説明

封筒製袋機用の品質管理装置

【課題】封筒の品質不良の発生要因を特定するためのデータを得ることができ,更に,品質不良につながる動作が封筒製袋機で発生したことを後工程に通達することのできる封筒製袋機の品質管理装置を提供する。
【解決手段】品質管理装置1は,収集条件が成立すると,封筒製袋機の各部の動作状態を示す動作ログデータを記憶するデータ記憶部13と,動作ログデータを封筒製袋機から定期的に収集し,収集した動作ログデータを収集日時を付与してデータ記憶部13に記憶する動作ログデータ収集手段10と,封筒製袋機が区分け動作を実行する毎に,区分けされた封筒が生産される間の動作ログデータを解析し,区分けされた封筒のロット,生産日時に加え,封筒製袋機の各部の動作状態の内容を記した品質管理ラベル15をプリンタ14で出力する動作を行う品質管理ラベル出力部12を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ダイレクトメールなどに利用され,封筒製袋機で生産される封筒の品質を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
個人向けのダイレクトメール(DM: Direct Mail)の一つの形態として,葉書ではなくDM用の封筒を利用する形態があるが,個人情報が印刷された帳票を封入・封緘するDM用の封筒に品質不良が混入してしまうと,DM用の封筒から帳票が郵送中に出てしまうなどして,個人情報の漏洩につながるため,DM用の封筒の品質不良をなくす取り組みが必要になる。
【0003】
品質不良の封筒による事故を防止する一つの手法として,封筒を生産する装置である封筒製袋機に検査機を設置し,封筒製袋機で生産された封筒の品質をオンラインで検査することが考えられ,封筒製袋機で生産される封筒の品質を検査する装置として,封筒の用紙に塗布された糊の塗布状態を検査する封筒糊付部検査装置が特許文献1で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-290447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
確かに,特許文献1で開示されている封筒糊付部検査装置など,特定の品質不良を検査するための検査機を封筒製袋機に設置することで,封筒製袋機で生産される封筒に発生した特定の品質不良(例えば,糊付け不良)を検知することはできるようになるが,品質不良の発生要因を特定するためのデータは得られないため,根本的な品質不良防止策を講じることはできなかった。
【0006】
更に,個人情報が印刷された帳票を封入・封緘するDM用の封筒に品質不良が混入することを防止するためには,特定の品質不良が発生のみならず,品質不良につながる動作が封筒製袋機で発生したことを後工程に通達することが必要になるが,品質不良につながる動作が封筒製袋機で発生したことを後工程に通達することは考慮されていなかった。
【0007】
そこで,本発明は,封筒の品質不良の発生要因を特定するためのデータを得ることができ,更に,品質不良につながる動作が封筒製袋機で発生したことを後工程に通達することのできる封筒製袋機の品質管理装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決する本発明の品質管理装置は,封筒の品質不良の発生要因を特定するためのデータを得るために,封筒製袋機の各部の動作状態を示す動作ログデータを記憶するデータ記憶部と,前記動作ログデータを封筒製袋機から定期的に収集し,収集した動作ログデータを収集日時を付与して前記データ記憶部に記憶する動作ログデータ収集部を備え,更に,品質不良につながる動作が封筒製袋機で発生したことを後工程に通達することのできるようにするために,封筒製袋機が区分け動作を実行する毎に,区分けされた封筒が生産される間の前記動作ログデータを解析し,区分けされた封筒のロット,生産日時に加え,封筒製袋機の各部の動作状態の内容を記した品質管理ラベルをプリンタで出力する動作を行う品質管理ラベル出力部を備えている。
【0009】
封筒の品質不良にかかる前記動作ログデータには,封筒製袋機の運転状態,糊を塗布する版胴の着脱状態,糊供給ポンプの作動状態,及び,封筒製袋機に設置されている検査機の動作状態を示すデータを含ませるとよく,前記品質管理ラベル出力部は,封筒製袋機の各部の動作状態の内容として,封筒製袋機の停止の有無,糊を塗布する版胴の着脱の有無,糊供給ポンプの停止の有無,及び,前記検査機の停止の有無を前記品質管理ラベルに印刷するとよい。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明によれば,封筒の品質不良の発生要因を特定するためのデータを得ることができ,更に,品質不良につながる動作が封筒製袋機で発生したことを後工程に通達することのできる封筒製袋機の品質管理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】品質管理装置が設けられたシステムの構成を説明する図。
【図2】品質管理装置のブロック図。
【図3】品質管理装置の動作ログデータ収集部の動作を示した図。
【図4】品質管理装置の品質管理ラベル出力部の動作を示した図。
【図5】品質管理ラベルを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここから,本願発明の実施形態について,本願発明の技術分野に係わる当業者が,本願発明の内容を理解し,本願発明を実施できる程度に説明する。
【0013】
図1は,本実施形態にかかわる品質管理装置1が設けられたシステムの構成を説明する図で,図1には,DM(DM: Direct Mail)用の封筒3の生産装置である封筒製袋機2と,封筒製袋機2の動作状態を自動的に記録し,封筒製袋機2の動作状態を少なくとも記した品質管理ラベル15をプリンタ14から出力する品質管理装置1とから少なくとも構成され,図1では,封筒製袋機2には検査装置として,糊付け不良を検査する糊付け検査機20が設置され,品質管理装置1にはプリンタ14が少なくとも接続されている。
【0014】
品質管理装置1は,封筒製袋機2の制御盤21に組み込まれているPLC21a(PLC: Programmable Logic Controller)から,封筒製袋機2の各部の動作状態を示す動作ログデータを取得・記憶し,封筒3を所定枚数毎に区分けする動作が封筒製袋機2で実行されると,区分けされた封筒3が生産されている間の動作ログデータから,区分けされた封筒3のロットや生産日時に加え,封筒製袋機2の各部の動作状態を記した品質管理ラベル15をプリンタ14で出力する動作を行う。
【0015】
封筒製袋機2の各部の動作状態を示す動作ログデータをPLC21aから取得・記憶しておけば,品質不良の封筒3が発見された際,品質不良の封筒3が梱包されていた箱3aに貼られた品質管理ラベル15から,区分けされた封筒3が生産されている間の動作ログデータを特定でき,この時の動作ログデータを参考にして,発見された品質不良の発生要因を特定し,この品質不良を発生させない抜本的な対策を講じることができるようになる。
【0016】
また,区分けされた封筒3が生産されている間の封筒製袋機2の動作状態を記した品質管理ラベル15を箱3aに貼っておけば,封筒製袋機2のオペレータは,封筒製袋機2に動作異常が発生したことがわかるようになるし,また,品質不良につながる動作が封筒製袋機で発生したことを後工程に通達することのできるようになる。
【0017】
図2は,品質管理装置1のブロック図である。品質管理装置1は,汎用のパーソナルコンピュータやデータロガーを利用して実現される装置で,封筒製袋機2の制御盤21に組み込まれているPLC21aと通信する通信インターフェース10と,封筒製袋機2の各部の動作状態を示す動作ログデータ等が記憶されるデータ記憶部13と,動作ログデータを封筒製袋機2から定期的に収集し,収集した動作ログデータを記憶する動作ログデータ収集部11と,封筒製袋機2が区分け動作を実行する毎に,区分けされた封筒3が生産される間の動作ログデータを解析し,区分けされた封筒3のロット,生産日時に加え,封筒製袋機2の各部の動作状態を記した品質管理ラベル15をプリンタ14で出力する動作を行う品質管理ラベル出力部12を備え,品質管理装置1には外部装置プリンタ14が接続されている。
【0018】
品質管理装置1の通信インターフェース部10は,汎用のパーソナルコンピュータやデータロガーに備えられたネットワークインターフェースで実現され,データ記憶部13は,汎用のパーソナルコンピュータやデータロガーに備えられたメモリで実現される。動作ログデータ収集部11及び品質管理ラベル出力部12は,汎用のパーソナルコンピュータやデータロガーに備えられたCPUとCPUを各部として動作させるためのソフトウェアで実現される。
【0019】
まず,品質管理装置1の動作ログデータ収集部11について詳細に説明する。品質管理装置1の動作ログデータ収集部11には,封筒製袋機2の各部の動作状態を示すPLC21aのデバイスが予め設定され,品質管理装置1の動作ログデータ収集部11は,このデバイスのデータを動作ログデータとして定期的に封筒製袋機2のPLC21aから取得し記憶する。
【0020】
動作ログデータを収集するPLC21aのデバイスは,封筒3の品質不良と関連すると想定されるデバイスとすることが必要で,このようなデバイスとしては,封筒製袋機2の運転信号に対応するデバイス,糊を塗布する版胴の着脱信号に対応するデバイス,糊付け検査機20の糊供給ポンプの作動信号に対応するデバイス,及び,糊付け検査機20の動作信号に対応するデバイスを選択するとよい。
【0021】
図3は,品質管理装置1の動作ログデータ収集部11の動作を示した図である。品質管理装置1の動作ログデータ収集部11は,定期的な条件(例えば,500msec毎)及び/又はPLC21aから送信されるデータの変化を収集条件とし,所定の収集条件が成立すると(S1),動作ログデータ収集部11は,所定のデバイスのデータをPLC21aから収集する(S2)。
【0022】
品質管理装置1のデータ記憶部13には,PLC21aから収集した動作ログデータを格納するデータベースが設けられ,事前に定められたデバイスのデータをPLC21aから収集すると(S3),品質管理装置1の動作ログデータ収集部11は,PLC21aから収集したデータを動作ログデータとし,この時点の時刻と共にデータベースに追加することで,封筒製袋機2のPLC21aから収集した動作ログデータをデータ記憶部13に記憶する処理を(S4),品質管理装置1の電源がOFFになるまで行う(S5)。
【0023】
次に,品質管理装置1の品質管理ラベル出力部12について説明する。品質管理ラベル出力部12は,封筒製袋機2が区分け動作するときに作動し,封筒製袋機2が区分け動作する信号は,封筒製袋機2のPLC21aから得ることもできるし,封筒3の員数をカウントするセンサが品質管理装置1に接続されていれば,品質管理装置1の内部で発生させることもできる。
【0024】
品質管理装置1の品質管理ラベル出力部12は,封筒製袋機2が区分け動作したときの時刻を記憶し,封筒製袋機2が区分け動作すると,品質管理装置1の品質管理ラベル出力部12は,所定の手順に従い,区分けされた封筒3が生産される間の動作ログデータを解析し,区分けされた封筒3のロット,生産日時に加え,封筒製袋機2の各部の動作状態を記した品質管理ラベル15をプリンタ14で出力する動作を行う
【0025】
図4は,品質管理装置1の品質管理ラベル出力部12の動作を示した図である。区分け動作に対応するデバイスのデータがONになると(S10),品質管理装置1の品質管理ラベル出力部12は,封筒製袋機2が前回区分け動作したときの時刻以降の動作ログデータを抽出・解析し,区分けされた封筒3が生産される間の封筒製袋機2の各部の動作状態を記したラベルデータを生成し(S11),区分け動作の時刻,すなわち,区分け動作に対応するデバイスのデータがONになった時刻とラベルデータをデータ記憶部13に記憶させた後(S12),生成したラベルデータをプリンタ14に送信し,区分けされた封筒3が詰められる箱に貼られる品質管理ラベル15をプリンタ14で出力する(S13)。
【0026】
図5は,品質管理ラベル15を説明する図である。品質管理ラベル15に印字される各部の動作状態としては,封筒3の品質不良と関連する動作を記すことが望ましく,図5では,封筒製袋機2の停止,糊を塗布する版胴の着脱,糊付け検査機20の糊供給ポンプの作動停止,及び,糊付け検査機20の作動停止の有無が,封筒製袋機2の各部の動作状態として品質管理ラベル15が印字されている。
【0027】
また,後工程において品質不良の封筒3が発見されたときに,品質不良の封筒3を生産していたときの動作ログデータを特定できるように,プリンタ14から出力する品質管理ラベル15には,図5で図示したように,封筒3の品目名及び注番,品質管理装置1が連番などで生成する箱番,並びに,封筒3の製造日時を印字するとよい。
【符号の説明】
【0028】
1 品質管理装置
10 通信インターフェース部
11 動作ログデータ収集部
12 品質管理ラベル出力部
13 データ記憶部
14 プリンタ
15 品質管理ラベル
2 封筒製袋機
20 糊付け検査機
21 制御盤
21a PLC
3 封筒
3a 箱


【特許請求の範囲】
【請求項1】
封筒製袋機の各部の動作状態を示す動作ログデータを記憶するデータ記憶部と,所定の収集条件が成立すると,前記動作ログデータを封筒製袋機から収集し,収集した動作ログデータを収集日時を付与して前記データ記憶部に記憶する動作ログデータ収集部と,封筒製袋機が区分け動作を実行する毎に,区分けされた封筒が生産される間の前記動作ログデータを解析し,区分けされた封筒のロット,生産日時に加え,封筒製袋機の各部の動作状態の内容を記した品質管理ラベルをプリンタで出力する動作を行う品質管理ラベル出力部と,を備えていることを特徴とする品質管理装置。
【請求項2】
前記動作ログデータ収集部が収集する前記動作ログデータには,封筒製袋機の運転状態,糊を塗布する版胴の着脱状態,糊供給ポンプの作動状態,及び,封筒製袋機に設置されている検査機の動作状態を示すデータが含まれ,前記品質管理ラベル出力部は,封筒製袋機の各部の動作状態として,封筒製袋機の停止の有無,糊を塗布する版胴の着脱の有無,糊供給ポンプの停止の有無,及び,前記検査機の停止の有無を前記品質管理ラベルに印刷する,ことを特徴とする請求項1に記載の品質管理装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−25409(P2012−25409A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163705(P2010−163705)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】