説明

対地作業機

【課題】 整地ロータを備える水田作業機は、機体の前後長が長くなり、機体の前後重量バランスの悪化を招き、対地作業部による作業性を悪化させるおそれがある。また、整地ロータの後方位置に硬軟検出具を配置すると整地ロータからの泥流や水流が硬軟検出具に作用して硬軟検出が不安定になるおそれがある。
【解決手段】 対地作業部に機体正面視で左右後輪11間に位置するセンターフロート55の前方には左右後輪11間に中央整地ロータ27bを設け、左右後輪11の後方若しくは外側方に位置するサイドフロート56の前方には機体側面視で左右後輪11の後方に左右整地ロータ27aを設けると共に、中央整地ロータ27bの駆動軸70bと同じ軸心回りに上下に回動して先端部が土壌に突入することにより土壌の硬軟度を検出する硬軟検出具116を設け、該硬軟検出具116を中央整地ロータ27bと後輪11との間で且つ左右整地ロータ27aより前側に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌の硬軟度を検出する硬軟検出具を備えた水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
水田作業機の一例である田植機において、左右後輪を装備した走行車体の後側に昇降リンク装置を介して対地作業部となる苗植付部を装着し、該苗植付部にセンターフロート及びサイドフロートを設け、該センターフロート及びサイドフロートの前方で且つ左右後輪の後方には、左右に長い整地ロータを設けたものが知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
また、水田作業機の一例である直播機において、左右後輪を装備した走行車体の後側に昇降リンク装置を介して対地作業部となる播種部を装着し、該播種部に機体正面視で左右後輪間に位置するセンターフロートと左右後輪の後方若しくは外側方に位置するサイドフロートとを設け、上下に回動して先端部が土壌に突入することにより土壌の硬軟度を検出する硬軟検出具を設け、該硬軟検出具を左右の後輪の間に配置したものが知られている(特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2003−102219号公報
【特許文献2】特開2006−314293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された水田作業機は、走行車体の左右後輪と対地作業部のフロートとの前後間に左右に長い整地ロータを配置しているので、左右後輪とフロートとを機体側面視で重複させることができず、その分機体の前後長が長くなり、機体の前後重量バランスの悪化を招き、対地作業部による作業性を悪化させるおそれがある。
【0005】
そこで、整地ロータを中央整地ロータと左右整地ロータとに分割し、機体側面視で中央整地ロータ乃至センターフロートを左右後輪と重複させる構成とすることが考えられるが、このとき上下に回動して先端部が土壌に突入することにより土壌の硬軟度を検出する硬軟検出具を配置する場合、整地ロータの後方位置に硬軟検出具を配置すると整地ロータからの泥流や水流が硬軟検出具に作用して硬軟検出が不安定になるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、左右後輪(11)を装備した走行車体(2)の後側に昇降リンク装置(3)を介して対地作業部(4)を装着した水田作業機において、該対地作業部(4)に機体正面視で左右後輪(11)間に位置するセンターフロート(55)の前方には左右後輪(11)間に中央整地ロータ(27b)を設け、左右後輪(11)の後方若しくは外側方に位置するサイドフロート(56)の前方には機体側面視で左右後輪(11)の後方に左右整地ロータ(27a)を設けると共に、中央整地ロータ(27b)の駆動軸(70b)と同じ軸心回りに上下に回動して先端部が土壌に突入することにより土壌の硬軟度を検出する硬軟検出具(116)を設け、該硬軟検出具(116)を中央整地ロータ(27b)と後輪(11)との間で且つ左右整地ロータ(27a)より前側に配置した水田作業機とした。
【0007】
従って、請求項1に記載の水田作業機は、走行車体(2)を走行させながら、中央整地ロータ(27b)及び左右整地ロータ(27a)が土壌面を整地し、その整地した土壌に対地作業部(4)が対地作業を行う。左右後輪(11)間に中央整地ロータ(27b)を設け機体側面視で左右後輪(11)の後方に左右整地ロータ(27a)を設けて、中央整地ロータ(27b)と左右整地ロータ(27a)との前後位置を異ならせたので、整地ロータ(27a,27b)をコンパクトに配置でき、対地作業部(4)を走行車体(2)側へ近づけて配置することができる。また、硬軟検出具(116)を中央整地ロータ(27b)と後輪(11)との間で且つ左右整地ロータ(27a)より前側に配置したので、後輪(11)、中央整地ロータ(27b)及び左右整地ロータ(27a)からの泥流や水流が硬軟検出具(116)に作用しにくい。更に、硬軟検出具(116)を中央整地ロータ(27b)の駆動軸(70b)と同じ軸心回りに上下に回動する構成としたので、硬軟検出具(116)の支持構造を簡単にできる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の苗移植機によると、整地ロータ(27a,27b)をコンパクトに配置でき、対地作業部(4)を走行車体(2)側へ近づけて配置することができ、機体の前後長の短縮化が図れ、機体の前後重量バランスを良好にして、対地作業部(4)による作業性の向上が図れる。また、後輪(11)、中央整地ロータ(27b)及び左右整地ロータ(27a)からの泥流や水流が硬軟検出具(116)に作用しにくいため、硬軟検出が安定して検出精度が向上する。更に、硬軟検出具(116)の支持構造を簡単にでき、軽量化及びコストダウンが図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。
水田作業機の一例として、対地作業部として播種部を装着した直播機1について説明する。この直播機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して播種部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。尚、播種部4は、昇降リンク装置3に着脱ヒッチで着脱可能に設けられている。従って、対地作業部として前記播種部4に代えて苗植付部を装着することもでき、この苗植付部を装着すれば苗移植機(田植機)となる。
【0010】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。尚、11a,11aは、左右後輪11,11の機体内側に装着された補助車輪である。
【0011】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及びHST23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転勤カは、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。尚、苗植付部を装着したときは、植付クラッチケース25からの動力が植付伝動軸を介して苗植付部に伝動される。植付クラッチケース25内にはギヤ変速の株間変速部を設けており、苗植付部のみ株間変速部を経由して伝動され、該株間変速部により走行速度に対する苗植付部の作動速度を変更して苗の植付株間を変更する構成となっている。座席31の右側には前記株間変速部を変速操作するための株間変速レバー90を設けている。
【0012】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており、座席31に着座して機体を操縦する操縦者が前輪10及び後輪11を見通せることができて操縦が容易な構成となっていると共に、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0013】
また、走行車体2の前部左右両側には、対地作業部として苗植付部を装着した場合の補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。
【0014】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、先端側には縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアームの先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、播種部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0015】
播種部4は、6条分の播種を同時に行う構成で、種子ホッパ91、繰出装置92、播種管93、起風翼車94を備え、種子ホッパ91内の種子を繰出装置92が所定量ずつ繰り出し、繰り出された種子を起風翼車94からの圧力風で加勢して播種管93で圃場の播種位置に供給して播種する構成となっている。尚、前記播種位置の前方には、播種用の溝を作る作溝器95をフロート55,56に取り付けて設けている。また、前記播種位置の後方には、播種された種子に覆土する覆土板96をフロート55,56に取り付けて設けている。この覆土板96は、機体平面視での前後の傾斜角度を変更できる構成となっており、この角度変更で覆土の度合を調節できる。前記繰出装置92は、外周に多数の繰出溝を形成した繰出ロ−ルを備え、該繰出ロ−ルの回転により種子を繰り出す構成となっている。
【0016】
尚、繰出装置92及び起風翼車94は、各々の電動モータを駆動源としている。この電動モータは、植付クラッチケース25内の株間変速部を介して伝動される伝動軸の回転数(回転速度)を検出する回転センサに基づいて、該回転センサの検出回転数に比例する回転数で作動する構成となっている。従って、走行速度に比例して繰出装置92及び起風翼車94を駆動でき、走行速度に拘らず所望の播種密度で播種できる。尚、回転センサは株間変速部の伝動下手の伝動軸の回転数を検出する構成であるので、株間変速レバー90を操作して前記伝動軸の回転速度を変えれば、繰出装置92及び起風翼車94の駆動回転数を変更することができ、播種密度の変更操作具を苗移植部を装着したときの株間変速レバー90で兼用でき、オペレータが違和感なく容易に繰出装置92の繰出量を変更できる。尚、回転センサは、植付クラッチケース25に支持されるので、検出対象の伝動軸との位置関係を適正に保持することができ、検出精度が向上する。
【0017】
播種部4の下部には、中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられている。これらフロート55,56,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走する。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するようにフロート支点軸97回りに回動自在に取り付けられており、播種作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が該フロート55と一体の取付部材98から検出アーム99及び検出リンク100を介して迎角制御センサ101により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて播種部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。尚、フロート55,56,56のフロート支点軸97は、共通の播種深さ調節軸102から後側に延びる各々のフロート支持アーム103に支持されている。播種深さ調節軸102を回動させることにより、フロート55,56,56の機体に対する上下位置を変更して、播種深さを変更する構成となっている。
【0018】
前記検出アーム99は、取付部材98に支点軸104回りに上下回動自在に連結されているが、後端部の複数の調節用孔105の一つに取付部材98に設けた固定ピン106が入って回動しないように取付部材98に固定されている。前記固定ピン106と一体の調節ノブ107により、作業者が固定ピン106を入れる調節用孔105を変更して、取付部材98に対する検出アーム99の固定位置を変えることができる。従って、検出アーム99、固定ピン106及び調節ノブ107により、センターフロート55の前後傾斜角に対する迎角制御センサ101の検出値を変更調節する調節装置108が構成されている。この調節装置の操作具となる調節ノブ107は、支点軸104より後側で且つ検出アーム99及び取付部材98の後端の位置更には播種深さ調節軸102より後側に設けられているので、播種部4の着脱ヒッチや整地ロータ27が邪魔にならず、作業者は播種部4の後側から手を入れて容易に操作できる。逆に、播種部4を着脱するとき、着脱ヒッチの操作において前記調節装置が邪魔にならずに容易に行える。従来は、調節ノブが播種深さ調節軸及び検出リンクより前側に配置されていたので、作業者は播種部の前側から調節ノブを操作しなければならず、播種部の着脱ヒッチや整地ロータが邪魔になって操作が困難であった。また、播種部の着脱作業で調節装置を変形させるおそれがあった。
【0019】
施肥装置5は、播種部4の播種条に対応して6条分の施肥を同時に行う構成であり、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド62a…まで導き、施肥ガイド62a…の前側に設けた作溝体62b…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。電動モータで駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62…に吹き込まれ、施肥ホース62…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0020】
播種部4の前側には、圃場の乱れた泥土面を整地して均す整地ロータ27(左右サイドフロート56,56の各々の前方に配置された左右整地ロータ27a,27a,センターフロート55の前方に配置された中央整地ロータ27b)が取り付けられている。昇降リンク装置3の縦リンク43と一体で左右に延びる第一支持フレーム65に基部を固着した左右アーム65c,65cの先端に回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した左右支持アーム67,67と該支持アーム67,67に各々回動自在に取り付けられた左右整地ロータ支持フレーム68,68が設けられている。該左右ロータ支持フレーム68,68の下端には左右整地ロータ27a,27aの駆動軸70a,70aが回転自在に支持されて取り付けられている。また、第一支持フレーム65の左右両端部から下側に延びる左右各々の縦フレーム109と、該左右の縦フレーム109を繋ぐ左右方向の横フレーム110とを備え、これらの第一支持フレーム65、左右の縦フレーム109及び横フレーム110は一体で支持枠を構成している。この支持枠は、機体正面視で左右の後輪11の間に配置されている。従って、支持枠が後輪11と干渉しないようになり、いいかえれば機体側面視で縦フレーム109等の支持枠を後輪11側(前側)に近づけることができて機体の前後長を短くでき、機体の前後重量バランスが良くなって作業性が向上する。
【0021】
前記横フレーム110の左右両端には斜め後下側に延びる左右支持体111を設け、該左右支持体111の先端部に設けた回動支点軸112に左右連結部材71を上下回動自在に連結している。この左右連結部材71の他端側(前端側)に、左右整地ロータ支持フレーム68,68の下端部近くが連結されている。前記左右支持体111を斜め後下側に延びる構成とし、横フレーム110の斜め後下側位置に回動支点軸112を配置することにより、苗植付部を装着するときに邪魔にならないように横フレーム110を走行車体側(前側)の位置に配置しながら、回動支点軸112は後寄りの位置に配置して左右連結部材71の長さ(前後長)を得ることができ、整地ロータ27の上下移動の所望のストロークを得ることができる。また、左右連結部材71の長さ(前後長)が長ければ、左右連結部材71を上下に回動させることによる整地ロータ27の前後方向への移動量を抑えることができ、ひいては整地ロータの移動スペースを小さくできるので、機体の前後長を短くできる。
【0022】
従って、左右後輪11,11により掻き乱された泥面は左右整地ロータ27a,27aにより良好に整地され、適切な苗の移植作業が行える。
前記第一支持フレーム65の適宜位置(左右2箇所)には、後方に開放するコの字型のプレートで構成した屈曲部113を設け、この屈曲部113の位置で該第一支持フレーム65を前側へ偏位させている。これにより、苗植付部を装着したときに苗載台を支持する左右各々の上下方向のフレームが屈曲部113内に入って第一支持フレーム65に干渉しないようにしている。従って、苗植付部を走行車体側に近づけることができて機体の前後長を短くでき、機体の前後重量バランスを向上させ、作業性を向上させることができる。
【0023】
また、フロート55,56との配置位置の関係でセンターフロート55の前方にある中央整地ロータ27bはサイドフロート56の前方にある左右整地ロータ27aより前方に配置されている。即ち、左右整地ロータ27a,27aの駆動軸70a,70aの各々の内側から機体前方に向けて左右チェーンケース73,73を配置し、該左右チェーンケース73,73間に中央整地ロータ27bの駆動軸70bを軸支して、中央整地ロータ27bを設けている。
【0024】
そして、後輪11のギアケース18内のギアから自在継手72を介して左整地ロータ27aの駆動軸70aに動力を伝達し、該左駆動軸70aから左チェーンケース73内のチェーンにて中央整地ロータ27bの駆動軸70bに伝達し、そして、駆動軸70bから右チェーンケース73内のチェーンにて右整地ロータ27aの駆動軸70aに動力を伝達する構成となっている。
【0025】
また、上記梁部材66に基部が固着されたリンク部材76の先端に上下方向の支持部材77を回動自在に連結し、該支持部材77に設けた複数の係合孔77a,77b,77cに上部を係合させたスプリング78を介して、中央整地ロータ27bの前部はその左右方向中央部が吊り下げられた構成となっている。
【0026】
次に、整地ロータ27を上下位置調節及び収納位置に操作する構成を説明する。
第一支持フレーム65に機体前方に向けて枢支ピン81bを固定し、該枢支ピン81bに整地ロータ上下位置調節レバー81を機体左右方向に回動自在に枢支している。また、整地ロータ上下位置調節レバー81の下端部には折曲片82が固着されており、整地ロータ上下位置調節レバー81が機体左右方向に回動操作されると、回動自在に支持された梁部材66に固着された突出部66aに下方から接当して折曲片82が上下に回動する。折曲片82は前記突出部66aの下方と接当しているので、該突出部66aが整地ロータ上下位置調節レバー81の機体右方向(矢印S方向)の回動で、上向きに梁部材66を中心として回動する。該梁部材66の上向きの回動により左右支持アーム67,67と左右整地ロータ支持フレーム68,68とが上方に移動するので、左右整地ロータ27a,27aは上方に移動し、且つ、梁部材66に基部が固着されたリンク部材76と支持部材77も上方に移動しスプリング78を介して、中央整地ロータ27bの前部も上方に移動する。
【0027】
逆に、整地ロータ上下位置調節レバー81を機体左方向に回動すると、折曲片82は前記突出部66aの下方から離れるので整地ロータ27の重みで突出部66aは下向きに梁部材66を中心として回動する。該梁部材66の下向きの回動により左右支持アーム67,67と左右整地ロータ支持フレーム68,68とが下方に移動するので、左右整地ロータ27a,27aは下方に移動し、且つ、梁部材66に基部が固着されたリンク部材76と支持部材77も下方に移動しスプリング78を介して、中央整地ロータ27bの前部も下方に移動する。
【0028】
そして、整地ロータ上下位置調節レバー81は、苗植付部4の中央部(若しくは、略中央部)で操縦座席31と苗載台51との間に配置されて操縦座席31の側に向かって伸びた構成となっており、また、その操作方向は機体左右方向であるから、整地ロータ27の上下動を行う場合の操作が容易で、且つ、苗植付部を装着した場合に苗載台の前方側に機体前後方向で幅狭いスペースに配置できて機体全長を短く構成でき、更に、機体の左右バランスも良くて、適正な作業が行なえる。また、整地ロータ上下位置調節レバー81は、播種部4を苗移植作業状態の下降させた状態でも操作できるので、適切な上下高さ調節が行える。
【0029】
また、整地ロータ27を整地作用しない収納位置まで上動させるには、整地ロータ上下位置調節レバー81を大きく右方向に(収納操作位置まで)操作すると、整地ロータ27の上動操作と同じ要領で、整地ロータ27を収納位置すなわち播種部4を下降させても接地しない位置に移動させることができる。
【0030】
本実施例では整地ロータ上下位置調節レバー81の標準位置で圃場面より40mmの高さにある整地ロータ27a,27bを図4の矢印S方向への回動で標準位置より最大15mm高くでき、図4の矢印S方向の反対方向への回動で標準位置より最大15mm低くできるように設定している。この整地ロータ上下位置調節レバー81による整地ロータ27の上下高さ調節は、フロート55,56の後部回動支点を上下動させて播種深さの変更を行なう際に、同時に行なって、適正な整地作用が行なえるようにするものである。
【0031】
特に、播種作業時に播種深さを常に一定に維持するために、播種部4を昇降制御する為のセンサとして機能するセンターフロート55は、前後長を長くして接地面積を前後方向で長くしないと適切な苗植付部4の昇降制御が行えない。そこで、センターフロート55の前方にある中央整地ロータ27bは、サイドフロート56の前方にある左右整地ロータ27aよりも機体前方に位置させた構成としているが、中央整地ロータ27bと左右整地ロータ27aとはその動力伝達機構である左右チェーンケース73,73にて一体の構成とし、整地ロータ上下位置調節レバー81で作動する一つの上下動機構で上下調節及び収納位置への移動が行なえるようになっているので、構成が簡潔で、軽量な直播機を得ることができ、軽量であることにより優れた水田での走行性能を発揮して、良好な播種作業が行なえる。
【0032】
ところが、前後長を長くして接地面積を前後方向で長くしたセンターフロート55の前方にある中央整地ロータ27bを左右後輪11,11間に配置させて機体全長を短い構成にしている為に、該中央整地ロータ27bが昇降リンク装置3の左右下リンク41,41の下方に位置することとなり、播種部4を上昇させようとした時、左右下リンク41,41に中央整地ロータ27bが衝突してしまって播種部4を上昇できない構成となってしまう問題がある。
【0033】
そこで、センターフロート55の前方にある中央整地ロータ27bは、支持部材77に設けた複数の係合孔77a,77b,77cに上部を係合させたスプリング78を介して、中央整地ロータ27bの前部が吊り下げられた構成としている。従って、播種部4を下降させて整地ロータ27で整地しながら作業を行なっている時には、中央整地ロータ27bはその重量でスプリング78が少し伸びて左右整地ロータ27aと同じ高さになり適正な整地作業が行なえ、また、播種部4を上昇させる際には、中央整地ロータ27bの上面が左右下リンク41,41に接当して、播種部4が上昇するにつれてスプリング78は大きく伸びていき中央整地ロータ27bは下方を向く姿勢に変更されて、播種部4を支障なく上昇させることができる。
【0034】
また、中央整地ロータ27bは、支持部材77に設けた複数の係合孔77a,77b,77cに上部を係合させたスプリング78を介して、中央整地ロータ27bの前部が吊り下げられた構成としているので、スプリング78の製造誤差や中央整地ロータ27bの重量誤差等にて、播種部4を下降させた時に、中央整地ロータ27bが左右整地ロータ27aと高さが異なる場合には、スプリング78の上部を係合させる係合孔77a,77b,77cを変更して、中央整地ロータ27bの上下高さを調節して、中央整地ロータ27bを左右整地ロータ27aと同じ高さにして適正な整地作業を行なうようにすることができる。
【0035】
更に、支持部材77と中央整地ロータ27bとの間にダンパーを介在させて、中央整地ロータ27bがスプリング78にて上下に震動するのを防止する構成とすれば、更に、整地性能が良くなる。また、スプリング78の上部を係合する孔を変更する構成に変えて、調節レバーを設けて、スプリング78と支持部材77との係合位置を調節する構成としても良い。
【0036】

ところで、右側のチェーンケース73の右方には、土壌の硬軟度を検出する硬軟検出装置 を設けている。この硬軟検出装置114は、圃場に接地して土壌面の高さを検出する土壌面検出具115と、土壌に突入する硬軟検出具116とを設けている。土壌面検出具115及び硬軟検出具116は、各々上下回動自在の後下がりのアーム部115a,116aと該アーム部115a,116aの後端に取り付けた回転自在のローラ部115b,116bとを備え、前記ローラ部115b,116bが接地又は土壌に突入する構成となっている。尚、硬軟検出具116のローラ部116bは、土壌内に突入し易いように中央が尖っている。この土壌面検出具115のアーム部115aと硬軟検出具116のアーム部116aとの角度の相対関係をポテンショメータで検出し、土壌の硬軟を検出する構成となっている。土壌面検出具115及び硬軟検出具116のアーム部115a,116aは、右側のチェーンケース73の右方にまで延びる中央整地ロータ27bの駆動軸70bを回動支点軸としている。また、硬軟検出具は、中央整地ロータ27bと左右一方側(右側)の後輪11との間で且つ左右一方側(右側)の整地ロータ27aより前側に配置されている。尚、前記ポテンショメータ等の硬軟検出装置の基部は、右側のチェーンケース73の側面に取付ステーを介して支持されている。従って、接地する整地ロータ並びにその関連部品から硬軟検出装置114を取り付けて支持しているので、硬軟検出装置114を土壌面の近くに配置でき、硬軟の検出精度が向上する。この硬軟検出装置114による硬軟の検出に基づいて自動的に覆土板96の傾斜角度を変更し、覆土の度合を制御する構成となっている。尚、硬軟検出具116のアーム部116aのアーム長は、土壌面検出具115のアーム部115aのアーム長より長く構成されており、硬軟の検出を安定して精度良く行えるようにしている。
【0037】
この直播機1を、整地作業が終わって湛水状態にした圃場に入れて肥料ホッパ60に肥料を充填し、種子ホッパ91には種子を充填して前進させて播種作業を開始すると、圃場に施肥しながら播種作業が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】直播機の側面図
【図2】整地ロータとその周辺の構成を示す平面図
【図3】整地ロータとその周辺の構成を示す正面図
【図4】センターフロートとその周辺の構成を示す側面図
【符号の説明】
【0039】
1:直播機、2:走行車体、3:昇降リンク装置、4:播種部、11:後輪、27a:左右整地ロータ、27b:中央整地ロータ、55:センターフロート、56:サイドフロート、70b:中央整地ロータの駆動軸、116:硬軟検出具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右後輪(11)を装備した走行車体(2)の後側に昇降リンク装置(3)を介して対地作業部(4)を装着した水田作業機において、該対地作業部(4)に機体正面視で左右後輪(11)間に位置するセンターフロート(55)の前方には左右後輪(11)間に中央整地ロータ(27b)を設け、左右後輪(11)の後方若しくは外側方に位置するサイドフロート(56)の前方には機体側面視で左右後輪(11)の後方に左右整地ロータ(27a)を設けると共に、中央整地ロータ(27b)の駆動軸(70b)と同じ軸心回りに上下に回動して先端部が土壌に突入することにより土壌の硬軟度を検出する硬軟検出具(116)を設け、該硬軟検出具(116)を中央整地ロータ(27b)と後輪(11)との間で且つ左右整地ロータ(27a)より前側に配置した水田作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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