説明

封緘用シール

【課題】封書内などの文書が当事者以外のものが見た場合、その事実が直ちに判明し、従って封書内などの文書の改ざんが為されても、改ざんの可能性が容易に認識可能な封緘用シールを提供すること。
【解決手段】基材フィルムの一方の面に設けたパターン状の剥離剤層と、該剥離剤層を含む面に形成した着色層と該着色層の面に設けた粘着剤層とからなり、上記剥離剤層がセルロース系樹脂を主体としてなることを特徴とする封緘用シール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封書などが開封された可能性を直ちに判別できる封緘用シールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、封筒などの多くの書類袋が使用されており、これらの封書内などの文書が改ざんされる場合がある。これらの文書の改ざんを防止する目的で、図1aに示す如く基材フィルム1上に剥離剤層2と着色層3と粘着剤層4とを設けてなる封緘用シールが使用されている。この封緘用シールを、例えば、プラスチック製封筒の封緘部(図1bの被貼着材5)に貼着させておく。この状態で封筒を開封する場合、該封緘用シールの剥離は必須であり、該封緘用シールを剥離すると、図1cに示すように封筒本体(被貼着材5)の表面にパターン状剥離層6と同一形状の着色層7が現出する。従ってこのような封緘用シールを使用することによって、一旦封緘された封筒が後に開封されたことがあるか否かが直ちに判明する。
【特許文献1】特開2005−189456公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の如き従来の封緘用シールでは、剥離剤層にアクリル系樹脂を使用する場合が多く、アクリル系樹脂を使用すると、封緘層の構成、例えば、着色層の樹脂バインダーの種類によっては、封緘用シールを剥離した場合に、被貼着材上に剥離剤層のパターンがうまく出現しないなどの問題を抱えていた。
【0004】
従って本発明の目的は、封緘用シールの着色層に使用されるインキの樹脂の種類を問わず、如何なる樹脂であっても、封緘用シールの剥離時に容易に剥離剤層のパターンを被貼着材表面に出現させることができる封緘用シールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、基材フィルムの一方の面に設けたパターン状の剥離剤層と、該剥離剤層を含む面に形成した着色層と該着色層の面に設けた粘着剤層とからなり、上記剥離剤層がセルロース系樹脂を主体としてなることを特徴とする封緘用シールを提供する。上記着色層はアルミニウム蒸着層を含むことができる。
【発明の効果】
【0006】
上記本発明によれば、封書などの包材が開封された事実が直ちに分かる封緘用シールが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に図面に示す好ましい実施態様を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の封緘用シールは、図1aに示すように、基材フィルム1の一方の面に設けたパターン状の剥離剤層2と、該剥離剤層2を含む面に形成した着色層3と該着色層3の面に設けた粘着剤層4とからなり、該粘着剤層4の表面には不図示の離型紙が貼着されていてもよい。
【0008】
上記基材フィルム1としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、エチレン−テレフタレート−イソフタレート共重合体などの熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの熱可塑性オレフィン樹脂、または、ナイロン、セロファン、アクリル樹脂などからなるフィルムが挙げられる。これらの基材フィルムの表面は、未処理でもよく、また、コロナ放電処理や易接着コート処理されたものでもよい。
【0009】
上記基材フィルム1の一方の表面に設ける剥離剤層2の形成には、セルロース系樹脂を使用する。セルロース系樹脂としては、ニトロセルロースまたは酢酸セルロースなどが挙げられ、該剥離剤層は、上記セルロース系樹脂の有機溶剤溶液を基材フィルム表面にパターン状に印刷(塗布)および乾燥して形成する。
【0010】
ここで使用する有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコールなどのケトン系溶剤や、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系溶剤が好ましく、さらに、トルエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタンなどの炭化水素溶剤、さらに、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテル類などが使用できる。これらは1種単独でも、2種以上混合して使用しても構わない。
【0011】
上記剥離剤層2は、ベタではなくパターン状に設けることが必要である。パターンは特に限定されず、文字や任意の絵柄でよい。離型剤層は前記セルロース系樹脂溶液を用いてグラビア印刷などの方法で厚みが約0.1〜3.0μmに設けることが好ましい。当該剥離剤層2は、本発明の封緘用シールを被貼着材に貼着後に剥離すると、基材フィルム表面から剥離し、着色層とともに被貼着材側に転写される。
【0012】
本発明においては、上記剥離剤層2の表面に着色層3をベタで設ける。このような着色層3は、基材フィルム(プラスチックフィルム)に接着性がよいグラビアインキ、例えば、基材フィルムがポリエステルフィルムである場合には、ウレタン樹脂系のグラビアインキを、基材フィルムとしてポリオレフィンフィルムを使用する場合にはポリオレフィン樹脂系のグラビアインキを使用することが好ましい。このような着色層は任意の厚さでよく、例えば、約0.5〜5.0μmの厚みに形成する。
【0013】
上記の着色層3は、着色剤によって着色されたものに限定されず、上記パターン状剥離剤層の表面に蒸着アンカー層を形成し、その表面にアルミニウム蒸着を施したものでもよい。本発明では、このようなアルミニウム蒸着層も「着色層」に含める。
【0014】
上記着色層3の表面には、粘着剤層4を厚み約5.0〜30.0μmに設ける。粘着剤層4を形成する粘着剤は特に限定されず、ウレタン系、アクリル系などの市販の粘着剤がいずれも使用できる。この粘着剤層の表面にはさらに離型紙を貼合させておき、その使用時に該離型紙を剥離して使用することが好ましい。
【0015】
上記本発明の封緘用シールは、各種の郵便封筒、親書、個人や企業の秘密を要する文書の包装袋、コンピューターソフトウエアの収納袋など、あるいはこれらの文書の保管箱など、食品包材、医薬品包材、劇薬などの包材など、包材が開封されたことが明瞭に判別されるべき包材の封緘用シールとして有用である。本発明の封緘用シールは特にプラスチックフィルム製の封筒や各種包材に有用である。
【0016】
上記本発明の封緘用シールの使用方法を図面を参照して説明する。図1aに示す如き本発明の封緘用シールを、図1bに示すように被貼着材5、例えば、封筒の封緘位置に圧着させることにより貼着する。この状態では、基材フィルム1が仮に透明であっても、剥離剤層2のデザインパターンは肉眼では判別することができない。この状態において、開封権限のないものが、封筒を開封しようとする場合、封緘用シールを予め被貼着材5から剥離せねばならない。
【0017】
封緘用シールを剥離すると、図1cに示すように、剥離剤層2と基材フィルム1との間の接着力は低く、一方、基材フィルム1と着色層3との接着力が高いことから、剥離剤層2が存在しない部分の着色層3と粘着剤層4とは基材フィルム1側に残り、一方、剥離剤層2が存在する個所においては、剥離剤2と着色層3と粘着剤層4とが被貼着材5側に転写され、被貼着材5表面に剥離剤層2のパターン6と同一の着色パターン7が現れる。この状態で、封緘用シールを元の状態に復元することは極めて困難であることから、封筒が無断で開封されている可能性が直ちに判別することができる。
【実施例】
【0018】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、文中「部」とあるのは質量基準である。
[実施例1]
ニトロセルロース系樹脂[ダイセル化学工業(株)、RS−2]5部を、キシレン65部、メチルアルコール15部およびイソプロピルアルコール15部の混合物に溶解してニトロセルロース系樹脂溶液を得た。このニトロセルロース系樹脂溶液を用いて、2軸延伸ポリエステルフィルム[東レ(株)、ルミラー、片面コロナ放電処理、厚み25μm]上に、グラビア印刷版[網150線、40μm]を用いてデザインパターン(剥離剤層)を形成した。
【0019】
さらに、上記デザインパターンの上に、ウレタン系グラビアインキ[大日精化工業(株)、ハイラミック701R白]をグラビア印刷版[ヘリオ175線]を用いて印刷し、着色層を形成した。さらに、着色層の上に粘着剤[大日精化工業(株)、セイカダインCST−E]を乾燥膜厚5μmで塗工および乾燥して粘着剤層を形成し、本発明の封緘用シールを得た。
【0020】
この封緘用シールを2軸延伸ポリプロピレンフィルム[二村化学(株)、FOR#25、片面コロナ放電処理、厚み25μm]に貼りあわせ、基材フィルムを剥離させたところ、ポリプロピレンフィルム面に着色パターンが出現し、改ざん防止効果があることが確認された。
【0021】
[実施例2]
酢酸セルロース系樹脂[ダイセル化学工業(株)、L−20、酢化度55%]5部を、アセトン50部およびメチルグリコールアセテート45部に溶解し、酢酸セルロース系樹脂溶液を得た。この酢酸セルロース系樹脂溶液を用いて、2軸延伸ポリプロピレンフィルム[二村化学(株)、FOR#25、片面コロナ放電処理、厚み25μm]上に、グラビア印刷版[網150線、40μm]を用いて印刷し、デザインパターン(剥離剤層)を形成した。
【0022】
さらに、デザインパターンの上に、オレフィン系グラビアインキ[大日精化工業(株)、ラミックNA701白]を用いてグラビア印刷版[ヘリオ175線]により着色層を形成した。さらに、着色層の上に粘着剤[大日精化工業(株)、セイカダインCST−E]を乾燥膜厚5μmで塗工および乾燥して粘着剤層を形成し、本発明の封緘用シールを得た。
【0023】
この封緘用シールを2軸延伸ポリエステルフィルム[東レ(株)、ルミラー、片面コロナ放電処理、厚み25μm]に貼りあわせ、基材フィルムを剥離したところ、ポリエステルフィルム面に着色パターンが出現し、改ざん防止効果があることが確認された。
【0024】
[実施例3]
酢酸セルロース系樹脂[ダイセル化学工業(株)、L−20、酢化度55%]5部を、アセトン50部およびメチルグリコールアセテート45部に加え、酢酸セルロース系樹脂溶液を得た。この酢酸セルロース系樹脂溶液を用いて、2軸延伸ポリエステルフィルム[東レ(株)、ルミラー、片面コロナ放電処理、厚み25μm]上に、グラビア印刷版[網150線、40μm]により印刷してデザインパターン(剥離剤層)を形成した。
【0025】
さらに、デザインパターンの上に、グラビアインキ[大日精化工業(株)、VM−Dメヂウム、VM−D硬化剤10%併用]をグラビア印刷版[ヘリオ175線]を用いて印刷し、蒸着アンカー剤層を形成した。この蒸着アンカー剤層上に、アルミ蒸着を施し、着色層としての金属蒸着層を作成した。さらに、金属蒸着層の上に粘着剤[大日精化工業(株)、セイカダインCST−E]を乾燥膜厚5μmで塗工および乾燥して粘着剤層を形成し、本発明の封緘用シールを得た。
【0026】
この封緘用シールを2軸延伸ポリプロピレンフィルム[二村化学(株)、FOR#25、片面コロナ放電処理、厚み25μm]に貼りあわせ、基材フィルムを剥離したところ、ポリプロピレンフィルム面にアルミ蒸着の意匠性をもった銀色のパターンが出現し、改ざん防止効果があることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上の通り、本発明の封緘用シールを封筒などの開封部分に貼り付け、封緘用シールを剥離することで、隠されていたデザインパターンが出現し、封筒などが開封された可能性があることを容易に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の封緘用シールの構成とその使用方法を説明する図。
【符号の説明】
【0029】
1:基材フィルム
2:剥離剤層
3:着色層
4:粘着剤層
5:被貼着材
6:剥離剤層パターン
7:着色パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの一方の面に設けたパターン状の剥離剤層と、該剥離剤層を含む面に形成した着色層と該着色層の面に設けた粘着剤層とからなり、上記剥離剤層がセルロース系樹脂を主体としてなることを特徴とする封緘用シール。
【請求項2】
着色層が、アルミニウム蒸着層を含む請求項1に記載の封緘用シール。

【図1】
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【公開番号】特開2007−206447(P2007−206447A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26201(P2006−26201)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】