射出成形装置及び射出成形方法
【課題】短時間で十分な流量及び圧力のガスを導入して、キャビティ内の樹脂原料を押圧することができ、樹脂成形品の表側面にヒケ等のひずみ状態が発生することを効果的に防止できる射出成形装置及び射出成形方法を提供すること。
【解決手段】射出成形装置1の成形型2は、樹脂原料80を充填するためのキャビティ20と、キャビティ20の裏側成形面202に開口するガス導入口21とを形成してなる。ガス導入口21内には、ガス導入口21の開口面積を変化させる弁部材3が挿入配置してある。弁部材3を閉位置に前進させたときには、キャビティ20内に充填する樹脂原料80がガス導入口21内へ浸入することを防止する。一方、弁部材3を開位置302に後退させたときには、ガス導入口21の開口面積を拡大させ、キャビティ20の裏側成形面202と、キャビティ20内の樹脂原料80との間に十分な流量及び圧力のガスGを導入する。
【解決手段】射出成形装置1の成形型2は、樹脂原料80を充填するためのキャビティ20と、キャビティ20の裏側成形面202に開口するガス導入口21とを形成してなる。ガス導入口21内には、ガス導入口21の開口面積を変化させる弁部材3が挿入配置してある。弁部材3を閉位置に前進させたときには、キャビティ20内に充填する樹脂原料80がガス導入口21内へ浸入することを防止する。一方、弁部材3を開位置302に後退させたときには、ガス導入口21の開口面積を拡大させ、キャビティ20の裏側成形面202と、キャビティ20内の樹脂原料80との間に十分な流量及び圧力のガスGを導入する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビティ内に充填した樹脂原料をガスによって押圧して、表面精度に優れた樹脂成形品を得る射出成形装置及び射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂原料を成形型のキャビティ内に射出成形して、樹脂成形品を得る技術においては、樹脂成形品の意匠表面に、ヒケ(表面に形成される凹み)等のひずみ状態が形成されることを防止するために、キャビティにおける裏側成形面と、キャビティ内における樹脂原料との間にガスを導入し、当該樹脂原料をキャビティにおける表側成形面へ押圧(加圧)している。これにより、樹脂成形品の意匠表面の外観及び形状を安定させている。
このように樹脂成形品の意匠表面にヒケ等が生じることを防止する技術としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
【0003】
特許文献1の合成樹脂射出成形品のひけ防止方法においては、合成樹脂射出成形品の裏面側を成形するコアに、成形型内に圧力流体を導入する間隙部を形成している。
この間隙部は、コアの中央部に、筒状の導孔を形成すると共にこの導孔の上端出口に成形型内に開口する円錐状の弁座を形成し、導孔内に弁棒を挿通すると共に弁座内に弁体を配置して形成している。そして、弁棒を成形型内から後退させたときには、弁体によって弁座を閉塞し、弁棒を成形型内へ前進させたときには、弁体を弁座から離隔して、この弁体と弁座との間に、成形型内に圧力流体を導入するための間隙を形成している。こうして、合成樹脂成形品の成形表面を成形型内の表面に圧接させて、ひけの発生を防止している。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1においては、弁棒を成形型内に向けて前進させ、弁体を弁座から離隔させるときには、弁体と弁座との間の間隙から成形型内に圧力流体を導入するだけでなく、弁体により成形型内の合成樹脂成形品を加圧している。
そのため、弁体を弁座との間に形成する間隙の大きさ(開口面積)には限界があり、短時間で十分な流量及び圧力の圧力流体を導入することが困難になっている。
【0005】
【特許文献1】特開昭50−75247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、短時間で十分な流量及び圧力のガスを導入して、キャビティ内の樹脂原料を押圧することができ、樹脂成形品の表側面に、ヒケ等のひずみ状態が発生することを効果的に防止することができる射出成形装置及び射出成形方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、樹脂原料を充填して樹脂成形品を得るためのキャビティと、該キャビティ内に上記樹脂原料を導入するための樹脂導入口と、上記キャビティにおいて上記樹脂成形品の裏側面を成形する裏側成形面に開口し、該裏側成形面と上記キャビティ内における上記樹脂原料との間にガスを導入するためのガス導入口とを形成してなる成形型を備えた射出成形装置において、
上記ガス導入口内には、該ガス導入口の開口面積を変化させる弁部材が挿入配置してあり、
該弁部材は、上記キャビティ内に充填する上記樹脂原料が上記ガス導入口内へ浸入することを防止するための閉位置と、該閉位置から後退して上記ガス導入口の開口面積を拡大させ、上記裏側成形面と上記キャビティ内における上記樹脂原料との間にガスを導入するための開位置とに移動するよう構成してあることを特徴とする射出成形装置にある(請求項1)。
【0008】
本発明の射出成形装置は、上記キャビティ、樹脂導入口及びガス導入口を形成してなる成形型を備えており、ガス導入口内には、上記弁部材を挿入配置してなる。
本発明の射出成形装置を用いて射出成形を行い、樹脂成形品を得る際には、まず、弁部材を上記閉位置に移動させておく。このとき、弁部材とガス導入口との間には、ほとんど間隙を形成しないことができる(ガス導入口を、略完全に閉じることができる。)。
【0009】
また、この弁部材を閉位置に移動させたときには、キャビティ内に充填する樹脂原料がガス導入口内へほとんど浸入しない間隙を形成することもできる(ガス導入口の開口面積を、このガス導入口への樹脂原料の浸入を防止できる程度に縮小させることができる。)。
【0010】
そして、弁部材が閉位置にあり、弁部材とガス導入口との間の間隙からガス導入口内へ樹脂原料が浸入してしまうことを防止した状態で、樹脂導入口からキャビティ内に樹脂原料を充填する。
次いで、キャビティ内に導入した樹脂原料が、ガス導入口の配設位置まで到達した後には、弁部材を、キャビティから後退させて、上記開位置に移動させる。このとき、弁部材を後退させる距離に制約はなく、ガス導入口の開口面積(又は弁部材とガス導入口との間の間隙量)を十分に大きくすることができる。
【0011】
そのため、ガス導入口から、キャビティにおける裏側成形面と、キャビティ内における樹脂原料との間にガスを導入する際には、短時間で十分な流量及び圧力のガスを導入することができる。これにより、樹脂原料を、キャビティにおける表側成形面へ十分に押圧することができ、樹脂成形品の表側面に、ヒケ(表面に形成される凹み)等のひずみ状態が発生することを効果的に防止することができる。
【0012】
それ故、本発明の射出成形装置によれば、短時間で十分な流量及び圧力のガスを導入して、キャビティ内の樹脂原料を押圧することができ、樹脂成形品の表側面に、ヒケ(表面に形成される凹み)等のひずみ状態が発生することを効果的に防止することができる。
【0013】
第2の発明は、樹脂原料を充填して樹脂成形品を得るためのキャビティと、該キャビティ内に上記樹脂原料を導入するための樹脂導入口と、上記キャビティにおいて上記樹脂成形品の裏側面を成形する裏側成形面に開口し、該裏側成形面と上記キャビティ内における上記樹脂原料との間にガスを導入するためのガス導入口とを有し、該ガス導入口内には、該ガス導入口の開口面積を変化させる弁部材を挿入配置してなる成形型を用いて、射出成形を行う方法において、
上記弁部材を、上記ガス導入口の開口面積を縮小させた閉位置に移動させた状態で、上記樹脂導入口から上記キャビティ内に樹脂原料を充填する原料充填工程と、
上記弁部材を、上記キャビティから後退させて上記ガス導入口の開口面積を拡大させた開位置に移動させた状態で、上記裏側成形面と上記キャビティ内における上記樹脂原料との間にガスを導入し、当該樹脂原料を上記キャビティにおいて上記樹脂成形品の表側面を成形する表側成形面へ押圧する押圧工程とを含むことを特徴とする射出成形方法にある(請求項4)。
【0014】
本発明の射出成形方法においては、上記キャビティ、樹脂導入口、ガス導入口及び弁部材を有する成形型を用いて、上記原料充填工程及び押圧工程を行い、樹脂成形品を得る。
原料充填工程を行う際には、弁部材は、ガス導入口の開口面積を縮小させた閉位置に移動させておく。このとき、ガス導入口は、略完全に閉じることができるだけでなく、ガス導入口への樹脂原料の浸入を防止できる程度に開口面積を縮小させることもできる。
そして、弁部材が閉位置にあり、弁部材とガス導入口との間の間隙からガス導入口内へ樹脂原料が浸入してしまうことを防止した状態で、樹脂導入口からキャビティ内に樹脂原料を充填する。
【0015】
次いで、押圧工程においては、キャビティ内に導入した樹脂原料が、ガス導入口の配設位置まで到達した後に、弁部材を、キャビティから後退させて、ガス導入口の開口面積を拡大させる開位置に移動させる。このとき、弁部材を後退させる距離に制約はなく、ガス導入口の開口面積(又は弁部材とガス導入口との間の間隙量)を十分に大きくすることができる。
【0016】
そのため、ガス導入口から、キャビティにおける裏側成形面と、キャビティ内における樹脂原料との間にガスを導入する際には、短時間で十分な流量及び圧力のガスを導入することができる。これにより、樹脂原料を、キャビティにおける表側成形面へ十分に押圧することができ、樹脂成形品の表側面に、ヒケ(表面に形成される凹み)等のひずみ状態が発生することを効果的に防止することができる。
【0017】
それ故、本発明の射出成形方法によれば、短時間で十分な流量及び圧力のガスを導入して、キャビティ内の樹脂原料を押圧することができ、樹脂成形品の表側面に、ヒケ(表面に形成される凹み)等のひずみ状態が発生することを効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
上述した第1、第2の発明における好ましい実施の形態につき説明する。
上記第1、第2の発明において、上記樹脂成形品は、ラジエータグリル、バックガーニッシュ、サイドモール、ホイールカバー、インストルメントパネル等とすることができる。また、上記成形型内に注入するガスは、空気又は窒素等の高圧ガスとすることができる。
【0019】
また、上記ガス導入口は、上記キャビティに開口する先端側の部位に、当該ガス導入口の断面積を最も縮小させた縮小通路部を有すると共に、該縮小通路部に連通する部位に、該縮小通路部よりも当該ガス導入口の断面積を拡大させた拡大通路部を有しており、上記弁部材は、上記縮小通路部内に挿入する挿入部を有していると共に、上記閉位置に移動したときには、上記縮小通路部内に上記挿入部を挿入して、当該ガス導入口の開口面積を縮小させると共に、上記開位置に移動したときには、上記挿入部を上記拡大通路部内に配置して、当該ガス導入口の開口面積を拡大させるよう構成することが好ましい(請求項2、5)。
【0020】
この場合には、弁部材を閉位置と開位置とに移動させて、ガス導入口の開口面積を変化させることが容易である。
すなわち、弁部材をキャビティへ前進させて、閉位置に移動させたときには、挿入部を縮小通路部内に挿入して、ガス導入口の開口面積を容易に縮小させることができる。一方、弁部材をキャビティから後退させて、開位置に移動させたときには、挿入部を縮小通路部から抜き出すと共に拡大通路部内に配置して、ガス導入口の開口面積を十分に拡大させることができる。
【0021】
また、上記ガス導入口における上記縮小通路部は、上記キャビティから離れるに連れて当該ガス導入口の断面積を拡大させるテーパ形状を有しており、上記弁部材における上記挿入部は、上記テーパ形状の縮小通路部に対面するテーパ形状を有していることが好ましい(請求項3、6)。
この場合には、弁部材を閉位置から開位置に移動させる際に、ガス導入口の開口面積を迅速に拡大させることができる。そのため、弁部材を開位置に移動させる際に、一層短時間で、十分な流量及び圧力のガスによって、キャビティ内における樹脂材料を押圧することができる。
【実施例】
【0022】
以下に、本発明の射出成形装置及び射出成形方法にかかる実施例につき、図面と共に説明する。
(実施例1)
本例の射出成形装置1は、図1、図2に示すごとく、樹脂原料80を充填して樹脂成形品8を得るためのキャビティ20を形成してなる成形型2を備えている。この成形型2には、キャビティ20に開口し、このキャビティ20内に樹脂原料80を導入するための樹脂導入口22が形成してある。また、成形型2には、図2〜図6に示すごとく、キャビティ20において樹脂成形品8の裏側面802を成形する裏側成形面202に開口し、この裏側成形面202と、キャビティ20内における樹脂原料80との間にガスGを導入するためのガス導入口21が形成してある。
【0023】
上記ガス導入口21内には、このガス導入口21の開口面積を変化させる弁部材3が挿入配置してある。この弁部材3は、図2〜図4に示すごとく、キャビティ20へ前進してガス導入口21を閉じる閉位置301と、図5、図6に示すごとく、キャビティ20から後退してガス導入口21を開ける開位置302とに移動するよう構成してある。
そして、弁部材3は、図3、図4に示すごとく、閉位置301に移動したときには、キャビティ20内に充填する樹脂原料80がガス導入口21内へ浸入することを防止するよう構成してある。また、弁部材3は、図5、図6に示すごとく、開位置302に移動したときには、閉位置301に位置するときよりもガス導入口21の開口面積を拡大させ、キャビティ20における裏側成形面202と、キャビティ20内における樹脂原料80との間に十分な流量及び圧力のガスGを導入するよう構成してある。
【0024】
以下に、本例の射出成形装置1及び射出成形方法につき、図1〜図6と共に詳説する。
本例の射出成形装置1においては、キャビティ20内に、短時間で十分な流量及び圧力のガスGを導入して、キャビティ20内における樹脂原料80を十分に押圧するために、上記弁部材3を開位置302に移動させたときに、上記ガス導入口21の開口面積を十分に大きくするための工夫を行っている。
【0025】
図4、図6に示すごとく、本例のガス導入口21は、キャビティ20に開口する先端側の部位に、当該ガス導入口21の断面積を最も縮小させた縮小通路部211を有すると共に、この縮小通路部211に連通する部位に、縮小通路部211よりも当該ガス導入口21の断面積を拡大させた拡大通路部212を有している。また、本例の弁部材3は、ロッド31の先端部に、縮小通路部211内に挿入する挿入部32を形成してなる。
また、本例のガス導入口21及び弁部材3は、断面円形状を有している。
【0026】
本例の拡大通路部212は、縮小通路部211を拡径して形成してある。
また、本例の縮小通路部211は、キャビティ20から離れるに連れて拡径してなるテーパ形状を有している。また、弁部材3における挿入部32は、テーパ形状の縮小通路部211に対面するテーパ形状を有している。
【0027】
そして、弁部材3は、図4に示すごとく、閉位置301に前進したときには、挿入部32を縮小通路部211内に挿入して、当該ガス導入口21を閉じるよう構成してある。また、弁部材3は、図6に示すごとく、開位置302に後退したときには、挿入部32を拡大通路部212内に配置し、縮小通路部211の全体をキャビティ20に対して開口させて、当該ガス導入口21を開けるよう構成されている。
【0028】
図4に示すごとく、閉位置301にある弁部材3の先端面は、裏側成形面202よりも若干キャビティ20内に突出させることができる。また、閉位置301にある弁部材3の先端面は、キャビティ20における裏側成形面202と略同一面を形成することもできる。なお、図7に示すごとく、縮小通路部211は、ストレート形状に形成することもできる。
【0029】
図4に示すごとく、上記閉位置301にある弁部材3とガス導入口21との間の隙間Sは、0〜50μmとすることができる。また、弁部材3が閉位置301にあるときのガス導入口21の開口面積A1は、0〜0.1mm2とすることができる。
一方、図6に示すごとく、弁部材3が開位置302にあるときのガス導入口21の開口面積A2は、3〜120mm2とすることができる。なお、本例においては、この弁部材3が開位置302にあるときのガス導入口21の開口面積A2は、ガス導入口21における縮小通路部211の断面積となる。
また、弁部材3を開位置302にした際に、拡大通路部212とガス導入口21との間に形成される隙間の断面積は、縮小通路部211の断面積よりも大きくすることができる。
【0030】
また、ガス導入口21は、窒素ガスを蓄圧する蓄圧タンク(図示略)に接続してある。この蓄圧タンクは、キャビティ20へのガスG導入時にガス導入口21に圧力降下がほとんど生じないよう十分な容量を有している。蓄圧タンク内の圧力は、例えば、3〜30MPaとすることができ、蓄圧タンクの容量は、例えば、0.5〜10Lとすることができる。また、ガス導入口21と蓄圧タンクとを繋ぐ配管は、圧力降下がほとんど生じないよう十分な断面積を有している。
なお、蓄圧タンクとガス導入口21との間の配管には、圧力レギュレータを配設することができる。この場合には、キャビティ20内に導入するガスGの圧力を、圧力レギュレータによって設定した圧力に維持することができる。
【0031】
図1に示すごとく、本例において成形する樹脂成形品8は、板状本体部81と、この板状本体部81の裏側面802から立設した立壁部82とを有している。本例の立壁部82は、板状本体部81の裏側面802の外縁部と中間部とに形成してある。
また、図2に示すごとく、キャビティ20は、板状本体部81を成形する本体部用キャビティ23と、立壁部82を成形する立壁部用キャビティ24とからなる。そして、ガス導入口21からガスGを導入する本体部用キャビティ23における裏側成形面202の周囲は、立壁部用キャビティ24によって囲まれている。
【0032】
また、本例の射出成形装置1は、熱可塑性樹脂の射出成形を行うものであり、キャビティ20内に導入する樹脂原料80の射出圧力は、例えば、30〜50MPaとし、キャビティ20内に導入する樹脂原料80の加熱温度は、例えば、200〜250℃とする。また、ガス導入口21からキャビティ20内に導入するガスGの圧力は、例えば、3〜30MPaとする。本例のガスGは、窒素ガスとした。
【0033】
なお、図示は省略するが、弁部材3は、シリンダー、ソレノイド、モータ等のアクチュエータによって、ガス導入口21を閉じる閉位置301と、ガス導入口21を開ける開位置302とに移動可能である。弁部材3の移動動作は、シーケンサ(プログラマブルコントローラ)等の制御手段によって制御可能である。
【0034】
次に、上記射出成形装置1を用いて樹脂成形品8を成形する方法につき説明し、射出成形装置1及び射出成形方法による作用効果を説明する。
本例の射出成形方法においては、以下の原料充填工程及び押圧工程を行って、樹脂成形品8を得る。
【0035】
原料充填工程を行う際には、図2に示すごとく、弁部材3をキャビティ20へ前進させた閉位置301に移動させておく。このとき、弁部材3における挿入部32が、ガス導入口21における縮小通路部211内に挿入される。また、このとき、ガス導入口21は、完全に閉じている必要はなく、ガス導入口21への樹脂原料80の浸入を防止できる程度に開口面積を縮小させておくことができる。
そして、図3、図4に示すごとく、弁部材3が閉位置301にあり、弁部材3とガス導入口21との間の間隙からガス導入口21内へ樹脂原料80が浸入してしまうことを防止した状態で、樹脂導入口22からキャビティ20内に加熱溶融した樹脂原料80を充填する。
【0036】
次いで、押圧工程においては、図5、図6に示すごとく、キャビティ20内に導入した樹脂原料80が、ガス導入口21の配設位置まで到達した後に、弁部材3を、キャビティ20から後退させて、ガス導入口21の開口面積を拡大させる開位置302に移動させる。このとき、弁部材3における挿入部32が、縮小通路部211内から抜き出されて、拡大通路部212内に配置されることにより、縮小通路部211の全体が開口される。
【0037】
そして、ガス導入口21からキャビティ20内へガスGが導入される。このとき、裏側成形面202に対面する樹脂原料80の部分は、硬化を始めており、スキン層を形成している。そのため、ガス導入口21から導入されたガスGは、キャビティ20内における樹脂原料80の内部に浸入することなく、裏側成形面202とこれに対面する樹脂原料80のスキン層との間に留まる。
こうして、キャビティ20内に充填した樹脂原料80を冷却・固化させて、樹脂成形品8を成形することができる。
【0038】
上記弁部材3を開位置302に移動させたとき、弁部材3を後退させる距離に制約はなく、ガス導入口21の開口面積(弁部材3とガス導入口21との間の間隙量)を十分に大きくすることができる。本例においては、ガス導入口21の開口面積は、縮小通路部211の断面積と同じ大きさで開口させることができ、さらに十分に大きくすることができる。
【0039】
そのため、ガス導入口21から、キャビティ20における裏側成形面202と、キャビティ20内における樹脂原料80との間にガスGを導入する際には、短時間で十分な流量及び圧力のガスGを導入することができる。これにより、樹脂原料80を、キャビティ20における表側成形面201へ十分に押圧することができ、樹脂成形品8の表側面(意匠表面)801に、ヒケ(表面に形成される凹み)等のひずみ状態が発生することを効果的に防止することができる。
【0040】
また、上記押圧工程において、ガス導入口21からキャビティ20内へガスGを導入するタイミングは、原料充填工程完了後、迅速に行うことが好ましい。これに対し、裏側成形面202に対面する樹脂原料80の部分が未硬化であると、キャビティ20内に導入されたガスGが樹脂原料80の内部に浸入してしまい、押圧工程による押圧効果を得ることができないおそれがある。
【0041】
そのため、ガスGの導入は、裏側成形面202に対面する樹脂原料80の部分が硬化を始め、スキン層を形成した後であり、かつ原料充填工程完了後できるだけ早く(0.5秒以内に)行うことが好ましい。一方、充填工程完了後、0.5秒経過後にガスGの導入を開始した場合には、スキン層の固化が進んで、押圧工程による押圧効果を得ることができないおそれがある。
よって、0.5秒以内という短時間に十分な流量及び圧力のガスGを導入するためには、本例のガス導入口21及び弁部材3を用いた射出成形装置1及び射出成形方法を採用することが最も有効である。
【0042】
また、本例においては、上記ガスGの導入タイミングの違いが、樹脂成形品8のリブ(上記立壁部82)の表面に生じるヒケ(表面に形成される凹み)に与える影響について調査した。
そして、キャビティ20内へ5MPaのガスGを導入するタイミングを、キャビティ20への樹脂原料80の充填完了後、0.1〜2秒後の間で変化させたときのヒケの大きさ(凹み量)を測定した結果を図8に示す。
【0043】
同図において、横軸は、キャビティ20への樹脂原料80の充填完了後にガスGの導入を開始し、キャビティ20内におけるガスGの圧力が5MPaになるまでの時間(立上り時間)(秒)を示し、縦軸は、リブのヒケの大きさ(μm)を示す。そして、この立上り時間とリブのヒケの大きさとの関係はほぼ比例した関係にあることがわかった。
そして、ヒケの目標値(許容されるヒケの大きさ)を、2μm以下とすると、上記立上り時間は、少なくとも0.5秒以下にする必要があることがわかった。また、ヒケの目標値を2μm以下にするためには、立上り時間は、0.2秒以下にすることがより好ましいことがわかった。
【0044】
上記測定結果に対し、本例の構成(上記ガス導入口21及び弁部材3を用いた構成)によれば、上記立上り時間を容易に0.2秒程度にすることができ、ヒケの目標を容易に達成できる(ヒケの目標値を2μm以下にできる)ことがわかった。
一方、従来の構成(弁部材3を用いておらず、樹脂原料80の浸入を防止できる狭い間隙からキャビティ20内にガスGを導入する構成)においては、上記立上り時間を0.6秒未満にすることが困難であり、ヒケの目標を達成することが困難であることがわかった。
【0045】
それ故、本例の射出成形装置1及び射出成形方法によれば、短時間で十分な流量及び圧力のガスGを導入して、キャビティ20内の樹脂原料80を押圧することができ、樹脂成形品8の表側面801に、ヒケ(表面に形成される凹み)等のひずみ状態が発生することを効果的に防止することができる。
【0046】
(実施例2)
本例は、図9〜図14に示すごとく、成形型2Zのキャビティ20Zにおける裏側成形面202に複数のガス導入口21A〜Cを形成し、各ガス導入口21A〜Cからキャビティ20Z内にガスGを導入する順序に工夫を行った例である。
本例の樹脂成形品8Zは、図9、図10に示すごとく、ラジエータグリルである。そして、本例の本体部用キャビティ23は、立壁部用キャビティ24によって囲まれた領域である閉空間4を複数形成してなる。また、複数の閉空間4は、樹脂導入口22に近い順に、第1閉空間4A、第2閉空間4B、第3閉空間4Cとして形成されている。
【0047】
また、図10に示すごとく、本例の樹脂導入口22は、キャビティ20Zにおける中央部分に設けてあり、本例のキャビティ20Zにおいては、樹脂導入口22から導入した樹脂原料80を左右方向Wに分岐させて充填させる。
図11に示すごとく、本例のガス導入口21は、各閉空間4における裏側成形面202にそれぞれ設けてあり、第1閉空間4Aに設けた第1ガス導入口21A、第2閉空間4Bに設けた第2ガス導入口21B、及び第3閉空間4Cに設けた第3ガス導入口21Cとして形成してある。
そして、第1ガス導入口21Aには、第1弁部材3Aが挿入配置してあり、第2ガス導入口21Bには、第2弁部材3Bが挿入配置してあり、第3ガス導入口21Cには、第3弁部材3Cが挿入配置してある。
【0048】
本例においては、原料充填工程を行っているときに押圧工程を開始する。この押圧工程においては、キャビティ20Z内において樹脂原料80が先に充満される閉空間4に設けたガス導入口21から先に、ガスGの導入を開始する。
具体的には、まず、射出成形を開始する前には、図11に示すごとく、上記各弁部材3A〜Cを閉位置301に移動させておく。そして、原料充填工程として、図12に示すごとく、樹脂導入口22からキャビティ20Z内に樹脂原料80の充填を開始し、キャビティ20Z内を流動する樹脂原料80が、第1閉空間4Aを充満したときには、第1弁部材3Aを閉位置から後退させて、開位置に移動させる。
【0049】
このとき、第1ガス導入口21Aから、第1閉空間4Aにおける裏側成形面202と、第1閉空間4A内の樹脂原料80との間に、ガスGが導入される。これにより、第1閉空間4A内における樹脂原料80を、第1閉空間4Aにおける表側成形面201へ押圧することができる。
【0050】
次いで、図13に示すごとく、キャビティ20Z内を流動する樹脂原料80が、第2閉空間4Bを充満したときには、第2弁部材3Bを閉位置から後退させて、開位置に移動させる。
このとき、第2ガス導入口21Bから、第2閉空間4Bにおける裏側成形面202と、第2閉空間4B内の樹脂原料80との間に、ガスGが導入される。これにより、第2閉空間4B内における樹脂原料80を、第2閉空間4Bにおける表側成形面201へ押圧することができる。
【0051】
次いで、図14に示すごとく、キャビティ20Z内を流動する樹脂原料80が、第3閉空間4Cを充満したときには、第3弁部材3Cを閉位置から後退させて、開位置に移動させる。
このとき、第3ガス導入口21Cから、第3閉空間4Cにおける裏側成形面202と、第3閉空間4C内の樹脂原料80との間に、ガスGが導入される。これにより、第3閉空間4C内における樹脂原料80を、第3閉空間4Cにおける表側成形面201へ押圧することができる。
【0052】
こうして、キャビティ20Z内に充填した樹脂原料80を冷却・固化させて、樹脂成形品8Zを成形することができる。
なお、第3閉空間4Cに導入したガスGによる樹脂原料80の押圧が完了するまで、第1閉空間4Aに導入したガスGによる樹脂原料80の押圧、及び第3閉空間4Cに導入したガスGによる樹脂原料80の押圧を継続することができる。
【0053】
本例においては、キャビティ20Z内において、樹脂原料80が先に充満される部位(第1閉空間4A)から順に、すなわちスキン層(樹脂原料80の硬化部分)が先に形成される部位から順に、順次樹脂原料80を押圧することができる。そのため、樹脂成形品8Zの表側面801の全体において、ヒケ等のひずみ状態が発生することを効果的に防止することができる。
本例においても、その他の構成は上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1における、樹脂成形品とこれに対応する成形型のキャビティを示す斜視説明図。
【図2】実施例1における、射出成形装置を示す断面説明図。
【図3】実施例1における、キャビティ内に樹脂原料を充填した状態の射出成形装置を示す断面説明図。
【図4】実施例1における、閉位置にある弁部材の周辺を拡大して示す断面説明図。
【図5】実施例1における、キャビティ内にガスを導入した状態の射出成形装置を示す断面説明図。
【図6】実施例1における、開位置にある弁部材の周辺を拡大して示す断面説明図。
【図7】実施例1における、他のガス導入口及び弁部材の周辺を拡大して示す断面説明図。
【図8】実施例1における、横軸にキャビティ内におけるガス圧力(5MPa)の立上り時間(秒)をとり、縦軸にリブのヒケの大きさ(μm)をとって、両者の関係を示すグラフ。
【図9】実施例2における、樹脂成形品とこれに対応する成形型のキャビティを示す斜視説明図。
【図10】実施例2における、成形型のキャビティを示す平面説明図。
【図11】実施例2における、射出成形装置を示す断面説明図。
【図12】実施例2における、第1弁部材からキャビティ内にガスを導入する状態の射出成形装置を示す断面説明図。
【図13】実施例2における、第2弁部材からキャビティ内にガスを導入する状態の射出成形装置を示す断面説明図。
【図14】実施例2における、第3弁部材からキャビティ内にガスを導入する状態の射出成形装置を示す断面説明図。
【符号の説明】
【0055】
1 射出成形装置
2 成形型
20 キャビティ
201 表側成形面
202 裏側成形面
21 ガス導入口
211 縮小通路部
212 拡大通路部
22 樹脂導入口
3 弁部材
301 閉位置
302 開位置
32 挿入部
8 樹脂成形品
80 樹脂原料
801 表側面
802 裏側面
G ガス
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビティ内に充填した樹脂原料をガスによって押圧して、表面精度に優れた樹脂成形品を得る射出成形装置及び射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂原料を成形型のキャビティ内に射出成形して、樹脂成形品を得る技術においては、樹脂成形品の意匠表面に、ヒケ(表面に形成される凹み)等のひずみ状態が形成されることを防止するために、キャビティにおける裏側成形面と、キャビティ内における樹脂原料との間にガスを導入し、当該樹脂原料をキャビティにおける表側成形面へ押圧(加圧)している。これにより、樹脂成形品の意匠表面の外観及び形状を安定させている。
このように樹脂成形品の意匠表面にヒケ等が生じることを防止する技術としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
【0003】
特許文献1の合成樹脂射出成形品のひけ防止方法においては、合成樹脂射出成形品の裏面側を成形するコアに、成形型内に圧力流体を導入する間隙部を形成している。
この間隙部は、コアの中央部に、筒状の導孔を形成すると共にこの導孔の上端出口に成形型内に開口する円錐状の弁座を形成し、導孔内に弁棒を挿通すると共に弁座内に弁体を配置して形成している。そして、弁棒を成形型内から後退させたときには、弁体によって弁座を閉塞し、弁棒を成形型内へ前進させたときには、弁体を弁座から離隔して、この弁体と弁座との間に、成形型内に圧力流体を導入するための間隙を形成している。こうして、合成樹脂成形品の成形表面を成形型内の表面に圧接させて、ひけの発生を防止している。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1においては、弁棒を成形型内に向けて前進させ、弁体を弁座から離隔させるときには、弁体と弁座との間の間隙から成形型内に圧力流体を導入するだけでなく、弁体により成形型内の合成樹脂成形品を加圧している。
そのため、弁体を弁座との間に形成する間隙の大きさ(開口面積)には限界があり、短時間で十分な流量及び圧力の圧力流体を導入することが困難になっている。
【0005】
【特許文献1】特開昭50−75247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、短時間で十分な流量及び圧力のガスを導入して、キャビティ内の樹脂原料を押圧することができ、樹脂成形品の表側面に、ヒケ等のひずみ状態が発生することを効果的に防止することができる射出成形装置及び射出成形方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、樹脂原料を充填して樹脂成形品を得るためのキャビティと、該キャビティ内に上記樹脂原料を導入するための樹脂導入口と、上記キャビティにおいて上記樹脂成形品の裏側面を成形する裏側成形面に開口し、該裏側成形面と上記キャビティ内における上記樹脂原料との間にガスを導入するためのガス導入口とを形成してなる成形型を備えた射出成形装置において、
上記ガス導入口内には、該ガス導入口の開口面積を変化させる弁部材が挿入配置してあり、
該弁部材は、上記キャビティ内に充填する上記樹脂原料が上記ガス導入口内へ浸入することを防止するための閉位置と、該閉位置から後退して上記ガス導入口の開口面積を拡大させ、上記裏側成形面と上記キャビティ内における上記樹脂原料との間にガスを導入するための開位置とに移動するよう構成してあることを特徴とする射出成形装置にある(請求項1)。
【0008】
本発明の射出成形装置は、上記キャビティ、樹脂導入口及びガス導入口を形成してなる成形型を備えており、ガス導入口内には、上記弁部材を挿入配置してなる。
本発明の射出成形装置を用いて射出成形を行い、樹脂成形品を得る際には、まず、弁部材を上記閉位置に移動させておく。このとき、弁部材とガス導入口との間には、ほとんど間隙を形成しないことができる(ガス導入口を、略完全に閉じることができる。)。
【0009】
また、この弁部材を閉位置に移動させたときには、キャビティ内に充填する樹脂原料がガス導入口内へほとんど浸入しない間隙を形成することもできる(ガス導入口の開口面積を、このガス導入口への樹脂原料の浸入を防止できる程度に縮小させることができる。)。
【0010】
そして、弁部材が閉位置にあり、弁部材とガス導入口との間の間隙からガス導入口内へ樹脂原料が浸入してしまうことを防止した状態で、樹脂導入口からキャビティ内に樹脂原料を充填する。
次いで、キャビティ内に導入した樹脂原料が、ガス導入口の配設位置まで到達した後には、弁部材を、キャビティから後退させて、上記開位置に移動させる。このとき、弁部材を後退させる距離に制約はなく、ガス導入口の開口面積(又は弁部材とガス導入口との間の間隙量)を十分に大きくすることができる。
【0011】
そのため、ガス導入口から、キャビティにおける裏側成形面と、キャビティ内における樹脂原料との間にガスを導入する際には、短時間で十分な流量及び圧力のガスを導入することができる。これにより、樹脂原料を、キャビティにおける表側成形面へ十分に押圧することができ、樹脂成形品の表側面に、ヒケ(表面に形成される凹み)等のひずみ状態が発生することを効果的に防止することができる。
【0012】
それ故、本発明の射出成形装置によれば、短時間で十分な流量及び圧力のガスを導入して、キャビティ内の樹脂原料を押圧することができ、樹脂成形品の表側面に、ヒケ(表面に形成される凹み)等のひずみ状態が発生することを効果的に防止することができる。
【0013】
第2の発明は、樹脂原料を充填して樹脂成形品を得るためのキャビティと、該キャビティ内に上記樹脂原料を導入するための樹脂導入口と、上記キャビティにおいて上記樹脂成形品の裏側面を成形する裏側成形面に開口し、該裏側成形面と上記キャビティ内における上記樹脂原料との間にガスを導入するためのガス導入口とを有し、該ガス導入口内には、該ガス導入口の開口面積を変化させる弁部材を挿入配置してなる成形型を用いて、射出成形を行う方法において、
上記弁部材を、上記ガス導入口の開口面積を縮小させた閉位置に移動させた状態で、上記樹脂導入口から上記キャビティ内に樹脂原料を充填する原料充填工程と、
上記弁部材を、上記キャビティから後退させて上記ガス導入口の開口面積を拡大させた開位置に移動させた状態で、上記裏側成形面と上記キャビティ内における上記樹脂原料との間にガスを導入し、当該樹脂原料を上記キャビティにおいて上記樹脂成形品の表側面を成形する表側成形面へ押圧する押圧工程とを含むことを特徴とする射出成形方法にある(請求項4)。
【0014】
本発明の射出成形方法においては、上記キャビティ、樹脂導入口、ガス導入口及び弁部材を有する成形型を用いて、上記原料充填工程及び押圧工程を行い、樹脂成形品を得る。
原料充填工程を行う際には、弁部材は、ガス導入口の開口面積を縮小させた閉位置に移動させておく。このとき、ガス導入口は、略完全に閉じることができるだけでなく、ガス導入口への樹脂原料の浸入を防止できる程度に開口面積を縮小させることもできる。
そして、弁部材が閉位置にあり、弁部材とガス導入口との間の間隙からガス導入口内へ樹脂原料が浸入してしまうことを防止した状態で、樹脂導入口からキャビティ内に樹脂原料を充填する。
【0015】
次いで、押圧工程においては、キャビティ内に導入した樹脂原料が、ガス導入口の配設位置まで到達した後に、弁部材を、キャビティから後退させて、ガス導入口の開口面積を拡大させる開位置に移動させる。このとき、弁部材を後退させる距離に制約はなく、ガス導入口の開口面積(又は弁部材とガス導入口との間の間隙量)を十分に大きくすることができる。
【0016】
そのため、ガス導入口から、キャビティにおける裏側成形面と、キャビティ内における樹脂原料との間にガスを導入する際には、短時間で十分な流量及び圧力のガスを導入することができる。これにより、樹脂原料を、キャビティにおける表側成形面へ十分に押圧することができ、樹脂成形品の表側面に、ヒケ(表面に形成される凹み)等のひずみ状態が発生することを効果的に防止することができる。
【0017】
それ故、本発明の射出成形方法によれば、短時間で十分な流量及び圧力のガスを導入して、キャビティ内の樹脂原料を押圧することができ、樹脂成形品の表側面に、ヒケ(表面に形成される凹み)等のひずみ状態が発生することを効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
上述した第1、第2の発明における好ましい実施の形態につき説明する。
上記第1、第2の発明において、上記樹脂成形品は、ラジエータグリル、バックガーニッシュ、サイドモール、ホイールカバー、インストルメントパネル等とすることができる。また、上記成形型内に注入するガスは、空気又は窒素等の高圧ガスとすることができる。
【0019】
また、上記ガス導入口は、上記キャビティに開口する先端側の部位に、当該ガス導入口の断面積を最も縮小させた縮小通路部を有すると共に、該縮小通路部に連通する部位に、該縮小通路部よりも当該ガス導入口の断面積を拡大させた拡大通路部を有しており、上記弁部材は、上記縮小通路部内に挿入する挿入部を有していると共に、上記閉位置に移動したときには、上記縮小通路部内に上記挿入部を挿入して、当該ガス導入口の開口面積を縮小させると共に、上記開位置に移動したときには、上記挿入部を上記拡大通路部内に配置して、当該ガス導入口の開口面積を拡大させるよう構成することが好ましい(請求項2、5)。
【0020】
この場合には、弁部材を閉位置と開位置とに移動させて、ガス導入口の開口面積を変化させることが容易である。
すなわち、弁部材をキャビティへ前進させて、閉位置に移動させたときには、挿入部を縮小通路部内に挿入して、ガス導入口の開口面積を容易に縮小させることができる。一方、弁部材をキャビティから後退させて、開位置に移動させたときには、挿入部を縮小通路部から抜き出すと共に拡大通路部内に配置して、ガス導入口の開口面積を十分に拡大させることができる。
【0021】
また、上記ガス導入口における上記縮小通路部は、上記キャビティから離れるに連れて当該ガス導入口の断面積を拡大させるテーパ形状を有しており、上記弁部材における上記挿入部は、上記テーパ形状の縮小通路部に対面するテーパ形状を有していることが好ましい(請求項3、6)。
この場合には、弁部材を閉位置から開位置に移動させる際に、ガス導入口の開口面積を迅速に拡大させることができる。そのため、弁部材を開位置に移動させる際に、一層短時間で、十分な流量及び圧力のガスによって、キャビティ内における樹脂材料を押圧することができる。
【実施例】
【0022】
以下に、本発明の射出成形装置及び射出成形方法にかかる実施例につき、図面と共に説明する。
(実施例1)
本例の射出成形装置1は、図1、図2に示すごとく、樹脂原料80を充填して樹脂成形品8を得るためのキャビティ20を形成してなる成形型2を備えている。この成形型2には、キャビティ20に開口し、このキャビティ20内に樹脂原料80を導入するための樹脂導入口22が形成してある。また、成形型2には、図2〜図6に示すごとく、キャビティ20において樹脂成形品8の裏側面802を成形する裏側成形面202に開口し、この裏側成形面202と、キャビティ20内における樹脂原料80との間にガスGを導入するためのガス導入口21が形成してある。
【0023】
上記ガス導入口21内には、このガス導入口21の開口面積を変化させる弁部材3が挿入配置してある。この弁部材3は、図2〜図4に示すごとく、キャビティ20へ前進してガス導入口21を閉じる閉位置301と、図5、図6に示すごとく、キャビティ20から後退してガス導入口21を開ける開位置302とに移動するよう構成してある。
そして、弁部材3は、図3、図4に示すごとく、閉位置301に移動したときには、キャビティ20内に充填する樹脂原料80がガス導入口21内へ浸入することを防止するよう構成してある。また、弁部材3は、図5、図6に示すごとく、開位置302に移動したときには、閉位置301に位置するときよりもガス導入口21の開口面積を拡大させ、キャビティ20における裏側成形面202と、キャビティ20内における樹脂原料80との間に十分な流量及び圧力のガスGを導入するよう構成してある。
【0024】
以下に、本例の射出成形装置1及び射出成形方法につき、図1〜図6と共に詳説する。
本例の射出成形装置1においては、キャビティ20内に、短時間で十分な流量及び圧力のガスGを導入して、キャビティ20内における樹脂原料80を十分に押圧するために、上記弁部材3を開位置302に移動させたときに、上記ガス導入口21の開口面積を十分に大きくするための工夫を行っている。
【0025】
図4、図6に示すごとく、本例のガス導入口21は、キャビティ20に開口する先端側の部位に、当該ガス導入口21の断面積を最も縮小させた縮小通路部211を有すると共に、この縮小通路部211に連通する部位に、縮小通路部211よりも当該ガス導入口21の断面積を拡大させた拡大通路部212を有している。また、本例の弁部材3は、ロッド31の先端部に、縮小通路部211内に挿入する挿入部32を形成してなる。
また、本例のガス導入口21及び弁部材3は、断面円形状を有している。
【0026】
本例の拡大通路部212は、縮小通路部211を拡径して形成してある。
また、本例の縮小通路部211は、キャビティ20から離れるに連れて拡径してなるテーパ形状を有している。また、弁部材3における挿入部32は、テーパ形状の縮小通路部211に対面するテーパ形状を有している。
【0027】
そして、弁部材3は、図4に示すごとく、閉位置301に前進したときには、挿入部32を縮小通路部211内に挿入して、当該ガス導入口21を閉じるよう構成してある。また、弁部材3は、図6に示すごとく、開位置302に後退したときには、挿入部32を拡大通路部212内に配置し、縮小通路部211の全体をキャビティ20に対して開口させて、当該ガス導入口21を開けるよう構成されている。
【0028】
図4に示すごとく、閉位置301にある弁部材3の先端面は、裏側成形面202よりも若干キャビティ20内に突出させることができる。また、閉位置301にある弁部材3の先端面は、キャビティ20における裏側成形面202と略同一面を形成することもできる。なお、図7に示すごとく、縮小通路部211は、ストレート形状に形成することもできる。
【0029】
図4に示すごとく、上記閉位置301にある弁部材3とガス導入口21との間の隙間Sは、0〜50μmとすることができる。また、弁部材3が閉位置301にあるときのガス導入口21の開口面積A1は、0〜0.1mm2とすることができる。
一方、図6に示すごとく、弁部材3が開位置302にあるときのガス導入口21の開口面積A2は、3〜120mm2とすることができる。なお、本例においては、この弁部材3が開位置302にあるときのガス導入口21の開口面積A2は、ガス導入口21における縮小通路部211の断面積となる。
また、弁部材3を開位置302にした際に、拡大通路部212とガス導入口21との間に形成される隙間の断面積は、縮小通路部211の断面積よりも大きくすることができる。
【0030】
また、ガス導入口21は、窒素ガスを蓄圧する蓄圧タンク(図示略)に接続してある。この蓄圧タンクは、キャビティ20へのガスG導入時にガス導入口21に圧力降下がほとんど生じないよう十分な容量を有している。蓄圧タンク内の圧力は、例えば、3〜30MPaとすることができ、蓄圧タンクの容量は、例えば、0.5〜10Lとすることができる。また、ガス導入口21と蓄圧タンクとを繋ぐ配管は、圧力降下がほとんど生じないよう十分な断面積を有している。
なお、蓄圧タンクとガス導入口21との間の配管には、圧力レギュレータを配設することができる。この場合には、キャビティ20内に導入するガスGの圧力を、圧力レギュレータによって設定した圧力に維持することができる。
【0031】
図1に示すごとく、本例において成形する樹脂成形品8は、板状本体部81と、この板状本体部81の裏側面802から立設した立壁部82とを有している。本例の立壁部82は、板状本体部81の裏側面802の外縁部と中間部とに形成してある。
また、図2に示すごとく、キャビティ20は、板状本体部81を成形する本体部用キャビティ23と、立壁部82を成形する立壁部用キャビティ24とからなる。そして、ガス導入口21からガスGを導入する本体部用キャビティ23における裏側成形面202の周囲は、立壁部用キャビティ24によって囲まれている。
【0032】
また、本例の射出成形装置1は、熱可塑性樹脂の射出成形を行うものであり、キャビティ20内に導入する樹脂原料80の射出圧力は、例えば、30〜50MPaとし、キャビティ20内に導入する樹脂原料80の加熱温度は、例えば、200〜250℃とする。また、ガス導入口21からキャビティ20内に導入するガスGの圧力は、例えば、3〜30MPaとする。本例のガスGは、窒素ガスとした。
【0033】
なお、図示は省略するが、弁部材3は、シリンダー、ソレノイド、モータ等のアクチュエータによって、ガス導入口21を閉じる閉位置301と、ガス導入口21を開ける開位置302とに移動可能である。弁部材3の移動動作は、シーケンサ(プログラマブルコントローラ)等の制御手段によって制御可能である。
【0034】
次に、上記射出成形装置1を用いて樹脂成形品8を成形する方法につき説明し、射出成形装置1及び射出成形方法による作用効果を説明する。
本例の射出成形方法においては、以下の原料充填工程及び押圧工程を行って、樹脂成形品8を得る。
【0035】
原料充填工程を行う際には、図2に示すごとく、弁部材3をキャビティ20へ前進させた閉位置301に移動させておく。このとき、弁部材3における挿入部32が、ガス導入口21における縮小通路部211内に挿入される。また、このとき、ガス導入口21は、完全に閉じている必要はなく、ガス導入口21への樹脂原料80の浸入を防止できる程度に開口面積を縮小させておくことができる。
そして、図3、図4に示すごとく、弁部材3が閉位置301にあり、弁部材3とガス導入口21との間の間隙からガス導入口21内へ樹脂原料80が浸入してしまうことを防止した状態で、樹脂導入口22からキャビティ20内に加熱溶融した樹脂原料80を充填する。
【0036】
次いで、押圧工程においては、図5、図6に示すごとく、キャビティ20内に導入した樹脂原料80が、ガス導入口21の配設位置まで到達した後に、弁部材3を、キャビティ20から後退させて、ガス導入口21の開口面積を拡大させる開位置302に移動させる。このとき、弁部材3における挿入部32が、縮小通路部211内から抜き出されて、拡大通路部212内に配置されることにより、縮小通路部211の全体が開口される。
【0037】
そして、ガス導入口21からキャビティ20内へガスGが導入される。このとき、裏側成形面202に対面する樹脂原料80の部分は、硬化を始めており、スキン層を形成している。そのため、ガス導入口21から導入されたガスGは、キャビティ20内における樹脂原料80の内部に浸入することなく、裏側成形面202とこれに対面する樹脂原料80のスキン層との間に留まる。
こうして、キャビティ20内に充填した樹脂原料80を冷却・固化させて、樹脂成形品8を成形することができる。
【0038】
上記弁部材3を開位置302に移動させたとき、弁部材3を後退させる距離に制約はなく、ガス導入口21の開口面積(弁部材3とガス導入口21との間の間隙量)を十分に大きくすることができる。本例においては、ガス導入口21の開口面積は、縮小通路部211の断面積と同じ大きさで開口させることができ、さらに十分に大きくすることができる。
【0039】
そのため、ガス導入口21から、キャビティ20における裏側成形面202と、キャビティ20内における樹脂原料80との間にガスGを導入する際には、短時間で十分な流量及び圧力のガスGを導入することができる。これにより、樹脂原料80を、キャビティ20における表側成形面201へ十分に押圧することができ、樹脂成形品8の表側面(意匠表面)801に、ヒケ(表面に形成される凹み)等のひずみ状態が発生することを効果的に防止することができる。
【0040】
また、上記押圧工程において、ガス導入口21からキャビティ20内へガスGを導入するタイミングは、原料充填工程完了後、迅速に行うことが好ましい。これに対し、裏側成形面202に対面する樹脂原料80の部分が未硬化であると、キャビティ20内に導入されたガスGが樹脂原料80の内部に浸入してしまい、押圧工程による押圧効果を得ることができないおそれがある。
【0041】
そのため、ガスGの導入は、裏側成形面202に対面する樹脂原料80の部分が硬化を始め、スキン層を形成した後であり、かつ原料充填工程完了後できるだけ早く(0.5秒以内に)行うことが好ましい。一方、充填工程完了後、0.5秒経過後にガスGの導入を開始した場合には、スキン層の固化が進んで、押圧工程による押圧効果を得ることができないおそれがある。
よって、0.5秒以内という短時間に十分な流量及び圧力のガスGを導入するためには、本例のガス導入口21及び弁部材3を用いた射出成形装置1及び射出成形方法を採用することが最も有効である。
【0042】
また、本例においては、上記ガスGの導入タイミングの違いが、樹脂成形品8のリブ(上記立壁部82)の表面に生じるヒケ(表面に形成される凹み)に与える影響について調査した。
そして、キャビティ20内へ5MPaのガスGを導入するタイミングを、キャビティ20への樹脂原料80の充填完了後、0.1〜2秒後の間で変化させたときのヒケの大きさ(凹み量)を測定した結果を図8に示す。
【0043】
同図において、横軸は、キャビティ20への樹脂原料80の充填完了後にガスGの導入を開始し、キャビティ20内におけるガスGの圧力が5MPaになるまでの時間(立上り時間)(秒)を示し、縦軸は、リブのヒケの大きさ(μm)を示す。そして、この立上り時間とリブのヒケの大きさとの関係はほぼ比例した関係にあることがわかった。
そして、ヒケの目標値(許容されるヒケの大きさ)を、2μm以下とすると、上記立上り時間は、少なくとも0.5秒以下にする必要があることがわかった。また、ヒケの目標値を2μm以下にするためには、立上り時間は、0.2秒以下にすることがより好ましいことがわかった。
【0044】
上記測定結果に対し、本例の構成(上記ガス導入口21及び弁部材3を用いた構成)によれば、上記立上り時間を容易に0.2秒程度にすることができ、ヒケの目標を容易に達成できる(ヒケの目標値を2μm以下にできる)ことがわかった。
一方、従来の構成(弁部材3を用いておらず、樹脂原料80の浸入を防止できる狭い間隙からキャビティ20内にガスGを導入する構成)においては、上記立上り時間を0.6秒未満にすることが困難であり、ヒケの目標を達成することが困難であることがわかった。
【0045】
それ故、本例の射出成形装置1及び射出成形方法によれば、短時間で十分な流量及び圧力のガスGを導入して、キャビティ20内の樹脂原料80を押圧することができ、樹脂成形品8の表側面801に、ヒケ(表面に形成される凹み)等のひずみ状態が発生することを効果的に防止することができる。
【0046】
(実施例2)
本例は、図9〜図14に示すごとく、成形型2Zのキャビティ20Zにおける裏側成形面202に複数のガス導入口21A〜Cを形成し、各ガス導入口21A〜Cからキャビティ20Z内にガスGを導入する順序に工夫を行った例である。
本例の樹脂成形品8Zは、図9、図10に示すごとく、ラジエータグリルである。そして、本例の本体部用キャビティ23は、立壁部用キャビティ24によって囲まれた領域である閉空間4を複数形成してなる。また、複数の閉空間4は、樹脂導入口22に近い順に、第1閉空間4A、第2閉空間4B、第3閉空間4Cとして形成されている。
【0047】
また、図10に示すごとく、本例の樹脂導入口22は、キャビティ20Zにおける中央部分に設けてあり、本例のキャビティ20Zにおいては、樹脂導入口22から導入した樹脂原料80を左右方向Wに分岐させて充填させる。
図11に示すごとく、本例のガス導入口21は、各閉空間4における裏側成形面202にそれぞれ設けてあり、第1閉空間4Aに設けた第1ガス導入口21A、第2閉空間4Bに設けた第2ガス導入口21B、及び第3閉空間4Cに設けた第3ガス導入口21Cとして形成してある。
そして、第1ガス導入口21Aには、第1弁部材3Aが挿入配置してあり、第2ガス導入口21Bには、第2弁部材3Bが挿入配置してあり、第3ガス導入口21Cには、第3弁部材3Cが挿入配置してある。
【0048】
本例においては、原料充填工程を行っているときに押圧工程を開始する。この押圧工程においては、キャビティ20Z内において樹脂原料80が先に充満される閉空間4に設けたガス導入口21から先に、ガスGの導入を開始する。
具体的には、まず、射出成形を開始する前には、図11に示すごとく、上記各弁部材3A〜Cを閉位置301に移動させておく。そして、原料充填工程として、図12に示すごとく、樹脂導入口22からキャビティ20Z内に樹脂原料80の充填を開始し、キャビティ20Z内を流動する樹脂原料80が、第1閉空間4Aを充満したときには、第1弁部材3Aを閉位置から後退させて、開位置に移動させる。
【0049】
このとき、第1ガス導入口21Aから、第1閉空間4Aにおける裏側成形面202と、第1閉空間4A内の樹脂原料80との間に、ガスGが導入される。これにより、第1閉空間4A内における樹脂原料80を、第1閉空間4Aにおける表側成形面201へ押圧することができる。
【0050】
次いで、図13に示すごとく、キャビティ20Z内を流動する樹脂原料80が、第2閉空間4Bを充満したときには、第2弁部材3Bを閉位置から後退させて、開位置に移動させる。
このとき、第2ガス導入口21Bから、第2閉空間4Bにおける裏側成形面202と、第2閉空間4B内の樹脂原料80との間に、ガスGが導入される。これにより、第2閉空間4B内における樹脂原料80を、第2閉空間4Bにおける表側成形面201へ押圧することができる。
【0051】
次いで、図14に示すごとく、キャビティ20Z内を流動する樹脂原料80が、第3閉空間4Cを充満したときには、第3弁部材3Cを閉位置から後退させて、開位置に移動させる。
このとき、第3ガス導入口21Cから、第3閉空間4Cにおける裏側成形面202と、第3閉空間4C内の樹脂原料80との間に、ガスGが導入される。これにより、第3閉空間4C内における樹脂原料80を、第3閉空間4Cにおける表側成形面201へ押圧することができる。
【0052】
こうして、キャビティ20Z内に充填した樹脂原料80を冷却・固化させて、樹脂成形品8Zを成形することができる。
なお、第3閉空間4Cに導入したガスGによる樹脂原料80の押圧が完了するまで、第1閉空間4Aに導入したガスGによる樹脂原料80の押圧、及び第3閉空間4Cに導入したガスGによる樹脂原料80の押圧を継続することができる。
【0053】
本例においては、キャビティ20Z内において、樹脂原料80が先に充満される部位(第1閉空間4A)から順に、すなわちスキン層(樹脂原料80の硬化部分)が先に形成される部位から順に、順次樹脂原料80を押圧することができる。そのため、樹脂成形品8Zの表側面801の全体において、ヒケ等のひずみ状態が発生することを効果的に防止することができる。
本例においても、その他の構成は上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1における、樹脂成形品とこれに対応する成形型のキャビティを示す斜視説明図。
【図2】実施例1における、射出成形装置を示す断面説明図。
【図3】実施例1における、キャビティ内に樹脂原料を充填した状態の射出成形装置を示す断面説明図。
【図4】実施例1における、閉位置にある弁部材の周辺を拡大して示す断面説明図。
【図5】実施例1における、キャビティ内にガスを導入した状態の射出成形装置を示す断面説明図。
【図6】実施例1における、開位置にある弁部材の周辺を拡大して示す断面説明図。
【図7】実施例1における、他のガス導入口及び弁部材の周辺を拡大して示す断面説明図。
【図8】実施例1における、横軸にキャビティ内におけるガス圧力(5MPa)の立上り時間(秒)をとり、縦軸にリブのヒケの大きさ(μm)をとって、両者の関係を示すグラフ。
【図9】実施例2における、樹脂成形品とこれに対応する成形型のキャビティを示す斜視説明図。
【図10】実施例2における、成形型のキャビティを示す平面説明図。
【図11】実施例2における、射出成形装置を示す断面説明図。
【図12】実施例2における、第1弁部材からキャビティ内にガスを導入する状態の射出成形装置を示す断面説明図。
【図13】実施例2における、第2弁部材からキャビティ内にガスを導入する状態の射出成形装置を示す断面説明図。
【図14】実施例2における、第3弁部材からキャビティ内にガスを導入する状態の射出成形装置を示す断面説明図。
【符号の説明】
【0055】
1 射出成形装置
2 成形型
20 キャビティ
201 表側成形面
202 裏側成形面
21 ガス導入口
211 縮小通路部
212 拡大通路部
22 樹脂導入口
3 弁部材
301 閉位置
302 開位置
32 挿入部
8 樹脂成形品
80 樹脂原料
801 表側面
802 裏側面
G ガス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂原料を充填して樹脂成形品を得るためのキャビティと、該キャビティ内に上記樹脂原料を導入するための樹脂導入口と、上記キャビティにおいて上記樹脂成形品の裏側面を成形する裏側成形面に開口し、該裏側成形面と上記キャビティ内における上記樹脂原料との間にガスを導入するためのガス導入口とを形成してなる成形型を備えた射出成形装置において、
上記ガス導入口内には、該ガス導入口の開口面積を変化させる弁部材が挿入配置してあり、
該弁部材は、上記キャビティ内に充填する上記樹脂原料が上記ガス導入口内へ浸入することを防止するための閉位置と、該閉位置から後退して上記ガス導入口の開口面積を拡大させ、上記裏側成形面と上記キャビティ内における上記樹脂原料との間にガスを導入するための開位置とに移動するよう構成してあることを特徴とする射出成形装置。
【請求項2】
請求項1において、上記ガス導入口は、上記キャビティに開口する先端側の部位に、当該ガス導入口の断面積を最も縮小させた縮小通路部を有すると共に、該縮小通路部に連通する部位に、該縮小通路部よりも当該ガス導入口の断面積を拡大させた拡大通路部を有しており、
上記弁部材は、上記縮小通路部内に挿入する挿入部を有していると共に、上記閉位置に移動したときには、上記縮小通路部内に上記挿入部を挿入して、当該ガス導入口の開口面積を縮小させると共に、上記開位置に移動したときには、上記挿入部を上記拡大通路部内に配置して、当該ガス導入口の開口面積を拡大させるよう構成してあることを特徴とする射出成形装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記ガス導入口における上記縮小通路部は、上記キャビティから離れるに連れて当該ガス導入口の断面積を拡大させるテーパ形状を有しており、
上記弁部材における上記挿入部は、上記テーパ形状の縮小通路部に対面するテーパ形状を有していることを特徴とする射出成形装置。
【請求項4】
樹脂原料を充填して樹脂成形品を得るためのキャビティと、該キャビティ内に上記樹脂原料を導入するための樹脂導入口と、上記キャビティにおいて上記樹脂成形品の裏側面を成形する裏側成形面に開口し、該裏側成形面と上記キャビティ内における上記樹脂原料との間にガスを導入するためのガス導入口とを有し、該ガス導入口内には、該ガス導入口の開口面積を変化させる弁部材を挿入配置してなる成形型を用いて、射出成形を行う方法において、
上記弁部材を、上記ガス導入口の開口面積を縮小させた閉位置に移動させた状態で、上記樹脂導入口から上記キャビティ内に樹脂原料を充填する原料充填工程と、
上記弁部材を、上記キャビティから後退させて上記ガス導入口の開口面積を拡大させた開位置に移動させた状態で、上記裏側成形面と上記キャビティ内における上記樹脂原料との間にガスを導入し、当該樹脂原料を上記キャビティにおいて上記樹脂成形品の表側面を成形する表側成形面へ押圧する押圧工程とを含むことを特徴とする射出成形方法。
【請求項5】
請求項4において、上記ガス導入口は、上記キャビティに開口する先端側の部位に、当該ガス導入口の断面積を最も縮小させた縮小通路部を有すると共に、該縮小通路部に連通する部位に、該縮小通路部よりも当該ガス導入口の断面積を拡大させた拡大通路部を有しており、
上記弁部材は、上記縮小通路部内に挿入する挿入部を有していると共に、上記閉位置に移動したときには、上記縮小通路部内に上記挿入部を挿入して、当該ガス導入口の開口面積を縮小させると共に、上記開位置に移動したときには、上記挿入部を上記拡大通路部内に配置して、当該ガス導入口の開口面積を拡大させるよう構成してあることを特徴とする射出成形方法。
【請求項6】
請求項4又は5において、上記ガス導入口における上記縮小通路部は、上記キャビティから離れるに連れて当該ガス導入口の断面積を拡大させるテーパ形状を有しており、
上記弁部材における上記挿入部は、上記テーパ形状の縮小通路部に対面するテーパ形状を有していることを特徴とする射出成形方法。
【請求項1】
樹脂原料を充填して樹脂成形品を得るためのキャビティと、該キャビティ内に上記樹脂原料を導入するための樹脂導入口と、上記キャビティにおいて上記樹脂成形品の裏側面を成形する裏側成形面に開口し、該裏側成形面と上記キャビティ内における上記樹脂原料との間にガスを導入するためのガス導入口とを形成してなる成形型を備えた射出成形装置において、
上記ガス導入口内には、該ガス導入口の開口面積を変化させる弁部材が挿入配置してあり、
該弁部材は、上記キャビティ内に充填する上記樹脂原料が上記ガス導入口内へ浸入することを防止するための閉位置と、該閉位置から後退して上記ガス導入口の開口面積を拡大させ、上記裏側成形面と上記キャビティ内における上記樹脂原料との間にガスを導入するための開位置とに移動するよう構成してあることを特徴とする射出成形装置。
【請求項2】
請求項1において、上記ガス導入口は、上記キャビティに開口する先端側の部位に、当該ガス導入口の断面積を最も縮小させた縮小通路部を有すると共に、該縮小通路部に連通する部位に、該縮小通路部よりも当該ガス導入口の断面積を拡大させた拡大通路部を有しており、
上記弁部材は、上記縮小通路部内に挿入する挿入部を有していると共に、上記閉位置に移動したときには、上記縮小通路部内に上記挿入部を挿入して、当該ガス導入口の開口面積を縮小させると共に、上記開位置に移動したときには、上記挿入部を上記拡大通路部内に配置して、当該ガス導入口の開口面積を拡大させるよう構成してあることを特徴とする射出成形装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記ガス導入口における上記縮小通路部は、上記キャビティから離れるに連れて当該ガス導入口の断面積を拡大させるテーパ形状を有しており、
上記弁部材における上記挿入部は、上記テーパ形状の縮小通路部に対面するテーパ形状を有していることを特徴とする射出成形装置。
【請求項4】
樹脂原料を充填して樹脂成形品を得るためのキャビティと、該キャビティ内に上記樹脂原料を導入するための樹脂導入口と、上記キャビティにおいて上記樹脂成形品の裏側面を成形する裏側成形面に開口し、該裏側成形面と上記キャビティ内における上記樹脂原料との間にガスを導入するためのガス導入口とを有し、該ガス導入口内には、該ガス導入口の開口面積を変化させる弁部材を挿入配置してなる成形型を用いて、射出成形を行う方法において、
上記弁部材を、上記ガス導入口の開口面積を縮小させた閉位置に移動させた状態で、上記樹脂導入口から上記キャビティ内に樹脂原料を充填する原料充填工程と、
上記弁部材を、上記キャビティから後退させて上記ガス導入口の開口面積を拡大させた開位置に移動させた状態で、上記裏側成形面と上記キャビティ内における上記樹脂原料との間にガスを導入し、当該樹脂原料を上記キャビティにおいて上記樹脂成形品の表側面を成形する表側成形面へ押圧する押圧工程とを含むことを特徴とする射出成形方法。
【請求項5】
請求項4において、上記ガス導入口は、上記キャビティに開口する先端側の部位に、当該ガス導入口の断面積を最も縮小させた縮小通路部を有すると共に、該縮小通路部に連通する部位に、該縮小通路部よりも当該ガス導入口の断面積を拡大させた拡大通路部を有しており、
上記弁部材は、上記縮小通路部内に挿入する挿入部を有していると共に、上記閉位置に移動したときには、上記縮小通路部内に上記挿入部を挿入して、当該ガス導入口の開口面積を縮小させると共に、上記開位置に移動したときには、上記挿入部を上記拡大通路部内に配置して、当該ガス導入口の開口面積を拡大させるよう構成してあることを特徴とする射出成形方法。
【請求項6】
請求項4又は5において、上記ガス導入口における上記縮小通路部は、上記キャビティから離れるに連れて当該ガス導入口の断面積を拡大させるテーパ形状を有しており、
上記弁部材における上記挿入部は、上記テーパ形状の縮小通路部に対面するテーパ形状を有していることを特徴とする射出成形方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−268821(P2007−268821A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96229(P2006−96229)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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