導光層を含む物品
【課題】第1の領域から第2の領域に光を導き、第2の領域を発光させることができる物品を提供する。
【解決手段】第1の領域51と第2の領域52とを繋ぐように、記録媒体90の上に直にまたは他の層を挟んで塗布された透光性のインクにより形成された導光層と、第2の領域52の導光層の上に塗布された透光性のインクにより形成された発光する第1のカラー画像65と、第2の領域52の周囲の導光層の上に塗布された遮光性のインクにより形成された遮光層63とを有する。
【解決手段】第1の領域51と第2の領域52とを繋ぐように、記録媒体90の上に直にまたは他の層を挟んで塗布された透光性のインクにより形成された導光層と、第2の領域52の導光層の上に塗布された透光性のインクにより形成された発光する第1のカラー画像65と、第2の領域52の周囲の導光層の上に塗布された遮光性のインクにより形成された遮光層63とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を光らせることができる物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光硬化型あるいは熱硬化型といった樹脂性または反応性のインクを用いるインクジェット記録装置が知られている。光硬化型のインクを用いる場合、形成される画像が耐侯性に優れるなどのメリットがあるが、記録媒体に吸収されにくいため、記録媒体の表面に凹凸が生じる。
【0003】
特許文献1に、ラミネート加工を行うことなく、画像表面をラミネートしたのと同様な仕上がりを実現するとともに、画像の使用目的やユーザの好み等に応じて、画像の光沢感の調整を行うことのできるインクジェット記録装置を提供することが記載されている。引用文献1に記載されたインクジェット記録装置は、記録媒体に対してカラーインクを吐出するカラーインク用ヘッドと、透明インクを吐出する透明インク用ヘッドと、カラーインク用ヘッド及び透明インク用ヘッドより吐出されるインクの各ドット毎の総液滴数をパターンとして規定した複数の吐出総液滴数パターンを記憶するROMと、吐出総液滴数パターンに規定される各ドットのインクの総液滴数からカラーインク用ヘッドより吐出されるカラーインクの液滴数を減算した液滴数の透明インクを吐出させるように透明インク用ヘッドを制御する制御部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−35688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポスターやPOPなどの分野では、顧客の注目を集める、あるいは、デザイン性を高めるためなどの目的で、特定の箇所を発光させることが要望されている。LEDなどの比較的小型の光源を組み合わせることにより所望の箇所を光らせることは可能である。しかしながら、光源をポスターの上に配置しようとすると、デザインの自由度は低く、通常のポスターを印刷するのと同様に製造することは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、第1の領域と第2の領域とを繋ぐように、記録媒体の上に直にまたは他の層を挟んで塗布された透光性のインクにより形成された導光層と、第2の領域の導光層の上に塗布された透光性のインクにより形成された第1の画像と、第2の領域の周囲の導光層の上に塗布された遮光性のインクにより形成された遮光層とを有する物品である。
【0007】
この物品においては、第1の領域と第2の領域とを繋ぐように透光性のインクにより導光層が形成されているため、第1の領域から第2の領域に光を導くことができる。このため、第1の領域から光を供給することにより、導光層の第2の領域に透光性のインクにより形成された第1のカラー画像を発光させることができる。また、第2の領域の周囲を遮光性のインクにより遮光することにより、導光層から光が漏れることを防止できる。
【0008】
この物品は、第2の領域の第1の画像を、LEDなどの光源により形成したり、光源により直に照明したりするのではなく、導光層を用いて第1の領域から第2の領域に光を導き、さらに、その導光層を透光性のインクにより形成している。したがって、透光性のインクと、遮光性のインクとを用いることにより、第2の領域に形成された第1の画像が光るポスターなどの物品を形成できる。すなわち、印刷により所定の箇所の画像が光る物品を容易に製造できる。このため、簡易に、さまざまなデザインの光物品を製造し、提供できる。
【0009】
この物品は、遮光層の上に塗布された透光性または遮光性のインクにより第2の画像をさらに有していてもよい。第2の画像は光らないので、発光する第1の画像と、非発光の第2の画像とを有する物品を提供できる。
【0010】
また、この物品においては、記録媒体と導光層との間に塗布された遮光性のインクにより形成された下地層をさらに有していてもよい。下地層を設けることにより、透光性の記録媒体を用いた物品であっても、導光層からの光漏れを抑制し、所定の場所の画像を光らせることができる。
【0011】
この物品において、透光性のインクは、たとえば、有色透明または有色半透明な光硬化型のインク、たとえば、UVインクのような樹脂性あるいは反応性のカラーインクであってもよい。導光層を有色透明なインクにより形成することにより、第2の画像を所定の色で照明できる。また、第1の画像をカラー画像にすることも可能となる。遮光性のインクは、たとえば、遮光性を有する(典型的には不透明な)光硬化型のインク、たとえば、UVインクのような樹脂性あるいは反応性のインクを用いることができる。遮光性のインクの色は、光を遮ることができるもの(不透明なインク)であれば特に限定されないが、画像や導光層に影響を及ぼしにくい色、たとえば、白色などの無彩色または淡い色であることが好ましい。原色あるいは原色に近い色のインクを遮光性のインクとして採用する場合は、遮光性のインクによる色を考慮して画像を形成する透光性のインクの色を選択することが望ましい。
【0012】
遮光性のインクは、光反射性を有するものであってもよい。特に、下地層を光反射性のインクによって形成することにより、導光層に導かれた光を下地層により反射させて、第2の領域に効率よく導くことができる。
【0013】
また、この物品において、第2の領域と、遮光層が形成された遮光領域とにおいて記録媒体の上に塗布されたインクの液滴の総和、すなわち、透光性のインクの液滴と遮光性のインクの液滴との総和(総液滴数)が等しいことが好ましい。画像(第1および/または第2の画像)が形成された部分を含め、凹凸がない、または凹凸が抑制された平坦な面を含む物品を提供できる。また、透光性のインクの液滴と遮光性のインクの液滴との総和を画像(第1および/または第2の画像)の形状に合わせて変えたり、起伏を持たせるように変えることも可能である。この場合には、立体感のある画像を備えた物品を提供できる。
【0014】
本発明の異なる態様の1つは、上記に記載の物品と、第1の領域に光を入射させる照明装置とを含むシステムである。これにより、第2の領域の第1の画像を照明装置により光らせるシステムを提供できる。
【0015】
本発明の他の態様は、第1の領域から第2の領域に光を導き、第2の領域を発光させる物品を製造する方法である。この方法は以下の工程を有する。
・第1の領域と第2の領域とを繋ぐように、記録媒体の上に直にまたは他の層を挟んで透光性のインクにより導光層を形成すること(導光層を形成する工程)。
・第2の領域の周囲の導光層の上に遮光性のインクにより遮光層を形成すること(遮光層を形成する工程)。
・第2の領域の導光層の上に透光性のインクにより第1の画像を形成すること(第1の画像を形成する工程)。
【0016】
この方法は、さらに、遮光層の上に透光性または遮光性のインクにより第2の画像を形成する工程(第2の画像を形成する工程)を備えていてもよい。
【0017】
この方法は、さらに、導光層を形成することの前に、記録媒体の上に(直にまたは他の層を挟んで)遮光性のインクにより下地層を形成する工程(下地層を形成する工程)を備えていてもよい。典型的な遮光性のインクは光反射性のインクである。
【0018】
第1の画像を形成することは、以下の工程を有することが好ましい。
・導光層の上に複数色のカラーインクの少なくとも1つを吐出して第1のカラー画像の各画素の色を調整すること。
・上記の色を調整すること(色調整する工程)の前に、各画素を形成するインクの総液滴数が所定のパターンになるように導光層の上に下地用の透光性のインク(厚み調整用の透光性のインク)を吐出すること。
【0019】
また、第2の画像を形成することは、以下の工程を有することが好ましい。
・遮光層の上に複数色のカラーインクの少なくとも1つを吐出して第2のカラー画像の各画素の色を調整すること
・上記の色を調整すること(色調整する工程)の前に、各画素を形成するインクの総液滴数が所定のパターンになるように遮光層の上に下地用のインク(厚み調整用の遮光性のインク)を吐出すること。
【0020】
この物品の製造にはインクジェットタイプのプリンタが適しており、導光層を形成することは、インクジェットタイプのプリンタにより記録媒体の上に直にまたは他の層を挟んで透光性のインクドットを形成することを含み、遮光層を形成することは、プリンタにより遮光領域の導光層の上に遮光性のインクドットを形成することを含むことが望ましい。
【0021】
さらに、本発明の異なる態様の1つはプログラムである。プログラムは以下の工程を含む。
・コンピュータがインクジェットタイプのプリンタにより第1の領域と第2の領域とを繋ぐように、記録媒体の上に直にまたは他の層を挟んで透光性のインクにより導光層を設けること。
・第2の領域の周囲の遮光領域の導光層の上に遮光性のインクにより遮光層を設けること。
・第2の領域の導光層の上に透光性のインクにより第1の画像を設けること。
【0022】
このようにすることにより、厚みが所望のパターンとなるようなカラー画像(第1および/または第2のカラー画像)を形成することができる。典型的なパターンは、各ドットを形成するインクの総液滴数を一定にしたものであり、このようにすることにより、凹凸がない、または凹凸が抑制された平坦な面を持った、カラー画像(第1および/または第2のカラー画像)を形成することができる。各ドットを形成するインクの総液滴数をカラー画像の形状に合わせて変えたり、起伏を持たせるようにすることも可能である。この場合、立体感のあるカラー画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態にかかるポスターを示す斜視図。
【図2】ポスターと照明装置とを組み合わせたシステムを示す斜視図。
【図3】照明装置を含むボックスとポスターとを組み合わせたシステムを示す斜視図。
【図4】ポスターを各層に分解して示す斜視図。
【図5】図5(a)〜図5(d)は各層を平面的に示す図。
【図6】各層に分解して示す斜視図であって、光源を配置した状態を示す図。
【図7】ポスターの構成を、断面図を用いて模式的に示す図。
【図8】ポスターを製造するシステムの一例の概略構成を示す図。
【図9】ポスターの製造方法の一例を説明するフローチャート。
【図10】異なるポスターを示す斜視図。
【図11】ポスターと照明装置とを組み合わせたシステムを示す斜視図。
【図12】照明装置を含むボックスとポスターとを組み合わせたシステムを示す斜視図。
【図13】図13(a)〜図13(f)はポスターの各層を平面的に示す図。
【図14】ポスターの構成を、断面図を用いて模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる物品を斜視図により示している。この物品50aは、記録媒体90の上に、透光性のインクと遮光性のインクとを印刷することにより形成されたポスターである。ポスター50aは、透光性のインクが表面に現れた第1の領域51および第2の領域52と、遮光性のインクが表面に現れた遮光領域59とを有するポスターである。ポスター50aは、さらに、以下で説明するように、第1の領域51から第2の領域52へ光を導く導光層を有し、第1の領域51を照明光の導入部68として、照明光により第2の領域52に形成された第1の画像(第1のカラー画像)65を発光させることができる。また、ポスター50aは、遮光領域59に形成された第2の画像66を備えている。
【0025】
図2に示すように、ポスター50aと、第1の領域51に面して設置された照明装置53とを有する表示システム(光るポスター)1においては、ポスター50aの一部の画像65を照明装置(光源)53からの光により照明することができる。したがって、図3に示すように、照明装置53を適当なボックス5またはポスター50aの置き台に隠すことにより、光る画像65を備えた表示システム1を提供できる。この表示システム1においては、光る画像65と光らない画像66との組み合わせにより多種多様な表現が可能であり、情報をより的確に伝達したり、様々な表現をユーザーに提供して楽しませたりすることができる。
【0026】
図4に、ポスター50aの構造を展開して示している。このポスター50aは、記録媒体(メディア)90の上に透光性のインクと遮光性のインクとを重ねて塗布することにより製造されている。より詳しくは、このポスター50aは、インクジェットタイプのプリンタにより、記録媒体90の上に透光性のインク81と遮光性のインク82とを重ねて印刷(塗布)することにより製造されている。
【0027】
図4は、記録媒体90の上にインク81および82により形成された構造を適当な層に分けて示している。また、図5に、各層の平面的な構成を示している。これらの図に示すように、ポスター50aは、下側より、記録媒体(メディア)90と、その上に形成された下地層61と、その上に形成された導光層(導光路、導光領域)62および遮光層63と、さらに、それらの上に形成された画像65および66とを有する。
【0028】
図4および図5(a)に示すポスター50aの最下層(第1層)71は、記録媒体(メディア)90と、その上に遮光性のインク82を塗布することにより形成された下地層61とを含む。記録媒体90の典型的なものは、普通紙、再生紙、光沢紙などの各種紙である。記録媒体90は、各種布地、各種不織布などの紙以外のシート状の部材、樹脂、金属、ガラス等の材質からなるシート状の部材であってもよい。また、記録媒体90は不透明な部材であってもよく、透明な部材であってもよい。記録媒体90が透明な部材の場合は、本例のように遮光性のインクドット82を記録媒体90の上に形成し、下地層61を設けることが好ましい。
【0029】
図4および図5(b)に示す第2層72は最下層71の上に形成された層であり、透光性のインク81を塗布することにより形成された導光層62と、遮光性のインク82を塗布することにより形成された遮光層63とを含む。導光層62は、第2層72の面内(層内)を所定のルートを描くように面に沿った方向(たとえば水平方向)に延びている。遮光層63は、導光層62の両側に沿って、導光層62を除く第2層72を埋めるように形成されている。
【0030】
透光性のイン81クおよび遮光性のインク82の一例は光硬化型の樹脂性のインク、たとえば、紫外線を照射することにより硬化する紫外線硬化型のインク(UVインク)である。紫外線硬化型のインクとしては、重合性化合物としてラジカル重合性化合物を含むラジカル重合系インク、カチオン重合性化合物を含むカチオン重合系インク、ラジカル重合系インクとカチオン重合系インクとを複合させたハイブリッド型インクなどを挙げることができる。光硬化型のインクは、紫外線以外の光で重合して硬化する重合性化合物と、紫外線以外の光、たとえば電子線、X線、赤外線等で重合性化合物同士の重合反応を開始させる光開始剤とを含むものであってもよい。また、インクは、光硬化型のインクに限定されるものではなく、熱硬化型などの樹脂性または反応性のインクであってもよい。
【0031】
図4および図5(c)に示す第3層73は第2層72の上に形成された層であり、透光性のインク81を塗布することにより形成された導光層62と、遮光性のインク82を塗布することにより形成された遮光層63とを含む。導光層62は、第1の領域51および第2の領域52を形成するように第3層73を厚み方向(たとえば垂直方向)に横切るように延びている。遮光層63は、第2の領域52の下方で第3層73を貫通する導光層62を除き、第2層72の導光層62の上を含め、第3層73の他の部分を埋めるように形成されている。したがって、第3層73の遮光層63は、第2の領域52の周囲の導光層62の上を含めて形成されており、導光層62から光がポスター50aの表面に漏れないようになっている。
【0032】
これらの層71〜73の遮光性の下地層61および遮光層63を形成する遮光性のインク82は、白色や銀色などの反射率が高い色のUVインクである。透光性のインク81により形成された導光層62を、光反射型の遮光性のインク82により形成された下地層61および遮光層63により挟み込む(囲い込む)ことにより、導光層62により伝達される照明光が漏れるのを防止できる。
【0033】
導光層62は、第1の領域51と第2の領域52とを繋ぐように印刷されている。導光層62を形成する透光性のインク81の典型的なものは無色透明のUVインクである。導光層62により白色光を第2の領域52に供給できるので、画像65を適当な色の透光性のインクを用いて形成することにより所望の色に輝く画像65を形成しやすい。有色透明のUVインクを塗布することにより導光層62を形成してもよい。
【0034】
図4および図5(d)に示す第4層74は第3層73の上に形成された層であり、第1の領域51に透光性のインク81を塗布することにより形成された照明光の導入部68と、第2の領域52に透光性のインク81を塗布することにより形成された第1の画像65と、遮光領域59に透光性のインク81を塗布することにより形成された第2の画像66と、遮光領域59のその他の部分を遮光性のインク82により埋めた遮光層63とを含む。 本図の一点鎖線69から上がポスター50aとして実際に見せる領域であり、一点鎖線69から下は図3に示した照明装置を含むボックス5などによりカバーされる領域である。ポスター50aの見せ方は上記に限定されず、一点鎖線69から下を覆う代わりに、第1の領域51の全体を覆うような照明装置53を取り付けることも可能である。
【0035】
第2の領域52に形成された第1のカラー画像65および遮光領域59に形成された第2のカラー画像66は、それぞれ導光層62(第2の領域52)の上および遮光領域59の上に複数色の透光性のカラーインク81をドット状に塗布(印刷)することにより形成されている。なお、以降において説明するインク81および82のドット状の形態は、ポスター50aを製造するためにインクを塗布する過程で形成される状態を示しており、製造されたポスター50aにそれぞれのインクがドット状で観察されても、観察されなくてもよい。
【0036】
図6に、ポスター50aに照明装置53から照明光9を入れた様子を展開して示している。照明装置53からの照明光9は、第4層74の第1の領域51の導入部68から導光層62に入り、第2層72の導光層62を通って第4層74の第2の領域52に到達する。そして、第2の領域52を照明光9により照らし、第2の領域52の第1の画像65を発光させる。
【0037】
図7にポスター50aの一部の層構造をドットの状態で模式的に示している。図7において、白抜きのドットは無色透明のインク81を示し、二重線が付してあるドットは遮光性の白色のインク82を示す。さらに、左上から右下に向かう斜線が付してあるドットは透光性のインク81のうち、さらにイエロー(Y)のインク83Yを示す。点柄の模様が付してあるドットは、透光性のインク81のうち、さらに、マゼンタ(M)のインク83Mを示し、左下から右上に向かう斜線が付してあるドットは、透光性のインク81のうち、シアン(C)のインク83Cを示す。黒色のドットは、上記の各色のインクドットとともに用いられる黒色(ブラック(K))のインク83Kを示し、このインク83Kは透光性であっても遮光性であってもよい。
【0038】
図7に示すように、このポスター50aは、第1層71〜第4層74を含む。上述したように、照明装置(光源)53の照明光9は、第4層74の第1の領域51の導入部68からポスター50aの内部に入り、第3層73の第1の領域51を厚み方向に横切る導光層62、第2層72を面方向に延びた導光層62、第3層73の第2の領域52を厚み方向に横切る導光層62を通り、第4層74の第2の領域52のカラー画像65を照明する。第2層72を面方向に延びた導光層62の上側は第3層73の遮光層63により覆われ、また、第4層74の第2の領域52の周囲は遮光層63により囲われている。したがって、導光層62からの照明光9の漏れ出しを防止して、第2の領域52のカラー画像65を効率的に光らせることができる。
【0039】
この図では、第1層71〜第3層73は、それぞれ、厚み方向を1ドットで形成しているが、厚み方向を複数のドットで形成してもよい。さらに、このポスター50aにおいては、第1層71〜第4層74を構成する導光透光性のインク81の液滴と遮光性のインク82の液滴との総和TDN(画素(ピクセル)毎の液滴(ドット)の総和)がポスター50aの全体にわたり等しく(一定に)なっている。たとえば、図7に模式的に示したように、ポスター50aは、透光性の第2の領域52と遮光領域59とで、記録媒体90の上に吐出された液滴の総和TDNは「6」の一定の値になっている。したがって、内部に導光層62を含むポスター50aであるが、ポスター50aの表面はほぼ平坦となっており、表面に凹凸があって見栄えが悪くなったり、画像が破損したりすることを抑制できる。
【0040】
このポスター50aにおいては、第1層71から第3層73は厚みが等しいので、最上層(第4層)74を構成する総液滴数(総ドット数)TDNを画素毎に一定にすることにより平坦なポスターを提供できる。すなわち、ポスター50aにおいては、第1のカラー画像65が形成された第2の領域52と、第2のカラー画像66が形成された遮光領域59を含めて第4層74のインクの総液滴数(総ドット数)TDNを画素毎に一定にしている。
【0041】
第2の領域52においては、第1のカラー画像65を形成するために必要なドット数(液滴数)CNDを画素毎に予め求め、総液滴数TNDと画像に要するドット数CNDとの差分UDNを画素毎に計算し、それらの差分UDNのドット(液滴)を透光性のインク81により第3層73の導光層62の上に予め吐出する。このようなに、厚み調整用のドットを透光性のインク81により形成した後、カラー画像65をインク83Y、83M、83Cおよび83Kにより形成する。このため、第1のカラー画像65の発色用のインク83Y、83M、83Cおよび83Kによるドットは、第2の領域52の表面側に揃い、いっそう鮮明な第1の画像65を形成し、照明光9により輝かせることができる。
【0042】
第2のカラー画像66が形成されている遮光領域59においても同様に総液滴数TDNが制御されている。すなわち、第2のカラー画像66を形成するために必要なドット数(液滴数)CNDを画素毎に予め求め、総液滴数TNDと画像に要するドット数CNDとの差分UDNを画素毎に計算し、それらの差分UDNのドット(液滴)を遮光性のインク82により第3層73の遮光層63の上に予めと出する。厚み調整用のドットを遮光性のインク82により形成した後、第2のカラー画像66をインク83Y、83M、83Cおよび83Kにより形成する。このため、第2のカラー画像66の発色用のインク83Y、83M、83Cおよび83Kによるドットは、遮光領域59の表面側に揃い、いっそう鮮明な第2の画像66が得られる。
【0043】
さらに、第1および第2のカラー画像65および66の間は、総液滴数TDNを一定にするために形成された遮光性のインク82によりドットで埋められ、遮光層63となっている。したがって、発光するカラー画像65と、発光しないカラー画像66とを明確に分けることができる。
【0044】
図8は、ポスター50aを出力(製造)するシステムの一例を示している。このシステム100は、ホスト装置となるパーソナルコンピュータ(以下、PCと記載する)20と、PC20から供給されるデータを記録媒体(メディア)90に出力(印刷)するプリンタ(カラー画像を出力する装置)10とを含む。プリンタ10は、インクジェットプリンタであり、記録媒体90上を往復動するように設けられたヘッドユニット11と、ヘッドユニット11を支持するとともにこれを記録媒体90上において往復動させる駆動機構(不図示)とを有する。ヘッドユニット11は、往復動するシリアルタイプに限らず、ラインタイプ(ラインヘッド)であってもよい。
【0045】
プリンタ10は、さらに、記録媒体90をヘッドユニット11に対して送るための搬送装置(フィーダー)12と、これらを制御する制御装置(制御ユニット)13と、メモリ14とを含む。搬送装置12は、記録媒体90をヘッドユニット11に対して所定の姿勢、たとえば、水平に支持して搬送するための複数の搬送ローラ12aを備えている。搬送装置12は、ヘッドユニット11の動作に合わせて記録媒体90を搬送および停止させながら、記録媒体90を間欠的に搬送する。
【0046】
このプリンタ10のヘッドユニット11は、光硬化型のインク、たとえば紫外線を照射することにより硬化する紫外線硬化型のインク(UVインク)を吐出する。このため、本例のプリンタ10は、さらに、ヘッドユニット11に対して記録媒体90の搬送方向の下流側に設置された紫外線照射装置(UV照射装置)15を含む。
【0047】
プリンタ10にカラー画像を形成するためのデータを供給するPC20は、プロセッサ、メモリ、入出力装置などの汎用のコンピュータを実現するためのハードウェア資源を含む。PC20には、OS21と、OS21の上で動作するアプリケーションプログラム22とがインストールされており、文書や画像などを含むコンテンツを見たり、作製したり、編集したりできるようになっている。PC20には、さらに、コンテンツをプリンタ10で印刷する際に、コンテンツに含まれる文字、画像などの多値のデータを印刷用のデータ(たとえば2値データ)29に変換する機能を含むプリンタドライバ23がインストールされている。PC20において、プリンタドライバ23は、ハードディスク、ROM(不図示)などの記憶媒体に記録されたプログラムとして提供される。そして、プリンタドライバ23としての機能は、プロセッサ(不図示)がそのプログラムを実行することにより実現される。
【0048】
プリンタドライバ23は、ポスター50aの導光層62と遮光領域の上にカラー画像65および66を印刷する画像データ29を形成する機能23aと、それらの下地となる部分を形成する機能23bとを含む。下地を形成する機能23bは、第1の領域51と第2の領域52とを繋ぐように、記録媒体90の上に直にまたは他の層を挟んで透光性のインク81により導光層62を形成するデータを生成する機能23cと、第2の領域52の周囲の遮光領域59の導光層62の上に遮光性のインク82により遮光層63を形成するデータを生成する機能23dとを含む。
【0049】
プリンタ10のヘッドユニット11は、カラー画像65および66を記録媒体90に形成するために複数色のカラーインクを吐出する第1のヘッド部(第1のヘッド)11aとこれらのカラー画像に対して下地用となる透光性のインク81および遮光性のインク82を吐出する第2のヘッド部(第2のヘッド)11bとを含む。
【0050】
第1のヘッド部11aは、複数色の透光性のカラーインクをそれぞれ吐出するインクジェット方式の複数のノズルを含む。典型的な第1のヘッド11aは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のUVカラーインクを記録媒体90に吐出する4種類のインクジェット方式のノズルを含む。第1のヘッド部11aにおいては、第1および第2のカラー画像65および66のカラーの部分を形成する。
【0051】
第2のヘッド11bは、無色透明のUVインク81と白色(不透明な、遮光性を有する白色)のUVインク82を記録媒体90に吐出する2種類のインクジェット方式のノズルを含む。UV硬化型白色インクとしては、マーケム社製のUV白インク4600シリーズなどを挙げることができる。第2のヘッド部11bは、下地層61、導光層62、遮光層63、第1および第2のカラー画像65および66の厚み調整の部分を形成する。
【0052】
なお、第1のヘッド部11aにおいて吐出する複数のカラーインクの数および/または色はこれらに限定されるものではない。また、第2のヘッド部11bにおいて吐出するインクは、透光性のインクと遮光性のインクであれば、無色透明のインクと白色のインクに限定されるものではない。
【0053】
第2のヘッド部11bは、第1のヘッド部11aの紙送り方向(記録媒体90の搬送方向)の上流側に配置されており、第1のヘッド部11aに先立って、記録媒体90に画像に対して下地となる所定のUVインクを吐出する。
【0054】
プリンタ10のメモリ14の1つの機能は、PC20から供給されたデータを一時的に蓄積することである。メモリ14は、第1および第2のカラー画像65および66の各画素を形成するインクの総液滴数TDNの数および/またはパターン(関数)を蓄積するパターン記憶部30と、第1のヘッド部11a用のデータを蓄積する第1のバッファ(第1のヘッド部11aの出力用のバッファ)31と、第2のヘッド部11b用のデータを蓄積する第2のバッファ(第2のヘッド部11bの出力用のバッファ)32とを含む。第1のバッファ31には、プリンタドライバ23から供給される印刷用のデータ(第1のカラー画像65および第2のカラー画像66のデータ)29が格納される。第2のバッファ32には下地用のデータ(下地層61、導光層62および遮光層63のデータ)28が格納される。パターン記憶部30には、総液滴数TDNが固定値または関数で設定される。総液滴数TDNが固定値(コンスタント値)であれば、記録媒体90の上に一定の厚みのカラー画像が形成される。
【0055】
プリンタ10の制御ユニット13はCPUを含み、メモリ14に格納された処理プログラム19に従い、プリンタ10に含まれる各装置を制御する。たとえば、制御ユニット13は、ヘッドユニット11の駆動、第1のヘッド部11aおよび第2のヘッド部11bの動作、紫外線照射装置15の動作などを制御する。制御ユニット13は、1ドット当たりに各色のインクを1滴ずつ吐出する制御を行うものであってもよく、1滴の液滴量を小液滴量のインク液滴を複数発吐出して実現する、いわゆるマルチドロップ方式によりカラー画像の記録を行わせるものであってもよい。
【0056】
制御ユニット13は、下地形成機能(下地印刷機能)41と、差分計算機能42と、厚み調整用インク吐出機能43と、色調整機能(カラーインク吐出機能)44とを含む。
【0057】
下地形成機能41は、下地用のデータ28に基づき、記録媒体90の上に遮光性のインク82を塗布して下地層61を形成し、その下地層61の上に、第1の領域51と第2の領域52とを繋ぐように透光性のインク81を塗布して導光層62を形成し、導光層62の上であって第2の領域52の周囲に遮光性のインク82を塗布して遮光層63を形成する。
【0058】
差分計算機能42は、第2のヘッド部11bにより厚み調整用のインク(第1および第2のカラー画像65および66の下地用のインク)を吐出する前に、第1および第2のカラー画像65および66の各画素を形成するために吐出する総液滴数TDNと、各画素の色を調整するために要する実際の液滴数CDNとの差を厚み調整用のインクの吐出数UDNとして求め、第2のバッファ32に格納する。差分計算機能42は、色の調整が不要な画素、すなわち、液滴数CDNがゼロの画素については、厚み調整用のインクの吐出数UDNを総液滴数TDNに設定する。
【0059】
厚み調整用インク吐出機能43は、第1のヘッド部11aによりカラーインクを吐出して色を調整する前に、第2のバッファ32に格納された吐出数UDNに基づき、第2のヘッド部11bにより記録媒体90に厚み調整用のインクを吐出する。したがって、厚み調整用インク吐出機能43により、第2の領域52および遮光領域59については、カラーインクの液滴数CDNも含めて各画素を構成する液滴数(ドット数)が総液滴数TDNになるように厚み調整用のインクが記録媒体90に吐出される。また、厚み調整用インク吐出機能43により、第1のヘッド部11aによりカラーインクが吐出されない画素については、厚み調整用のインクが総液滴数TDNになるように記録媒体90に吐出される。
【0060】
色調整機能44は、第1のバッファ31に格納された印刷用のデータ29に基づき、記録媒体90に複数色のカラーインク、たとえば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の少なくとも1つの色のインクを吐出して第1および第2のカラー画像65および66を形成する各画素の色を調整する。
【0061】
各色のインクを一滴ずつ吐出することによりカラー画像を形成する例においては、ブラック(K)は一色で使われる。また、図7に示したポスター50aの例では、第1層71から第3層73の厚み(液滴数、ドット数)は等しい。このため、画像を形成する第4層74において総液滴数TDNを制御することにより、ポスター50aの表面を制御できる。第4層74において各画素の色を調整するために要する最大液滴数MDNは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)をそれぞれ使用する場合の「3」となる。したがって、総液滴数TDNは3以上の数値または3以上を示す関数となる。マルチドロップ方式においても、同様に最大液滴数MDNと総液滴数TDNを定義できる。
【0062】
記録媒体90の上に、表面が平坦のカラー画像を形成することを目的とした場合は、総液滴数TDNを一定値(固定値)とすればよい。その場合の総液滴数TDNの一例は最大液滴数MDNと等しい値、本例であれば「3」である。一定の総液滴数TDNと、印刷用データ29により各画素の色を調整するために要する実際の液滴数CDNとの差を厚み調整用のインクの吐出数UDNとして求め、印刷用データ29に基づき第1のヘッド部11aによりカラーインクを吐出する前に、第2のヘッド部11bにより厚み調整用のインクを記録媒体90の上に吐出する。たとえば、ある画素の色調整するための液滴数CDNが「2」であれば、その画素について事前に厚み調整用のインクを「1」滴吐出する。また、ある画素の色調整するための液滴数CDNが「3」であれば、その画素については事前に厚み調整用のインクを吐出しない。さらに、色調整をしない画素については、事前に厚み調整用のインクを「3」滴吐出する。
【0063】
なお、記録媒体90の上に、表面が平坦でなくても滑らかなカラー画像を形成することを目的とする場合は、総液滴数TDNを、画素単位より十分に距離が長く、長周期で変化する関数(パターン)で定義することができる。総液滴数TDNを変動させることにより、表面が滑らかにうねったカラー画像や、カラー画像により表現される内容、たとえば、図柄や絵を反映した形状に滑らかに盛り上がったカラー画像を記録媒体90の上に形成(出力)できる。このようにすることにより、ポスター50aの表面の印象を変えることができる。
【0064】
また、上記の例では、総液滴数TDNなどを計算する差分計算機能46はプリンタ10の制御ユニット13に実装されているが、この機能はPC20のプリンタドライバ23に備えていてもよい。
【0065】
図9は、図1のポスター50aの製造方法の一例を示すフローチャートであり、プリンタ10においてポスター50aを印刷する工程を示している。ステップ111において、プリンタ10は、PC20からポスター50aを形成する下地用のデータ28と画像用のデータ29とを受信する。ステップ112において、下地用のデータ28に基づいて下地形成機能41が遮光性のインク82により第1層71の下地層61を印刷する。ステップ113において、下地用のデータ28に基づいて下地形成機能41が第2層72の透光性のインク81による導光層62と、その周りの遮光性のインク82による遮光層63とを印刷する。ステップ114において、下地用のデータ28に基づいて下地形成機能41が第3層73を印刷する。ステップ114においては、第2層72の導光層62の上に遮光性のインク82により遮光層63を形成する。
【0066】
ステップ115において、差分計算機能42が画像データ29に基づき、第1および第2のカラー画像65および66を出力する各画素の液滴数CDNをそれぞれ計算し、ステップ116において、各画素について、予め設定されている総液滴数TDNと実際の液滴数CDNとの差分UDNを計算する。この差分が第2の領域52および遮光領域59における厚み調整用のインクの吐出数UDNとなる。なお、差分計算機能42の処理(ステップ115および116)は、上述した下地の処理(ステップ112〜114)と前後して、または並行して行ってもよい。
導光 次に、ステップ117において、厚み調整用インク吐出機能43が第2のヘッド部11bにより厚み調整用のインクを差分(吐出数)UDNの液滴数だけ吐出し、カラー画像を形成する各画素に対応した厚みの下地を形成する。
その後、ステップ118において、色調整機能44が第1のヘッド部11aにより、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のうちの少なくとも1つ(最大3種類の色)を、所定の順番で吐出して、第1および第2のカラー画像65および66の各画素の色を調整する。そして、ステップ119において、紫外線(UV)を照射し、インクを硬化させて、各画素のドット(液滴)を定着させる。紫外線は、ステップ112〜ステップ114の各層を印刷した後に照射してもよく、また、ステップ117において各色のインクを吐出した後に、これらを定着させるために照射してもよい。
【0067】
このように、ポスター50aは、インクジェットタイプのプリンタ10により簡易に印刷することができ、第1の領域51と第2の領域52とを繋ぐ導光層62により第2の領域52に形成されたカラー画像65を発光させることができる。したがって、種々のデザインの光るポスター50aを提供することが可能となる。また、ポスター50aの表面の凹凸を制御することが可能であり、平坦なポスター、所定の形状に凹凸が形成されたポスターなどを印刷することができる。
【0068】
上記の例では、1箇所の画像のみを発光させるようにしているが、複数個所の画像を異なる色または異なるタイミングで発光させるようにしてもよい。
【0069】
図10に2か所が光るポスター50bを示している。このポスター50bは、独立した照明光を導入する2つの第1の領域51aおよび51bと、それぞれの第1の領域51aおよび51bと独立した導光層により接続された2つの第2の領域52aおよび52bとを含む。2つの第1の領域51aおよび51bはポスター50bの独立した2か所に設けられており、2つの第2の領域52aおよび52bもポスター50bの独立した2か所に設けられている。
【0070】
したがって、図11に示すように、ポスター50bと、独立した照明装置(光源)53aおよび53bとを有するシステム1bを提供できる。このシステム1bにおいては、第1の領域51aおよび51bを照明装置53aおよび53bによりそれぞれ照らすことにより、2つの第2の領域52aおよび52bに形成された画像65aおよび65bを異なる色およびタイミングで発光させることができる。
【0071】
図12に示すように、このポスター50bも2つの照明装置53aおよび53bを収納したボックス5を取り付けることにより2つの画像65aおよび65bが独立して点灯するポスター50bとして展示できる。
【0072】
図13(a)〜(f)にポスター50bの各層の構成を平面図により示している。また図14にポスター50bの断面構造を一部抜き出して示している。ポスター50bは、6層に区分けすることが可能である。図13(a)に示した最下層(第1層)71は下地層61を含み、図5(a)に示した第1層71と同様に印刷できる。図13(b)に示した第2層72は第1の導光層62aを含み、図5(b)に示した第2層72と同様に印刷できる。第1の導光層62aは一方の第1の領域51aと一方の第2の領域52aとを接続するように形成されている。図13(c)に示した第3層73は遮光層63を含み、図5(c)に示した第3層73と同様に印刷できる。
【0073】
図13(d)に示した第4層74は、厚み方向に延びた第1の導光層62aと、面に沿って延びた第2の導光層62bを含む。第2の導光層62bは、透光性のインク81により他方の第1の領域51bと他方の第2の領域52bとを接続するように形成されている。第1の導光層62aと、第2の導光層62bとは交差しないようにアレンジされており、それぞれの周囲に遮光層63が形成されている。第4層74は、第2層72と同様に印刷できる。
【0074】
図13(e)に示した第5層75は、厚み方向に延びた第1および第2の導光層62aおよび62bと、第4層74の面方向に延びた第2の導光層62bの上を含めた領域を覆う遮光層63とを含む。第5層75は、第3層73と同様に印刷できる。
【0075】
図13(f)に示した第6層76は、それぞれの第2の領域52aおよび52bと、遮光領域59とに形成されたカラー画像65a、65bおよび66を含む。それぞれのカラー画像65a、65bおよび66は、図5(d)の第4層74と同様に印刷できる。
【0076】
このポスター50bにおいては、第1の導光層62aが第2層72に沿って延び、第2の導光層62bが第4層74に沿って延び、第3層73の遮光層63により上下に光学的に分離されている。したがって、図14に示すように、第1の導光層62aと第2の導光層62bとにより、それぞれの照明装置(光源)52aおよび53bからの照明光9aおよび9bを独立して伝達することができる。このため、第1の導光層62aと第2の導光層62bとそれぞれ繋がった第2の領域52aおよび52bの画像65aおよび65bをそれぞれの照明装置52aおよび52bにより独立して照明できる。すなわち、第2の領域52aおよび52bに形成された第1の画像65aおよび65bを、異なる輝度や風合いで発光させることができ、さらに、異なるタイミングで点滅させることも可能である。
【0077】
なお、それぞれの第2の領域52aおよび52bにおいて画像65aおよび65bを形成(印刷)する過程は、上記の説明と共通するので省略する。また、上記では光るポスター50aおよび50bを例に本発明を説明しているが、本発明により製造される物品はポスターに限られない。たとえば、クリスマスカード、バースデイカードなどの光るグリーティングカードや、光る絵本など、さまざまな印刷物に本発明を適用できる。また、POP、看板、標識などの絵あるいは文字を含む物品に対して本発明を提供でき、所望の部分が光る物品を手軽に製造し提供できる。
【0078】
本例においては、カラーインクとして、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色インクを用いるようにしたが、使用するインクの色はこれに限定されるものではない。たとえば、ライトイエロー(LY)、ライトマゼンタ(LM)、ライトシアン(LC)、ライトブラック(LK)を加えた8色をカラーインクとして使用するようにしてもよい。
【0079】
また、上記ではインクジェット方式で導光層を有する物品を製造する例を説明しているが、本発明の導光層を有する物品は凸版などの有版式の印刷方法でも製造可能であり、また、インクジェット方式以外の無版式、たとえば、レーザ、熱転写、静電などの印刷方法によっても印刷できる。
【符号の説明】
【0080】
50a、50b ポスター、
51、51a、51b 第1の領域、 52、52a、52b 第2の領域
61 下地層、 62、62a、62b 導光層、 63 遮光層
65、65a、65b 第1のカラー画像、 66 第2のカラー画像
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を光らせることができる物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光硬化型あるいは熱硬化型といった樹脂性または反応性のインクを用いるインクジェット記録装置が知られている。光硬化型のインクを用いる場合、形成される画像が耐侯性に優れるなどのメリットがあるが、記録媒体に吸収されにくいため、記録媒体の表面に凹凸が生じる。
【0003】
特許文献1に、ラミネート加工を行うことなく、画像表面をラミネートしたのと同様な仕上がりを実現するとともに、画像の使用目的やユーザの好み等に応じて、画像の光沢感の調整を行うことのできるインクジェット記録装置を提供することが記載されている。引用文献1に記載されたインクジェット記録装置は、記録媒体に対してカラーインクを吐出するカラーインク用ヘッドと、透明インクを吐出する透明インク用ヘッドと、カラーインク用ヘッド及び透明インク用ヘッドより吐出されるインクの各ドット毎の総液滴数をパターンとして規定した複数の吐出総液滴数パターンを記憶するROMと、吐出総液滴数パターンに規定される各ドットのインクの総液滴数からカラーインク用ヘッドより吐出されるカラーインクの液滴数を減算した液滴数の透明インクを吐出させるように透明インク用ヘッドを制御する制御部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−35688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポスターやPOPなどの分野では、顧客の注目を集める、あるいは、デザイン性を高めるためなどの目的で、特定の箇所を発光させることが要望されている。LEDなどの比較的小型の光源を組み合わせることにより所望の箇所を光らせることは可能である。しかしながら、光源をポスターの上に配置しようとすると、デザインの自由度は低く、通常のポスターを印刷するのと同様に製造することは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、第1の領域と第2の領域とを繋ぐように、記録媒体の上に直にまたは他の層を挟んで塗布された透光性のインクにより形成された導光層と、第2の領域の導光層の上に塗布された透光性のインクにより形成された第1の画像と、第2の領域の周囲の導光層の上に塗布された遮光性のインクにより形成された遮光層とを有する物品である。
【0007】
この物品においては、第1の領域と第2の領域とを繋ぐように透光性のインクにより導光層が形成されているため、第1の領域から第2の領域に光を導くことができる。このため、第1の領域から光を供給することにより、導光層の第2の領域に透光性のインクにより形成された第1のカラー画像を発光させることができる。また、第2の領域の周囲を遮光性のインクにより遮光することにより、導光層から光が漏れることを防止できる。
【0008】
この物品は、第2の領域の第1の画像を、LEDなどの光源により形成したり、光源により直に照明したりするのではなく、導光層を用いて第1の領域から第2の領域に光を導き、さらに、その導光層を透光性のインクにより形成している。したがって、透光性のインクと、遮光性のインクとを用いることにより、第2の領域に形成された第1の画像が光るポスターなどの物品を形成できる。すなわち、印刷により所定の箇所の画像が光る物品を容易に製造できる。このため、簡易に、さまざまなデザインの光物品を製造し、提供できる。
【0009】
この物品は、遮光層の上に塗布された透光性または遮光性のインクにより第2の画像をさらに有していてもよい。第2の画像は光らないので、発光する第1の画像と、非発光の第2の画像とを有する物品を提供できる。
【0010】
また、この物品においては、記録媒体と導光層との間に塗布された遮光性のインクにより形成された下地層をさらに有していてもよい。下地層を設けることにより、透光性の記録媒体を用いた物品であっても、導光層からの光漏れを抑制し、所定の場所の画像を光らせることができる。
【0011】
この物品において、透光性のインクは、たとえば、有色透明または有色半透明な光硬化型のインク、たとえば、UVインクのような樹脂性あるいは反応性のカラーインクであってもよい。導光層を有色透明なインクにより形成することにより、第2の画像を所定の色で照明できる。また、第1の画像をカラー画像にすることも可能となる。遮光性のインクは、たとえば、遮光性を有する(典型的には不透明な)光硬化型のインク、たとえば、UVインクのような樹脂性あるいは反応性のインクを用いることができる。遮光性のインクの色は、光を遮ることができるもの(不透明なインク)であれば特に限定されないが、画像や導光層に影響を及ぼしにくい色、たとえば、白色などの無彩色または淡い色であることが好ましい。原色あるいは原色に近い色のインクを遮光性のインクとして採用する場合は、遮光性のインクによる色を考慮して画像を形成する透光性のインクの色を選択することが望ましい。
【0012】
遮光性のインクは、光反射性を有するものであってもよい。特に、下地層を光反射性のインクによって形成することにより、導光層に導かれた光を下地層により反射させて、第2の領域に効率よく導くことができる。
【0013】
また、この物品において、第2の領域と、遮光層が形成された遮光領域とにおいて記録媒体の上に塗布されたインクの液滴の総和、すなわち、透光性のインクの液滴と遮光性のインクの液滴との総和(総液滴数)が等しいことが好ましい。画像(第1および/または第2の画像)が形成された部分を含め、凹凸がない、または凹凸が抑制された平坦な面を含む物品を提供できる。また、透光性のインクの液滴と遮光性のインクの液滴との総和を画像(第1および/または第2の画像)の形状に合わせて変えたり、起伏を持たせるように変えることも可能である。この場合には、立体感のある画像を備えた物品を提供できる。
【0014】
本発明の異なる態様の1つは、上記に記載の物品と、第1の領域に光を入射させる照明装置とを含むシステムである。これにより、第2の領域の第1の画像を照明装置により光らせるシステムを提供できる。
【0015】
本発明の他の態様は、第1の領域から第2の領域に光を導き、第2の領域を発光させる物品を製造する方法である。この方法は以下の工程を有する。
・第1の領域と第2の領域とを繋ぐように、記録媒体の上に直にまたは他の層を挟んで透光性のインクにより導光層を形成すること(導光層を形成する工程)。
・第2の領域の周囲の導光層の上に遮光性のインクにより遮光層を形成すること(遮光層を形成する工程)。
・第2の領域の導光層の上に透光性のインクにより第1の画像を形成すること(第1の画像を形成する工程)。
【0016】
この方法は、さらに、遮光層の上に透光性または遮光性のインクにより第2の画像を形成する工程(第2の画像を形成する工程)を備えていてもよい。
【0017】
この方法は、さらに、導光層を形成することの前に、記録媒体の上に(直にまたは他の層を挟んで)遮光性のインクにより下地層を形成する工程(下地層を形成する工程)を備えていてもよい。典型的な遮光性のインクは光反射性のインクである。
【0018】
第1の画像を形成することは、以下の工程を有することが好ましい。
・導光層の上に複数色のカラーインクの少なくとも1つを吐出して第1のカラー画像の各画素の色を調整すること。
・上記の色を調整すること(色調整する工程)の前に、各画素を形成するインクの総液滴数が所定のパターンになるように導光層の上に下地用の透光性のインク(厚み調整用の透光性のインク)を吐出すること。
【0019】
また、第2の画像を形成することは、以下の工程を有することが好ましい。
・遮光層の上に複数色のカラーインクの少なくとも1つを吐出して第2のカラー画像の各画素の色を調整すること
・上記の色を調整すること(色調整する工程)の前に、各画素を形成するインクの総液滴数が所定のパターンになるように遮光層の上に下地用のインク(厚み調整用の遮光性のインク)を吐出すること。
【0020】
この物品の製造にはインクジェットタイプのプリンタが適しており、導光層を形成することは、インクジェットタイプのプリンタにより記録媒体の上に直にまたは他の層を挟んで透光性のインクドットを形成することを含み、遮光層を形成することは、プリンタにより遮光領域の導光層の上に遮光性のインクドットを形成することを含むことが望ましい。
【0021】
さらに、本発明の異なる態様の1つはプログラムである。プログラムは以下の工程を含む。
・コンピュータがインクジェットタイプのプリンタにより第1の領域と第2の領域とを繋ぐように、記録媒体の上に直にまたは他の層を挟んで透光性のインクにより導光層を設けること。
・第2の領域の周囲の遮光領域の導光層の上に遮光性のインクにより遮光層を設けること。
・第2の領域の導光層の上に透光性のインクにより第1の画像を設けること。
【0022】
このようにすることにより、厚みが所望のパターンとなるようなカラー画像(第1および/または第2のカラー画像)を形成することができる。典型的なパターンは、各ドットを形成するインクの総液滴数を一定にしたものであり、このようにすることにより、凹凸がない、または凹凸が抑制された平坦な面を持った、カラー画像(第1および/または第2のカラー画像)を形成することができる。各ドットを形成するインクの総液滴数をカラー画像の形状に合わせて変えたり、起伏を持たせるようにすることも可能である。この場合、立体感のあるカラー画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態にかかるポスターを示す斜視図。
【図2】ポスターと照明装置とを組み合わせたシステムを示す斜視図。
【図3】照明装置を含むボックスとポスターとを組み合わせたシステムを示す斜視図。
【図4】ポスターを各層に分解して示す斜視図。
【図5】図5(a)〜図5(d)は各層を平面的に示す図。
【図6】各層に分解して示す斜視図であって、光源を配置した状態を示す図。
【図7】ポスターの構成を、断面図を用いて模式的に示す図。
【図8】ポスターを製造するシステムの一例の概略構成を示す図。
【図9】ポスターの製造方法の一例を説明するフローチャート。
【図10】異なるポスターを示す斜視図。
【図11】ポスターと照明装置とを組み合わせたシステムを示す斜視図。
【図12】照明装置を含むボックスとポスターとを組み合わせたシステムを示す斜視図。
【図13】図13(a)〜図13(f)はポスターの各層を平面的に示す図。
【図14】ポスターの構成を、断面図を用いて模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる物品を斜視図により示している。この物品50aは、記録媒体90の上に、透光性のインクと遮光性のインクとを印刷することにより形成されたポスターである。ポスター50aは、透光性のインクが表面に現れた第1の領域51および第2の領域52と、遮光性のインクが表面に現れた遮光領域59とを有するポスターである。ポスター50aは、さらに、以下で説明するように、第1の領域51から第2の領域52へ光を導く導光層を有し、第1の領域51を照明光の導入部68として、照明光により第2の領域52に形成された第1の画像(第1のカラー画像)65を発光させることができる。また、ポスター50aは、遮光領域59に形成された第2の画像66を備えている。
【0025】
図2に示すように、ポスター50aと、第1の領域51に面して設置された照明装置53とを有する表示システム(光るポスター)1においては、ポスター50aの一部の画像65を照明装置(光源)53からの光により照明することができる。したがって、図3に示すように、照明装置53を適当なボックス5またはポスター50aの置き台に隠すことにより、光る画像65を備えた表示システム1を提供できる。この表示システム1においては、光る画像65と光らない画像66との組み合わせにより多種多様な表現が可能であり、情報をより的確に伝達したり、様々な表現をユーザーに提供して楽しませたりすることができる。
【0026】
図4に、ポスター50aの構造を展開して示している。このポスター50aは、記録媒体(メディア)90の上に透光性のインクと遮光性のインクとを重ねて塗布することにより製造されている。より詳しくは、このポスター50aは、インクジェットタイプのプリンタにより、記録媒体90の上に透光性のインク81と遮光性のインク82とを重ねて印刷(塗布)することにより製造されている。
【0027】
図4は、記録媒体90の上にインク81および82により形成された構造を適当な層に分けて示している。また、図5に、各層の平面的な構成を示している。これらの図に示すように、ポスター50aは、下側より、記録媒体(メディア)90と、その上に形成された下地層61と、その上に形成された導光層(導光路、導光領域)62および遮光層63と、さらに、それらの上に形成された画像65および66とを有する。
【0028】
図4および図5(a)に示すポスター50aの最下層(第1層)71は、記録媒体(メディア)90と、その上に遮光性のインク82を塗布することにより形成された下地層61とを含む。記録媒体90の典型的なものは、普通紙、再生紙、光沢紙などの各種紙である。記録媒体90は、各種布地、各種不織布などの紙以外のシート状の部材、樹脂、金属、ガラス等の材質からなるシート状の部材であってもよい。また、記録媒体90は不透明な部材であってもよく、透明な部材であってもよい。記録媒体90が透明な部材の場合は、本例のように遮光性のインクドット82を記録媒体90の上に形成し、下地層61を設けることが好ましい。
【0029】
図4および図5(b)に示す第2層72は最下層71の上に形成された層であり、透光性のインク81を塗布することにより形成された導光層62と、遮光性のインク82を塗布することにより形成された遮光層63とを含む。導光層62は、第2層72の面内(層内)を所定のルートを描くように面に沿った方向(たとえば水平方向)に延びている。遮光層63は、導光層62の両側に沿って、導光層62を除く第2層72を埋めるように形成されている。
【0030】
透光性のイン81クおよび遮光性のインク82の一例は光硬化型の樹脂性のインク、たとえば、紫外線を照射することにより硬化する紫外線硬化型のインク(UVインク)である。紫外線硬化型のインクとしては、重合性化合物としてラジカル重合性化合物を含むラジカル重合系インク、カチオン重合性化合物を含むカチオン重合系インク、ラジカル重合系インクとカチオン重合系インクとを複合させたハイブリッド型インクなどを挙げることができる。光硬化型のインクは、紫外線以外の光で重合して硬化する重合性化合物と、紫外線以外の光、たとえば電子線、X線、赤外線等で重合性化合物同士の重合反応を開始させる光開始剤とを含むものであってもよい。また、インクは、光硬化型のインクに限定されるものではなく、熱硬化型などの樹脂性または反応性のインクであってもよい。
【0031】
図4および図5(c)に示す第3層73は第2層72の上に形成された層であり、透光性のインク81を塗布することにより形成された導光層62と、遮光性のインク82を塗布することにより形成された遮光層63とを含む。導光層62は、第1の領域51および第2の領域52を形成するように第3層73を厚み方向(たとえば垂直方向)に横切るように延びている。遮光層63は、第2の領域52の下方で第3層73を貫通する導光層62を除き、第2層72の導光層62の上を含め、第3層73の他の部分を埋めるように形成されている。したがって、第3層73の遮光層63は、第2の領域52の周囲の導光層62の上を含めて形成されており、導光層62から光がポスター50aの表面に漏れないようになっている。
【0032】
これらの層71〜73の遮光性の下地層61および遮光層63を形成する遮光性のインク82は、白色や銀色などの反射率が高い色のUVインクである。透光性のインク81により形成された導光層62を、光反射型の遮光性のインク82により形成された下地層61および遮光層63により挟み込む(囲い込む)ことにより、導光層62により伝達される照明光が漏れるのを防止できる。
【0033】
導光層62は、第1の領域51と第2の領域52とを繋ぐように印刷されている。導光層62を形成する透光性のインク81の典型的なものは無色透明のUVインクである。導光層62により白色光を第2の領域52に供給できるので、画像65を適当な色の透光性のインクを用いて形成することにより所望の色に輝く画像65を形成しやすい。有色透明のUVインクを塗布することにより導光層62を形成してもよい。
【0034】
図4および図5(d)に示す第4層74は第3層73の上に形成された層であり、第1の領域51に透光性のインク81を塗布することにより形成された照明光の導入部68と、第2の領域52に透光性のインク81を塗布することにより形成された第1の画像65と、遮光領域59に透光性のインク81を塗布することにより形成された第2の画像66と、遮光領域59のその他の部分を遮光性のインク82により埋めた遮光層63とを含む。 本図の一点鎖線69から上がポスター50aとして実際に見せる領域であり、一点鎖線69から下は図3に示した照明装置を含むボックス5などによりカバーされる領域である。ポスター50aの見せ方は上記に限定されず、一点鎖線69から下を覆う代わりに、第1の領域51の全体を覆うような照明装置53を取り付けることも可能である。
【0035】
第2の領域52に形成された第1のカラー画像65および遮光領域59に形成された第2のカラー画像66は、それぞれ導光層62(第2の領域52)の上および遮光領域59の上に複数色の透光性のカラーインク81をドット状に塗布(印刷)することにより形成されている。なお、以降において説明するインク81および82のドット状の形態は、ポスター50aを製造するためにインクを塗布する過程で形成される状態を示しており、製造されたポスター50aにそれぞれのインクがドット状で観察されても、観察されなくてもよい。
【0036】
図6に、ポスター50aに照明装置53から照明光9を入れた様子を展開して示している。照明装置53からの照明光9は、第4層74の第1の領域51の導入部68から導光層62に入り、第2層72の導光層62を通って第4層74の第2の領域52に到達する。そして、第2の領域52を照明光9により照らし、第2の領域52の第1の画像65を発光させる。
【0037】
図7にポスター50aの一部の層構造をドットの状態で模式的に示している。図7において、白抜きのドットは無色透明のインク81を示し、二重線が付してあるドットは遮光性の白色のインク82を示す。さらに、左上から右下に向かう斜線が付してあるドットは透光性のインク81のうち、さらにイエロー(Y)のインク83Yを示す。点柄の模様が付してあるドットは、透光性のインク81のうち、さらに、マゼンタ(M)のインク83Mを示し、左下から右上に向かう斜線が付してあるドットは、透光性のインク81のうち、シアン(C)のインク83Cを示す。黒色のドットは、上記の各色のインクドットとともに用いられる黒色(ブラック(K))のインク83Kを示し、このインク83Kは透光性であっても遮光性であってもよい。
【0038】
図7に示すように、このポスター50aは、第1層71〜第4層74を含む。上述したように、照明装置(光源)53の照明光9は、第4層74の第1の領域51の導入部68からポスター50aの内部に入り、第3層73の第1の領域51を厚み方向に横切る導光層62、第2層72を面方向に延びた導光層62、第3層73の第2の領域52を厚み方向に横切る導光層62を通り、第4層74の第2の領域52のカラー画像65を照明する。第2層72を面方向に延びた導光層62の上側は第3層73の遮光層63により覆われ、また、第4層74の第2の領域52の周囲は遮光層63により囲われている。したがって、導光層62からの照明光9の漏れ出しを防止して、第2の領域52のカラー画像65を効率的に光らせることができる。
【0039】
この図では、第1層71〜第3層73は、それぞれ、厚み方向を1ドットで形成しているが、厚み方向を複数のドットで形成してもよい。さらに、このポスター50aにおいては、第1層71〜第4層74を構成する導光透光性のインク81の液滴と遮光性のインク82の液滴との総和TDN(画素(ピクセル)毎の液滴(ドット)の総和)がポスター50aの全体にわたり等しく(一定に)なっている。たとえば、図7に模式的に示したように、ポスター50aは、透光性の第2の領域52と遮光領域59とで、記録媒体90の上に吐出された液滴の総和TDNは「6」の一定の値になっている。したがって、内部に導光層62を含むポスター50aであるが、ポスター50aの表面はほぼ平坦となっており、表面に凹凸があって見栄えが悪くなったり、画像が破損したりすることを抑制できる。
【0040】
このポスター50aにおいては、第1層71から第3層73は厚みが等しいので、最上層(第4層)74を構成する総液滴数(総ドット数)TDNを画素毎に一定にすることにより平坦なポスターを提供できる。すなわち、ポスター50aにおいては、第1のカラー画像65が形成された第2の領域52と、第2のカラー画像66が形成された遮光領域59を含めて第4層74のインクの総液滴数(総ドット数)TDNを画素毎に一定にしている。
【0041】
第2の領域52においては、第1のカラー画像65を形成するために必要なドット数(液滴数)CNDを画素毎に予め求め、総液滴数TNDと画像に要するドット数CNDとの差分UDNを画素毎に計算し、それらの差分UDNのドット(液滴)を透光性のインク81により第3層73の導光層62の上に予め吐出する。このようなに、厚み調整用のドットを透光性のインク81により形成した後、カラー画像65をインク83Y、83M、83Cおよび83Kにより形成する。このため、第1のカラー画像65の発色用のインク83Y、83M、83Cおよび83Kによるドットは、第2の領域52の表面側に揃い、いっそう鮮明な第1の画像65を形成し、照明光9により輝かせることができる。
【0042】
第2のカラー画像66が形成されている遮光領域59においても同様に総液滴数TDNが制御されている。すなわち、第2のカラー画像66を形成するために必要なドット数(液滴数)CNDを画素毎に予め求め、総液滴数TNDと画像に要するドット数CNDとの差分UDNを画素毎に計算し、それらの差分UDNのドット(液滴)を遮光性のインク82により第3層73の遮光層63の上に予めと出する。厚み調整用のドットを遮光性のインク82により形成した後、第2のカラー画像66をインク83Y、83M、83Cおよび83Kにより形成する。このため、第2のカラー画像66の発色用のインク83Y、83M、83Cおよび83Kによるドットは、遮光領域59の表面側に揃い、いっそう鮮明な第2の画像66が得られる。
【0043】
さらに、第1および第2のカラー画像65および66の間は、総液滴数TDNを一定にするために形成された遮光性のインク82によりドットで埋められ、遮光層63となっている。したがって、発光するカラー画像65と、発光しないカラー画像66とを明確に分けることができる。
【0044】
図8は、ポスター50aを出力(製造)するシステムの一例を示している。このシステム100は、ホスト装置となるパーソナルコンピュータ(以下、PCと記載する)20と、PC20から供給されるデータを記録媒体(メディア)90に出力(印刷)するプリンタ(カラー画像を出力する装置)10とを含む。プリンタ10は、インクジェットプリンタであり、記録媒体90上を往復動するように設けられたヘッドユニット11と、ヘッドユニット11を支持するとともにこれを記録媒体90上において往復動させる駆動機構(不図示)とを有する。ヘッドユニット11は、往復動するシリアルタイプに限らず、ラインタイプ(ラインヘッド)であってもよい。
【0045】
プリンタ10は、さらに、記録媒体90をヘッドユニット11に対して送るための搬送装置(フィーダー)12と、これらを制御する制御装置(制御ユニット)13と、メモリ14とを含む。搬送装置12は、記録媒体90をヘッドユニット11に対して所定の姿勢、たとえば、水平に支持して搬送するための複数の搬送ローラ12aを備えている。搬送装置12は、ヘッドユニット11の動作に合わせて記録媒体90を搬送および停止させながら、記録媒体90を間欠的に搬送する。
【0046】
このプリンタ10のヘッドユニット11は、光硬化型のインク、たとえば紫外線を照射することにより硬化する紫外線硬化型のインク(UVインク)を吐出する。このため、本例のプリンタ10は、さらに、ヘッドユニット11に対して記録媒体90の搬送方向の下流側に設置された紫外線照射装置(UV照射装置)15を含む。
【0047】
プリンタ10にカラー画像を形成するためのデータを供給するPC20は、プロセッサ、メモリ、入出力装置などの汎用のコンピュータを実現するためのハードウェア資源を含む。PC20には、OS21と、OS21の上で動作するアプリケーションプログラム22とがインストールされており、文書や画像などを含むコンテンツを見たり、作製したり、編集したりできるようになっている。PC20には、さらに、コンテンツをプリンタ10で印刷する際に、コンテンツに含まれる文字、画像などの多値のデータを印刷用のデータ(たとえば2値データ)29に変換する機能を含むプリンタドライバ23がインストールされている。PC20において、プリンタドライバ23は、ハードディスク、ROM(不図示)などの記憶媒体に記録されたプログラムとして提供される。そして、プリンタドライバ23としての機能は、プロセッサ(不図示)がそのプログラムを実行することにより実現される。
【0048】
プリンタドライバ23は、ポスター50aの導光層62と遮光領域の上にカラー画像65および66を印刷する画像データ29を形成する機能23aと、それらの下地となる部分を形成する機能23bとを含む。下地を形成する機能23bは、第1の領域51と第2の領域52とを繋ぐように、記録媒体90の上に直にまたは他の層を挟んで透光性のインク81により導光層62を形成するデータを生成する機能23cと、第2の領域52の周囲の遮光領域59の導光層62の上に遮光性のインク82により遮光層63を形成するデータを生成する機能23dとを含む。
【0049】
プリンタ10のヘッドユニット11は、カラー画像65および66を記録媒体90に形成するために複数色のカラーインクを吐出する第1のヘッド部(第1のヘッド)11aとこれらのカラー画像に対して下地用となる透光性のインク81および遮光性のインク82を吐出する第2のヘッド部(第2のヘッド)11bとを含む。
【0050】
第1のヘッド部11aは、複数色の透光性のカラーインクをそれぞれ吐出するインクジェット方式の複数のノズルを含む。典型的な第1のヘッド11aは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のUVカラーインクを記録媒体90に吐出する4種類のインクジェット方式のノズルを含む。第1のヘッド部11aにおいては、第1および第2のカラー画像65および66のカラーの部分を形成する。
【0051】
第2のヘッド11bは、無色透明のUVインク81と白色(不透明な、遮光性を有する白色)のUVインク82を記録媒体90に吐出する2種類のインクジェット方式のノズルを含む。UV硬化型白色インクとしては、マーケム社製のUV白インク4600シリーズなどを挙げることができる。第2のヘッド部11bは、下地層61、導光層62、遮光層63、第1および第2のカラー画像65および66の厚み調整の部分を形成する。
【0052】
なお、第1のヘッド部11aにおいて吐出する複数のカラーインクの数および/または色はこれらに限定されるものではない。また、第2のヘッド部11bにおいて吐出するインクは、透光性のインクと遮光性のインクであれば、無色透明のインクと白色のインクに限定されるものではない。
【0053】
第2のヘッド部11bは、第1のヘッド部11aの紙送り方向(記録媒体90の搬送方向)の上流側に配置されており、第1のヘッド部11aに先立って、記録媒体90に画像に対して下地となる所定のUVインクを吐出する。
【0054】
プリンタ10のメモリ14の1つの機能は、PC20から供給されたデータを一時的に蓄積することである。メモリ14は、第1および第2のカラー画像65および66の各画素を形成するインクの総液滴数TDNの数および/またはパターン(関数)を蓄積するパターン記憶部30と、第1のヘッド部11a用のデータを蓄積する第1のバッファ(第1のヘッド部11aの出力用のバッファ)31と、第2のヘッド部11b用のデータを蓄積する第2のバッファ(第2のヘッド部11bの出力用のバッファ)32とを含む。第1のバッファ31には、プリンタドライバ23から供給される印刷用のデータ(第1のカラー画像65および第2のカラー画像66のデータ)29が格納される。第2のバッファ32には下地用のデータ(下地層61、導光層62および遮光層63のデータ)28が格納される。パターン記憶部30には、総液滴数TDNが固定値または関数で設定される。総液滴数TDNが固定値(コンスタント値)であれば、記録媒体90の上に一定の厚みのカラー画像が形成される。
【0055】
プリンタ10の制御ユニット13はCPUを含み、メモリ14に格納された処理プログラム19に従い、プリンタ10に含まれる各装置を制御する。たとえば、制御ユニット13は、ヘッドユニット11の駆動、第1のヘッド部11aおよび第2のヘッド部11bの動作、紫外線照射装置15の動作などを制御する。制御ユニット13は、1ドット当たりに各色のインクを1滴ずつ吐出する制御を行うものであってもよく、1滴の液滴量を小液滴量のインク液滴を複数発吐出して実現する、いわゆるマルチドロップ方式によりカラー画像の記録を行わせるものであってもよい。
【0056】
制御ユニット13は、下地形成機能(下地印刷機能)41と、差分計算機能42と、厚み調整用インク吐出機能43と、色調整機能(カラーインク吐出機能)44とを含む。
【0057】
下地形成機能41は、下地用のデータ28に基づき、記録媒体90の上に遮光性のインク82を塗布して下地層61を形成し、その下地層61の上に、第1の領域51と第2の領域52とを繋ぐように透光性のインク81を塗布して導光層62を形成し、導光層62の上であって第2の領域52の周囲に遮光性のインク82を塗布して遮光層63を形成する。
【0058】
差分計算機能42は、第2のヘッド部11bにより厚み調整用のインク(第1および第2のカラー画像65および66の下地用のインク)を吐出する前に、第1および第2のカラー画像65および66の各画素を形成するために吐出する総液滴数TDNと、各画素の色を調整するために要する実際の液滴数CDNとの差を厚み調整用のインクの吐出数UDNとして求め、第2のバッファ32に格納する。差分計算機能42は、色の調整が不要な画素、すなわち、液滴数CDNがゼロの画素については、厚み調整用のインクの吐出数UDNを総液滴数TDNに設定する。
【0059】
厚み調整用インク吐出機能43は、第1のヘッド部11aによりカラーインクを吐出して色を調整する前に、第2のバッファ32に格納された吐出数UDNに基づき、第2のヘッド部11bにより記録媒体90に厚み調整用のインクを吐出する。したがって、厚み調整用インク吐出機能43により、第2の領域52および遮光領域59については、カラーインクの液滴数CDNも含めて各画素を構成する液滴数(ドット数)が総液滴数TDNになるように厚み調整用のインクが記録媒体90に吐出される。また、厚み調整用インク吐出機能43により、第1のヘッド部11aによりカラーインクが吐出されない画素については、厚み調整用のインクが総液滴数TDNになるように記録媒体90に吐出される。
【0060】
色調整機能44は、第1のバッファ31に格納された印刷用のデータ29に基づき、記録媒体90に複数色のカラーインク、たとえば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の少なくとも1つの色のインクを吐出して第1および第2のカラー画像65および66を形成する各画素の色を調整する。
【0061】
各色のインクを一滴ずつ吐出することによりカラー画像を形成する例においては、ブラック(K)は一色で使われる。また、図7に示したポスター50aの例では、第1層71から第3層73の厚み(液滴数、ドット数)は等しい。このため、画像を形成する第4層74において総液滴数TDNを制御することにより、ポスター50aの表面を制御できる。第4層74において各画素の色を調整するために要する最大液滴数MDNは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)をそれぞれ使用する場合の「3」となる。したがって、総液滴数TDNは3以上の数値または3以上を示す関数となる。マルチドロップ方式においても、同様に最大液滴数MDNと総液滴数TDNを定義できる。
【0062】
記録媒体90の上に、表面が平坦のカラー画像を形成することを目的とした場合は、総液滴数TDNを一定値(固定値)とすればよい。その場合の総液滴数TDNの一例は最大液滴数MDNと等しい値、本例であれば「3」である。一定の総液滴数TDNと、印刷用データ29により各画素の色を調整するために要する実際の液滴数CDNとの差を厚み調整用のインクの吐出数UDNとして求め、印刷用データ29に基づき第1のヘッド部11aによりカラーインクを吐出する前に、第2のヘッド部11bにより厚み調整用のインクを記録媒体90の上に吐出する。たとえば、ある画素の色調整するための液滴数CDNが「2」であれば、その画素について事前に厚み調整用のインクを「1」滴吐出する。また、ある画素の色調整するための液滴数CDNが「3」であれば、その画素については事前に厚み調整用のインクを吐出しない。さらに、色調整をしない画素については、事前に厚み調整用のインクを「3」滴吐出する。
【0063】
なお、記録媒体90の上に、表面が平坦でなくても滑らかなカラー画像を形成することを目的とする場合は、総液滴数TDNを、画素単位より十分に距離が長く、長周期で変化する関数(パターン)で定義することができる。総液滴数TDNを変動させることにより、表面が滑らかにうねったカラー画像や、カラー画像により表現される内容、たとえば、図柄や絵を反映した形状に滑らかに盛り上がったカラー画像を記録媒体90の上に形成(出力)できる。このようにすることにより、ポスター50aの表面の印象を変えることができる。
【0064】
また、上記の例では、総液滴数TDNなどを計算する差分計算機能46はプリンタ10の制御ユニット13に実装されているが、この機能はPC20のプリンタドライバ23に備えていてもよい。
【0065】
図9は、図1のポスター50aの製造方法の一例を示すフローチャートであり、プリンタ10においてポスター50aを印刷する工程を示している。ステップ111において、プリンタ10は、PC20からポスター50aを形成する下地用のデータ28と画像用のデータ29とを受信する。ステップ112において、下地用のデータ28に基づいて下地形成機能41が遮光性のインク82により第1層71の下地層61を印刷する。ステップ113において、下地用のデータ28に基づいて下地形成機能41が第2層72の透光性のインク81による導光層62と、その周りの遮光性のインク82による遮光層63とを印刷する。ステップ114において、下地用のデータ28に基づいて下地形成機能41が第3層73を印刷する。ステップ114においては、第2層72の導光層62の上に遮光性のインク82により遮光層63を形成する。
【0066】
ステップ115において、差分計算機能42が画像データ29に基づき、第1および第2のカラー画像65および66を出力する各画素の液滴数CDNをそれぞれ計算し、ステップ116において、各画素について、予め設定されている総液滴数TDNと実際の液滴数CDNとの差分UDNを計算する。この差分が第2の領域52および遮光領域59における厚み調整用のインクの吐出数UDNとなる。なお、差分計算機能42の処理(ステップ115および116)は、上述した下地の処理(ステップ112〜114)と前後して、または並行して行ってもよい。
導光 次に、ステップ117において、厚み調整用インク吐出機能43が第2のヘッド部11bにより厚み調整用のインクを差分(吐出数)UDNの液滴数だけ吐出し、カラー画像を形成する各画素に対応した厚みの下地を形成する。
その後、ステップ118において、色調整機能44が第1のヘッド部11aにより、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のうちの少なくとも1つ(最大3種類の色)を、所定の順番で吐出して、第1および第2のカラー画像65および66の各画素の色を調整する。そして、ステップ119において、紫外線(UV)を照射し、インクを硬化させて、各画素のドット(液滴)を定着させる。紫外線は、ステップ112〜ステップ114の各層を印刷した後に照射してもよく、また、ステップ117において各色のインクを吐出した後に、これらを定着させるために照射してもよい。
【0067】
このように、ポスター50aは、インクジェットタイプのプリンタ10により簡易に印刷することができ、第1の領域51と第2の領域52とを繋ぐ導光層62により第2の領域52に形成されたカラー画像65を発光させることができる。したがって、種々のデザインの光るポスター50aを提供することが可能となる。また、ポスター50aの表面の凹凸を制御することが可能であり、平坦なポスター、所定の形状に凹凸が形成されたポスターなどを印刷することができる。
【0068】
上記の例では、1箇所の画像のみを発光させるようにしているが、複数個所の画像を異なる色または異なるタイミングで発光させるようにしてもよい。
【0069】
図10に2か所が光るポスター50bを示している。このポスター50bは、独立した照明光を導入する2つの第1の領域51aおよび51bと、それぞれの第1の領域51aおよび51bと独立した導光層により接続された2つの第2の領域52aおよび52bとを含む。2つの第1の領域51aおよび51bはポスター50bの独立した2か所に設けられており、2つの第2の領域52aおよび52bもポスター50bの独立した2か所に設けられている。
【0070】
したがって、図11に示すように、ポスター50bと、独立した照明装置(光源)53aおよび53bとを有するシステム1bを提供できる。このシステム1bにおいては、第1の領域51aおよび51bを照明装置53aおよび53bによりそれぞれ照らすことにより、2つの第2の領域52aおよび52bに形成された画像65aおよび65bを異なる色およびタイミングで発光させることができる。
【0071】
図12に示すように、このポスター50bも2つの照明装置53aおよび53bを収納したボックス5を取り付けることにより2つの画像65aおよび65bが独立して点灯するポスター50bとして展示できる。
【0072】
図13(a)〜(f)にポスター50bの各層の構成を平面図により示している。また図14にポスター50bの断面構造を一部抜き出して示している。ポスター50bは、6層に区分けすることが可能である。図13(a)に示した最下層(第1層)71は下地層61を含み、図5(a)に示した第1層71と同様に印刷できる。図13(b)に示した第2層72は第1の導光層62aを含み、図5(b)に示した第2層72と同様に印刷できる。第1の導光層62aは一方の第1の領域51aと一方の第2の領域52aとを接続するように形成されている。図13(c)に示した第3層73は遮光層63を含み、図5(c)に示した第3層73と同様に印刷できる。
【0073】
図13(d)に示した第4層74は、厚み方向に延びた第1の導光層62aと、面に沿って延びた第2の導光層62bを含む。第2の導光層62bは、透光性のインク81により他方の第1の領域51bと他方の第2の領域52bとを接続するように形成されている。第1の導光層62aと、第2の導光層62bとは交差しないようにアレンジされており、それぞれの周囲に遮光層63が形成されている。第4層74は、第2層72と同様に印刷できる。
【0074】
図13(e)に示した第5層75は、厚み方向に延びた第1および第2の導光層62aおよび62bと、第4層74の面方向に延びた第2の導光層62bの上を含めた領域を覆う遮光層63とを含む。第5層75は、第3層73と同様に印刷できる。
【0075】
図13(f)に示した第6層76は、それぞれの第2の領域52aおよび52bと、遮光領域59とに形成されたカラー画像65a、65bおよび66を含む。それぞれのカラー画像65a、65bおよび66は、図5(d)の第4層74と同様に印刷できる。
【0076】
このポスター50bにおいては、第1の導光層62aが第2層72に沿って延び、第2の導光層62bが第4層74に沿って延び、第3層73の遮光層63により上下に光学的に分離されている。したがって、図14に示すように、第1の導光層62aと第2の導光層62bとにより、それぞれの照明装置(光源)52aおよび53bからの照明光9aおよび9bを独立して伝達することができる。このため、第1の導光層62aと第2の導光層62bとそれぞれ繋がった第2の領域52aおよび52bの画像65aおよび65bをそれぞれの照明装置52aおよび52bにより独立して照明できる。すなわち、第2の領域52aおよび52bに形成された第1の画像65aおよび65bを、異なる輝度や風合いで発光させることができ、さらに、異なるタイミングで点滅させることも可能である。
【0077】
なお、それぞれの第2の領域52aおよび52bにおいて画像65aおよび65bを形成(印刷)する過程は、上記の説明と共通するので省略する。また、上記では光るポスター50aおよび50bを例に本発明を説明しているが、本発明により製造される物品はポスターに限られない。たとえば、クリスマスカード、バースデイカードなどの光るグリーティングカードや、光る絵本など、さまざまな印刷物に本発明を適用できる。また、POP、看板、標識などの絵あるいは文字を含む物品に対して本発明を提供でき、所望の部分が光る物品を手軽に製造し提供できる。
【0078】
本例においては、カラーインクとして、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色インクを用いるようにしたが、使用するインクの色はこれに限定されるものではない。たとえば、ライトイエロー(LY)、ライトマゼンタ(LM)、ライトシアン(LC)、ライトブラック(LK)を加えた8色をカラーインクとして使用するようにしてもよい。
【0079】
また、上記ではインクジェット方式で導光層を有する物品を製造する例を説明しているが、本発明の導光層を有する物品は凸版などの有版式の印刷方法でも製造可能であり、また、インクジェット方式以外の無版式、たとえば、レーザ、熱転写、静電などの印刷方法によっても印刷できる。
【符号の説明】
【0080】
50a、50b ポスター、
51、51a、51b 第1の領域、 52、52a、52b 第2の領域
61 下地層、 62、62a、62b 導光層、 63 遮光層
65、65a、65b 第1のカラー画像、 66 第2のカラー画像
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の領域と第2の領域とを繋ぐように、記録媒体の上に直にまたは他の層を挟んで塗布された透光性のインクにより形成された導光層と、
前記第2の領域の前記導光層の上に塗布された透光性のインクにより形成された第1の画像と、
前記第2の領域の周囲の前記導光層の上に塗布された遮光性のインクにより形成された遮光層とを有する物品。
【請求項2】
請求項1において、前記遮光層の上に塗布されたインクにより形成された第2の画像をさらに有する、物品。
【請求項3】
請求項1または2において、前記記録媒体と前記導光層との間に塗布された前記遮光性のインクにより形成された下地層をさらに有する、物品。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記遮光性のインクは光反射性である、物品。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記第2の領域と、前記遮光層の形成された遮光領域とにおいて前記記録媒体の上に塗布された前記透光性のインクの液滴と前記遮光性のインクの液滴との総和が等しい、物品。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の物品と、
前記第1の領域に光を入射させる照明装置とを有するシステム。
【請求項7】
第1の領域から第2の領域に光を導き前記第2の領域を発光させる物品を製造する方法であって、
前記第1の領域と前記第2の領域とを繋ぐように、記録媒体の上に直にまたは他の層を挟んで透光性のインクにより導光層を形成することと、
前記第2の領域の周囲の遮光領域の前記導光層の上に遮光性のインクにより遮光層を形成することと、
前記第2の領域の前記導光層の上に透光性のインクにより第1の画像を形成することと、有する方法。
【請求項8】
請求項7において、さらに、
前記遮光層の上に前記透光性のインクにより第2の画像を形成することを有する、方法。
【請求項9】
請求項7または8において、さらに、
前記導光層を形成することの前に、前記記録媒体の上に直にまたは他の層を挟んで前記遮光性のインクにより下地層を形成することを有する、方法。
【請求項10】
請求項7ないし9のいずれかにおいて、前記遮光性のインクは光反射性である、方法。
【請求項11】
請求項7ないし10のいずれかにおいて、前記導光層を形成することは、インクジェットタイプのプリンタにより前記記録媒体の上に直にまたは他の層を挟んで前記透光性のインクを吐出することを含み、
前記遮光層を形成することは、前記プリンタにより前記遮光領域の前記導光層の上に前記遮光性のインクを吐出することを含む、方法。
【請求項12】
コンピュータがインクジェットタイプのプリンタにより第1の領域と第2の領域とを繋ぐように、記録媒体の上に直にまたは他の層を挟んで透光性のインクにより導光層を形成することと、
前記第2の領域の周囲の遮光領域の前記導光層の上に遮光性のインクにより遮光層を形成することと、
前記第2の領域の前記導光層の上に透光性のインクにより第1の画像を形成することとを有するプログラム。
【請求項1】
第1の領域と第2の領域とを繋ぐように、記録媒体の上に直にまたは他の層を挟んで塗布された透光性のインクにより形成された導光層と、
前記第2の領域の前記導光層の上に塗布された透光性のインクにより形成された第1の画像と、
前記第2の領域の周囲の前記導光層の上に塗布された遮光性のインクにより形成された遮光層とを有する物品。
【請求項2】
請求項1において、前記遮光層の上に塗布されたインクにより形成された第2の画像をさらに有する、物品。
【請求項3】
請求項1または2において、前記記録媒体と前記導光層との間に塗布された前記遮光性のインクにより形成された下地層をさらに有する、物品。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記遮光性のインクは光反射性である、物品。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記第2の領域と、前記遮光層の形成された遮光領域とにおいて前記記録媒体の上に塗布された前記透光性のインクの液滴と前記遮光性のインクの液滴との総和が等しい、物品。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の物品と、
前記第1の領域に光を入射させる照明装置とを有するシステム。
【請求項7】
第1の領域から第2の領域に光を導き前記第2の領域を発光させる物品を製造する方法であって、
前記第1の領域と前記第2の領域とを繋ぐように、記録媒体の上に直にまたは他の層を挟んで透光性のインクにより導光層を形成することと、
前記第2の領域の周囲の遮光領域の前記導光層の上に遮光性のインクにより遮光層を形成することと、
前記第2の領域の前記導光層の上に透光性のインクにより第1の画像を形成することと、有する方法。
【請求項8】
請求項7において、さらに、
前記遮光層の上に前記透光性のインクにより第2の画像を形成することを有する、方法。
【請求項9】
請求項7または8において、さらに、
前記導光層を形成することの前に、前記記録媒体の上に直にまたは他の層を挟んで前記遮光性のインクにより下地層を形成することを有する、方法。
【請求項10】
請求項7ないし9のいずれかにおいて、前記遮光性のインクは光反射性である、方法。
【請求項11】
請求項7ないし10のいずれかにおいて、前記導光層を形成することは、インクジェットタイプのプリンタにより前記記録媒体の上に直にまたは他の層を挟んで前記透光性のインクを吐出することを含み、
前記遮光層を形成することは、前記プリンタにより前記遮光領域の前記導光層の上に前記遮光性のインクを吐出することを含む、方法。
【請求項12】
コンピュータがインクジェットタイプのプリンタにより第1の領域と第2の領域とを繋ぐように、記録媒体の上に直にまたは他の層を挟んで透光性のインクにより導光層を形成することと、
前記第2の領域の周囲の遮光領域の前記導光層の上に遮光性のインクにより遮光層を形成することと、
前記第2の領域の前記導光層の上に透光性のインクにより第1の画像を形成することとを有するプログラム。
【図7】
【図9】
【図14】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図9】
【図14】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−53136(P2012−53136A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193662(P2010−193662)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(399063013)ナルテック株式会社 (30)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(399063013)ナルテック株式会社 (30)
【Fターム(参考)】
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