説明

射出成形方法

【課題】 設備が簡単であり、別に国家試験をパスした保安係員を必要とせず、射出成形機の力を利用した射出成形方法を提供する。
【解決手段】 成形品の表面側を成形する表面側キャビティ面8aに溶融樹脂7を射出すると共に、成形品の背面側を成形する背面側キャビティ面8bとキャビティ8内の溶融樹脂7の間に加圧ガスを圧入する射出成形方法において、
上記加圧ガスは、コンプレッサー装置を利用した射出成形方法であって、
射出成形機の突き出し装置による突き出し力Pをシリンダー9内のピストン10の加圧力に転換し、この転換されたピストン10の加圧力を圧搾空気として前記シリンダー9の吐出孔11から吐出し、この圧搾空気を前記吐出孔11に連通する可動側金型3内の貫通孔12に圧入し、この前記貫通孔12に圧入された圧搾空気を前記背面側キャビティ面8bに開口する開口孔13ら、背面側キャビティ面8bとキャビティ8内の溶融樹脂7の間に圧入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂射出成形品のソリ防止、ヒケ防止対策に有効な射出成形方法及びその方法を使用する射出成形機の力を利用したコンプレッサー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、成形品の表面側を成形する表面側キャビティ面に溶融樹脂を射出すると共に、成形品の背面側を成形する背面側キャビティ面とキャビティ内の溶融樹脂の間に加圧ガスを圧入する射出成形方法が提供されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−254924
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし前記加圧ガスは、加圧ガス圧入口から別途加えなればならず、また従来使用されていたガスインジェクションは、咄出圧力が約30MPa(約306kgf/cm)必要であり、設備が多額で大がかりである。また特殊なノウハウと高圧ガスに関わる国家試験をパスした保安係員を必要とした。
【0005】
この点、射出成形機のつきだし力は、小型機100トンクラスでも3トン以上の力がある。例えば通常のエアコンプレッサーは平均6kgf/cmであり、直径3cmのシリンダーを利用すると単純計算で428kgf/cmのガス圧力が発生する。
従って、できれば射出成形機の力、すなわち射出成形機の突き出し力を利用した射出成形方法であれば非常に好ましいといえる。
【0006】
この発明の目的は、設備が簡単であり、別に国家試験をパスした保安係員を必要とせず、射出成形機の力を利用した射出成形方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、成形品の表面側を成形する表面側キャビティ面に溶融樹脂を射出すると共に、成形品の背面側を成形する背面側キャビティ面とキャビティ内の溶融樹脂の間に加圧ガスを圧入する射出成形方法において、
上記加圧ガスは、射出成形機の突き出し力をシリンダー内のピストンの加圧力に転換し、この転換されたピストンの加圧力を圧搾空気として前記シリンダーの吐出孔から吐出し、この圧搾空気を前記吐出孔に連通する可動側金型内の貫通孔に圧入し、この前記貫通孔に圧入された圧搾空気を前記背面側キャビティ面に開口する開口孔から、背面側キャビティ面とキャビティ内の溶融樹脂の間に圧入する射出成形方法を採用した。
【0008】
また前記方法を使用し実施するに際して、
前記コンプレッサー装置はシリンダーとその内部を往復するピストンとから構成されたレシプロ圧縮機からなり、
前記ピストンは、射出成形機の突き出し力を加圧力に転換し、
前記シリンダーは、この転換されたピストンの加圧力を圧搾空気として吐出孔から吐出し、この圧搾空気を前記吐出孔に連通する可動側金型内の貫通孔に圧入する、コンプレッサー装置を開発したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、機械的な突き出し力を利用してコンプレーサー装置を介して加圧ガスを圧入するという簡単な設備でありながら、大規模な圧力が得られる。例えば小型の射出成形機100トンクラスでも3トン以上の突き出し力があれば、1トンの突き出し力で直径3cm、面積7cmのシリンダーを持つエアコンプレッサーを介して142Kgf/cmのガス圧力が発生する。また射出成形機内にコンプレーサー装置を設け、このコンプレーサー装置を突き出し力によって動作させるから、別に国家試験をパスした保安係員は必要としない。また前記ガス圧力によって成形品のヒケを有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】型締め状態における射出成形機の一実施形態を示す型締機構の要部拡大概略図である。
【図2】型開き状態における同型締機構の要部拡大概略図である。
【図3】貫通孔を厚肉部の両側面側に設けられた金型の概略図である。
【図4】貫通孔を厚肉部の頂部に設けられた金型の概略図である。
【図5】貫通孔を断面三角形状厚肉部の根元部に設けた金型の概略図である。
【図6】貫通孔を隅部が厚肉部に設けた金型の概略図である。
【図7】貫通孔を複数の厚肉部に設けた金型の概略図である。
【図8】コンプレッサー装置を外付けタイプにした他実施形態を示す型締機構の要部拡大概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1において、1は金型で、2はその固定側金型、3はその可動側金型である。固定側金型2には背面側に固定盤4が設けられ、可動側金型3には背面側に環状体5を挟んで可動盤6が設けられている。7は加熱シリンダー(省略されている)から送られてきた溶融樹脂(湯)である。8はその溶融樹脂7を射出するキャビティであり、成形品の表面側を成形する表面側キャビティ面8aと、成形品の背面側を成形する背面側キャビティ面8bとで構成されている。
【0012】
この実施形態では、図示の通り、例えば部分的に厚肉部100が突出した非意匠面101と、その反対側の面である意匠面102とを有する偏肉成形品103の射出成形している。そしてその際、厚肉部100を成形すると、その反対側の意匠面102にヒケが生じるため、型締め時に背面側キャビティ面8bとキャビティ8内の溶融樹脂7の間に加圧ガスを強制的に圧入して成形し、意匠面102のヒケを非意匠面101に移動し、非意匠面101においてヒケが生じても、意匠面102にヒケが生じない工夫が施されている。
【0013】
ところでこの加圧ガスは、従来は別個の加圧ガス供給口から供給されていたが、この発明の一実施形態では射出成形機の突き出し装置(省略)とこれに連続する突き出し棒BRと、これに連続するコンプレッサー装置16と貫通孔12を有した可動側金型3を利用している。すなわち、型締め状態において、キャビティ8内に溶融樹脂を充填された後は、溶融状態において直ちに突き出し装置(省略)の突き出し力Pを、可動盤6の動作とは無関係に、突き出し棒BRに伝え、これと同軸方向に設置されたコンプレッサー装置16を構成するシリンダー9内のピストン10に抗してピストン10の加圧力pへと転換し、この転換されたピストン10の加圧力pを圧搾空気として同軸方向に設置された前記シリンダー9の吐出孔11から吐出し、この圧搾空気を前記吐出孔11に連通する可動側金型3内の貫通孔12に圧入し、この前記貫通孔12に圧入された圧搾空気を前記背面側キャビティ面8bに開口する開口孔13から、背面側キャビティ面8bとキャビティ8内の溶融樹脂の間に圧入するようにした。その後、冷却され、型開き時において、図2に示すように、一方が固定盤4に他方が可動盤6側に取り付けられたチェーンCが互いに引っ張られる位置にまで可動盤6が移動し、ピストン10が同軸方向に後退して、突き出しピン14を成形品に突き出して成形品を得るようにした。なお、Dは突き出し板である。
【0014】
従って、加圧ガスは、突き出し装置の突き出し力を利用しているので、設備が簡単であり、別に国家試験をパスした保安係員を不要としている。
【0015】
なお、前記コンプレッサー装置16は、シリンダー9とその内部を往復するピストン10とから構成されたレシプロ圧縮機からなり、前記ピストン10は、射出成形機の突き出し力Pを同軸方向の加圧力pに転換し、前記シリンダー9は、この転換されたピストン10の加圧力pを圧搾空気として吐出孔11から吐出し、この圧搾空気を前記吐出孔11に連通する可動側金型3(移動型)内の貫通孔12に圧入する構成であれば採用することができる。
【0016】
前記の「抗して」は、図1及び図2に示す通り、ばね15により行っているが、これを用いなくてもコンプレッサー装置16に逆止弁(図示せず)を設け、そこからコンプレッサー装置16に市販されているコンプレッサーの高圧エアーを注入することによってピストンがもどり、しかも加圧ガスの圧力は増大する。
【0017】
図3は可動側金型3内に貫通孔12を設けた一実施形態の金型の概略図で、図4は他の実施形態を示す金型の概略図である。図3は貫通孔12を厚肉部100(成形後)の両側面側に設けられており、図4は厚肉部100(成形後)の頂部に設けられている。図3又は図4はいずれも中ピンの周囲に隙間として貫通孔12を設けた例である。なお、いずれも図示されているが、Aの矢印方向から溶融樹脂7が入り、Bの矢印方向から貫通孔12を通って加圧ガスが入る。従って、貫通孔12は加圧ガスが入るが、溶融樹脂7が入らない例えば0.02〜0.06mmの径でなければならない。図5〜図7はその他の実施形態を示しており、図5は成形後に断面三角形状をした厚肉部104となる場合の金型内の貫通孔12の設け方であり、中ピンが省略された図を示している。図6は隅が厚肉部105となる場合の貫通孔12の設け方であり、中ピンが省略された図を示している。図7は複数の厚肉部106となる場合の貫通孔12の設け方であり、中ピンが省略された図を示している。
【0018】
この突き出し力を利用した装置の場合、加圧ガスの容量は突き出しの距離Lで制御できる。また突き出し力は射出成形機と連動しているので、成形品が固化する前のタイミング、圧力は容易に制御できる。金型にこのコンプレッサー装置16をコンパクトに設置できる。ヒケを防止するために必要なガスの体積は成形品を成形する金型に対して、ごくわずかであるため、金型内に内蔵したり外付け設置したりできる。図8は外付けタイプの一実施形態を示す概略図である。図8においてコンプレッサー装置16が外付けされている。図8中、貫通孔12内部に中ピンが省略された図を示している。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、合成樹脂射出成形品のソリ防止、ヒケ防止対策に有効な射出成形方法及びその方法を使用する射出成形機の力を利用したコンプレッサー装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 金型
2 固定側金型
3 可動側金型
7 溶融樹脂
8 キャビティ
8a 表面側キャビティ面
8b 背面側キャビティ面
9 シリンダー
10 ピストン
P 突き出し力
p 加圧力
11 吐出孔
12 貫通孔
13 開口孔
16 コンプレッサー装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品の表面側を成形する表面側キャビティ面に溶融樹脂を射出すると共に、成形品の背面側を成形する背面側キャビティ面とキャビティ内の溶融樹脂の間に加圧ガスを圧入する射出成形方法において、
上記加圧ガスは、コンプレッサー装置を利用した射出成形方法であって、
射出成形機の突き出し装置による突き出し力をシリンダー内のピストンの加圧力に転換し、この転換されたピストンの加圧力を圧搾空気として前記シリンダーの吐出孔から吐出し、この圧搾空気を前記吐出孔に連通する可動側金型内の貫通孔に圧入し、この前記貫通孔に圧入された圧搾空気を前記背面側キャビティ面に開口する開口孔から、背面側キャビティ面とキャビティ内の溶融樹脂の間に圧入する射出成形方法。
【請求項2】
前記請求項1記載の射出成形方法を実施するコンプレッサー装置であって、
前記コンプレッサー装置はシリンダーとその内部を往復するピストンとから構成されたレシプロ圧縮機からなり、
前記ピストンは、射出成形機の突き出し力を同軸方向の加圧力に転換し、
前記シリンダーは、この転換されたピストンの加圧力を圧搾空気として吐出孔から吐出し、この圧搾空気を前記吐出孔に連通する可動側金型内の貫通孔に圧入する、コンプレッサー装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−126093(P2011−126093A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285434(P2009−285434)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(398075851)株式会社ホシプラ (10)
【Fターム(参考)】