説明

射出成形システム及び射出成形方法

【課題】成形サイクルを短くすることができ、生産性を向上させることができ、射出成形システムを小型化することができるようにする。
【解決手段】第1の支持部材に取り付けられた第1の金型と、第1の金型と対向させて、第2の支持部材に取り付けられた第2の金型と、第2の金型を進退させ、金型装置の型閉じ、型締め及び型開きを行う型締め用の駆動部と、インサートを保持するためのインサート保持部を備えた操作部位と、型開きが開始されてから終了されるまでの間に、操作部位を第1の金型に向けて前進させ、第1の金型にインサートをセットする操作部位作動処理手段とを有する。型開きが開始されてから終了されるまでの間に、操作部位が第1の金型に向けて前進させられ、第1の金型にインサートがセットされるので、成形サイクルを短くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形システム及び射出成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、成形機、例えば、射出成形機においては、金型装置、型締装置、射出装置等を有し、射出装置の加熱シリンダ内において加熱され溶融させられた樹脂を、高圧で射出して金型装置のキャビティ空間に充填し、該キャビティ空間内において冷却して固化させた後、成形品として取り出すようになっている。
【0003】
そのために、前記金型装置は、固定金型及び可動金型を有し、型締装置は、固定金型が取り付けられた固定プラテン、及び可動金型が取り付けられた可動プラテンを有し、型締用モータを駆動することによって可動プラテンが進退させられ、それに伴って、金型装置の型閉じ、型締め及び型開きが行われる。
【0004】
一方、前記射出装置は、ホッパから供給された樹脂を加熱して溶融させる前記加熱シリンダ、該加熱シリンダ内において進退自在に、かつ、回転自在に配設されたスクリュー、及び溶融させられた樹脂を射出する射出ノズルを備える。そして、計量用モータを駆動することによってスクリューを回転させると、加熱シリンダ内におけるスクリューより前方に計量された樹脂が溜められ、射出用モータを駆動することによってスクリューを前進させると、前方に溜められた樹脂が射出され、型締めが行われた状態の金型装置のキャビティ空間に充填される。
【0005】
そして、該キャビティ空間内の樹脂が冷却されて成形品になり、型開きが行われると、エジェクタ装置の突出し用モータを駆動することによって、ストリッパプレートが前進させられ、前記成形品が突き出され、離型させられる。
【0006】
ところで、例えば、成形品の本体、すなわち、成形品本体にラベルが貼着された成形品を成形する場合、前記構成の射出成形機に、ラベルを挿入したり、成形品を取り出したりするためのロボットが取り付けられて射出成形システムが形成される(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
図2は従来の射出成形システムの要部を示す図、図3は従来の射出成形システムの動作を示す第1の図、図4は従来の射出成形システムの動作を示す第2の図、図5は従来の射出成形システムの動作を示す第3の図、図6は従来の射出成形システムの動作を示す第4の図である。
【0008】
図において、31は固定プラテン、32は該固定プラテン31と対向させて配設された可動プラテン、33は前記固定プラテン31に取り付けられた固定金型、34は該固定金型33と対向させて配設され、可動プラテン32に取り付けられた可動金型、36は固定金型33に形成されたキャビティ、38は成形品であり、前記固定金型33及び可動金型34によって金型装置が構成される。
【0009】
また、41はロボットの操作部位であるロボットアームである。該ロボットアーム41は、下降させられて固定金型33と可動金型34との間(以下「金型間」という。)の位置、すなわち、作動位置を採るとともに、上昇させられて金型装置外の位置、すなわち、退避位置を採る。
【0010】
この場合、成形品38は、側壁の外周面にラベル40が貼着されたカップであり、そのために、前記キャビティ36はカップ状の凹部から成り、前記可動金型34には、キャビティ36に向けて突出させてカップ状のコア37(図5)が形成される。したがって、前記可動プラテン32が前進させられ、金型装置の型閉じが行われると、金型間に、キャビティ空間が形成される。
【0011】
前記ロボットアーム41の先端には、ロボットアーム41が作動位置に置かれたときに 、キャビティ36と対向する部分に、ラベル40をキャビティ36内に挿入するためのラベル保持部43が、突出させて形成される。また、ロボットアーム41の先端におけるラベル保持部43と反対側には、ロボットアーム41が作動位置に置かれたときに、コア37と対向する部分に、離型させられた成形品38を受け、金型間から取り出すための成形品保持部44が突出させて形成される。
【0012】
前記ロボットアーム41の固有高さをh1とし、成形品38の高さをh2とし、ロボットアーム41を金型間に進入させる際に、ロボットアーム41と固定金型33とが干渉するのを防止するために必要とされるクリアランスをhe1とし、ロボットアーム41によって保持された成形品38と可動金型34とが干渉するのを防止するために必要とされるクリアランスをhe2とし、金型装置の型開きを行う際に固定金型33と可動金型34との間に必要とされる距離をLとしたとき、該距離Lは
L=h1 +2×h2+he1+he2
になる。したがって、金型装置の型開きを行う際に、可動金型34を最も後方に置いた状態を表す型開限における型開きストロークを前記距離Lより大きくする必要がある。
【0013】
前記構成の射出成形システムにおいて、可動金型34が後退させられ、図3に示されるように、金型装置が設定された型開限まで開いた状態で、前記ロボットアーム41が下降させられて作動位置に置かれる(状態q1)。このとき、ラベル保持部43によってラベル40が、可動金型34によって前の成形サイクルで成形された成形品38がそれぞれ保持されている。
【0014】
次に、ロボットアーム41が前進させられ(状態q2)、ラベル40をキャビティ36内に挿入し、固定金型33にセットする。
【0015】
続いて、図4に示されるように、ロボットアーム41が後退させられ(状態q3)、成形品保持部44が成形品38に当接させられる(状態q4)。これに伴って、可動プラテン32に配設された図示されないエジェクタ装置によって、成形品38の突出しが開始される。
【0016】
そして、図5に示されるように、ロボットアーム41が前進させられ(状態q5)、成形品38は、前記コア37から離型させられ、成形品保持部44によって保持された状態で搬送される。
【0017】
次に、図6に示されるように、ロボットアーム41が上昇させられ、退避位置に置かれると(状態q6)、可動プラテン32が矢印方向に前進させられ、金型装置の型閉じが行われる。
【特許文献1】特開平10−230531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、前記従来の射出成形システムにおいては、金型装置が型開限まで開いた状態でロボットアーム41が作動位置に置かれ、ラベル40がセットされ、その後、成形品38が保持されると、ロボットアーム41が退避位置に置かれるようになっているので、成形サイクルが長くなり、生産性が低下してしまう。
【0019】
そこで、2本のロボットアームを備えた双軸のロボットを使用し、一方のロボットアームによってラベルをセットし、他方のロボットアームによって成形品を保持することが考えられるが、双軸のロボットを使用すると、型開きストロークが大きくなり、射出成形システムが大型化してしまう。
【0020】
本発明は、前記従来の射出成形システムの問題点を解決して、成形サイクルを短くすることができ、生産性を向上させることができ、小型化することができる射出成形システム及び射出成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
そのために、本発明の射出成形システムにおいては、第1の支持部材に取り付けられた第1の金型と、該第1の金型と対向させて、第2の支持部材に取り付けられた第2の金型と、該第2の金型を進退させ、金型装置の型閉じ、型締め及び型開きを行う型締め用の駆動部と、インサートを保持するためのインサート保持部を備えた操作部位と、型開きが開始されてから終了されるまでの間に、前記操作部位を前記第1の金型に向けて前進させ、該第1の金型にインサートをセットする操作部位作動処理手段とを有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、射出成形システムにおいては、第1の支持部材に取り付けられた第1の金型と、該第1の金型と対向させて、第2の支持部材に取り付けられた第2の金型と、該第2の金型を進退させ、金型装置の型閉じ、型締め及び型開きを行う型締め用の駆動部と、インサートを保持するためのインサート保持部を備えた操作部位と、型開きが開始されてから終了されるまでの間に、前記操作部位を前記第1の金型に向けて前進させ、該第1の金型にインサートをセットする操作部位作動処理手段とを有する。
【0023】
この場合、型開きが開始されてから終了されるまでの間に、操作部位が第1の金型に向けて前進させられ、第1の金型にインサートがセットされるので、成形サイクルを短くすることができる。
【0024】
また、インサート及び成形品を取り扱う操作装置として、一つの操作部位を備えた単軸の操作装置を使用することができるので、型開きストロークを小さくすることができ、射出成形システムを小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、成形機として射出成形機を使用した射出成形システムについて説明する。
【0026】
図7は本発明の第1の実施の形態における射出成形システムを示す図である。
【0027】
図において、11は射出成形システムであり、該射出成形システム11は射出成形機12、及び装填・取出用の操作装置としてのロボット13を備え、前記射出成形機12は型締装置15、金型装置16及び射出装置17を有し、前記型締装置15は、第1の支持部材としての固定プラテン31、第2の支持部材としての可動プラテン32、型締め用の駆動部としての図示されない型締用モータ、トグル機構等を備え、前記金型装置16は、第1の金型としての固定金型33及び第2の金型としての可動金型34を備える。
【0028】
したがって、前記型締用モータを駆動することによって可動プラテン32を進退させ、固定金型33に対して可動金型34を接離させると、金型装置16の型閉じ、型締め及び型開きが行われる。
【0029】
そして、前記射出装置17は、ホッパ21から供給された成形材料としての樹脂を加熱して溶融させるシリンダ部材としての加熱シリンダ22、溶融させられた樹脂を射出する射出ノズル23、前記加熱シリンダ22内において回転自在に、かつ、進退自在に配設された射出部材としての図示されないスクリュー、該スクリューを回転させ、計量を行うための計量用の駆動部としての図示されない計量用モータ、前記スクリューを前進させ、射出を行うための射出用の駆動部としての図示されない射出用モータ等を備える。
【0030】
そして、計量用モータを駆動することによってスクリューを回転させると、加熱シリンダ22内におけるスクリューより前方に計量された樹脂が溜められ、射出用モータを駆動することによってスクリューを前進させると、前方に溜められた樹脂が射出ノズル23から射出され、型締めが行われた状態の金型装置16の図示されないキャビティ空間に充填される。
【0031】
次に、該キャビティ空間内の樹脂が冷却されて成形品になり、型開きが行われると、可動プラテン32に配設された図示されないエジェクタ装置の突出し用の駆動部としての突出し用モータを駆動することによって、突出し要素としての図示されないストリッパプレートが前進させられ、前記成形品が突き出され、離型させられる。本実施の形態においては、突出し要素としてストリッパプレートが使用されるようになっているが、ストリッパプレートに代えてエジェクタピンを使用することができる。
【0032】
ところで、例えば、成形品の本体、すなわち、成形品本体にインサートとしてのラベルを貼着した成形品を成形する場合、前記構成の射出成形機12に、ラベルを挿入したり、成形品を取り出したりするためのロボット13が取り付けられて射出成形システム11が構成される。なお、前記インサートとして、ラベルのほかに部品等を挿入することができる。
【0033】
前記ロボット13は、操作部位としてのロボットアーム41、該ロボットアーム41を上昇させたり、下降させたりするとともに、進退させるための移動機構部51等を備える。該移動機構部51は、ロボットアーム41を上昇させたり、下降させたりするための昇降用の駆動部としての図示されない昇降操作用モータ、ロボットアーム41を進退させるための進退用の駆動部としての図示されない進退操作用モータ等を備える。
【0034】
さらに、射出成形システム11を支持する支持部としてのフレームFr内に、射出成形機12の全体の制御を行うための制御部60、ロボット13の全体の制御を行うための制御部61、真空を発生させる真空発生装置62等が配設される。本実施の形態においては、前記制御部60、61が独立に配設されるようになっているが、一つの制御部として構成することができる。
【0035】
図1は本発明の第1の実施の形態における射出成形システムの要部を示す図、図8は本発明の第1の実施の形態における射出成形システムの動作を示す工程図、図9は本発明の第1の実施の形態における射出成形システムの動作を示すタイムチャート、図10は本発明の第1の実施の形態における射出成形システムの動作を示す第1の図、図11は本発明の第1の実施の形態における射出成形システムの動作を示す第2の図、図12は本発明の第1の実施の形態における射出成形システムの動作を示す第3の図、図13は本発明の第1の実施の形態における射出成形システムの動作を示す第4の図である。なお、図8及び9において、ロボット13の動作については、ロボット工程として、射出成形機12の動作については、成形機工程として説明する。
【0036】
図において、31は固定プラテン、32は可動プラテン、33は前記固定プラテン31に取り付けられた固定金型、34は該固定金型33と対向させて配設され、可動プラテン32に取り付けられた可動金型、36は固定金型33に形成されたキャビティ、38は成形品、40はラベルである。
【0037】
また、41はロボット移動機構部51の操作部位であるロボットアームである。該ロボットアーム41は、移動機構部51によって下降させられて金型間の位置である作動位置を採るとともに、上昇させられて金型装置16外の位置である退避位置を採る。また、前記ロボットアーム41は移動機構部51によって進退させられる。
【0038】
この場合、成形品38は、側壁の外周面にラベル40が貼着されたカップであり、そのために、前記キャビティ36はカップ状の凹部から成り、前記可動金型34には、キャビティ36に向けて突出させてカップ状のコア37(図11)が形成される。したがって、前記可動プラテン32が前進(固定プラテン31側に向けて移動)させられ、金型装置16の型閉じが行われると、金型間に、図示されないキャビティ空間が形成される。
【0039】
前記ロボットアーム41の先端には、ロボットアーム41が作動位置に置かれたときに、キャビティ36と対向する部分に、ラベル40をキャビティ36内に挿入することによってセットするための第1の保持部としての、かつ、インサート保持部としてのラベル保持部43が、固定金型33に向けて突出させて形成される。また、ロボットアーム41の先端におけるラベル保持部43と反対側には、ロボットアーム41が作動位置に置かれたときに、コア37と対向する部分に、離型させられた成形品38を受け、金型間から取り出すための第2の保持部としての成形品保持部44が可動金型34に向けて突出させて形成される。なお、固定金型33の前端面s1及び可動金型34の前端面s2によってパーティングラインが構成される。
【0040】
前記ロボットアーム41の固有高さをh1とし、成形品38の高さをh2とし、ロボットアーム41を金型間に進入させる際に、ロボットアーム41と固定金型33とが干渉するのを防止するために必要とされるクリアランスをhe1とし、ロボットアーム41によって保持された成形品38と可動金型34とが干渉するのを防止するために必要とされるクリアランスをhe2とし、金型装置16の型開きを行う際に固定金型33と可動金型34との間に必要とされる距離をLとしたとき、該距離Lは
L=h1 +2×h2+he1+he2
になる。したがって、金型装置16の型開きを行う際の型開限における型開きストロークを前記距離Lより大きくする必要がある。
【0041】
前記真空発生装置62は、真空を発生させ、該発生させられた真空によって、ラベル保持部43、キャビティ36、成形品保持部44等に負圧を発生させ、ラベル保持部43によってラベル40を保持したり、キャビティ36によってラベル40を保持したり、成形品保持部44によって成形品38を保持したりする。本実施の形態においては、成形品38、ラベル40等は負圧によって保持されるようになっているが、静電気によって保持することができる。
【0042】
次に、前記構成の射出成形システム11の動作について説明する。
【0043】
まず、ロボット13において、図示されないインサート供給装置としてのラベル供給装置によってロボット13にラベル40が供給されると、制御部61の図示されないインサート操作処理手段(インサート操作処理部)は、インサート操作処理を行い、ラベル保持部43に負圧を発生させ、該発生させられた負圧によってラベル保持部43がラベル40を吸引し、保持する(ラベル取りを行う)。
【0044】
続いて、射出成形機12において、制御部60の図示されない型開閉処理手段(型開閉処理部)は、型開閉処理を行い、型締用モータを駆動して可動プラテン32を後退させ、金型装置16の型開きを開始する。
【0045】
図10に示されるように、金型装置16が設定された型開限より手前の所定の位置まで開かれると、制御部60の図示されない指示処理手段(指示処理部)は、指示処理を行い、ロボットアーム41を下降させるのを許可する操作許可指示を制御部61に送る。そして、前記制御部60から操作許可指示を受けると、制御部61の図示されない操作部位作動処理手段(操作部位作動処理部)は、操作部位作動処理を行い、前記昇降操作用モータを駆動し、前記ロボットアーム41を下降させ、作動位置に置く。このとき、ラベル保持部43によってラベル40が保持されている。
【0046】
この場合、最初の成形サイクルでは、成形品38が成形されていないので、前記操作部位作動処理手段は、進退操作用モータを駆動し、タイミングt1で前記ロボットアーム41を固定金型33側に向けて前進(移動)させ、キャビティ36内にラベル40を挿入することによってセットし、前記インサート操作処理手段は、キャビティ36に負圧を発生させ、該発生させられた負圧によってキャビティ36がラベル40を吸引し、保持する。
【0047】
続いて、前記指示処理手段は、タイミングt2でロボットアームを上昇させるのを許可する操作許可指示を制御部61に送り、ロボット13において操作許可指示を受けると、前記操作部位作動処理手段は、昇降操作用モータを駆動し、前記ロボットアーム41を上昇させ、退避位置に置く。
【0048】
そして、射出成形機12において、最初の成形サイクルが開始される。すなわち、前記型開閉処理手段は、タイミングt3で型締用モータを駆動して金型装置16の型閉じを開始し、続いて、型締めを開始し、タイミングt4で型締めを終了する。続いて、前記制御部60の図示されない射出処理手段(射出処理部)は、射出処理を行い、タイミングt5で射出装置17による射出を開始し、タイミングt6で射出を終了するとともに、保圧を開始し、タイミングt7で保圧を終了するとともに、冷却を開始し、タイミングt8で冷却を終了する。なお、前記タイミングt7で、冷却が開始されるのに伴って、計量が開始され、前記タイミングt8で冷却が終了されるのに伴って、計量が終了される。
【0049】
このようにして、樹脂が金型装置16のキャビティ空間に充填され、冷却され、成形品本体の側壁にラベル40が貼着された成形品38が成形される。
【0050】
続いて、ロボット13において、次の成形サイクルを開始するための準備が行われる。すなわち、前記ラベル供給装置によってロボット13にラベル40が供給されると、前記インサート操作処理手段は、ラベル保持部43に負圧を発生させ、該発生させられた負圧によってラベル保持部43がラベル40を吸引し、保持する(ラベル取りを行う)。
【0051】
次に、射出成形機12において、次の成形サイクルが開始される。すなわち、前記型開閉処理手段は、タイミングt8で型締用モータを駆動して可動プラテン32を後退させ、金型装置16の型開きを開始する。そして、タイミングt9で可動プラテン32が型開限より手前の所定の位置に到達すると、図10に示されるように、前記所定の位置で型開きを途中で停止させ、可動プラテン32を停止させる(状態q11)。また、前記指示処理手段は、ロボットアーム41を下降させるのを許可する操作許可指示を制御部61に送る。
【0052】
ロボット13において前記操作許可指示を受けると、前記操作部位作動処理手段は、前記昇降操作用モータを駆動し、前記ロボットアーム41を下降させ、作動位置に置く。このとき、ラベル保持部43によってラベル40が、コア37によって成形品38がそれぞれ保持されている。
【0053】
前記所定の位置は、ストリッパプレートによって成形品38を突き出したときに成形品38が成形品保持部44に当接する位置であり、あらかじめ算出され、成形品保持位置として設定される。
【0054】
また、前記制御部60の図示されない突出し処理手段(突出し処理部)は、突出し処理を行い、前記突出し用モータを駆動し、ストリッパプレートを前進(固定プラテン31側に向けて移動)させ、成形品38の突出しを開始し、成形品38を可動金型34から離型させる。
【0055】
本実施の形態においては、ストリッパプレートを前進させることによって成形品38の突出しを行うようになっているが、コア37の外周面の所定の位置に、空気吹出し部としての図示されないスリットを形成し、該スリットから加圧媒体としての空気を吹き出すことによって成形品38の突出しを行うことができる。その場合、加圧源としての圧縮空気供給部と前記スリットとが媒体流路によって連結され、前記突出し処理手段は、前記媒体流路に配設された弁機構としての開閉弁を開閉させることによって、スリットから空気を選択的に噴射させることができる。なお、ストリッパプレート及び空気によって、成形品38の突出しを行うこともできる。
【0056】
そして、ロボット13において、制御部61の図示されない成形品操作処理手段(成形品操作処理部)は、成形品操作処理を行い、タイミングt10で成形品保持部44に負圧を発生させ、該発生させられた負圧によって成形品保持部44が可動金型34から離型させられた成形品38を吸引し、保持する。
【0057】
続いて、タイミングt11で成形品38の突出しが終了すると、前記操作部位作動処理手段は、前記進退操作用モータを駆動し、前記ロボットアーム41を固定プラテン31側に向けて前進(移動)させ、図11に示されるように、タイミングt12でキャビティ36内にラベル40を挿入することによってセットする(状態q12)。この間、ロボットアーム41は成形品38を保持した状態で移動させられる。
【0058】
また、射出成形機12において、前記制御部60の図示されないインサート保持処理手段(インサート保持処理部)は、インサート保持処理を行い、キャビティ36に負圧を発生させ、該発生させられた負圧によってキャビティ36がラベル40を吸引し、保持する。このとき、前記突出し処理手段は、ストリッパプレートを後退させ、前記型開閉処理手段は、型締用モータを駆動して可動プラテン32を更に後退させ、金型装置16の型開きを再び開始し、可動プラテン32を矢印方向に後退させる。
【0059】
次に、タイミングt13で金型装置16が型開限まで開かれると、前記指示処理手段は、ロボットアーム41を後退させるのを許可する操作許可指示を制御部61に送り、ロボット13において前記操作許可指示を受けると、前記操作部位作動処理手段は、進退操作用モータを駆動し、図12に示されるように、前記ロボットアーム41を後退させる(状態q13)。
【0060】
続いて、前記指示処理手段は、ロボットアーム41を上昇させるのを許可する操作許可指示を制御部61に送り、ロボット13において前記操作許可指示を受けると、前記操作部位作動処理手段は、昇降操作用モータを駆動し、図13に示されるように、前記ロボットアーム41を上昇させ、退避位置に置く。
【0061】
次に、射出成形機12において、前記型開閉処理手段は、タイミングt14で型締用モータを駆動して可動プラテン32を前進(固定金型33側に向けて移動)させ、金型装置16の型閉じを行う。続いて、ロボット13において、前記成形品操作処理手段は、成形品保持部44に負圧を発生させるのを停止させ、成形品保持部44は成形品38を解放する。
【0062】
このように、本実施の形態においては、型開きが終了する前に成形品38がストリッパプレートによって突き出され、ロボットアーム41によって吸引されて保持され、しかも、ロボットアーム41によってキャビティ36にラベル40がセットされるので、成形サイクルを短くすることができる。
【0063】
また、ロボット13として、一つのロボットアーム41を備えた単軸のロボットを使用することができるので、型開きストロークを小さくすることができ、射出成形システムを小型化することができる。
【0064】
ところで、本実施の形態においては、成形品38を突き出すことによって、離型を行うとともに、成形品38を成形品保持部44に当接させるようになっているが、可動プラテン32を位置決めすることによって成形品38を成形品保持部44に当接させ、その後、離型を行うことができる。
【0065】
また、本実施の形態においては、固定金型33にキャビティ36が、可動金型34にコア37が形成されるようになっているが、固定金型33にコア37を、可動金型34にキャビティ36を形成することもできる。
【0066】
次に、可動プラテン32を位置決めすることによって成形品38を成形品保持部44に当接させ、その後、離型を行うようにした本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0067】
図14は本発明の第2の実施の形態における成形品の突出し方法を説明する図である。
【0068】
図において、71は突出し要素としてのストリッパプレートであり、該ストリッパプレート71は第1の金型としての固定金型33に取り付けられる。
【0069】
この場合、射出成形機12において、前記型開閉処理手段は、型締用モータを駆動して第2の支持部材としての可動プラテン32を後退させ、金型装置16の型開きを開始し、可動プラテン32が型開限より手前の所定の位置に到達すると、該所定の位置で型開きを途中で停止させ、可動プラテン32を停止させる。
【0070】
続いて、前記指示処理手段は、操作部位としてのロボットアーム41を下降させるのを許可する操作許可指示を制御部61に送る。そして、ロボット13において前記操作許可指示を受けると、前記操作部位作動処理手段は、前記昇降操作用モータを駆動し、前記ロボットアーム41を下降させ、作動位置に置く。このとき、第1の保持部としての、かつ、インサート保持部としてのラベル保持部43によってラベル40が、コア37によって成形品38がそれぞれ保持されている。
【0071】
前記所定の位置は、ストリッパプレートによって成形品38を突き出したときに成形品38が第2の保持部としての成形品保持部44に当接する位置であり、あらかじめ算出され、成形品保持位置として設定される。
【0072】
続いて、射出成形機12において、前記型開閉処理手段は、型締用モータを駆動して可動プラテン32を前進(固定プラテン31側に向けて移動)させ、成形品38を成形品保持部44に当接させ、この状態で、前記成形品操作処理手段は、成形品保持部44に負圧を発生させ、該発生させられた負圧によって成形品保持部44が第2の金型としての可動金型34から離型させられた成形品38を吸引し、保持する。
【0073】
そして、前記突出し処理手段は、突出し用モータを駆動し、ストリッパプレートを前進させ、前記型開閉処理手段は、型締用モータを駆動して可動プラテン32を後退させると、成形品38を可動金型34から離型させることができる。
【0074】
なお、本実施の形態においては、固定金型33にキャビティ36が、可動金型34にコア37が形成されるようになっているが、固定金型33にコア37を、可動金型34にキャビティ36を形成することもできる。
【0075】
次に、前記ロボットアーム41において成形品保持部44を進退自在に配設するようにした本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0076】
図15は本発明の第3の実施の形態における射出成形システムの動作を示す第1の図、図16は本発明の第3の実施の形態における射出成形システムの動作を示す第2の図、図17は本発明の第3の実施の形態における射出成形システムの動作を示す第3の図、図18は本発明の第3の実施の形態における射出成形システムの動作を示す第4の図、図19は本発明の第3の実施の形態における射出成形システムの動作を示す第5の図である。
【0077】
この場合、ロボットアーム41の先端には、ロボットアーム41が作動位置に置かれたときにキャビティ36と対向する部分に、第1の保持部としての、かつ、インサート保持部としてのラベル保持部43が、第1の金型としての固定金型33に向けて突出させて形成される。また、前記ラベル保持部43と反対側には、ロボットアーム41が作動位置に置かれたときにコア37と対向する部分に、離型させられた成形品38を受け、金型間から取り出すための第2の保持部としての成形品保持部44が可動金型34に向けて突出させて形成される。なお、前記成形品保持部44はロボットアーム41に対して進退自在にされる。
【0078】
そのために、前記ラベル保持部43内に、成形品38の保持用の駆動部としての空圧シリンダ49が配設され、前記成形品保持部44は、円錐形の形状を有し、成形品38を保持する際に成形品38と当接させられる当接部50、及び該当接部50からラベル保持部43側に向けて延びるロッド部52を備え、該ロッド部52は前記空圧シリンダ49の図示されないピストンと一体に形成される。したがって、前記空圧シリンダ49を駆動することによって当接部50を進退させることができる。
【0079】
なお、前記成形品保持部44及び空圧シリンダ49によって成形品保持ユニットが構成される。また、成形品38の保持用の駆動部として空圧シリンダ49に代えて、油圧シリンダを使用したり、ラックアンドピニオン等を使用したりすることができる。
【0080】
次に、前記構成の射出成形システム11(図7)の動作について説明する。
【0081】
まず、可動プラテン32が型開限より手前の所定の位置に到達すると、前記型開閉処理手段は、図15に示されるように、前記所定の位置で型開きを途中で停止させ、可動プラテン32を停止させる(状態q21)。そして、前記指示処理手段は、ロボットアーム41を下降させるのを許可する操作許可指示を制御部61(図7)に送る。
【0082】
ロボット13(図7)において前記操作許可指示を受けると、前記操作部位作動処理手段は、前記昇降操作用モータを駆動し、前記ロボットアーム41を下降させ、作動位置に置く。このとき、ラベル保持部43によってラベル40が、コア37によって成形品38がそれぞれ保持されている。
【0083】
続いて、前記操作部位作動処理手段は、前記進退操作用モータを駆動し、図16に示されるように、前記ロボットアーム41を固定プラテン31側に向けて前進(移動)させ、このとき、前記操作部位作動処理手段は、前記空圧シリンダ49を駆動して成形品保持部44を前進させる(状態q22)。
【0084】
また、前記制御部60の前記突出し処理手段(突出し処理部)は、前記突出し用モータを駆動し、前記ストリッパプレートを前進(固定プラテン31側に向けて移動)させ、成形品38の突出しを開始し、成形品38を可動金型34から離型させる。
【0085】
そして、前記制御部61の前記成形品操作処理手段(成形品操作処理部)は、成形品保持部44に負圧を発生させ、発生させられた負圧によって成形品保持部44が可動金型34から離型させられた成形品38を吸引し、保持する。
【0086】
続いて、前記操作部位作動処理手段は、前記進退操作用モータを更に駆動し、図17に示されるように、ラベル40をキャビティ36内に挿入することによってセットする(状態q23)。この間、ロボットアーム41は成形品38を保持した状態で移動させられる。
【0087】
また、射出成形機12において、前記インサート保持処理手段は、キャビティ36に負圧を発生させ、発生させられた負圧によってキャビティ36がラベル40を吸引し、保持する。このとき、前記突出し処理手段は、ストリッパプレートを後退させ、前記型開閉処理手段は、型締用モータを駆動して可動プラテン32を更に後退させ、金型装置16の型開きを再び開始し、可動プラテン32を後退させる。
【0088】
次に、金型装置16が型開限まで開かれると、前記指示処理手段は、ロボットアーム41を後退させるのを許可する操作許可指示を制御部61に送り、ロボット13において前記操作許可指示を受けると、前記操作部位作動処理手段は、進退操作用モータを駆動し、図18に示されるように、前記ロボットアーム41を後退させる(状態q24)。
【0089】
続いて、前記指示処理手段は、ロボットアーム41を上昇させるのを許可する操作許可指示を制御部61に送り、前記操作許可指示を受けると、前記操作部位作動処理手段は、昇降操作用モータを駆動し、図19に示されるように、前記ロボットアーム41を上昇させ、退避位置に置く。
【0090】
このように、本実施の形態においては、型開きが終了する前に、前記ロボットアーム41が固定プラテン31側に向けて前進(移動)させられ、成形品38がストリッパプレートによって突き出され、ロボットアーム41によって吸引されて保持され、しかも、ロボットアーム41によってキャビティ36にラベル40がセットされるので、成形サイクルを短くすることができる。
【0091】
また、本実施の形態においては、固定金型33にキャビティ36が、可動金型34にコア37が形成されるようになっているが、固定金型33にコア37を、可動金型34にキャビティ36を形成することもできる。
【0092】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1の実施の形態における射出成形システムの要部を示す図である。
【図2】従来の射出成形システムの要部を示す図である。
【図3】従来の射出成形システムの動作を示す第1の図である。
【図4】従来の射出成形システムの動作を示す第2の図である。
【図5】従来の射出成形システムの動作を示す第3の図である。
【図6】従来の射出成形システムの動作を示す第4の図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における射出成形システムを示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における射出成形システムの動作を示す工程図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における射出成形システムの動作を示すタイムチャートである。
【図10】本発明の第1の実施の形態における射出成形システムの動作を示す第1の図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態における射出成形システムの動作を示す第2の図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態における射出成形システムの動作を示す第3の図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態における射出成形システムの動作を示す第4の図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態における成形品の突出し方法を説明する図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態における射出成形システムの動作を示す第1の図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態における射出成形システムの動作を示す第2の図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態における射出成形システムの動作を示す第3の図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態における射出成形システムの動作を示す第4の図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態における射出成形システムの動作を示す第5の図である。
【符号の説明】
【0094】
11 射出成形システム
16 金型装置
31 固定プラテン
32 可動プラテン
33 固定金型
34 可動金型
40 ラベル
41 ロボットアーム
43 ラベル保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の支持部材に取り付けられた第1の金型と、
(b)該第1の金型と対向させて、第2の支持部材に取り付けられた第2の金型と、
(c)該第2の金型を進退させ、金型装置の型閉じ、型締め及び型開きを行う型締め用の駆動部と、
(d)インサートを保持するためのインサート保持部を備えた操作部位と、
(e)型開きが開始されてから終了されるまでの間に、前記操作部位を前記第1の金型に向けて前進させ、該第1の金型にインサートをセットする操作部位作動処理手段とを有することを特徴とする射出成形システム。
【請求項2】
(a)前記操作部位は、前記第2の金型から突き出された成形品を保持するするための成形品保持部を備え、
(b)前記操作部位作動処理手段は、型開きが開始されてから終了されるまでの間に、前記成形品保持部によって成形品を保持する請求項1に記載の射出成形システム。
【請求項3】
前記成形品保持部は前記操作部位に対して進退自在に配設される請求項2に記載の射出成形システム。
【請求項4】
前記操作部位作動処理手段は、前記成形品保持部によって成形品を保持した後、第1の金型にインサートをセットする請求項2又は3に記載の射出成形システム。
【請求項5】
前記操作部位作動処理手段が成形品を保持するときに型開きを行っている前記第2の金型を一時的に停止させる型開閉処理手段を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の射出成形システム。
【請求項6】
第1の支持部材に取り付けられた第1の金型、該第1の金型と対向させて配設され、第2の支持部材に取り付けられた第2の金型、該第2の金型を進退させ、金型装置の型閉じ、型締め及び型開きを行う型締め用の駆動部、並びにインサートを保持するためのインサート保持部を備えた操作部位を有する射出成形システムの射出成形方法において、
型開きが開始されてから終了されるまでの間に、前記操作部位を前記第1の金型に向けて前進させ、該第1の金型にインサートをセットすることを特徴とする射出成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−262406(P2009−262406A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114439(P2008−114439)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】