説明

対物レンズチルト補正装置、対物レンズ駆動装置、光ピックアップ装置および光ディスクドライブ

【課題】 小型、薄型化が可能であって、信頼性の高いチルト補償駆動機能を備えた対物レンズチルト補正装置、およびそれを搭載した対物レンズ駆動装置、ならびにそれを搭載した光ピックアップ装置、およびそれを搭載した光ディスクドライブを提案する。
【解決手段】 対物レンズチルト補正装置のボビン4内で対物レンズ1を保持する対物レンズホルダー2とボビン4とを、対物レンズホルダー2のトラッキング方向両端において1対の弾性連結部材であるタンジェンシャルチルト用板バネ3またはタンジェンシャルチルト用ワイヤー11とにより連結し、対物レンズホルダー2をトラッキング方向の回転軸を中心にしてチルト可能に支持する。また、タンジェンシャルチルト用板バネ3またはタンジェンシャルチルト用ワイヤー11の中心軸の延長線が対物レンズ1の主点近傍を通過するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズチルト補正装置、それを搭載した対物レンズ駆動装置、それを搭載した光ピックアップ装置、およびそれを搭載した光ディスクドライブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対物レンズチルト補正装置の一例として、下記特許文献1に記載の「対物レンズチルト補正装置」がある。これは、対物レンズ駆動装置のボビン内で対物レンズをラジアルとトラッキングの二方向にチルト補正する装置であって、対物レンズ下面に透過平面ガラスを設け、ガラスと対物レンズを光軸上で支持する支持部材を設けている。その対物レンズにはマグネットを設けその対向する位置にコイルを設け対物レンズをチルト駆動するものである。
【0003】
また、他の従来技術として、フォーカシング,トラッキング動作時に支持系によって発生するチルトを低減する対物レンズ駆動装置である。これは、対物レンズ保持部材に対物レンズ,Foコイル,Trコイルを取り付けてなる可動部を、タンジェンシャル方向両側の固定部材から4本ずつ計8本のワイヤばねによって支持される構造とし、トラッキング方向両側にトラッキング方向に平行な着磁境界線を有しかつ中央にフォーカシング方向の着磁境界線を有する駆動用磁石を可動部に対向させた際に、2つのFoコイルの個々のトラッキング方向における中心の間隔を、駆動用磁石の両側部における磁束密度分布の中心の間隔よりも狭く設定することにより、同時にフォーカシングおよびトラッキング移動した場合に、支持系のチルトをキャンセルする方向にモーメントが発生するようにしたものがある。
【特許文献1】特開平10−64094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
データの記録再生方法の一つとして、光を用いて記録媒体に記録、再生する方法がある。このような光記録方法の代表的な例としては、直径12cmの光記録媒体の片面に2時間分以上録画できるDVDシステムが商品化されている。DVD規格ではディスクの記憶容量は片面で4.7GBであり、トラック密度は0.74μm/トラック、線密度は0.267μm/ビットである。DVDのような光記録媒体に記録された情報の再生は、光ヘッドを用いて行われる。光ヘッドにおいては、LD(レーザダイオード)から出射される光ビームが対物レンズにより光記録媒体のトラック上のピットに集光される。光記録媒体で反射された光ビームは、集光レンズで光検出器に集光され、再生信号が得られる。この光検出器からの再生信号は再生信号処理系に入力され、データの復号が行われる。DVD規格の場合、光ヘッド中のLDの波長は650nm、対物レンズの開口数NAは0.65である。
【0005】
更に、DVDを高密度化した規格として、Blu-Ray Disc がある。これは、波405nmの青紫色レーザーを用いて、CDやDVDと同じ直径12cmの相変化型光光記録媒体片面1層に最大27GBの映像データを、繰り返して記録・再生することができる次世代大容量光光記録媒体ビデオレコーダー規格である。Blu-ray Discでは、短波長の青紫色レーザーを用いるとともに、レーザーを集光する対物レンズの開口数(NA)を0.85とすることにより、ビームスポットを微小化している。また、レンズの高開口化に対応した光透過保護層厚0.1mmの光記録媒体構造を採用することで、光記録媒体の傾きによる収差を低減し、読み取りエラーの低減や記録密度の向上を図っている。これにより、光記録媒体の記録トラックピッチをDVDの約半分の0.32μmに微細化し、光記録媒体片面に最大27GBの高密度記録を実現している。
【0006】
図1にDVDの書き込み可能型ピックアップの概略図を示す。DVDのピックアップは、書き込み可能型の場合、照明効率を高めるために偏光光学系が用いられる。すなわち、光源のLD31から対物レンズ32までの光路にPBS(偏光ビームスプリッタ)33を配置し、LD31の直線偏光の偏光面と同じ偏光面の光を透過させ、その先に設置してある1/4波長板34で円偏光となり、対物レンズ32で集光させられ、光ディスク35の基板下の記録層に照射される。光ディスク反射面からの反射光は入射光と逆回転の円偏光となり、1/4波長板34を透過すると、LD31の偏光面と垂直方向の偏光面を持つ直線偏光となり、PBS33で反射され、集光レンズ36を経て、光検出器37に導かれる。光検出器37で検知された信号が再生信号処理系38へ送られる。1/4波長板34により完璧な円偏光になっている場合は、PBS透過光、すなわちLD戻り光は0となり、光ディスク反射光はPDによって完全に検出される。
【0007】
このように光ディスク装置は、対物レンズで小さく絞り込んだ光ビームによって、光記録媒体上の微細な記録マークを走査し、記録された情報を再生する。このとき、光記録媒体の反り、面ぶれ等によって情報記録面が光ピックアップからの光に対して傾斜することがある。このような場合には光記録媒体に記録された情報を再生するための光ビームが、情報記録面に対して傾斜して入射されることになる。また、このような場合、情報記録面に生じる光ビームのスポットにはコマ収差が発生し、スポット形状が非対称になるばかりでなく、記録情報の正確な読みとりが困難となる。Blu-rayディスクのように特に大容量化の目的でスポット径を小さくするためOLのNAを大きくした場合、光記録媒体のチルトに対するコマ収差発生量が大きくなり、メディアチルトに対するマージンが減少する。そのため、大容量化においてはメディアチルトの補償機能が必須技術となる。
【0008】
また、対物レンズの光軸とメディアの垂直度がずれることにより、コマ収差が発生し易くなり、スポットの品質が劣化する。これによって、記録再生品質が劣化してしまうという問題が生じる。そのため高密度化のためにはメディアと対物レンズの傾きの精度向上が必要となる。近年では高密度化に伴い、更に傾きに対する精度が厳しくなり、メディアと対物レンズの傾き(チルト)を、対物レンズを含む対物レンズ駆動装置の可動部をメディアの傾きにあわせてチルト駆動(傾斜動作)を行う3軸駆動または4軸駆動の対物レンズ駆動装置をもちいたシステムも提案されている。このような3軸や4軸の対物レンズ駆動装置では構造が複雑化するため小型化が大きな課題となる。
【0009】
上述した特許文献1においては、光ディスクの記録面に対する光ビームの光軸傾きによる再生信号の品質劣化をなくし、ディスク一周中の反り量の変化に対して光ビームの光軸傾き補正(チルト補正)を高速に行うことができる光ディスクチルト補正装置が開示されている。この公知例では対物レンズ駆動装置を小型化するために、対物レンズボビン内で対物レンズをチルト補正する方式が開示されている。具体的には、対物レンズ下面に透明な固定部を設けた対物レンズ光軸中心に透明な固定部と対物レンズを保持している。対物レンズの周りには複数のマグネットと対抗する位置にマグネットがボビンに保持され、タンジェンシャル方向および、ラジアル方向にチルト補正駆動できる構成としている。
【0010】
しかし、この公知例に示される構成では以下のような問題点が発生する。
(1)対物レンズ下面にヒンジ部を設けてチルト補正しているため、光ビームの中心に光を遮るヒンジ保持部材があるため集光スポットの波面に乱れが生じる。
(2)ボビンがトラッキング方向に駆動されるとき対物レンズがトラッキング方向にチルトしてしまう。
(3)対物レンズ駆動装置の薄型化をはかるとき、対物レンズの下面にヒンジおよび透明部材があるため、高さ方向の寸法はヒンジ分があり短縮化の課題となる。特にノート用光ディスクドライブに搭載する場合、対物レンズ駆動装置の厚み方向は7mm程度であり、薄型化において大きな課題となる。
(4)対物レンズを保持するヒンジ部は対物レンズと一体に設けられているが、チルト補正をする上で、ある程度の弾性が必要となるが、レンズ部材はプラスチックモールドであり、耐久性、信頼性に課題がある。
(5)対物レンズとヒンジ部が一体成型されていると、ヒンジがあることで、ヒンジ部の付け根のレンズ部は透明板にひけや光学的な歪が発生し、レンズスポット性能(波面収差)が著しく劣化する可能性が大であり、記録/再生信号の劣化を招く恐れが大きい。
そこで、本発明は、小型、薄型化が可能であって、しかも信頼性の高いチルト補償駆動機能を備えた対物レンズチルト補正装置、およびそれを搭載した対物レンズ駆動装置、ならびにそれを搭載した光ピックアップ装置、およびそれを搭載した光ディスクドライブを提案することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1の発明に係る対物レンズチルト補正装置は、ボビン内で対物レンズを保持する対物レンズホルダーと、該対物レンズホルダーのトラッキング方向両端において対物レンズホルダーと前記ボビンとを連結する1対の弾性連結部材とを備え、前記対物レンズホルダーはトラッキング方向の回転軸を中心にしてチルト可能に支持されたことを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の対物レンズチルト補正装置において、前記弾性連結部材は板バネにより構成され、該板バネの延長面内に対物レンズの光軸を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1の対物レンズチルト補正装置において、前記弾性連結部材はワイヤーにより構成されたことを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの対物レンズチルト補正装置において、前記弾性連結部材はその中心軸の延長線が前記対物レンズの主点近傍を通過することを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかの対物レンズチルト補正装置において、前記対物レンズホルダー外周に巻回付設されたコイルと、該コイルと対向するボビン側の位置に付設されたマグネットを備え、該マグネットの前記コイルに対する配置方向は対物レンズ駆動装置のタンジェンシャル方向と略一致することを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、請求項5の対物レンズチルト補正装置において、前記弾性連結部材は導電性を有する材質として、弾性連結部材を介して前記コイルへ給電することを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明は、請求項6の対物レンズチルト補正装置において、前記弾性連結部材が接続される位置の前記対物レンズホルダーに凹部を設け、該凹部内に前記弾性連結部材を露出させ、前記凹部内で前記コイルの端部を前記弾性連結部材に半田付けしたことを特徴とする。
【0018】
請求項8の発明に係る対物レンズチルト補正装置は、ボビン内に保持される対物レンズの外周に巻回付設されたコイルと、前記対物レンズのトラッキング方向両端に刻設された1対のスリットと、該スリットに一端が嵌着され他端がボビンに接続された1対の弾性連結部材とを備え、前記対物レンズはトラッキング方向の回転軸を中心にしてチルト可能に支持されたことを特徴とする。
【0019】
請求項9の発明に係る対物レンズチルト補正装置は、ボビン内に保持される対物レンズのレンズホルダーの外側に配置されたジンバルと、前記レンズホルダーと前記ジンバルをタンジェンシャル方向両端で連結してレンズホルダーをタンジェンシャル方向の回転軸を中心にしてチルト可能に支持する1対の内側弾性連結部材と、前記ジンバルとボビンをジンバルのトラッキング方向両端で連結してジンバルをトラッキング方向の回転軸を中心にしてチルト可能に支持する1対の外側弾性連結部材とを備えたことを特徴とする。
【0020】
請求項10の発明は、請求項1乃至9のいずれかの対物レンズチルト補正装置を搭載した対物レンズ駆動装置であることを特徴とする。
【0021】
請求項11の発明は、請求項10の対物レンズ駆動装置を搭載した光ピックアップ装置であることを特徴とする。
【0022】
請求項12の発明は、請求項11の光ピックアップ装置を搭載した光ディスクドライブであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
以上述べたように請求項1および2の発明では、タンジェンシャルチルト用の板バネはその面の方向がフォーカシング方向およびトラッキング方向にあるため、各々の方向に対する剛性は高く、フォーカシングおよびトラッキング動作により、各々の方向へ対物レンズは変位しないため良好なフォーカシングサーボおよびトラッキングサーボが可能となる。
【0024】
請求項3および4の発明では、対物レンズがタンジェンシャル方向へチルトしても主点の位置はタンジェンシャル方向へ移動しないため、光軸ズレが発生しない。よって、タンジェンシャル方向の光軸ずれがないため、良好な記録または再生が可能となる。また、ワイヤーの長さを最適に設定することでフォーカシングサーボおよびチルトサーボを両立することが可能となる。
【0025】
請求項5の発明では、コイルとマグネットを備えたことで、対物レンズのチルト補正装置の小型・薄型化が可能となる。また、タンジェンシャルチルト可動部の重量の軽量化が図れるため、消費電力を低く抑えることが可能となる。
【0026】
請求項6の発明では、コイルへの給電が空中配線することなくできるため、コイルの断線が防止されて信頼性を向上できる。また板バネ、ワイヤーを導電部材とすることでコイルへの配線部の共振が防止できるため、良好なフォーカシング、トラッキング、チルト制御が可能となり、記録または再生の信頼性を向上することが可能となる。
【0027】
請求項7の発明では、コイルの半田の位置が確定でき、半田の重さによる左右のバランスを取ることが容易となるため、トラッキング時のラジアル方向の共振を除去できる。また、半田付けの作業性も向上して、確実な半田作業が可能となる。
【0028】
請求項8の発明では、対物レンズホルダーを用いないため、対物レンズホルダーの分の重量を低減でき、フォーカシング、トラッキング、タンジェンシャルチルトの感度を向上させることが可能となる。また、部品点数が削減できるため、工数低減も含めコストダウンも可能となる。
【0029】
請求項9の発明では、対物レンズをジンバルを介して支持したため、ボビン内で対物レンズを2軸によりチルト補正することが可能となり、対物レンズ駆動装置の小型化が可能となる。
【0030】
請求項10の発明では、請求項1乃至9のいずれかの対物レンズチルト補正装置を搭載したことで、小型、低消費電力な4軸駆動の対物レンズ駆動装置を得ることが可能となる。
【0031】
請求項11の発明では、請求項10の対物レンズ駆動装置を光ピックアップに搭載したことで、光ピックアップの小型化が可能となる。また、広帯域までタンジェンシャルチルト補正が可能となるため、良好な信号特性を得ることが可能となる。
【0032】
請求項12の説明では、請求項11の光ピックアップを光ディスクドライブに搭載したことで、光ディスクドライブを小型薄型化することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明が適用されるDVDの書き込み可能型ピックアップの概略図を示す。DVDのピックアップは、書き込み可能型の場合、照明効率を高めるために偏光光学系が用いられる。すなわち、光源のLD31から対物レンズ32までの光路にPBS(偏光ビームスプリッタ)33を配置し、LD31の直線偏光の偏光面と同じ偏光面の光を透過させ、その先に設置してある1/4波長板34で円偏光となり、対物レンズ32で集光させられ、光ディスク35の基板下の記録層に照射される。光ディスク反射面からの反射光は入射光と逆回転の円偏光となり、1/4波長板34を透過すると、LD31の偏光面と垂直方向の偏光面を持つ直線偏光となり、PBS33で反射され、集光レンズ36を経て、光検出器37に導かれる。光検出器37で検知された信号が再生信号処理系38へ送られる。ここで、1/4波長板34により完璧な円偏光になっている場合は、PBS透過光、すなわちLD戻り光は0となり、光ディスク反射光はPDによって完全に検出される。
【0034】
図2は請求項1および2の発明に係る対物レンズチルト補正装置の実施形態をボビン部とベース部に分解して示した斜視図であり、図3は図2の対物レンズチルト補正装置を組立てた斜視図および対物レンズ部の縦断面図である。図示されるように、対物レンズチルト装置の対物レンズ1の外周に対物レンズホルダー2が嵌着され、対物レンズホルダー2のトラッキング方向の両端とボビン4との間に、一対の弾性連結部材であるタンジェンシャルチルト用板バネ3を配置し、板バネ3の内側の端部を対物レンズホルダー2に固着し、板バネ3の他端はボビン4に固着している。
【0035】
ここで、板バネ3の延長面内に対物レンズ1の光軸が含まれるようにする。対物レンズホルダー2の周りには、タンジェンシャルチルトコイル5が巻回付設され、ボビン4の対向位置にチルトマグネット6が配設されている。チルトコイル5に電流を流すことで、対物レンズホルダー2は、フレミングの左手の法則によりタンジェンシャルチルト方向に駆動される。その結果、板バネ3が捩れて対物レンズ1はタンジェンシャル方向へチルト駆動される。
【0036】
また、図2および図3に示された対物レンズチルト補正装置は、ボビン4にフォーカシングコイル7とトラッキングコイル8を有し、ボビン4を支持する少なくとも4本のワイヤースプリング9とを備え、光ピックアップから出力されるサーボ信号により、光ディスクの記録溝に追従する。また外部より入力される光ディスクの対物レンズ1の光軸に対するチルト量に対するチルト検出信号に基づいてラジアルチルトコイ10およびタンジェンシャルチルトコイル5にサーボ用の電流を流してラジアル方向とタンジェンシャル方向のチルトを補正するものである。
【0037】
このような構成されたことで、タンジェンシャルチルト用板バネ3の面の方向がフォーカシング方向とトラッキング方向にあるため、各々の方向に対する剛性は高く、フォーカシングおよびトラッキング動作により引き起こされる、各々の方向への対物レンズ1の変位は微小なため、良好なフォーカシングサーボおよびトラッキングサーボが可能となる。なお、図示例では、ラジアルチルトコイル10をトラッキングコイル8の近傍のボビン4の側面に設け、マグネット16とフロントヨーク17の間にある磁気を利用し、2個のラジアルチルトコイル10に流す電流を変化させることでボビン4全体をラジアル方向(トラッキング方向)に駆動するものである。また、図示していないが、ラジアル方向(トラッキング方向)の対物レンズチルト動作は、図示された対物レンズチルト補正装置全体またはこの対物レンズチルト補正装置が搭載される対物レンズ駆動装置全体または対物レンズ駆動装置が搭載される光ピックアップ全体をチルト動作させても良い。
【0038】
次に請求項3および4の発明に係る対物レンズチルト補正装置の実施形態について説明する。図4は請求項3および4の発明に係る対物レンズチルト補正装置の実施形態について示し、対物レンズとボビンの一部を示す斜視図および縦断面図である。この実施形態は、図2におけるタンジェンシャルチルト用板バネ3の替わりにタンジェンシャルチルト用ワイヤー11を用いて、対物レンズホルダー2をボビン4に支持したものである。すなわち、タンジェンシャルチルト用ワイヤー11の中心軸延長線が対物レンズ1の主点近傍を通過するように構成している。このような構成としたことで、対物レンズ1がタンジェンシャル方向へチルトしても、主点の位置はタンジェンシャル方向へ移動しないため、光軸ズレが発生しない。その結果、タンジェンシャル方向の光軸ずれがないため、良好な記録または再生が可能となる。
【0039】
また、図4では対物レンズホルダー2とボビン4側から、それぞれ凸部を設けその中心にタンジェンシャルチルト用ワイヤー11を配置している。このような構成とすることで、露出しているワイヤー11の長さΔLを小さくでき、フォーカシング駆動時に対物レンズ1のフォーカス方向の変位を抑えることができ、良好なフォーカシングサーボが可能となる。なお、ΔLはチルト方向の捻り剛性(捻り方向の固有振動数)とフォーカシング方向の剛性をパラメータとして最適な値をとる必要があり、ΔLを最適に設定することでフォーカシングサーボおよびチルトサーボを両立することが可能となる。さらには、ΔLはワイヤー11の線径、対物レンズ1のタンジェンシャル方向の捩れ共振周波数などを考慮して最適値を決定することが好ましい。
【0040】
なお、弾性連結部材として、板バネ3を用いた図2および図3の実施形態においても、板バネ3の捩れの中心軸を対物レンズ1の主点近傍を通過するように構成することで、光軸ずれは、図4におけるワイヤー11を用いた場合と同様に、発生を低減し、または防止できる。
【0041】
次に、請求項5の発明に係る対物レンズチルト補正装置の実施形態について説明する。図4において、対物レンズホルダー2の周りにタンジェンシャルチルト用のチルトコイル5を設けるとともに、タンジェンシャル方向となる、チルトコイル5と対向するボビン4の内面にチルトマグネット6を付設することで、チルトコイル5に電流を流すとフレミングの左手の法則により矢印12の方向に推力が発生し、タンジェンシャルチルト方向13の方向へ対物レンズ1が駆動される。このような構成とすることで、対物レンズ1のチルト補正装置の小型・薄型化が可能となる。また、タンジェンシャルチルト可動部の重量の軽量化が可能となり、消費電力を低く抑えることが可能となる。
【0042】
次に、請求項6および請求項7の発明に係る対物レンズチルト補正装置の実施形態について説明する。図5はこの実施形態を示し、対物レンズとボビンの一部を示す斜視図および縦断面図である。この実施形態は、図4と同様に、対物レンズホルダー2とボビン4側から、それぞれ凸部を設けその中心にタンジェンシャルチルト用ワイヤー11を配置している。このワイヤー11を導電部材とし、内側の端部の位置となる対物レンズホルダー2の部分に、半田付け用凹部穴14を形成し、その穴14内で、チルトコイル5の一端の端部24を、ワイヤー11に半田付けし、ワイヤー11の他端をボビン4の表面に配設された銅箔パターン23に接続することで、チルトコイル5に給電することが可能となる。
【0043】
図6は、同じく、請求項6および請求項7の発明に係る対物レンズチルト補正装置の実施形態を示し、対物レンズとボビンの一部を示す斜視図である。この実施形態は図2および図3と同様に、対物レンズホルダー2とボビン4とを板バネ3により連結している。この板バネ3を導電部材とし、内側の端部の位置となる対物レンズホルダー2の部分に、半田付け用凹部穴14を形成し、その穴14内で、チルトコイル5の一端の端部24を、板バネ3に半田付けし、板バネ3の他端をボビン4の表面に配設された銅箔パターン23に接続することで、チルトコイル5に給電することが可能となる。
【0044】
請求項6の発明に係る対物レンズチルト補正装置の実施形態は、図5および図6のように構成することで、コイル5の端部を空中配線することなく給電できるため、コイル5の断線を防止し信頼性を向上できる。またコイル5を空中配線するとフォーカシング、トラッキング、チルト制御時にコイル5の共振が発生してしまうが、板バネ3、ワイヤー11を導電部材とすることでコイル配線部の共振が防止できるため、良好なフォーカシング、トラッキング、チルト制御が可能となり、記録または再生の信頼性を向上することが可能となる。しかも、コイルの空中配線がないため作業効率が向上可能となり作業バラツキも低減でき信頼性向上に寄与するものである。
【0045】
請求項7の発明の実施形態は、図5および図6のように構成することで、板バネ3、ワイヤー11が固着される対物レンズホルダー2の位置に凹部穴14が設けられ、凹部穴14内に板バネ3もしくはワイヤー11の一端が露出されている構成である。この凹部穴14にチルトコイル5の端部24を挿入し、一定量の半田を流し込むことで、導電部材である板バネ3またはワイヤー11とチルトコイル5を確実に半田付けすることが可能となる。その結果、半田の位置が確定でき、半田の重さによる左右のバランスを取ることが容易となるため、トラッキング時のラジアル方向の共振を除去できる。また作業性も向上させることができ、確実な半田作業が可能となり信頼性向上とコスト低減が可能となる。
【0046】
次に、請求項8の発明に係る対物レンズチルト補正装置の実施形態について説明する。図7はこの実施形態を示し、対物レンズ部分を示す斜視図および分解図である。この実施形態は、対物レンズホルダーを使用しないで軽量にしたものである。すなわち、対物レンズ1のトラッキング方向の両端にそれぞれ半径方向のスリット15を刻設し、対物レンズ1の外周に、チルトコイル5を直接巻回している。次いで、スリット15にタンジェンシャルチルト用板バネ3を挿入して接着剤等により固着する。このとき、板バネ3の内側端部は二股形状として、チルトコイル5の巻回位置に干渉することを回避している。
【0047】
この実施形態は、チルトコイル5を対物レンズ1の外周側面に直接巻回することで、対物レンズホルダーを介さず、タンジェンシャルチルト補正機構を実現することが可能となる。その結果、対物レンズホルダーの分の重量を低減でき、フォーカシング、トラッキング、タンジェンシャルチルトの感度を向上させることが可能となる。また、部品点数が削減できるため、工数低減も含めコストダウンも可能となる。また、対物レンズ1の部分を軽量にしたことで、捩れやすくなり、かつフォーカシング方向およびトラッキング方向の剛性を高めることでチルトの感度向上とフォーカシングサーボの特性の安定化を図れる。なお、図7の実施形態では、板バネ3を用いた例を示しているが、図5のようにワイヤー11を用いる場合も、同様に、対物レンズホルダーを省き、直接、ワイヤー11を対物レンズ1に固着することも可能である。
【0048】
図8は請求項8の発明に係る対物レンズチルト補正装置の他の実施形態を示す縦断面図である。図8(a)は、中央部分を打ち抜いた三角形の板バネ25により、対物レンズ1とボビン4を連結したものである。この場合は、板バネ25の可撓性が向上するため、感度の良いタンジェンシャルチルト補正機構を実現することが可能となる。図8(b)は、上下2本対となったワイヤー26により、対物レンズ1とボビン4を連結したものである。この場合は、対物レンズ1の光軸方向の剛性が増して、動作の安定したタンジェンシャルチルト補正機構を実現することが可能となる。
【0049】
次に、請求項9の発明に係る対物レンズチルト補正装置の実施形態について説明する。図9はこの実施形態を示し、対物レンズ部分を示す斜視図である。この実施形態は、対物レンズホルダー41の外周にジンバル42を配置し、対物レンズホルダー41とジンバル42はタンジェンシャル方向に一対の内側弾性連結部材40でチルト可能に連結し、ジンバル42とボビン44はラジアル方向(トラッキング方向)に一対の外側弾性連結部材43でチルト可能に連結している。その結果、対物レンズ45はラジアル方向(トラッキング方向)とタンジェンシャル方向の2軸でチルト補正可能にボビン44に支持され、小型化が可能となる。
【0050】
次に、請求項10の発明に係る対物レンズ駆動装置の実施形態について説明する。この実施形態は、上述した請求項1〜9の対物レンズチルト補正装置を、対物レンズ駆動装置に搭載したものである。この対物レンズ駆動装置は、小型、低消費電力を特徴とした4軸駆動可能な対物レンズ駆動装置を提供することが可能となる。
【0051】
次に、請求項11の発明に係る光ピックアップ装置の実施形態について説明する。この実施形態は、上述した請求項10の対物レンズ駆動装置を、光ピックアップ装置に搭載したものである。この光ピックアップ装置は、小型化を可能にし、また広帯域までタンジェンシャルチルト補正が可能になるため、良好な信号特性を得ることが可能となる。
【0052】
次に、請求項12の発明に係る光ディスクドライブの実施形態について説明する。この実施形態は、上述した請求項11の光ピックアップ装置を、光ディスクドライブに搭載したものである。この光ディスクドライブは、小型で薄型な光ピックアップ装置を搭載したことで、光ディスクドライブを小型薄型化することが可能となる。
【0053】
本発明は、高密度、高容量の光ディスクを情報記録媒体とした情報の記録または再生装置の分野に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明が適用されるDVDの書き込み可能型ピックアップの概略図である。
【図2】請求項1および2の発明に係る対物レンズチルト補正装置の実施形態をボビン部とベース部に分解して示した斜視図である。
【図3】図2の対物レンズチルト補正装置を組立てた斜視図および対物レンズ部の縦断面図である。
【図4】請求項3および4の発明に係る対物レンズチルト補正装置の実施形態の対物レンズとボビンの一部を示す斜視図および縦断面図である。
【図5】請求項6および請求項7の発明に係る対物レンズチルト補正装置の実施形態の対物レンズとボビンの一部を示す斜視図および縦断面図である。
【図6】請求項6および請求項7の発明に係る対物レンズチルト補正装置の実施形態の対物レンズとボビンの一部を示す斜視図である。
【図7】請求項8の発明に係る対物レンズチルト補正装置の実施形態の対物レンズ部分を示す斜視図および分解図である。
【図8】請求項8の発明に係る対物レンズチルト補正装置の他の実施形態を示す縦断面図である。
【図9】請求項9の発明に係る対物レンズチルト補正装置の実施形態の対物レンズ部分を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1 対物レンズ
2 対物レンズホルダー
3 タンジェンシャルチルト用板バネ
4 ボビン
5 タンジェンシャルチルトコイル
6 チルトマグネット
7 フォーカシングコイル
8 トラッキングコイル
9 ワイヤースプリング
10 ラジアルチルトコイル
11 タンジェンシャルチルト用ワイヤー
12 矢印
13 タンジェンシャルチルト方向
14 半田付け用凹部穴
15 スリット
16 マグネット
17 フロントヨーク
23 銅箔パターン
24 端部
25 板バネ
26 ワイヤー
31 LD
32 対物レンズ
33 PBS(偏光ビームスプリッタ)
34 1/4波長板
35 光ディスク
36 集光レンズ
37 光検出器
38 再生信号処理系
40 内側弾性連結部材
41 対物レンズホルダー
42 ジンバル
43 外側弾性連結部材
44 ボビン
45 対物レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビン内で対物レンズを保持する対物レンズホルダーと、該対物レンズホルダーのトラッキング方向両端において対物レンズホルダーと前記ボビンとを連結する1対の弾性連結部材とを備え、前記対物レンズホルダーはトラッキング方向の回転軸を中心にしてチルト可能に支持されたことを特徴とする対物レンズチルト補正装置。
【請求項2】
請求項1に記載の対物レンズチルト補正装置において、
前記弾性連結部材は板バネにより構成され、該板バネの延長面内に対物レンズの光軸を含むことを特徴とする対物レンズチルト補正装置。
【請求項3】
請求項1に記載の対物レンズチルト補正装置において、
前記弾性連結部材はワイヤーにより構成されたことを特徴とする対物レンズチルト補正装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の対物レンズチルト補正装置において、
前記弾性連結部材はその中心軸の延長線が前記対物レンズの主点近傍を通過することを特徴とする対物レンズチルト補正装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の対物レンズチルト補正装置において、
前記対物レンズホルダー外周に巻回付設されたコイルと、該コイルと対向するボビン側の位置に付設されたマグネットを備え、該マグネットの前記コイルに対する配置方向は対物レンズ駆動装置のタンジェンシャル方向と略一致することを特徴とする対物レンズチルト補正装置。
【請求項6】
請求項5に記載の対物レンズチルト補正装置において、
前記弾性連結部材は導電性を有する材質として、弾性連結部材を介して前記コイルへ給電することを特徴とする対物レンズチルト補正装置。
【請求項7】
請求項6に記載の対物レンズチルト補正装置において、
前記弾性連結部材が接続される位置の前記対物レンズホルダーに凹部を設け、該凹部内に前記弾性連結部材を露出させ、前記凹部内で前記コイルの端部を前記弾性連結部材に半田付けしたことを特徴とする対物レンズチルト補正装置。
【請求項8】
ボビン内に保持される対物レンズの外周に巻回付設されたコイルと、前記対物レンズのトラッキング方向両端に刻設された1対のスリットと、該スリットに一端が嵌着され他端がボビンに接続された1対の弾性連結部材とを備え、前記対物レンズはトラッキング方向の回転軸を中心にしてチルト可能に支持されたことを特徴とする対物レンズチルト補正装置。
【請求項9】
ボビン内に保持される対物レンズのレンズホルダーの外側に配置されたジンバルと、前記レンズホルダーと前記ジンバルをタンジェンシャル方向両端で連結してレンズホルダーをタンジェンシャル方向の回転軸を中心にしてチルト可能に支持する1対の内側弾性連結部材と、前記ジンバルとボビンをジンバルのトラッキング方向両端で連結してジンバルをトラッキング方向の回転軸を中心にしてチルト可能に支持する1対の外側弾性連結部材とを備えたことを特徴とする対物レンズチルト補正装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の対物レンズチルト補正装置を搭載したことを特徴とする対物レンズ駆動装置。
【請求項11】
請求項10に記載の対物レンズ駆動装置を搭載したことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項12】
請求項11に記載の光ピックアップ装置を搭載したことを特徴とする光ディスクドライブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−228281(P2006−228281A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37752(P2005−37752)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】