説明

対象物据付方法

【課題】煩雑な台直し作業を実施することなく、要求される対象物の据付精度を容易に確保することの可能な対象物据付方法を提供する。
【解決手段】基礎上に対象物を据付けるための対象物据付方法であって、平板にアンカーボルトを突設して成る平板アンカーを、前記アンカーボルトが基礎内部に位置し且つ前記平板が基礎表面から露出するように、前記基礎に埋設する第1工程と、前記平板の露出面に前記対象物の据付位置のマーキングを行う第2工程と、前記平板の露出面にマーキングされた据付位置に前記対象物を据付ける第3工程と、前記据付け完了後に前記対象物を前記平板に溶接する第4工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物据付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基礎上に建築構造物や設備機器等の対象物を据付ける際に、予め基礎コンクリートに埋設されたアンカーボルトに対象物をナット締めすることにより、基礎と対象物を強固に固定する施工技術が一般的に採用されている。アンカーボルトの設置精度は対象物の据付精度に大きく影響するため、アンカーボルトを正確な位置に設置することは極めて重要である。従来では、アンカーボルトを基礎コンクリートに埋設する際に、アンカーボルトをテンプレートに接続した状態でコンクリートの打設を行うことにより、アンカーボルトの設置精度の向上を図っている(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−37469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、テンプレートを用いてアンカーボルトの設置を行う場合でも、コンクリートの打設時にアンカーボルトの位置ズレや曲がり(傾斜)が発生する可能性がある。そのため、従来では、要求される据付精度を確保するために、コンクリートが硬化した後に、アンカーボルトに熱を加えて強制的に曲がりを直したり、基礎コンクリートに孔を開けてアンカーボルトの位置ズレを直すなどの煩雑な補修作業(いわゆる台直し作業)を実施する必要があった。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、煩雑な台直し作業を実施することなく、要求される対象物の据付精度を容易に確保することの可能な対象物据付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、対象物据付方法に係る第1の解決手段として、基礎上に対象物を据付けるための対象物据付方法であって、平板にアンカーボルトを突設して成る平板アンカーを、前記アンカーボルトが基礎内部に位置し且つ前記平板が基礎表面から露出するように、前記基礎に埋設する第1工程と、前記平板の露出面に前記対象物の据付位置のマーキングを行う第2工程と、前記平板の露出面にマーキングされた据付位置に前記対象物を据付ける第3工程と、前記据付け完了後に前記対象物を前記平板に溶接する第4工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明では、対象物据付方法に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記第3工程では、前記対象物の下部に取り付けられた支承体の位置が前記据付位置と一致するように前記対象物の据付けを行い、前記第4工程では、前記対象物の支承体を前記平板に溶接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、基礎に平板アンカーを埋設し、その平板上(露出面)にて対象物の位置決めを行うため、アンカーボルトの位置ズレや曲がりが対象物の据付精度に影響することはない(但し、平板の水平出しは必要である)。従って、本発明によれば、基礎コンクリートの硬化後に、煩雑な台直し作業を実施する必要がなくなり、要求される対象物の据付精度を容易に確保することができる。
また、台直し作業の実施は、作業工数の増加を招くと共に、アンカーボルト及び基礎の強度低下を招く要因となっていたが、本発明では台直し作業を実施する必要がないため、これらの従来の不具合を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態における対象物据付方法の各工程を表す第1模式図である。
【図2】本実施形態における対象物据付方法の各工程を表す第2模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1及び図2は、本実施形態における対象物据付方法の各工程を表す模式図である。なお、以下の説明においては、基礎上に据付ける対象物として配管橋ユニットを想定する。配管橋ユニットとは、一定間隔で配置された基礎(例えばピアー)間に架設されて配管を高架状に連結するための橋状構造物である。
【0011】
図1(a)において、符号1、2、3が一定間隔で配置された基礎であり、符号50が配管橋ユニットである。この配管橋ユニット50は、2本の配管52、53を水平に支持する支持フレーム51と、該支持フレーム51の下部両端に取り付けられた固定支承体54及び可動支承体55から構成されている。周知のように、固定支承体54は、温度変化による上部構造(ここでは支持フレーム51)の回転変位のみを吸収する支承体であり、可動支承体55は、温度変化による支持フレーム51の回転変位及び伸縮変位を吸収する支承体である。
【0012】
まず、対象物据付方法の第1工程では、平板にアンカーボルトを突設して成る平板アンカーを基礎に埋設する。具体的には、図1(a)に示すように、基礎1のコンクリート打設直後、コンクリート硬化前に、スチール製の平板11に2本のアンカーボルト12を突設して成る平板アンカー10を埋設する。この時、アンカーボルト12が基礎1内部に位置し且つ平板11が基礎1表面から露出するように平板アンカー10を埋設する。
【0013】
同様に、基礎2のコンクリート打設直後、コンクリート硬化前に、スチール製の平板21に2本のアンカーボルト22を突設して成る平板アンカー20と、スチール製の平板31に2本のアンカーボルト32を突設して成る平板アンカー30とを基礎2に埋設する。この時、アンカーボルト22、32が基礎2内部に位置し且つ平板21、31が基礎2表面から露出するように平板アンカー20、30を埋設する。
【0014】
さらに、基礎3のコンクリート打設直後、コンクリート硬化前に、スチール製の平板41に2本のアンカーボルト42を突設して成る平板アンカー40を埋設する。この時、アンカーボルト42が基礎3内部に位置し且つ平板41が基礎3表面から露出するように平板アンカー40を埋設する。
【0015】
続いて、対象物据付方法の第2工程では、各平板11、21、31、41の露出面に配管橋ユニット50の据付位置(つまり、固定支承体54及び可動支承体55の固定位置)のマーキングを行う。各平板アンカー10、20、30、40の設置位置に高い精度は要求されない(言い換えれば、平板11、21、31、41の露出面内に配管橋ユニット50の据付位置が含まれれば良い)が、配管橋ユニット50の据付位置のマーキングには高い精度が要求される。
【0016】
続いて、対象物据付方法の第3工程では、各平板11、21、31、41の露出面にマーキングされた据付位置に配管橋ユニット50を据付ける。具体的には、図1(a)に示すように、配管橋ユニット50をフック60に吊り下げた状態で運搬し、固定支承体54の位置が平板11の露出面にマーキングされた据付位置と一致するように、且つ可動支承体55の位置が平板21の露出面にマーキングされた据付位置と一致するように、配管橋ユニット50の据付を行う。
【0017】
ここで、図1(b)に示すように、配管橋ユニット50の支持フレーム51と基礎1との間及び支持フレーム51と基礎2との間に、水平送り機構付きの油圧ジャッキ71、72を挟み込み、これらの油圧ジャッキ71、72によって配管橋ユニット50を持ち上げつつ、水平送り機構によって水平方向の位置を微調整することで、配管橋ユニット50(固定支承体54及び可動支承体55)を正確に据付位置に据付ける。
【0018】
続いて、対象物据付方法の第4工程では、配管橋ユニット50の据付け完了後に、図1(b)に示すように、固定支承体54を平板11に溶接すると共に、可動支承体55を平板21に溶接する。これにより、配管橋ユニット50が基礎1と基礎2との間に架設されると共に、配管橋ユニット50と各基礎1、2とが強固に固定される。なお、各油圧ジャッキ71、72は、溶接完了後に取り外される。
【0019】
次に、図2(a)に示すように、別の配管橋ユニット50’をフック60(図2では図示省略)に吊り下げた状態で運搬し、固定支承体54’の位置が平板31の露出面にマーキングされた据付位置と一致するように、且つ可動支承体55’の位置が平板41の露出面にマーキングされた据付位置と一致するように、配管橋ユニット50’の据付を行う。なお、配管橋ユニット50と50’は同一構成の構造物であるが、説明の便宜上、異なる符号を用いている。
【0020】
ここで、図2(a)に示すように、配管橋ユニット50’の支持フレーム51’と基礎2との間及び支持フレーム51’と基礎3との間に油圧ジャッキ71、72を挟み込み、これらの油圧ジャッキ71、72によって配管橋ユニット50’を持ち上げつつ、水平送り機構によって水平方向の位置を微調整することで、配管橋ユニット50の配管52、53と配管橋ユニット50’の配管52’、53’との間に最適な開先ギャップGを形成しながら、配管橋ユニット50’(固定支承体54’及び可動支承体55’)を正確に据付位置に据付ける。
【0021】
そして、配管橋ユニット50’の据付け完了後に、図2(b)に示すように、固定支承体54’を平板31に溶接すると共に、可動支承体55’を平板41に溶接する。これにより、配管橋ユニット50’が基礎2と基礎3との間に架設されると共に、配管橋ユニット50’と各基礎2、3とが強固に固定される。なお、各油圧ジャッキ71、72は、溶接完了後に取り外される。
【0022】
最後に、図2(b)に示すように、配管橋ユニット50の配管52、53と配管橋ユニット50’の配管52’、53’とを溶接することで、基礎1から基礎3までの間に渡って高架状に連結された2本の配管が得られる。なお、配管52、53(52’、53’)の高さ位置は、配管ユニット50(50’)の組み立て時に予め調整しておけば良い。
【0023】
以上のように、本実施形態では、基礎に平板アンカーを埋設し、その平板上(露出面)にて対象物の位置決めを行うため、アンカーボルトの位置ズレや曲がりが対象物の据付精度に影響することはない(但し、平板の水平出しは必要である)。従って、本実施形態によれば、基礎コンクリートの硬化後に、煩雑な台直し作業を実施する必要がなくなり、要求される対象物の据付精度を容易に確保することができる。
また、台直し作業の実施は、作業工数の増加を招くと共に、アンカーボルト及び基礎の強度低下を招く要因となっていたが、本実施形態では台直し作業を実施する必要がないため、これらの従来の不具合を解消することができる。
【0024】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、基礎上に据付ける対象物として配管橋ユニットを想定したが、その他の建築構造物や設備機器などを基礎上に据付ける際に本発明を適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0025】
1、2、3…基礎、10、20、30、40…平板アンカー、11、21、31、41…平板、12、22、32、42…アンカーボルト、50、50’…配管橋ユニット(対象物)、54、54’…固定支承体、55、55’…可動支承体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎上に対象物を据付けるための対象物据付方法であって、
平板にアンカーボルトを突設して成る平板アンカーを、前記アンカーボルトが基礎内部に位置し且つ前記平板が基礎表面から露出するように、前記基礎に埋設する第1工程と、
前記平板の露出面に前記対象物の据付位置のマーキングを行う第2工程と、
前記平板の露出面にマーキングされた据付位置に前記対象物を据付ける第3工程と、
前記据付け完了後に前記対象物を前記平板に溶接する第4工程と、
を有することを特徴とする対象物据付方法。
【請求項2】
前記第3工程では、前記対象物の下部に取り付けられた支承体の位置が前記据付位置と一致するように前記対象物の据付けを行い、
前記第4工程では、前記対象物の支承体を前記平板に溶接することを特徴とする請求項1に記載の対象物据付方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−102565(P2012−102565A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252896(P2010−252896)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】