説明

対物レンズおよびそれを用いた光ピックアップ装置

【課題】波長が長いレーザー光のワーキングディスタンスを長く確保するとともに、所定以上の厚みを備えた対物レンズおよびそれを備えた光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】本発明の対物レンズ10は、中心部からBD規格、DVD規格およびCD規格のレーザー光を集光する第1領域F1、DVD規格およびCD規格のレーザー光を集光する第2領域F2およびBD規格およびDVD規格のレーザー光を集光する第3領域F3を設けている。そして、第2領域F2を通過したBD規格のレーザー光をスポット形成に寄与させない事により、BD規格で光学的超解像を実現している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長が異なる複数のレーザー光を対応する光ディスクに集光する対物レンズおよびそれを備えた光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報記録媒体として使用される光ディスクは複数の規格が存在しており、規格ごとに使用されるレーザー光、記録密度、情報記録層を被覆する被覆層の厚さが異なる。具体的には、CD(Compact Disc)規格、DVD(Digital Versatile Disc)規格、BD(Blu−ray Disc)規格の光ディスクが現状で使用されている。
【0003】
部品点数を削減するためには、1つの対物レンズでこれら3つの規格の光ディスクに対処することが好ましい。しかしながら、これら3つの規格で互換性を備える対物レンズを開発することは容易ではなかった。
【0004】
この理由は、各規格でレーザー光の波長等の条件が異なるからである。一例を挙げると、BD規格の場合、レーザー光の波長は405nmであり、光ディスクの情報記録層を被覆する被覆層の厚みは0.1mmであり、使用される対物レンズの開口数は0.85である。DVD規格では、レーザー光の波長は650nmであり、光ディスクの被覆層の厚みは0.6mmであり、対物レンズの開口数は0.60である。CD規格では、レーザー光の波長は780nmであり、光ディスクの被覆層の厚みは1.2mmであり、対物レンズの開口数は0.45である。
【0005】
対物レンズの開口数を大きくすること無く集光スポットを微小にする技術として、光学的超解像が存在する。光学的超解像を用いた対物レンズを備えた光ピックアップ装置は、例えば、以下の特許文献1および特許文献2に記載されている。
【0006】
特許文献1では、光学的超解像を実現するために、レーザー光を部分的に遮光する発明が開示されている。具体的には、この文献の図1、2を参照して、レーザー光の光路の途中に減衰体3を介装し、この減衰体3によりレーザー光を部分的に遮光している。これにより、対物レンズ6の中心部付近のレーザー光が遮光され、光学的超解像が実現される。
【0007】
特許文献2には、対物レンズ自体で光学的超解像を実現する構造が記載されている。具体的には、この文献の図2を参照すると、対物レンズ8に、中心付近の第1領域8−1と、外側の第2領域8−2を設け、第1領域8−1に入射した光ビームを散乱させている。これにより、第1領域8−1に入射した光がスポット形成に寄与せず、光学的超解像を発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−69237号公報
【特許文献2】特開2003−45064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した特許文献1に記載された発明では、光学的超解像を実現させるために、対物レンズとは別途の部品が必要とされる。従って、光ピックアップ装置の構成が複雑になると共に、コストアップを招く恐れがある。
【0010】
また、特許文献2では、対物レンズのみで光学的超解像が実現されるので、部品点数の増加は回避されるものの、波長が異なる複数のレーザー光で光学的超解像を実現する構造が開示されていない。従って、この文献に記載された発明を、BD規格、DVD規格およびCD規格のレーザー光を集光させる対物レンズに用いることは困難である。
【0011】
更に、BD規格、DVD規格およびCD規格のレーザー光を集光させる3波長対応の対物レンズの場合、次の理由によりCD規格のワーキングディスタンスを長く確保する必要がある。具体的には、CD規格の光ディスクの内周部には、情報記録層から200μm程度厚み方向に突出するスタックリブが設けられている。このスタックリブは、複数の光ディスクを積み重ねた際に、光ディスクの信号記録面が他の光ディスクに接触しないようにするためのものである。一方、対物レンズが備えられる光ピックアップ装置には、対物レンズの衝突を防止するための衝突防止部が設けられている。この衝突防止部は、光ディスク側に、対物レンズのレンズ面よりも100μm程度突出している。従って、上記したワーキングディスタンスを十分に確保しなければ、使用状況下に於いて、光ピックアップ装置の衝突防止部が、光ディスクのスタックリブと衝突してしまう恐れがある。
【0012】
しかしながら、ワーキングディスタンスを長くするためには、対物レンズの中心部分を薄く形成する必要がある。更に、BD規格のレーザー光を集光するために開口数(NA)を0.85程度に大きくすると、対物レンズの周辺端部の厚みが極端に短くなる。このようになると、樹脂を射出成形することで対物レンズを成形する際に、射出成形用の金型のキャビティのゲート(注入口)が小さくなり、良好に射出成形を行うことが困難になる。
【0013】
本発明は上記した問題を鑑みてなされたものである。本発明の目的は、波長が長いレーザー光のワーキングディスタンスを長く確保するとともに、端部が所定以上の厚みを備えた対物レンズおよびそれを備えた光ピックアップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、第1波長を有する第1レーザー光を第1光ディスクの情報記録層に集光させ、前記第1波長よりも長い第2波長を有する第2レーザー光を、第2光ディスクの情報記録層に集光させ、前記両レーザー光よりも長い第3波長を有する第3レーザー光を、第3光ディスクの情報記録層に集光させる、対物レンズであり、前記第1レーザー光、前記第2レーザー光および前記第3レーザー光の何れか複数を、対応する前記光ディスクの前記情報記録層に集光させる共用領域を複数有し、前記共用領域同士の間に、前記第1レーザー光、前記第2レーザー光および前記第3レーザー光の何れかを、対応する前記光ディスクの前記情報記録層でスポット形成に寄与させない第1無効領域を配置することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の光ピックアップ装置は、このような構成の対物レンズを備えたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の対物レンズでは、中心部から、第1レーザー光、第1レーザー光および第3レーザー光を集光する第1共用領域、第2レーザー光および第3レーザー光を集光する第2共用領域、および第1レーザー光および第2レーザー光を集光する第3共用領域を設けている。そして、第2共用領域を通過した第1レーザー光をスポット形成に寄与させない事により、最も波長が短い第1レーザー光で、光学的超解像を実現している。このことにより、対物レンズの中心部分の厚みを薄くしても、端部の厚みが所定以降に確保され、射出成形による対物レンズの成形性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の対物レンズを示す図であり、(A)は対物レンズを示す断面図であり、(B)は対物レンズに設けられる各領域を説明するための表である。
【図2】本発明の対物レンズがレーザー光を集光する状態を示す図であり、(A)はBD規格のレーザー光を集光する状態を示し、(B)はDVD規格のレーザー光を集光する状態を示し、(C)はCD規格のレーザー光を集光する状態を示す。
【図3】本発明の対物レンズを用いてBD規格に発生する収差を示すグラフであり、(A)は光路長差から算出される収差を示す図であり、(B)は実質的に発生する収差を示すグラフである。
【図4】本発明の対物レンズを用いてDVD規格に発生する収差を示すグラフであり、(A)は光路長差から算出される収差を示す図であり、(B)は実質的に発生する収差を示すグラフである。
【図5】本発明の対物レンズを用いてCD規格に発生する収差を示すグラフであり、(A)は光路長差から算出される収差を示す図であり、(B)は実質的に発生する収差を示すグラフである。
【図6】(A)〜(D)は、本発明の対物レンズの特性および形状を決定する際に用いられるパラメータを示す表であり、(E)は(A)等に示すパラメータを説明する図である。
【図7】本発明の形状を決定する際に用いられるパラメータを示す表であり、(A)は輪帯が設けられるレンズ面の形状を規定するパラメータを示し、(B)は輪帯が形成されないレンズ面を規定するパラメータを示す。
【図8】本発明の対物レンズに備えられる輪帯段差を示す図である。
【図9】本発明の対物レンズに設けられる輪帯段差の段差量と残留収差との関係を示す表である。
【図10】本発明の対物レンズを備えた光ピックアップ装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照して、本形態に係る対物レンズ10を説明する。図1(A)は対物レンズ10を全体的に示す断面図であり、図1(B)は対物レンズ10に形成される各領域の特性を示す表である。
【0019】
対物レンズ10は、第1レンズ面10Aと第2レンズ面10Bとを備えており、使用状況下に於いては第1レンズ面10A側から第2レンズ面10Bを通過するようにレーザー光は照射される。また、対物レンズ10はプラスチックまたはガラスから成る。
【0020】
本形態では、対物レンズ10は、波長の異なる複数のレーザー光を光ディスクの情報記録層に集光する。具体的には、対物レンズ10は、BD(Blu−ray Disc)規格、DVD(Digital Versatile Disc)規格およびCD(Compact Disc)規格のレーザー光を、各規格に対応する光ディスクの情報記録層に集光する。
【0021】
ここで、BD規格のレーザー光の波長は青紫色(青色)波長帯395nm〜420nm(例えば405nm)であり、DVD規格のレーザー光の波長は赤色波長帯645nm〜675nm(例えば、655nm)であり、CD規格のレーザー光の波長は赤外波長帯765nm〜805nm(例えば785nm)である。
【0022】
また本形態では、対物レンズ10に入射するレーザー光は、無限光または弱有限光である。無限光は、単層の情報記録層を備える各規格の光ディスクに適用される。弱有限光のレーザー光は、多層の情報記録層を備えるBD規格またはDVD規格の光ディスクに使用される。この事項の詳細は後述する。
【0023】
本形態の対物レンズ10では、第1レンズ面10Aが複数の領域に輪帯状に分割され、各領域にて所定のレーザー光を屈折作用により光ディスクの情報記録層に集光している。具体的には、対物レンズ10の第1レンズ面10Aは、中央から外側に向かって第1領域F1〜第6領域F6に輪帯状に分割されている。
【0024】
本形態の対物レンズ10は、中央部付近に設けられた共用領域11Aと、この共用領域11Aを囲むように配置された輪帯状の専用領域11Bとを備えている。共用領域11Aは、BD規格、DVD規格およびCD規格のレーザー光の中の2以上を、対応する光ディスクの情報記録層に集光する。共用領域11Aは下記する第1領域F1、第2領域F2および第3領域F3とを含む。専用領域11Bは、BD規格またはDVD規格を、対応する光ディスクの情報記録層に集光する。専用領域11Bは、下記する第4領域F4、第5領域F5および第6領域F6を含む。
【0025】
第1領域F1は、対物レンズ10の第1レンズ面10Aの中央部付近に配置された円形の領域であり、BD、DVDおよびCDの各規格のレーザー光を、対応する光ディスクの情報記録層に集光する。また、第1領域F1は、対物レンズ10の中心から0.5928mmまでの領域に円形に形成されており、輪帯段差により区分される輪帯が形成される。ここでは、プラスの段差量を有する輪帯段差が形成されている。本形態では、輪帯段差量は対物レンズ10に入射するレーザー光の進行方向をプラスとして表している。従って、プラスの段差量を有する輪帯段差が設けられた場合、その段差の外側で対物レンズ10が薄くなる。
【0026】
第1領域F1には、1つの輪帯が形成されている。即ち、第1領域F1では、円形状の領域とその周囲の輪帯部分が輪帯段差により区分されている。ここで、形成される輪帯の数および輪帯の幅は、DVD規格の光ディスクに設けられる被覆層で発生する球面収差が、対物レンズ10で発生する色収差で補正されるように決定される。
【0027】
第1領域F1に形成される輪帯段差量Dは、以下の式1により算出される。
【0028】
式1・・・・・D=m・λ/(n−1)
ここで、mは定数であり、nは対物レンズの屈折率であり、λはレーザー光の波長である。尚、実際の対物レンズ10の設計に用いられる詳細な値は図6および図7を参照して後述する。
【0029】
本形態では、第1領域F1に形成される輪帯段差の段差量Dの算出に用いられる波長λとして、BD規格のレーザー光の波長(405nm)を採用している。具体的には、上記した式1のmの値として8を採用し、BD規格の波長に於ける対物レンズの屈折率nとして1.558701を採用している。これにより、段差の有無はBDのレーザー光の実質的な波面収差に影響を及ぼさない。
【0030】
一方、DVD規格のレーザー光に対しては、輪帯段差を設けることによる位相ズレは、波長の整数倍ではない。従って、第1領域F1に輪帯段差を設けることにより、DVD規格のレーザー光では色収差が発生し、この色収差により光ディスクの被覆層で発生する球面収差が補正される。これにより本形態では、DVD規格のレーザー光で発生する実質的な収差が低減されている。
【0031】
段差量Dの算出にBD規格の波長を用いる更なる理由は、波長が短いBD規格のレーザー光の波長で輪帯段差量を算出した方が、輪帯最小段差量を小さくすることが可能であり、DVD規格のレーザー光で発生する収差を調整しやすいからである。
【0032】
第2領域F2は、第1領域F1に隣接してその周囲を囲む輪帯状の領域(R=0.5928mm〜0.932mm)であり、DVD規格およびCD規格のレーザー光を対応する規格の光ディスクの情報記録面に集光してスポットを形成する。ここで、第2領域F2でDVD規格およびCD規格のレーザー光が集光するポイントは、第1領域F1でこれらのレーザー光が集光するポイントと同じである。即ち、各領域にてワーキングディスタンスが一致している。この事項は下記する各領域で同様である。尚、この領域に入射したBD規格のレーザー光は、スポットの形成には寄与しない。
【0033】
第2領域F2にも複数の輪帯が設けられており、各輪帯同士の間に設けられる輪帯段差の段差量はDVD規格のレーザー光の波長から算出されている。ここでは、マイナスの段差量を有する輪帯段差が形成され、輪帯段差よりも外側の対物レンズが厚くなる断面形状となる。輪帯段差を設けることにより色収差が発生し、この色収差によりCD規格のレーザー光に発生する球面収差が補正される。また、輪帯段差の有無は、基本的にはDVD規格のレーザー光に発生する収差には影響を及ぼさない。更に本形態では、第2領域F2を通過するBD規格のレーザー光に一定以上の収差を付与することにより、光学的超解像を実現しているが、この事項は図9を参照して後述する。
【0034】
本形態では、第1領域F1と第2領域F2との間に段差が設けられている。これは、BD規格およびDVD規格のレーザー光で収差が最適化される第1領域F1の最外周部の位置と、DVD規格およびCD規格のレーザー光で収差が最適化される第2領域F2の最内周部との位置が合致しないからである。なお、同様の理由により、第2領域F2と第3領域F3との間にも段差が発生する。
【0035】
第3領域F3は、第2領域F2に隣接してその周囲を囲む輪帯状の領域(R=0.932mm〜1.013mm)であり、BD規格およびDVD規格のレーザー光を対応する光ディスクの情報記録層に集光してスポットを形成する。第3領域F3に入射したCD規格のレーザー光はスポット形成には寄与しない。同様に、第3領域F3よりも外側の領域に入射したCD規格のレーザー光も、スポット形成には寄与しない。
【0036】
第3領域F3には3個の輪帯が設けられており、各輪帯同士の間に形成される段差の段差量は、第1領域F1と同様に、BD規格の波長を用いて算出される。従って、この領域に於いても、輪帯段差を設けることにより発生する色収差により、DVD規格のレーザー光に発生する球面収差が補正される。
【0037】
第4領域F4は、第3領域を囲む輪帯状の領域(R=1.013mm〜1.08mm)であり、BD規格のレーザー光のみを対応する規格の光ディスクの情報記録層に集光してスポットを形成する。第4領域F4に照射されたDVD規格およびCD規格のレーザー光は、スポット形成には寄与しない。従って、BD規格以外の規格(DVD規格およびCD規格)のレーザー光で発生する球面収差を考慮する必要が無く、輪帯段差は設けられていない。このことから、第4領域F4は段差の無い連続する面形状を呈している。この事項は、特定の規格のレーザー光のみを集光する以下の第5領域F5および第6領域F6も同様である。
【0038】
この第4領域F4は、他の規格のレーザー光との兼ね合いを考慮する必要が無いので、発生する収差の量を極めて小さくすることができる。このようなBD規格のみの領域を設けることにより、対物レンズ10全体でBD規格のレーザー光に発生する収差が改善される。
【0039】
ここで、当然ではあるが、第4領域F4は、第3領域F3と同様に、BD規格とDVD規格の両方の収差を減らすような輪帯がついていても構わない。しかし、よりよく、BD規格の収差を低減するため、このような第4領域F4領域を設けるとよい。
【0040】
第5領域F5は、第4領域F4を囲む輪帯状の領域(R=1.08mm〜1.200mm)であり、DVD規格のレーザー光のみを集光してスポットを形成する。この領域に集光されたBD規格およびCD規格のレーザー光は、スポット形成には寄与しない。DVD規格のレーザー光のみを集光させる専用領域である第5領域F5を設けることにより、DVD規格のレーザー光で収差が改善される。この理由は、第4領域F4の場合と同様である。
【0041】
ここで、当然ではあるが、第5領域F5は、第3領域F3と同様に、BD規格とDVD規格の両方の収差を減らすような輪帯がついていても構わない。しかし、よりよく、DVD規格の収差を低減するため、このような第5領域F5を設けるとよい。また、第4領域F4、および、第5領域F5の両方が、第3領域F3と同様に、BD規格とDVD規格の両方の収差を減らすような輪帯がついていても構わない。しかし、よりよく、BD規格とDVD規格の収差を低減するため、このような第4領域F4、および、第5領域F5を設けるとよい。
【0042】
第6領域F6は、第5領域F5を囲む輪帯状の領域(R=1.200mm〜1.510mm)であり、第4領域F4と同様にBD規格のレーザー光のみを集光させる領域である。対物レンズ10の最外周部に、BD規格のレーザー光を集光させる専用領域を配置することにより、BD規格のレーザー光で発生する収差が全体として更に小さくなる。
【0043】
図2を参照して、各規格のレーザー光が対物レンズ10で集光される状態を説明する。ここで、図2(A)はBD規格のレーザー光を対物レンズ10で光ディスク12Aに集光する状態を示す断面図であり、図2(B)はDVD規格に関する同様の断面図であり、図2(C)はCD規格に関する同様の断面図である。ここで、図2の各図では、スポットを形成するレーザー光が通過する部分をハッチングにて示している。一方、スポット形成には寄与しない領域にはハッチングを施していない。
【0044】
図2(A)を参照して、上方から照射されたBD規格のレーザー光は、対物レンズ10により、BD規格の光ディスク12Aの情報記録層14Aに集光されてスポットを形成する。ここで、光ディスク12Aの情報記録層14Aを被覆する被覆層の厚さT1は、例えば0.1mmである。
【0045】
この図からも明らかなように、対物レンズ10に照射されるBD規格のレーザー光の全てが光ディスク12Aに集光されるのではなく、対物レンズ10に照射されたレーザー光の一部分はスポット形成に寄与しない。具体的には、対物レンズ10に照射されたレーザー光のうち、領域F1、F3、F4、F6に照射されたレーザー光が、光ディスク12Aの情報記録層14Aに集光する。一方、第2領域F2はDVD規格およびCD規格のレーザー光のみを集光するので、この領域に照射されたBD規格のレーザー光はスポット形成には寄与しない。同様に、第5領域F5はDVD規格のレーザー光のみを集光するので、この領域に照射されたBD規格のレーザー光はスポット形成に寄与しない。このように、対物レンズ10に入射したレーザー光の一部を、スポット形成に寄与させないことにより、光学的超解像を実現し、NAを規定値(BD:0.85、DVD:0.60)より小さくしても規定値のNAの場合と同等のスポット径が得られるようにして対物レンズ10の端部の厚みを一定以上に確保している。
【0046】
尚、対物レンズ10に入射されるBD規格のレーザー光の利用効率は例えば40%程度であり、この効率であれば情報の読み出しは良好に行え、書込みについてもハイパワーのレーザーを用いれば行うことができる。
【0047】
図2(B)を参照して、対物レンズ10に照射されたDVD規格のレーザー光が照射されると、領域F1、F2、F3およびF5に照射されたレーザー光が光ディスク12Bの情報記録層14Bに集光してスポットを形成する。一方、第4領域F4はBD規格のレーザー光のみを集光する領域であるので、この領域に照射されたDVD規格のレーザー光はスポット形成に寄与しない。同様に、BD規格のレーザー光のみを集光する第6領域F6に照射されたDVD規格のレーザー光も、スポット形成に寄与しない。このようにすることで、DVD規格のレーザー光でも光学的超解像が実現され、上記したBD規格の場合と同様の効果が得られる。
【0048】
尚、対物レンズ10に入射されるDVD規格のレーザー光の利用効率は例えば80%程度であり、良好に情報の読出し及び書込を行うことができる。また、DVD規格の光ディスク12Bの情報記録層14Aを被覆する被覆層の厚さT2は、0.6mmである。
【0049】
図2(C)を参照して、対物レンズ10にCD規格のレーザー光が照射されると、第1領域F1および第2領域F2に照射されたレーザー光のみが、光ディスク12Cの情報記録層14Cに集光してスポットを形成する。一方、領域F3、F4、F5およびF6に入射されたCD規格のレーザー光は、スポット形成に寄与しない。
【0050】
対物レンズ10に入射するCD規格のレーザー光の利用効率は例えば90%程度であり、問題なく情報の読出し及び書込を行うことが可能である。また、CD規格の光ディスク12Cの情報記録層14Cを被覆する被覆層の厚さT3は1.2mmである。
【0051】
図3から図5を参照して、上記した構成の対物レンズに発生する収差を説明する。図3はBD規格のレーザー光に発生する収差を示し、図4はDVD規格のレーザー光に発生する収差を示し、図5はCD規格のレーザー光に発生する収差を示している。これらの図のグラフでは、縦軸は収差の量を示し、横軸は瞳半径を示している。また、各々の図で(A)はその波長で発生する光路長差に応じた収差の値を示し、(B)はこの値からレーザー光の整数倍を差し引いて実質的に発生する収差の値を示している。更に、これらの図に示す収差の値は、対物レンズに発生する収差と、光ディスクの情報記録層を被覆する被覆層に発生する収差とを加算した値である。
【0052】
図3(A)を参照して、BD規格のレーザー光では、対物レンズの曲面形状および輪帯段差量に即して収差が変化している。具体的には、第1領域F1では、輪帯段差が設けられた箇所にて、その輪帯段差の段差量に応じて10λ程度の波面収差が発生している。しかしながら、この輪帯段差の段差量は、BD規格のレーザー光の波長を元に算出されているので、この輪帯段差の存在はBD規格の収差に大きな影響は及ぼさない。
【0053】
また、このグラフでは第2領域F2の収差が示されていない。この理由は、第2領域F2はDVD規格およびCD規格のレーザー光のみを集光する領域であり、この領域を通過したBD規格のレーザー光がスポット形成に寄与しないからである。このことにより、BD規格のレーザー光にて光学的超解像が実現され、上記した効果が得られる。
【0054】
第3領域F3では、マイナスの段差量で輪体段差が形成されているので、この段差形状に従ってマイナスの収差が発生する。
【0055】
第4領域F4および第6領域F6は、BD規格のレーザー光のみを集光する領域なので、BD規格の波長にて収差が発生しない設計が可能であり、これらの領域で発生する収差量は極めて小さい。
【0056】
一方、第5領域F5では収差の値は示されてない。これは、この第5領域F5はDVD規格のレーザー光のみを集光する領域であり、この領域に照射されたBD規格のレーザー光はスポット形成に寄与しないからである。
【0057】
図3(B)を参照して、第1領域F1では、中部から離れるに従い徐々に波面収差の値はマイナスの方向に大きくなり、輪帯段差が設けられた箇所でその値がプラスの方向に大きくなる。そして、再び中央部から離れるに従い波面収差の値はマイナス方向に大きくなる。
【0058】
対物レンズ10の中央に位置する第1領域F1の表面形状は、BD規格およびDVD規格のレーザー光で波面収差が小さくなるように設計されている。換言すると、輪帯段差を設けることによって残留する収差を、BD規格のレーザー光およびDVD規格のレーザー光に振り分けている。従って、第1領域F1に於いてBD規格のレーザー光に発生する収差は零ではなく、マイナスの収差が若干発生している。
【0059】
また、第1領域F1の内部で輪体段差が設けられた箇所にてBD規格の収差がプラス方向にシフトされており、この理由は次の通りである。先ず、中央の第1領域F1に設けられる輪帯段差はBD規格のレーザー光の波長で算出されるので、この段差の有無は基本的にはBD波長のレーザー光に発生する収差には影響を与えない。しかしながら、第1領域F1と第2領域F2とのワーキングディスタンスを揃えるために、表面形状を調整している。この結果、第1領域F1の表面形状が調整され、輪帯段差の段差量が変化し、輪帯段差が設けられた箇所にてBD規格のレーザー光で発生する収差がシフトする。
【0060】
第2領域F2はBD規格のレーザー光のスポット形成に寄与しない領域であるので、収差の値は図示されていない。この事項は、第5領域でも同様である。
【0061】
第3領域F3は、BD規格のレーザー光とDVD規格のレーザー光を集光させる領域であり、BD規格のレーザー光で輪体段差量が算出されると共に、両規格で収差が振り分けられる面形状となっている。この結果、第3領域F3でもマイナスの収差が若干発生している。また、第1領域F1と同様に、第3領域F3に於いても、他の領域とのワーキングディスタンスが考慮されて表面形状が調整されている。この結果、輪帯段差が設けられた箇所にて収差の値がシフトしている。
【0062】
第4領域F4および第6領域F6は、BD規格のレーザー光のみを集光させる領域であるので、この領域で殆ど収差が発生しないように設計することも可能である。しかしながら、実際はプラス側に若干の収差が発生している。この原因は、第1領域F1等と同様に、これらの領域の表面形状を、第1領域F1等の他の領域とワーキングディスタンスが揃うような形状とした結果である。
【0063】
BD規格のレーザー光に発生する収差は極めて小さく、RMS(Root Mean Square)波面収差は、光ディスクの被覆層がBD規格の多層ディスクの最表層の情報記録層と最深層の情報記録層との中間の厚みである0.0875mmの条件で、0.031mλRMSとなる。一般的に、マレシャル評価基準で0.07mλRMS以下であれば良好とされているが、本形態では光ディスクの被覆層の厚み0.0875mmの条件で、0.031mλRMSとすることで、多層ディスクの合焦させる情報記録層に対応してコリメートレンズ36(図10参照)を光軸方向に変位させることにより球面収差を補正することによりBD規格の多層ディスクの最表層および最深層のいずれの情報記録層に対してもマレシャル評価基準の0.07mλRMS以下が実現されている。従って、本形態の対物レンズを用いて、BD規格の光ディスクに対して情報の読出し及び書込を良好に行うことができる。
【0064】
図4を参照して、DVD規格のレーザー光に発生する収差を説明する。この図のグラフでは、DVD規格のレーザー光を集光する第1領域F1から第5領域F5の範囲内で収差を示している。なお、第6領域F6はBD規格のレーザー光のみを集光させる領域であるので、この領域に照射されたDVD規格のレーザー光はスポット形成には寄与しない。
【0065】
図4(A)を参照して、DVD規格のレーザー光に於いても、対物レンズに形成された輪帯段差の段差量に応じて収差がシフトする。具体的には、第1領域F1では、輪帯段差が設けられている箇所にて波面収差の値が5λ程度大きくなる。そして、第1領域F1と第2領域F2の境界には輪帯段差が形成されているので、この段差の段差量に応じて収差が減少する。更に、第2領域F2では、形成された輪帯段差に応じて階段状に収差の値が変化している。また、第3領域F3では、BD規格の波長で算出された段差量を有する輪帯段差の影響を受けて、収差がプラス方向に変化している。一方、第4領域F4は、BD規格のレーザー光のみを集光してスポットを形成する領域であるので、この領域に照射されたDVD規格のレーザー光はスポット形成には寄与しない。また、第5領域F5は、DVD規格のレーザー光のみを集光させる領域であるので、この領域で発生する収差は極めて小さい。
【0066】
図4(B)を参照して、上記したように第1領域F1の面形状は、基本的にはBD規格のレーザー光の収差が少なくなるように設計されているので、DVD規格のレーザー光には球面収差が発生する。具体的には、この収差は瞳半径が大きくなるに従い、プラス方向に大きくなる。そして、輪帯段差が設けられた箇所にて、収差の値がマイナス方向にシフトして補正される。更に、輪帯段差よりも外側の領域では再び外側に向かって収差はプラス方向に大きくなる。このように、輪帯段差の部分で収差がマイナス方向に補正される理由は、この輪体段差の段差量がBD規格のレーザー光の波長から算出されるからである。
【0067】
また、この図からも明らかなように、輪帯段差により収差がマイナス方向にシフトする部分を除外した大部分に於いて、DVD規格のレーザー光に発生する収差はプラスの値を示している。本形態では、第1領域F1に於いて、上記したようにBD規格のレーザー光で発生する収差の大部分をマイナスの値とする一方、DVD規格のレーザー光で発生する収差の大部分をプラスの値としている。これにより、BD規格およびDVD規格の両方に規格で発生する収差が小さくなる。
【0068】
第2領域F2は、上記したように、DVD規格およびCD規格のレーザー光を集光する領域であり、複数個の輪帯が設けられている。そして、この領域に設けられる輪帯段差の輪帯段差量は、波長が比較的短いDVD規格のレーザー光の波長を元に算出される。しかしながら、CD規格のレーザー光とDVD規格のレーザー光で収差を振り分けるような面形状とした結果、この領域に於いてもDVD規格のレーザー光にプラス方向の収差が若干発生している。また、他の領域とのワーキングディスタンスを整合させるために表面形状を調整した結果、この領域の輪帯段差の段差量が変化し、輪帯段差が設けられた箇所にてDVD規格のレーザー光の収差がシフトしている。
【0069】
第3領域F3では、第1領域F1と同様に、BD規格のレーザー光の波長で輪帯段差が決定される結果、DVD規格のレーザー光で発生する球面収差が色収差でシフトして補正されている。
【0070】
第4領域F4はBD規格のレーザー光のみを集光させる領域であるので、この領域に入射したDVD規格のレーザー光はスポット形成には寄与しない。従って、このグラフでは、第4領域F4の収差は示されていない。このことにより、DVD規格のレーザー光に於いても光学的超解像が実現される。
【0071】
第5領域F5はDVD規格のレーザー光のみを集光する領域であるのでこの領域で発生する収差は極めて小さい。
【0072】
ここで、DVD規格のレーザー光に発生するRMS波面収差は、光ディスクの被覆層が0.6mmの条件で、0.040mλRMSであり、上記したマレシャル評価基準を十分に満たすものである。
【0073】
図5を参照して、CD規格のレーザー光に発生する収差を説明する。ここでは、第1領域F1および第2領域F2に発生する収差を示している。なお、第2領域F2よりも外側の領域に照射されたCD規格のレーザー光は、スポット形成には寄与しないので、これらの領域に発生する収差は図示しない。
【0074】
図5(A)を参照して、第1領域F1では、BD規格のレーザー光の波長から算出される輪帯段差に応じて収差が変化している。また、第2領域F2では、DVD規格のレーザー光の波長で算出される輪帯段差に応じて収差が変化している。
【0075】
図5(B)に示す収差の実効値を参照すると、第1領域F1では輪帯段差が設けられた箇所およびその周辺部にて若干収差が大きくなるものの、この領域で発生する収差は最大で0.1λ程度である。
【0076】
第2領域F2では、DVD規格のレーザー光の波長で輪体段差量が算出されているので、対物レンズの色収差によりCD規格のレーザー光に発生する球面収差が補正される。この結果、このように収差が小さい値を示している。
【0077】
ここで、CD規格のレーザー光に発生するRMS波面収差は、光ディスクの被覆層の厚みが1.2mmの条件で、0.034mλRMSであり、上記したマレシャル評価基準を十分に満たすものである。
【0078】
図6および図7を参照して、次に、上記した対物レンズ10の具体的な形状を説明する。図6および図7に示す表は、具現化された対物レンズの形状や特性を表す係数を示している。
【0079】
図6(A)および図6(B)は、BD規格、DVD規格およびCD規格の波長での、光ピックアップレンズ(対物レンズ)および、光ディスク内光透過層(被覆層)の屈折率および面間隔を示している。ここで、開口径Φ、面間隔d2、d3は、図6(E)に示す通りである。
【0080】
また、図6(C)は各規格の波長に於けるレンズ材料およびディスク内透過層の温度特性を示し、図6(D)はレンズ材料およびディスク内透過層の材料波長特性を示している。
【0081】
図7に、レンズ面の形状を規定するパラメータを示す。図7(A)は、複数の輪帯が設けられるレンズ面R1(図1(A)に示す第1レンズ面10A)の形状を規定するパラメータを示す。図7(B)は対物レンズのレンズ面R2(図1(A)に示す第2レンズ面10B)の形状を示すパラメータである。
【0082】
図7(A)を参照して、この表に示された各パラメータを以下の式2に代入することでレンズ面形状が決定される。
【0083】
【数1】

【0084】
この式2に於いて、図6(E)に示すR1面からR2面にかけて正の符号であり、h1は光軸からの段差量(mm)であり、非球面係数はh(mm)を含む輪帯xの数値を用いる。
【0085】
図7(A)の表では、輪帯毎に、集光するレーザー光の波長、上記式1を用いて輪帯段差量を算出する際に使用される次数mおよび波長、輪帯開始半径、輪帯終了半径および形状を算出する際に用いられる係数が示されている。ここで、輪帯1〜輪帯2が図1(A)に示す第1領域F1であり、輪帯3〜輪帯13が第2領域F2であり、輪帯14から輪帯16が第3領域F3であり、輪帯17が第4領域F4であり、輪帯18が第5領域F5であり、輪帯19が第6領域F6である。
【0086】
また、図7(B)に示す係数を以下の式3に代入することにより、レンズ面R2の形状が決定される。
【0087】
【数2】

【0088】
この式3に於いて、h2は光軸からの段差量(mm)であり、非球面係数はR2面の数値を用いる。
【0089】
図8を参照して、各輪帯の段差量は対物レンズの中心に対して上記式1が成立するように算出され、この後に各輪帯の面形状が最適化されている。従って、例えば、輪帯1と輪帯2との間に設けられる輪帯段差の段差量Dは、m=8、波長=405を式1に代入することで算出される。この値は輪帯2の表面を仮想延長してレンズ中心まで広げた場合の、レンズ中心部と仮想延長された面の段差量を示している。
【0090】
尚、図7(A)の表を参照して、輪帯3と輪帯4とを比較した場合、輪帯3の段差量Dはm=−2、波長=660を式1に代入した値であり、輪帯4の輪帯段差はm=−3、波長=660を式1に代入した値である。これらの値は、上記したように対物レンズの中心を基準とした値である。従って、両者の境界に設けられる輪帯段差の段差量は各々の値を式1に代入した段差量の差となる。
【0091】
以上が本形態に係る対物レンズ10の説明である。
【0092】
本発明の特徴は、図2(A)を参照して、対物レンズ10の共用領域に入射するレーザー光の一部をスポット形成に寄与させないことで、光学的超解像を実現したことにある。
【0093】
具体的には、上記したように、使用状況下に於いて光ピックアップ装置が光ディスクに衝突することを防止するために、CD規格のワーキングディスタンスを長く確保する必要がある。このためには、図2(A)を参照して、対物レンズ10の中心部分(第1領域F1〜第2領域F2)の厚みを薄くする必要がある。しかしながら、このようにすると対物レンズ10の端部の厚みT11が極めて短くなり、射出成形による対物レンズの成形が困難になる。対物レンズ10の端部の厚みT11が短くなる理由は、この領域がBD規格、DVD規格およびCD規格で共用されると共に、CD規格の開口数(0.47)に対して、BD規格の開口数(0.78)は非常に大きいからである。
【0094】
この問題を解決するために、本形態では、共用領域11Aの一部を、BD規格に対応のレーザー光を集光させない共用領域とすることで、光学的超解像を実現している。具体的には、対物レンズ10の中心部付近に配置された第1領域F1、第2領域F2および第3領域F3は、規格の異なる複数のレーザー光を集光する共用領域である。そして、第1領域F1および第3領域F3に入射したBD規格のレーザー光は、光ディスク12Aの情報記録層14Aに集光されてスポット形成に寄与する。一方、第2領域F2に入射したレーザー光はスポット形成に寄与しない。換言すると、第2領域F2は、BD規格のレーザー光のスポット形成に寄与しない無効領域である。これにより、光学的超解像が実現され、CD規格のワーキングディスタンスを長く確保するために対物レンズ10の中心部の厚みT10が短く設定された場合であっても、端部の厚みT11を0.274mm以上に厚く確保できる。従って、射出成形時に、この位置に設けられる金型のゲートの幅を大きくすることができ、射出成形を良好に行うことができる。
【0095】
第2領域F2に入射したレーザー光をスポット形成に寄与させないために、本形態では、第2領域F2に設けられる輪帯段差の段差量を所定に調整している。具体的には、この段差量を、BD規格の波長ではなく、DVD規格の波長を用いて算出している。このようにすることで、第2領域F2を通過したBD規格のレーザー光には、0.3λ以上の収差が発生してスポット形成に寄与しなくなる。これに対して、DVD規格およびCD規格で発生する収差は、グラフを参照して上記したとおりであり、良好にスポット形成に寄与する値(例えば、0.3λ未満)となる。
【0096】
更に本形態では、対物レンズ10の外側に設けた専用領域11Bに於いても、第5領域F5に照射されたBD規格のレーザー光はスポット形成に寄与せず、この領域は無効領域となっている。これは、第5領域F5のレンズ面形状を、DVD規格のレーザー光のみを適切に集光する曲面形状とすることにより実現される。これにより、光学的超解像で得られる上記した効果がさらに大きくなり、開口数を0.78により光学的超解像を用いない場合のBD規格の適合開口数を0.85に対応させることができる。
【0097】
図2(B)を参照して、本形態では、DVD規格のレーザー光でも、中心部付近に無効領域を設けることにより、光学的超解像を実現させている。具体的には、BD規格のレーザー光のみを集光させる専用領域である第4領域F4がDVD規格のレーザー光のスポット形成に寄与しない無効領域である。このようにすることで、光学的超解像による効果がさらに大きくなる。
【0098】
一方、図2(C)を参照して、CD規格では、要求される開口数が小さいので、上記した光学的超解像は要求されない。この結果、対物レンズ10の第1領域F1および第2領域F2のみが、CD規格のレーザー光のスポット形成に寄与する。そして、それよりも外側の領域(第3領域F3−第6領域F6)は、CD規格のレーザー光のスポット形成に寄与しない無効領域である。
【0099】
上記したBD規格に於ける光学的超解像は、第2領域F2に設けられる輪帯段差の段差量を所定量とすることにより実現される。図9を参照してこの事項を説明する。図9はDVD規格の波長を基に、次数mを1から6まで変化させて輪帯段差量を算出した場合に、各規格のレーザー光に発生する残留収差を示している。
【0100】
このグラフに示す残留収差を算出するための条件を説明すると、DVD規格のレーザー光の波長は660nmであり、DVD規格の波長での対物レンズの屈折率は1.539642である。また、DVD規格の1波長での段差量(輪帯を中心へ仮想延長した場合の軸上段差量)は1.223003μmである。
【0101】
先ず、第2領域F2では、DVD規格の波長に基づいて上記した式1を用いて輪帯段差量Dを決定している。輪帯段差量Dの算出にBD規格の波長を採用しない理由は次の通りである。即ち、BD規格の波長を用いて輪帯段差量を算出すると、BD規格で発生する収差の値が小さくなり、第2領域F2に入射したBD規格のレーザー光がスポット形成に寄与してしまい、BD規格に関して第2領域F2が無効領域として機能しないからである。また、CDで規格の波長を用いて輪帯段差量を算出すると、所定の輪帯段差量の範囲内で選択できる次数m(式1参照)の種類が少ないので、最適な残留収差を発生させる次数mの値が選択しづらく成る。
【0102】
この表を参照して、輪帯段差量が7μmの範囲では、次数mは1乃至6の何れかを採用することが可能であるが、最適な次数mは1である。その理由は、先ず、CD規格のレーザー光で発生する残留収差の値(絶対値)が0.3λ未満(−0.16451)であるので、第2領域F2を通過したCD規格のレーザー光は良好に光ディスクの情報記録層に集光する。一方、BD規格のレーザー光で発生する残留収差の値は0.3λ以上(0.31282)であるので、第2領域F2に入射したBD規格のレーザー光は、スポット形成には寄与しない。尚、ここではDVD規格の波長を基に輪帯段差量を算出しているので、DVD規格のレーザー光には基本的には残留収差は発生しない。このことにより、第2領域F2がBD規格のレーザー光に関して無効領域と成り、上記した光学的超解像が実現される。
【0103】
尚、第1領域F1では、輪帯段差量を算出するための波長としてBD規格の波長が採用され、次数mとしては8が採用される。これにより、第1領域F1で、3つの規格(BD、DVDおよびCD)で収差が0.3λ未満となり、これらの規格のレーザー光が良好に集光される。また、第3領域F3では、輪帯段差量を算出するための波長としてBD規格の波長が採用され、次数mとしては3が採用される。これにより、第3領域F3で、BD規格およびDVD規格で収差が0.3λ未満に成り、これらの規格のレーザー光が集光する。更に、CD規格の収差が0.3λ以上となることにより、第3領域F3を通過したCD規格のレーザー光がスポット形成に寄与しない。
【0104】
上記したように本形態では、集光するべきレーザー光に発生する残留収差の値を0.3λ未満とすることで読取・書出の精度を向上させているが、この値は変更可能である。例えば、より好ましい残留収差の値は0.25λ未満であり、特に好ましい値は0.20λ未満であり、このような値を採用することにより、読取・書出の精度が更に向上される。
【0105】
また、上記説明では、スポットを形成しないレーザー光に発生する残留収差の値を0.3λ以上とすることで、光学的超解像を実現していたが、この値は変更可能である。例えば、より好ましい残留収差の値は0.35λ以上であり、特に好ましい残留収差の値は0.40λ以上である。このようにすることで、光学的超解像をより確実に実現可能となる。
【0106】
ここで、図2(A)を参照して、上記説明では、第2領域F2を通過したBD規格のレーザー光をスポット形成に寄与させないことにより光学的超解像を実現させていたが、他の規格のレーザー光(例えば第2レーザー光)をスポット形成に寄与させないことで光学的超解像を実現することも可能である。
【0107】
ここで、本形態では、収差を補正するために輪帯段差を設けているが、この輪帯段差の段差量はある程度の幅が許容される。具体的には、第1領域F1での段差量Dを求めるために、上記した式1に代入される波長(λ)の値は、必ずしもBD規格の405nmである必要はなく、例えば395nm〜420nmの範囲で変更されても良い。このように、段差量の算出に用いられる波長を若干変更することにより、BD規格以外のDVD規格またはCD規格のレーザー光に発生する収差が改善される。このことは、第2領域F2および第3領域F3でも同様であり、段差量の算出に使用される波長は、DVD規格の場合は645nm〜675nmで変更可能である。
【0108】
更に本形態では、無限光または弱有限光である各規格のレーザー光を、対物レンズ10にて集光している。ここで、弱有限光の場合は、弱有限光で設計された対物レンズに無限光を入射した場合に、最小となる収差がマレシャル限界を超えないように対物レンズが設計される。
【0109】
無限光は単層の情報記録層を備えた各規格の光ディスクに対して、情報の読出し又は書込を行う際に用いられる。情報記録層が単層の場合は、この情報記録層を被覆する被覆層の厚みは一定であるため、無限光を用いることにより安定した読出し及び書込を行うことができる。無限光は、光ピックアップ装置の内部に於いて、レーザー光が通過する光路の途中にコリメートレンズを介装することで生成される。
【0110】
弱有限光は、多層の情報記録層を備えたBD規格またはDVD規格の光ディスクの各層にレーザー光を集光する場合に用いられる。具体的には、2層の情報記録層を備えたBD規格の光ディスクの場合、表面に近い情報記録層を被覆する被覆層の厚さは0.075mmであり、表面から遠い方の情報記録層を被覆する被覆層の厚さは0.100mmである。この場合、対物レンズは、使用するレーザー光を無限に設定して2層の光ディスクの各被覆層の中間の厚さである0.0875mmが焦点となるように設計される。そして、入射するレーザー光を弱有限光とすることにより、読取または書込を行う情報記録層にレーザー光を集光させてスポットを形成する。
【0111】
また、BD規格で4層の情報記録層を備える光ディスクの場合、最表層の情報記録層は厚さ0.050mmの被覆層で被覆され、最深層の情報記録層は厚さ0.105mmの被覆層により被覆される。この場合、両者の中間値である厚さ0.0775mmの被覆層により被覆された情報記録層に、無限光のレーザー光が集光するように対物レンズを設計する。そして、対物レンズは入射されるレーザー光が弱有限光となることにより、所望の情報記録層にレーザー光を集光する。
【0112】
上記した弱有限光は、レーザー光の光路の途中に介装されたコリメートレンズを移動することにより作り出される。すなわち、弱有限光とは、無限光が入射された場合に多層ディスクの各被覆層の中間の厚さに設定される対物レンズの焦点を光ディスクの各情報記録層に変位させるために必要な角度の対物レンズに入射する発散光および収束光を示している。
【0113】
図10を参照して、上記した構成の対物レンズ10を備えた光ピックアップ装置20の構成を説明する。光ピックアップ装置20は、BD規格、DVD規格またはCD規格のレーザー光を、光ディスク52の情報記録層に集光させ、この情報記録層からの反射光を受光して電気信号に変換する機能を備えている。このことにより、光ピックアップ装置20は、各規格の光ディスク52からの情報の読出または書込を行う。
【0114】
本形態の光ピックアップ装置20に含まれる各素子を以下に説明する。
【0115】
レーザー装置22は、BD規格の波長のレーザー光を出射する。レーザー装置24は、DVD規格およびCD規格の波長のレーザー光を出射する。
【0116】
回折格子26は、レーザー装置22と合成プリズム28との間に配置され、BD規格のレーザー光が入射する。そして、回折格子26は、入射するレーザー光を0次光、+1次回折光、−1次回折光に分離する回折格子と、入射するレーザー光を合成プリズム28の偏光面に対してS方向の直線偏光光に変換する1/2波長板とから構成される。同様に、回折格子30は、レーザー装置24と合成プリズム34との間に配置され、回折格子と1/2波長板とから構成される。尚、回折格子30は、DVD規格及びCD規格のレーザー光を合成プリズム34の偏光面に対してS方向の直線偏光光に変換する。
【0117】
ダイバージェントレンズ32は、回折格子30と合成プリズム34との間に配置され、回折格子30で回折されたレーザー光の広がり角を調整する。
【0118】
合成プリズム28は、波長選択性および偏光選択性を有する偏光面を内蔵し、BD規格のレーザー光には偏光ビームスプリッタとして機能し、DVD規格及びCD規格のレーザー光には、全透過プリズムとして機能する。具体的には、S方向の直線偏光光であるBD規格のレーザー光は、その偏光面により紙面+X方向に反射される。一方、光ディスク52により反射されたレーザー光(戻り光)は、P方向の直線偏光光であり、この偏光面を紙面−X方向に透過する。
【0119】
合成プリズム34は、波長選択性および偏光選択性を有する偏光面を内蔵し、DVD規格及びCD規格のレーザー光には偏光ビームスプリッタとして機能し、BD規格のレーザー光には、全透過プリズムとして機能する。具体的には、合成プリズム34は、DVD規格及びCD規格のレーザー光の反射率を調整することで、PDIC56へと導かれる第2のレーザー光の光量を調整する。そして、S方向の直線偏光光であるDVD規格及びCD規格のレーザー光の大部分は、その偏光面により紙面+X方向に反射される。一方、光ディスクにより反射されたDVD規格及びCD規格のレーザー光(戻り光)は、P方向の直線偏光光であり、一定の割合にてこの偏光面を紙面−X方向に透過する。
【0120】
コリメートレンズ36は、BD規格、DVD規格及びCD規格のレーザー光を無限光に変換する。コリメートレンズ36は、点線にて示す光路(光軸)に対して平行方向(紙面±X方向)に移動する。そして、コリメートレンズ36は、それぞれの規格のレーザー光に応じて光学倍率を最適化することで、層間迷光や層間クロストークの発生を抑止する。また、コリメートレンズ36を移動させることにより、レーザー光を弱有限光に変換することができる。
【0121】
反射ミラー38は、波長選択性および偏光選択性を有する。具体的には、反射ミラー38は、往路のレーザー光を部分的に透過させてFMD23に照射させる。
【0122】
FMD23は、反射ミラー38を透過した往路側のレーザー光を受光し、受光したレーザー光の光量を示す信号を出力する。そして、FMD23の出力に基づいてレーザー装置22、24が制御される。
【0123】
反射ミラー40は、各規格の往路のレーザー光を紙面−X方向に全反射する。同様に、光ディスク52により反射された復路のレーザー光(戻り光)も、紙面−Y方向に全反射する。
【0124】
1/4波長板42は、入射するレーザー光に位相差を生じさせ、各規格のレーザー光をS方向の直線偏光光から円偏光光へと変換する。一方、光ディスク52により反射されたレーザー光(戻り光)は、再び1/4波長板42を通過すると、P方向の直線偏光光のレーザー光に変換される。
【0125】
立ち上げミラー44は、各規格のレーザー光を紙面+Y方向に反射させる。
【0126】
対物レンズ10は、立ち上げミラー44により反射されたBD規格、DVD規格及びCD規格のレーザー光を光ディスク52の情報記録層に集光させる。
【0127】
アナモレンズ54は、合成プリズム28とPDIC56との間に配置され、光ディスク52により反射された各規格のレーザー光(戻り光)が通過する。そして、アナモレンズ54は、通過するレーザー光にフォーカスサーボ用の非点収差を付与し、各規格のレーザー光を1つのPDIC56にて対処可能とする。
【0128】
PDIC56は、信号検出用のフォトダイオード集積回路素子が内蔵された光検出器であり、各規格のレーザー光を同一平面上の受光領域にて受光し、光電変換によって情報信号成分を含む検出信号を出力する。更に、PDIC56は、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボに用いられるサーボ信号成分を含む検出信号を出力する。
【0129】
次に、DVD規格及びCD規格のレーザー光の光路を説明する。
【0130】
先ず、レーザー装置24から出射されたレーザー光は、回折格子30にてS方向の直線偏光光に変換され、ダイバージェントレンズ32により所定の広がり角へと調整された後、合成プリズム34へと入射する。その後、レーザー光は、合成プリズム34の偏光面にて反射し、コリメートレンズ36にて無限光に変換された後に、反射ミラー38にて反射する。また、レーザー光の一部は、反射ミラー38を透過してFMD23に照射される。そして、FMD23の出力に基づいてレーザー装置24の出力が制御される。
【0131】
反射ミラー38で反射されたレーザー光は、反射ミラー40にて全反射され、1/4波長板42を通過することにより、S方向の直線偏光光から円偏光光に変換される。そして、円偏光光のレーザー光は、立ち上げミラー44にて反射した後、対物レンズ10により光ディスク52の情報記録層に集光される。
【0132】
次に、光ディスク52の情報記録層により反射されたレーザー光(戻り光)は、対物レンズ10を透過し、立ち上げミラー44にて反射した後、1/4波長板42を透過することで、円偏光光からP方向の直線偏光光のレーザー光へと変換される。そして、このレーザー光は、反射ミラー40、38で反射された後に、コリメートレンズ36、合成プリズム34、28を透過する。その後、レーザー光は、アナモレンズ54にてフォーカスエラー検出用の非点収差が付与され、PDIC56の受光領域にて受光され、光電変換によって検出信号へと変換される。
【0133】
次に、BD規格のレーザー光の光路を説明する。
【0134】
先ず、レーザー装置22から出射されたレーザー光は、回折格子26にてS方向の直線偏光光に変換され、合成プリズム28へと入射する。そして、このレーザー光は、合成プリズム28の偏光面にて全反射した後、合成プリズム34を全透過する。その後、レーザー光は、コリメートレンズ36で無限光とされた後に、反射ミラー38で大部分が反射され、残りの部分が透過する。透過したレーザー光はFMD23で検出され、FMD23の出力に基づいてレーザー装置22の出力が上記と同様に調整される。
【0135】
反射ミラー38を反射したレーザー光は、反射ミラー40にて全反射され、1/4波長板42を通過することにより、S方向の直線偏光光から円偏光光に変換される。そして、円偏光光のレーザー光は、立ち上げミラー44にて反射した後、対物レンズ10により光ディスク52の情報記録層に集光される。
【0136】
次に、光ディスク52の情報記録層により反射されたレーザー光(戻り光)は、対物レンズ10を透過し、立ち上げミラー44にて反射し、1/4波長板42を透過することで、円偏光光からP方向の直線偏光光のレーザー光へと変換される。そして、レーザー光は、反射ミラー40、38にて反射された後に、コリメートレンズ36、合成プリズム34、28を透過する。その後、レーザー光は、アナモレンズ54にて非点収差が付与され、PDIC56の受光領域にて受光され、光電変換によって検出信号が出力される。
【0137】
以上が、本形態のレーザー光の各光路の説明である。上記した光ピックアップ装置20では、課題の欄にて述べたように、光ディスク52(CD規格の光ディスク)が備えるスタックリブと、対物レンズ10を保護する為に上方に突出する衝突防止部との接触を防止するために、対物レンズのワーキングディスタンスを長くしている。そして、この為には対物レンズ10の中心部分を薄く形成する必要があり、このような場合であっても射出成形を良好に行うために、光学的超解像を採用している。光学的超解像の詳細は、図2等を参照して上記した通りである。
【0138】
ここで、上記した対物レンズおよび光ピックアップを用いて、ライトスクライブを行うことも可能である。ライトスクライブとは、光ディスクの記録面とは反対側の面に、レーザを用いることによって文字情報や絵情報を焼き付けることである。本形態の対物レンズはレーザー光の利用効率が高いので、効率よくライトスクライブを行える。
【符号の説明】
【0139】
10 対物レンズ
10A 第1レンズ面
10B 第2レンズ面
11A 共用領域
11B 専用領域
F1 第1領域
F2 第2領域
F3 第3領域
F4 第4領域
F5 第5領域
F6 第6領域
12A、12B、12C 光ディスク
14A、14B、14C 情報記録層
16A、16B、16C 被覆層
20 光ピックアップ装置
22 レーザー装置
24 レーザー装置
26 回折格子
28 合成プリズム
30 回折格子
32 ダイバージェントレンズ
34 合成プリズム
36 コリメートレンズ
38 反射ミラー
40 反射ミラー
42 1/4波長板
44 立ち上げミラー
54 アナモレンズ
56 PDIC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長を有する第1レーザー光を第1光ディスクの情報記録層に集光させ、
前記第1波長よりも長い第2波長を有する第2レーザー光を、第2光ディスクの情報記録層に集光させ、
前記両レーザー光よりも長い第3波長を有する第3レーザー光を、第3光ディスクの情報記録層に集光させる、対物レンズであり、
前記第1レーザー光、前記第2レーザー光および前記第3レーザー光の何れか複数を、対応する前記光ディスクの前記情報記録層に集光させる共用領域を複数有し、
前記共用領域同士の間に、前記第1レーザー光、前記第2レーザー光および前記第3レーザー光の何れかを、対応する前記光ディスクの前記情報記録層でスポット形成に寄与させない第1無効領域を配置することを特徴とする対物レンズ。
【請求項2】
前記共用領域は、
前記対物レンズの中央部付近に配置された円形状の領域であり、前記第1レーザー光、前記第2レーザー光および前記第3レーザー光を、対応する前記光ディスクの前記情報記録層に集光する第1共用領域と、
前記第1共用領域を囲む位置に配置された輪帯状の領域であり、前記第2レーザー光および前記第3レーザー光を、対応する前記光ディスクの前記情報記録層に集光する第2共用領域と、
前記第2共用領域を囲む位置に配置された輪帯状の領域であり、前記第1レーザー光および前記第2レーザー光を、対応する前記光ディスクの前記情報記録層に集光する第3共用領域と、を備え、
前記第2共用領域に入射した前記第1レーザー光が、前記第1光ディスクの前記情報記録層でスポット形成に寄与しないことにより、前記第1レーザー光に関して前記第2共用領域が前記第1無効領域となることを特徴とする請求項1に記載の対物レンズ。
【請求項3】
前記第2共用領域には輪帯段差が設けられ、
前記輪帯段差の段差量を、前記第1レーザー光に0.3λ以上の収差が発生すると共に、前記第2レーザー光および前記第3レーザー光に発生する収差が0.3λ未満となるようにすることを特徴とする請求項2に記載の対物レンズ。
【請求項4】
各々の前記共用領域に設けられる輪帯段差の段差量Dは、任意の次数をm、レーザー光の波長をλ、対物レンズの屈折率をnとした場合、D=m・λ/(n−1)で与えられ、
前記第2共用領域では、第2レーザー光および前記第3レーザー光に発生する収差が0.3λ未満となると共に、前記第1レーザー光に発生する収差が0.3λ以上となるように、mの次数が設定されることを特徴とする請求項3に記載の対物レンズ。
【請求項5】
前記第3共用領域の外側に、前記第1レーザー光のみを前記第1光ディスクの情報記録層に集光させる第1専用領域を更に備え、
前記第3共用領域と前記第1専用領域との間に、前記第1レーザー光を、前記第1光ディスクの前記情報記録層でスポット形成に寄与させない第2無効領域を配置することを特徴とする請求項2から請求項4の何れかに記載の対物レンズ。
【請求項6】
前記第3共用領域の外側に、前記第2レーザー光のみを前記第2光ディスクの情報記録層に集光させる第2専用領域を更に備え、
前記第3共用領域と前記第2専用領域との間に、前記第2レーザー光を、前記第2光ディスクの前記情報記録層でスポット形成に寄与させない第3無効領域を配置することを特徴とする請求項2から請求項5の何れかに記載の対物レンズ。
【請求項7】
前記第3共用領域では、前記第3レーザー光に発生する収差が0.3λ以上となるように、mの次数が決定されることを特徴とする請求項4に記載の対物レンズ。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れかに記載された対物レンズを備えたことを特徴とする光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−150854(P2012−150854A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6664(P2011−6664)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】