説明

封入された機能性ベーカリー成分

本発明は、脂質封入または脂質被覆機能性ベーカリー成分に関する。より具体的には、本発明はであって、a.酵素、オキシドリダクタント、酸味料、ヒドロコロイド、スターチ、酵母、糖、水および香料からなる群の中から選ばれる1種またはそれ以上の機能性ベーカリー成分を含有し、少なくとも5μmの直径を有する親水性コア、およびb.少なくとも30℃のスリップ融点を有するトリグリセリド油脂少なくとも50重量%、モノグリセリド、ジグリセリド、モノおよび/またはジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(datem)、ステアリル−ラクチレートおよびそれらの組み合わせからなる群の中から選ばれる放出剤少なくとも1重量%を含有し、前記コアを封入する親油性の実質的に連続した層を備える、ドウの調製に使用するために好適な顆粒に関する。本発明の他の側面は、上記封入または被覆成分の製造方法、およびこれら脂質封入または脂質被覆成分のドウ組成物の製造における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、脂質により封入され、または脂質により被覆された機能性ベーカリー成分、そのような封入または被覆された成分を製造するための方法、およびこれら脂質により封入されまたは脂質により被覆された成分の、ドウ組成物の製造における使用に関する。
【0002】
発明の背景
ベーキング産業において、ドウの取り扱いおよび機械加工性を改善し、さらに最終ベーキング製品のテクスチャー、ボリューム、芳香および新鮮さ(抗ステーリング)を改善するために、機能性ベーカリー成分が広く用いられている。ドウを「状態調整」するために用いることのできる機能性ベーカリー成分の例には、酵素、オキシドリダクタント、酸味料、ヒドロコロイド、スターチ、酵母、糖、水および香料が含まれる。
【0003】
機能性ベーカリー成分の重要な適用領域は、パンである。パンは、4つの主成分、すなわち、小麦粉、酵母、塩および水から作られる。パンは、通常、3つの基本工程で調製され、最終結果は、ベークされたローフである。これらの工程は、(a)主成分を混合してドウを作り、粘弾性グルテンマトリックスを生成させるように処理し、(b)ついで、生成したドウを、暖かい湿潤条件下でインキュベートすることにより酵母による発酵を促進し、ドウを膨らませることによって、十分に膨らませ、(c)ついで、膨らんだドウをベークしてスターチをゼラチン化し、タンパクを変性させ、ドウ構造を固定するものである。上記機能性ベーカリー成分等の種々の添加剤は、ドウの生成とベークされたローフの品質を改善することが知られている。これらの添加剤は、一般に、パン(または小麦粉もしくはドウ)改善剤/コンディショナーとして知られている。
【0004】
ドウの強度は、小規模および大規模の用途の両方についてベーキングの重要な側面である。強いドウは、混合時間、膨らませ時間、およびドウ搬送中の機械的振動により大きな許容度を有し、弱いドウは、これらの処理に対し許容度がより低い。優れたレオロジー特性および取り扱い特性を有する強いドウは、強いグルテンネットワークを含有する小麦粉から得られる。低いタンパク含有量または貧弱なグルテン品質を有する小麦粉は、弱いドウをもたらす。
【0005】
ヨウ素酸塩、過酸化物、アスコルビン酸、臭素酸カリウム、グルタチオンおよびアゾジカルボンアミドのような非特異的酸化剤は、グルテン強化効果を有する。これらのドウ改善剤は、グルテンを、それによりドウを強化するタンパク間結合の生成を誘起するということが示唆されている。現在入手できる化学的酸化剤のいくつかの使用は、消費者の抵抗に合い、規制官庁により認められていない。
【0006】
ドウ改善剤としての酵素の使用は、化学的コンディショナーの代替と考えられている。最近、いくつかの酵素、特にドウ中に多量に存在する成分に作用する酵素が、ドウおよび/またはパン改善剤として使用されている。そのような酵素の例は、アミラーゼ、キシラナーゼ、プロテアーゼ、グルコースオキシダーゼ、オキシゲナーゼ、オキシドリダクターゼ、トランス−グルタミナーゼ、およびペントサナーゼ等の(ヘミ)セルラーゼの群の中に見いだせる。
【0007】
上記ドウ改善剤の使用は、複雑でないわけではない。これらの機能性成分は、粘着性、強度および/または安定性といったドウの特性に悪影響を及ぼす傾向にあるからである。その結果、ドウは、手でも機械でも取り扱うことが困難になり得る。かくして、コンディショナーがその十分な機能を発揮する時点を、選定された時点を経過するまで遅らせることが望ましいであろう。特に、かかる時点を、全てのドウの成分を混合し終える時点まで、特に当該ドウの膨れが開始する時点まで、遅らせることが望ましいであろう。
【0008】
機能性成分がその機能を時期尚早的に発揮することを防止するために食品成分を脂質で封入または脂質で被覆することが当該分野で知られている。米国特許3561975号は、ベーキング前に良好な取り扱い特性を維持するパイクラストの収縮減少剤を記載している。この剤は、それぞれショートニングを含み、かつ中にタンパク分解酵素粒子を規則的に埋め込んだ実質的に球状の粒子からなり、この球状粒子は、約150ミクロン〜約1.5ミリメートルの直径を有し、ショートニングは、約95°〜約155°F(35.0〜68.3℃)の完全溶融点を有するトリグリセリドを含み、ショートニング対酵素重量比は、約20対1〜約1対1である。この米国特許は、さらに、ソルビタン脂肪グリセリドポリオキシエチレン誘導体(ツイーン(Tween)(登録商標)をトリグリセリドの11重量%の量で含有させることも開示している。球状粒子内の酵素粒子は、約5〜約150ミクロン、好ましくは約10〜約50ミクロンの最大寸法を有すると記載されている。
【0009】
DE−A2203429は、遅延溶解挙動を示す酸組成物の製造方法に関するものであり、固体酸または固体担体に含有された酸が、周囲温度で固体であり、かつ乳化剤を含有する食用油脂で被覆されている。油脂の融点は、45°〜60℃の範囲内にある。乳化剤は、大豆レシチン、0.1〜10%グリセロールモノステアレートまたは1〜20%グリセロールポリリシノレエートであり得ることが記載されている。このドイツ特許出願に記載されている酸組成物は、ヨーグルトに用いて特に有用である。
【0010】
EP−A0380066は、水溶性コアと、高融点油脂、ワックス、レシチンおよび脂肪酸を含有するコーティングとを含む粒子を記載している。水溶性コア中に酵素を含める可能性が言及されている。好ましい粒子サイズは、150〜250ミクロンの範囲内であると記載されている。粒子の脂質コーティングは、油脂の0.05〜1.2%のワックス、0.01〜0.05%のレシチンおよび0.01〜5%の脂肪酸を含有する。この欧州特許出願は、その被覆粒子の小麦粉製品における使用に言及している。言及された具体例は、フライ用バター、天ぷらの衣およびフライ用小麦粉である。
【0011】
米国特許3716381号は、最終仕上げで熱処理に供された肉および魚製品を保存する方法を記載し、この方法は、40°〜90℃の融点を有する硬化油で表面が被覆されたソルビン酸粉末粒子を含む顆粒状保存剤を生の肉または魚に添加することを包含する。この米国特許には、硬化油とともに、グリセロールモノステアレートまたはアセチル化モノグリセリドのような食品用界面活性剤を少量用いることができることが述べられている。
【0012】
本発明の目的は、周囲条件下で比較的安定であり、同時にその機能が要求されるとき、特にドウの膨らまし中に、制御された様態で迅速に機能性ベーカリー成分を放出する改善された脂質封入または脂質被覆機能性ベーカリー成分を提供することである。
【0013】
発明の概要
本発明者らは、上記目的が、(a)機能性ベーカリー成分を含有し、少なくとも5μmの直径を有する親水性コア、および(b)少なくとも30℃のスリップ融点を有するトリグリセリド油脂少なくとも50重量%、モノグリセリド、ジグリセリド、モノおよび/またはジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(datem)、ステアリルラクチレート(stearyl lactylate)およびそれらの組み合わせからなる群の中から選ばれる放出剤少なくとも1重量%を含有し、前記コアを封入する親油性の実質的に連続した層を備える顆粒により達成されることを見いだした。
【0014】
本発明者らは理論により拘束されることを望むものではないが、上記放出剤は顆粒をドウに含めた後機能性ベーカリー成分の制御された放出を可能とするものと、特に放出剤は増加する温度とともに急速に増大する放出を可能とするものと信じられる。すなわち、本発明による顆粒は、それらが貯蔵および移送中に機能性ベーカリー成分を保護するという利点を与える。加えて、非封入もしくは非被覆機能性成分と異なり、本発明による顆粒は、ドウの調製プロセス中に制御された様態でこれら機能性成分の機能性を利用可能し、これは明らかにドウの取り扱い特性を改善する。先行技術で知られている被覆または封入システムと比較して、本発明の顆粒は、機能が一般により緩和な様態で放出され、機能性成分がその機能の一部をすでに早い段階でドウの調製プロセス中に発揮することを可能とするという利点を与える。例えば酵素の場合、そのような早期の制御された作用は、良好なコンシステンシーとボリュームを有するベークされた製品を製造するために望まれるものである。このように、本発明は、取り扱いが容易で、優れたコンシステンシーとボリュームを有するベークされた製品を生成するドウの製造を可能とする。
【0015】
本発明により用いられる放出剤は、また、種々の食品において乳化剤として用いられている。しかしながら、本発明者らは、他の乳化剤は、本発明の顆粒における放出剤の代わりに用いたとき、上記条件下で機能性ベーカリー成分の放出を増大させないことを見いだした。すなわち、本発明の放出剤の放出増大化特性は、乳化剤に共通のものではない。
【0016】
発明の詳細な説明
従って、本発明の1つの側面は、ドウの調製に使用するために好適な顆粒であって、
a.酵素、オキシドリダクタント、酸味料、ヒドロコロイド、スターチ、酵母、糖(sugar)、水および香料からなる群の中から選ばれる1種またはそれ以上の機能性ベーカリー成分を含有し、少なくとも5μmの直径を有する親水性コア、および
b.少なくとも30℃のスリップ融点を有するトリグリセリド油脂少なくとも50重量%、モノグリセリド、ジグリセリド、モノおよび/またはジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(datem)、ステアリル−ラクチレートおよびそれらの組み合わせからなる群の中から選ばれる放出剤少なくとも1重量%を含有し、前記コアを封入する親油性の実質的に連続した層
を備える顆粒に関する。
【0017】
「スリップ融点」という語は、溶融する油脂中の固体相の量が、油脂で満たされた開放毛管中で気泡が上方に押しやられるほど少なくなったときの温度、と定義される。
【0018】
本発明による顆粒は親油性の実質的に連続した層により囲包された単一の親水性コアの形態を取り得ることに注意されたい。あるいは、顆粒は1つの親油性の実質的に連続した層によりそれぞれが囲包された2つまたはそれ以上の親水性コアを含み得る。後者の顆粒は、例えば、以下述べる噴霧冷却により好適に得ることができる。
【0019】
上記放出剤の明白な影響は、その界面活性、特にトリグリセリド油脂の有意の部分が溶融したとき大きな油−水界面の形成を増大させるその能力と関連すると信じられる。特に、モノグリセリド、datemおよび/またはステアリルラクチレートは、本発明の顆粒の親油性層に有利に含まれ得る。さらに好ましくは、放出剤は、モノグリセリド、datemおよびそれらの組み合わせからなる群の中から選ばれる。本発明の1つの特に好ましい態様において、放出剤はモノグリセリドである。他の好ましい態様において、放出剤はステアリルラクチレートである。
【0020】
本発明により用いられる放出剤は、好ましくは、平均で4〜24個の炭素原子を有する1またはそれ以上の脂肪酸残基を含有する。そのような放出剤は、通常、5〜80℃のスリップ融点を示す。より好ましくは、かかる放出剤のスリップ融点は、20〜70℃の範囲内にある。最も好ましくは、スリップ融点は30℃を越える。
【0021】
親油性の実質的に連続した層は、好ましくは、50〜98重量%のトリグリセリド油脂と2〜50重量%の放出剤を含有する。より好ましくは、親油性層は、60〜94重量%の、最も好ましくは70〜92重量%のトリグリセリド油脂を含有する。親油性層中の放出剤の量は、好ましくは少なくとも2重量%であり、より好ましくは少なくとも3重量%であり、最も好ましくは少なくとも4重量%である。典型的に、親油性層中の放出剤の量は、40重量%以下、好ましくは30重量%以下、最も好ましくは25重量%以下である。本発明の特に好ましい態様において、本発明の顆粒のコアに含まれる機能性ベーカリー成分は、酵素、オキシドリダクタントおよびヒドロコロイドからなる群の中から選ばれる。ヒドロコロイドの例には、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラゲーナン、アルギネート、ペクチン、CMC、HPMC、スターチおよびそれらの組み合わせが含まれる。顆粒のコアに好適に含めることのできるオキシドリダクタントには、アスコルビン酸、グルタチオンおよびブロメート(bromate)が含まれる。有利に含有される典型的なベーカリー酵素には、a−アミラーゼ、β−アミラーゼ、キシラナーゼ、ヘミ−セルラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、グルコースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、オキシドリダクターゼ、リポオキシゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、プルラナーゼ(pullulanase)、インバーターゼ(invertase)、マンナナーゼ(mannanase)、ガラクトマンナナーゼ、ラクターゼおよびそれらの組み合わせが含まれる。好ましくは、ベーカリー酵素は、a−アミラーゼ、キシラナーゼおよびそれらの組み合わせからなる群の中から選ばれる。最も好ましくは、ベーカリー酵素は、a−アミラーゼである。
【0022】
上に説明したように、本発明は、機能性成分のドウに対する影響が、例えば膨らませプロセスの開始まで、遅延されるという利点を与える。すなわち、これらの機能性成分は、その望まれる効果のかなりの部分を膨らませ中またはその後に発揮し、それにより例えば粘着性、水分保持能およびドウ強度についての問題を解消または減少させる。上記ヒドロコロイドに関しては、これらのヒドロコロイドの増粘/ゲル化効果を膨らませプロセスの開始後まで遅らせることが有利である。ヒドロコロイドがドウの主成分の混合中にその効果を発揮し始めたら、取り扱いが困難な比較的粘稠な塊が得られる。ゲル形成性ヒドロコロイドを用いる場合、実際の混合操作および/または後の取り扱いは、ゲル構造を崩壊させ得、それによりかかるゲル化性ヒドロコロイドの所望の機能が消失される。
【0023】
本発明の特に好ましい態様において、顆粒中の機能性ベーカリー成分は、酵素である。ここで用いる酵素という語は、当該製剤が酵素的に活性である限り、いずれものレベルの純度にあるいずれもの酵素製剤をいう。酵素という語は、また、複数の異なる特異的酵素活性の製剤も含む。
【0024】
本発明の利益は、機能性ベーカリー成分が、前の混合工程または後のベーキング工程ではなく、膨らませ工程中に顆粒から主に放出されるときに、特に顕著である。これを達成するために、30〜40℃の範囲内のスリップ融点を示すトリグリセリド油脂を用いることが好ましい。より好ましくは、トリグリセリド油脂は、33〜40℃の範囲内のスリップ融点を有する。最も好ましくは、スリップ融点は、34〜38℃の範囲内にある。特に、機能性ベーカリー成分が1種またはそれ以上の酵素を含む場合、ほとんどの酵素の活性がベーキングプロセスの過程中に迅速に衰退するので、膨らませ中に封入酵素の実質的に全てが放出されるように親油性層を設計することが非常に有利である。
【0025】
好ましい態様において、トリグリセリド油脂と放出剤との組み合わせを含む親油性層は、30〜40℃の範囲内の、より好ましくは33〜40℃の範囲内の、最も好ましくは34〜38℃の範囲内のスリップ融点を有する。
【0026】
上に説明したように、本発明の顆粒は、有利には、1種またはそれ以上の機能性ベーカリー成分の制御された放出を達成するために、ドウに適用される。本発明の顆粒は、1種またはそれ以上の機能性成分の放出を遅延させる能力と、これらの成分を比較的短い時間間隔で放出させる能力を結び付けている。膨らませの時間はやや短い(例えば、約15〜29分)ので、膨らませ中にその効果を発揮することが意図される機能性成分のすばやい放出が非常に有利である。
【0027】
1種またはそれ以上のベーカリー成分のすばやい放出を促進するために、顆粒のコア中に吸湿性成分を追加的に含めることが有利であることがわかった。通常、そのような吸湿性成分は、1:2〜20:1、好ましくは1:1〜10:1の吸湿性成分:機能性ベーカリー成分の重量比で含められる。機能性成分の放出を促進するために好適に用いることのできる吸湿性成分の例には、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラゲーナン、アルギネート、ペクチン、CMC、HPMC、スターチ、デキストリン、糖、塩およびそれら成分の組み合わせが含まれる。吸湿性成分は機能性ベーカリー成分であり得るが、本発明によると吸湿性成分は、酵素でなく、オキシドリダクタントでなく、酸味料でなく、酵母でないことに注意されたい。特に好ましいものは、水を吸収した結果膨潤する吸湿性成分、特に増粘剤およびゲル化剤である。ゲル構造の生成は、機能性成分の効果的な放出を阻害し得るので、本発明の顆粒は、最も好ましくは、増粘剤、例えばグアーガムまたはローカストビーンガムを含有する。
【0028】
放出剤および任意の吸湿性成分と同様、本発明で用いられるトリグリセリド油脂も放出特性に重要な影響を有する。トリグリセリド油脂も、特に貯蔵および取り扱い中における、顆粒の安定性に重要な影響を有する。親油性層は取り扱いおよび混合に耐えるに十分に強いものであることが重要である。加えて、親油性層は、粘着性であるべきでない。さもないと顆粒は凝集し、顆粒の計量投入を妨げることとなるからである。自由流動性で、貯蔵安定性で、通常の混合操作に耐える顆粒の調製を可能とするために、N20>50;10=N30=60;およびN40<5のN−プロファイルを示すトリグリセリド油脂を用いることが有利である。好ましくは、トリグリセリド油脂は、N30<50を、さらに好ましくはN30<40およびN40<2を示す。さらに、トリグリセリド油脂は、好ましくは、N30>20、より好ましくはN30>30を示す。N−プロファイルは、指摘された温度におけるトリグリセリド中の固体油脂含有量をいい(N40は、40℃での固体油脂含有量をいう)、パルスNMRにより測定される。
【0029】
親油性層中のトリグリセリド油脂は、非変性、水素化、分別蒸留および/エステル交換トリグリセリドを含み得る。特に好適なトリグリセリド油脂の例には、パーム中間留分、パームカーネルステアリン、ココアバターおよびバターオイルステアリンが含まれる。好ましくは、トリグリセリド油脂は、少なくとも50重量%の、より好ましくは少なくとも80重量%の1種またはそれ以上のこれら油脂またはこれら油脂のエステル交換されたブレンドを含有する。
【0030】
非常に望ましい放出特性を達成するために、コアは、顆粒の10〜99重量%を構成することが推奨される。より好ましくは、コアは、顆粒の20〜95重量%を構成する。顆粒が1を超えるコアを含む場合、後者のパーセンテージは、顆粒内に含有されるコア材料の合計量である。
【0031】
本発明の顆粒中のコアは、好ましくは、少なくとも30μmの、より好ましくは少なくとも50μmの直径を有する。一般に、コアの直径は、800μmを超えず、より好ましくは500μmを超えず、最も好ましくは200μmを超えない。親油性層は、通常、少なくとも2μmの、好ましくは少なくとも5μmの、最も好ましくは少なくとも10μmの厚さを有する。通常、親油性層の厚さは、200μmを超ない。より好ましくは、この層の厚さは、100μmを超えず、最も好ましくは70μmを超えない。顆粒が2以上のコアを含む場合、親油性層の厚さは、それがコアと周囲との間に界面を形成しない限りにおいて、隙間の空間を除くコア間の距離により規定される。
【0032】
本発明の顆粒をさらに安定化させるために、またその自由流動特性を改善するために、糖、デキストリン、リン酸三カルシウム、シリケート、炭酸カルシウムおよびそれらの組み合わせからなる群の中から選ばれる剤を少なくとも50重量%含有する追加の外側コーティングを適用することが有利である。より好ましくは、このコーティングは、少なくとも70重量%の前記剤を含有し、最も好ましくは少なくとも80重量%の前記剤を含有する。
【0033】
本発明の顆粒は、好適には、10〜1000μmの、好ましくは30〜500μmの、より好ましくは60〜400μmの範囲内の直径を有する。最も好ましくは、本発明の顆粒の直径は、80〜300μmの範囲内にある。
【0034】
本発明の他の側面は、上記顆粒を含み、顆粒の平均直径が10〜1000μmの範囲内、より好ましくは30〜500μmの範囲内、最も好ましくは60〜300μmの範囲内にあるところの組成物に関する。望ましい放出特性を達成するために、顆粒の粒子サイズ分布は比較的狭いことが有利である。典型的に、粒子の少なくとも90%が、20〜300μmの範囲内の、より好ましくは30〜200μmの範囲内の、最も好ましくは40〜100μmの範囲内の粒子サイズを有する。
【0035】
上に述べたように、本発明の顆粒および顆粒含有組成物は、それらがそこに含有されている機能性ベーカリー成分を、水の存在下で、ある温度を超える温度で、迅速に放出するという非常に有利な性質を示す。典型的に、顆粒を38℃の温度の水に浸漬したとき、顆粒に含まれる機能性ベーカリー成分の少なくとも50重量%が10分以内に放出される。顆粒含有組成物がこの基準を満たすかどうかを試験するために、75mgのコア材料に相当する試料を、7℃で15mlのバッファ(0.05M酢酸ナトリウム、pH5.2)を収容する試験管に導入すべきである。この試験管を7℃で10分間おだやかに上下逆になるように回転させる。ついで、試験管を38℃の水浴中に10分間浸漬する。10分経過後、試験管を氷水中ですばやく冷却する。次に、試験管の内容物を、直ちに、ガラスウールが充填された漏斗に通じる。機能性ベーカリー成分の放出量を、濾過された液体中に回収された量を元の試料中に存在する合計量で除算することにより計算する。
【0036】
本発明の組成物は、ここに規定した顆粒から本質的になるものであり得、あるいは、顆粒と他のベーカリー成分との組み合わせを含有するものであってもよい。好ましくは、これら成分は、組成物全体が自由流動挙動を示すように、同様に粒状形態にある。本発明の組成物に含有され得る追加のベーカリー成分の例には、レドックス剤、乳化剤、ヒドロコロイド、小麦粉、塩、麦芽粉、麦芽エキス、グルテンおよびスターチが含まれる。
【0037】
本発明のさらに他の側面は、上記組成物の、ドウの調製、好ましくはパンのドウの調製における使用に関する。ドウは、本発明の組成物を他のドウ成分、例えば小麦粉、水および酵母と混合することにより、簡単に調製できる。通常、本発明の組成物は、ドウの0.01〜5重量%の量で含められる。
【0038】
本発明は、また、上記顆粒の製造方法を包含する。本発明の顆粒は、例えば、流動床コーティングおよび噴霧冷却等の種々のプロセスにより製造することができ、流動床コーティングが最も好ましい。
【0039】
好ましい態様において、本発明の方法は、
a.酵素、オキシドリダクタント、酸味料、ヒドロコロイド、スターチ、酵母、糖、水および香料からなる群の中から選ばれる1種またはそれ以上の機能性ベーカリー成分を含有し、少なくとも5μmの直径を有する複数の粒子を調製する工程、
b.少なくとも30℃のスリップ融点を有するトリグリセリド油脂少なくとも50重量%、並びにモノグリセリド、ジグリセリド、モノおよび/またはジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(datem)、ステアリル−ラクチレートおよびそれらの組み合わせからなる群の中から選ばれる放出剤少なくとも1重量%を含有するブレンドを調製する工程、
c.工程bで得られたブレンドを、溶融状態で、工程aで得られた複数の粒子上に噴霧して、前記ブレンドの実質的に連続した層による前記粒子の封入を達成する工程、
d.得られた封入粒子を冷却して、自由流動挙動を示す複数の封入粒子を得る工程
を包含する。
【0040】
工程cにおいて、ブレンドを複数の粒子に噴霧するとき、該粒子は、好ましくは、当該ブレンドのスリップ融点よりも有意に低い温度を有する。かくして、ブレンドは、該粒子上に固化し始め、コーティングプロセス中の流動床条件を維持することが容易とされる。好ましくは、粒子の温度は、ブレンドのスリップ温度より少なくとも2℃、より好ましくは少なくとも5℃低い。同時に、粒子の温度は、好ましくは、ブレンドのスリップ温度より、30℃を超えて、より好ましくは20℃を超えて、より好ましくは15℃を超えて低くない。
【0041】
特に好ましい態様において、複数の粒子は、工程aにおいて、噴霧乾燥により、好ましくは機能性ベーカリー成分を上記吸湿性成分と共に噴霧乾燥することにより調製される。
【0042】
本発明は、また、上記顆粒および組成物を製造する方法を包含し、その方法は、
a.酵素、オキシドリダクタント、酸味料、ヒドロコロイド、スターチ、酵母、糖、水および香料からなる群の中から選ばれる1種またはそれ以上の機能性ベーカリー成分を含有し、少なくとも5μmの直径を有する複数の粒子を調製する工程、
b.前記複数の粒子を、トリグリセリド油脂、並びにモノグリセリド、ジグリセリド、モノおよび/またはジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(datem)、ステアリル−ラクチレートおよびそれらの組み合わせからなる群の中から選ばれる放出剤と組み合わせて、ブレンドを提供する工程であって、親油性成分が、少なくとも30℃のスリップ融点を有するトリグリセリド油脂少なくとも50重量%および放出剤少なくとも1重量%を含有するところの工程、
c.工程bで得られたブレンドから均質な懸濁物を調製する工程であって、前記懸濁物の連続層は溶融親油性成分により形成されるところの工程、
d.前記均質な懸濁物を、前記親油性成分の融点未満の温度を有するガス状または液状媒体中に噴霧する工程
e.得られた顆粒を回収する工程
を包含する。
【0043】
トリグリセリド油脂、放出剤および粒子を組み合わせる順序は重要でない。また、溶融親油性成分を含む懸濁物は、異なるアプローチを用いて、例えば粒子を溶融トリグリセリド油脂および/または溶融放出剤中に分散させることにより、あるいは粒状化トリグリセリド油脂を粒子および/または放出剤と混合し、溶融させることにより提供することができる。
【0044】
溶融成分を固化させるために使用される媒体は、好適には、ガスまたは液体からなり得る。好ましくは、この媒体は、上記組み合わせのスリップ融点よりも、少なくとも3℃、より好ましくは少なくとも8℃、最も好ましくは少なくとも15℃低い温度を有する。特に好ましい態様において、上記媒体は、ガス、特に空気または窒素であり、空気が最も好ましい。
【0045】
本発明を以下の例によりさらに説明する。
【0046】

例1
ファンガミル(Fungamyl)(登録商標)1600ベーカリー粒状物(アスペリギリス・オリザエから得られる市販のa−アミラーゼ製剤;ノボ・ノルディスク)を、ウルスター形状(Wurster geometry)を有する流動床実験室装置(GPCG1.1、グラット(Glatt)上で被覆する。
【0047】
ファンガミル1600を空気で流動化させる。パームカーネル油の水素化ステアリン留分(スリップ融点35℃)90重量%と蒸留モノグリセリド(モノマルス(Monomuls)90exコグニス(Cognis)TM;融点約40℃)10重量%からなる油脂ブレンドを溶融させ、流動化された粒状物に噴霧する。空気流量、床温度、油脂の温度および流量、噴霧空気の圧力および温度を、粒状物の周りに閉じた油脂フィルムが生成されるように制御する。床温度を、油脂が粒状物を湿潤させる前に固化して自由油脂粒子と非被覆粒状物を生じさせることを防止するに十分に高い温度で、かつ床が粘着性粒子の生成の結果凝集することを防止するに十分に低い温度に維持する。
【0048】
粒状物を異なる量の油脂ブレンドで被覆する2つの実験を行う。最終製品中の油脂の量は、低解像度NMRで測定する。両方の場合、このように得られる値は、粒状物に噴霧した油脂の合計量から算出した値とよく一致している。得られた2種の封入物は、ほぼ50重量%または75重量%の油脂ブレンドを含有することが見いだされる。
【0049】
粒子サイズ分布を、静的光散乱(マルバーン(Malvern)TM)2600C)により測定する。非被覆酵素粒状物は、約150μmの平均直径を示す。約50重量%の油脂ブレンドを含有する被覆顆粒は、約310μmの平均直径を示すが、同じブレンドを約75重量%含有する被覆顆粒は、約490μmの平均直径を示す。
【0050】
水性環境中での被覆粒子の安定性を、等量の酵素を含有する顆粒を24℃の脱イオン水中に懸濁させ、時間の関数として電気伝導率を測定することにより評価する。得られた曲線は、2〜10分以内にフラットになる伝導率の急速な増加を示し、両方の場合において少量の粒状物が完全には封入されなかったことを示す。50重量%の油脂ブレンドを含有する顆粒は、75重量%の油脂ブレンドを含有する顆粒よりも有意に速い初期放出を示す。これら曲線の平坦部は、50重量%製品よりも75重量%製品の方が有意により低い伝導率で達成され、75重量%の油脂ブレンドによる封入がより効果的であることを示す。
【0051】
被覆顆粒を24℃の脱イオン水中に再び懸濁させ、水の温度を約3℃/分の速度で上昇させながら、電気伝導率を測定する。両方の場合において、油脂の融点近くの温度で伝導率の急激な増加が観察される。
【0052】
75重量%の油脂ブレンドを含有する被覆顆粒の放出特性の温度依存性を、顆粒300mgを、7℃で水性バッファ(0.05M酢酸ナトリウムバッファ、pH5.2)15mlを収容する4つの異なる試験管に入れ、元の非被覆粒状物を、同じバッファ15mlを収容する別の試験管に入れる(対照)。これら試験管を7℃で、上下が逆になるように、10分間穏やかに回転させる。ついで、試験管をそれぞれ25、30、35および45℃の異なる水浴に浸漬する。水浴中での15分後、各懸濁液を氷水中ですばやく冷却する。その後、懸濁液を遠心し、濾過し、濾液中の酵素活性を測定する。結果は、45℃の水浴中に保持した懸濁液が対照試料(同一条件で保持)と同じ酵素活性を示すこと示し、これは封入酵素のすべてが効果的に放出されたことを意味する。さらに、35℃で保持された懸濁液において、酵素活性の大部分が放出されたことが見いだされる。他の2つの懸濁液、すなわち30および25℃で保持された懸濁液は、これらの高められた温度での平衡中にわずかな酵素活性のみを放出する。
【0053】
例2
例1のa−アミラーゼ製剤を噴霧冷却により被覆した。6つの異なる脂質コーティングを酵素製剤に適用した。
【表1】

【0054】
トリグリセリド油脂は、パームカーネル油の水素化ステアリン留分(スリップ融点35℃)であった。使用したモノグリセリドは、例1に記載したものと同じであった。使用したステアリルラクチレートは、SSL P55VEGexダニスコ(Danisco)TM(融点45℃)であった。使用したdatem製品は、パノダン(Panodan)AB 100FS/CexダニスコTMであった。
【0055】
微粉末を得るために、ファンガミル(登録商標)1600ベーカリー粒状物をD[v,0.5]=60μmの粒子サイズに粉砕した。この粒子サイズは、光散乱(マルバーンTM2600c)により測定した。脂質コーティング材料を65℃に加熱することにより溶融させた。その後、この溶融材料900gを取り、そのなかに、ウルトラターラックス(Ultra Turrax)(登録商標)の助けにより、フ粉砕したァンガミル1600を分散させた。この分散体の温度を、デジタル温度計で監視し、65℃で一定に維持した。
【0056】
上記分散体の霧化を、加熱可能な2流体噴霧ノズルを用いて行った。調温された水浴(65℃)からの水を上記ノズルを通してポンプ搬送し、ノズルを油脂の融点よりも十分高い一定温度に保ち、ノズル中での早期の凝結を防止した。油脂分散体を、加熱したチューブを通じてノズルに移行し、加圧下の窒素により霧化した。霧化した油脂の粒子サイズは、霧化圧力を変えることにより、40〜2000μmの範囲内に調整することができる。その液滴を、液体窒素中に噴霧し、単に残存液体窒素を蒸発させることによりプロセスの最後に集めた。ついて、粒子粉末を200〜400μmの粒子サイズを有するフラクションと、400〜800μmの粒子サイズを有するフラクションとに篩い分けした。
【0057】
水性環境下での被覆顆粒の放出特性を、少量の顆粒を20℃の脱イオン水に懸濁させ、数時間にわたる時間の関数として電気伝導率を測定することによって決定した。200〜400μmの粒子フラクションを測定のために採用した。100%放出の伝導率を、水をカプセルの融点よりも十分に高い温度に加熱し、20℃に冷却し、伝導率を測定することにより決定した。こうして、放出曲線(%放出)を計算することができる。
【0058】
粒状物2、3および6については、経時的に平坦となる導電率における急勾配の増加が観察される。粒状物4および5について測定された伝導率は、有意により遅い速度で増加する。粒状物1、すなわち放出剤を含有しない脂質で被覆された粒状物の伝導率増加の速度は、他の粒状物のどれよりもはるかに遅いことが観察される。
【0059】
上記実験を、伝導率を測定する代わりに経時的に顆粒から放出された酵素活性を決定するための試験を用いたことを除き、繰り返した。得られた結果は、伝導率の測定から得られた結果とよく対応していた。
【0060】
例3
以下の表に示したレシピに基づいて5つの異なるドウを調製した。すべての5つのドウは、60mgのアミラーゼ製剤(ファンガミルex NovoTM)を含有している。ドウ2、3、4、および5は、そのなかに、例2に記載したように調製した油脂被覆アミラーゼ粒状物(10%アミラーゼおよび90%脂質コーティング)を含めることにより調製する。ドウ2に使用した顆粒は、34℃のスリップ融点を有するトリグリセリド油脂からなる油脂コーティングを含有する。ドウ3、4および5に含まれた顆粒は、同じトリグリセリド油脂を本発明による放出剤(例2のものと同じ)とともに含有する。ドウ3に用いた顆粒は、油脂コーティングの10重量%のモノグリセリドを含有する。ドウ4は、油脂コーティングの10重量%のステアリルラクチレートを含有する。ドウ5は、油脂コーティングの10重量%のdatemを含有している。ドウおよびドウからベークされたパンの調製に使用したプロセス条件を以下の表に併記する。
【表2】

【0061】
ドウの調製中に、おそらくドウの調製段階中での酵素活性の結果として、ドウ1は、他のドウよりも粘着性であり、取り扱いがより困難であることが観察される。上記ドウから得られたパンを専門家のパネルにより評価する。ドウのコンシステンシーおよび比体積の点で、ドウ1、3、4および5から得られたベークされた製品は、全く類似しており、ドウ4から得られた製品は、若干劣る弾性コンシステンシーを示すことが見いだされる。ドウ2から得られた製品は、他のベークされた製品よりもはるかにドライで硬いコンシステンシーを有することが見いだされる。また、この製品の比体積は、他の製品のそれよりも有意に低いことが見いだされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドウの調製に使用するために好適な顆粒であって、
a.酵素、オキシドリダクタント、酸味料、ヒドロコロイド、スターチ、酵母、糖、水および香料からなる群の中から選ばれる1種またはそれ以上の機能性ベーカリー成分を含有し、少なくとも5μmの直径を有する親水性コア、および
b.少なくとも30℃のスリップ融点を有するトリグリセリド油脂少なくとも50重量%、並びにモノグリセリド、ジグリセリド、モノおよび/またはジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(datem)、ステアリル−ラクチレートおよびそれらの組み合わせからなる群の中から選ばれる放出剤少なくとも1重量%を含有し、前記コアを封入する親油性の実質的に連続した層
を備える顆粒。
【請求項2】
前記機能性ベーカリー成分が、酵素である請求項1に記載の顆粒。
【請求項3】
前記コアが、a−アミラーゼ、β−アミラーゼ、キシラナーゼ、ヘミ−セルラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、グルコースオキシダーゼ、オキシドリダクターゼ、リポオキシゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、プルラナーゼ、インバーターゼ、マンナナーゼ、ガラクトマンナナーゼ、ラクターゼおよびそれらの組み合わせからなる群の中から選ばれる酵素を含む請求項2に記載の顆粒。
【請求項4】
前記放出剤が、モノグリセリド、datem、ステアリルラクチレートおよびそれらの組み合わせからなる群の中から選ばれる請求項1〜3のいずれか1項に記載の顆粒。
【請求項5】
前記放出剤が、モノグリセリドである請求項4に記載の顆粒。
【請求項6】
前記放出剤が、datemである請求項4に記載の顆粒。
【請求項7】
前記親油性の層が、2〜40重量%の放出剤を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の顆粒。
【請求項8】
前記トリグリセリド油脂が、30〜40℃の範囲内のスリップ融点を示す請求項1〜7のいずれか1項に記載の顆粒。
【請求項9】
前記トリグリセリド油脂が、N20>50;10=N30=60;およびN40<5のN−プロファイルを示す請求項1〜8のいずれか1項に記載の顆粒。
【請求項10】
顆粒が10〜1000μm、好ましくは30〜500μmの範囲内の直径を有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の顆粒。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の顆粒を含み、前記顆粒の平均直径が、30〜500μmの範囲内、好ましくは60〜400μmの範囲内にある組成物。
【請求項12】
前記組成物が、レドックス剤、乳化剤、ヒドロコロイド、小麦粉、塩、麦芽粉、麦芽エキス、グルテンおよびスターチからなる群の中から選ばれる1種またはそれ以上のベーカリー成分をさらに含む請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項11または12に記載の組成物の、ドウ、好ましくはパンのドウの調製における使用。
【請求項14】
請求項11または12に記載の組成物を0.01〜5重量%含むドウ。
【請求項15】
請求項11または12に記載の組成物を製造する方法であって、
a.酵素、オキシドリダクタント、酸味料、ヒドロコロイド、スターチ、酵母、糖、水および香料からなる群の中から選ばれる1種またはそれ以上の機能性ベーカリー成分を含有し、少なくとも5μmの直径を有する複数の粒子を調製する工程、
b.少なくとも30℃のスリップ融点を有するトリグリセリド油脂少なくとも50重量%、並びにモノグリセリド、ジグリセリド、モノおよび/またはジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(datem)、ステアリル−ラクチレートおよびそれらの組み合わせからなる群の中から選ばれる放出剤少なくとも1重量%を含有するブレンドを調製する工程、
c.工程bで得られたブレンドを、溶融状態で、工程aで得られた複数の粒子上に噴霧して、前記ブレンドの実質的に連続した層による前記粒子の封入を達成する工程、
d.得られた封入粒子を冷却して、自由流動挙動を示す複数の封入粒子を得る工程
を包含する方法。
【請求項16】
請求項11または12に記載の組成物を製造する方法であって、
a.酵素、オキシドリダクタント、酸味料、ヒドロコロイド、スターチ、酵母、糖、水および香料からなる群の中から選ばれる1種またはそれ以上の機能性ベーカリー成分を含有し、少なくとも5μmの直径を有する複数の粒子を調製する工程、
b.前記複数の粒子を、トリグリセリド油脂、並びにモノグリセリド、ジグリセリド、モノおよび/またはジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(datem)、ステアリル−ラクチレートおよびそれらの組み合わせからなる群の中から選ばれる放出剤と組み合わせて、ブレンドを提供する工程であって、前記親油性成分が、少なくとも30℃のスリップ融点を有するトリグリセリド油脂少なくとも50重量%および前記放出剤少なくとも1重量%を含有するところの工程、
c.工程bで得られたブレンドから均質な懸濁物を調製する工程であって、前記懸濁物の連続層は溶融親油性成分により形成されるところの工程、
d.前記均質な懸濁物を、前記親油性成分の融点未満の温度を有するガス状または液状媒体中に噴霧する工程
e.得られた顆粒を回収する工程
を包含する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドウの調製に使用するために好適な顆粒を含む組成物であって、前記顆粒は、30〜500μmの範囲内の平均直径を有し、かつ
a.1種またはそれ以上の酵素を含有し、少なくとも5μmの直径を有する親水性コア、および
b.少なくとも30℃のスリップ融点を有するトリグリセリド油脂少なくとも50重量%、並びにモノグリセリド、ジグリセリド、モノおよび/またはジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(datem)、ステアリル−ラクチレートおよびそれらの組み合わせからなる群の中から選ばれる放出剤少なくとも1重量%を含有し、前記コアを封入する親油性の実質的に連続した層
を備え、
粒状形態にある1種またはそれ以上のベーカリー成分をさらに含み、前記1種またはそれ以上のベーカリー成分が、レドックス剤、乳化剤、ヒドロコロイド、小麦粉、塩、麦芽粉、麦芽エキス、グルテンおよびスターチからなる群の中から選ばれる
組成物。
【請求項2】
ドウの調製に使用するために好適な顆粒を含む組成物であって、前記顆粒は、60〜300μmの範囲内の平均直径を有し、かつ
a.酸味料およびヒドロコロイドからなる群の中から選ばれる1種またはそれ以上のベーカリー成分を含有し、少なくとも30μmの直径を有する親水性コア、および
b.少なくとも30℃のスリップ融点を有するトリグリセリド油脂少なくとも50重量%、並びにモノグリセリド、ジグリセリド、モノおよび/またはジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(datem)、ステアリル−ラクチレートおよびそれらの組み合わせからなる群の中から選ばれる放出剤少なくとも1重量%を含有し、少なくとも10μmの厚さを有し、前記コアを封入する親油性の実質的に連続した層
を備え、
粒状形態にある1種またはそれ以上のベーカリー成分をさらに含み、前記1種またはそれ以上のベーカリー成分が、レドックス剤、乳化剤、ヒドロコロイド、小麦粉、塩、麦芽粉、麦芽エキス、グルテンおよびスターチからなる群の中から選ばれる
組成物。
【請求項3】
前記機能性ベーカリー成分が、酵素である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記コアが、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、キシラナーゼ、ヘミ−セルラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、グルコースオキシダーゼ、オキシドリダクターゼ、リポオキシゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、プルラナーゼ、インバーターゼ、マンナナーゼ、ガラクトマンナナーゼ、ラクターゼおよびそれらの組み合わせからなる群の中から選ばれる酵素を含む請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記放出剤が、モノグリセリド、datem、ステアリルラクチレートおよびそれらの組み合わせからなる群の中から選ばれる請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記放出剤が、モノグリセリドである請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記放出剤が、datemである請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記親油性の層が、2〜40重量%の放出剤を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記トリグリセリド油脂が、30〜40℃の範囲内のスリップ融点を示す請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記トリグリセリド油脂が、N20>50;10=N30=60;およびN40<5のN−プロファイルを示す請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記顆粒の平均直径が、60〜400μmの範囲内にある請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物の、ドウ、好ましくはパンのドウの調製における使用。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物を0.01〜5重量%含むドウ。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物を製造する方法であって、
a.酵素、酸味料およびヒドロコロイドからなる群の中から選ばれる1種またはそれ以上の機能性ベーカリー成分を含有し、少なくとも5μmの直径を有する複数の粒子を調製する工程、
b.少なくとも30℃のスリップ融点を有するトリグリセリド油脂少なくとも50重量%、並びにモノグリセリド、ジグリセリド、モノおよび/またはジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(datem)、ステアリル−ラクチレートおよびそれらの組み合わせからなる群の中から選ばれる放出剤少なくとも1重量%を含有するブレンドを調製する工程、
c.工程bで得られたブレンドを、溶融状態で、工程aで得られた複数の粒子上に噴霧して、前記ブレンドの実質的に連続した層による前記粒子の封入を達成する工程、
d.得られた封入粒子を冷却して、自由流動挙動を示す複数の封入粒子を得る工程
e.レドックス剤、乳化剤、ヒドロコロイド、小麦粉、塩、麦芽粉、麦芽エキス、グルテンおよびスターチからなる群の中から選ばれ、粒状形態にある1種またはそれ以上のベーカリー成分を含める工程
を包含する方法。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物を製造する方法であって、
a.酵素、酸味料およびヒドロコロイドからなる群の中から選ばれる1種またはそれ以上の機能性ベーカリー成分を含有し、少なくとも5μmの直径を有する複数の粒子を調製する工程、
b.前記複数の粒子を、トリグリセリド油脂、並びにモノグリセリド、ジグリセリド、モノおよび/またはジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(datem)、ステアリル−ラクチレートおよびそれらの組み合わせからなる群の中から選ばれる放出剤と組み合わせて、ブレンドを提供する工程であって、前記親油性成分が、少なくとも30℃のスリップ融点を有するトリグリセリド油脂少なくとも50重量%および前記放出剤少なくとも1重量%を含有するところの工程、
c.工程bで得られたブレンドから均質な懸濁物を調製する工程であって、前記懸濁物の連続層は溶融親油性成分により形成されるところの工程、
d.前記均質な懸濁物を、前記親油性成分の融点未満の温度を有するガス状または液状媒体中に噴霧する工程
e.得られた顆粒を回収する工程、
f.レドックス剤、乳化剤、ヒドロコロイド、小麦粉、塩、麦芽粉、麦芽エキス、グルテンおよびスターチからなる群の中から選ばれ、粒状形態にある1種またはそれ以上のベーカリー成分を含める工程
を包含する方法。

【公表番号】特表2006−503577(P2006−503577A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546547(P2004−546547)
【出願日】平成15年10月22日(2003.10.22)
【国際出願番号】PCT/NL2003/000711
【国際公開番号】WO2004/037004
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(505152480)シーエスエム・ネーデルランド・ビー.ブイ. (9)
【Fターム(参考)】