説明

射出成形機の射出ノズル

【課題】ゴム材料が射出ノズルを通過する際に発熱を効率的に行わせ得て、成形型に注入されるゴム材料の温度を従来に増して高い温度となし得、成形サイクルタイムを短くすることができるとともに、必要に応じてゴム材料の発熱量,昇温の程度を簡単に調節することのできるゴム射出成形機の射出ノズルを提供する。
【解決手段】射出シリンダ24の射出チャンバに充填されたゴム材料を成形型に射出する射出成形機の射出ノズル30を、先端部にノズル孔48を有するノズル本体36と、ノズル本体36とは別体をなしてノズル本体36の凹所44の内部に嵌合状態に挿入された多数の細孔52を有する多孔構造の摩擦発熱体38とで構成し、ゴム材料を多数の細孔52を軸方向に通過させそこで摩擦発熱させるとともに、更にノズル孔48を通過させることで発熱させ、成形型へと供給するようになす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ゴム材料を成形型に射出し成形する射出成形機の射出ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム成形品の成形機として射出成形機が広く用いられている。
この射出成形機では、射出シリンダの内部の射出チャンバに充填されたゴム材料を、射出シリンダの先端部の射出ノズルから成形型に射出し所定形状に成形する。
このときゴム材料は射出ノズルを通過する過程で射出ノズルの内周面との間の摩擦力で発熱し、昇温した上で成形型の内部に注入される。
【0003】
図6は従来の射出ノズルの具体例を示している。
図において200は成形型、202は射出シリンダで、204は射出ノズルである。
射出ノズル204は軸方向一端側(図中上端側)の外周面に雄ねじ206を有しており、この雄ねじ206において射出シリンダ202にねじ結合され、取り付けられている。
射出ノズル204は全体として筒状をなしており、その内部にゴム材料の通過空間としての凹所208を有している。
また先端部には凹所208に連通した、凹所208よりも小径のノズル孔210を有している。
【0004】
このような射出ノズル204を備えた射出成形機では、射出シリンダ内部の射出チャンバに充填されたゴム材料が射出ノズル204を通過して成形型200の内部に注入される。
そしてこのときゴム材料が射出ノズル204のノズル孔210で流れが絞られ、ノズル孔210を通過する際にノズル孔210の内周面との間に生ずる大きな摩擦力に基づいて発熱を生じ、昇温せしめられる。
【0005】
このときのゴム材料の昇温温度が高く、加硫温度に近くなるほど成形型200内部でのゴム材料の加熱のための所要時間が短くて済み、ゴム成形品の加硫成形のための成形サイクルタイムを短くすることができ、生産性を高めることができる。
【0006】
しかしながら従来の射出ノズル204の場合、ゴム材料が摩擦発熱を生じるのは主としてゴム材料がノズル孔210を通過するときだけであり、また発熱を生じるのはノズル孔210の内周面と摩擦接触する外周部分だけであるためにゴム材料の昇温が十分ではなく、成形型内部に到ってからゴム材料を加硫温度まで加熱するための所要時間が長くなって、成形サイクルタイムが長くなってしまうといった問題があった。
【0007】
尤もゴム材料に対するノズル孔210の抵抗を変えるなどしてノズル孔210でのゴム材料の発熱を大きくすること、即ちゴム材料の昇温温度を高めることが可能であるが、単一のノズル孔210の内周面との摩擦による発熱だけでは、ゴム材料の発熱量を大として昇温温度を高めるにしても自ずと限界があり、またゴム材料に対する加熱はノズル孔210を通過する部分の外周部分の部分的な加熱であるため、全体の温度を高めようとすると外周部分が過熱状態となって所謂ゴム焼けを起こしてしまう問題を生ずる。
【0008】
またその他にこの射出ノズル204の場合、ノズル孔210を通過するゴム材料の外周部分だけが発熱を生じ、中心部分については摩擦による発熱を生じないために、外周部分と内周部分とで温度差が生じ、ゴム材料に温度ムラが発生してしまう問題があった。
【0009】
尚、本発明に対する先行技術として下記特許文献1に開示されたものがある。
しかしながらこの特許文献1に開示のものは、射出ノズルそのものが複雑な構造となり、また専用の射出シリンダないし射出装置を必要とし、更にゴム材料が射出ノズルを通過する際の抵抗及びその抵抗に基づく発熱を容易に変更できないなど本発明とは別異のものである。
【0010】
他の先行技術として、下記特許文献2に開示されたものがある。
しかしながらこの特許文献2に開示のものは、成形型の側に注入ノズルを設け、その注入ノズルをゴム材料が通過する際に発熱させるようになしたもので、これもまた本発明とは別異のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−34034号公報
【特許文献2】特開2008−105247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は以上のような事情を背景とし、従来の射出シリンダないし射出ノズルを特に構造的に改変しなくてもゴム材料が射出ノズルを通過する際の発熱を効率的に行わせ得て、成形型に射出されるゴム材料の温度を従来に増して高い温度となし得、成形サイクルタイムを短くすることができるとともに、必要に応じてゴム材料の発熱量,昇温の程度を簡単に調節することのできるゴム射出成形機における射出ノズルを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
而して請求項1のものは、射出シリンダの内部の射出チャンバに充填されたゴム材料を該射出シリンダの先端部の射出ノズルから成形型に射出する射出成形機の該射出ノズルであって、(a)筒状をなして内部に前記ゴム材料の通過空間としての凹所を有するとともに、先端部には該凹所に連通した該凹所よりも小径のノズル孔を有するノズル本体と、(b)該ノズル本体とは別体をなして該ノズル本体の該凹所の内部に且つ該凹所の内周面に全周に亘って嵌合状態に挿入されるとともに、軸方向に延びて前記ノズル孔に連通し、前記射出チャンバからの前記ゴム材料を軸方向に通過させて摩擦発熱させる、前記ノズル孔よりも細径をなす2以上の複数の細孔を有し、該ゴム材料を該複数の細孔に分散させて各細孔を通過させた上で前記ノズル孔に導く複孔構造の摩擦発熱体と、を含んで構成してあることを特徴とする。
【0014】
請求項2のものは、請求項1において、前記摩擦発熱体は、前記ノズル本体における前記凹所の前記ノズル孔側の底部に当接状態に設けられているとともに、前記複数の細孔のそれぞれが、該ノズル孔側の前方に進むにつれて該摩擦発熱体の径方向中心側へと移行して該ノズル孔に収束する形状となしてあることを特徴とする。
【0015】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記摩擦発熱体の後端側には、前記ノズル本体の前記凹所に向けて開口した後端の開口から前記前方に進むに連れて内周形状が窄まる形状のすり鉢状の凹形状をなして前記複数の細孔のそれぞれに連続し、前記射出チャンバから前記凹所に到った前記ゴム材料を各細孔に集め案内する案内凹部が各細孔に対応した位置に且つ対応した数で設けてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0016】
以上のように本発明は、射出ノズルを、筒状をなして内部にゴム材料の通過空間としての凹所を有する、ノズル孔を備えたノズル本体と、ノズル本体とは別体をなしてノズル本体の凹所の内部に且つ凹所の内周面に嵌合状態に挿入されるとともに、軸方向に延びてノズル孔に連通し、射出チャンバからのゴム材料を軸方向に通過させて摩擦発熱させる、ノズル孔よりも細径をなす2以上の複数の細孔を有し、ゴム材料を複数の細孔に分散させて各細孔を通過させた上でノズル孔に導く複孔構造の摩擦発熱体と、を含んで構成したものである。
【0017】
かかる本発明では、射出チャンバからのゴム材料が射出ノズルを通過する際、ゴム材料がノズル本体のノズル孔を通過するときに発熱を生じるのみならず、ノズル本体の内部に挿入された摩擦発熱体の複数の細孔を通過する過程でも摩擦による発熱を生じ、しかもその摩擦発熱体における各細孔はノズル孔よりも細径であるために各細孔において効果的に発熱を生じる。
しかもその細孔は複数設けられているために摩擦発熱体をゴム材料が通過する際の発熱量が大きく、成形型に射出され、注入された時点でのゴム材料の温度を可及的に加硫温度に近付けることができる。
【0018】
その結果として、成形型内部でのゴム材料の加熱のための所要時間を短くでき、ゴム成形品の成形サイクルタイムを効果的に短縮化でき、生産能率を高めることができる。
【0019】
更に本発明では、ゴム材料が摩擦発熱体の細孔を通過する際に細孔による効果(ゴム材料の通過路が狭いことによる効果)によって、細孔を通過するゴム材料に対して外周部から内部に到るまで加熱することが可能であり、しかもゴム材料を複数の細孔に分散してそこを通過させることで加熱するため、ゴム材料全体に対する加熱を均等化し得て、ゴム材料における温度ムラを可及的に少なくすることができる。
【0020】
加えて本発明では摩擦発熱体がノズル本体と別体をなしていて、ノズル本体の凹所に嵌合状態に挿入されて装着されるものであるため、ゴム材料の材質や品種或いは必要な加熱温度に応じて、細孔の径や数その他の異なった別の摩擦発熱体と取り換えることで、ゴム材料が射出ノズルを通過する際の抵抗及び発熱量を適正なものに容易に調節することができる特長を有する。
【0021】
また本発明では単に摩擦発熱体を従来の射出ノズルに相当するノズル本体の内部の凹所に装填するだけでよいため、従来の射出ノズルや射出シリンダないし射出装置の構造を何等改変することなく、そのまま用いることができる利点を有している。
【0022】
次に請求項2は、摩擦発熱体をノズル本体における凹所のノズル孔側の底部に当接状態に設けるとともに、複数の細孔のそれぞれを、ノズル孔側の前方に進むに連れて摩擦発熱体の径方向中心側へと移行してノズル孔に収束する形状となしたものである。
【0023】
このようにしておけば、複数の細孔を通過したゴム材料が、摩擦発熱体と凹所の底部との間に生じたゴム溜りに滞留してゴム焼けを生じたり、またその後の射出によってそのゴム溜りの焼けゴムが成形型内部に入り込んで、ゴム成形品の製品不良に繋がるといった問題を生ぜしめず、細孔を通過したゴム材料は確実にそのままノズル孔へと流れ込んで成形型に供給される(本発明ではそのようなゴム溜りは生じない)。
従ってゴム溜りでゴム焼けを生じて、その焼けゴムが成形型内に供給されてしまうのを確実に防止し得て、焼けゴムの混入による製品不良の発生を防止することができる。
【0024】
請求項3のものは、摩擦発熱体の後端側に、ノズル本体の上記の凹所に向けて開口した後端の開口から前方に進むに連れて内周形状が窄まる形状のすり鉢状の凹形状をなし、複数の細孔のそれぞれに連続して、射出チャンバから上記凹所に到ったゴム材料を各細孔に集め案内する案内凹部を、各細孔に対応した位置に且つ対応した数で設けたもので、この請求項3によれば、射出チャンバからのゴム材料を良好に摩擦発熱体の各細孔に流入案内して集め、それぞれの細孔を通過してノズル本体のノズル孔へと導くことができ、ノズル本体における凹所の摩擦発熱体近傍個所でゴム材料の流れが悪くなって、そこにゴム材料が滞留してしまうのを良好に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態の射出ノズルを備えた射出成形機の要部の図である。
【図2】同実施形態の射出ノズルの断面図である。
【図3】同実施形態における摩擦発熱体の単品図である。
【図4】図3の摩擦発熱体の断面斜視図である。
【図5】本発明の他の実施形態の図である。
【図6】従来の射出ノズルの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は縦型のゴム射出成形機で12は射出機、14は押出機、16は金型からなる成形型である。
押出機14は、押出シリンダ18の内側にスクリュー20を内蔵しており、供給口22を通じて供給されたテープ状のゴム材料を、スクリュー20の回転により可塑化して射出機12側へと押し出す。
【0027】
射出機12は、射出シリンダ24と、その内部の射出チャンバ26に充填されたゴム材料を前進移動により射出するプランジャ28とを有しており、また射出シリンダ24の先端部には射出ノズル30が設けられている。
【0028】
このゴム射出成形機10では、押出機14から可塑化され押し出されたゴム材料が、プランジャ28の後退移動を伴って射出シリンダ24内部の射出チャンバ26に充填される。
そして所定量のゴム材料が射出チャンバ26に押出供給され、充填されたところでプランジャ28が前進移動し、射出チャンバ26内の可塑化状態のゴム材料を、射出シリンダ24の通路32及び射出ノズル30を通じて、成形型16内部のキャビティ34に射出する。
キャビティ34に供給されたゴム材料はそこで所定時間加熱加硫されてゴム成形品となる。
【0029】
図2に、射出ノズル30の構成が具体的に示してある。
同図に示しているように、射出ノズル30はノズル本体36、及びこれとは別体をなす多孔構造の摩擦発熱体38から成っている。
ノズル本体36は全体として筒状をなしており、図中上端部の外周面には雄ねじ40が形成されていて、この雄ねじ40において射出シリンダ24の雌ねじ42にねじ込まれ、射出シリンダ24に取り付けられている。
【0030】
このノズル本体36は、内部にゴム材料の通過空間としての断面円形状を成す凹所44を有しているとともに、先端部(図中下端部)には成形型16に当接する部分球状の当接部46を有しており、その中心部に図中下向きに若干末広がり形状をなすテーパ形状のノズル孔48が形成されている。
【0031】
多孔構造の摩擦発熱体38は、ゴム材料を強制通過させることで発熱させ昇温させるための部材で、図2及び図3に示しているように横断面が円形、縦断面が四角形状をなしている。
この摩擦発熱体38は、外周面が凹所44の内周面に全周に亘り隙間なく嵌合する状態に凹所44に挿入され、ノズル本体36に装着されている。
ここで摩擦発熱体38は、図中下面を凹所44の底部50に隙間なく当接させる状態に凹所44に挿入され、装着されている。
【0032】
この摩擦発熱体38には、軸方向に延びてノズル孔48に連通し、射出チャンバ26からのゴム材料を軸方向に通過させて摩擦発熱させる多数(ここでは6個)の細孔52が設けられている。
ここで各細孔52は、ノズル孔48よりも細径をなしており、且つそれぞれがノズル孔48側の前方(図中下方)に進むに連れて摩擦発熱体38の径方向中心側へと移行し、ノズル孔48に収束する即ちノズル孔48内で先端が開口する形状をなしている。
【0033】
摩擦発熱体38にはまた、その後端側(図中上端側)に、細孔52のそれぞれに連続する形態で細孔52に対応した数の多数(ここでは6個)の案内凹部54が設けられている。
ここで案内凹部54は、その後端(図中上端)がノズル本体36の凹所44に向けて開口し、そしてその後端から前方に進むに連れて内周形状が窄まる形状のすり鉢状の凹形状をなしている。
この凹形状を成す案内凹部54は、射出チャンバ26から凹所44に到ったゴム材料を各細孔52に向けて集め、案内する働きをなす。
【0034】
ここで案内凹部54は、基本的にはすり鉢状をなすものであるが、図4に示しているようにここでは1個1個の案内凹部54が、隣接し且つ互いに重なり合ったすり鉢形状の重なり部分を切り欠いた形のすり鉢状の凹形状となしてあり、そしてそのすり鉢状の凹形状の底部に対応する上記の細孔52が位置せしめられている。
尚この実施形態において、図3(A),(C)に示しているように細孔52の図中上端と図中下端とは、それぞれ摩擦発熱体38及びノズル孔48の中心軸線を中心とする同一円周上にそれぞれ位置している。
【0035】
この実施形態では、押出機14から押し出されたゴム材料が射出チャンバ26に所定量充填されたところで、プランジャ28が前進移動することにより射出チャンバ26のゴム材料が、ノズル本体36の内部の凹所44及びそこに挿入された摩擦発熱体38の各細孔52、更にノズル孔48を通じて成形型16に射出され、キャビティ34に充填される。
【0036】
このとき、凹所44のゴム材料は先ず摩擦発熱体38のすり鉢状の凹形状をなす案内凹部54にて各対応する細孔52へと集められ、導かれて細孔52内に流入する。
そしてゴム材料がそれら複数の細孔52を強制通過させられることで、そこでゴム材料が摩擦発熱し、更に細孔52を通過したゴム材料が次にノズル孔48を通過する過程で、そこでも発熱を生じ、ゴム材料全体が昇温せしめられた状態で成形型16へと供給される。
【0037】
尚、本発明では図5に示しているように摩擦発熱体38を、ノズル本体36における凹所44の底部50に対して離間する状態に設けるといったことも可能である。
但しこの場合、摩擦発熱体38と凹所44の底部50との間の空間がゴム溜り56となってしまう。
【0038】
従って摩擦発熱体38の細孔52を通過したゴム材料が、そのゴム溜り56に残って滞留し、そのことによってゴム焼けを生じてしまう恐れが生ずる。また更にそのゴム溜り56の焼けゴムが、後に行なわれる射出によって成形型16へと入り込んでしまい、それがゴム成形品の不良に繋がるといった問題を生ずる。
しかるに図2及び図3に示す形態で構成した射出ノズル30の場合、このような不具合を確実に防止できる利点を有している。
【0039】
以上のような本実施形態では、射出チャンバ26からのゴム材料が射出ノズル30を通過する際、ゴム材料がノズル本体36のノズル孔48を通過するときに発熱を生じるのみならず、ノズル本体36の内部に挿入された摩擦発熱体38の多数の細孔52を通過する過程でも摩擦による発熱を生じ、しかもその摩擦発熱体38における各細孔52はノズル孔48よりも細径であるために各細孔52において効果的に発熱を生じる。
しかもその細孔52は複数設けられているために摩擦発熱体38をゴム材料が通過する際の発熱量が大きく、成形型16に射出され、注入された時点でのゴム材料の温度を可及的に加硫温度に近付けることができる。
【0040】
その結果として、成形型16内部でのゴム材料の加熱のための所要時間を短くでき、ゴム成形品の成形サイクルタイムを効果的に短縮化でき、生産能率を高めることができる。
【0041】
更に本実施形態では、ゴム材料が摩擦発熱体38の細孔52を通過する際に細孔52による効果(ゴム材料の通過路が狭いことによる効果)によって、細孔52を通過するゴム材料に対して外周部から内部に到るまで加熱することが可能であり、しかもゴム材料を複数の細孔52に分散してそこを通過させることで加熱するため、ゴム材料全体に対する加熱を均等化し得て、ゴム材料における温度ムラを可及的に少なくすることができる。
【0042】
加えて本実施形態では、摩擦発熱体38がノズル本体36と別体をなしていて、ノズル本体36の凹所44に嵌合状態に挿入されて装着されるものであるため、ゴム材料の材質や品種或いは必要な加熱温度に応じて、細孔52の径や数その他の異なった別の摩擦発熱体38と取り換えることで、ゴム材料が射出ノズル30を通過する際の抵抗及び発熱量を適正なものに容易に調節することができる特長を有する。
【0043】
また本実施形態では、単に摩擦発熱体38をノズル本体36(図6に示す従来の射出ノズルに相当する)の内部の凹所44に装填するだけでよいため、従来の射出ノズルや射出シリンダないし射出装置の構造を何等改変することなく、そのまま用いることができる利点を有している。
【0044】
更に図1〜図4に示す実施形態では、摩擦発熱体38をノズル本体36における凹所44のノズル孔48側の底部50に当接状態に設けるとともに、複数の細孔52のそれぞれを、ノズル孔48側の前方に進むに連れて摩擦発熱体38の径方向中心側へと移行してノズル孔48に収束する形状となしてあることから、多数の細孔52を通過したゴム材料が摩擦発熱体38と凹所44の底部50との間の図5に示したゴム溜り56に滞留してゴム焼けを生じたり、またその後の射出によってそのゴム溜り56の焼けゴムが成形型16内部に入り込んで、ゴム成形品の製品不良に繋がるといった問題を生ぜしめず、細孔52を通過したゴム材料を確実にそのままノズル孔48へと流入させて成形型16へと供給することができる。
従ってゴム溜り56でゴム焼けを生じて、その焼けゴムが成形型16内に供給されてしまうことにより、製品不良が発生するのを防止することができる。
【0045】
また図1〜図4に示す実施形態では、摩擦発熱体38の後端側に、ノズル本体36の凹所44に向けて開口した後端の開口から前方に進むに連れて内周形状が窄まる形状のすり鉢状の凹形状をなし、複数の細孔52のそれぞれに連続して、射出チャンバ26から凹所44に到ったゴム材料を各細孔52に集め案内する案内凹部54を、各細孔52に対応した位置に且つ対応した数で設けていることから、この実施形態によれば射出チャンバ26からのゴム材料を良好に摩擦発熱体38の各細孔52に流入案内して集め、それぞれの細孔52を通過してノズル本体36のノズル孔48へと導くことができ、ノズル本体36における凹所44の摩擦発熱体38近傍個所でゴム材料の流れが悪くなって、そこにゴム材料が滞留してしまうのを良好に防止することができる。
【0046】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 ゴム射出成形機
16 成形型
24 射出シリンダ
26 射出チャンバ
30 射出ノズル
36 ノズル本体
38 摩擦発熱体
44 凹所
48 ノズル孔
50 底部
52 細孔
54 案内凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出シリンダの内部の射出チャンバに充填されたゴム材料を該射出シリンダの先端部の射出ノズルから成形型に射出する射出成形機の該射出ノズルであって
(a)筒状をなして内部に前記ゴム材料の通過空間としての凹所を有するとともに、先端部には該凹所に連通した該凹所よりも小径のノズル孔を有するノズル本体と、(b)該ノズル本体とは別体をなして該ノズル本体の該凹所の内部に且つ該凹所の内周面に全周に亘って嵌合状態に挿入されるとともに、軸方向に延びて前記ノズル孔に連通し、前記射出チャンバからの前記ゴム材料を軸方向に通過させて摩擦発熱させる、前記ノズル孔よりも細径をなす2以上の複数の細孔を有し、該ゴム材料を該複数の細孔に分散させて各細孔を通過させた上で前記ノズル孔に導く複孔構造の摩擦発熱体と、を含んで構成してあることを特徴とする射出成形機の射出ノズル。
【請求項2】
請求項1において、前記摩擦発熱体は、前記ノズル本体における前記凹所の前記ノズル孔側の底部に当接状態に設けられているとともに、前記複数の細孔のそれぞれが、該ノズル孔側の前方に進むにつれて該摩擦発熱体の径方向中心側へと移行して該ノズル孔に収束する形状となしてあることを特徴とする射出成形機の射出ノズル。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記摩擦発熱体の後端側には、前記ノズル本体の前記凹所に向けて開口した後端の開口から前記前方に進むに連れて内周形状が窄まる形状のすり鉢状の凹形状をなして前記複数の細孔のそれぞれに連続し、前記射出チャンバから前記凹所に到った前記ゴム材料を各細孔に集め案内する案内凹部が各細孔に対応した位置に且つ対応した数で設けてあることを特徴とする射出成形機の射出ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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