説明

対物レンズ駆動装置

【課題】ディスクの種別や状態に関わらず、その盤面に対してレーザ光を直角に照射させ得るようにする。
【解決手段】対物レンズ4a,4bを保持するレンズホルダ4と、レンズホルダ4をフォーカシング方向Fcに移動させるためのフォーカシングコイル71を含むフォーカシング駆動部と、レンズホルダ4をトラッキング方向Trに移動させるためのトラッキングコイル72を含むトラッキング駆動部と、タンジェンシャル方向Taでレンズホルダ4と向かい合う位置に設けられた固定台2と、固定台2に装着された弾性変形可能な弾性板6と、各一端部がレンズホルダ4の側面部に固定されると共に他の各一端部が弾性板6に固定された複数の線状弾性材3と、固定台2に対向してレンズホルダ4の一端面に固定された永久磁石45と、永久磁石45に近接して固定台2に取り付けられた補助コイル5とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクや光磁気ディスクなどの円盤状情報記録媒体(以下、ディスクとする)に対してレーザ光を集束して照射するための対物レンズを含む光ピックアップに係わり、特にディスクの盤面に対する対物レンズの光軸の傾きを好適に修正できるようにした対物レンズ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクに対する情報の記録、あるいはディスクに記録された情報の再生、消去を行う手段として、レーザ光を射出するレーザ光源やそのレーザ光をディスクの盤面(情報記録面)に照射するための対物レンズを備えた光ピックアップが用いられている。
【0003】
ここに、ディスクは情報の記録再生時において回転されるため、ディスクの面振れや偏心により、対物レンズを透してディスクの盤面に照射されるレーザ光の焦点位置が対物レンズの光軸方向(フォーカシング方向)やディスクの半径方向(トラッキング方向)にずれてしまうことがある。従って、光ピックアップには、対物レンズをフォーカシング方向とトラッキング方向とに移動させることのできる対物レンズ駆動装置が設けられている。
【0004】
従来の対物レンズ駆動装置は、対物レンズ、対物レンズを保持するレンズホルダ、レンズホルダの両側面に一端部が固定される複数の線状弾性材、及び線状弾性材の他の各一端が固定される固定台を具備し、上記レンズホルダが線状弾性材によりフォーカシング方向とトラッキング方向とに移動可能に支持(片持ち支持)される構成とされている。尚、上記固定台が固定される固定ベースには、レンズホルダをフォーカシング方向とトラッキング方向とに移動させるに必要な磁束を発生する駆動磁石が設けられ、上記レンズホルダには、その駆動磁石に対応してフォーカシング方向に移動する駆動力を発生するための電流が流されるフォーカシングコイルと、トラッキング方向に移動する駆動力を発生するための電流が流されるトラッキングコイルとが設けられる。
【0005】
そして、その種の対物レンズ駆動装置によれば、フォーカシングコイル及びトラッキングコイルの駆動により、対物レンズをレンズホルダと共にフォーカシング方向及びトラッキング方向に移動させることができる。
【0006】
しかし、対物レンズ駆動装置を構成する上記部品の組付精度などにより、対物レンズの光軸がディスクの盤面に対してその半径方向に傾斜するラジアルチルト、あるいは対物レンズの光軸がディスクの接線方向(フォーカシング方向及びトラッキング方向に直交するタンジェンシャル方向)に傾斜するタンジェンシャルチルトを生じ、検出すべきディスクからの反射光量が低下するために正常な記録再生が困難になるという問題があった。
【0007】
そこで、特許文献1では、対物レンズの傾きを防止するべく、線状弾性材(棒状弾性支持部材)に対応する弾性固定部を有する弾性基板を固定台(固定部材)に固定し、その各弾性固定部に線状弾性材の各一端部を固定すると共に、各弾性固定部の剛性をその長さ寸法により調整するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−30873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、対物レンズ駆動装置は極小型な装置であるから、特許文献1のように弾性基板の各弾性固定部の剛性をその長さ寸法により調整することは容易ではない。
【0010】
又、近年では、青色レーザなどの短波長レーザによる記録再生方式に関係し、ディスクの種別に応じて照射するレーザ光を使い分けるべく2つの対物レンズをレンズホルダで保持する場合があるところ、特許文献1のように一方の対物レンズを対象に調整を行なっても、レンズホルダに対して双方の対物レンズが平行な光軸となる状態に精度よく組み付けられていなければ、ラジアルチルトやタンジェンシャルチルトを発生してしまう。
【0011】
更に、ラジアルチルトやタンジェンシャルチルトは、部品の組付精度に限らず、ディスクの支持態様や変形したディスクが原因で発生するので、特許文献1のように弾性固定部の剛性を調整してチルト補正を行うようにしても、ディスクが変形していたり回転軸線に対して傾いて装着されたりした場合、ラジアルチルトやタンジェンシャルチルトの発生を防止できない。
【0012】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的はディスクの種別や状態に関わらず、その盤面に対してレーザ光を直角に照射させ得るようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するため、
ディスクDにレーザ光を照射する対物レンズ4a,4bと、
対物レンズ4a,4bを保持するレンズホルダ4と、
レンズホルダ4を対物レンズ4a,4bの光軸方向に相当するフォーカシング方向Fcに移動させるためのフォーカシングコイル71を含むフォーカシング駆動部と、
レンズホルダ4をディスクDの半径方向に相当するトラッキング方向Trに移動させるためのトラッキングコイル72を含むトラッキング駆動部と、
フォーカシング方向Fc及びトラッキング方向Trに直交するタンジェンシャル方向Taでレンズホルダ4と向かい合う位置に設けられた固定台2と、
固定台2に装着された弾性変形可能な弾性板6と、
レンズホルダ4をトラッキング方向Trから挟んで各一端部がレンズホルダ4の側面部に固定されると共に他の各一端部が固定台2を貫通して弾性板6に固定された複数の線状弾性材3と、
固定台2に対向してレンズホルダ4の一端面に固定された永久磁石45と、
永久磁石45に近接して固定台2に取り付けられ、永久磁石45と協同してレンズホルダ4にトラッキング方向Trに沿う軸回りのモーメントを作用せしめる補助コイル5と、
を有することを特徴とする対物レンズ駆動装置を提供する。
【0014】
又、上記のような対物レンズ駆動装置において、対物レンズ4a,4bが2つ並んで配置されていることを特徴とする。
【0015】
又、上記のような対物レンズ駆動装置において、フォーカシングコイル71がトラッキング方向Trに2つ並んで配置されていることを特徴とする。
【0016】
更に、フォーカシングコイル71、トラッキングコイル72、及び補助コイル5を個別に駆動可能な制御部8を備えていることを特徴とする。
【0017】
加えて、固定台2は、振動吸収材Vを充填した一対の制振室21aを有し、その制振室21aに線状弾性材3が貫通されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る対物レンズ駆動装置によれば、一端部を弾性板に固定した線状弾性材により弾性支持されるレンズホルダの一端面に、フォーカシング駆動部およびトラッキング駆動部を構成する第1磁石とは別の第2磁石を固定し、弾性板が装着される固定台には第2磁石と協同してレンズホルダにトラッキング方向に沿う軸回りのモーメントを作用せしめる補助コイルを取り付けていることから、対物レンズ駆動装置を構成する部品の組付不良やディスクの変形により生ずるタンジェンシャルチルトを補正することが可能となる。
【0019】
又、2つの対物レンズを備えていることから、波長が異なる2種類のレーザ光に対応して種々のディスクを対象に情報の記録再生が行えるほか、本発明によれば少なくとも一方の対物レンズがディスクの回転軸線に対してタンジェンシャル方向に傾いた状態に組み付けられている場合でもタンジェンシャルチルトが補正されるので、対物レンズの組み付けが高い精度を求められずして容易に行えるようになる。
【0020】
加えて、レンズホルダをフォーカシング方向に移動させるためのフォーカシングコイルがトラッキング方向に2つ並んで配置されることから、2つのフォーカシングコイルを個別に駆動することにより、対物レンズ駆動装置を構成する部品の組付不良やディスクの変形により生ずるラジアルチルトも補正することが可能となる。
【0021】
又、フォーカシングコイル、トラッキングコイル、及び補助コイルを個別に駆動可能な制御部を備えていることから、ラジアルチルトやタンジェンシャルチルトを自動的に補正して、ディスクに対する情報の記録再生を適正に行うことができる。
【0022】
更に、固定台には線状弾性材を貫通せしめる制振室が設けられると共に、その制振室に振動吸収材が充填されていることから、線状弾性材やレンズホルダの振動によるフォーカシングエラーやトラッキングエラーを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る対物レンズ駆動装置の一実施形態を示す斜視図
【図2】同装置の側面図
【図3】同装置の平面図
【図4】フォーカシング駆動部とトラッキング駆動部の構成を示す説明図
【図5】固定台の横断面図
【図6】弾性板の形態を示す正面図
【図7】本発明に係る対物レンズ駆動装置を含む光ピックアップの構成例を示す概略図
【図8】対物レンズがディスクの回転軸線に対し傾いて保持された状態を示す説明図
【図9】レンズホルダがトラッキング方向に傾けられた状態を示す説明図
【図10】レンズホルダをタンジェンシャル方向に回動させる説明図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づき本発明に係る対物レンズ駆動装置の一実施形態を説明する。先ず、係る対物レンズ駆動装置の基本的構成を図1〜図3により説明すれば、1は土台となる固定ベース、2は固定ベース1上に固定される固定台である。固定台2は、電気絶縁性を有する合成樹脂などから成形された構造物であり、その長手方向両端部には中空凸部21が形成されている。中空凸部21内は制振室21aとされ、その制振室21aには振動吸収材Vが充填されている。
【0025】
振動吸収材Vは、後述する線状弾性材3の弾性変形を許容しながら、その線状弾性材3を介して後述するレンズホルダ4が振動するのを抑制するものであり、本例ではこれに粘弾性を有するジェルが用いられている。
【0026】
又、中空凸部21の間に形成される凹部22には後述する補助コイル5が取り付けられている。更に、固定台2には、凹部22が形成される面とは反対の背面側において中央凸部23が形成されており、その中央凸部23に弾性板6が固定されている。
【0027】
弾性板6は、電気絶縁性を有する柔軟な樹脂基板をガラスエポキシ樹脂などで被覆して弾性を付与した厚さ0.2〜0.3mmの薄板であり、その両端側は固定台2に対して固定されない弾性変形可能な板バネ部61とされ、その板バネ部61に複数の線状弾性材3が接続されている。
【0028】
線状弾性材3は、弾性を有する金属の細線であって、図示例ではレンズホルダ4の両側に3本ずつ平行に設けられており、その各一端部はレンズホルダ4の側面部に固定され、他の各一端部は固定台2の制振室21aを貫通して弾性板6の板バネ部61に固定されている。そして、その線状弾性材3により、レンズホルダ4がトラッキング方向Tr(図示せぬディスクの半径方向に相当)から挟み込まれて弾性支持されている。
【0029】
レンズホルダ4は、線状弾性材3と弾性板6の弾性変形により、トラッキング方向Tr、及び対物レンズ4a,4bの光軸方向に相当するフォーカシング方向Fcへの移動が可能とされているほか、トラッキング方向Trへの揺動(トラッキング方向Trとフォーカシング方向Fcに直交するタンジェンシャル方向Taに沿う軸回りのローリング)、ならびにタンジェンシャル方向Taへの揺動(トラッキング方向Trに沿う軸回りのピッチング)が許容されている。尚、タンジェンシャル方向Taは、図示せぬディスクの接線方向に相当する。
【0030】
又、レンズホルダ4は、フォーカシング方向Fcに開通する開口部41aを有する筒状胴部41と、筒状胴部41の上端縁より固定台2とは反対側に張り出すフランジ部42とを一体に形成した樹脂成型物であり、そのフランジ部42に2つの対物レンズ4a,4bがトラッキング方向Trに並んで組み付けられている。対物レンズ4a,4bは、波長が異なるレーザ光に対応して並設されており、例えばその一方が赤色レーザ用、他方が青色レーザ用とされ、それぞれディスクの盤面にレーザ光を照射するべくフォーカシング方向Fcに光軸が向くようにして保持されている。
【0031】
又、図1および図3に示されるように、筒状胴部41の開口部41aには、フォーカシングコイル71とトラッキングコイル72が設けられている。それらフォーカシングコイル71とトラッキングコイル72は、それぞれ支持部材43(図3のみに示される)を介してレンズホルダ4に保持されており、このうちフォーカシングコイル71はトラッキングコイル72を挟んでトラッキング方向Trに2つ横並びに配置されている。尚、フォーカシングコイル71とトラッキングコイル72は、それぞれレンズホルダ4の側面に固定された基板44に導電接続され、その基板44に線状弾性材3の各一端部が半田付けされており、線状弾性材3から基板44を介してフォーカシングコイル71とトラッキングコイル72への通電が行われるようにしてある。要するに、線状弾性材3はレンズホルダ4を弾性支持する支持手段のほか、フォーカシングコイル71とトラッキングコイル72に給電するための給電手段を兼ねている。
【0032】
一方、固定ベース1には、開口部41a内に位置する一対のヨーク11が相対向して固設されている。一対のヨーク11は、レンズホルダ4の変位を阻害せぬようレンズホルダ4との間に所要の空隙を有して設けられており、互いの対向面にはフォーカシングコイル71とトラッキングコイル72を介してタンジェンシャル方向Taで対向する永久磁石73が吸着されている。尚、フォーカシングコイル71と永久磁石73は、レンズホルダ4をフォーカシング方向Fcに移動させるためのフォーカシング駆動部を構成し、トラッキングコイル72と永久磁石73は、レンズホルダ4をトラッキング方向Trに移動させるためのトラッキング駆動部を構成している。
【0033】
又、図1〜図3から明らかなように、レンズホルダ4には、固定台2に臨む一端面において補助コイル5に近接対向する永久磁石45が固定されている。ここに、補助コイル5と永久磁石45は、レンズホルダ4に対しトラッキング方向Trに沿う軸回りのモーメントを作用せしめるためのものであり、このうち永久磁石45はレンズホルダ4をタンジェンシャル方向Taに回動させるに必要な磁束を発生し、補助コイル5には永久磁石45の磁束に作用してレンズホルダ4にタンジェンシャル方向Taの回動力を与えるための電流が流される。尚、永久磁石45は、タンジェンシャル方向Taでのレンズホルダ4の重量バランスを調整するバランスウェイトとしても機能する。
【0034】
次に、トラッキング駆動部とフォーカシング駆動部について説明すると、図4から明らかなように、永久磁石73はフォーカシング方向Fcとトラッキング方向Trとに着磁された4極着磁型であり、その両方向においてN極とS極が隣り合っている。そして、フォーカシングコイル71は、トラッキングコイル72を挟んでトラッキング方向Trの両側に2つ並んで配置されており、その2つがそれぞれフォーカシング方向Fcで隣り合う異なる磁極に跨って配置されている。これによれば、フォーカシングコイル71に対して図4の時計回りに電流を流すことにより、可動側のフォーカシングコイル71(これが固定されたレンズホルダ)を図4の下方に移動させることができ、逆にフォーカシングコイル71に対して図4の反時計回りに電流を流せば、可動側のフォーカシングコイル71を図4の上方に移動させることができる。
【0035】
一方、トラッキングコイル72は、永久磁石73の中央部にあってフォーカシング方向Fcに2つ並んで配置されており、その2つがそれぞれトラッキング方向Trで隣り合う異なる磁極に跨って配置されている。これによれば、トラッキングコイル72に対して図4の時計回りに電流を流すことにより、可動側のトラッキングコイル72を図4の右方に移動させることができ、逆にトラッキングコイルに対して図4の反時計回りに電流を流せば、可動側のトラッキングコイル72を図4の左方に移動させることができる。
【0036】
次に、固定台2とこれに装着される弾性板6の構造について説明を補足すれば、図5から明らかなように、固定台2の中央部には凹部22から中央凸部23に通じる貫通孔24が穿設されている。貫通孔24は補助コイル5に接続する図示せぬリード線を通すためのもので、そのリード線の端部は弾性板6に接続されている。
【0037】
図6において、ハッチングにより明示される弾性板6は、線状弾性材3に対応する6つの板バネ部61を有し、その各板バネ部61がスリット62により区分されている。又、弾性板6には、線状弾性材3の各一端部を固定する接点63と、上記リード線の一端を固定する接点64、ならびにその各接点63,64に導電接続する導電パターン65が設けられている。導電パターン65の一端は弾性板6に取り付けたコネクタ66に導電接続し、そのコネクタ66にはフレキシブル配線板81が接続されている。そして、そのフレキシブル配線板81から導電パターン65、上記線状弾性材3、および上記リード線を介して、上記フォーカシングコイル71、トラッキングコイル72、及び補助コイル5に給電し、それらコイル71,72,5を個別に駆動させ得るようにしてある。
【0038】
図7において、8は上記各コイル71,72,5を個別に駆動制御する制御部である。制御部8は、レンズホルダ4や弾性板6を含む固定台2と共に対物レンズ駆動装置を構成するもので、この制御部8と弾性板6(正確には弾性板6に形成した導電パターン65)が上記フレキシブル配線板81により導電接続されている。又、図7において、9は光ピックアップ(ピックアップユニット)であり、この光ピックアップ9は、上記のような対物レンズ駆動装置のほか、レーザ光を射出するレーザ光源91(例えば、半導体レーザ)、レーザ光源91から射出されたレーザ光を平行光とするコリメートレンズ92、コリメートレンズ92を透過したレーザ光が入射されるビームスプリッタ93、ビームスプリッタ93を透過したレーザ光を対物レンズ4a,4bに向けて反射する反射鏡94、および集光レンズ95やフォトダイオードなどの受光素子96を有し、その受光素子96と制御部8がフレキシブル配線板82などにより導電接続される構成とされている。
【0039】
尚、図7にはレーザ光源91などが一つのみ示されるが、本例の実施形態では2つの対物レンズ4a,4bを備えるところ、レーザ光源91なども波長が異なるレーザ光に対応して2つ設けられる。そして、係る光ピックアップ9によれば、対物レンズ4a,4bを通してディスクDの盤面にレーザ光を集束して照射すると共に、ディスクDからの反射光を反射鏡94、ビームスプリッタ93、および集光レンズ95などを介して受光素子96に照射させ、その受光素子96から出力される受光信号に基づいて制御部8が上記各コイル71,72,5を駆動制御するのであり、これによりフォーカシングサーボ制御(フォーカシング方向での焦点合わせ)やトラッキングサーボ制御(トラッキング方向での光軸合わせ)のほか、ディスクDの盤面に対する対物レンズ4a,4bの光軸の傾き(ラジアルチルト、タンジェンシャルチルト)を補正することが可能とされている。
【0040】
ここで、本発明に係る対物レンズ駆動装置の作用について説明する。先ず、ディスクの盤面に対して対物レンズ4a,4bの光軸がトラッキング方向に傾くラジアルチルトについて言及すると、ラジアルチルトの発生要因としては、対物レンズ駆動装置を構成する部品の組付不良と、ディスクの変形が挙げられる。このうち、部品の組付不良として、レンズホルダ4の重心位置がトラッキング方向Trに対して偏っている場合や、対物レンズ4a,4bがレンズホルダ4に対して不適切に組み付けられている場合がある。例えば、図8(a)のように一方の対物レンズ4aがディスクDの回転軸線Rに対してトラッキング方向Trに傾いた状態に組み付けられた場合であって、その対物レンズ4aを通してディスクDにレーザ光が照射される場合には、ラジアルチルトを発生して情報の適正な記録再生が行われなく危険性がある。一方、部品の組み付けが適切に行われている場合であっても、ディスクDの反りなどによりその盤面がトラッキング方向Trに傾斜していればラジアルチルトを発生する。このような場合には、上記制御部8により2つのフォーカシングコイル71,71が個別に駆動制御され、これによりレンズホルダ4が図9のようにトラッキング方向Trに回動されてラジアルチルトが補正されることとなる。
【0041】
次に、ディスクの盤面に対し対物レンズ4a,4bの光軸がタンジェンシャル方向に傾くタンジェンシャルチルトについて言及すると、タンジェンシャルチルトも大別して対物レンズ駆動装置を構成する部品の組付不良、ならびにディスクの変形によって発生する。このうち、部品の組付不良としては、レンズホルダ4の重心位置がタンジェンシャル方向Taに対して偏っている場合や、対物レンズ4a,4bがレンズホルダ4に対して不適切に組み付けられている場合がある。例えば、図8(b)のように一方の対物レンズ4bがディスクDの回転軸線Rに対してタンジェンシャル方向Taに傾いた状態に組み付けられている場合であって、その対物レンズ4bを通してディスクDにレーザ光が照射される場合には、タンジェンシャルチルトを発生して情報の適正な記録再生が行われなく危険性がある。一方、部品の組み付けが適切に行われている場合であっても、ディスクDの反りなどによりその盤面がタンジェンシャル方向Taに傾斜していればタンジェンシャルチルトを発生する。このような場合には、上記制御部8によりフォーカシングコイル71や補助コイル5が個別に駆動制御され、これによりレンズホルダ4が図10のようにタンジェンシャル方向Taに回動されてタンジェンシャルチルトが補正されることとなる。
【0042】
尚、フォーカシング駆動部(フォーカシングコイル71及び永久磁石73)によるレンズホルダ4に対する作用力は、線状弾性材3および弾性板6のスチフネスに対して極めて大きく、このためレンズホルダ4の重量バランスがタンジェンシャル方向Taで適切に調整されていれば、フォーカシングコイル71の駆動時において、図10(a)のようにレンズホルダ4がフォーカシング駆動部による作用力の方向(フォーカシング方向Fc)に対して平行に移動するが、タンジェンシャル方向Taでのレンズホルダ4の重量バランスがとれていないと、フォーカシングコイル71の駆動時においてレンズホルダ4が図10(b)のようにタンジェンシャル方向Taに傾くようになる。
【0043】
このため、本発明では永久磁石45をバランスウェイトとして用いながら、これに対応する補助コイル5を駆動することにより、レンズホルダ4にトラッキング方向に沿う軸回りのモーメントを作用せしめてタンジェンシャルチルトを補正するようにしている。
【0044】
又、図10(b)のように、ディスクDの反りなどによってその盤面が回転軸線Rに対してタンジェンシャル方向Taに傾いている場合には、フォーカシングコイル71のみ、あるいはフォーカシングコイル71と補助コイル5を駆動して、対物レンズ4a,4bの光軸OがディスクDの盤面に対して直交するようタンジェンシャル方向Taへのレンズホルダ4の回動(ピッチング動作)が行なわれる。
【0045】
このように、本発明に係る対物レンズ駆動装置によれば、その構成部品が不適切に組み付けられている場合と、ディスクが変形している場合のいずれにおいても、ラジアルチルトやタンジェンシャルチルトを自動的に補正して、情報の記録再生を適正に行うことができる。
【0046】
以上、本発明に係る対物レンズ駆動装置の一実施形態について説明したが、対物レンズは2つ備えられることに限らず、その一つがレンズホルダ4に保持される構成でも良い。又、2つの対物レンズ4a,4bを備える場合でも、その配列方向は図示例のようなトラッキング方向Trに限らず、光軸に直交する方向(例えばタンジェンシャル方向Ta)であればよい。
【符号の説明】
【0047】
2 固定台
21a 制振室
3 線状弾性材
4 レンズホルダ
4a,4b 対物レンズ
45 永久磁石(第2磁石)
5 補助コイル
6 弾性板
71 フォーカシングコイル
72 トラッキングコイル
73 永久磁石(第1磁石)
8 制御部
Fc フォーカシング方向
Tr トラッキング方向
Ta タンジェンシャル方向
D ディスク
V 振動吸収材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクにレーザ光を照射する対物レンズと、
前記対物レンズを保持するレンズホルダと、
前記レンズホルダを前記対物レンズの光軸方向に相当するフォーカシング方向に移動させるためのフォーカシングコイルを含むフォーカシング駆動部と、
前記レンズホルダをディスクの半径方向に相当するトラッキング方向に移動させるためのトラッキングコイルを含むトラッキング駆動部と、
前記フォーカシング方向およびトラッキング方向に直交するタンジェンシャル方向で前記レンズホルダと向かい合う位置に設けられた固定台と、
前記固定台に装着された弾性変形可能な弾性板と、
前記レンズホルダをトラッキング方向から挟んで各一端部が前記レンズホルダに固定されると共に他の各一端部が前記固定台を貫通して前記弾性板に固定された複数の線状弾性材と、
前記固定台に対向して前記レンズホルダの一端面に固定された永久磁石と、
前記永久磁石に近接して前記固定台に取り付けられ、前記永久磁石と協同して前記レンズホルダにトラッキング方向に沿う軸回りのモーメントを作用せしめる補助コイルと、
を有することを特徴とする対物レンズ駆動装置。
【請求項2】
前記対物レンズが2つ並んで配置されていることを特徴とする請求項1記載の対物レンズ駆動装置。
【請求項3】
前記フォーカシングコイルがトラッキング方向に2つ並んで配置されていることを特徴とする請求項1、又は2記載の対物レンズ駆動装置。
【請求項4】
前記フォーカシングコイル、前記トラッキングコイル、及び前記補助コイルを個別に駆動可能な制御部を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の対物レンズ駆動装置。
【請求項5】
前記固定台は、振動吸収材を充填した一対の制振室を有し、その制振室に前記線状弾性材が貫通されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の対物レンズ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−129197(P2011−129197A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286101(P2009−286101)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(308036402)JVC・ケンウッド・ホールディングス株式会社 (1,152)
【Fターム(参考)】