説明

導子及びこれを備える電子治療器

【課題】簡易な構成により、長期にわたってケーブルの良好な状態(健全性)を維持することができる導子及びこれを備える電子治療器を提供すること。
【解決手段】患部に電気信号を印加することにより治療を行う電子治療器の治療器本体部に接続される導子3であって、前記患部に取り付けられ、前記患部に電気信号を印加する端子部6と、前記端子部6から延ばされ、前記治療器本体部に接続されるケーブル7と、前記ケーブル7の少なくとも一端側に設けられ、前記ケーブル7の端部を覆うブッシュ部12とを備え、少なくとも一方の前記ブッシュ部12の開口端12aの内径寸法d1は、前記ケーブル7の外径寸法d2よりも大きくなっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導子及びこれを備える電子治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、長尺状のケーブルと、このケーブルの先端に設けられたコネクタ部と、これらケーブルとコネクタ部との境界部分(連結部)に設けられたブッシュ部とを備えた各種電子機器が知られている。
このようなケーブルは、ケーブル自体に曲げ応力がかかると、ケーブルが、ブッシュ部の先端において局部的に屈曲してしまい、ケーブルが断線してしまう。
そこで、ブッシュ部に取り付けられるケーブル断線防止器が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このケーブル断線防止器は、先端部分が湾曲しケーブルが載せられる支え部と、ブッシュ部に取り付けるための取り付け部とを備えるものである。
【特許文献1】特開平11−54202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような特許文献1に記載のケーブル断線防止器では、支え部の先端部分においてケーブルを支持することにより、ケーブルの曲げ応力をある程度分散させることができるものの、支え部の先端部分においてケーブルが屈曲してしまうため、長期にわたって使用すると、ケーブルが支え部の先端部分において断線してしまうという問題がある。
また、支え部によって支えられる方向に向けてケーブルに曲げ応力がかかる場合には、そのケーブルは支え部によって支持されるものの、上記と異なる方向に向けて曲げ応力がかかる場合には、ケーブルが支え部によって支持されないため、長期にわたって使用すると、ケーブルが、ブッシュ部の先端において局部的に屈曲してしまい、ケーブルが断線してしまうという問題がある。
さらに、ケーブル断線防止器という別部材を設ける必要があるため、材料費の増大や製造工数の増加を招いてしまうという問題もある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、簡易な構成により、長期にわたってケーブルの良好な状態(健全性)を維持することができる導子及びこれを備える電子治療器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、患部に電気信号を印加することにより治療を行う電子治療器の治療器本体部に接続される導子であって、前記患部に取り付けられ、前記患部に電気信号を印加する端子部と、前記端子部から延ばされ、前記治療器本体部に接続されるケーブルと、前記ケーブルの少なくとも一端側に設けられ、前記ケーブルの端部を覆うブッシュ部とを備え、少なくとも一方の前記ブッシュ部の開口端の内径寸法は、前記ケーブルの外径寸法よりも大きくなっていることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、ブッシュ部内においてケーブルを径方向に移動させることができ、そのため、ケーブルに曲げ応力がかかったときに、ケーブルを緩やかに曲げることができる。
【0007】
また、本発明は、患部に電気信号を印加することにより治療を行う電子治療器の治療器本体部に接続される導子であって、前記患部に取り付けられ、前記患部に電気信号を印加する端子部と、前記端子部から延ばされ、前記治療器本体部に接続されるケーブルと、前記ケーブルの少なくとも一端側に設けられ、前記ケーブルの端部を覆うブッシュ部とを備え、前記ケーブルの外周面と、少なくとも一方の前記ブッシュ部の開口端の内周面との間には、前記ケーブルに曲げ応力がかけられたときに、前記ブッシュ部の内部において前記ブッシュ部の径方向に前記ケーブルを移動させるためのクリアランスが設けられていることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、ブッシュ部内においてケーブルを径方向に移動させることができ、そのため、ケーブルに曲げ応力がかかったときに、ケーブルを緩やかに曲げることができる。
【0009】
また、本発明は、前記ブッシュ部は、弾性変形可能であることを特徴とする。
【0010】
この発明においては、ケーブルの移動に合わせて、ブッシュ部が弾性変形する。
これにより、ケーブルをより緩やかに曲げることができる。
【0011】
また、本発明は、前記ブッシュ部は、螺旋状に巻回されて形成されていることを特徴とする。
【0012】
この発明においては、ケーブルの移動に合わせて、ブッシュ部が容易に弾性変形する。
これにより、ケーブルをより緩やかに曲げることができる。
【0013】
また、本発明は、前記治療器本体部と、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の導子とを備えることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の導子と同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ケーブルに曲げ応力がかかったときに、ブッシュ部の内部においてケーブルを径方向に自由に移動させることができ、ケーブルを緩やかに曲げることができることから、簡易な構成により、長期にわたってケーブルの良好な状態を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施形態1)
以下、本発明の第1の実施形態における電子治療器について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態としての電子治療器を示したものである。
電子治療器1は、所定の周波数の電気信号を発生させる電気信号発生手段(不図示)が内蔵された治療器本体2と、この治療器本体2に接続される導子3とを備えている。
【0017】
治療器本体2は、略直方体形状に構成されており、長手方向の一端は円弧状にして形成されている。治療器本体2の前面部には、電気信号の強さや印加時間などを表示する表示部8が設けられている。表示部8の近傍には、各種操作を行うための操作部10が設けられている。
また、治療器本体2の全面部のうち長手方向の他端部には、導子3を取り付けるための取り付け口4が設けられている。
【0018】
導子3は、図2に示すように、長尺状のケーブル7を備えている。ケーブル7は、一対の線部7a,7bを備えている。ケーブル7は、その基端部P1から長さ方向の途中位置P2まで線部7a,7bが連結され、さらに途中位置P2から先端部P3まではそれぞれ分岐されて構成されている。すなわち、線部7a,7bは、途中位置P2から先端部P3までは、連結されずに解放され互いにフリーになっている。線部7a,7bの先端部P3には、それぞれ矩形状の電極端子(端子部)6が設けられている。電極端子6は、患部に貼り付けられた状態で、その患部に電気信号を印加するようになっている。
【0019】
線部7a,7bの基端部P1には、治療器本体2の取り付け口に連結されるコネクタ13が設けられている。コネクタ13には、一対の電極15が設けられている。
このような構成のもと、治療器本体2の取り付け口にコネクタ13を連結することにより、導子3が治療器本体2に着脱可能に接続されるようになっている。そして、導子3が治療器本体2に接続されると、電極端子6と治療器本体2の電気信号発生手段とが、電極15及び線部7a,7b内の金属線を介して電気的に接続されるようになっている。
【0020】
さらに、線部7a,7bの基端部P1(ケーブル7とコネクタ13との連結部分)には、基端部P1を覆う円筒状のコネクタブッシュ(ブッシュ部)12が設けられている。コネクタブッシュ12は、弾性変形可能な樹脂からなっている。また、コネクタブッシュ12の開口端12aの内径寸法d1は、ケーブル7の外径寸法d2よりも大きくなっている。すなわち、開口端12aの開口面積は、ケーブル7の横断面積よりも大きくなっている。そのため、開口端12aの内周面とケーブル7の外周面との間には、所定のクリアランスCが形成されている。
【0021】
次に、このように構成された本実施形態における電子治療器1の作用について説明する。
まず、コネクタ13を取り付け口4に差し込んで導子3を治療器本体2に接続する。これにより、治療器本体2の電気信号発生手段と電極端子6とが、電極15及び線部7a,7bの金属線を介して電気的に接続される。この状態で、電極端子6を患部に貼り付ける。そして、操作部10を操作して、電気信号発生手段を駆動する。すると、電気信号発生手段によって所定の周波数の電気信号が生成され、その電気信号が、電極15、線部7a,7bの金属線及び電極端子6を介して患部に印加される。これにより、患部の治療が行われる。
【0022】
ここで、従来は、ケーブルに曲げ応力がかかると、ケーブルの基端部が局部的に屈曲してしまうことがあった。
本実施形態における電子治療器1によれば、以下のようにして、ケーブルの局部的な屈曲が防止される。
すなわち、図3に示すように、ケーブル7に曲げ応力がかかると、ケーブル7は、コネクタブッシュ12内において、コネクタブッシュ12の径方向(例えば、図3に示す矢印D)に移動する。すなわち、コネクタブッシュ12内において、ケーブル7はコネクタブッシュ12の内面に対して傾斜する。換言すれば、ケーブル7は、曲げ応力に応じて、開口端12aの全周にわたってクリアランスC内で自由に移動する。そのため、ケーブル7は、その基端P4から緩やかな曲線を描いて開口端12aを介して延ばされた状態となる。したがって、曲げ応力がケーブル7の長さ方向に分散され、局部的な屈曲が防止される。
【0023】
以上より、本実施形態における電子治療器1によれば、クリアランスC内においてケーブル7を自由に移動させることにより、ケーブル7の局部的な屈曲を防止することができることから、長期にわたってケーブルの良好な状態を維持することができる。
なお、ケーブル7に、所定値以下の曲げ応力がかかっても、クリアランスC内を自由に移動するだけで、コネクタブッシュ12の抗屈曲力による影響を回避することができる。
また、ケーブル断線防止器などのような別部材を設ける必要もなく、経済性を向上させることができる。
【0024】
また、コネクタブッシュ12は、弾性変形可能な部材からなっていることから、ケーブル7の移動に合わせて、コネクタブッシュ12を弾性変形させることができ、ケーブル7をより緩やかに曲げることができる。そのため、ケーブル7の耐久性をさらに向上させることができる。
【0025】
(実施形態2)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図4及び図5は、本発明の第2の実施形態を示したものである。
図4及び図5において、図1から図3に記載の構成要素と同一部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
この実施形態と上記第1の実施形態とは基本的構成は同一であり、ここでは異なる点についてのみ説明する。
【0026】
本実施形態においては、コネクタブッシュ(ブッシュ部)12bが、螺旋状に巻回されて形成されている。すなわち、コネクタブッシュ12bは、樹脂成型によって、螺旋状にして形成されるものである。
このような構成のもと、ケーブル7に曲げ応力がかかると、図5に示すように、その曲げ応力に応じて、コネクタブッシュ12bが容易に弾性変形する。
そのため、ケーブル7をさらに緩やかに曲げることができ、ケーブル7の耐久性を向上させることができる。
【0027】
なお、上記第1及び第2の実施形態においては、コネクタブッシュ12,12bが円筒状であるとしたが、これに限ることはなく、その形状は適宜変更可能である。例えば、図6に示すように、コネクタブッシュ(ブッシュ部)12cの基端部を細径部とし、この細径部から開口端12aに向かうにつれて径を漸次大きくして形成してもよい。これにより、細径部によってケーブル7を支持することができる。
【0028】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、ケーブル7の一端側のみにブッシュ部を設けるとしたが、これに限ることはなく、ケーブル7の一端側に加えて他端側にも(すなわちケーブル7の両端に)ブッシュ部を設けるようにしてもよい。例えば、図7に示すように、ケーブル7の先端部P3に、この先端部P3を覆うコードブッシュ(ブッシュ部)17を設けるようにしてもよい。コードブッシュ17の構成は、上記第1及び第2の実施形態の構成や図6に示す構成などと同様である。さらに、ケーブル7の一端(基端)側のコネクタブッシュ12を設けることなく、ケーブル7の他端(先端)側のみにコードブッシュ17を設けるようにしてもよい。すなわち、ケーブル7の両端のうち、少なくともいずれか一方にブッシュ部を設ければよい。
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る電子治療器の第1の実施形態を示す全体構成図である。
【図2】図1の導子を拡大して示す平面図である。
【図3】図1のケーブルの先端部を拡大して示す図であって、ケーブルが緩やかに曲がる様子を示す説明図である。
【図4】本発明に係る電子治療器の第2の実施形態を示す図であって、導子の様子を示す平面図である。
【図5】図4のケーブルの先端部を拡大して示す図であって、ケーブルが緩やかに曲がる様子を示す説明図である。
【図6】図3のコネクタブッシュの変形例を示す説明図である。
【図7】図2の導子の変形例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 電子治療器
2 治療器本体
3 導子
6 電極端子(端子部)
7 ケーブル
12,12b,12c コネクタブッシュ(ブッシュ部)
12a 開口端
17 コードブッシュ(ブッシュ部)
C クリアランス
d1 内径寸法
d2 外径寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患部に電気信号を印加することにより治療を行う電子治療器の治療器本体部に接続される導子であって、
前記患部に取り付けられ、前記患部に電気信号を印加する端子部と、
前記端子部から延ばされ、前記治療器本体部に接続されるケーブルと、
前記ケーブルの少なくとも一端側に設けられ、前記ケーブルの端部を覆うブッシュ部と
を備え、
少なくとも一方の前記ブッシュ部の開口端の内径寸法は、前記ケーブルの外径寸法よりも大きくなっていることを特徴とする導子。
【請求項2】
患部に電気信号を印加することにより治療を行う電子治療器の治療器本体部に接続される導子であって、
前記患部に取り付けられ、前記患部に電気信号を印加する端子部と、
前記端子部から延ばされ、前記治療器本体部に接続されるケーブルと、
前記ケーブルの少なくとも一端側に設けられ、前記ケーブルの端部を覆うブッシュ部と
を備え、
前記ケーブルの外周面と、少なくとも一方の前記ブッシュ部の開口端の内周面との間には、前記ケーブルに曲げ応力がかけられたときに、前記ブッシュ部の内部において前記ブッシュ部の径方向に前記ケーブルを移動させるためのクリアランスが設けられていることを特徴とする導子。
【請求項3】
前記ブッシュ部は、弾性変形可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の導子。
【請求項4】
前記ブッシュ部は、螺旋状に巻回されて形成されていることを特徴とする請求項3に記載の導子。
【請求項5】
前記治療器本体部と、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の導子と
を備えることを特徴とする電子治療器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−104518(P2008−104518A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287834(P2006−287834)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(591032518)伊藤超短波株式会社 (69)
【Fターム(参考)】