(Gruberら)、同第6,093,792号(Grossら)、同第6,075,118号(Wangら)、同第5,952,433号(Wangら)、同第6,117,928号(Hiltunenら)、及び同第5,883,199号(McCarthyら)、PCT国際公開特許WO 98/24951号(Tsaiら)、同第WO 00/12606号(Tsaiら),WO 84/04311号(Lin)、同第WO 99/50345号(Kolstadら)、同第WO 99/06456号(Wangら),WO 94/07949号(Gruberら)、同第WO 96/22330号(Randallら)、及び同第WO 98/50611号(Ryanら)に記載されているように調製することができる。J.W.Leenslagら、J.Appl.Polymer Science,vol.29(1984),pp 2829〜2842及びH.R.Kricheldorf、Chemosphere,vol.43,(2001)49〜54もまた参照される。
【0104】
ポリマーの分子量は、ポリマーが溶融体のように加工され得るように選択すべきである。ポリラクチドについては、例えば、分子量は、約10,000〜1,000,000ダルトンであり得、好ましくは約30,000〜300,000ダルトンである。「溶融加工可能」とは、脂肪族ポリエステルが流体であるか、又は、物品を加工するのに(例えば、BMF中に微細繊維を作製する)用いられる温度で汲み上げることができる若しくは押し出すことができ、その温度で物理的特性が目的とする用途には使用できない程乏しくなるまでは分解しない若しくはゲル化しないことを意味する。したがって、材料の多くは、スパンボンド、ブローンマイクロファイバー等の溶融プロセスを使用して、不織布に作製され得る。特定の実施形態はまた、射出成形することもできる。脂肪族ポリマーは他のポリマーと共に配合されてもよいが、典型的には少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、最も好ましくは65重量%の微細繊維を含む。
【0105】
2.ポリプロピレン
本開示の実施形態実用化において有用なポリプロピレン(ホモ)ポリマー及びコポリマーは、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、及びこれらの配合物(総じてポリプロピレン(コ)ポリマー)から選択され得る。ホモポリマーは、アタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、及びこれらの配合物であり得る。コポリマーは、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、及びこれらの配合物であり得る。特に、本明細書に記述される本発明のポリマー配合物には、インパクト(コ)ポリマー、エラストマー及びプラストマーが挙げられ、これらの任意のものがポリプロピレンとの物理的な配合物又はその場での配合物であり得る。
【0106】
ポリプロピレン(コ)ポリマー製造の方法は決定的ではなく、スラリー、溶液、気相、又は他の好適なプロセスによって製造することができ、ポリオレフィンの重合に好適な触媒系、例えばチーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒、その他の好適な触媒系、又はこれらの組み合わせを用いることができる。好ましい実施形態において、ポリプロピレン(コ)ポリマーは、米国特許第6,342,566号、同第6,384,142号、及び同第5,741,563号、並びにPCT国際公開特許WO 03/040201号、同第WO 97/19991号に記述されている触媒、活性化剤及びプロセスによって製造される。同様に、(コ)ポリマーは、米国特許第6,342,566号及び同第6,384,142号に記述されているプロセスによって調製され得る。そのような触媒は当該技術分野において周知であり、例えばZIEGLER CATALYSTS(Gerhard Fink、Rolf Mulhaupt及びHans H.Brintzinger、編、Springer−Verlag 1995)、Resconi et al.,Selectivity in Propene Polymerization with Metallocene Catalysts,100 CHEM.REV.1253〜1345(2000)、及びI,II METALLOCENE−BASED POLYOLEFINS(Wiley & Sons 2000)に記述されている。
【0107】
本開示の発明の幾つかの実施形態実用化において有用なポリプロピレン(コ)ポリマーには、商標名ACHIEVE及びESCORENE(Exxon−Mobil Chemical Company(Houston,TX)販売)、並びにTotal Petrochemicals(Hoston,TX)から販売されている様々なポリプロピレン(コ)ポリマーが挙げられる。
【0108】
本発明において有用な、好ましいポリプロピレンホモポリマー及びコポリマーは典型的に次のものである:1)ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定したときに重量平均分子量(Mw)が少なくとも30,000Da、好ましくは少なくとも50,000Da、より好ましくは少なくとも90,000Daであり、及び/若しくは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定したときに2,000,000Da以下、より好ましくは1,000,000Da以下、更により好ましくは500,000Da以下であり;並びに/又は2)多分散性(Mw/Mnとして定義され、MnはGPCで測定された数平均分子量)が1、好ましくは1.6、より好ましくは1.8であり、及び/若しくは40以下、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更により好ましくは3以下であり;並びに/又は3)示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定したときに融解温度Tm(第2融解)が少なくとも30℃、好ましくは少なくとも50℃、より好ましくは少なくとも60℃であり、及び/若しくは、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定したときに200℃以下、好ましくは185℃以下、より好ましくは175℃以下、更により好ましくは170℃以下であり;並びに/又は4)DSCを用いて測定したときに結晶化度が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%であり、及び/若しくは、DSCを用いて測定したときに80%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは60%であり;並びに/又は5)動的熱機械分析(DMTA)を用いて測定したときにガラス転位温度(T)が少なくとも−40℃、好ましくは少なくとも−10℃、より好ましくは少なくとも−10℃であり、及び/若しくは、動的熱機械分析(DMTA)を用いて測定したときに20℃以下、好ましくは10℃以下、より好ましくは5℃であり;並びに/又は6)DSCを用いて測定したときに、融解熱(H)が180J/g以下、好ましくは150J/g以下、より好ましくは120J/g以下であり、及び/若しくは、少なくとも20J/g、より好ましくは少なくとも40J/gであり;並びに/又は7)結晶化温度(Tc)が少なくとも15℃、好ましくは少なくとも20℃、より好ましくは少なくとも25℃、更により好ましくは少なくとも60℃であり、及び/若しくは、120℃以下、好ましくは115℃、より好ましくは110℃以下、更により好ましくは145℃以下である。
【0109】
本開示の代表的なウェブには、ポリプロピレン(コ)ポリマー(ポリ(プロピレン)ホモポリマーとコポリマーの両方を含む)がウェブの重量に対して少なくとも1重量%の量、より好ましくはウェブの重量に対して少なくとも2重量%の量、最も好ましくはウェブの重量に対して少なくとも3重量%の量が含まれ得る。他の代表的なウェブには、ポリプロピレン(コ)ポリマー(ポリ(プロピレン)ホモポリマーとコポリマーの両方を含む)がウェブの重量に対して10重量%以下の量、より好ましくはウェブの重量に対して8重量%以下の量、最も好ましくはウェブの重量に対して6重量%以下の量が含まれ得る。本開示の特定の好ましい実施形態において、ウェブは、ウェブの重量に対して約1重量%〜約6重量%のポリプロピレン、より好ましくはウェブの重量に対して約3重量%〜約5重量%のポリプロピレンを含む。
【0110】
3.任意の添加剤
また繊維は、顔料や染料などの特定の添加剤が配合された材料を含む、材料の配合物から形成されてもよい。前述の繊維形成用材料に加えて、様々な添加物を繊維溶融物に添加し、押し出して、添加物を繊維に組み込んでもよい。典型的に、添加物の量は、繊維の総重量に対して、約25重量%以下、望ましくは約5.0重量%までである。好適な添加物は、微粒子、充填剤、安定剤、可塑剤、粘着付与剤、流動性調整剤、硬化速度遅延剤、接着促進剤(シラン、チタン酸塩など)、補助剤、衝撃改質剤、発泡性微小球、熱伝導性粒子、電気伝導性粒子、シリカ、ガラス、粘土、タルク、顔料、着色剤、ガラスビーズ又はバブル、酸化防止剤、蛍光増白剤、抗菌剤、界面活性剤、湿潤剤、難燃剤、並びに撥水剤(炭化水素ワックス、シリコーン、及びフッ素性化学物質など)を含むが、これらに限定されない。
【0111】
添加物のうち1つ以上を用いて、得られる繊維及び層の重量及び/又はコストを軽減してもよく、粘度を調整してもよく、又は繊維の熱的特性を変性してもよく、あるいは電気特性、光学特性、密度に関する特性、液体バリア若しくは接着剤の粘着性に関する特性を包含する、添加物の物理的特性に由来する様々な物理的特性活性を付与してもよい。
【0112】
i)可塑剤
幾つかの代表的な実施形態において、熱可塑性ポリエステルのための可塑剤が、微細繊維形成において使用され得る。幾つかの代表的な実施形態において、熱可塑性ポリエステルのための可塑剤は、ポリ(エチレングリコール)、オリゴマーポリエステル、脂肪酸モノエステル及びジエステル、クエン酸エステル、又はこれらの組み合わせから選択される。好適な可塑剤は脂肪族ポリエステルと共に使用することができ、例えば10,000ダルトン(Da)以下、好ましくは約5,000Da以下、より好ましくは約2,500Da以下の分子量を有する、グリコール(グリセリンなど)、プロピレングリコール、ポリエトキシレート化フェノール、単置換若しくは多置換ポリエチレングリコール、高級アルキル置換N−アルキルピロリドン、スルホンアミド、トリグリセリド、クエン酸エステル、酒石酸エステル、ベンゾエートエステル、ポリエチレングリコール、及びエチレンオキシドプロピレンオキシドのランダム及びブロックコポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0113】
ii)希釈剤
幾つかの代表的な実施形態において、微細繊維を形成するために希釈剤が混合物に添加され得る。特定の代表的な実施形態において、この希釈剤は、脂肪酸モノエステル(FAME)、PLAオリゴマー、又はこれらの組み合わせから選択され得る。本明細書で使用される希釈剤は一般に、希釈剤がない状態で起こり得る結晶化度に比べ、結晶化度を阻害するか、遅延させるか、又は別の方法で影響を与えるような材料を指す。希釈剤は可塑剤としても機能し得る。
【0114】
iii)界面活性剤
特定の代表的な実施形態において、微細繊維の形成に使用される混合物に、界面活性剤を添加することが望ましいことがある。特定の代表的な実施形態において、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双極性界面活性剤、又はこれらの組み合わせから選択され得る。他の代表的な実施形態において、界面活性剤は、フッ素系有機界面活性剤、シリコーン機能性界面活性剤、有機ワックス、又はジオクチルスルホスクシネートなどのアニオン性界面活性剤の塩から選択され得る。
【0115】
本明細書の好ましい一実施形態において、微細繊維は、耐久性のある親水性を付与するアニオン性界面活性剤を含み得る。本発明における使用に好適なアニオン性界面活性剤の例には、米国特許出願公開第2008/0200890 A1号、及び米国特許番号第61/061,088号(2008年6月12日出願)に記述されているものが挙げられる。
【0116】
iv)粘度調整剤
幾つかの代表的な実施形態において、熱可塑性脂肪酸ポリエステルポリマー(例えばポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート及び同様物)を、ポリプロピレンの重量に対して0重量%超えて10重量%以下と、アルキル、アルケニル、アラルキル、又はアルカリル炭化水素、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の粘度調整剤と、を含む微細繊維が、繊維形成プロセスを使用して形成される。
【0117】
本明細書に開示されている微細繊維は、溶融プロセス(例えば、ブローンマイクロファイバー(BMF)、スパンボンド、又は射出成形)中に繊維の平均直径を減少させるために1つ以上の粘度調整剤を含み得る。BMFプロセス中に脂肪族ポリエステルの粘度を減らすことによって、繊維の平均直径が減少され、メルトブローンウェブにおいては、典型的に20マイクロメートル以下の微細繊維をもたらし得る。
【0118】
本発明者らは、熱可塑性脂肪族ポリエステル樹脂用として従来の可塑剤は、非常に緩やかな粘度減少となることを見出した。可塑剤はポリマーの強度を劣化させるため、これは一般的に、十分な機械的強度の微細繊維の製造には有用でなはない。
【0119】
粘度減少は、押し出し/BMF装置で、この装置内で圧力を記録することによって検知することができる。本発明の粘度調整剤は、劇的に粘度を減少させることになり、したがって、押し出し又は熱プロセス中の背圧を減少させる。多くの場合では、粘度減少が大きすぎて、十分な溶融強度を維持するために、溶融プロセス温度は減少しなければならない。融解温度は、30℃又はそれ以上減少されることが多い。
【0120】
生分解性が重要である用途では、生分解性粘度調整剤を組み込むことが望ましい場合があり、これは典型的に、加水分解的に又は酵素的に切断され得るエステル及び/又はアミド基を含む。本明細書に記載の代表的な微細繊維において有用な粘度調整剤は、以下の構造:
R−CO
を備える粘度調整剤が挙げられ、式中、Rは分枝鎖若しくは直鎖であるC8〜C30のアルキル若しくはアルキレン、又はC12〜C30アラルキルであり、エチレンオキシド、プロピレンオキシド基、オリゴマー乳酸及び/又はグリコール酸、又はこれらの組み合わせなどの0〜100個のアルキレンオキシド基で置換されているか又は置換されておらず、
MがH、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属塩、好ましくはNa+、K+、若しくはCa++、又は、第三級及び第四級アミン、例えばプロトン化トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウム等を含むアミン塩である。
【0121】
上記の式において、エチレンオキシド基及びプロピレンオキシド基は、逆の順で、並びに無作為、順次、又はブロック配列で生じる場合がある。
【0122】
特定の好ましい実施形態では、微細繊維を形成するのに有用な粘度調整剤は、アルキルカルボキシレート、アルケニルカルボキシレート、アラルキルカルボキシレート、アルキルエトキシ化カルボキシレート、アラルキルエトキシ化カルボキシレート、アルキルラクチレート、アルケニルラクチレート、及びこれらの混合物からなる群から選択される。カルボキシレート等価のカルボン酸は、粘度調整剤としても機能することができる。様々な粘度調整剤の組み合わせも使用することができる。本明細書で使用されるとき、ラクチレートは、疎水性物質及び親水性物質を有する界面活性剤であり、ここで親水性物質は、1〜5の乳酸単位、典型的には1〜3の乳酸単位を有する乳酸の、少なくとも一部分においてオリゴマーである。好ましいラクチレートは、Rita Corp.からのステアロイル乳酸カルシウムであり、これは以下の構造:[CH(CH16C(O)O−CH(CH)−C(O)O−CH(CH3)−C(O)OCa++を有すると報告されている。アルキルラクチレートは、これらもまた資源再生可能な材料から作製されるため、好ましい部類である。
【0123】
粘度調整剤は典型的に、熱可塑性脂肪族ポリエステル組成物の押し出し温度で、又はそれを下回る温度で典型的に融解する。これは、ポリマー組成物中の粘度調整剤の分散又は溶解を促進する。粘度調整剤の混合物は、融点を修正するのに使用されてもよい。例えば、アルキルカルボキシレートの混合物は事前に形成されてもよく、又はアルキルカルボキシレートは、ポリエトキシレート化界面活性剤などの非イオン性界面活性剤と配合されてもよい。必要な加工温度は、熱可塑性脂肪族ポリエステル用の可塑剤などの非界面活性構成成分も添加することによって、変更することができる。例えば、ポリ乳酸組成物に添加されるとき、この粘度調整剤は好ましくは融点が200℃以下、より好ましくは180℃以下、更により好ましくは170℃以下、いっそうより好ましくは160℃以下である。
【0124】
粘度調整剤は、良好な混合が達成されて実質的に均一の混合物とされる限り、ホッパ又は押出成形機に沿って他の箇所で、樹脂と都合良く混合することができる。あるいは、粘度調整剤は、例えば、容積移送式ポンプ又は重量喪失供給装置を使用して、押出成形機に直接(事前混合することなく)添加されてもよい。
【0125】
幾つかの実施形態では、微細繊維に使用されるとき、粘度調整剤は、微細繊維の総重量に対して少なくとも0.25重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも1.0重量%、又は少なくとも2.0重量%の量で存在する。非常に低い粘度の融解物が望ましく、及び/又は低い融点が好ましい特定の実施形態では、微細繊維は、微細繊維中の脂肪族ポリエステルポリマーの重量に対して2重量%超える、3重量%超える、又は更には5重量%超える、粘度調整剤を含む。
【0126】
溶融プロセスのために、好ましい粘度調整剤は低い揮発性を有し、プロセス条件下では明らかに分解しない。好ましい粘度調整剤に含まれる水は、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、更により好ましくは1重量%以下である(カール・フィッシャー分析により測定)。含水率は、微細繊維中の脂肪族ポリエステル又は加水分解に影響される化合物の加水分解を防止するために維持される。
【0127】
粘度調整剤は、不揮発性のキャリア中にあってもよい。重要なことに、キャリアは典型的に熱的に安定であり、150℃、200℃、250℃の高さの、又は更には300℃の高さであり得るプロセス温度での化学分解に耐えることができる。親水性物品に好ましいキャリアには、ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのランダム及びブロックコポリマー、熱的に安定な多価アルコール、例えばプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。ポリアルキレンオキシド/ポリアルキレングリコールは、開始ポリオールによって直鎖又は分枝鎖であってもよい。例えば、エチレングリコールを使用して開始されるポリエチレングリコールは直鎖になるが、グリセリン、トリメチロールプロパン、又はペンタエリスリトールで開始されるものは、分枝鎖になる。
【0128】
粘度調整剤は、脂肪族ポリエステルの融解粘度を修正するのに十分な量で溶融押出成形繊維内に存在し得る。典型的に、粘度調整剤は、脂肪族ポリエステルと粘度調整剤を合わせた重量に対して10重量%以下、好ましくは8重量%以下、より好ましくは7重量%以下、更により好ましくは6重量%以下、更により好ましくは3重量%以下、最も好ましくは2重量%以下で存在する。
【0129】
v)抗菌剤
微細繊維に抗菌活性を付与するために抗菌成分が添加されてもよい。抗菌成分は、少なくとも一部の抗菌活性を提供する成分であり、すなわち、それは少なくとも1種の微生物に対して少なくともいくらかの抗菌活性を有する。それは、好ましくは、微細繊維から放出され、細菌を死滅させるのに十分多い量で存在する。それはまた、生分解性であってもよく、及び/又は、植物若しくは植物生成物のような再生可能な資源から製造されてもよく若しくは誘導されてもよい。生分解性抗菌成分は、加水分解的に又は酵素的に分解することができるエステル又はアミド結合のような、少なくとも1個の官能性結合を含んでよい。
【0130】
幾つかの代表的な実施形態において、好適な抗菌成分は、脂肪酸モノエステル、脂肪酸ジエステル、有機酸、銀化合物、第四級アンモニウム化合物、カチオン性(コ)ポリマー、ヨウ素化合物、又はこれらの組み合わせから選択され得る。本発明における使用に好適な他の抗菌成分の例は米国特許出願公開第2008/0142023に記述されているものが挙げられる。
【0131】
特定の抗菌成分は非荷電であり、少なくとも7個の炭素原子を含有するアルキル又はアルケニル炭化水素鎖を有する。溶融加工の場合、好ましい抗菌成分は揮発性が低く、加工条件下で分解しない。好ましい抗菌成分は、2重量%以下、より好ましくは0.10重量%以下の水を含有する(カール・フィッシャー分析により測定)。含水率は、押し出し中の脂肪族ポリエステルの加水分解を防止するために低く維持される。
【0132】
使用するとき、抗菌成分含量は(すぐ使用できる状態で)、典型的には、少なくとも1重量%、2重量%、5重量%、10重量%であり、場合により15重量%を超える。低強度が望ましい特定の実施形態では、抗菌成分は、微細繊維の20重量%超えて、25重量%超えて、又は更には30重量%超えて、含まれる。
【0133】
特定の抗菌成分は両親媒性物質であり、界面活性であり得る。例えば、幾つかの抗菌アルキルモノグリセリドは界面活性である。抗菌成分を含む本発明の特定の実施形態に関して、抗菌成分は、粘度調整剤とは異なると考えられる。
【0134】
vi)微粒子相
微細繊維は更に、繊維内の内部微粒子相として、又は微細繊維の表面上若しくは表面近くの外部微粒子相として存在する、有機及び無機の充填剤を含み得る。移植可能な用途の場合、生分解性、吸収性又は生体内分解性の無機充填剤が特に魅力的である場合がある。これらの物質は、ポリマー微細繊維の分解速度の制御を補助することができる。例えば、多くのカルシウム塩及びリン酸塩が好適であり得る。代表的な生体適合性の吸収性充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸カルシウムナトリウム、リン酸カルシウムカリウム、リン酸四カルシウム、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、リン酸カルシウムアパタイト、リン酸八カルシウム、リン酸二カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム二水和物、硫酸カルシウム半水和物、フッ化カルシウム、クエン酸カルシウム、酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムが挙げられる。特に好適な充填剤は、リン酸三塩基カルシウム(ヒドロキシアパタイト)である。
【0135】
他の追加の成分には、酸化防止剤、着色剤、例えば染料及び/又は顔料、帯電防止剤、蛍光増白剤、悪臭抑制剤、香料及び芳香剤、創傷治癒若しくは他の皮膚活性を促進するための活性成分、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0136】
C.寸法安定性不織布繊維ウェブの製造方法
配向微細繊維を製造することができる代表的なプロセスには、配向フィルムフィラメント形成、溶融紡糸、プレキシフィラメント形成、スパンボンド、湿式紡糸、及び乾式紡糸が挙げられる。好適な配向繊維製造方法は、当該技術分野においても知られている。(例えば、Ziabicki、Andrzej、Fundamentals of Fibre Formation:The Science of Fibre Spinning and Drawing,Wiley,London,1976を参照)。初期の繊維形成中に繊維内に配向を与える必要はなく、繊維形成後に与えることができ、最も一般的には延伸又は延展工程を用いて行なわれる。
【0137】
寸法安定性不織布繊維ウェブには、実質的にサブマイクロファイバーである微細繊維、実質的にマイクロファイバーである微細繊維、又はこれらの組み合わせが含まれ得る。幾つかの代表的実施形態において、寸法安定性不織布繊維ウェブは、サブマイクロメータ不織布ファイバーに支持構造を与える、より粗いマイクロファイバーに混じり合ったサブマイクロファイバーにより形成されていてもよい。支持構造は、微細サブマイクロファイバーを好ましい低ソリディティ形態で支持するための弾性及び強度を与えることができる。支持構造は、様々な異なる構成要素から、単一で又は組み合わせて、作製することができる。支持構成要素の例としては、例えばマイクロファイバー、不連続配向繊維、天然繊維、多孔質発泡材料、及び連続又は不連続の非配向繊維が挙げられる。
【0138】
サブマイクロファイバーは通常、非常に長いが、一般には不連続とみなされている。短繊維の長さが有限なのとは対照的に長さ対直径の比が無限に近づくことが、サブマイクロファイバーをマイクロファイバーのマトリックス内で良好に保持する。これらは、普通は有機のポリマーであり、マイクロファイバーと分子的に同一のポリマーであることが多い。サブマイクロファイバー及びマイクロファイバーの流れが合流するにつれ、サブマイクロファイバーはマイクロファイバー間に分散される。特にx−y次元(すなわちウェブ平面)においてはかなり均一な混合物が得られ、z次元の分布は距離、角度、並びに合流する流れの質量及び速度の制御といった、特定の工程によって制御され得る。
【0139】
本開示の配合された不織複合繊維ウェブに含まれる、マイクロファイバーに対するサブマイクロファイバーの相対量は、意図されているウェブの用途次第で変化させることができる。有効量、即ち、所望性能を達成するために有効な量は重量に関して多大である必要はない。普通、マイクロファイバーは、ウェブの繊維の少なくとも1重量%で、約75重量%以下を占める。マイクロファイバーは表面積が大きいため、少量でも所望性能を達成し得る。非常に小さなマイクロファイバーを含むウェブの場合、マイクロファイバーは一般にウェブの繊維表面積の少なくとも5%を占め、より典型的には繊維表面積の10又は20%以上を占める。本発明の代表的実施形態で特に利点となるのは、濾過又は断熱又は防音といった必要な用途に直径の小さい繊維を供することができることである。
【0140】
代表的な一実施形態においては、マイクロファイバー流を形成し、サブマイクロファイバー流を別個に形成してマイクロファイバー流に加えて、寸法安定性不織布繊維ウェブを形成する。別の一実施形態においては、サブマイクロファイバー流を形成し、マイクロファイバー流を別個に形成してサブマイクロファイバー流に加えて、寸法安定性不織布繊維ウェブを形成する。これらの代表的実施形態においては、サブマイクロファイバー流及びマイクロファイバー流の一方又は双方が配向されている。更に別の実施形態においては、配向サブマイクロファイバー流を形成し、例えば米国特許第4,118,531号(Hauser)に記載の方法を用いて、不連続マイクロファイバーをサブマイクロファイバー流に加える。
【0141】
幾つかの代表的実施形態においては、寸法安定性不織布繊維ウェブの製造方法は、サブマイクロファイバー集団及びマイクロファイバー集団を、繊維流の混合、水流交絡、湿式形成、プレキシフィラメント形成、又はこれらの組み合わせにより混合して寸法安定性不織布繊維ウェブとすることを含む。サブマイクロファイバー集団のマイクロファイバー集団への混合には、一方又は双方の種類の繊維の複数流を用いることができ、これらの繊維流をいかなる順序で混合してもよい。このようにして、望まれる多様な濃度勾配及び/又は層の構造を呈する不織複合繊維ウェブを形成することができる。
【0142】
例えば、特定の代表的実施形態において、サブマイクロファイバー集団を、マイクロファイバー集団と混合して不均質の繊維混合物を形成することができる。別の代表的実施形態においては、サブマイクロファイバー集団を、マイクロファイバー集団を含む下層の上に上層として形成してもよい。別の特定の代表的実施形態においては、マイクロファイバー集団を、サブマイクロファイバー集団を含む下層の上に上層として形成してもよい。
【0143】
別の代表的実施形態において、この不織布物品は、任意でマイクロファイバーを含む支持層の上にサブマイクロファイバー集団を堆積することにより形成して、支持層又は基材上にサブマイクロファイバー集団を形成してもよい。本方法は、任意でポリマーマイクロファイバーを含む支持層を、メジアン繊維径が1マイクロメートル(μm)以下のサブマイクロファイバーの繊維流中に通すことを含んでもよい。繊維流中を通過している間に、サブマイクロファイバーを支持層に堆積させ、一時的又は恒久的に支持層に結合することができる。これら繊維が支持層上に堆積すると、場合によっては、繊維は互いに結合し、支持層上にある間に更に硬化する。
【0144】
現時点で好ましい特定の実施形態においては、サブマイクロファイバー集団を、マイクロファイバー集団の少なくとも一部を含む任意の支持層と混合する。現時点で好ましい別の実施形態においては、サブマイクロファイバー集団を任意の支持層と混合し、次いで、マイクロファイバー集団の少なくとも一部と混合する。
【0145】
1.サブマイクロファイバーの形成
サブマイクロファイバーの製造及び堆積には数々の方法を用いることができ、これはメルトブロー法、溶融紡糸、又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。特に好適な方法は、米国特許第3,874,886号(Levecqueら)、同第4,363,646号(Torobin)、同第4,536,361号(Torobin)、同第5,227,107号(Dickensonら)、同第6,183,670号(Torobin)、同第6,743,273号(Chungら)、同第6,800,226号(Gerking)、及びドイツ特許第19929709 C2号(Gerking)に開示される方法を含むが、これらに限られない。
【0146】
また、サブマイクロメートル繊維を形成するために好適なプロセスは、電界紡糸プロセス、例えば、米国特許第1,975,504号(Formhals)に記述されているプロセスも含む。他の好適なサブマイクロメートル繊維形成方法は、米国特許第6,114,017号(Fabbricanteら)、同第6,382,526(B1)号(Renekerら)、及び同第6,861,025(B2)号(Ericksonら)に記載されている。
【0147】
本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブの製造方法は、上述のポリマー材料のいずれかより形成される繊維を含有するサブマイクロファイバー構成要素の形成に用いることができる。典型的には、サブマイクロファイバー形成方法の工程は、熱形成可能な材料を約130℃〜約350℃の範囲の溶融押出温度で溶融押出することを伴う。ダイアセンブリ及び/又は同軸ノズルアセンブリ(例えば上で参照したTorobinの方法を参照)は、紡糸口金及び/又は同軸ノズルの集合を含み、溶融した熱形成可能材料がこれらを通過して押し出される。代表的な一実施形態では、同軸ノズルアセンブリは配列状に形成された同軸ノズルの集合を含み、複数の繊維流が支持層又は基材上に押し出される。例えば、米国特許第4,536,361号(図2)及び同第6,183,670号(図1及び2)を参照されたい。
【0148】
2.マイクロファイバーの形成
マイクロファイバーの製造及び堆積には数々の方法を用いることができ、これはメルトブロー法、溶融紡糸、フィラメント押出、プレキシフィラメント形成、スパンボンド、湿式紡糸、乾式紡糸、又はこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。好適なマイクロファイバー形成方法は、米国特許第6,315,806号(Torobin)、同第6,114,017号(Fabbricanteら)、同第6,382,526 B1号(Renekerら)、及び同第6,861,025 B2号(Ericksonら)に記載されている。あるいは、マイクロファイバーの集団を短繊維に形成又は転換して、例えば米国特許第4,118,531号(Hauser)に記述されているようなプロセスを用いて、サブマイクロメートルファイバーの集団と組み合わせることができる。特定の代表的実施形態においては、マイクロファイバー集団は、後述するように、熱結合、接着剤結合、粉末バインダー結合、水流交絡、ニードルパンチ、カレンダ加工、又はこれらの組み合わせを用いて結合が達成できる、結合させたマイクロファイバーのウェブを含んでいてもよい。
【0149】
3.寸法安定性不織布繊維ウェブを形成するための装置
ポリマー微細繊維を溶融加工するための様々な装置及び技術が当該技術分野において既知である。このような装置及び技術は、例えば、米国特許第3,565,985号(Schrenkら)、同第5,427,842号(Blandら)、同第5,589,122号、及び同第5,599,602号(Leonard)、並びに同第5,660,922号(Henidgeら)に開示されている。溶融加工装置の例としては、本発明の微細繊維を溶融加工するための押出成形機(単軸及び二軸)、バンバリーミキサー、及びブラベンダー押出成形機が挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
(BMF)メルトブロープロセスは特に、分子配向されていない繊維の不織布ウェブを形成する代表的な一方法であり、ポリマー流体(溶融状態又は溶液として)が1列以上の孔から押し出され、高速度のガスジェットに衝突する。ガスジェット、典型的には加熱空気は、ポリマー流体を取り込み、これを引き寄せ、ポリマーを繊維に固化するのに役立つ。中実の繊維は、次いで中実又は多孔質の表面上に不織布ウェブとして収集される。本プロセスは、Van Wenteによって「Superfine Thermoplastic Fibers」(Industrial Engineering Chemistry,vol.48,pp.1342〜1346)において記述されている。メルトブローンプロセスの改善されたバージョンが、米国特許第3,849,241号に記載されるようにBuntin et al.によって記述されている。
【0151】
微細繊維を製造するための代表的なBMFプロセスの一部として、溶融形態の熱可塑性ポリエステル及びポリプロピレンが、所望による粘度調整剤に対して十分な量で混合され、上述のような平均直径特性を有する微細繊維を得ることができる。微細繊維の成分を、押出成形機内で混合し、押出成形機を通して運搬し、好ましくは溶融物中でポリマー分解又は制御されない副反応が実質的に生じずに、ポリマーを得ることができる。プロセス温度は、生分解性脂肪族ポリエステル粘度調整剤を混合するのに十分であり、ポリマーを押し出すことが可能である。可能性のある分解反応には、エステル交換、加水分解、鎖の切断及びラジカル鎖分解が挙げられ、加工条件はこのような反応を最低限に抑えるべきである。
【0152】
本開示における粘度調整剤は、純粋な段階で繊維押出成形プロセスに追加する必要はない。粘度調整剤は、押し出しに先立って脂肪族ポリエステル又は他の材料と混合されてもよい。一般に、粘度調整剤のような添加剤は、押し出しに先立って混合されるとき、それらは最終繊維に望ましいものよりも高い濃度で混合される。この高濃度化合物は、マスターバッチと称される。マスターバッチが使用されるとき、繊維押し出しプロセスに入る前に、マスターバッチは一般的に純粋なポリマーで希釈される。複数の添加物がマスターバッチ内に存在してもよく、複数のマスターバッチが繊維押し出しプロセスにおいて使用されてもよい。
【0153】
本明細書に提供されるように、粘度調整剤の使用が有効であり得る他のメルトブローンプロセスは、米国特許出願公開第2008/0160861号に記述されている。
【0154】
マイクロファイバー及びサブマイクロファイバーの状態に応じて、捕集中に両繊維間に、ある程度結合が生じる場合がある。但し、所望の凝集性を有するマトリックスを提供し、ウェブをより取り扱い易くして、サブマイクロファイバーがマトリックス内により良好に保持されるようにするため(繊維の「結合」とは、ウェブが通常の取り扱いに供されても概ね分離しないように繊維同士を互いに固着させることを意味する)捕集されたウェブにおけるマイクロファイバー間では更なる結合が必要であるのが普通である。
【0155】
点結合プロセスで加えられる熱及び圧力を用いるか、又は平滑なカレンダーロールによる従来の結合技法を用いることができるが、このようなプロセスは、繊維の望ましくない変形又はウェブの圧縮を引き起こす場合がある。マイクロファイバー結合のより好ましい技法は、米国特許出願公開第2008/0038976号に教示されている。この技法を行うための装置は、図面の図1、5及び6に例示されている。
【0156】
簡潔に要約すると、本発明に適用される場合、この好ましい技法は、マイクロファイバー及びサブマイクロファイバーの捕集したウェブを、制御下の加熱及び急冷作業に供することを伴い、本作業は、a)マイクロファイバーを軟化するのに十分な温度に加熱された気流をウェブ中に強制的に通し、この加熱流を、繊維が完全に溶融するには短い別個の時間だけ付与して、マイクロファイバーを繊維の交点(例えば凝集性を有する、又は結合したマトリックスを形成するために十分な交点)にて十分に互いに結合させることと、b)直ちに、加熱流より少なくとも50℃以下低い温度にて気流をウェブに強制的に通し、前記繊維を急冷すること、とを含む(上述の米国特許出願公開第2008/0038976号で規定されているように、「強制的に」とは、気流を推進しウェブを通過させるために通常の室内圧力に加えて気流に力を加えることを意味し、「直ちに」とは、同作業の一部として行なう、即ち、次の処理工程の前にウェブがロールに巻回される場合に生じるような保管期間を介在することがないことを意味する)。この技法は略語として、急冷フロー加熱技法と記載され、同装置は急冷フローヒーターとして記載されている。
【0157】
サブマイクロファイバーは、結合作業中に、実質的に溶融する、又は繊維構造を失うことはなく、繊維の原寸法を有する個別のマイクロファイバーのままであることが分かっている。特定の理論に束縛されるものではないが、出願人は、サブマイクロファイバーはマイクロファイバーとは異なる結晶性の低い形態を有すると信じ、結合作業中に限られた熱をウェブに加えると、この熱は、サブマイクロファイバーの溶融が起きる前に、サブマイクロファイバー中で結晶成長が現れる際に消耗されてしまう、と理論づけている。この理論が正しいかどうかに拘わらず、サブマイクロファイバーが実質的に溶融又は歪曲せずにマイクロファイバーの結合が起きることは事実であり、ウェブ完成品の特性に有益であり得る。
【0158】
記載の方法の一変形例は、上述の米国特許出願公開第2008/0038976号により詳細に教示されるように、マイクロファイバー中の2つの異なる種類の分子相の存在を利用していて、第1の種類は、鎖延長又は歪誘起による結晶性ドメインが比較的多く存在することから微結晶特性分子相と呼ばれ、第2の種類は、結晶秩序が低い(即ち、鎖延長がない)ドメイン及び非晶質ドメインが比較的多く存在することから非晶質特性相と呼ばれるが、後者は、結晶化には足りない程度の何らかの秩序又は配向を有する場合がある。これら2つの種類の相は、必ずしも明確な境界を有するわけではなく、互いに混在することがあり、異なる溶融及び/又は軟化特性を含む異なる種類の特性を有する。鎖延長の結晶性ドメインがより多く存在することを特徴とする第1の相は、第2相が溶融又は軟化する温度(例えば、秩序がより低い結晶性ドメインの融点によって変更されるような非晶性ドメインのガラス転移温度)より高い温度(例えば、鎖延長結晶性ドメインの融点)にて溶融する。
【0159】
記載の方法で述べられている変形例では、微結晶特性相が溶融しないままで繊維の非晶質特性相が溶融又は軟化するのに十分な温度及び時間で加熱を行なう。一般に、加熱気流は、繊維のポリマー材料の溶融開始温度より高い温度である。加熱後、ウェブは上述のように急速に急冷される。
【0160】
捕集したウェブをこのような温度で処理すると、マイクロファイバーの形態が精製されることが分かり、これは次のように理解される(「理解」とは一般に理論に基づく考察を含むものであり、本明細書中で「理解」と述べることによって束縛されることは本発明者らの望むところではない)。非晶質特性相に関して、望ましくない(軟化を妨げる)結晶成長の影響を受けやすい相の分子材料の量は、処理前ほど多くはない。非晶質特性相は、従来の未処理繊維では熱結合作業の間に結晶性が不必要に増大することになる、分子構造のある種の洗浄又は低減を受けたと理解される。本発明の特定の代表的実施形態において処理された繊維は、ある種の「反復的軟化」が可能である可能性がある。即ち、繊維全体が溶融してしまう温度より低い温度領域内での温度上昇及び下降のサイクルに繊維が曝されるにつれ、繊維、特に繊維の非晶質特性相が、軟化及び再固結のサイクルをある程度繰り返すことを意味する。
【0161】
実際面では、処理済みの(加熱及び急冷処理の結果、既に有用な結合を概ね示している)ウェブを加熱して、繊維の更なる自己結合をもたらすことができる場合は、反復的軟化をしていることを意味する。軟化及び再固結のサイクルは無限には継続しなくてもよいが、一般に、例えば本発明の特定の代表的実施形態に係る熱処理の間に繊維が初めて熱に曝されることによって結合し、後に再び加熱されて再軟化及び更なる結合をもたらすか、又は所望により、カレンダ加工又は再成形のような他の作業を行なえば、十分である。例えば、繊維の結合力向上を利用して、ウェブを平滑面にカレンダ加工したり、又は、例えばフェイスマスクに成型するなど非平面形状を与えたりしてもよい(但しこのような場合の結合は自己結合には限られない)。
【0162】
非晶質特性相又は結合相がウェブ結合、カレンダ加工、成形又はその他の同様の作業中に上述の軟化機能を有する一方、繊維の微結晶特性相もまた重要な役割、即ち繊維の基本的な繊維構造を強化する役割を有する。微結晶特性相は、一般に、結合又は同様の作業中も非溶融状態を保つことができるが、それは、その融点が、非晶質特性相の溶融/軟化点よりも高く、したがって、繊維全体を通じて延在するとともに繊維構造及び繊維寸法を支持するマトリックスが原状のままに保たれるからである。
【0163】
したがって、自己結合作業においてウェブを加熱することにより、繊維交点にてある程度流動及び合体することによって繊維が共に結合するとしても、基本的に個別の繊維構造は、交点間及び結合間の繊維長さに渡って実質的に保持される。好ましくは繊維の断面は、交点間又は作業中に形成される結合間の繊維長さに渡って変化しないままである。同様に、ウェブをカレンダ加工することにより、カレンダ加工作業の圧力及び熱により繊維が再構成される(それによって繊維は、カレンダ加工中に押圧された形状を永久的に保持し、ウェブの厚さをより均一にする)としても、繊維は一般に、個別の繊維のままであり、結果として所望のウェブ多孔性、濾過、及び絶縁特性が保持される。
【0164】
急冷の1つの目的は、ウェブに含有されるマイクロファイバーに望ましくない変化が生じる前に熱を取り除くことである。急冷の別の目的は、ウェブ及び繊維から熱を迅速に除去することであり、それにより後で繊維に生じる結晶化又は分子秩序化の程度及び特性を制限する。溶融/軟化状態から固化状態へ急速に急冷することにより、非晶質特性相は凍結してより純度の高い結晶質形態となり、繊維の軟化又は反復的軟化を阻害する分子状物質の量は減少すると考えられる。ほとんどの用途で急冷は非常に好ましいが、一部の用途では必ずしも必要であるとは限らない。
【0165】
急冷を達成するために、塊を公称融点より少なくとも50℃以下低い温度の気体によって冷却するのが望ましい。また急冷気体は、少なくとも1秒間、付与するのが望ましい(公称融点はポリマー供給元が記載していることが多い。示差走査熱量測定を用いて同定することもでき、本明細書で用いる場合、ポリマーに関する「公称融点」は、ポリマーの溶融領域において最大値が1つだけの場合には二次熱総熱流量DSCプロットの最大ピークとして定義され、複数の融点を示す複数の最大値が存在する場合(例えば、2つの別個の結晶相の存在のため)、最も高い振幅の溶融ピークが生じる温度として定義する)。いずれの場合も、急冷気体又は他の流体は繊維を急速に固化するに足る十分な熱容量を有する。
【0166】
本発明の特定の代表的実施形態の一利点として、マイクロファイバーウェブ中に保持されているサブマイクロファイバーが、全てサブマイクロファイバーに存在する場合に比べ、圧縮からより良く保護される可能性が挙げられる。マイクロファイバーは一般に、サブマイクロファイバーより大きく、硬く、そして強く、またマイクロファイバーの材料とは異なる材料から製造することができる。サブマイクロファイバー間にマイクロファイバーが存在し、圧力を与える物体があることで、サブマイクロファイバーにかかる圧壊力の付与に制限がかかる可能性がある。特に、非常に壊れやすいことがあるサブマイクロファイバーの場合、本発明の特定の代表的実施形態により圧縮又は圧壊に対する抵抗力が増すことは、重要な利点をもたらす。本開示のウェブに、例えば巨大な貯蔵ロール又は二次的処理において巻回されることで圧力がかけられても、本開示のウェブは、ウェブ圧縮に対する良好な抵抗力を示すことができるが、もしそうでない場合は圧力損失が増大してフィルターの捕集性能が悪化する。マイクロファイバーが存在することで、ウェブ強度、剛性及び取り扱い特性といった他の特性も加えることができる。
【0167】
繊維の直径は、必要とされる濾過、音吸収、及びその他の特性を提供するために調整することができる。例えば、望ましくは、マイクロファイバーが5〜50マイクロメートル(μm)のメジアン径を有し、サブマイクロファイバーが0.1μm〜1μm以下、例えば0.9μmのメジアン径を有することができる。好ましくは、マイクロファイバーが5μm〜50μmのメジアン径を有するのに対し、サブマイクロファイバーは好ましくは0.5μm〜1μm以下、例えば0.9μmのメジアン径を有する。
【0168】
上述のように、本発明の特定の代表的実施形態は特に、非常に小さなマイクロファイバー、例えばメジアン径が1μm〜約2μmの極細マイクロファイバーを、サブマイクロファイバーと混合するのに有用であり得る。また、上述のように、ウェブ中で例えばマイクロファイバーに対するサブマイクロファイバーの比率に関しウェブの厚さに渡って勾配を設けるのが望ましい場合があり、これは、サブマイクロファイバー流の空気速度又は質量流量などの処理条件、又は、マイクロファイバー流からダイまでの距離及びサブマイクロファイバー流の角度を含む、マイクロファイバー流及びサブマイクロファイバー流の交点配置を変えることにより達成できる。本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブの一端縁近傍にサブマイクロファイバーが集中していると、気体及び/又は液体濾過用途において特に有用であり得る。
【0169】
本開示の様々な実施形態にしたがってマイクロファイバー又はサブマイクロファイバーを調製する際、異なる繊維形成材料を溶融紡糸押出成形ヘッド又はメルトブローダイの異なる開口部から押し出して、繊維混合物を含むウェブを調製してもよい。寸法安定性不織布繊維ウェブを帯電させてその濾過性能を高めるための、様々な方法がまた利用可能である。例えば、米国特許第5,496,507号(Angadjivand)を参照。
【0170】
ウェブをサブマイクロファイバー自体から調製できても、このようなウェブは薄く脆弱であろう。しかし、凝集性で結合され配向された複合繊維構造にて、サブマイクロファイバー集団をマイクロファイバー集団に組み入れることで、強靭で自立型のウェブ又はシート材料を、任意の支持層と共に又は無しに、得ることができる。
【0171】
上述の寸法安定性不織布繊維ウェブ製造方法に加え、以下の加工工程のうちの1つ以上を形成後のウェブに対し実施してもよい。
【0172】
(1)寸法安定性不織布繊維ウェブを更なるプロセス作業に向けたプロセス経路に沿って前進させる工程、
(2)1つ以上の追加層を、サブマイクロファイバー成分の外側表面、マイクロファイバー成分の外側表面、及び/又は任意の支持層の外側表面と接触させる工程、
(3)寸法安定性不織布繊維ウェブをカレンダ加工する工程、
(4)寸法安定性不織布繊維ウェブを表面処理剤又は他の組成物(例えば、難燃剤組成物、接着剤組成物、又は印刷層)でコーティングする工程、
(5)寸法安定性不織布繊維ウェブを厚紙又はプラスチックチューブに取り付ける工程、
(6)寸法安定性不織布繊維ウェブをロール形状に巻き上げる工程、
(7)寸法安定性不織布繊維ウェブを繊細化して、2つ以上のスリットロール及び/又は複数のスリットシートを形成する工程、
(8)寸法安定性不織布繊維ウェブを成形型に入れ、寸法安定性不織布繊維ウェブを新たな形状に成形する工程、
(9)存在する場合には、露出した任意の感圧性接着剤の層の上に剥離ライナーを塗布する工程、及び
(10)寸法安定性不織布繊維ウェブを、接着剤又は、クリップ、ブラケット、ボルト/ネジ、釘、及びストラップを含むがこれに限られないその他いずれかの取り付け手段を介し、別の基材に取り付ける工程。
【0173】
D.寸法安定性不織布繊維ウェブから形成された物品
本開示は、多様な用途における本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブの使用方法もまた、目的とする。更に別の態様においては、本開示は、本開示による寸法安定性不織布繊維ウェブを含む物品に関する。代表的な実施形態において、この物品は、気体濾過物品、液体濾過物品、音吸収物品、断熱物品、表面洗浄物品、細胞成長支持物品、薬物送達物品、個人用衛生物品、歯科衛生物品、手術用ドレープ、手術用機器隔離ドレープ、手術用ガウン、医療用ガウン、ヘルスケア患者用ガウン及び衣服、エプロンその他の衣類、殺菌ラップ、拭き取り用品、農業用布地、食品梱包、梱包、又は創傷包帯物品として使用することができる。
【0174】
例えば、本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブは、ソリディティが低いことで圧力損失が抑えられることから、気体濾過用途において有益であり得る。サブマイクロファイバーウェブは一般に、ソリディティを下げることでその圧力損失が抑えられる。本開示の、低ソリディティのサブマイクロメータ寸法安定性不織布繊維ウェブの微粒子充填と同時に、より低い圧力降下の増加もまた、結果としてもたらされる場合がある。集塵用サブマイクロファイバー形成の現在の技術では、より粗いマイクロファイバーウェブに比べて、特に微細なサブマイクロファイバーウェブはソリディティがより高いことが1つの原因となり、圧力損失がかなり高い。
【0175】
加えて、サブマイクロファイバーは集塵効率を改良させる可能性があるため、サブマイクロファイバーを気体濾過に用いることは特に有益であり得る。特に、サブマイクロファイバーは、小径の空気輸送微粒子の捕獲において、より粗い繊維よりも優れている場合がある。例えば、サブマイクロファイバーは、寸法が約1000ナノメートル(nm)未満、より好ましくは約500nm未満、更により好ましくは約100nm未満、最も好ましくは約50nm未満の空気中の粒状物質を、より効率よく捕捉し得る。このような気体フィルターは、個人用呼吸保護具、暖房、換気、及び空調(HVAC)用フィルター、自動車用エアフィルター(例えば、自動車エンジン用エアクリーナー、自動車用排気ガス濾過、自動車の乗員室空気濾過)、及びその他の気体中粒子濾過用途において特に有用であり得る。
【0176】
また、サブマイクロファイバーを本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブの形態で含有する液体フィルターは、またサブマイクロメータサイズの液体中の粒状物質捕捉のために小さな孔径を維持しながら、深部捕集性能を向上させるという利点を有し得る。これらの性状は、詰まりを伴わずにチャレンジ微粒子(challenge particulates)をフィルターに多く捕獲させることによって、フィルターの充填性能を改善する。
【0177】
本開示の、繊維を含有する寸法安定性不織布繊維ウェブはまた、膜を支持するための好ましい基材であり得る。この低ソリディティ微細ウェブは、メンブレンの物理的支持体としてだけでなく、深さプレフィルター(depth pre-filter)としても、メンブレンの寿命を改善することができる。そのようなシステムの使用は、非常に有効な対称又は非対称メンブレンとして作用できる。そのようなメンブレンの用途としては、電解質排除、限外濾過、逆浸透、選択的結合、及び/又は吸着、及び燃料電池輸送及び反応システムが挙げられる。
【0178】
本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブは、細胞増殖を促す合成マトリックスとしてもまた有用であり得る。微細なサブマイクロファイバーを伴う開かれた構造は、自然発生的システムを模倣することができ、より生体内的な挙動を促進する。これは、現在の製品(例えばDonaldson Corp.(Minneapolis,Minnesota)が市販するDonaldson ULTRA−WEB(商標)Synthetic ECM)では、繊維マトリックス内に細胞がほとんど又は全く浸透せずに、高ソリディティ繊維のウェブが合成支持膜として機能するのとは対照的である。
【0179】
本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブにより得られる構造はまた、表面洗浄用の拭取り布としても効果的であり、微細なサブマイクロファイバーが柔らかい拭取り布を形成し、一方では、ソリディティの低いことが洗剤貯留部及び汚物捕捉用の高い気孔体積が得られるという利点をもたらし得る。
【0180】
防音用途及び断熱用途では、低ソリディティ形態の微細なサブマイクロファイバーを提供することで、サブマイクロファイバーの表面積をより露出させることで音吸収性が高まり、所定の坪量に対してより厚いウェブとすることで特に低周波数の音吸収性が高まる。特に断熱用途においては、サブマイクロファイバーを含有する微細サブマイクロファイバー断熱材は、断熱空気を捕捉するためソリディティが非常に低いウェブでありながら、柔らかな感触と高いドレープ性を有するであろう。幾つかの実施形態において、この不織布ウェブは、気体空隙を包含する中空繊維又はフィラメントを含み得る。スパンボンドプロセスを使用して、空隙を包含する連続した中空繊維又はフィラメントの不織布を調製することができ、これは特に防音及び断熱に有用である。この空隙は、これから製造される寸法安定性不織布繊維ウェブ及び物品の、音の減衰、熱伝導の低減、及び重量削減を可能にし得る。
【0181】
そのような防音及び/又は断熱物品を利用する幾つかの実施形態において、領域全体を、本開示の実施形態による寸法安定性不織布繊維ウェブ単独で、あるいは支持層の上に配置することで、取り囲むことができる。寸法安定性不織布繊維ウェブを含む支持構造及び繊維は、互いに均一に分散されていてもよいが、必ずしもその必要はない。様々な孔径、高密度領域、外皮、又は流路を設ける上で、緩衝性、弾性、及び非対称充填におけるフィルターの濾材充填において利点となる場合がある。
【0182】
微細繊維は特に、吸収性又は撥水性脂肪族ポリエステル不織布ガウン及び外科用に使用されるフィルム積層体ドレープ、並びに、パーソナルケア吸収体、例えば、婦人衛生パッド、おむつ、失禁パッド、拭き取り用品、流体フィルター、断熱材等を作製するのに使用される。
【0183】
本開示の発明の様々な実施形態はまた、医療用ドレープ、医療用ガウン、エプロン、濾材、工業用拭き取り用品、及びパーソナルケア、及びホームケア製品、例えばおむつ、顔用ティシュ、顔用拭き取り用品、ウェット拭き取り用品、乾燥拭き取り用品、使い捨て吸収性物品及び衣類、例えば幼児のおむつ若しくはトレーニングパンツを含む使い捨て及び再利用可能な吸収性物品、成人用失禁製品、婦人用衛星物品、例えば生理用ナプキン、パンティライナーなどを含む、微細繊維の布地及びウェブから作製された有用な物品も提供する。本発明の微細繊維は、衣類、例えばコート、ジャケット、手袋、耐冷パンツ、ブーツ等の断熱、並びに防音体を作製するのに有用であり得る。
【0184】
更に別の態様では、本発明は、水性媒体不透過性裏張りシートを含む、多層水性液体吸収性物品を提供する。例えば、重要なことに、幾つかの外科用ドレープは、トップシート内に吸収されている液体がこれを通じて皮膚の表面に伝わり、そこで皮膚上に存在するバクテリアによって汚染されることを防止するために液体不透過性である。他の実施形態では、構造体は、例えば使い捨ておむつ、拭き取り用品若しくはタオル、生理用ナプキン、及び失禁パッドを作製するのに有用な、上記のウェブ又はその間に並置された布地から作製された水性媒体透過性トップシート、及び水性液体吸収性(すなわち、親水性)層を更に含んでもよい。
【0185】
更に別の態様では、単層若しくは多層の撥水性物品、例えば外科用若しくは医療用ガウン若しくはエプロンは、少なくとも一部分において本明細書に記載の微細繊維のウェブで形成され、水性流体反撥特性を有する。例えば、SMSウェブは、少なくともM(メルトブローン、ブローンマイクロファイバー)層中に微細繊維を有して、形成されてもよく、しかし、それらはまたS(スパンボンド層)も含んでもよい。M層はその中に組み込まれたフッ素性化学物質などの撥水性添加剤を更に有してもよい。この方式において、病原微生物を含有する恐れがある血若しくは他の体液の吸収を避けるために、ガウンは流体反撥性にされる。あるいは、ウェブはフッ素性化学物質などの撥水性仕上げによって後処理され得る。
【0186】
更に別の態様において、器具の殺菌を必要とする手術又は他の処置に先立って、清浄な機器を覆うために使用されるラップが形成され得る。これらのラップは殺菌ガス、例えば蒸気、エチレンオキシド、過酸化水素等の浸透を可能にするが、それらはバクテリアを浸透させない。これらは、単層若しくは多層の撥水性物品から形成され、例えば殺菌ラップは、少なくとも一部分において本明細書に記載の微細繊維のウェブで形成され、水性流体反撥特性を有し得る。例えば、SMS、SMMS、又は他の不織布構造ウェブは、少なくともM(メルトブローン、吹込マイクロファイバー)中に微細繊維を有して形成されてもよく、しかし、それらはS(スパンボンド層も同様に)含んでもよい。M層はその中に又はその上に組み込まれたフッ素性化学物質などの撥水性添加剤を更に有してもよい。
【0187】
好ましいフッ素性化学物質は、少なくとも4つの炭素原子を有するペルフルオロアルキル基を含む。これらのフッ素性化学物質は、小分子、オリゴマー、又はポリマーであってもよい。好適なフッ素性化学物質は、米国特許第6,127,485号(Klunら)及び同第6,262,180号(Klunら)に見出すことができる。その他の好適な撥水剤には、米国特許第61/061,091号(2008年6月12日出願)、及びPCT国際公開特許第WO 2009/152349号に記述されているフッ素生化学物質及びシリコーン流体撥水剤が挙げられ得る。場合によっては、炭化水素タイプの撥水剤が好適であり得る。
【0188】
本明細書に記載の、そのような単一若しくは多層忌避物品から作製された殺菌ラップは、殺菌ラップに要求される特性の全て、すなわち、蒸気若しくはエチレンオキシド、又はラップが覆う物品の殺菌中(及び乾燥若しくは通気中)の他のガス状の減菌剤への透過性、水性汚染によってラップの含有物の汚染を防ぐための保管中の液体水の撥水性、及び殺菌されたパックの保管中に空中又は水性微生物による汚染への複雑な経路バリアを有する。
【0189】
本開示の発明の代表的な実施形態の微細繊維は、無数の化合物での処理によって更に撥水性をもたせることができる。例えば、布地は、パラフィンワックス、脂肪酸、蜜蝋、シリコーン、フッ素性化学物質、及びこれらの組み合わせを含む表面処理を形成する支柱ウェブであってもよい。例えば、撥水性仕上げは、米国特許第5,027,803号、同第6,960,642号、及び同第7,199,197号に開示されているように適用することができる。撥水性仕上げはまた、米国特許第6,262,180号に記述されているように、溶融添加物であってもよい。
【0190】
本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブを含む物品は、ポリマー樹脂からなるポリマーシートなどの製品を製造するための当該技術分野において既知のプロセスによって製造することができる。多くの用途では、このような物品は、2時間浸漬し、乾燥させた後、物理的一体性(例えば、引っ張り強度)が実質的に低下することなく、23℃で水中に定置することができる。典型的には、これらの物品は水をほとんど含まず、又は全く含まない。押出成形、射出成形又は溶媒鋳造後の物品中の水分は典型的に、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.2重量%以下である。
【0191】
本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブから製造され得る物品としては、外科用ドレープ及びガウン、手技用ドレープ、プラスチック特殊ドレープ、切開用ドレープ、バリアドレープ、バリアガウン、SMS、SMMS、その他の不織布ガウン、SMS、SMMS、その他の不織布殺菌ラップ、及び同様物、創傷包帯、創傷吸収体、及び創傷接触層、手術中に血液及び体液を吸収するのに使用する外科用スポンジ、外科用インプラント、及び他の医療用装置を挙げることができる。本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブから製造される物品は、溶媒溶接、熱溶接、又は超音波溶接により互いに接合され、あるいは他の適合性物品に接合され得る。本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブは、他の材料と共に使用して、シース/コア材料などの構成体、積層体、2つ以上の材料の複合構造を形成でき、あるいは、様々な医療用デバイス上のコーティングに有用であり得る。本明細書に記載されている寸法安定性不織布繊維ウェブは、外科用スポンジの製造に特に有用である。
【0192】
本発明の好ましい親水性の添加物界面活性剤の幾つかは、それらで作製された布地及びフィルムの接着剤、熱及び/又は超音波による固着を可能にし得る。本開示の代表的な寸法安定性不織布繊維ウェブは、外科用ドレープ及びガウンにおける使用に特に好適である。本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブを含む代表的な不織布ウェブ及びシートは、熱密封により特殊ドレープ製造を可能にする強い結合を形成することができ、使い捨て製品に重要であり得る再生可能資源から製造することができ、不織布の場合において湿潤性及び液体吸収性を可能にするような高表面エネルギーを有することが可能である。他の応用例では、低表面エネルギーは、流体反撥性を付与するために望ましいことがある。
【0193】
本開示の特定の寸法安定性不織布繊維ウェブは、物理的強度が著しく低下することなく、ガンマ線又は電子ビームにより殺菌することができる(厚さ1mil(25.4μm)のフィルムの引っ張り強度が、コバルトガンマ線源からの2.5Mradのガンマ線に曝露し、23℃〜25℃で7日間エージングした後、20%超え、好ましくは10%を超えて低下しないと考えられる)。
【0194】
本開示の幾つかの代表的な寸法安定性不織布繊維ウェブの親水性特性は、吸収性を高めることにより、創傷及び外科用包帯などの物品を改善することができる。微細繊維を創傷包帯裏材フィルムで用いる場合、フィルムは、アクリル及びブロックコポリマー接着剤、ヒドロゲル接着剤、ヒドロコロイド接着剤及び発泡接着剤のような感圧性接着剤(PSA)が挙げられるが、これらに限定されない、種々の接着剤で部分的に(例えば、領域又はパターン)コーティングする、又は完全にコーティングしてもよい。PSAは、水分の蒸発を可能にするために比較的高い湿気透過速度を有することができる。
【0195】
好適な感圧性接着剤としては、アクリレート系のもの、ポリウレタン、KRATON、及び他のブロックコポリマー、シリコーン、ゴム系接着剤、並びにこれらの接着剤の組み合わせが挙げられる。好ましいPSAは、米国再発行特許第24,906号に記載のアクリレートコポリマーのような、皮膚に塗布される通常の接着剤、特にイソオクチルアクリレート:アクリルアミドが97:3のコポリマーである。別の好ましい例は、米国特許第4,737,410号(実施例31)に記載されるように、イソオクチルアクリレート:エチレンオキシドアクリレート:アクリル酸が70:15:15のターポリマーである。他の有用な接着剤は、米国特許第3,389,827号、同第4,112,213号、同第4,310,509号、及び同第4,323,557号に記載されている。また、米国特許第4,310,509号及び同第4,323,557号に記載されるように、薬剤又は抗菌剤を接着剤に含むことも想到される。
【0196】
本開示の代表的な寸法安定性不織布繊維ウェブから、全体的に又は部分的に、作製することができる他の医療用装置としては、縫合糸、縫合締結具、手術用メッシュ、三角布、整形外科用ピン(骨充填物増強材料を含む)、接着バリア、ステント、誘導組織修復/再生装置、関節軟骨修復装置、神経ガイド、腱修復装置、心房中隔欠損修復装置、心膜パッチ、増量剤及び充填剤、静脈弁、骨髄骨格、半月板再生装置、靱帯及び腱移植、眼球細胞移植片、脊椎固定ケージ、皮膚代替物、硬膜代替物、骨移植片代替物、骨ドエル(dowel)及び止血鉗子が挙げられる。
【0197】
本開示の寸法安定性不織布繊維ウェブは、成人用失禁製品、乳児用おむつ、女性用衛生製品、その他米国特許出願第2008/0200890号に記述されているものなどの、消費者向け衛生用製品においても有用であり得る。
【実施例】
【0198】
本開示の発明の寸法安定性不織布繊維ウェブの代表的な実施形態は、更に下記の実施例によって明確に示されるが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
【0199】
実施例1:ポリプロピレンを伴うスパンボンドPLA
不織布ウェブが、無希釈ポリ(乳酸)(PLA)、及びPLAとポリプロピレン(PP)との混合物を用いて製造された。使用されたPLAはNatureworks,LLC(Minnetonka,MN)から市販されているグレード6202Dであった。使用されたPPは、Total Petrochemicals(Houston,TX)から市販されているグレード3860Xであった。1つのサンプルには更に、可塑剤、希釈剤、及び親水性界面活性剤として、ジオクチルスルホスクシネートナトリウム塩(DOSS)とポリ(エチレングリコール)(PEG)の50/50混合物も含めた。DOSS/PEG混合物を、6202D PLAと混ぜ合わせ、マスターバッチとしてスパンボンドプロセスに加えた。
【0200】
使用されたスパンボンド装置は、米国特許第6,196,752号(Berriganら)に記述されているものである。使用された押出成形機は、Davis−Standard(Pawcatuck,CT)から市販されている2インチ(5.08cm)単独推進押出成形機であった。使用されたダイは、有効幅7.875インチ(20.00cm)を有し、計量ポンプから時速42ポンド(19.1kg/時)の速度で溶融ポリマーが送り込まれた。ダイは648個の孔を有し、各孔は直径0.040インチ(0.102cm)、L/Dが6であった。押し出し温度は230℃であった。空気減衰器を平方インチ当たり5ポンド(34.5kPa)の圧力に設定した。プロセス条件は、異なる混合物間で一定に維持された。紡糸速度は、顕微鏡で測定された最終平均繊維直径と、孔当たりのポリマー速度を用いて計算されたフィラメント速度である。すべての場合において紡糸速度は毎分2500メートル以下であり、この速度は、PLA内でひずみ誘発結晶化が開始する速度である。
【0201】
押出成型後、ウェブの収縮も測定された。これは、拘束されていない状態で約10cm×10cmの正方形部分を、ダイカッターを用いて各ウェブの中央部分から切り取り、アルミニウムトレイに乗せ、80℃の熱対流炉内に一晩置いた(例えば約14時間)。PLAウェブのTgは約54〜56℃であった。次に、加熱したサンプルを冷まし、長さ(機械方向)及び幅(横断方向)を測定し、3つのサンプルの平均線状収縮が報告された。報告された収縮は、サンプル面積の変化ではなく、サンプルの長さ及び幅の、3サンプルの変化平均であった。
【0202】
【表1】

【0203】
調製されたウェブの幾つかについて、ウェブ内及び繊維内の配向度合を調べるため、偏光顕微鏡を用いた複屈折検査が実施された。ミシェル・レヴィ干渉色図表を使用して遅延が見積もられ、複屈折値が決定された。代表的なサンプルについて、一定直径での繊維内の複屈折偏差を識別する分析も行われた。一定直径の繊維が調べられたが、検査した繊維断片は必ずしも同じ繊維からのものである必要はなかった。実施例4について得られた結果が、下記の表2に示されている。見られるように、異なる色も検出された。一定直径での複屈折の同様の偏差は、他のサンプルについても見出された。
【0204】
実施例2:ポリプロピレンを伴うメルトブローンPLA
ポリ(乳酸)、PLA、及びポリプロピレン(PP)から、メルトブロープロセスを用いて、不織布ウェブが製造された。使用されたPLAはNatureworks,LLC(Minnetonka,MN)から市販されているグレード6251Dであった。使用されたPPは、Total Petrochemicals(Houston,TX)から市販されているグレード3960であった。
【0205】
メルトブロー装置は、2軸押出成形機、計量ポンプ、及びメルトブローダイを包含していた。使用された押出成形機は、31mm 2軸押出成形機(C.W.Brabender Instruments(South Hackensack,NJ))であった。押出成形機の後、容積流量ギヤポンプを使用し、溶融ポリマーを計量かつ加圧した。計量された溶融物が、孔開けされた開口部メルトブローダイに送り込まれた。孔開けされた開口部メルトブローダイは、米国特許第3,825,380号に記述されている。使用されたダイは幅10インチ(25.4cm)に、ポリマー開口部が幅1インチ(2.54cm)当たり20個で、各開口部は直径0.015インチ(0.0381cm)であった。ダイは温度225℃で操作された。PLAに添加されるPPの量が異なる混合物のポリマーペレットが、プロセスに供給された。プロセス条件は実験中常に一定に保持された。
【0206】
ウェブは減圧回収機で回収され、表面巻取器を使用して芯上に巻き取られた。繊維直径は、Daviesによって記述されている空気流抵抗技法(Davies,C.N.、The Separation of Airborne Dust and Particles,Inst.of Mech.Engineers,London,Proceedings 1B,1952)を使用して測定され、この測定値は有効繊維直径又はEFDとして参照される。収縮は、実施例1に記述されている技法を使用して測定された。幾つかのサンプルは加熱中に膨張しており、これらのサンプルは負の収縮値を有するものとして報告される。
【0207】
【表2】

【0208】
実施例3:粘度改変剤塩を伴うメルトブローンPLA
PLA、及び、プロセス中に溶融物の見かけ粘度を大幅に低減する様々な塩を使用し、メルトブロープロセスを用いて、不織布ウェブが製造された。完成した不織布ウェブの繊維直径も、塩を加えたときにより小さくなった。不織布ウェブの収縮を低減するため、一部の混合物にはポリプロピレンも添加された。結果として得られたウェブは、繊維直径の低減と収縮の低減の両方の特性を有していた。使用されたポリプロピレンは、Total Petrochemicals(Houston,TX)から市販されているグレード3960であった。使用されたPLAはNatureworks,LLC(Minnetonka,MN)から市販されているグレード6251Dであった。試験された添加物は以下のものを含んでいた:
ステアロイル乳酸カルシウム(CSL)(商標名Pationic CSL、RITA Corp.(Crystal Lake,IL)より市販)、
ステアロイル乳酸ナトリウム(SSL)(商標名Pationic SSL、RITA Corp.(Crystal Lake,IL)より市販)、
ステアリン酸カルシウム(Ca−S)(Aldrich(St.Louis,MO)より市販)、
ベヘノイル乳酸ナトリウム(SBL)(商標名Pationic SBL、RITA Corp.(Crystal Lake,IL)より市販)。
【0209】
CSLの化学構造を図1に示す。SBLの化学構造を図2に示す。
【0210】
【化2】

【0211】
メルトブロープロセスは、実施例2で使用したものと同じである。プロセスは、ダイ温度225℃で実施された。塩は、ポリマードライヤーからの温かいPLAペレットと粉末を乾燥混合することによって、システムに添加された。樹脂は、71℃に一晩加熱することにより事前乾燥された。塩添加剤は、温かいPLAペレットと接触して溶融し、これを手で混合して、僅かにべたつくペレットを形成し、これを押出成形機に供給した。
【0212】
押出成形の後、ウェブは、前の実施例と同じ方法を用いて、EFD及び熱収縮について試験が行われた。ダイに流入するポリマーの圧力が、ポリマー粘度の代用として記録された。このようにして、溶融物の見かけ粘度が低減すると、ダイ流入時点の圧力の低下として現われる。
【0213】
【表3】

【0214】
実施例4:ポリプロピレンを伴うメルトブローンPET
PET中PPの配合物を用いて、メルトブロープロセスを使用して繊維ウェブが製造された。使用されたPET樹脂は、Invista(Wichita,KS)から市販されているグレード8603Aであった。使用されたポリプロピレンは、Total Petrochemicals(Houston,TX)から市販されているグレード3868であった。
【0215】
使用されたメルトブロー装置は、単独推進押出成形機、計量ポンプ、及びメルトブローダイをから構成されていた。使用された押出成形機は、2インチ単独推進押出成形機(David Standard(Pawcatuck,CT)から市販)であった。押出成形機の後、容積流量ギヤポンプを使用し、溶融ポリマーを計量かつ加圧した。計量された溶融物が、孔開けされた開口部メルトブローダイに送り込まれた。孔開けされた開口部メルトブローダイは、米国特許第3,825,380号に記述されている。使用されたダイは幅20インチ(50.8cm)に、ポリマー開口部が幅1インチ(2.54cm)当たり25個で、各開口部は直径0.015インチ(0.0381cm)であった。混合は、PET及びPPペレットの乾燥配合混合物を押出成形機に供給することによって達成された。プロセス条件は、異なる混合物間で一定に維持された。
【0216】
不織布ウェブが形成された後、前述のPLAサンプルと同様にして、収縮検査が行われた。ただし、PETのガラス転移温度はより高いため、熱対流炉は、前の80℃ではなく、150℃に設定された。
【0217】
【表4】

【0218】
本明細書で特定の代表的実施形態を詳細に説明したが、当然のことながら、当業者には上述の説明を理解した上で、これらの実施形態の代替物、変更物、及び均等物を容易に想起することができるであろう。したがって、本開示は本明細書で以上に述べた例示の実施形態に不当に限定されるべきではないと理解すべきである。更に、本明細書にて参照される全ての出版物、公開された特許出願及び交付された特許は、それぞれの個々の出版物又は特許が参照により援用されることを明確にかつ個別に指示したかのごとく、それらの全体が同じ範囲で、参照により本明細書に援用される。様々な代表的実施形態が上述された。これらの及び他の実施形態は、以下の「特許請求の範囲」に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の連続繊維を含むウェブであって、該連続繊維が、
脂肪族ポリエステル及び芳香族ポリエステルから選択される1つ以上の熱可塑性ポリエステルと、
該ウェブの重量に対して0重量%超えて10重量%以下の量のポリプロピレンと、を含み、
該繊維は、分子配向を呈し、ウェブ全体で実質的にエンドレスに延在し、
更に、該ウェブが該繊維のガラス転移温度を超える温度まで加熱されたときに、該ウェブの平面内で少なくとも1つの寸法の減少が10%以下である、ウェブ。
【請求項2】
複数の繊維を含むウェブであって、該繊維が、
脂肪族ポリエステルから選択される1つ以上の熱可塑性ポリエステルと、
該ウェブの重量に対して0重量%超えて10重量%以下の量のポリプロピレンと、を含み、
該繊維が分子配向を呈さず、
更に、該ウェブが該繊維のガラス転移温度を超える温度まで加熱されたときに、該ウェブの平面内で少なくとも1つの寸法の減少が10%以下である、ウェブ。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリエステルが少なくとも1つの芳香族ポリエステルである、請求項1に記載のウェブ。
【請求項4】
前記芳香族ポリエステルが、ポリ(エチレン)テレフタレート(PET)、ポリ(エチレン)テレフタレートグリコール(PETG)、ポリ(ブチレン)テレフタレート(PBT)、ポリ(トリメチル)テレフタレート(PTT)、これらのコポリマー、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項3に記載のウェブ。
【請求項5】
前記繊維の分子配向が、少なくとも0.01の複屈折値をもたらす、請求項1に記載のウェブ。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリエステルが、1つ以上のポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、これらの配合物、及びこれらのコポリマーからなる群から選択される、少なくとも1つの脂肪族ポリエステルである、請求項1又は2に記載のウェブ。
【請求項7】
前記脂肪族ポリエステルが半結晶質である、請求項6に記載のウェブ。
【請求項8】
可塑剤、希釈剤、界面活性剤、粘度調整剤、抗菌成分、又はこれらの組み合わせのうち少なくとも1つを更に含む、請求項1又は2に記載のウェブ。
【請求項9】
前記可塑剤が、ポリ(エチレングリコール)、ジオクチルスルホスクシネート、オリゴマーポリエステル、脂肪酸モノエステル及びジエステル、クエン酸エステル、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項8に記載のウェブ。
【請求項10】
前記希釈剤が、脂肪酸モノエステル(FAME)、ポリ(乳酸)(PLA)オリゴマー、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項8に記載のウェブ。
【請求項11】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双極性界面活性剤、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項8に記載のウェブ。
【請求項12】
前記界面活性剤が、フッ素系有機界面活性剤、シリコーン機能性界面活性剤、有機ワックス、又はジオクチルスルホスクシネートの塩から選択される、請求項11に記載のウェブ。
【請求項13】
前記粘度調整剤が、下記の構造:
R−CO
を有し、式中、Rが分枝鎖若しくは直鎖の炭素鎖であるC8〜C30のアルキル若しくはアルキレン、又はC12〜C30のアラルキルであり、エチレンオキシド、プロピレンオキシド基、オリゴマー乳酸及び/又はグリコール酸、又はこれらの組み合わせなどの0〜100個のアルキレンオキシド基で置換されているか又は置換されておらず、
MがH、アルカリ金属、アルカリ度類金属、又はアンモニウム基である、請求項8に記載のウェブ。
【請求項14】
前記アンモニウム基が、プロトン化第三級又は第四級アミンである、請求項13に記載のウェブ。
【請求項15】
前記アンモニウム基が、プロトン化トリエタノールアミン又はテトラメチルアンモニウムである、請求項13に記載のウェブ。
【請求項16】
前記Mがアルカリ金属又はアルカリ土類金属である、請求項13に記載のウェブ。
【請求項17】
前記Mがカルシウム、ナトリウム、カリウム、又はマグネシウムからなる群から選択される、請求項13に記載のウェブ。
【請求項18】
前記粘度調整剤が、アルキルカルボキシレート、アルケニルカルボキシレート、アラルキルカルボキシレート、アルキルエトキシ化カルボキシレート、アラルキルエトキシ化カルボキシレート、アルキルラクチレート、アルケニルラクチレート、ステアロイルラクチレート、ステアレート、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載のウェブ。
【請求項19】
前記粘度調整剤が、前記ウェブの重量に対して約10%以下の量で存在する、請求項8に記載のウェブ。
【請求項20】
前記抗菌成分が、脂肪酸モノエステル、脂肪酸ジエステル、有機酸、銀化合物、第四級アンモニウム化合物、カチオン性(コ)ポリマー、ヨウ素化合物、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項8に記載のウェブ。
【請求項21】
前記熱可塑性ポリエステルとは異なる熱可塑性(コ)ポリマーを更に含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項22】
前記ポリプロピレンが、前記ウェブの重量に対して約1%〜約6%の量で存在する、請求項1〜21のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項23】
前記ポリプロピレンが、前記ウェブの重量に対して3%〜5%以下の量で存在する、請求項22に記載のウェブ。
【請求項24】
前記繊維が、約1マイクロメートル(μm)以下のメジアン繊維径を呈する、請求項1〜23のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項25】
前記繊維が、約25μm以下のメジアン繊維径を呈する、請求項1〜23のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項26】
前記繊維が、少なくとも1μmのメジアン繊維径を呈する、請求項25に記載のウェブ。
【請求項27】
前記ウェブが生体適合性である、請求項1〜26のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項28】
前記ウェブが、前記熱可塑性ポリエステル及び前記ポリプロピレンの溶融混合物から形成される不織布ウェブである、請求項1〜27のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項29】
前記不織布繊維ウェブが、スパンボンドウェブ、吹込マイクロファイバーウェブ、水流交絡ウェブ、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項28に記載のウェブ。
【請求項30】
気体濾過物品、液体濾過物品、音吸収物品、断熱物品、表面洗浄物品、細胞成長支持物品、薬物送達物品、個人用衛生物品、歯科衛生物品、及び創傷包帯物品からなる群から選択される、請求項1〜29のいずれか一項に記載のウェブを含む物品。
【請求項31】
請求項1〜29のいずれか一項に記載のウェブを含む外科用ドレープ。
【請求項32】
請求項1〜29のいずれか一項に記載のウェブを含む外科用ガウン。
【請求項33】
請求項1〜29のいずれか一項に記載のウェブを含む、殺菌ラップ。
【請求項34】
1つ以上の抗菌剤を更に含む、請求項33に記載の殺菌ラップ。
【請求項35】
前記ウェブ上又はウェブ内に撥水性添加剤を更に含む、請求項33に記載の殺菌ラップ。
【請求項36】
請求項1〜35のいずれか一項に記載のウェブを含む、創傷接触材料。
【請求項37】
脂肪族ポリエステル及び芳香族ポリエステルから選択される1つ以上の熱可塑性ポリエステルと、混合物重量に対して0%を超えて10%以下の量のポリエチレンとの混合物を形成する工程と、
該混合物から複数の繊維を形成する工程と、
該繊維の少なくとも一部分を回収してウェブを形成する工程とを含む方法であって、該繊維は分子配向を呈し、該ウェブ全体で実質的にエンドレスに延在し、更に該ウェブが、該繊維のガラス転移温度を超える温度まで加熱されたときに、該ウェブの平面内で少なくとも1つの寸法の減少が10%以下である、請求項1〜35のいずれか一項に記載のウェブの製造方法。
【請求項38】
前記繊維が、溶融紡糸、フィラメント押出成形、電界紡糸、ガスジェット繊維形成、又はこれらの組み合わせを用いて形成される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
脂肪族ポリエステルから選択される1つ以上の熱可塑性ポリエステルと、混合物重量に対して0%超10%以下の量のポリエチレンとの混合物を形成する工程と、
該混合物から複数の繊維を形成する工程と、
該繊維の少なくとも一部分を回収してウェブを形成する工程とを含む方法であって、該繊維は分子配向を呈さず、更に該ウェブが、該繊維のガラス転移温度を超える温度まで加熱されたときに、該ウェブの平面内で少なくとも1つの寸法の減少が10%以下である、請求項1〜35のいずれか一項に記載のウェブの製造方法。
【請求項40】
前記繊維がメルトブロー法を用いて形成される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ウェブをポストヒーリング(post healing)する工程を更に含む、請求項37〜40のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−522147(P2012−522147A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503500(P2012−503500)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/028263
【国際公開番号】WO2010/117612
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】