説明

射撃訓練システム

【課題】 複数人が同時に射撃を行った場合に、レーザ光の着弾点が何れのレーザ拳銃によるものかを判別できる射撃訓練システムを提供する。
【解決手段】 プロジェクタ6によりスクリーン2に投影された訓練映像に対して、それぞれが異なる光束形態を有するレーザ光を照射する複数のレーザ拳銃4によりレーザ光を照射し、照射されたレーザ光の着弾点をCCDカメラ8により撮影する。そして、CCDカメラ8により撮影された映像を用い、各着弾点の着弾点形状を判別することによって、各着弾点が何れのレーザ拳銃4によるものかを判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スクリーン上に投影された映像に対して、実弾に模したレーザ光を照射することにより射撃訓練を行う射撃訓練システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
実弾を用いない射撃訓練は、スクリーンに所定映像、例えば、標的の映像等の訓練映像をプロジェクタ等の映像投影装置を用いて投影し、投影された映像に対してレーザ拳銃からレーザ弾(レーザ光)を発射(照射)することにより行われる。即ち、スクリーンに対して発射されたレーザ弾の着弾点を示す映像をCCD(Charge−Coupled Device)カメラ等の撮影装置を用いて撮影し、撮影された映像を用いて標的への的中率等を判定することにより訓練が行われる。このような射撃訓練は、一般的に、一人の射撃手がスクリーンに投影された映像に対してレーザ弾を発射することを前提としているため、複数人が同時に訓練を行うことができない。即ち、複数の射撃手が同時に同一のスクリーンに対してレーザ弾を発射した場合には、何れの着弾点が何れの射撃手のレーザ拳銃による着弾点かを識別することができない。
【0003】
そこで、特許文献1により、多数の射撃訓練者が同一の標的を用い同時に訓練できる射撃訓練装置が提案されている。この射撃訓練装置においては、それぞれの訓練者が光学的特性が互いに異なるレーザ光を発光する光源を装着した拳銃を用いて、スクリーンに対してレーザ光を照射する。そして、照射されたレーザ光の光学的特性、例えば、光量をコンパレータを用いて検出し、検出された光量の値から何れの拳銃からのレーザ光線かを識別している。
【0004】
【特許文献1】特開平11−6700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レーザ光の光学的特性に基づいてレーザ光の着弾点が何れのレーザ拳銃によるものかを識別している場合、射撃訓練システムのコストが高くなる等の問題が存在する。例えば、通常市販されているCCDカメラを用いて撮影された映像を用いて光量を測定している場合には、2つの着弾点を識別するのが限界であり、2つ以上になると誤検知が頻発する。また、高感度カメラを用いて撮影された映像を用いて光量を測定すれば、2つ以上の着弾点を識別することができるが、コストが上昇するという問題がある。更に、光量による識別は、射撃訓練システムが設置されている場所(設置場所)の明るさによる影響を直接的に受けるため、設置場所の明るさを測定等し、測定された明るさに応じて閾値を設定する等の処理を行わなければならず、射撃訓練システムの設置に手間が掛かるという問題がある。
【0006】
また、レーザ光の位相を用いて識別する場合、各レーザ光の同期が必要となり、レーザ光の波長を用いて識別する場合、設置場所の明るさ(ノイズ)からの影響を受けやすいため、誤検知が生じやすいという問題がある。更に、レーザ光の発光時間を用いて識別する場合、複数フレームに亘ってレーザ光の発光時間を監視する必要があり、着弾点の検出に時間が掛かるという問題がある。
【0007】
この発明の課題は、実弾に模したレーザ光を照射するレーザ拳銃を用いた射撃訓練において、複数のレーザ光の着弾点が何れのレーザ拳銃によるものかを簡易かつ高精度に判別できる射撃訓練システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の射撃訓練システムは、スクリーンに訓練映像を投影する映像投影装置と、前記スクリーンに投影された前記訓練映像に対してそれぞれが異なる光束形態を有するレーザ光を照射する複数のレーザ拳銃と、前記複数のレーザ拳銃により照射されたレーザ光の着弾点を撮影する撮影装置と、前記映像投影装置及び前記撮影装置を制御する制御装置とを備える射撃訓練システムにおいて、前記制御装置は、前記撮影装置の前記着弾点撮影手段により撮影された前記着弾点の映像を記憶する着弾点映像記憶手段と、前記着弾点映像記憶手段に記憶されている前記着弾点の映像を用い、該着弾点が前記複数のレーザ拳銃の中のどのレーザ拳銃によるものかを判別する判別手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2記載の射撃訓練システムは、前記判別手段が前記着弾点の映像から着弾点の着弾点形状を判別することにより、該着弾点が前記複数のレーザ拳銃の中のどのレーザ拳銃によるものかを判別することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3記載の射撃訓練システムは、前記判別手段が前記着弾点の映像から着弾点の着弾点面積を判別することにより、該着弾点が前記複数のレーザ拳銃の中のどのレーザ拳銃によるものかを判別することを特徴とする。
【0011】
これらの請求項1〜請求項3記載の射撃訓練システムによれば、着弾点の映像から、例えば、着弾点形状や着弾点面積を判別し、判別された着弾点形状又は着弾点面積により、着弾点が複数のレーザ拳銃の中のどのレーザ拳銃によるものかを判別することができる。即ち、着弾点の着弾点形状又は着弾点面積を判別することにより、各着弾点が何れの射撃手によるものかを判別することができる。従って、光学的特性のように、射撃訓練システムが設置されている場所における自然光や室内灯の光等からの影響を受けることがなく、高い精度で射撃手を判別することができる。
【0012】
また、請求項4記載の射撃訓練システムは、前記レーザ光が不可視領域の波長を有するレーザ光であることを特徴とする。この請求項4記載の射撃訓練システムによれば、着弾点形状や着弾点面積を認識することにより射撃手に違和感を与えることを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、例えば、レーザ光の着弾点形状やレーザ光の着弾点面積を判別し、着弾点が何れのレーザ拳銃からのものかを判別することによって、着弾点が何れの射撃手によるものかを判別している。従って、レーザ光の光量、位相、発光時間及び波長の何れかの光学的特性を用いて判別する場合と異なり、射撃訓練システムが設置されている場所の明るさ、即ち、自然光や室内灯の光等のノイズによる誤検知が発生する可能性が低く、高い精度で確実に射撃手を判別することができる。
【0014】
また、光学的特性を用いる場合と異なり、光量を測定する装置等が不要であると共に、例えば、市販されているCCDカメラを用いて撮影された着弾点の映像を用いて着弾点形状や着弾点面積を判別することができる。従って、高い精度で射撃手を判別することができる射撃訓練システムを低コストで提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態に係る射撃訓練システムについて説明する。図1は、この発明の実施の形態に係る射撃訓練システムの概略を説明するための図である。射撃訓練システムは、スクリーン2と対向する所定位置、例えば、スクリーン2の略中心から延びる法線上に配置されたプロジェクタ(映像投影装置)6及びCCD(Charge−Coupled Device)カメラ(撮影装置)8と、制御装置10(図1においては図示を省略、図2参照)とを備えている。なお、図1において、一点鎖線はプロジェクタ6により投影される映像を示し、破線はCCDカメラ8により撮影される映像を示している。また、プロジェクタ6とCCDカメラ8とは、プロジェクタ6の投影レンズの光軸方向と、CCDカメラ8の撮影レンズの光軸方向とを一致させた状態で、例えば、投影レンズの中心と撮影レンズの中心とが同一鉛直線上に位置するように配置され一体化されている。また、図1において、射撃訓練を行う者(射撃手)は、レーザ弾(レーザ光)を発射(照射)する拳銃(レーザ拳銃)4を用い、スクリーン2に投影された映像(訓練映像)中の標的に対してレーザ弾(レーザ光)を発射(照射)することにより射撃訓練を行う。
【0016】
ここで、拳銃4としては、実弾を発射可能な拳銃に、実弾に模したレーザ弾を発射するための装置(レーザ光発射装置)を装着したものが用いられる。また、拳銃4から発射されるレーザ弾は、不可視領域の波長を有するレーザ光であり、拳銃4からスクリーン2上の標的に対して照射されたレーザ光の照射位置が、射撃手により着弾点として認識されることを防止している。なお、不可視領域の波長を有するレーザ光としては、例えば、赤外線等が用いられる。
【0017】
図2は、この発明の実施の形態に係る射撃訓練システムのブロック構成図である。射撃訓練システムは、図2に示すように、訓練映像を投影するプロジェクタ6、レーザ弾の着弾点を撮影するCCDカメラ8、プロジェクタ6及びCCDカメラ8における処理を制御する制御装置10を備えている。射撃訓練システムにおいては、制御装置10による制御に基づいて、プロジェクタ6により訓練映像がスクリーン2(図1参照)に投影され、制御装置10による制御に基づいて、CCDカメラ8によりスクリーン2に投影された訓練映像中の標的に対して拳銃4から発射されたレーザ弾の着弾点が撮影される。なお、制御装置10としては、パーソナルコンピュータ等が用いられる。
【0018】
図3は、この発明の実施の形態に係る射撃訓練システムにおける制御装置10のブロック構成図である。制御装置10は、図3に示すように、制御装置10におけるデータの処理を制御するデータ制御部20を備えている。データ制御部20には、プロジェクタ6及びCCDカメラ8との間の通信を制御する通信制御部22及びプロジェクタ6を介してスクリーン2に投影される映像データを記憶した映像データ記憶部24が接続されている。また、データ制御部20には、CCDカメラ8を介して撮影された着弾点の撮影データを記憶する撮影データ記憶部26及び投影映像と撮影映像との調整に用いられる情報等を記憶するデータ記憶部28が接続されている。
【0019】
映像データ記憶部24には、プロジェクタ6によりスクリーン2に投影される映像データ、即ち、プロジェクタ6によりスクリーン2に投影される調整画像のデータ及び訓練映像を示すデータが記憶されている。ここで、調整画像とは、CCDカメラ8により撮影される映像(撮影映像)の座標を、プロジェクタ6によりスクリーン2に投影される映像(投影映像)の座標に変換するための調整を行う際に用いられる画像であり、例えば、緑色で丸型の画像等が用いられる。また、訓練映像とは、例えば、コンビニエンスストアから逃亡する強盗犯等を標的とした動画像である。なお、1秒間の動画像は数10フレーム(例えば30フレーム)の静止画像により構成されており、映像データ記憶部24には、訓練映像である動画像を構成する全フレームの静止画像が記憶されている。また、各静止画像における標的(犯人)の位置を示すデータ、例えば、標的の位置を示す座標等が映像データ記憶部24に記憶されている。
【0020】
また、撮影データ記憶部26には、CCDカメラ8により撮影される撮影映像のデータ、即ち、CCDカメラ8により撮影された調整画像や、スクリーン2におけるレーザ弾の着弾点を示すデータが記憶される。なお、CCDカメラ8には、調整画像を撮影する際には、例えば、調整画像の色彩である緑色に対応する波長の光を良好に透過させる光学フィルタが装着され、着弾点を撮影する際には、レーザ弾として用いられるレーザ光の波長の光を良好に透過させる光学フィルタが装着される。従って、CCDカメラ8においては、着弾点を撮影する際には、プロジェクタ6によりスクリーン2に投影される訓練映像は撮影されず、レーザ弾の着弾点、即ち、スクリーン2に照射されたレーザ光の点(着弾点)のみが撮影される。
【0021】
また、データ記憶部28には、座標変換を行うための調整、即ち、プロジェクタ6によりスクリーン2に投影される投影映像におけるx−y座標系の座標と、CCDカメラ8により撮影される撮影映像におけるX−Y座標系の座標とを一致させる座標変換を行うために用いられる設定情報が記憶されている。ここで、設定情報については、以下に示す図4を用いて説明する。
【0022】
図4は、データ記憶部28に記憶されている調整画像が基準範囲及び基準位置に投影された状態を示す図である。図4においては、スクリーン2と、プロジェクタ6及びCCDカメラ8とが所定の位置に、即ち、スクリーン2の略中心から延びる法線上に、スクリーン2から、例えば、4mの距離を隔てて対向する位置に設置された場合に、プロジェクタ6によりスクリーン2に投影された調整画像30を含む投影映像40と、CCDカメラ8により撮影される撮影映像50とを示している。また、図4に示すように、調整画像30の中心、投影映像40に設定されたx−y座標系の原点(0,0)、撮影映像50に設定されたX−Y座標系の原点(0,0)が一致するように、スクリーン2、プロジェクタ6及びCCDカメラ8がそれぞれ所定の位置に配置されている。ここで、スクリーン2とプロジェクタ6及びCCDカメラ8との間の距離及びスクリーン2に対するプロジェクタ6及びCCDカメラ8の配置位置を示すデータ、調整画像30の基準範囲を示す例えば、調整画像30の半径を示すデータ、調整画像30の基準位置を示す例えば、調整画像30の中心を示す座標(0,0)、調整画像30とX(x)軸との交点を示す座標(−30,0)、(30,0)、調整画像30とY(y)軸との交点を示す座標(0,30)、(0,−30)を含む情報が、設定情報としてデータ記憶部28に記憶される。なお、調整画像30の基準位置を示すデータとして記憶される座標を用いて、調整画像30の半径が算出される。
【0023】
次に、図5のフローチャートを参照して、この発明の実施の形態に係る射撃訓練システムにおける座標変換の処理について説明する。まず、図1に示すように、プロジェクタ6及びCCDカメラ8を、スクリーン2の略中心から延びる法線上に位置するように配置する。この時、プロジェクタ6及びCCDカメラ8は、プロジェクタ6の投影レンズの中心と、CCDカメラ8の撮影レンズの中心とが同一鉛直線上に位置するように配置され一体化されており、プロジェクタ6及びCCDカメラ8は、スクリーン2から所定の距離、例えば、4〜6m等の範囲内において任意の距離を隔てて配置される。
【0024】
次に、制御装置10による制御に基づいて、プロジェクタ6を介して調整画像をスクリーン2に投影する(ステップS10)。即ち、映像データ記憶部24に記憶されている緑色で丸型の画像データが通信制御部22を介して制御装置10からプロジェクタ6に送信され、プロジェクタ6において、受信された映像データに基づき緑色で丸型の調整画像がスクリーン2に投影される。なお、調整画像は、プロジェクタ6により映像が投影される範囲の中心に位置するようにスクリーン2に投影される。
【0025】
次に、スクリーン2に投影された調整画像を、制御装置10による制御に基づいてCCDカメラ8により撮影する(ステップS11)。なお、CCDカメラ8により撮影された調整画像の撮影データは、CCDカメラ8から制御装置10に送信される。そして、制御装置10において、CCDカメラ8から送信された調整画像の撮影データが通信制御部22を介して受信され、制御装置10の撮影データ記憶部26に記憶される。
【0026】
図6は、実施の形態に係る射撃訓練システムにおいて撮影された調整画像の一例を示す図である。なお、調整画像32は、図6に示すように、調整画像32の中心と投影映像42の中心とが一致するように、即ち、投影映像42に設定されたx−y座標系における原点と調整画像32の中心とが一致するようにスクリーン2に投影されている。
【0027】
次に、ステップS11において撮影された調整画像に基づいて、スクリーン2に投影された調整画像の範囲(投影範囲)及び位置(投影位置)を検出する(ステップS12)。例えば、図6に示すように、撮影映像50の中心を原点とするX−Y座標系を設定する。そして、撮影映像50のX−Y座標系における撮影された調整画像32の中心を示す座標、中心を通りX軸と平行な線分と調整画像32との交点を示す座標及び中心を通りY軸と平行な線分と調整画像32との交点を示す座標を検出する。そして、検出された座標に基づいて、調整画像32の投影範囲を示すデータとして調整画像32の半径の値が算出されデータ記憶部28に記憶される。また、調整画像32の投影位置を示すデータとして、調整画像32の中心を示す座標等の検出された座標がデータ記憶部28に記憶される。
【0028】
次に、ステップS12において検出された調整画像の投影範囲と、設定情報に含まれる調整画像の基準範囲に基づいて、調整画像の投影倍率を算出する(ステップS13)。例えば、撮影データ記憶部26に投影範囲として記憶されている調整画像32(図6参照)の半径として「40」が記憶されており、データ記憶部28に基準範囲として記憶されている調整画像30(図4参照)の半径として「30」が記憶されているとする。この場合には、投影倍率として「40/30」が算出される。なお、算出された投影倍率は、データ記憶部28に記憶される。
【0029】
次に、ステップS12において検出された投影位置と、設定情報に含まれる調整画像の基準位置とに基づいて、調整画像のずれ量を算出する(ステップS14)。例えば、撮影データ記憶部26に投影位置として記憶されている調整画像32(図6参照)の中心を示す座標(−150,100)と、データ記憶部28に基準位置として記憶されている調整画像30(図4参照)の中心を示す座標(0,0)とを用いて、X軸方向のずれ量「−150」、Y軸方向のずれ量「+100」が算出される。なお、算出されたずれ量は、データ記憶部28に記憶される。
【0030】
次に、CCDカメラ8により撮影される映像(撮影映像)のX−Y座標系における座標を、プロジェクタ6により投影される映像(投影映像)のx−y座標系における座標に変換するための調整を行う(ステップS15)。例えば、投影倍率が「40/30」であり、ずれ量がX軸方向「−150」、Y軸方向「+100」となっている場合には、投影映像におけるx−y座標系と、撮影映像におけるX−Y座標系との投影倍率及びずれ量を以下の数式(1)により示すことができる。
(x,y)={40/30(X−150)、40/30(Y+100)}・・・(1)
ここで、(x,y)は、投影映像のx−y座標系における座標を示し、(X,Y)は、撮影映像のX−Y座標系における座標を示している。従って、数式(1)を用いることにより、撮影映像のX−Y座標系における座標を、投影映像のx−y座標系における座標に変換し、両座標系を正確に対応させることができる。なお、上述の数式(1)は、座標変換の際に用いられる調整結果としてデータ記憶部28に記憶される(ステップS16)。
【0031】
次に、この発明の実施の形態に係る射撃訓練システムを用いた射撃訓練について説明する。まず、図1に示すように、スクリーン2、プロジェクタ6及びCCDカメラ8をそれぞれ所定の位置に配置し、図5のフローチャートにおける処理と同様の処理により、スクリーン2に投影された映像をCCDカメラ8により撮影した撮影映像に設定されたX−Y座標系における座標を、プロジェクタ6によりスクリーン2に投影される投影映像に設定されたx−y座標系における座標に変換するための調整を行う。
【0032】
次に、プロジェクタ6により訓練映像をスクリーン2に投影する。ここで、スクリーン2に複数の射撃手が同時に射撃を行う場合には、まず、各射撃手の拳銃から照射されるレーザ光の光束形態を示すデータを、図示しない入力部を介して制御装置10に入力することによって、予め各拳銃からの光束形態を登録する。
【0033】
図7は、この発明の実施の形態に係る拳銃から照射されるレーザ光の光束形態の一例を示す図である。3人の射撃手が射撃訓練を行う場合には、レーザ光の光束形態として、例えば、図7(a)〜(c)において黒色で示すように、(a)丸、(b)四角、(c)三角の形状を用いる。なお、レーザ光の光束形態は、射撃手が用いる拳銃の銃身に、例えば、コルク等で形成された光束形態整形部材(例えば、図8参照)等を装着することにより図7(a)〜(c)に示すような形状に光束を整形することができる。また、図7に示す各形状にレーザ光を整形する図8に示す光束形態整形部材には、各形状を示す識別番号が付されている。
【0034】
従って、訓練を行う射撃手は、例えば、訓練に用いる拳銃の登録番号と、該登録番号に対応させて拳銃に装着する光束形態整形部材の識別番号とを、図示しない入力部を介して制御装置10に入力する。制御装置10においては、入力された拳銃の登録番号と光束形態整形部材の識別番号とを対応させた判別情報がデータ記憶部28に記憶される。
【0035】
次に、射撃手は、光束形態整形部材が装着された拳銃4(図1参照)を用いて、図1に示すように、プロジェクタ6によりスクリーン2に投影された訓練映像に含まれる標的に対してレーザ弾を発射する。なお、図1においては図示を省略しているが、スクリーン2に投影された訓練映像に含まれる標的に対して、複数の射撃手(3人)が同時にレーザ弾を発射している。
【0036】
ここで、訓練映像に含まれる標的に対して発射されたレーザ弾の着弾点は、CCDカメラ8により撮影されている。このCCDカメラ8においては、レーザ弾の着弾点を撮影する際には、レーザ弾として用いられているレーザ光、即ち、このレーザ光の波長を有する光を良好に透過させる光学フィルタが撮影レンズに装着されている。従って、CCDカメラ8においては、訓練映像は撮影されずレーザ弾の着弾点が撮影される。なお、CCDカメラ8により撮影された着弾点のデータは、制御装置10に送信され、撮影データ記憶部26(図3参照)に記憶される。
【0037】
次に、制御装置10において、訓練映像中におけるレーザ弾の着弾点を検出する。即ち、プロジェクタ6による訓練映像の投影と、CCDカメラ8による着弾点の撮影とは、制御装置10による制御に基づいて同期をとって行われている。そのため、プロジェクタ6によりスクリーン2に投影される訓練映像と、CCDカメラ8により撮影される着弾点の映像とが対応付けられている。従って、映像データ記憶部24に記憶されている訓練映像を構成する静止画像の中で、撮影された着弾点に対応する静止画像における標的の位置を示す座標と、撮影データ記憶部26に記憶されている着弾点のデータにより示される着弾点の座標とを用いて、訓練映像中におけるレーザ弾の着弾点を検出する。
【0038】
訓練映像中におけるレーザ弾の着弾点を検出する際には、まず、CCDカメラ8により撮影されたレーザ弾の着弾点の映像を用いて着弾点の着弾点形状を判別し、判別された着弾点形状から何れの拳銃から発射されたレーザ弾の着弾点であるかを判別する。即ち、レーザ弾の着弾点の映像に所定の画像処理を施すことによって各着弾点の着弾点形状、例えば、図7(a)〜(c)に示すような着弾点形状を判別する。次に、判別された着弾点形状と、データ記憶部28に記憶されている判別情報とを用いて、各着弾点形状に対応する拳銃を判別する。
【0039】
次に、何れの拳銃からであるかが判別されたそれぞれの着弾点の座標を、データ記憶部28に記憶されている調整結果を用いて静止画像における座標系における座標に変換する。例えば、調整結果として、データ記憶部28に上述の数式(1)が記憶されている場合には、着弾点の座標(XHP,YHP)を数式(1)の(X,Y)に当てはめ、静止画像の中心を原点とするx−y座標系における着弾点の座標(xHP,yHP)に変換する。
【0040】
次に、変換された着弾点の座標が、標的の座標により示される標的の位置と重複している場合には、レーザ弾が標的に的中したと判定される。なお、レーザ弾が標的に的中したか否かの判定は、着弾点毎に行われる。次に、何れかのレーザ弾が標的に的中したと判定された場合には、プロジェクタ6による訓練映像の投影を停止し、静止画像上における各着弾点を、視覚的に識別可能に示した画像がプロジェクタ6を介してスクリーン2に投影される。例えば、拳銃Aによる着弾点を丸、拳銃Bによる着弾点を四角、拳銃Cによる着弾点を三角等、各拳銃による着弾点を視覚的に識別可能な状態で示した画像がスクリーン2に投影される。なお、静止画像上における着弾点を示した画像は、着弾点検出結果としてデータ記憶部28に記憶される。また、何れのレーザ弾も標的に的中していないと判定された場合には、プロジェクタ6による訓練映像の投影が継続され、射撃訓練が行われる。
【0041】
この発明の実施の形態に係る射撃訓練システムによれば、複数人が同一の標的に対して同時に射撃を行った場合に、着弾点の着弾点形状に基づいて、該着弾点が何れの拳銃によるものかを判別することにより射撃手を判別している。即ち、光束形態整形部材を拳銃に装着することにより整形された光束形態のレーザ光の着弾点の映像に画像処理を施すことにより着弾点形状を判別し射撃手を判別している。従って、複数人が同時に訓練を行うことができる射撃訓練システムを低コストで提供することができる。
【0042】
また、レーザ光の光量等の光学的特性を測定する必要がないため、射撃訓練システムを設置する場所の明るさ等を測定し、測定された値に基づいて閾値を設定等する必要がない。即ち、射撃訓練システムを設置する毎に、設置場所の明るさの測定・閾値の設定等の調整を行う必要がないため、任意の場所に容易、かつ、迅速に射撃訓練システムを設置することができる。
【0043】
また、この発明の実施の形態に係る射撃訓練システムによれば、レーザ弾として不可視領域の波長を有するレーザ光である赤外線を用いている。従って、着弾点形状や着弾点面積を認識することにより射撃手に違和感を与えることを防止することができる。
【0044】
なお、上述の実施の形態に係る射撃訓練システムにおいては、着弾点の映像を用いて着弾点形状を判別することにより、該着弾点が何れの拳銃によるものかの判別、即ち、該着弾点が何れの射撃手によるものかを判別しているが、着弾点形状以外のものにより判別するようにしてもよい。例えば、図9の(a)〜(c)に示すように、大きさの異なる光束形態のレーザ光を拳銃によりスクリーン上に照射し、スクリーン上に照射されたレーザ光の着弾点面積を検出する。次に、検出された着弾点面積と予め設定されている着弾点面積の閾値とに基づいて、射撃手を判別するようにしてもよい。また、着弾点面積に換えて着弾画素数を検出し、予め設定された着弾画素数の閾値とに基づいて、射撃手を判別するようにしてもよい。
【0045】
また、図10に示すような光束形態のレーザ光を用い、着弾点形状の開口部の位置、例えば、上、下、右、左の何れの方向に開口部が位置しているかを判別することによって、射撃手を判別するようにしてもよい。この場合には、同一の光束形態に整形する光束形態整形部材を拳銃に装着する際に、開口部の回転位置を変更することのみによって、複数の射撃手が同一の射撃訓練システムにおいて同時に訓練を行うことができる。
【0046】
また、上述の実施の形態に係る射撃訓練システムにおいては、標的にレーザ弾が的中したと判定された段階で訓練映像の投影を中止する場合を例としているが、その他のパターンにより射撃訓練を行ってもよい。即ち、訓練映像を所定時間、例えば、15秒間スクリーンに投影し、訓練映像がスクリーンに投影されている間に、予め設定されている回数、訓練映像に含まれる標的に対してレーザ弾を発射する。そして、訓練映像の投影が終了した後に、レーザ弾の着弾点を検出し、何発のレーザ弾が標的に的中したかを判定等することにより、射撃訓練を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の実施の形態に係る射撃訓練システムの概略を説明するための図である。
【図2】この発明の実施の形態に係る射撃訓練システムのブロック構成図である。
【図3】この発明の実施の形態に係る制御装置のブロック構成図である。
【図4】この発明の実施の形態に係る調整画像の基準範囲及び基準位置の一例を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態に係る制御装置における処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態に係る調整画像の投影範囲及び投影位置の一例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態に係る光束形態の一例を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態に係る光束形態整形部材の一例を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態に係る光束形態の他の例を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態に係る光束形態の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
2・・・スクリーン、4・・・拳銃(レーザ拳銃)、6・・・プロジェクタ、8・・・CCDカメラ、10・・・制御装置、20・・・データ制御部、22・・・通信制御部、24・・・映像データ記憶部、26・・・撮影データ記憶部、28・・・データ記憶部、30、32・・・調整画像、40、42・・・投影映像、50・・・撮影映像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーンに訓練映像を投影する映像投影装置と、前記スクリーンに投影された前記訓練映像に対してそれぞれが異なる光束形態を有するレーザ光を照射する複数のレーザ拳銃と、前記複数のレーザ拳銃により照射されたレーザ光の着弾点を撮影する撮影装置と、前記映像投影装置及び前記撮影装置を制御する制御装置とを備える射撃訓練システムにおいて、
前記制御装置は、
前記撮影装置の前記着弾点撮影手段により撮影された前記着弾点の映像を記憶する着弾点映像記憶手段と、
前記着弾点映像記憶手段に記憶されている前記着弾点の映像を用い、該着弾点が前記複数のレーザ拳銃の中のどのレーザ拳銃によるものかを判別する判別手段と
を備えることを特徴とする射撃訓練システム。
【請求項2】
前記判別手段は、前記着弾点の映像から着弾点の着弾点形状を判別することにより、該着弾点が前記複数のレーザ拳銃の中のどのレーザ拳銃によるものかを判別することを特徴とする請求項1記載の射撃訓練システム。
【請求項3】
前記判別手段は、前記着弾点の映像から着弾点の着弾点面積を判別することにより、該着弾点が前記複数のレーザ拳銃の中のどのレーザ拳銃によるものかを判別することを特徴とする請求項1記載の射撃訓練システム。
【請求項4】
前記レーザ光は、不可視領域の波長を有するレーザ光であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の射撃訓練システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−207977(P2006−207977A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24086(P2005−24086)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)
【Fターム(参考)】