説明

封緘シール

【課題】容器の蓋の封緘シールにおいて、利用者が容易に開封でき、なおかつ不正開封を防止することを可能にすることである。
【解決手段】容器本体と容器本体の開口に取り付けられる開封可能な蓋とに跨って、または、容器本体の開口に取り付けられる蓋上部と蓋下部とに分かれて開封可能な蓋の蓋上部から蓋下部に跨って、貼付される封緘シールであって、封緘シールは、20%の伸びを与えるときの引張応力が20MPa以下の材料で構成される基材層と、基材層における貼付面の一部または全部に粘着材が塗布される層である粘着材層とを備え、封緘シールは、切断されずに200%の歪みを与えることが可能であり、200%の歪みを与えた後、永久歪みが100%以上となることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は封緘シールに係り、特に容器の蓋の封緘シールに関する。
【背景技術】
【0002】
封緘シールは、内容物を充填した容器の蓋等の開封部分に貼付され、意図しない蓋の開封を防止するものである。また、封緘シールは、容器の流通過程および店頭での不正開封がわかることが好ましい。そのため、封緘シールは、脆性破断やミシン目破断によって開封状態が分かるようになっている。
【0003】
ここで、強度の弱い基材を用いた封緘シールを蓋と容器に跨って貼り付けるだけでは、脆性破断やミシン目破断によって意図せずして開封してしまう虞がある。また、接着強度の弱い粘着材を含む封緘シールを蓋と容器に跨って貼り付けるだけでは、不正開封後に貼り直されると、不正開封を見抜けない虞がある。そこで、強度の比較的強い基材を用いた封緘シール、接着強度の比較的強い粘着材を含む封緘シールが用いられている。
【0004】
その他、容器の流通過程および店頭での不正開封をわかるようにするために、封緘シールの裏側に隠し印刷を施して、封緘シールを剥がしたときに、開封事実を示す文字等が現れるようにした印字転移型の封緘シールが用いられている。また、特許文献1には、封緘シールにスリットや切り込みを設けて、不正開封をした場合に、貼り直すことができないようにする切れ込み型の封緘シールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−42817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、切れ込み型の封緘シールは、流通過程における搬送時に振動や容器同士のこすれ合いによって、封緘部分の破損が生じ、不正開封との見分けがつきにくい。このように、封緘シールには、まだ工夫の余地があると考えられる。
【0007】
本発明の目的は、不正開封を防止することが可能な封緘シールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る封緘シールは、容器本体と容器本体の開口に取り付けられる開封可能な蓋とに跨って、または、容器本体の開口に取り付けられる蓋上部と蓋下部とに分かれて開封可能な蓋の蓋上部から蓋下部に跨って、貼付される封緘シールであって、封緘シールは、20%の伸びを与えるときの引張応力が20MPa以下の材料で構成される基材層と、基材層における貼付面の一部または全部に粘着材が塗布される層である粘着材層とを備え、封緘シールは、切断されずに200%の歪みを与えることが可能であり、200%の歪みを与えた後、永久歪みが100%以上となることを特徴とする封緘シール。
【0009】
また、本発明に係る封緘シールにおいて、基材層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体のうち少なくとも1種を含んで構成されることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る封緘シールにおいて、基材層は、永久歪みが与えられる部分の基材層の可視光吸収率が変化し、もとの色と異なる色を呈する材料で構成されることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る封緘シールにおいて、基材層の伸びが与えられる部分に、永久歪みが与えられるときの基材層の色と異なる色の印刷層を有することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る封緘シールにおいて、封緘シール付容器は、容器本体と容器本体の開口に取り付けられる開封可能な蓋とに跨って、または、容器本体の開口に取り付けられる蓋上部と蓋下部とに分かれて開封可能な蓋の蓋上部から蓋下部に跨って、封緘シールが貼付される封緘シール付容器であって、封緘シールは、20%の伸びを与えるときの引張応力が20MPa以下の材料で構成される基材層と、基材層における貼付面の一部または全部に粘着材が塗布される層である粘着材層とを備え、封緘シールは、切断されずに200%の歪みを与えることが可能であり、200%の歪みを与えた後、永久歪みが100%以上となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記構成の少なくとも1つにより、封緘シールは、容器本体と容器本体の開口に取り付けられる開封可能な蓋とに跨って、または、容器本体の開口に取り付けられる蓋上部と蓋下部とに分かれて開封可能な蓋の蓋上部から蓋下部に跨って、貼付される封緘シールであって、封緘シールは、20%の伸びを与えるときの引張応力が20MPa以下の材料で構成される基材層と、基材層における貼付面の一部または全部に粘着材が塗布される層である粘着材層とを備え、封緘シールは、切断されずに200%の歪みを与えることが可能であり、200%の歪みを与えた後、永久歪みが100%以上となる材料で構成される。これにより、封緘シールは、弱い力で引っ張っても伸びる機能を有し、また、200%の歪みを与えても切断されないので、意図せずに封緘シールが切断されることを防止でき、かつ伸びた後に元の長さに戻らないので、開封履歴の確認ができる。
【0014】
また、基材層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体のうち少なくとも1種を含んで構成される。これにより、封緘シールは、弱い力で伸ばすことができる。
【0015】
また、基材層は、永久歪みが与えられる部分の基材層の可視光吸収率が変化し、もとの色と異なる色を呈する材料で構成される。これにより、基材層に伸びが与えられることによって永久歪みが与えられる部分の基材層が変色する。したがって、仮に不正開封されるときにも、利用者が封緘シールの開封履歴を認識することができる。
【0016】
また、基材層の伸びが与えられる部分に、永久歪みが与えられるときの基材層の色と異なる色の印刷層を有する。これにより、基材層の伸びが与えられる部分の変色現象を顕著にすることができる。したがって、仮に不正開封されるときにも、利用者が封緘シールの開封履歴を認識することができる。
【0017】
以上のように、上記構成の封緘シールおよびその封緘シールが貼付される封緘シール付容器によれば、不正開封を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る実施の形態において、封緘シールが貼付される容器の側面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、封緘シールを説明する正面図である。
【図3】本発明に係る実施の形態において、封緘シールの変形例1を説明する図である。
【図4】本発明に係る実施の形態において、封緘シールの変形例2を説明する図である。
【図5】本発明に係る実施の形態において、封緘シールを説明する側面図である。
【図6】本発明に係る実施の形態において、基材層の引張抵抗力と歪みとの関係性を説明する図である。
【図7】本発明に係る実施の形態において、ヒンジタイプの蓋を開封する場合の様子を説明する図である。
【図8】本発明に係る実施の形態において、各実施例および各比較例の測定結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を用いて、本発明の実施の形態につき、詳細に説明する。以下において述べる材料、成形条件等は、説明のための一例であり、製品の仕様に合わせ、適当な他の材料、成形条件を採用することができる。
【0020】
以下では、封緘シールを貼付する容器として、食用油、めんつゆ等に用いるポリエチレンテレフタレート(PET)製のボトルを説明するが、これ以外の適当な容器であってもよい。例えば、医薬品、化粧品、食料品、および洗剤等の容器であってもよい。したがって、容器の形状や材質は限定されず、紙の箱等でもよい。
【0021】
以下では、容器の蓋として、ポリプロピレン製のヒンジタイプの蓋を説明するが、これ以外の適当な蓋であってもよい。例えば、スクリュータイプやはめ込みタイプ等の蓋であってもよい。したがって、蓋の形状や材質は限定されず、金属製のスクリュータイプ等でもよい。ここで、ヒンジタイプとスクリュータイプとはめ込みタイプの蓋について述べる。ヒンジタイプの蓋は、蝶番を有する蓋の蓋上部を押し上げることで開封することができる。蓋下部は、容器本体にねじ込みされ、容器本体と一体とすることができる。スクリュータイプの蓋は、容器本体に対して蓋を回動することで開封することができる。はめ込みタイプの蓋は、容器本体にはめ込まれた蓋を任意の方向に引き出すことで開封することができる。
【0022】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じて以前に述べた符号を用いるものとする。
【0023】
図1は、封緘シール10が貼付される容器20の正面図である。図1に示すように、X方向が容器20について幅方向、Z方向が容器20について縦方向となり高さ方向を表す。
【0024】
容器20は、容器本体22と、蓋24とを含んで構成される。ここでは、容器20は、容器本体22の開口に開封可能な蓋24を取り付けた容器20を説明する。場合によっては、容器20は、容器本体22と蓋24が一体となったものであってもよい。
【0025】
容器本体22は、内容物30を収容する機能を有する。ここで例えば、容器本体22は、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のボトルとすることができる。内容物30は例えば、食用油やめんつゆとすることができる。
【0026】
蓋24は、蓋上部26と蓋下部28とを含んで構成される。ここで、蓋24は、ポリプロピレン(PP)製のヒンジタイプの蓋とすることができる。蓋24は、容器本体の開口部を閉封し、容器本体22内に内容物30を保持する機能を有する。蓋上部26と蓋下部28とは蝶番32を介してつながっている。蝶番32を有する蓋の蓋上部26を押し上げて開封することで、容器本体22内から内容物30を取り出すことができる。ヒンジタイプの蓋においては、蓋上部26が、利用者が指一本で容易に開封できることが好ましい。
【0027】
封緘シール10は、容器本体22の開口部を閉封するように取り付けられる蓋24と、容器本体22とに跨って貼付される。場合によっては、蓋下部26は容器本体22と一体とすることもできる。図1は、蓋下部26が容器本体22にねじ込まれて固着された状態であり、封緘シール10を蓋24の側面片方に貼付する様子を示すが、場合によっては、側面両方、または正面に貼付してもよい。
【0028】
図2は、封緘シール10を説明する正面図である。図2に示すように、X方向が封緘シール10の幅方向、Z方向が封緘シール10の縦方向となり高さ方向を表す。
【0029】
封緘シール10は、縦方向の中央部に封緘シールくびれ部16を有し、封緘シールくびれ部16を境に、封緘シール上部12と封緘シール下部14とを含んで構成される。その形状の寸法は、例えば封緘シール上部12の最上幅Lt=15mm、封緘シールくびれ部16の最細幅Ln=7mm、封緘シール下部14の最下幅Lb=15mm、高さH=19mmとすることができる。
【0030】
また、封緘シール10の形状は、場合によっては、封緘シールくびれ部16を有していないものでもよく、例えば変形例1として、図3に示される長方形であってもよい。また、この他の形状でもよく、封緘シールくびれ部16を有する変形例2として、図4に示されるいわゆるダンベル型のものであってもよい。
【0031】
封緘シール上部12は、−Z方向つまり封緘シールくびれ部16に向かうほど幅が減少する台形形状を有する。その形状の寸法は、例えば封緘シール上部12の最上幅Lt=15mm、封緘シールくびれ部16との境界における幅Ltn=9mm、高さHt=7mmとすることができる。この例では、封緘シール上部12の台形形状の面積St=84mm2である。
【0032】
封緘シール下部14は、Z方向つまり封緘シールくびれ部16に向かうほど幅が減少する台形形状を有する。その形状の寸法は、例えば封緘シール下部14の最下幅Lb=15mm、封緘シールくびれ部16との境界における幅Lbn=9mm、高さHb=7mmとすることができる。この例では、封緘シール上部12の台形形状の面積Sb=84mm2である。
【0033】
封緘シールくびれ部16は、封緘シール上部12と封緘シール下部14との形状によってもたらされるくびれであり、基材層40が伸ばされるときに、基材層の延伸性を高める機能を有する。粘着力を大きくするために、封緘シール上部12と封緘シール下部14は、幅広でかつ粘着面積が大きいほうが好ましく、封緘シールくびれ部16は、伸びやすくなるよう幅狭であることが好ましい。このため、封緘シールくびれ部16は、封緘シール上部12と封緘シール下部14より幅狭とする。その形状の寸法は、例えば封緘シール上部12との境界における幅Ltn=9mm、封緘シール下部14との境界における幅Lbn=9mm、封緘シールくびれ部16の最細幅Ln=7mm、高さHn=5mmとすることができる。この例では、封緘シールくびれ部16の面積Sn=40mm2である。
【0034】
図5は、封緘シール10を説明する側面図である。図5は、見やすくするために、Y方向に拡大されている。図5に示すように、Y方向が封緘シール10の厚み方向、Z方向が縦方向となり高さ方向を表す。
【0035】
封緘シール10は、側面から見た場合、基材層40と粘着材層50とを含んで構成される。基材層40は、基材層上部42と、基材層下部44と、基材層くびれ部46とを含んで構成される。また、粘着材層50は、粘着材層上部52と、粘着材層下部54と、粘着材層くびれ部56とを含んで構成される。
【0036】
図2と図5とに示されるように、封緘シール上部12は、基材層上部42と粘着材層上部52とを含んで構成され、封緘シール下部14は、基材層下部44と粘着材層下部54とを含んで構成され、封緘シールくびれ部16は、基材層くびれ部46と粘着材層くびれ部56とを含んで構成される。
【0037】
基材層40の厚みtは、ラベラー適性、搬送性、および経済性を考慮すると、その形状の寸法は、例えば厚みt=50μmとすることができる。これ以外の寸法であってもよく、例えば20μmないし80μmとすることができる。この範囲の厚みtであれば、容器20の流通過程における搬送時の振動や衝撃による破断を抑制することができると考えられる。この例では、基材層くびれ部46の最細幅Ln=7mmの位置における断面積An=0.35mm2である。
【0038】
基材層40には、やわらかく透明な基材を選定することで、蓋24をZ方向である縦方向に向かわせるときに、弱い力で封緘シール10自体が縦方向に延伸し、開封を実現することができる。基材層40は、透明が好ましいが、透明とは限られず、白色等であってもよい。基材層40の材質としては、上記物性を考慮して、ポリオレフィン樹脂の2種3層として、中間層にポリエチレン(PE)、その両層にポリプロピレン(PP)を配置した積層フィルムを用いることができる。この他にも、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、およびポリ塩化ビニリデン(PVDC)等を用いることができ、上記材料を1種または2種以上混合して用いることができる。
【0039】
基材層40としては、それらの材質に用いた単層または積層フィルムを用いることができる。また、基材層40は延伸されたフィルムを用いてもよいが、比較的弱い力で伸びやすいので、無延伸のフィルムを用いることが好ましい。基材層40の材質は、弱い力でも伸びることができる材料で、20%の伸びを与えるときの引張応力が、20MPa以下であることが好ましい。より好ましくは、1MPaないし20MPaである。さらに好ましくは、3MPaないし15MPaである。また、一旦伸ばしたら元に戻りにくい材料で、200%の歪みを与えた後、永久歪みが100%以上となることが好ましい。基材層40の伸びやすさについては、図6を用いて後述する。
【0040】
ここで、引張応力は、JIS K7127に準拠して求めることができる。具体的には、基材層40に用いられる材料を幅15mm、長さ200mmに切断し、テストピースを作成する。そのテストピースを標線間距離100mmで装置に固定し、装置にて、引張速度300mm/minにて標線間距離が120mm(歪みが20%)になったときの値を引張応力として求めることができる。ここでは、(株)島津製作所製装置(AG-I 500N)を用いて測定を行うことができる。
【0041】
また、上記と同様にして、標線間距離300mm(歪みが200%)まで引っ張って、その材料が200%伸びるかどうかを確認することができる。さらに、引っ張ることができたものについては、引っ張った後、除荷されたテストピースの標線間距離を測定し、永久歪みを測定することができる。この場合も、200%以上伸びるものがよく、永久歪みが100%以上であるものがよい。なお、200%伸ばしたときに、100%以上の永久歪みを有する基材層40を封緘シール10に用いた場合、その基材層40を有する封緘シール10も200%伸ばしたときに、100%以上の永久歪みを有することとなる。
【0042】
また、基材層くびれ部46は、延伸により、可視光吸収率が変化し、もとの色と異なる色を呈する。例えば、透明であった状態から延伸により白化する。この他にも、灰色であった状態から延伸により白化する等の処理が施されてもよい。これにより、利用者が、蓋24が開封されているか否かを視認しやすくすることができる。
【0043】
基材層40は、基材層40の伸びが与えられる部分に、永久歪みが与えられるときの基材層40の色と異なる色の印刷層を有することができる。基材層40が伸ばされるときに、印刷層は、その伸びに追従できずに層割れを起こすことにより、割れた部分から基材層40が見えて、その部分が変色したように見える。これにより、仮に不正開封されるときにも、その変色を見ることによって、利用者が封緘シールの開封履歴を認識することができる。また、デザイン等の印刷も一緒に施すことができることによって、デザイン性が増すことが期待でき、また利用者に有益な情報として例えばキャンペーン等の文字、模様を施すこともできる。印刷は特に指定するものではなく、既知のグラビア印刷、フレキソ印刷、凸版輪転印刷、オフセット印刷、シルク印刷等を用いることができる。
【0044】
図6は、基材層40を有する封緘シール10の引張抵抗力Fと歪みとの関係性を説明する図である。図6において、横軸は歪み(単位:%)、縦軸は引張抵抗力F(単位:N)である。なお、引張抵抗力Fの測定は、最も幅狭となる封緘シールくびれ部16が、Z方向である縦方向において標線間の中央部にきて、標線間となる部分が全体として最も幅狭となるように封緘シール10を固定し、標線間距離5mmで測定を行った。
【0045】
a点は、封緘シール10の初期状態を示す位置である。容器20に貼付された封緘シール10は、引っ張られていないため、引張抵抗力Fが0Nであり、歪みが0%である。
【0046】
b点は、歪みが20%のときを示す位置である。そのときの引張抵抗力Fは、30N以下であることが好ましい。より好ましくは、1Nないし30Nである。さらに好ましくは、3Nないし25Nである。弱い力で封緘シール10を伸ばすことができる。
【0047】
c点は、封緘シール10が引っ張られ、歪みが生じ、降伏点に到達するときを示す位置である。基材層くびれ部46の幅Ln、厚みtに引張抵抗力Fがかかる。降伏点とは、引張抵抗力Fをほとんど増加させなくても、急に歪みが増して塑性変形を生じるときの引張抵抗力Fの値である。ここでは、引張抵抗力Fは、50N以下であることが好ましい。より好ましくは、1Nないし50Nである。さらに好ましくは、3Nないし40Nである。
【0048】
d点は、封緘シール10に歪みが200%となるときを示す位置である。c点からd点においては、引張抵抗力Fの増加がほとんどない。また、歪みが200%のときの引張抵抗力Fは弱い力で伸びるのがよいので、50N以下であることが好ましい。より好ましくは、1Nないし50Nである。さらに好ましくは、3Nないし40Nである。また、封緘シール10は、歪みは200%になるまで伸ばせるものであり、封緘シール10は意図せず破断することがない。
【0049】
e点は、歪みが200%になるところまで伸ばした後、引張力を除荷させて、引張抵抗力Fを0Nに戻した後に残る歪み、すなわち永久歪みを示す位置である。ここで、永久歪みは、100%以上である。これにより、封緘シール10は、一旦伸びたら元の長さに戻りにくいため、開封履歴がわかりやすい。
【0050】
再び、図5に戻って、粘着材層50は、粘着材層上部52と粘着材層下部54と粘着材層くびれ部56とを含んで構成される。粘着材層50は、粘着材層50は、0.15MPa以上のせん断強度を有し、基材層40と蓋24または容器本体22とを粘着させる機能を有する。仮に、せん断強度が0.15MPa未満であると、粘着力が弱くZ方向に引っ張ったときに、容器20から剥がれてしまう虞がある。
【0051】
せん断強度は、JIS K6850に準拠して求めることができる。具体的には、粘着材層50を有する封緘シール10を幅15mm、長さ200mmに切断し、容器20に対応する樹脂からなる試験板に幅15mm、長さ15mm(貼付面積225mm2)で貼付し、装置にて、引張速度50mm/minでせん断強度測定を行うことによって求められる。ここでは、(株)島津製作所製装置(AG-I 500N)を用いて測定を行うことができる。
【0052】
粘着材層上部52は、基材層上部42と蓋上部26とを粘着させる機能を有する。具体的には、図1において、基材層上部42と蓋上部26とが粘着している様子が示されている。
【0053】
粘着材層下部54は、基材層下部44と蓋下部28、または基材層下部44と容器本体22とを粘着させる機能を有する。容器本体22は、これ以外にも封緘シール付き容器であってもよい。具体的には、図1において、基材層下部44と蓋下部28が粘着している様子が示されている。また、図示しないが、封緘シール付容器は、粘着材層上部52が蓋24に、粘着材層下部54が容器本体22に貼付されていてもよい。
【0054】
粘着材層くびれ部56の容器20側の表面には、糊抑え部58が形成されている。糊抑え部58とは、粘着材層くびれ部56に塗布された粘着材のY方向側の上面に、糊抑え材を塗布することにより形成され、この部分の粘着力を喪失させるものである。また、粘着材層くびれ部56は、粘着力を喪失していることが好ましいため、粘着材そのものを有していなくてもよい。また、封緘シールくびれ部16が、粘着材層くびれ部56を有していなくてもよい。具体的には、粘着材くびれ部56まで粘着材を有していると、蓋22を引っ張るために大きな力を必要とする虞があるため、封緘シールくびれ部16は、容器本体22または蓋24と粘着していないほうが好ましい。
【0055】
粘着材層50に含まれる粘着材としては、常温で粘着性を有し、環境負荷を低減する等の観点から、アクリル系粘着材を用いることができる。粘着材層50に含まれる粘着材は、容器20に対する粘着力が強く、基材層40の粘着状態を維持することができる限りにおいて特に限定されることなく、種々の粘着材を使用することができる。例えば、エラストマー系(アクリルゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、スチレンブタジエンゴム等)、熱硬化性樹脂系(ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等)、熱可塑性樹脂系(アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体等)などの粘着材を使用することができる。
【0056】
図7は、ヒンジタイプの蓋24を開封する場合の様子を説明する図である。図7は、ヒンジタイプの蓋24の側面に封緘シール10が貼付された封緘シール付容器の側面図である。図7に示される様子は、誰かが不正開封を行おうとする場合を示したものである。蓋上部26をZ方向である縦方向に押し上げると、封緘シールくびれ部16が伸びて、蓋上部26の蝶番32となる部位以外が蓋下部28から離れ、開封状態となる。
【0057】
このとき、基材層上部42は粘着材層上部52により、蓋上部26と粘着した状態にあり、基材層下部44は粘着材層下部54により、蓋下部28と粘着した状態にある。粘着材層50は、0.15MPa以上のせん断強度を有するのは、蓋24が開封されるときに、基材層40が蓋24または容器本体22から剥がれないようにするためである。また、蓋上部26と粘着材層上部52、蓋下部28と粘着材層下部54とが粘着している部分の面積が大きいほうがよい。
【0058】
基材層くびれ部46は、蓋上部26がZ方向である縦方向に押し上げられると延伸する。蓋上部26がZ方向である縦方向に押し上げられる場合に、基材層40の材料は、20%の伸びを与えるときの引張応力が20MPa以下であるから、基材層くびれ部46は、軽い力で伸びることができる。以下に、30N以下の引張抵抗力で基材層くびれ部46の最細幅Ln、厚みtに伸びを与えて誰かが不正開封する様子を具体的に説明する。
【0059】
誰かが不正開封する場合、蓋上部26を引張力fの力で押し上げる。このとき、引張力fは、基材層くびれ部46の最細幅Ln、厚みtにかける力を意味する。引張力fによって基材層くびれ部46の最細幅Ln、厚みtにかかる応力を引張抵抗力Fとする。20%の伸びを与えるときの封緘シール10の引張抵抗力F0.2が30N以下となるように、基材層くびれ部46の最細幅Ln、または厚みtを設定する。
【0060】
例えば、引張応力σ0.2=20MPaの材料を用い、厚みt=50μmの基材層40に、引張力f=30Nを与えるとき、基材層くびれ部46の最細幅Lnは次式で設定することができる。(最細幅Ln)≦(引張力f)/(厚みt×引張応力σ0.2)ここでは、上記の値を代入すると、基材層くびれ部46の最細幅Lnは、30mm以下となる。つまり、厚みt=50μmで、20%の伸びを与えるときの引張応力σ0.2=20MPa以下の材料で構成される基材層40が用いられ、引張力f=30Nを与えるとき、基材層くびれ部46の最細幅Lnは、30mm以下であれば、蓋24が開封される。
【0061】
また、基材層40は、200%伸ばしたときに、100%以上の永久歪みを有する材料を用いた場合には、開封された後は、完全にもとの状態に戻らず、伸びが残ったままになりやすい。また、基材層くびれ部46が延伸により可視吸収率が変化し、もとの色と異なる色を呈する場合や、基材層40の伸びが与えられる部分に永久歪みが与えられるときの基材層40の色と異なる色の印刷層を有する場合には、永久歪みが与えられた部分の変色により視認性が高まる。そのため、誰かが不正開封を行った場合に、開封履歴を認識しやすくなる。
【0062】
(実施例1)
基材層40として、外層にポリプロピレン、内層にポリエチレンを有する複層オレフィン系フィルム(20%の伸びを与えるときの引張応力17.0MPa)と、粘着材層50とを含んで構成される材料を所定の形状に切断して、封緘シールAと封緘シールBを用意した。封緘シールAの形状は、図3に示す変形例1とした。その形状の寸法は、封緘シール上部12における幅Lt=15mm、封緘シールくびれ部16の最細幅Ln=15mm、封緘シール下部14における幅Lb=15mm、封緘シール上部12における高さHt=15mm、封緘シール下部14における高さHb=15mm、封緘シールくびれ部16の高さHn=5mmとした。封緘シールBの形状は、図4に示す変形例2とした。その形状の寸法は、封緘シール上部12における幅Lt=15mm、封緘シールくびれ部16の最細幅Ln=7mm、封緘シール下部14における幅Lb=15mm、封緘シール上部12における高さHt=15mm、封緘シール下部14における高さHb=15mm、封緘シールくびれ部16の高さHn=5mmとした。ここで、前記の基材層40として用いた材料は、厚み70μmのリンテック製カイナスKEP70CAであって、粘着材層50には、厚み25μmのリンテック製P−2041を用いた。また、粘着材層くびれ部56の容器20側の表面には、糊抑え部58を設けた。
【0063】
図8に得られた封緘シールAおよび封緘シールBについて、JIS K7127に準拠して引張試験を行った結果を示す。
【0064】
引張試験は、封緘シールAおよび封緘シールBに20%の伸びを与え、そのときの引張抵抗力を測定し、その後さらに200%まで伸ばし、除荷した後の標線間距離を測定することで永久歪みを求めた。具体的には、封緘シールAおよび封緘シールBを、最も幅狭となる基材層くびれ部46が標線間にきて、標線間となる部分が全体として最も幅狭となるように、標線間距離5mmで装置に固定した。固定する場合、基材層上部42と基材層下部44を固定するようにした。次に、引張速度300mm/minにて標線間距離が6mm(歪みが20%)になったときの引張抵抗力を測定した。その後、封緘シールAおよび封緘シールBを標線間距離15mm(歪みが200%)まで引っ張り、封緘シールAおよび封緘シールBが15mmまで破断せず、引っ張ることができるがどうか、また、引っ張ることができたものについては、引っ張った後、除荷された封緘シールAおよび封緘シールBを取り外し、標線間距離を測定しその永久歪みを求めた。なお、永久歪みは次式で求められる。(永久歪み)=[(200%延伸・除荷後の標線間距離−元の標線間距離)/(元の標線間距離)]×100
【0065】
その結果、20%伸び時の引張抵抗力は、封緘シールAが13.0N、封緘シールBが7.2Nとなり、いずれも30N以下の弱い力で20%伸ばすことができた。また、その後の封緘シールAおよび封緘シールBの伸びが200%になるまで引張試験を行った結果、封緘シールAおよび封緘シールBはともに200%の伸びを与えることができた。永久歪みは、封緘シールAが170%、封緘シールBが180%となり、ともに100%以上の値が得られた。
【0066】
さらに、封緘シールBを図1の容器20と同形状のヒンジキャップ付容器に跨る様に貼付し、30分経過後に手にて蓋を開いた。そのとき、蓋は、手の力で開封でき、かつ封緘シールBには、永久歪みが生じ、再封しても封緘シールBの伸びが目視で確認できた。
【0067】
(実施例2)
次に、基材層40に、材質リニア低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)(20%の伸びを与えるときの引張応力11.5MPa)、厚み50μmのフタムラ化学製LL−XMTNを用い、粘着材層50に、材質アクリル粘着剤、厚み25μmの綜研化学製SKダイン1717を用いた。上記以外は、実施例1と同様にして封緘シールAおよび封緘シールBを得た。これらを実施例1と同様に測定を行った。その結果、20%伸び時の引張抵抗力は、封緘シールAが8.5N、封緘シールBが4.3Nとなり、いずれも30N以下の弱い力で20%伸ばすことができた。また、その後の封緘シールAおよび封緘シールBの伸びが200%になるまで引張試験を行った結果、封緘シールAおよび封緘シールBは、ともに200%の伸びを与えることができた。永久歪みは、封緘シールAが180%、封緘シールBが190%となり、ともに100%以上の値が得られた。
【0068】
さらに、封緘シールBを用いて、実施例1と同様に容器に貼付し、手にて開封してみたところ、そのとき、蓋は、手の力で開封でき、かつ封緘シールBには、永久歪みが生じ、再封しても封緘シールBの伸びが目視で確認できた。
【0069】
(比較例1)
次に、基材層40に、材質ポリエステルフィルム(20%の伸びを与えるときの引張応力180MPa)、厚み50μmの東洋紡製E5100を用い、粘着材層50に、材質アクリル粘着剤、厚み25μmの綜研化学製SKダイン1717を用いた。上記以外は、実施例1と同様にして封緘シールAおよび封緘シールBを得た。これらを実施例1と同様に測定を行った。その結果、20%伸び時の引張抵抗力は、封緘シールAが127.5N、封緘シールBが69.5Nとなり、いずれも30N以上の力でしか20%伸ばすことができなかった。また、その後封緘シールAおよび封緘シールBの伸びが200%になるまで引張試験を行った結果、破断発生し、200%の伸びを与えることができなかった。
【0070】
さらに、封緘シールBを用いて、実施例1と同様に容器に貼付し、手にて開封してみたところ、封緘シールBは全く伸びずに、蓋は手の力で開封できなかった。
【0071】
(比較例2)
次に、基材層40に、材質ポリプロピレンフィルム(20%の伸びを与えるときの引張応力155MPa)、厚み50μmの東洋紡製P2161を用いたこと以外は、比較例1と同様にして封緘シールAおよび封緘シールBを得た。これらを実施例1と同様に測定を行った。その結果、20%伸び時の引張抵抗力は、封緘シールAが120.0N、封緘シールBが58.0Nとなり、いずれも30N以上の値の力でしか20%伸ばすことができなかった。また、その後封緘シールAおよび封緘シールBの伸びが200%になるまで引張試験を行った結果、破断発生し、200%の伸びを与えることができなかった。
【0072】
さらに、封緘シールBを用いて、実施例1と同様に容器に貼付し、手にて開封してみたところ、封緘シールBは全く伸びずに、蓋は手の力で開封できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る封緘シールは、利用者が容易に開封でき、なおかつ不正開封を防止することが可能になるため、容器の蓋の封緘シールに有用である。
【符号の説明】
【0074】
10 封緘シール、12 封緘シール上部、14 封緘シール下部、16 封緘シールくびれ部、20 容器、22 容器本体、24 蓋、26 蓋上部、28 蓋下部、30 内容物、32 蝶番、40 基材層、42 基材層上部、44 基材層下部、46 基材層くびれ部、50 粘着材層、52 粘着材層上部、54 粘着材層下部、56 粘着材層くびれ部、58 糊抑え部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と容器本体の開口に取り付けられる開封可能な蓋とに跨って、または、
容器本体の開口に取り付けられる蓋上部と蓋下部とに分かれて開封可能な蓋の蓋上部から蓋下部に跨って、貼付される封緘シールであって、
封緘シールは、
20%の伸びを与えるときの引張応力が20MPa以下の材料で構成される基材層と、
基材層における貼付面の一部または全部に粘着材が塗布される層である粘着材層と、
を備え、
封緘シールは、
切断されずに200%の歪みを与えることが可能であり、
200%の歪みを与えた後、永久歪みが100%以上となることを特徴とする封緘シール。
【請求項2】
請求項1に記載の封緘シールにおいて、
基材層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体のうち少なくとも1種を含んで構成されることを特徴とする封緘シール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の封緘シールにおいて、
基材層は、永久歪みが与えられる部分の基材層の可視光吸収率が変化し、もとの色と異なる色を呈する材料で構成されることを特徴とする封緘シール。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1に記載の封緘シールにおいて、
基材層の伸びが与えられる部分に、永久歪みが与えられるときの基材層の色と異なる色の印刷層を有することを特徴とする封緘シール。
【請求項5】
容器本体と容器本体の開口に取り付けられる開封可能な蓋とに跨って、または、
容器本体の開口に取り付けられる蓋上部と蓋下部とに分かれて開封可能な蓋の蓋上部から蓋下部に跨って、封緘シールが貼付される封緘シール付容器であって、
封緘シールは、
20%の伸びを与えるときの引張応力が20MPa以下の材料で構成される基材層と、
基材層における貼付面の一部または全部に粘着材が塗布される層である粘着材層と、
を備え、
封緘シールは、
切断されずに200%の歪みを与えることが可能であり、
200%の歪みを与えた後、永久歪みが100%以上となることを特徴とする封緘シール付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−242489(P2011−242489A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112785(P2010−112785)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】