説明

対象物の製造方法

【課題】構造特性と負荷環境とに耐えることができる層構造を提供する。
【解決手段】対象物の製造方法は、対象物の数学モデルは対象物外形状の分割した複数の有限要素に関連するフィールド{f}及びポテンシャル{x}の各数値を特定して生成し、各有限要素の素材の各物性値の対称性が特定され、関係式{f}=[k]{x}及び上記対称性に基づいて素材の物性マトリックス[k]を算出し、素材の物性値の係数を、素材の物性マトリックス[k]から有限要素毎に抽出し、抽出された素材物性値の係数と既知の素材物性値の係数とを一致するように比較し、製造設備を制御するための各製造パラメータを一致した素材物性値の各係数に基づいて決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、製造品に関するものであり、特に、望まれているアプリケーション又はその使用のために最適化された応答特性を有している製造対象の装置又は方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歴史的に、技術者によって実行される分析は、設計された製品の現実世界での期待している性能をシミュレートして、確かめる試みにおける長いプロセスでの1ステップである。外形状、素材物性値、負荷及び分析タイプなどの情報を含んでいる全モデルが、解析プログラムに入力され、変位のような基本的な結果が計算される。これらの値は、このモデルのどんな臨界的な領域に対しても、等方性、直交異方性、異方性かどうかにせよ、素材(material)の予め決められた制限値と比較される。
【0003】
どのような個々の限界値を超えた領域のモデルは、実際的な安全性のマージンを確保するために、構成を変更する必要がある。しかし、多くの場合、安全性の高いマージンを有する領域が、最適化されずに、そのまま変更されずに残されている。素材、又は、外形上の成分の変化の繰り返しは、安全性のマージンを減少させる。この工程は、長くて、それほどコスト効率がよくない。
【0004】
立体的(三次元的)に制御された製造(Volumetrically Controlled Manufacturing)(VCM)は、製造のコスト、時間及び安全性のマージンを減少させる助けとすることができる。VCMは、特許文献1及び特許文献2に説明されており、ここでその内容を具体化する。VCMは、THA(人間のヒップ全体形成学(Total Hip Anthroplasty))として知られている整形外科的な工程に応用することができる。この工程は、歩行動作を行う患者の生理学的な通常の能力を持続するために、ヒップの基部とともに患者のヒップを置き換えることができる。
【0005】
在来の分析は、高ストレスの一対の領域を明らかにしている。上記高ストレスの一対の領域は、骨の周囲に配置された等方性の素材が、同じ骨の構造への成長への失敗して患者の痛みを引き起こし、THAの次の手術を促す。素材と、その配置とにより起こる問題は、その置き換えた部材の硬さよりはるかに硬いことにより生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,796,617号(1998年8月18日発行)
【特許文献2】米国特許第5,594,651号(1997年1月14日発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
複合素材の使用により、硬さを減少させる試みが行われた。しかしながら、これらの試みは、層間剥離を引き起こし、続いて、マトリクス/ファイバの乖離を生じさせる、層間のせんだん力のために失敗した。これらの失敗は、骨特有の構造特性と負荷環境とに耐えることができる層構造を考え出すことができないために起こった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ヒップの基部などの設計された製品のための最適な素材の物性値を決定するための効率的な分析ツールを提供するために、在来の分析からの異なったアプローチを行う必要がある。VCM工程は、この新しいアプローチを指向できるものである。在来の分析法を使用した、製品における変位、圧力及び張力の決定に代えて、現実世界のテストを通した、変位が記録されて分析に入力される。現在、素材の物性値は未知であり、そして、解析の対象である。
【0009】
より詳細な記述と同様に、以下の素材の各物性値は、繰り返し分析処理で解決することができる。分析は指定された許容度の中で指定された、個々の各要素の変位値をすべて表すまで続ける。このように、繰り返しプロセスは、収束するまで続く、そして、その特定の環境と荷重状態のために全体のモデルを最適化する。上記繰り返しプロセスは、複合素材の使用に対して非常に好適である。なぜなら、複合素材は、複合素材と比べて自由度(tailorability)が低い等方性の金属と違って、所望の素材の各物性値を作り出す、多くの異なった方法で作ることができるからである。
【0010】
この最適化は、上記に記載した工程から生じる解答のタイプを制御するために拡張することもできる。例えば、このシステムは、所定の対称性を有する対象物を作製するための、有限体積要素(“ボクセルズ(voxels)”)にて解析することに限定できる。図示によれば、このシステムは、等方性又は横断的に等方性であるボクセルズにて解析することに限定できる。解析にそのような対象性を課することは、ボクセルの全体に渡って、物性値(例えば、ポアソン比、ヤング率)の項が同じである、又は、いくらかの対称性を有している、それぞれのボクセルを定義することにより生産性を向上できる。
【0011】
ある実施形態において、システムは、異方性ボクセルズ、直交異方性ボクセルズ、及び、等方性ボクセルズのための解析できるように構成することができる。製造するために用いられる実際の解析は、所望の対象物を製造するための製造設備を制御することの比較的な容易さに基づいて選択されてもよい。
【0012】
上述したように、所望の素材物性値を創り出す多くの異なる方法により作ることができる理由により、複合素材は、VCMに用いられる。複合素材は、個々の素材が巨視的なレベルで分離できる、2又はそれ以上の素材が組み合わさったものである。複合素材を構成する一例としては、ファイバに対してぬれ性を有する、適切なマトリクス内に三次元的にファイバを積層したものがある。以下により詳細な記載のように、ファイバが組み込まれたマトリクスは、いくらかの“不純物”(上記マトリクスと異なる添加物)を含むことでモディファイできる。THAの場合、例えば、この不純物は、生物学的な物質、骨、骨粉、補助因子、生物学的な細胞、生理活性物質、薬剤、抗生物質、放射性物質等である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明にかかる、対象物の製造方法を示すフローチャートである。
【図2A】図2Aは、一つの足の位置でのヒップの大腿骨頭に印加された力を示す概念図である。
【図2B】図2Bは、一つの足の椅子からの立ち上がり(rising)のときのヒップの大腿骨頭に印加された力を示す概念図である。
【図3A】図3Aは、生体内にてヒップに印加された力と結果として生じたストレス位置を示す概念図である。
【図3B】図3Bは、生体内にてヒップに印加された力と結果として生じたストレス位置の数値を示す表である。
【図4】図4は、人工ヒップの有限要素モデルを示す概念図である。
【図5A】図5Aは、素材物性値データベースを示す表である。
【図5B】図5Bは、素材物性値データベースを説明する表である。
【図6】図6は、本発明を実行するのに称される各機能部(モジュール)のブロック図である。
【図7】図7は、図6の各機能部の一つ又はそれ以上を実行するのに用いられる全体のブロック図である。
【図8】図8は、製造装置を制御するための制御コンピュータの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明は、1999年、8月23日にファイルされた暫定的な発明No.60/149.896.からの優先権主張であり、この内容は参照として本明細書に組み込まれている。
【0015】
本発明にかかる製造の対象物又はその一部のための製造方法を図1を参照して記載する。以下の記載から明らかなように、あらゆる対象物のために、ここで参照された対象物又は一部分(以下、“対象物”)は、構造的な相違又は対象物の素材の各物性値のために制御される製造パラメータの工程又は技術によって製造される。本発明にかかる対象物の製造のための製造方法は、以下の関係式の解析に基づいている。
【0016】
{f}=[k]{x}
ここで、{f}は、意図された用途における、対象物に印加されるフィールドを表している。{x}は、印加されたフィールドと一致したポテンシャルを表している。そして、[k]は、対象物の素材の各物性値を表している。
【0017】
本発明の製造方法は、製造パラメータが変動する製造技術に利用される。例えば、編み機を使った編み工程は、ファイバ複合素材の対象物を製造するために使用される。発見されたファイバ複合素材は、自動車のボディーパネル、飛行機部品、腰骨の張出部に移植される部材、ゴルフクラブのシャフト、テニスラケット、自転車フレーム、及び釣り竿のような構成部分のための構成材料として使用が増加している。これらの複合素材は、例えば、重量を軽くすると同時に他の機能的な特性を改善した金属材料と同等又はそれ以上の高強度を示す。
【0018】
編み機のベッド(braider bed)及び/又はマンドレルの速さ、ファイバの厚さ、ファイバに対して印加される張力のようなパラメータは、ファイバ複合素材の硬い特性の変動に対して制御される。例えば、複合素材の編みを制御するために設計された編み機のベッドは、スケルトン(Skelton)による米国特許出願、第4,909,127号に示されている。3次元織物もまた、スト(Suto)による米国特許出願、第4,975,262号で議論されている。
【0019】
複合素材を、また、Carverらによる米国特許出願、第5,023,800号に記載されているこれらのファイバとぬれ性を有する、適切なマトリクス内に上記ファイバを三次元的に積層することによって構成してもよい。
【0020】
エポキシ樹脂マトリクス内にグラスファイバが組み込まれたファイバグラスは、複合素材系に広く用いられている。現在利用可能なものとしては、炭素ファイバ、ホウ素ファイバ、改良グラスファイバ、酸化アルミニウムファイバ、異なった材質の無機ウィスカのような、新規な無機材料、及び、アラミドや長鎖ポリエチレンのようなある程度の有機ファイバがある。これらのファイバ又はウィスカは、繊維、織物、マット、又は、熱硬化エポキシ、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミド、及び、ビスマレイミド、又は、熱可塑性ポリアミドイミン、ポリエーテルスルフォン(polyether sulfones)、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulfides)及びその他類似の重合体材料のような適当な樹脂が組み込まれる。
【0021】
複合対象物は、対象物を相補的な形にする外部モールド、又は、複合対象物を構成する内部マンドレル型モールドのどちらか一方の成形技術を利用して形成される。このモールドは、ボンディングツールと呼ばれる複合対象物の形成及び硬化のために利用され、硬化は、圧力及び温度を厳密に制御して行われる。
【0022】
本発明の一形態において、いくらかの“不純物”は、ファイバが組み込まれたマトリクスの中に差し込まれる。THAの場合、例えば、生物学的な物質、骨、骨粉、補助因子、生物学的な細胞、生理活性物質、薬剤、抗生物質、放射性物質等である。VCMは、要素毎のマトリクスの製造を提供することができ、外形状要素が、マトリクス素材中に、上述した不純物をいくらかの割合で含ませることができる。
【0023】
実際の割合は、表面からの深さにより変動する(換言すれば、表面に近づくにつれて、濃度は増加する)。例えば、THA中に生物学的な材料を組み込むことにより、移植される部材自身に対する生物学的な成長を刺激することができる。THAに薬剤又は抗生物質が組み込まれる場合には、薬剤が周辺組織に広がる。
【0024】
旋盤又は製粉機械の欠損部修復システムを用いた欠損部修復工程は金属対象物を製造することができる。欠損部修復は、タービンブレード機械加工のような応用において材料の連続的除去を示す。部分表面、運転表面、及び、チェック表面のようなパラメータは、製粉機械の工具経路の変動により制御されて、そして欠損部修復される。
【0025】
部分表面は、工具経路が乗っている端の表面を示す。運転表面は、工具経路が乗る端に対する表面を示している。チェック表面は、現在の(current)工具経路の動作の停止における表面を示す。欠損部修復システムの詳細については、ベッドワースら(Bedworth)によるマグロウヒル社(1991)統合されたコンピュータのデザイン及び製造(Computer-Integrated Design and Manufacturing)に示されている。
【0026】
勿論、本発明は、編み、成形、又は、欠損部修復を用いて形成される対象物に限定されるものではなく、上記記載は、本発明の製造方法を利用した製造技術の単なる例示である。特に限定されるものではないが、例として、他の工程及び技術は、ポリマー製造工程、結晶化工程、セラミック製造工程等を含む。
【0027】
ステップ21において、フィールド{f}がその用途の対象物に印加されるのと同様に、これらのフィールドに対する所望のポテンシャル又は応答{x}が決定される。例えば、対象物に、機械的なフォースフィールド、電流のフィールド、磁気的なフィールド、熱流のフィールド及び/又は流速のフィールドが印加される。他のフィールド{f}は、これら初期のフィールドを用いて引き出される。例えば、音響フィールドは、機械的なフォースフィールドと流速のフィールドとの組み合わせによって引き出される。電磁流体力学のフィールドは、流速のフィールドと磁気的なフィールドとの組み合わせによって引き出される。上記のフィールドのそれぞれは、一致するポテンシャルを有する。これらのポテンシャルは、変位する機械的なフォースフィールドと一致する。電圧は、電流のフィールドと一致する。磁気ベクトルポテンシャルは、磁気的なフィールドと一致する。温度は、熱流のフィールドと一致する。そして、液体ポテンシャルは流速のフィールドと一致する。
【0028】
記載したように、ステップ21において定義されたフィールドは、その用途における対象物に対して印加された一つ又は多くのフィールドを表す。例えば、人工ヒップの場合、人体に移植された人工ヒップに対して機械的なフォースフィールドが印加される。例えば、図2A及び図2B中の矢印は、一つの足の位置(例えば、歩いている間)と椅子からの立ち上がり(rising)とでの大腿骨頭に印加された力(方向及び大きさ)を表している。
【0029】
この力の配分及び向きは、例えば、Hodgeらによる“Contact Pressures in the Human Hip Joint Measured In Vivo”Proc.Natl.Acid.Sci 米国83、2879-2883(1986)で報告されている生体内の研究に基づいている。一つの足の位置から向きが変化して中腰(midrise)になったとき、これらのフォースのそれぞれの結果として生じたフォース全体は、約2000ニュートン(N)である。
【0030】
他の例としては、熱伝導要素の場合、熱流のフィールドが、その用途における対象物に印加される。勿論、対象物には、ステップ21で定義された、1以上のフィールド及びこれらのフィールドのそれぞれが印加される。例えば、蓄電器には、その用途において、電流のフィールド、磁気的なフィールド及び機械的なフォースフィールドが印加される。
【0031】
ステップ21において定義されたポテンシャル{x}は、定義されたフィールド又はフィールド{f}がそこへ印加されたとき、製造者が、対象物に応答することを要求する方法により、定義される。人工ヒップの場合、定義されたポテンシャルは、人工ヒップにおいて、所望の変位した値(圧力に対して数学的に相関のある)となる。
【0032】
人工ヒップが、歩行及び椅子から立ち上がる間である図2A及び図2Bに示すように、機械的なフォースを受ける。仮に、製造者が、生体内のヒップと同様の方法でフォースに対する人工ヒップの応答を要求する場合、人工ヒップ中の“所望の変位”は、例えば、歩行及び椅子から立ち上がる間、生体内でのヒップに発生する変位と一致することが好ましい。図3Aは、指示された2000Nのフォースが生体内でのヒップに印加されている状態を説明している。そして、図3Bは、印加されたフォースに対する応答を、図3A中におけるラベルされたA,B,C,D,E,Fの点において発生した変位を設置後に測定した表である。
【0033】
従って、人工ヒップの製造に対する製造要求は、図3A中に示されたフォースに対して応答しており、同じ方法により、生体内のヒップにおいても図3A中に示されているフォースに対するフォース{f}を定義できる。そして、図3Bの表中の変位設定フォースに対する変位{x}も定義される。
【0034】
同様に、熱伝導要素の場合でも、熱流のフィールドが印加され、定義された熱流のフィールドが印加されるとき、熱伝導要素の様々なポテンシャルにおける所望の温度が定義された応答に対応させる。
【0035】
伝導体の場合、電流のフィールド、磁気的なフィールド及び機械的なフォースフィールドが印加され、定義された機械的なフォースフィールドが印加されるとき、伝導体の様々な位置における所望の変位が定義された応答に対応させ、定義された磁気的なフィールドが印加されるとき、伝導体の様々な位置における所望の変位が定義された応答と対応し、そして、定義された電流のフィールドが印加されるとき、伝導体の様々な位置における所望の変位が定義された応答と対応させる。
【0036】
ステップ22では、コンピュータによる設計支援(computer aided design)を用いて、製造物の形状モデリングを行なう。形状モデリングは、コンピュータ上の形状(computational geometry)を用いて物体形状を規定(define)する技術である。形状モデリングの目的は、物体の表示(object representation)であり、この表示により、製造や、有限要素分析のようなその他の応用のために、物体を完全に規定することが命じられる(mandate)。すなわち、ユーザが物体の形態的な特徴(geometric specification)を入力したり操作したりすることができる設計や、該形状を用いて、コンピュータグラフィック出力装置上で、現実的な物体像に着色するレンダリングである。例えば、物体又はその一部の最初の形状モデルは、設計エンジニアの経験に基づいてもよいし、物体又はその一部の意図された使用によって指示(dictated)されてもよい。
【0037】
例えば、人工ヒップ(prosthetic hip)の最初の形状モデルは、生体内でのヒップに基づいている。当然、この最初の形状モデルは、具体的な身長及び/又は体重を有する個人に適合するようにその後変更されてもよい。また(again)、ゴルフクラブのシャフトにおける初期の設計形状は公知であり、すなわち、所定の長さ及び直径を有する円柱である。また、この初期の設計形状を修正して、ある身長を有するゴルファーのためのシャフトを提供してもよいし、例えばクラブヘッド付近で直径がより狭くなっているように、直径が異なるシャフトを提供してもよい。
【0038】
この形状モデリングを実行する適当なCADソフトウエアパッケージとしては、I−DEAS、CATIA、及びANVIL−5000が挙げられる。これらのソフトウエアパッケージは、例えば、Sun MicrosystemsやSilicon Graphicsから入手可能であるような、UNIX(登録商標)ベースのワークステーション上で稼働され得る。当然、コンピュータの選択は、要求される計算パワーによって決定されるので、本発明がこの点に限定されるものではない。
【0039】
前記コンピュータによる設計支援ソフトウエアパッケージを使用することにより、物体又はその一部の形状モデルがユーザによって規定され、かつ素早く修正されることができ、その結果、形状データが生成される。形状データは、コンピュータによる製造支援(computer aided manufacturing)の処理(step)に役立つフォーマット、及び/又は、有限要素法の処理に役立つフォーマットに変換されることができる。
【0040】
これらの処理は、以下でより詳細に論ずる。注目されることは、最初の形状モデルが、所望の形状を有する物体を走査することによって生成された画像データであり得ることである。例えば、人工ヒップの場合における最初の形状モデルは、例えば、Siemens Somatom DR3やGE 9800 CT スキャナなどを用いて、死体のヒップをレントゲン撮影することにより生成することができる。この画像データは、CADソフトウエアパッケージが使用できるフォーマットに変換されてもよいし、あるいは、下記の有限要素ソフトウエアパッケージ(例えば、PATRANフォーマット)が使用できるフォーマットに変換されてもよい。
【0041】
ステップ23では、物体の有限要素モデルが、有限要素法を用いて生成される。有限要素法は、不規則な形を有する(shape)物体を、より小さい有限の規則的な要素に分割することができるという理論に基づいている。このとき、各要素は、別々に処理されることができ、集団の(aggregate)効果は、物体における有限の要素全ての効果の合計である。有限要素のモデルは、ステップ22において展開された(develop)形状モデルに作用する(operate)適切なソフトウエアパッケージを用いてユーザによって生成される。
【0042】
したがって、有限要素ソフトウエアパッケージは、通常、ステップ21において展開された物体の形状を含むデータファイルにアクセスする。SDRC. Inc.からのI-DEASのような、幾つかの統合ソフトウエアパッケージは、形状モデリングや有限要素分析のためのモジュールにリンクしており、その結果、ユーザは、特に有限要素分析用の形状を再規定する(redefine)必要はない。有限要素モデルを生成する他の適当なソフトウエアパッケージとしては、NASTRAN、ABAQUS、及びANSYSが挙げられる。
【0043】
したがって、有限要素モデルは、物体の形状モデルを複数の要素に分割し、次に、要素の境界にノード(node)を規定することによって生成される。人工ヒップ用の有限要素モデルの例を図4に示す。種々の要素形(element shapes)を物体の有限要素モデルに使用してもよい。一般に、選択される要素の数及び種類は、フィールド(field)の種類及び物体の形状に基づく。
【0044】
一般に、上記で特定される種々の有限要素ソフトウエアパッケージには、具体的な形状を有する領域をユーザの指定する精度でモデリングすることを可能にする要素及び要素クラスタのライブラリが含まれる。したがって、要素サイズが所定値である要素や、クラスタサイズが所定値である種々の要素の要素クラスタを利用してもよい。要素クラスタを利用する場合には、有限要素モデルの全体にわたって該クラスタを繰り返してもよい。クラスタは、様々な形の要素を含んでもよい。例えば、製造されるべき物体に剪(せん)断力が働く場合には、剪断力をモデリングするのに最適な形を有する要素を利用し、かつ適切に調整(orient)してもよい。
【0045】
要素を互いにグルーブ化するときには、例えば、同様の形状を有し、かつ/又は、剪断力の加わる領域において、要素がクラスタを規定し、該クラスタが繰り返されてもよい。さらに、物体の重要な耐性部(portion of critical tolerance)をモデリングするために、様々なサイズの要素を使用してもよい。耐性が重要ではない場合には、いわゆるスーパ要素(super-element)を使用してもよい。
【0046】
通常、本発明の手法は、後述するような反復過程であるから、例えば、最初の反復において、物体の単数又は複数の部分ではノードの値がさほど変化しないことが確認される場合には、計算の目的(computational purposes)のため、続く2回目の反復では、これらの領域に単数又は複数のスーパ要素を含む物体の有限要素モデルを生成して、次の計算を簡略化してもよい。
【0047】
有限要素モデルは、離散化された物体のノードにおける上記フィールド{f}及びポテンシャル{x}の値及び/又は方向を指定することによって遂行される。さらに、任意の適当な境界条件が加えられる。
【0048】
ステップ24では、有限要素ソフトウエアパッケージは、素材の物性マトリックス[k]について、関係式{f}=[k]{x}を用いて解くためにプログラミングされる。すなわち、以下の通りである。
【0049】
[k]{x}={f}
[k]{x}{x}−1={x}−1{f}
[k]={x}−1{f}
フィールド{f}及びポテンシャル{x}は、ステップ21において規定されているから、素材の物性マトリックス[k]を計算することができる。{f}が力学的な力のフィールドであり、{x}が変位(displacement)であるときには、[k]は硬い(stiffness)マトリックスである。{f}が熱の流れ(flux)のフィールドであり、{x}が温度であるときには、[k]は熱伝導率である。
{f}が磁気フィールドであり、{x}が磁気ベクトルポテンシャルであるときには、[k]は磁気抵抗率である。{f}が電流フィールドであり、{x}が電圧であるときには、[k]は電気伝導率である。
【0050】
ステップ21において説明したように、フィールド及びポテンシャルを規定すると、ステップ24におけるマトリックス[k]を計算することにより、特定の印加(application)、すなわち特定の力の印加に対して所望の応答(response)を行う物体を製造業者が物体を製造できるための最適なあるいはほぼ最適な素材の物性マトリックスが決定される。
【0051】
数式に対する解を生成するソフトウエアに、オプティマイザ(optimizer)と、標準非線形有限要素解析(FEA)コードと、オプティマイザ及びFEAコード間のデータの流れを制御するコントローラとが含まれてもよい。
【0052】
FEAコードによって解析が実行されると直ちに、コントローラは、データをオプティマイザに送信し、オプティマイザは、該解析から得られたデータと、所望のモデルパラメータ及び耐性とを比較する。計算結果の何れもが所望の耐性範囲内ではない場合には、選択されたパラメータがオプティマイザによって調整され、それから、再調整されたデータがコントローラによってFEAコードに返送されて、次の解析が実行される。この処理は、前記モデルにおけるユーザ指定のパラメータの全てが耐性範囲内となって、収束が確定するまで続けられる。
【0053】
最適化の方法は、有限要素モデルにおける選択ノードの変位が入力ターゲット変位にできる限り近くなるように、素材の物性を逆算するために提供されてもよい。そのような問題点は、インバース(inverse)問題と呼ばれている。ターゲット変位は、常に実験から得られる。次に、有限要素(FE)モデルを与えられると、計算(解析)変位が実験変位にできる限り近くなるように、素材の物性を組織的に調整できる方法が必要である。
【0054】
非線形計画法(nonlinear programming)(NLP)技術は、前記問題点を解決するために使用されてもよい。以下に示すような、最適の設計問題を考える。
【0055】
≦x≦x に従って、
f(x)=(D−D,j=1,…,n
(x)=s≦s,k=1,…,m を最小化する
(x,i=1,…,n) を求める。
【0056】
ここで、
i番目の設計変数(例えば、弾性率、ポアソン比など)
FEモデルから計算される変位
(実験的に得られる)ターゲット変位
FEモデルから計算される応力の不変数(invariant)(例えば、ミーゼス(von Mises)
許容(最大)応力値
設計変数の下限
設計変数の上限
最適な設計の問題に対する最良の解は、(もし存在するならば、)全ての束縛条件g(x)を満足する一方で、目的関数f(x)がゼロであるときである。一般に、(a)入力データにおけるノイズ、(b)FE解析の限界、及び(c)数値最適化技法の限界により、この理論的にゼロである目的関数を取得することはできない。しかしながら、前記の方法により、この理論的な解に近い解を取ることができる。
【0057】
実現可能性指示方法(Feasible Direction Method)(周知のNLP技法)を、オプティマイザソフトウエアシステムとして、実行されても使用されてもよい。非線形FEコンピュータプログラムは、有限要素モデルを解くために用いられる。コントローラは、問題の入力データを読みこみ、オプティマイザ及び非線形FEAコンピュータプログラムを管理するために使用される。
【0058】
また、オプティマイザは、上述の処理から生じる解の種類を制御するために使用されてもよい。例えば、システムには、有限体積要素(「ボクセル(voxels)」)が或る対称性を有する解を見いだす条件を付けてもよい。例えば、システムには、ボクセルが等方的であり(isotropic)、又は横断方向に(transversely)等方的である解を見いだす条件を付けてもよい。例えば、骨は横方向に等方的である。解におけるそのような対称性を加えることにより、物性(例えばポアソン比、ヤング率)に関して、ボクセルの全体にわたって同じであるか又は或る対称性を有するように、各ボクセルを規定することによって、製造可能性が改良される。ある実施例では、システムは、等方的なボクセル、横方向に等方的なボクセル、及び非等方的なボクセルに関する解を生成するように修正されてもよい。製造に関して使用される実際の解は、製造装置を制御して所望の物体を生産することが比較的容易である点に基づいて選択されてもよい。
【0059】
ステップ25では、有限要素ソフトウエアパッケージを用いて、有限要素モデルの各要素に関する素材の物性係数が、素材の物性マトリックス[k]から抽出される。特に、ステップ24にて計算された素材の物性マトリックス[k]は、全体的な(global)又は集合的な(assembled)物性マトリックス[k]である。有限要素モデルにおける特定の要素に関する素材の物性係数は、ブール位置決め関数(boolean locating function)又は他の位置決め関数を用いて、前記全体的又は集合的なマトリックスから抽出されてもよい。例えば、図4を参照すると、要素601に関する素材の物性係数が抽出され、以下、要素602等に関する素材の物性係数が続く。この手順が前記モデルの要素ごとに繰り返されて、小体積の増分におけるヒップの義肢の素材の物性を示すデータシーケンスが生成される。
【0060】
ステップ26では、抽出された素材の物性係数は、素材の物性のデータベースにおける公知の素材の物性係数と比較される。図5Aは、素材データベース700の一構成を示している。素材の物性のデータベース700は、ヤング率(E)及びポアソン比(σ)のような硬い物性値により複数の素材M1-1・M1-2…M1-nを特徴づけている。例えば、素材M1-1は、ヤング率が7.2×1010Paであり、ポアソン比が0.32であるアルミニウムでもよい。素材M1-2は、ヤング率が6.9×1010Paであり、ポアソン比が0.35であるアルミニウムでもよい。素材M1-nは、ヤング率が8.8×1010Paであり、ポアソン比が0.30である鋳鉄でもよい。当然ながら、本発明は、これらの具体的な素材に限定されることはない。これらの素材M1-1・M1-2…M1-nのそれぞれに関連するものは、それぞれ、対応する硬い物性を有する素材を生産する製造プロセスと該プロセスにおける(温度、圧力などのような)特定のパラメータとである。同様に、図5Bに関して示されるように、素材の物性のデータベース701は、電気伝導率(σ’)の値により複数の素材M2-1・M2-2…M2-nを特徴づけている。また、これらの素材M2-1・M2-2…M2-nのそれぞれに関連するものは、それぞれ、対応する電気伝導率を有する素材を生産する製造プロセスと該プロセスにおける特定のパラメータとである。同様の素材データベースを用いて、熱伝導率又は磁気抵抗率により素材を特徴づけて、製造方法と、各素材に関連する製造パラメータとを特定してもよい。
【0061】
したがって、素材の物性のデータベースは、素材の物性係数と、それらに対応する製造プロセスと、製造プロセスの制御パラメータとの保管所(archives)である。そのようなデータベースは、企業(工業製造業者)、公的機関(行政機関)、及び研究機関によって生成され、かつ維持されている。例えば、金属、プラスチック、或いは複合物のような素材が特定の製造プロセスを用いて生成されるとき、その物性は、ASTM試験方法のような標準的な試験方法により測定されてもよい。これらの物性が測定されたとき、これらの物性を有する素材を生成するために使用される温度、圧力などの製造パラメータの集合は、将来、再生されるかもしれない素材に関連づけられる。
【0062】
抽出された、素材の物性値の各係数と素材物性値のデータベースとの間でのステップ26にて示す比較は、データベースの素材が、抽出された、素材の物性値の各係数に対応する物性値と一致又は最も近いことを決定するために使用される。それゆえ、図4によれば、上記比較により、結果として各製造パラメータの第一のセット、第二のセット、等が得られる。
【0063】
上記第一の各製造パラメータは、所望する硬度の物性を有する要素601に対応する人工ヒップ部分を製造するためのものである。第二の各製造パラメータは、要素602に対応する人工ヒップ部分を製造するためのものである。
【0064】
上述した比較を、例えば、各要素(例えば図4の要素601、602等)毎の、抽出された素材の物性値を格納するためのファクトベースを有する知識ベースと、素材データベースからの素材物性値とを用いて実行してもよく、また、要素毎の、抽出された素材の物性値と素材データベースからの素材物性値とを比較し、一致させるための各ルールを含むルールベースを用いて実行してもよい。
【0065】
一致のレベル(例えば、完全な一致や、その近傍での一致)は、個々の応用例、とりわけ、許容誤差がどの程度許容されるかに関連している。製造される対象物が、重要で厳密な部品である場合、極めて近い又は完全な一致が望ましい。
【0066】
製造される対象物が、それほど重要で厳密な部品でない場合、一致の判断基準はゆるめてもよい。コストや、使用可能な製造設備等の他の判断基準により、一致のレベルを決定してもよい。それゆえ、上記のステップ26を実行することによって、対象物の個々の全て部分に対する製造プロセス制御の各パラメータの各セットが決定される。
【0067】
ステップ27では、決定された、製造プロセス制御の各パラメータの各セットは、対象物の製造に必要な製造プロセスの各制御信号を定義するために、オーダー化、又は、順序付けられる。製造するときの制御各パラメータは、対象物を製造するために用いられる製造設備の数値制御のために用いられてもよい。数値制御は、製造設備の自動制御における、コード化された数値情報の使用に関するものである。
【0068】
マシンツール類に関しては、上記数値制御は、カッティングツールの動作や、ローティングツールにより形成される部分の動作に関するものであってもよい。機械により作製された金属部分の、軽量な代替物を形成するための、複合素材を積み重ねるプロセスは、数値制御により実行されてもよい。対象物を製造するための、必要な外形状や動作は、そのときに、一般的な数値制御用の言語を用いて、製造制御データに展開するためにプログラムされてもよい。
【0069】
そのような言語の一つは、APT−AC数値制御プロセッサプログラム(IBM社(Armonk, N.Y.)より入手可能)である。APT−ACプログラムは、実行される数値制御の各オペレーションを記述したステーツメントを入力ユーザ指向言語として受け入れるコンピュータアプリケーションプログラムである。
【0070】
後処理プロセッサが、さらに、個々の製造プロセスに情報を合わせるために製造制御データを処理してもよい。ステップ28においては、後処理されたデータを、対象物の製造を制御するための供給されたデータを使用する、コンピュータ化された製造装置に適用してもよい。コンピュータ化された製造装置に供給されたデータは、対象物を作製するために上記製造装置を制御する。
【0071】
上記対象物は、望ましくは、個々に算出された素材の物性値を有している。例えば、複合素材を製造するために編み機(braider)を用いて、上記製造が実行される場合である。上記複合素材を編み上げる間、コンピュータがマシンの種々な部分のスピードを制御することによって、編み物の堅さが制御される。
【0072】
編み物の堅さが堅いほど、硬度が高くなる(低フレキシビリティ)。例えば、人工ヒップの場合、高い硬度の部分と、低い硬度の部分との双方の領域が要求される。外形状のモデル、及び抽出された素材の物性値の各係数を使用し、製造プロセス、具体的には編み物の堅さを、高い硬度の領域(例えば、図4の要素601にて示される領域)及び低い硬度の領域(例えば、図4の要素603にて示される領域)とを形成するように制御できる。
【0073】
本発明に係る製造方法に基づき製造プロセスを適切に制御することによって、人工ヒップを、人のヒップが印加された負荷に対応すると想定される方法とほぼ同一の方法にて、印加された負荷に応答するように製造できる。そのような外科的な補綴(義肢等)を、各個体に関する個々の応答性質に合わせて開発できる。
【0074】
上述した製造方法は、典型的には、反復プロセスとして実行される。例えば、最初の反復の結果は、編み機を用いて作際されたファイバ複合素材を、意図する適用例において、抽出された素材の物性値の各係数に最も良く一致して設けることをたいてい示すことができる。
【0075】
それゆえ、続く第二の反復では、有限要素モデルを、コンピュータ制御の編み機を用いて、編み方を制御可能な、最小体積を考慮して変形(modify)できる。好ましくは、有限要素モデルの各要素は、個々に、対象物を製造するために製造技術を用いて、制御可能に製造できる最小体積以上になっている。
【0076】
例えば、編み機を用いた編みのプロセスに関しては、制御可能に編める最小体積は、ほぼ1mm である。言い換えると、1mmのオーダーで制御可能に変化する素材や構成部材を有する対象物を生産するための編みパターン制御可能に変化させることが可能である。もちろん、取り扱える最小体積は、製造プロセスや選択された技術に応じて変化し、それに加えて、使用可能な製造設備に依存することが多い。それゆえ、従来の編み機によって編める最小体積は、1mmであるが、全ての編み機がそのような動作をできる必要はない。したがって、そのようなケースでは、取り扱える最小体積は、使用する編み機の能力により決定される。製造技術の進歩や、より小さな最小体積が制御可能に製造できるようになったとき、本発明の製造方法は、新たなサイズや異なる形状の要素にて実用化されてもよいのは言うまでもない。
【0077】
本発明の方法の計算は、例えば、金属製、プラスチック製、及びセラミック製などの複合素材以外の、その他の製造工程のタイプに対して有効である。本発明の方法は、温度及び電流の応答を要する上記製造工程のタイプに基づく対象物に対して有効である。すなわち、本発明の方法は、立体的に正確に制御された製造が望まれる、コンピュータに制御されたどのような製造工程にでも利用できる。
【0078】
本発明の方法は、対象物の有効性が強く望まれる場合に、特に有用である。伝統的な製造において、対象物の形状の内部構造上の性質の制御があったとしても、その制御が多くなければ、重要性は、対象物の形状の正確な製造にある。本発明の製造方法によれば、素材のマトリックスは未知数であり、繰返しの工程は、形状の固定が維持される間、素材の物性マトリックスを最適化するように実行してもよい。
【0079】
従って、本発明によれば、どのような工程の入力パラメータであっても、素材の物性マトリックスが正確に決定された対象物を創造するために正確に変換することができる。工程は、よりよいものにするために続くので、上述した製造方法は、サイズが縮小してもよく制御可能なように製造された、最小の成長性の容積にも適用できる。
【0080】
図6は、本発明の製造方法を実施するために利用してもよい、様々な機能的な部材(モジュール)を示す。コンピュータ援用のデザイン(CAD)部801は、幾何学的なモデルの定義を生み出すための、三次元グラフィックのソフトウェアプログラムである。
【0081】
このような、外形状のモデルの定義は、三次元のコーディネートシステムにおいて、正確に対象物のデザインを位置付けするためのコーディネート点を含む。例えば、X、Y、及びZといったコーディネート点、ならびに、そこに必要な適切な位置決めベクトルは、グラフィックソフトウェアの既製プログラムの使用により与えることができる。
【0082】
三次元グラフィックソフトウェアの既製プログラムは、上記のグラフィックプログラムのデータベース中における特定の点を定義するために、適切なデータ構造を利用する。上記のグラフィックプログラム中のアルゴリズムの利用によって、対象物中のその他の点は、定義することができ、また、生み出すことができる。好ましくは、上記のグラフィックプログラムは、適切なベクトルとマトリックスルーチンを利用する。これによって、対象物は、コンピュータメモリの範囲内で、回転、又は、その他の方法で動かすことができ、さらに、測定できる。
【0083】
これによって、どれか一点についてのコーディネートは、他の点を明らかにする。上述のように、CADソフトウェアの既製プログラムは、I−DEAS、CATIA、及びANVIL−5000を含んでいることが好ましい。
【0084】
有限要素部802は、上記のグラフィックプログラムのデータベース中に蓄積されたデータから、対象物の有限要素モデルを生み出すために使われる。有限要素部802は、コンピュータ援用のデザイン部801を使って、各要素の範囲内で仮定される概算した関数から、デザインされた対象物を複数個の要素と、発現するひとつ又はそれ以上の未知のフィールド変数とに分けるためのソフトウェアの既製プログラムである。有限要素部802は、上述のような各要素について、最適な素材の物性を予測するようにプログラムされている。有限要素部802に対するソフトウェアの既製プログラムとしては、NASTRAN、ABAQUS、及びANSYSの何れかであることが好ましい。
【0085】
素材のデータベース部803は、あるアーカイブ(記録保管所)、又は素材の物性のそれらの製造工程、及び製造工程制御パラメータに対応する係数のアーカイブである。従って、上記アーカイブは、製造工程に対する素材の物性値、及び、素材を創造するために使われる製造工程パラメータとを互いに関連づけている。
【0086】
比較部804は、有限要素部802を使って判定した素材の物性値を決定するために、素材データベース部803中の素材データと比較する。(1)素材は、有限要素部802を使って判定した上記の素材の物性値と一致する、又は、ほぼ一致する素材の物性値を持つかどうか、(2)上記の製造工程及び製造工程パラメータは、この一致した素材と関連するかどうか。比較部804は、例えば、有限要素部802からの一連の素材の物性値に関した実際のベースを有する情報ベースと、素材データベース部803からの素材の物性値と、有限要素部802からの上記素材の物性値の比較及び一致するかについてのルールを含むルールベースと、素材データベース部803からの上記素材の物性値とによって実施してもよい。
【0087】
製造部805は、CAD部801を使って定義した形状を有する、ある対象物の製造に関した製造マシンに、製造の指示を与えるための比較部804から得た製造パラメータを換算し順番に配列する。上記対象物の製造は、特定の素材に対して適したマシンによって実施してもよい。
【0088】
例えば、金属は、表面形状(空間の表面点)を再生することによって製造してもよく、複合素材は、構成を作り上げること、及びファイバの選択に基づいて製造してもよく、また、ポリマーは、化学物質の選択、温度、圧力によって製造してもよい。製造におけるコンピュータの援助は、ひとつの対象物から次へ、又は単一の対象物の様々な領域の範囲内で、製造工程の変更をマシンが迅速に調節することを可能にする。
【0089】
上述の部は、単独、又は統合したパッケージとして備えていてもよい。上記VCMシステム及びプロセスは、エンジニアリングエフォートを援助するためのコンピュータ処理に依存している。上記コンピュータ処理は、デザイン、分析、一部分又はアセンブリの製造のすべてに使われる。
【0090】
デザインと分析の段階の間に、上記システムは、好ましくは、例えば、素材の物性値におけるストレス、及び変化のための疲労などの機械的な物性値の感度の視覚化が可能なように形成される。これは、素材の物性値を繰り返し解析し、その後、機械的な物性値を解析し、さらに、それぞれの繰り返しに対しての実際の時間と近い、両方の結果を表示することによって達成される。
【0091】
次に、それは、要素又は要素のグループ毎に最適な素材の物性値を判定するために使われる。製造の間に、上記システムは、例えば、ファイバと複合素材の選択、ファイバの容積、ファイバの方向性などの素材の性質を判定するために使われる。
【0092】
前処理と後処理の間に、上記システムは、好ましくは、異なる色で各要素を表した三次元の有限要素モデルを表示する観察窓を与える。このモデルは、ワイヤーフレーム、隠れ線、又は立体の何れかで表示される。上記有限要素法の分析結果を立体的に与える能力も有する。上記の結果、例えば、各要素に対するヤング率又は、ポワソン比は、上記ソフトウェアに読み込まれる。次に、上記システムは、各3−D要素の全体にわたり結果に手を加え、望まれる素材の物性値の値域を表すスペクトラムから色値を割り当てる。次に、このデータは、有限要素モデルの網目のある形態に与えられる。透明度は、内側の要素が見えるように上記要素に割り当てられる。
【0093】
上記システムは、CAD/CAM及びFEAツール、例えば、ABAQUS、NASTRAN、I−DEAS、ならびに、標準のファイルフォーマットと同じユニグラフィクス、例えば、IGESなどのファイルフォーマットから換算する能力を有する。異なるパッケージから変換された多くのファイルは、ACSIIテキストファイルである。変換機は、ユーザから単独に統合したパッケージによって、異なるテキストベースのファイルを他のものから別のものに変換できる。
【0094】
解析段階中には、システムの制御により、FEAプロセスと最適化プロセスとの間でデータが交換される。各反復からの計算結果は、後処理プロセッサに送信され、ほぼリアルタイムで調べられ(viewed)てもよい。交換されているデータは、ASCIIフォーマットであり、ソフトウエアコードは、テキストファイルの分析(パーズ)を行ない、ファイルのフォーマットを、個々のパッケージによって必要とされるフォームに変換する(translate)。
【0095】
システムは、ユーザがデータを操作できるGUIを含んでいることが望ましい。また、システムは、各反復からの計算結果をビューワにリアルタイムで出力する能力を有することが望ましい。この特徴は、「最終結果」のシミュレーションと共に「中間の解」のシミュレーションも考慮している。
【0096】
また、システムは、複合素材の試験データを記憶するデータベースを含んでいる。SQLベースのデータベースは、或る部分に関する最適な素材の物性値を自動検索することを考慮したカスタマイズされたクエリを含んでおり、最適な製造の方法及びパラメータを推奨する。オブジェクト指向のアプローチにより、メモリを動的に割り付け、大量のデータのスワッピングを考慮しているデータ構造が生成される。この方法により、スケーラビリティが確保されると共に、高レベルのパフォーマンスが維持される。
【0097】
図7は、上述のコンピュータ実施プロセスを実行するのに有用なコンピュータ装置を示している。該プロセスにおける種々のものは、同じコンピュータで実行されてもよいし、異なるコンピュータで実行されてもよい。
【0098】
システム1201は、処理装置(CPU)1203及びシステムメモリ1205を含んでいる。システムバス1207は、システムメモリ1205を含むシステムの種々の構成要素(component)を処理装置1203に結合している。システムバス1207は、メモリバスやメモリコントローラ、周辺バス、及びローカルバスを含む種々のバス構造の何れでもよいし、多様なバスアーキテクチャの何れを用いてもよい。
【0099】
システムメモリ1205は、リードオンリーメモリ(ROM)1252及びランダムアクセスメモリ(RAM)1254を含んでいる。基本入出力システム(BIOS)1256は、例えばスタートアップ中に、コンピュータシステム1201内の要素間で情報を転送することを支援する基本ルーチンを含んでおり、ROM1252に記憶されている。さらに、システム1201は、種々のドライブと、関連するコンピュータ読取り可能な媒体を含んでいる。
【0100】
ハードディスクドライブ1209は、(一般には固定された)磁気ハードディスク1211に対する読出しと書込みとを行う。追加の(選択可能な)磁気ディスクドライブ1213は、着脱可能な「フロッピー(登録商標)」やその他の磁気ディスク1215に対する読出しと書込みを行う。
【0101】
光ディスクドライブ1217は、CDROMやその他の光媒体のような着脱可能な光ディスク1219に対して読出しを行ない、幾つかの形態では書込みも行なう。ハードディスクドライブ1209及び光ディスクドライブ1217は、それぞれ、ハードディスクドライブインターフェース1221及び光ディスクドライブインターフェース1225によりシステムバス1207に接続されている。
【0102】
ドライブと、ドライブに関連するコンピュータ読取り可能な媒体とによって、コンピュータシステム1201に関するコンピュータ読取り可能な命令、データ構造、プログラムモジュール、及びその他のデータを不揮発に記憶することが提供される。また、その他の形態では、コンピュータがアクセス可能なデータを記憶できるその他の種類のコンピュータ読取り可能な媒体(例えば、磁気カセット、フラッシュメモリカード、デジタルビデオディスク、ベルヌーイカートリッジ(Bernoulli cartridges)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)など)が使用されてもよい。
【0103】
多量のプログラムモジュールは、ハードディスク1211,移動磁気ディスク1215,光ディスク1219,及び/又はシステムメモリのROM1252及び/又はRAM1254に記憶されていてもよい。そのようなプログラムモジュールは、グラフィックスとサウンドAPIsを供給する操作システム、1つのもしくはそれ以上のアプリケーションプログラム、他のプログラムモジュールとプログラムデータとを含んでいてもよい。
【0104】
ユーザは、キーボード1227,ポインティングデバイス1229,マイクロホン,ジョイスティック,ゲームコントローラ,パラボラアンテナ,スキャナー,又は同様の入力装置を通じて、コンピュータシステム1201に入力してもよい。
【0105】
これらや他の入力装置は、システムバス1207と連結されているシリアルポートインターフェイス1231を通じて処理装置1203に接続されるが、ユニバーサルシリアルバスやファイヤーラインバスやパラレルポートのような他のインターフェイスで接続されていてもよい。モニター1233若しくは他の種類の表示装置もまた、ビデオアダプター1235のようなインターフェイスを介してシステムバス1207に接続される。
【0106】
システム1201もまた、インターネットのようなネットワーク1152を介して通信を確立する手段としてのモデム1154や他のネットワークインターフェイスを含んでいてもよい。内蔵であっても外づけであっても、モデム1154は、シリアルポートインターフェイスを介してシステムバス1207に接続されている。
【0107】
ネットワークインターフェイス1156もまた、システム1201を、ローカルエリアネットワーク1158(ワイドエリアネットワーク又は、他の通信手段もしくはダイアル呼び出し機構のような他の通信経路を介した通信)を介して、外部コンピュータ1150(他のシステム1201)と通信するように設けられていてもよい。システム1201は、一般的に、プリンタや他の標準的な周辺装置のような他の周辺出力装置を含む。
【0108】
1つの例として、ビデオアダプター1235は、Microsoft Direct X7.0もしくは他のバージョンのような標準3Dグラフィックスアプリケーションプログラマーインターフェイスに基づいて発せられた3Dグラフィックスコマンドに対応した高速3Dグラフィックスレンダリングを供給する3Dグラフィックスパイプラインのセットを含んでいてもよい。
【0109】
ステレオ拡声器1237のセットは、バス1207により供給される音声コマンドを基礎とした質の高い立体音響を発するために補助する内蔵ソフトウェア及びハードウェアを供給する従来型の「音声カード」のような音声発生インターフェイスを介して、システムバス1207と接続されていてもよい。
【0110】
図8は、コントロールコンピュータ950に使用する一般化されたコントロールコンピュータの構成を示す。コントロールコンピュータは、図6の製造モジュール805により発せられた製造指示と共に、ダウンロードされる。
【0111】
編み機(ブライダ)ベッドの速度、ファイバの張力、温度、圧力等は、デジタル形式(on/off,open/closed)もしくはアナログ形式(電圧)の製造機器のセンサ952から得られる。
【0112】
アナログ入力は、コントロールコンピュータ950のアナログ−デジタルコンバータ(A/D)953によって、デジタル表示に変換される。コントロールコンピュータ950は、ダウンロードされた製造指示に従った製造機器の設定に適応するためにアクチュエータ954に供給される発生音とセンサ952からの情報とを分析するためのプロセッサ960を含む。
【0113】
アナログ及びデジタル出力に加えて、パルス出力は、頻繁に機器及び他の設備と共に使用するステッピングモータを駆動するために供給されてもよい。もちろん、コントロールコンピュータ950の特質は、製造機器の利用に依存するだろう。表面の製造工程において有用なコントロールコンピュータの詳細は、例えば、上述したベッドワースのテキストにおいて見出される。
【0114】
上述したように、VCMは、構造全体に渡る素材の望ましい物性値・特徴をコントロールするための能力を供給する。本質的に、VCMは、従来からの複合素材の仕立て能力を高める。個々の層に対する軸方向の変更による、全体構造の長手方向及び横方向における制御特性の代わりに、VCMは、3方向全てにおいて、1mmの適合度の制御及び変化のための機械的,電磁気的,温度特性を与えてもよい。付け加えるなら、製造工程は、正確な3次元構造であり、2次元の層の積み重ねによって厚みは確立されない。それゆえ、層の間における割れ及び剪断は、デザインプロセスにおいてもはや主要な問題ではない。
【0115】
構造全体に渡る物性値のばらつきは、いくつかの方法(例えば、個々のレベルにてファイバ量の操作や、マトリクス量の制御や、調製されるときのファイバ/マトリクスのタイプの調整や、ファイバの方向の調整や、成型時の硬化の程度の調整)によって得られる。
【0116】
従来からの複合積層板と全く同様に、変化させたファイバ量により、物性値を変えることができる。VCMは、1つの領域におけるマトリックスの量、若しくはファイバの数のどちらか一方の変化により、構造内部における個々のファイバのレベルでのファイバ量を操作できる。ファイバは、ファイバ束が適切な位置に組み込まれるように上記束に付け加えられる、又は上記束からカットされる。
【0117】
代わりに、ファイバ束と共に配置されるマトリクス素材の量は、増加もしくは減少されてもよい。このマトリクスの制御は、2つの方法で達成される。最初の方法は、共に成形される2成分のファイバを含む。2成分のファイバは、マトリクス素材に覆われる。その被覆の厚みは、ファイバが成形されるときに制御され、それゆえ、極めて的確なファイバ量の制御が得られる。第二の方法は、共に編み込まれるファイバとマトリクスのストランド(ひも)を用いることである。ファイバの束を加える、又は減ずることにより、マトリクスストランドの量を制御できる。
【0118】
素材物性値をコントロールする他の方法として、その構造の組み立てを通して、ファイバ及び/又はマトリクスを選択的に変更してもよい。これは、同一構造内で、各ファイバの組み合わせを変更してもよい。ファイバ束の追加、及びファイバ束の減少は、素材におけるほぼ連続した遷移をもたらし、結果として見掛け上、素材物性値が連続的に変化する。例えば、VCMプロセスにより加工された構造物は、特有の機械的物性値を達成するために、カーボンファイバを必要としてもよい。しかしながら、その構造物の一端のみが、高張力負荷を受けていてもよい。
【0119】
従来の方法は、構造物の全体に高性能のカーボンプレプレグ材を使用してきた。しかしながら、VCMを用いて、構造物は、その構造物の全体に渡ってハイコストのカーボンファイバを使用して高性能に加工される一方、無負荷の端部の方向に向けて、ファイバの量が減少させている。
【0120】
したがって、負荷が印加される端部のみに高性能のカーボンファイバを用いることにより、より低コストにできる。その構造物の残部全体に渡って、高性能のカーボンファイバは、徐々に、同様の機械的物性値を有する低性能のカーボンファイバに置換される。従来の複合素材の製造方法では、コスト的に有利な態様における、そのような不連続ではない置換を形成しない。
【0121】
この方法の有用な他の例は、飛行機の複合素材の翼に見られる。その翼の外層は、損傷に対し耐性を有し、かつ層割れを起こさずに小さな衝突に抵抗するだけの能力がなければならない。翼の内部では、そのような同一の能力は必要とされない。それゆえ、例えば、上記翼は、衝撃を吸収するために、カーボンに対して高比率のケブラーを外層に有して加工されてもよい。
【0122】
VCM方法において不可欠な3次元的な強化材もまた、衝撃後の層割れを抑制するのに助けとなる。ケブラーは、作製される翼の内部ではカーボンに徐々に置換される。繰り返すと、本発明は、カーボン/ケブラーの組み合わせから翼全体を作製する従来の方法より、コスト的により有効にできる。
【0123】
従来の複合材の製造に用いられるVCMは、加工された構造物の内部で、ファイバの配向性を変化させることができる。VCMと異なる方法では、最適の素材物性値のために、ファイバの配向性が予め計算され、そして、ファイバは、結果的に極めて限りある量に加工される。なぜなら、VCM方法は、あらかじめファイバの正確な配向性を計算するので、ファイバの配向性は、基本的な0,90,+/−15,+/−60の各レイアップ法にて使用される従来の複合素材の積層板よりも正確であり、かつ繰り返し可能であろう。
【0124】
上記マトリクスの各物性値を合わせる他の方法は、上記マトリクスが重ね合わされるとき、上記マトリクスの硬化の程度を制御することである。これは、電子線硬化、マイクロ波硬化、及び/又は集光された赤外線エネルギーによる硬化といった技術を合わせて用いることを含む。
【0125】
一度、各素材、ファイバの容量、硬化方法が決定されると、VCMプロセスは幾つかの方法の一つにより構造物を製造できる。
【0126】
ある一つの方法は、迅速な試作技術(RP技術)のカスタム化を通すことである。現在、融合させた堆積モールディング(FDM)等のRP技術は、概念の証明部分を造るのみで、生産部分を造るためには用いられない。この理由から、この設備により使用される素材はワックスや非エンジニアリングプラスチックに限定される。
【0127】
ある変形では、試作モデルではなく生産部分を作製するために、迅速な試作の設備を、熱可塑性樹脂類と強化用のファイバ類とエポキシ類とその他とを積み重ねるために使用することができる。
【0128】
各設備を、幾つかのタイプの各素材を、一度、個々のファイバ上に積み重ねるために変形することができる。このような機構を、構造物中に折り込まれるとき、2成分のファイバを有する構造物を生成できる。上市されているFDM設備は、既に、1mmのスケールにて素材の物性値を変化できるようにVCMにより要求される制御と精度とを備えている。
【0129】
さらに他の製造方法は、編むことである。編むことは、商業分野に進出し始めている。研究及び企業の概観は、プロセスが乾燥したファイバを編み、続いて樹脂にて浸出させることに限定されることを示している。しかしながら、編むプロセスが、2成分のファイバ、又は共に混ぜ合わされた各編み糸と結合されると、浸出プロセスは、必ずしも成立するとは言えないが、不要にできる。さらに、加えて、浸出プロセスは、ファイバの容量の具体的な制御のためには考慮する必要がない。マトリクスをファイバと共に編むことは、上記のような制御が可能となることがある。編むプロセスは、また、確かな三次元的な強化を達成するために用いることができるので、さらなる発展に適している。
【0130】
本発明に係る開示に重要と考えられる、何れの主題に関しては、本発明の詳細な説明の欄に引用された、全ての、特許出願、特許、技術文書、テキストブック、他の刊行物が、参照により組み入られると解釈されるべきである。
【0131】
上記では、本発明に係る種々な実施形態が記述されているが、本発明は、例によって表現されても、それにより限定されて理解されるべきものではない。それゆえ、本発明の権利範囲の広がりは、上記のいかなる実施形態の説明に限定されるべきものではなく本願の各請求項及びそれらの同等物によってのみ定義されるべきものである。
【0132】
本発明に係る製造システムは、素材を含む対象物に印加されるフィールド[f] に対応して生成されるポテンシャル[x] を有する対象物を製造するために、マシン制御指示を決定するための製造システムであって、対象物の外形状を複数の有限要素に分離することによって、コンピュータ処理可能な、対象物の数学モデルを生成し、上記各有限要素に関連するフィールド[f] 及びポテンシャル[x] の各数値を特定する特定手段と、上記各有限要素の各素材の各物性値が対称性を有することを検出する対称性検出手段と、関係式[f]=[k][x]、及び上記対称性に基づいて上記素材の物性マトリックス[k] を算出する算出手段と、コンピュータ処理可能な、対象物の数学モデル内にて有限要素毎の、上記素材の物性値の係数を、上記素材の物性マトリックス[k] から抽出する抽出手段と、抽出された上記素材の物性値の係数と、既知の素材における物性値の係数とを一致させるために、抽出された上記素材の物性値の係数と、既知の素材における物性値の係数とを比較する比較手段と、一致した素材の物性値の各係数に基づいて、上記対象物の上記有限要素毎の、製造装置を制御するための各製造パラメータを決定する決定手段と、上記各製造パラメータに応じて製造設備を制御するための、マシン制御指示を生成する指示手段とを有し、上記素材は、樹脂マトリクスと、上記樹脂マトリクス中に積層され、組織化されたファイバと、上記樹脂マトリクス中に組み込まれた不純物とを有する複合素材であり、上記樹脂マトリクス中に組み込まれた不純物の量は、上記有限要素毎に変化するように制御されている。
【0133】
上記製造システムでは、上記指示手段は、上記複合素材の物性値を制御するものであることが好ましい。
【0134】
上記製造システムでは、上記不純物は、生物的な物質、骨、補助因子、生物学的な細胞、生理活性物質、薬剤、抗生物質および放射性物質からなる群から選択されるものであり、上記指示手段は、上記樹脂マトリクス中の上記不純物の濃度を制御するものであることが好ましい。
【0135】
上記製造システムでは、上記指示手段は、上記樹脂マトリクス中の上記不純物の濃度を、上記対象物の表面に近づくにつれて増加するように制御するものであることが好ましい。
【0136】
上記製造システムでは、上記何れかに記載の製造システムにより製造される製造物であって、上記製造物は、自動車部品、飛行機部品、腰骨の張出部に移植される部材、ゴルフクラブのシャフト、テニスラケット、自転車フレーム、及び釣り竿からなる群から選択されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に印加されるフィールド[f] に対応して生成されるポテンシャル[x] を有する対象物を三次元的に制御して製造するための製造方法であって、
上記対象物の外形状のデータを複数の有限要素に分離することによって、コンピュータ処理可能な、対象物の数学モデルを生成し、
上記各有限要素の物性値の対称性を特定し、
上記各有限要素に関連するフィールド[f] 及びポテンシャル[x] の各数値を特定し、
関係式[f]=[k][x]および上記対称性に基づいて上記対象物の素材の未知の物性マトリックス[k] を算出し、
コンピュータ処理可能な、上記対象物の数学モデル内にて有限要素毎の、上記素材の物性値の係数を、上記算出された物性マトリックス[k] から抽出し、
抽出された上記素材の物性値の係数と、既知の素材における物性値の係数とを一致させるために、抽出された上記素材の物性値の係数と、既知の素材における物性値の係数とを比較し、
一致した素材の物性値の各係数に基づいて、上記対象物の上記有限要素毎の、製造装置を制御するための各製造パラメータを決定し、
上記各製造パラメータに応じて製造設備を制御するための、マシン制御指示を生成する、対象物の製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−74072(P2012−74072A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−265193(P2011−265193)
【出願日】平成23年12月2日(2011.12.2)
【分割の表示】特願2007−193939(P2007−193939)の分割
【原出願日】平成12年8月23日(2000.8.23)
【出願人】(502068816)
【Fターム(参考)】