説明

射出成形機

【課題】 複数のコイルを効果的に用いて電磁石の応答性を高めること。
【解決手段】射出成形機は、固定金型が取り付けられる第1の固定部材と、第1の固定部材と対向して配設される第2の固定部材と、可動金型が取り付けられる第1の可動部材と、第1の可動部材と連結されて第1の可動部材と共に移動する第2の可動部材と、を備え、第2の固定部材と第2の可動部材は、電磁石による吸着力で型締力を発生させる型締力発生機構を構成し、型締力発生機構を構成する第2の固定部材及び第2の可動部材の一方は、電磁石を形成するコイルが複数配置されるコイル溝を有し、複数のコイルは、コイル溝の深さ方向に積層して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型締め動作を駆動する電磁石を備える射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形機においては、樹脂を射出装置の射出ノズルから射出して固定金型と可動金型との間のキャビティ空間に充填(てん)し、固化させることによって成形品を得るようになっている。そして、固定金型に対して可動金型を移動させて型閉じ、型締め及び型開きを行うために型締装置が配設される。
【0003】
該型締装置には、油圧シリンダに油を供給することによって駆動される油圧式の型締装置、及び電動機によって駆動される電動式の型締装置があるが、該電動式の型締装置は、制御性が高く、周辺を汚すことがなく、かつ、エネルギー効率が高いので、多く利用されている。この場合、電動機を駆動することによってボールねじを回転させて推力を発生させ、該推力をトグル機構によって拡大し、大きな型締力を発生させるようにしている。
【0004】
ところが、構成の電動式の型締装置においては、トグル機構を使用するようになっているので、該トグル機構の特性上、型締力を変更することが困難であり、応答性及び安定性が悪く、成形中に型締力を制御することができない。そこで、ボールねじによって発生させられた推力を直接型締力として使用することができるようにした型締装置が提供されている。この場合、電動機のトルクと型締力とが比例するので、成形中に型締力を制御することができる。
【0005】
しかしながら、従来の型締装置においては、ボールねじの耐荷重性が低く、大きな型締力を発生させることができないだけでなく、電動機に発生するトルクリップルによって型締力が変動してしまう。また、型締力を発生させるために、電動機に電流を常時供給する必要があり、電動機の消費電力量及び発熱量が多くなるので、電動機の定格出力をその分大きくする必要があり、型締装置のコストが高くなってしまう。
【0006】
そこで、型開閉動作にはリニアモータを使用し、型締動作には電磁石の吸着力を利用した型締装置が考えられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第05/090052号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載されるような電磁石の吸着力を利用した型締装置を使用する構成の場合、単一のコイルを使用すると、電磁石の駆動時に応答性が良好でないという問題点がある。
【0009】
そこで、本発明は、複数のコイルを効果的に用いて電磁石の応答性を高めることができる射出成形機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一局面によれば、固定金型が取り付けられる第1の固定部材と、
前記第1の固定部材と対向して配設される第2の固定部材と、
可動金型が取り付けられる第1の可動部材と、
前記第1の可動部材と連結されて前記第1の可動部材と共に移動する第2の可動部材と、を備え、
前記第2の固定部材と前記第2の可動部材は、電磁石による吸着力で型締力を発生させる型締力発生機構を構成し、
前記型締力発生機構を構成する前記第2の固定部材及び前記第2の可動部材の一方は、前記電磁石を形成するコイルが複数配置されるコイル溝を有し、前記複数のコイルは、前記コイル溝の深さ方向に積層して配置されることを特徴とする、射出成形機が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数のコイルを効果的に用いて電磁石の応答性を高めることができる射出成形機が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態の射出成形機における型締装置の型閉じ時の状態を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態の射出成形機における型締装置の型開き時の状態を示す図である。
【図3】実施例1による多極構成を示す図であり、コイル48が配置されたリヤプラテン13を吸着板22側から型締め方向に視た平面図である。
【図4】図4は、図3のラインA−Aに沿った断面図である。
【図5】実施例1による電磁石ユニット37を駆動するための電気回路図の一例を示す。
【図6】他の実施例(実施例2)による多極構成を示す図であり、コイル48が配置されたリヤプラテン13を吸着板22側から型締め方向に視た平面図である。
【図7】図6のラインB−Bに沿った断面図である。
【図8】実施例2による電磁石ユニット37を駆動するための電気回路図の一例を示す。
【図9】他の実施例(実施例3)による単極構成を示す図であり、コイル48が配置されたリヤプラテン13を吸着板22側から型締め方向に視た平面図である。
【図10】図9のラインC−Cに沿った断面図である。
【図11】実施例3による電磁石ユニット37を駆動するための電気回路図の一例を示す。
【図12】コイル冷却機構の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。尚、本実施の形態において、型締装置については、型閉じを行う際の可動プラテンの移動方向を前方とし、型開きを行う際の可動プラテンの移動方向を後方とし、射出装置については、射出を行う際のスクリューの移動方向を前方とし、計量を行う際のスクリューの移動方向を後方として説明する。
【0014】
図1は本発明の実施の形態の射出成形機における型締装置の型閉じ時の状態を示す図、図2は本発明の実施の形態の射出成形機における型締装置の型開き時の状態を示す図である。尚、図1及び図2において、ハッチングを付された部材は主要断面を示す。
【0015】
図において、10は型締装置、Frは射出成形機のフレーム(架台)、Gdは、該フレームFrに対して可動なガイド、11は、図示されないガイド上又はフレームFr上に載置された固定プラテンであり、該固定プラテン11と所定の間隔を置いて、かつ、固定プラテン11と対向させてリヤプラテン13が配設され、固定プラテン11とリヤプラテン13との間に4本のタイバー14(図においては、4本のタイバー14のうちの2本だけを示す。)が架設される。尚、リヤプラテン13は、フレームFrに対して固定される。
【0016】
タイバー14の前端部(図において右端部)にはネジ部(図示せず)が形成され、該ネジ部にナットn1を螺合して締め付けることによって、タイバー14の前端部が固定プラテン11に固定される。タイバー14の後端部はリヤプラテン13に固定される。
【0017】
そして、タイバー14に沿って固定プラテン11と対向させて可動プラテン12が型開閉方向に進退自在に配設される。そのために、可動プラテン12がガイドGdに固定され、可動プラテン12におけるタイバー14と対応する箇所にタイバー14を貫通させるための図示されないガイド穴が形成される。尚、ガイド穴の代わりに、切欠き部を形成してもよい。尚、ガイドGdには、後述の吸着板22も固定される。
【0018】
また、固定プラテン11には固定金型15が、可動プラテン12には可動金型16がそれぞれ固定され、可動プラテン12の進退に伴って固定金型15と可動金型16とが接離させられ、型閉じ、型締め及び型開きが行われる。尚、型締めが行われるのに伴って、固定金型15と可動金型16との間に図示されないキャビティ空間が形成され、射出装置17の射出ノズル18から射出された図示されない樹脂がキャビティ空間に充墳される。また、固定金型15及び可動金型16によって金型装置19が構成される。
【0019】
吸着板22は、可動プラテン12と平行にガイドGdに固定される。これにより、吸着板22は、リヤプラテン13より後方において進退自在となる。吸着板22は、磁性材料で形成されてよい。例えば、吸着板22は、強磁性体から成る薄板を積層することによって形成される電磁積層鋼板により構成されてもよい。或いは、吸着板22は、鋳造により形成されてもよい。
【0020】
リニアモータ28は、可動プラテン12を進退させるため、ガイドGdに設けられる。リニアモータ28は、固定子29、及び可動子31を備え、固定子29は、フレームFr上において、ガイドGdと平行に、かつ、可動プラテン12の移動範囲に対応させて形成され、可動子31は、可動プラテン12の下端において、固定子29と対向させて、かつ、所定の範囲にわたって形成される。
【0021】
可動子31は、コア34及びコイル35を備える。そして、コア34は、固定子29に向けて突出させて、所定のピッチで形成された複数の磁極歯33を備え、コイル35は、各磁極歯33に巻装される。尚、磁極歯33は可動プラテン12の移動方向に対して直角の方向に、互いに平行に形成される。また、固定子29は、図示されないコア、及び該コア上に延在させて形成された図示されない永久磁石を備える。該永久磁石は、N極及びS極の各磁極を交互に着磁させることによって形成される。コイル35に所定の電流を供給することによってリニアモータ28を駆動すると、可動子31が進退させられ、それに伴って、ガイドGdにより可動プラテン12が進退させられ、型閉じ及び型開きを行うことができる。
【0022】
尚、本実施の形態においては、固定子29に永久磁石を、可動子31にコイル35を配設するようになっているが、固定子にコイルを、可動子に永久磁石を配設することもできる。その場合、リニアモータ28が駆動されるのに伴って、コイルが移動しないので、コイルに電力を供給するための配線を容易に行うことができる。
【0023】
尚、ガイドGdに可動プラテン12と吸着板22を固定する構成に限られず、可動プラテン12又は吸着板22にリニアモータ28の可動子31を設ける構成としてもよい。また、型開閉機構としては、リニアモータ28に限定されず、油圧式や電動式等であってもよい。
【0024】
可動プラテン12が前進させられて可動金型16が固定金型15に当接すると、型閉じが行われ、続いて、型締めが行われる。リヤプラテン13と吸着板22との間に、型締めを行うための電磁石ユニット37が配設される。また、リヤプラテン13及び吸着板22を貫通して延び、かつ、可動プラテン12と吸着板22とを連結するセンターロッド39が進退自在に配設される。該センターロッド39は、型閉じ時及び型開き時に、可動プラテン12の進退に連動させて吸着板22を進退させ、型締め時に、電磁石ユニット37によって発生させられた吸着力を可動プラテン12に伝達する。
【0025】
尚、固定プラテン11、可動プラテン12、リヤプラテン13、吸着板22、リニアモータ28、電磁石ユニット37、センターロッド39等によって型締装置10が構成される。
【0026】
電磁石ユニット37は、リヤプラテン13側に形成された電磁石49、及び吸着板22側に形成された吸着部51からなる。また、リヤプラテン13の後端面の所定の部分、本実施の形態においては、センターロッド39まわりにコイル溝45が形成される。そして、コイル溝45内でコア46まわりにコイル48が巻装される。尚、リヤプラテン13は、鋳物の一体構造で構成されてもよいし、若しくは、強磁性体から成る薄板を積層することによって形成される電磁積層鋼板により構成されてもよい。
【0027】
尚、本実施の形態において、リヤプラテン13とは別に電磁石49が、吸着板22とは別に吸着部51が形成されもよいし、リヤプラテン13の一部として電磁石を、吸着板22の一部として吸着部を形成してもよい。また、電磁石と吸着部の配置は、逆であってもよい。例えば、吸着板22側に電磁石49を設け、リヤプラテン13側に吸着部を設けてもよい。
【0028】
電磁石ユニット37において、コイル48に電流を供給すると、電磁石49が駆動され、吸着部51を吸着し、型締力を発生させることができる。
【0029】
センターロッド39は、後端部において吸着板22と連結させて、前端部において可動プラテン12と連結させて配設される。したがって、センターロッド39は、型閉じ時に可動プラテン12と共に前進させられて吸着板22を前進させ、型開き時に可動プラテン12と共に後退させられて吸着板22を後退させる。そのために、リヤプラテン13の中央部分に、センターロッド39を貫通させるための穴41が形成され、穴41の前端部の開口に臨ませて、センターロッド39を摺動自在に支持するブッシュ等の軸受部材Br1が配設される。
【0030】
型締装置10のリニアモータ28及び電磁石49の駆動は、制御部60によって制御される。制御部60は、CPU及びメモリ等を備え、CPUによって演算された結果に応じて、リニアモータ28のコイル35や電磁石49のコイル48に電流を供給するための回路も備える。制御部60には、また、荷重検出器55が接続される。荷重検出器55は、型締装置10において、少なくとも1本のタイバー14の所定の位置(固定プラテン11とリヤプラテン13との間における所定の位置)に設置され、当該タイバー14にかかる荷重を検出する。図中では、上下二本のタイバー14に荷重検出器55が設置された例が示されている。荷重検出器55は、例えば、タイバー14の伸び量を検出するセンサによって構成される。荷重検出器55によって検出された荷重は、制御部60に送られる。尚、制御部60は、図2においては便宜上省略されている。
【0031】
次に、型締装置10の動作について説明する。
【0032】
制御部60の型開閉処理部61によって型閉じ工程が制御される。図2の状態(型開き時の状態)において、型開閉処理部61は、コイル35に電流を供給する。続いて、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が前進させられ、図1に示されるように、可動金型16が固定金型15に当接させられる。このとき、リヤプラテン13と吸着板22との間、すなわち、電磁石49と吸着部51との間には、ギャップδが形成される。尚、型閉じに必要とされる力は、型締力と比較されて十分に小さくされる。
【0033】
続いて、制御部60の型締処理部62は、型締工程を制御する。型締処理部62は、コイル48に電流を供給し、吸着部51を電磁石49の吸着力によって吸着する。それに伴って、吸着板22及びセンターロッド39を介して型締力が可動プラテン12に伝達され、型締めが行われる。型締め開始時等、型締力を変化させる際に、型締処理部62は、当該変化によって得るべき目標となる型締力、すなわち、定常状態で目標とする型締力を発生させるために必要な定常的な電流の値をコイル48に供給するように制御している。
【0034】
尚、型締力は荷重検出器55によって検出される。検出された型締力は制御部60に送られ、制御部60において、型締力が設定値になるようにコイル48に供給される電流が調整され、フィードバック制御が行われる。この間、射出装置17において溶融させられた樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19のキャビティ空間に充墳される。
【0035】
キャビティ空間内の樹脂が冷却されて固化すると、型開閉処理部61は、型開き工程を制御する。型締処理部62は、図1の状態において、コイル48への電流の供給を停止する。それに伴って、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が後退させられ、図2に示されるように、可動金型16が後退限位置に置かれ、型開きが行われる。
【0036】
ここで、図3以降を参照して、本発明の特徴的な構成について説明する。
【0037】
図3は、実施例1による多極構成を示し、コイル48が配置されたリヤプラテン13を吸着板22側から型締め方向に視た平面図である。図4は、図3のラインA−Aに沿った断面図である。
【0038】
コイル48は、図4に示すように、コイル溝45内に複数個積層して配置される。尚、積層方向は、コイル溝45の深さ方向Yに対応する。図4に示す例では、4つのコイル48a,48b,48c,48dが設けられる。第1組のコイル48a,48bは、内周側のコイル溝45内に積層して配置され、第2組のコイル48c,48dは、外周側のコイル溝45内に積層して配置される。これにより、複数の極の電磁石49が形成される。
【0039】
尚、図示の例では、内周側と外周側の2つのコイル溝45が形成され、それぞれのコイル溝45は、コア46の一部である中央部46aを囲繞する態様で、矩形に形成されている。内周側と外周側の2つのコイル溝45の間には、コア46の一部である中間コア部46bが形成される。尚、中央部46a、外周部47a、及び中間コア部46bの表面(吸着板22側表面)は、同一平面内に延在してよく、ギャップ面を画成する。コイル溝45は、このギャップ面から深さ分だけオフセットした底面を有することになる。
【0040】
図5は、実施例1による電磁石ユニット37を駆動するための電気回路図の一例を示す。図5は、4つのコイル48a,48b,48c,48dが、1つの電源に対して並列に接続されている例を示す。この場合、好ましくは、内周側のコイル48a,48bのそれぞれが、外周側のコイル48c,48dの各1つと直列で接続される。更に、好ましくは、コイル溝45内の底側のコイル48b,48dのそれぞれが、コイル溝45内の開口側のコイル48a,48cの各1つと直列で接続される。図示の例では、内周側でコイル溝45内の開口側のコイル48aは、外周側でコイル溝45内の底側のコイル48dと直列に接続され、内周側でコイル溝45内の底側のコイル48bは、外周側でコイル溝45内の開口側のコイル48cと直列に接続される。そして、コイル48a及びコイル48dと、コイル48b及びコイル48cとが、1つの電源に対して並列に接続されている。
【0041】
このように複数のコイル48a,48b,48c,48dを電源に対して直列に接続せずに、並列に接続することで、コイル48a,48b,48c,48dに印加される電圧を大きくすることができ、電磁石ユニット37の応答性を高めることができる。尚、同様の観点から、コイル48a,48b,48c,48dのそれぞれに対して電源が設けられてもよい。また、コイル48a及びコイル48dの組と、コイル48b及びコイル48cの組に対して、それぞれ電源が設けられてもよい。
【0042】
ここで、コイル48a,48b,48c,48dのそれぞれのコイル抵抗(コイルの抵抗成分)は、コイル48a,48b,48c,48dのそれぞれの全長に依存する。従って、巻き数が同じであるとき、内周側のコイル48a,48b同士が互いに略同一のコイル抵抗を有し、外周側のコイル48c,48d同士が互いに略同一のコイル抵抗を有し、外周側のコイル48c,48dのコイル抵抗の方が、内周側のコイル48a,48bのコイル抵抗よりも大きくなる。従って、図5に示すような態様でコイル48a,48b,48c,48d間を接続することにより、コイル48a及びコイル48dの全体としてのコイル抵抗が、コイル48b及びコイル48cの全体としてのコイル抵抗と略同一となる。これにより、コイル48a,48b,48c,48dを並列に接続した場合にも、熱に起因したコイル抵抗変化によるアンバランスを緩和することができる。また、コイル48a,48b,48c,48dのそれぞれのインダクタンスは、コイル溝45内の位置(深さ)やコイルが囲む面積に依存する。従って、図5に示すような態様でコイル48a,48b,48c,48d間を接続することにより、コイル48a及びコイル48dと、コイル48b及びコイル48cとの間のインダクタンスのアンバランスを緩和することができる。
【0043】
尚、図3乃至図5に示す例では、4つのコイル48a,48b,48c,48dで2極(2相)を形成しているが、極数は任意であってよい。
【0044】
図6は、他の実施例(実施例2)による多極構成を示す図であり、コイル48が配置されたリヤプラテン13を吸着板22側から型締め方向に視た平面図である。図7は、図6のラインB−Bに沿った断面図である。
【0045】
本実施例2では、リヤプラテン13は、4極が形成されるように電磁石が設けられる。具体的には、センターロッド39が通過する穴41が形成される中央部47bと、外周部47cとの間に、4つのコア46e−46hが設けられる。コイル溝45は、各コア46e−46hを囲繞する態様で形成されている。各コア46e−46hまわりには、コイル48e−48hが巻回される。尚、図6は簡易図であるので、コイル48e−48hが互いに接する態様で図示されているが、コイル48e−48hは、互いに対して離間して配置されてもよい。
【0046】
本実施例2においても、上述した実施例1と同様、コイルがコイル溝45内に複数個積層して配置される。具体的には、図7に示すように、コイル48hは、2つのコイル48h、48hを含み、2つのコイル48h、48hがコイル溝45内に積層して配置される。同様に、コイル48fは、2つのコイル48f、48fを含み、2つのコイル48f、48fがコイル溝45内に積層して配置される。尚、図7では、コイル48hとコイル48fの組のみを図示しているが、他方の組のコイル48e,48gについても同様であってよい。
【0047】
図8は、実施例2による電磁石ユニット37を駆動するための電気回路図の一例を示す。図8では、図7に対応して、コイル48hとコイル48fの組のみを図示しているが、他方の組のコイル48e,48gについても同様であってよい。
【0048】
図8は、4つのコイル48h、48h,48f、48fが、1つの電源に対して並列に接続されている例を示す。この場合、好ましくは、コイル溝45内の底側のコイル48h,48fのそれぞれが、コイル溝45内の開口側の48f,48hのそれぞれと直列で接続される。そして、コイル48h及びコイル48fと、コイル48h及びコイル48fとが、1つの電源に対して並列に接続されている。
【0049】
このように複数の48h、48h,48f、48fを電源に対して直列に接続せずに、並列に接続することで、コイル48h、48h,48f、48fに印加される電圧を大きくすることができ、電磁石ユニット37の応答性を高めることができる。尚、同様の観点から、コイル48h、48h,48f、48fのそれぞれに対して電源が設けられてもよい。また、コイル48h及びコイル48fの組と、コイル48h及びコイル48fの組に対して、それぞれ電源が設けられてもよい。
【0050】
また、図8に示すような態様でコイル48h、48h,48f、48f間を接続することにより、コイル48h及びコイル48fの全体としてのコイル抵抗及びインダクタンスが、コイル48h及びコイル48fの全体としてのコイル抵抗及びインダクタンスと略同一となる。これにより、コイル48h、48h,48f、48fを並列に接続した場合にも、インダクタンスのアンバランスを防止することができると共に、熱によるコイル抵抗変化によるアンバランスを緩和することができる。
【0051】
図9は、他の実施例(実施例3)による単極構成を示す図であり、コイル48が配置されたリヤプラテン13を吸着板22側から型締め方向に視た平面図である。図10は、図9のラインC−Cに沿った断面図である。
【0052】
本実施例3では、中央のコア46gまわりにコイル溝45が矩形状に形成される。本実施例3においても、上述した実施例1と同様、コイルがコイル溝45内に複数個積層して配置される。具体的には、図9に示すように、コイル48gは、4つのコイル48g、48g、48g、48gを含み、4つのコイル48g、48g、48g、48gがコイル溝45内に積層して配置される。
【0053】
図11は、実施例3による電磁石ユニット37を駆動するための電気回路図の一例を示す。
【0054】
図11は、4つのコイル48g、48g、48g、48gが、1つの電源に対して並列に接続されている例を示す。この場合、好ましくは、コイル溝45内の底側のコイル48gが、コイル溝45内の開口側の48gと直列で接続され、コイル溝45内の底側から2番目のコイル48gが、コイル溝45内の開口側から2番目のコイル48gと直列で接続される。そして、コイル48g及びコイル48gと、コイル48g及びコイル48gとが、1つの電源に対して並列に接続されている。
【0055】
このように複数のコイル48g、48g、48g、48gを電源に対して直列に接続せずに、並列に接続することで、コイル48g、48g、48g、48gに印加される電圧を大きくすることができ、電磁石ユニット37の応答性を高めることができる。尚、同様の観点から、コイル48g、48g、48g、48gのそれぞれに対して電源が設けられてもよい。また、コイル48g及びコイル48gの組と、コイル48g及びコイル48gの組に対して、それぞれ電源が設けられてもよい。
【0056】
また、図11に示すような態様でコイル48g、48g、48g、48g間を接続することにより、コイル48g及びコイル48gの全体としてのコイル抵抗及びインダクタンスが、コイル48g及びコイル48gの全体としてのコイル抵抗及びインダクタンスと略同一となる。これにより、コイル48g、48g、48g、48gを並列に接続した場合にも、インダクタンスのアンバランスを防止することができると共に、熱によるコイル抵抗変化によるアンバランスを緩和することができる。
【0057】
尚、図9乃至図11に示した例では、4つのコイル48g、48g、48g、48gがコイル溝45内に積層して配置されているが、6つや8つといった具合に、より多くのコイルがコイル溝45内に積層して配置されてもよい。
【0058】
次に、上述した各実施例に適用されてよいコイル冷却機構について説明する。
【0059】
図12は、コイル冷却機構の例を示す図である。ここでは、図12に示すように、一例として、2つのコイル48が積層されているものとする。コイル冷却機構90は、コイル溝45内に配置される。これにより、上述の如くコイル溝45内に積層された複数のコイル48を効率的に冷却することができる。コイル冷却機構90は、例えば冷却流体が流される管や、冷却流体の通路が内部に形成されたプレートであってよい。冷却流体は、水や油等であってよい。
【0060】
より具体的には、図12(A)に示す例では、コイル冷却機構90は、コイル溝45の深さ方向で複数のコイルの間に配置される。図12(A)に示す例では、2つのコイル48の間に配置される。尚、3つ以上のコイルが積層される場合は、各層の間にコイル冷却機構90が設けられてもよいし、特定の層間にコイル冷却機構90が設けられてもよい。
【0061】
図12(B)に示す例では、コイル冷却機構90は、コイル溝45の開口側の最も上層のコイル48を覆うように配置される。尚、図12(B)に示す例は、図12(A)に示す例と組み合わせることができる。即ち、コイル溝45の深さ方向で複数のコイル48の間にコイル冷却機構90を設けると共に、コイル溝45の開口側の最も上層のコイル48を覆うようにコイル冷却機構90を設けてもよい。
【0062】
尚、上述した実施例においては、特許請求の範囲における「第1の固定部材」は、固定プラテン11に対応し、特許請求の範囲における「第1の可動部材」は、可動プラテン12に対応する。また、特許請求の範囲における「第2の固定部材」は、リヤプラテン13に対応し、特許請求の範囲における「第2の可動部材」は、吸着板22に対応する。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0064】
例えば、上述の如く、吸着板22側に電磁石49を設け、リヤプラテン13側に吸着部を設けてもよい。このように吸着板22側に電磁石49を設ける場合には、吸着板22側に上述と同様のコイル積層構成を実現すればよい。
【0065】
また、上述では、特定の構成の型締装置10を例示しているが、型締装置10は、電磁石を利用して型締めを行うものであれば、任意の構成であってよい。
【符号の説明】
【0066】
Br1 軸受部材
Fr フレーム
Gd ガイド
10 型締装置
11 固定プラテン
12 可動プラテン
13 リヤプラテン
14 タイバー
15 固定金型
16 可動金型
17 射出装置
18 射出ノズル
19 金型装置
22 吸着板
28 リニアモータ
29 固定子
31 可動子
33 磁極歯
34 コア
35 コイル
37 電磁石ユニット
39 センターロッド
41 穴
45 コイル溝
46、コア46e−46h、46g コア
46a 中央部
46b 中間コア部
47a、47c 外周部
47b 中央部
48(48a−48h) コイル
49 電磁石
51 吸着部
55 荷重検出器
60 制御部
61 型開閉処理部
62 型締処理部
90 コイル冷却機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型が取り付けられる第1の固定部材と、
前記第1の固定部材と対向して配設される第2の固定部材と、
可動金型が取り付けられる第1の可動部材と、
前記第1の可動部材と連結されて前記第1の可動部材と共に移動する第2の可動部材と、を備え、
前記第2の固定部材と前記第2の可動部材は、電磁石による吸着力で型締力を発生させる型締力発生機構を構成し、
前記型締力発生機構を構成する前記第2の固定部材及び前記第2の可動部材の一方は、前記電磁石を形成するコイルが複数配置されるコイル溝を有し、前記複数のコイルは、前記コイル溝の深さ方向に積層して配置されることを特徴とする、射出成形機。
【請求項2】
前記積層される複数のコイルは、電源に対して並列に接続されるか、又は、複数の電源にそれぞれ接続される、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記電磁石は少なくとも2極を有し、一の極に係るコイルと他の極に係るコイルとが前記コイル溝の深さ方向に積層して配置される、請求項1又は2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記積層される複数のコイルは、電源に対して並列に接続され、
並列関係となるコイル同士は、互いに略同一のコイル抵抗及びインダクタンスを有するように構成される、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記コイル溝内に、前記コイルを冷却する冷却機構が設けられる、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記冷却機構は、前記コイル溝の深さ方向で前記複数のコイルの間に配置される、請求項5に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記冷却機構は、前記コイル溝の開口側の最も上層のコイルを覆うように配置される、請求項5又は6に記載の射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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