説明

導波路回路網

【課題】 プリント回路基板(PCB)上に配置された集積回路(IC)を結合するために銅トラックを使用する従来技術は、特定の伝送速度を超えるとスケーリングで限界に直面し、それらの将来の応用を制限する。
【解決手段】 本開示は、導波路回路網について述べ、この導波路回路網は、誘電体導波路を介して結合されたPCB上のICを含み、問題を有利に克服する。誘電体導波路は、他の特徴の中でも、無線周波数(RF)信号を伝送するように構成され、少なくとも100GHzの帯域幅を有する。更に、回路網は、リング型、スター型、バス型などの異なるトポロジとして構成されてもよく、適切な導波路を利用したネットワーキング装置を使用してPCB上の他の同等の回路網に結合することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に導波路回路網に関する。詳細には、但し限定的ではなく、本開示は、プリント回路基板上に取り付けられた集積回路を誘電体導波路を使用して相互接続する装置及び方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレットなどの多機能デジタル装置の採用は、近年、我々の日常生活に不可欠なものとなるまでに急増した。その結果、消費者からは、これらの装置が、フォームファクタ、より高いデータ転送速度、より長いバッテリ寿命などに関して常に改良されることが求められている。
【0003】
従来のこれらの装置は、プリント回路基板(PCB)上に配置されかつ、PCBの基板上に積層された銅系信号トレース(即ち、銅トラック)を介して電気的に相互接続された集積回路(IC)により構成される。各トラックは、コンピュータ・ネットワーク内で物理通信チャネルを共用する概念と同様に、指定されたIC間の信号チャンネルとして共用されるように構成される。例えば、イーサネット規格では、物理チャネルは、PC端末装置や独立モジュールなどのリンク装置(linkup device)へのツイストペア銅線又は光ファイバを使用して実現されることがあり、リンク装置は、通常は、層1(即ち、物理層)と層2(即ち、データリンク層)の通信能力を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、そのような目的のために銅トラックを使用することには多くの固有の問題がある。例えば、周波数に依存する損失(例えば、反射減衰、符号間干渉、クロストーク)によって起こる、データ転送速度の非線形のスケーリング特性により、銅トラックを使用して達成できる最大データ転送速度(IC間)には限度がある。そのような損失による信号減衰を補償するために、リンク性能に適合することを保証するように等化器が組み込まれる。しかしながら、等化器は、付加的な電力を消費する。更に、データ転送速度が高くなるほど損失が大きくなり、これにより、同じ性能を保証するためにより強力な等化器(それにより、より多くの電力を消費する)の使用が必要となり、悪循環となる。
【0005】
したがって、以上の問題を鑑みて、当該技術分野において、プリント回路基板上のICを相互接続するための改善された装置及び方法が有用かつ有利である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様によれば、複数の集積回路を上に有する基板と、基板上又は基板内の誘電体導波路とを有する導波路回路網又は導波路バスが提供される。複数の集積回路は、誘電体導波路を介して結合される。
【0007】
基板は、プリント回路基板でよい。各集積回路は、好ましくは平面ホーンアンテナとして構成された導波路結合器を使用して誘電体導波路に結合されてもよい。アンテナは、比較的コンパクトであり、かつ意図されたほとんどの動作周波数範囲にわたって高利得、指向性、及び許容内の損失を示すように構成されると有利なことがある。
【0008】
誘電体導波路は、無線周波数信号を伝送するように構成されてもよく、信号が並列及び/又は直列に伝送されることを可能にしてもよい。伝送は、搬送波検知多重アクセス(CSMA)プロトコル又は周波数分割多重アクセス(FDMA)方式を使用して行なわれることが好ましい。更に、誘電体導波路は、少なくとも100GHzの帯域幅を有してもい。
【0009】
更に、誘電体導波路は、複数の集積回路を相互接続して回路網を構成するように構成されてもよく、この回路網は、リング・トポロジ、スター・トポロジ又はバス・トポロジとして構成されてもよい。更に、回路網は、回路網ブリッジを使用して基板上の他の同様に構成された回路網に通信結合可能でもよい。各回路網ブリッジは、相互結合導波路(inter-coupled waveguide)又は端部結合導波路(end-coupled waveguide)として構成された受動導波路構成要素であることが好ましい。回路網ブリッジは、微小セグメント化により衝突ドメインを分離するときに種々の回路網を相互接続するのに有利であり、回路網が拡張するときの帯域幅スケーリングを可能にする。
【0010】
回路網ハブは、好ましくは信号増幅用の導波路共振器を含み、回路網がツリー・トポロジとして構成された場合には複数の集積回路を相互接続するように基板上に配置されてもよい。
【0011】
更に、誘電体導波路は、複数の個別の区分と、複数の隙間を有し個別の区分が集まる少なくとも1つの接合部とを有してもよい。各隙間の幅は、誘電体導波路を介して伝送された信号周波数の波長の約10パーセントであることが好ましい。この隙間の特徴は、反射減衰と信号損失を減少させることによって全体的な伝送品質を改善することができる。
【0012】
本開示の第2の態様によれば、複数の集積回路が上に配置されたプリント回路基板と、プリント回路基板上又はプリント回路基板内の誘電体導波路とを有する導波路回路網又は導波路バスが提供される。複数の集積回路は、誘電体導波路によって結合される。
【0013】
本開示の第3の態様によれば、基板の表面に取り付けられるか又は基板に組み込まれるように構成された誘電体導波路が提供され、誘電体導波路は、基板上に配置された集積回路に接続できるように構成された第1の端と、別の類似の誘電体導波路に接続できるように構成された第2の端とを有する。
【0014】
本開示の以上その他の態様は、後述する実施形態から明らかであり、それらの実施形態を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本開示の第1の実施形態による、プリント回路基板上に実装された試作品の導波路回路網を示す写真である。
【図2】図1の回路網に使用されるIC−導波路結合器(即ち、導波路結合器)の平面図である。
【図3】(A)〜(E)は図1の回路網に使用された従来のY接合部とスロット付きY接合部を関連性能線図と共に示す図である。
【図4】本開示による導波路回路網の第2の実施形態を示し、回路網がリング・トポロジとして構成された図である。
【図5】本開示による導波路回路網の第3の実施形態を示し、回路網がスター・トポロジとして構成され回路網ハブを含む図である。
【図6】信号増幅用の導波路共振器を内蔵する図5の回路網ハブを示す。
【図7】回路網ブリッジを介して相互結合された図1、図4及び図5の導波路回路網を含むハイブリッド回路網を示す。
【図8】相互結合された受動導波路構成要素として構成された、図7のハイブリッド回路網に使用された回路網ブリッジを示す図である。
【図9】端部結合された受動導波路構成要素として構成された、図7のハイブリッド回路網に使用された別の回路網ブリッジを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の実施形態は、以下に、添付図面を参照して開示される。
【0017】
本開示の実施形態は、以下に述べるように、誘電体導波路を使用して、基板又はプリント回路基板(PCB)上に無線周波数(RF)型導波路回路網又は導波路バスを提供することに関する。具体的には、誘電体導波路は、PCB上に配置された(即ち、取り付けられた)幾つかの集積回路(IC)を相互接続して回路網を構成する。本開示の実施形態は、極めて高速のIC間通信を必要とする分野で用途を見出すことができる。各ICは、ICを誘電体導波路に結合する導波路結合器(ICと一体化されてもよく、PCBに組み込まれてもよく、別の部品として取り付けられてもよい)を有する。導波路結合器は、信号を誘電体導波路に伝送しかつ/又は誘電体導波路から受け取ることを可能にする。信号は、既知の伝送技術及びプロトコルに基づいて並列に伝送されてもよく直列に伝送されてもよい。
【0018】
導波路バスを使用して構成された回路網の幾つかの利点には、IC間のデータ交換速度を高めることができること、装置による消費電力の削減(誘電体導波路の優れた低チャネル損失特性による)、バス・チャネルに低コストの誘電材料を使用することによる製造コストの削減(高価で取り扱いが煩雑な銅系信号トレースが不要になるので)、及び装置のよりコンパクトな装置フォームファクタを実現できること(ICと導波路バス間のインタフェース結合が単純化されるので)が挙げられる。
【0019】
図1は、本開示の第1の実施形態によるPCB102上に配置された導波路回路網100を示す。詳細には、導波路回路網100は、誘電体導波路106の異なる端部/ポートに結合されることによって、誘電体導波路(又は、導波経路)106を介して接続された複数の集積回路(即ち、IC)104を含む。IC104は、また、複数のサブICパッケージ(又は、ICダイ)107を含むことができる。例示的な実施形態では、IC104と誘電体導波路106は、当該技術分野で既知の表面実装技術を使用してPCB102の表面に取り付けられることが好ましい。必要に応じて、誘電体導波路106は、実際の必要スペースを小さくしかつPCB102のサイズを更に小型化できるようにするために、PCB102の層の中間に形成されてもよい。したがって、誘電体導波路106が、長方形(即ち、実質的に平面)、半円形、又は誘電体導波路106をPCB102の表面に対する接着又は取り付けを容易にする任意の幾何学形状(全て図示せず)の断面を有することが有利である。
【0020】
誘電体導波路106は、印刷、射出圧縮成形、エッチング、又は事前製作された導波路構成要素のPCB102への取り付けのうちのいずれかにより製作される。
【0021】
誘電体導波路106は、本質的に、様々なIC104間のデータ転送に役立つバスとして働き(即ち、共用媒体チャネルを提供する)、並列及び/又は直列データ(即ち、信号)通信を可能にするように構成されることが好ましい。したがって、IC104は全て、二重伝送モード、直列、及び並列用に設計又はプログラムされる。IC104は、必要に応じて、誘電体導波路106の直前の構成に応じて、特定の伝送モード用にプログラムされてもよい。更に、導波路106は、少なくとも100GHzの帯域幅(又は、100GHzを超える)で構成される。
【0022】
直列伝送を行なう例示的な方法は、当該技術分野で知られているような媒体アクセス制御(MAC)プロトコル、搬送波検知多重アクセス方式(CSMA)のものと類似の方法でよい。必要に応じて、衝突検出(CD)付きCSMAやトークンリング技術などの他の適切なプロトコルを採用することもできる。対応する概念を現在の状況に適用すると、全てのIC104には、同じネットワーク帯域幅での伝送に共通周波数が予め割り当てられる。各伝送前に、各IC104が、誘電体導波路106にデータ伝送が存在しているかどうかを確認するキャリア検出手順が実施される。活動が検出されない場合(即ち、誘電体導波路106が空いていることを示す)、IC104は、信号伝送を開始する。しかしながら、データ・フレーム(即ち、RF信号)を伝送している間に別の信号を検出したIC104は、伝送を直ちに停止し代わりにジャム信号を送信しなればならない。次に、IC104は、以前のデータ・フレームを再送する前に任意の時間期間待つ。各IC104は、プロトコルの上記ステップにしたがって信号を直列で伝送する。
【0023】
並列伝送の場合は、周波数分割多重(FDM)技術を利用した周波数分割多重アクセス(FDMA)方式を採用することが好ましい。この方式では、関連付けられたIC104の各対に、指定伝送周波数として固有周波数帯が割り当てられる。あるいは、複数のIC104が、幾つかのサブグループ(図示せず)に細分され、各サブグループに別個の周波数帯が割り当てられてもよい。各サブグループのメンバ内の通信は、(必要に応じて)前述のような直列伝送方法を採用してもよい。使用できる帯域幅が大きいので(100GHz以上)、この方式で、様々な対のIC104又はサブグループに異なる周波数帯を容易に割り当てできることを理解されたい。更に、割り当てられた周波数帯は、クロストークによる信号干渉を防ぐために、隣りの帯域から明確に離される。したがって、誘電体導波路106を介した進行中の伝送と独立に、IC104又はサブグループの各対は、直列伝送の制約なしにデータを迅速かつ高信頼性で交換することができる。
【0024】
図1に示されたような回路網100は、バス・トポロジとして編成される(但し、後述する実施形態で分かるように、この構成に限定されない)。各IC104は、誘電体導波路106を介して送受信される無線周波数(RF)信号を使用して他のIC104と通信することが好ましい。あるいは、IC104間の信号通信は、電磁スペクトルの任意の所望の周波数範囲で実行されてもよい。したがって、回路網100に採用された通信周波数により、特定の周波数による伝送を可能にする適切な材料(即ち、固有信号伝搬に対する整合特性を有する)を使用して誘電体導波路106を形成する。
【0025】
各IC104は、更に、図2に示されたIC−導波路結合器(即ち、導波路結合器)200を使用して、それぞれのポートで誘電体導波路106と接続する。導波路結合器200は、各IC104の一部として一体形成されてもよく(例えば、IC104のインタポーザに組み込まれる)、PCBに組み込まれてもよく、あるいは外付けアドオン構成要素として入手されてもよい。採用する導波路結合器200の特定のフォームファクタの決定は、特定用途の必要条件に依存する。1つの好ましい実施形態では、導波路結合器200は、図2に示されたような極めて広帯域幅の横電磁モード(TEM)平面ホーンアンテナ202を有する。詳細には、各IC104は、ボンディングワイヤを使用して導波路結合器200の接地−信号−接地(GSG)パッド(図示せず)に接合することによって、平面ホーンアンテナ202に取り付けられる。次に、平面ホーンアンテナ202を介して、接続された関連誘電体導波路106に信号を伝送することができる。誘電体導波路106の端部を平面ホーンアンテナ202に取り付ける位置合わせ公差はかなり大きく(一実施形態によれば)、その結果、誘電体導波路106は、結合を達成するために平面ホーンアンテナ202の中央部分に単純に配置される。更に、平面ホーンアンテナ202は、高域通過周波数応答(即ち、高域フィルタリング)を特徴とし、その指向性により比較的コンパクトになり、かつ意図された動作周波数のほとんどで高ゲイン、指向性、許容内の損失などの装置特性を示すように構成されることが好ましい。平面ホーンアンテナ202が、別個の構成要素として存在するとき、コンパクトさは、IC104に取り付けやすくするのに役立つ。更に、導波路結合器200は、最適な装置相互運用を保証するために誘電体導波路106の周波数応答と整合するように構成される。
【0026】
図1に示されたように、誘電体導波路106は、複数の個別の区分から形成され、信号接合部108で結合され(即ち、Y接合部108として構成され)、信号接合部108で、信号が分割又は結合されてもよい。あるいは、誘電体導波路106は、回路網100に規定されたトポロジ・タイプにより、単一の連続部分から形成されてもよい。IC104に結合されていない回路網100上の個別の区分はどれも、信号反射を防ぐために信号終端装置(図示せず)を使用して終端させなければならず、そうでない場合は干渉を引き起こすことを理解されたい。図3(A)に示された従来のY接合部302を参照すると、通常、接合部108で信号が分岐されたときに幾何学寸法の急激な変化により検出可能な信号損失が生じ、その結果、誘電体導波路106内のその区分でインピーダンス変化が生じ、その結果、望ましくない電磁波の反射と放射が起こる。この観察された現象による従来のY接合部302の関連した信号損失性能は、図3(B)のグラフに示され、このグラフから、各個別の区分の反射減衰と任意の2つの区分間の伝搬損失が、実質的に性能に影響を及ぼすほどかなり大きいことが分かる。
【0027】
したがって、信号分割により生じる信号損失を最小にするために、図3(C)に示されたようなスロット付き接合部304が、図1の回路網100に使用するように提案され適応される。具体的には、スロット付きY接合部304の全ての個別の区分(即ち、サブ分岐)はそれぞれ、関連付けられた接合部108の他の区分の端と合うように構成された(即ち、矢印状に形成された)端で、実質的に類似の対称形構造を有するように構成される。導波路経路106の形状の急激な変化を回避することによって、従来の設計で見られたような望ましくない信号損失作用が緩和され有益である。また、これにより、更に接合部108の設計と製造が単純化される(例えば、複雑な回路網の導波経路106の組み立てを容易にすることができる)。このようにして、接合部108の特定の区分で伝送される信号を対称的に分割して(即ち、均等な分割比を達成する)、他の区分に伝播させることができる。この反対に、接合部108の他の区分からの信号を逆に組み合わせて、宛先区分に少ない損失率で伝送することができる。
【0028】
性能を更に改善するために、スロット付きY接合部304は、隣り合った個別の区分が集まる接合点で間に狭い隙間(図3(E)の拡大図で示されたように)ができるように構成される。これらの不連続性により、個別の区分間の相互結合効果が減少し、それにより信号の反射と放射が更になくなる。各隙間の幅は、誘電体導波路106内で伝送される信号周波数の波長の約10パーセントであることが好ましい。図3(D)は、スロット付きY接合部304の関連した信号損失性能を示す。従来のY接合部302(図3(B)に示されたような)と比較して、スロット付きY接合部304の反射減衰と信号損失の両方がかなり改善されたことが分かる。
【0029】
図4の別の実施形態は、リング・トポロジとして配置された導波路回路網400を示す。詳細には、この回路網400は、PCB404上のループ402と、ループ402に沿った異なる箇所で結合された複数のIC406(それぞれの導波路結合器200を介して)として構成された誘電体導波路を有する。ループ402が、単一の連続導波路経路として構成されるので、図1のバス・トポロジ回路網100のように信号終端装置がなくてもよく、信号接合部108が構成されなくてもよい。
【0030】
図5に、スター・トポロジ配列として編成された導波路回路網500のその他の実施形態を示す。この構成では、回路網500は、PCB504上に、回路網ハブ506によって全て中心で接続された複数の個別の誘電体導波路区分502を有する。各区分502の一端は、IC508に結合され、他端は、回路網ハブ506に接続される。したがって、IC508は全て、共通の接続点である回路網ハブ506によって間接的に結合される。回路網ハブ506は、信号衝突などを検出する(衝突が検出された場合に全てのIC506にジャム信号を送ることも含んでもよい)信号反応器(信号ブーストを含んでもよい)として働くような機能を提供することが好ましい。スター・トポロジ回路網500の利点には、集中しない故障が回路網500に影響を及ぼすのを防ぐこと(回路網ハブ506に接続する個別の区分による各IC508の固有の分離により)、故障構成要素の容易な検出を可能にすること、多すぎる数のノード(即ち、IC506)により信号の不要な伝送を防ぐことにより性能を高めること、及び極めて拡張性の高い特性により回路網性能を比較的容易にアップグレードできること(例えば、ハブ性能を高めるか、追加のIC506を接続する)が挙げられる。
【0031】
回路網ハブ506は、また、信号増幅(信号ブーストを提供する場合)のために、図6に示されたような導波路共振器600を内蔵してもよい。導波路共振器600は、図示されたようにPCB604上に筐体又は空洞(例えば、リング)を形成するように誘電体導波路部分602を構成することを含む。次に、伝送された電磁気信号のエネルギーが、信号を増幅する共振条件を確立するようにこの容積内に蓄積される。また、スター・トポロジ回路網500が外部回路網に接続された場合は、回路網ハブ506が、様々な周波数を処理するのに適した範囲の異なる構成の共振器(図示せず)を内蔵することが好ましい。更に、導波路共振器は、通常、Q因子(Q)に基づいて分類され、共振器の周波数応答の鋭さは、Q因子と共に高くなる。したがって、導波路共振器600が高いQ因子で構成されることが望ましい。
【0032】
前述の実施形態に限定されないが、誘電体導波路106は、代替として、メッシュ、完全接続、ライン、ツリー型(全て図示されない)などの他のトポロジ・タイプの回路網(IC104を含む)が実現可能なように構成されてもよい。
【0033】
図7は、図1のバス・トポロジ回路網100と、図4のリング・トポロジ回路網400と、図5のスター・トポロジ回路網500とを組み合わせることにより構成されたハイブリッド回路網700(PCB702上)を示す。より詳細には、様々な回路網100,400,500は、回路網ブリッジ704を使用して相互結合されることが好ましい。この構成では、回路網ハブ506が、スター・トポロジ回路網500を他の種々雑多な回路網100,400に接続する点を提供することを理解されたい。回路網ブリッジ704は、衝突ドメインを分離することがあるときに(微小セグメント化(micro-segmentation)により)種々の回路網を相互接続するのに有利であり、回路網700が拡張するときに帯域幅スケーリングを可能にする。あるいは、複数の回路網区分をデータリンク層(即ち、層2)又はネットワーク層(即ち、層3)で接続するために、回路網ブリッジ704の代わりに、他のタイプの装置(例えば、ネットワーク・ルータ)を使用してもよい。
【0034】
それぞれの回路網100,400,500をそれぞれの負荷(即ち、他の接続された回路網)とインピーダンス整合させるために、「アイリス」(図示せず)として知られる整合装置又は同様に構成された回路が、ハイブリッド回路網700に含まれてもよい。詳細には、アイリスは、キャパシタンス(即ち、分流容量性リアクタンスとして働く)、インダクタンス(即ち、分流誘導リアクタンスとして働く)、又はこの両方の組み合わせを導波路に導入して、導波路と負荷との間の不整合により起こる信号反射を減少させるために使用され、使用しない場合は、電力損失、電力処理能力の低下、周波数感度の増大などの不良性能(malperformance)問題が起こることがある。
【0035】
更に、図5の回路網ハブ506と図7の回路網ブリッジ704は、受動的な導波路構成要素として構成される。当該技術分野で一般に知られているように、受動構成要素は電力を得ることができず、能動構成要素は電力を得ることができる。例示的な実施形態によれば、回路網ハブ506とブリッジ704を構成するために使用される誘電材料は、好ましくは、切り換え又は変調に関して顕しい付加的電磁気作用を示してはならず、またハイブリッド回路網700の安定動作を保証するために温度ドリフトに比較的鈍感でなければならない。
【0036】
図8は、ハイブリッド回路網700に使用される回路網ブリッジ800の回路実装を示す。PCB802上に構成された回路網ブリッジ800は、近くに配置された2つの誘電体導波路部分804から構成される。そのような構成を有する装置は、相互結合導波路として知られる。相互結合導波路は、4ポート・カプラとして構成され、中継された信号は、導波路部分804の一方の半分に結合され、また他方の半分にも伝送されることが好ましい。回路網ブリッジ800の結合強さは、導波路部分804間の隙間幅を調整することによって変更されてもよい。
【0037】
図9は、ハイブリッド回路網700で使用される回路網ブリッジ900の代替の回路実装を示す。具体的には、PCB904上の誘電体導波路部分902は、端部結合導波路として構成される。一実施形態では、端部結合導波路は、3ポート・カプラとして構成され、中継された信号のエネルギーを、導波路部分902の全ての区分で等しく伝送することができる。更に、この構成での信号終端装置の使用を回避するために、導波路部分902の結合長が、ほぼ伝送信号周波数の4分の1波長又はその倍数であることを理解されたい。
【0038】
本開示を図面と以上の説明で詳細に述べたが、そのような図面と説明が、限定的ではなく説明的又は例示的なものと見なされ、本開示は、開示された実施形態に限定されない。
【0039】
請求された開示を実施する際に、当業者は、開示された実施形態に対する他の変形を理解し実行することができる。特許請求の範囲において、用語「含む(comprising)」は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」または[an」は、複数を除外しない。様々な従属クレームで特定の手段が列挙されたという単なる事実は、そのような手段の組み合わせを有利に使用できることを意味する。
【符号の説明】
【0040】
100 導波路回路網
102 基板
104 集積回路
106 誘電体導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波路回路網又は導波路バスであって、
複数の集積回路が上に配置された基板と、
前記基板上又は前記基板内の誘電体導波路とを有し、
前記複数の集積回路が前記誘電体導波路を介して結合された、導波路回路網又は導波路バス。
【請求項2】
前記誘電体導波路が、無線周波数信号を伝送するように構成された、請求項1に記載の導波路回路網又は導波路バス。
【請求項3】
前記誘電体導波路が、少なくとも100GHzの帯域幅を有するように構成された、請求項1又は2に記載の導波路回路網又は導波路バス。
【請求項4】
前記誘電体導波路が、前記複数の集積回路を相互接続して回路網を構成するように構成され、前記回路網は、リング・トポロジ、スター・トポロジ、又はバス・トポロジとして構成された、請求項1から3のいずれか一項に記載の積導波路回路網又は導波路バス。
【請求項5】
前記回路網が前記ツリー・トポロジとして構成された場合に、前記複数の集積回路を中心で相互接続するために前記基板上に配置された回路網ハブを更に有する、請求項4に記載の導波路回路網又は導波路バス。
【請求項6】
前記回路網ハブが、信号増幅用の導波路共振器を含む受動導波路構成要素である、請求項5に記載の導波路回路網又は導波路バス。
【請求項7】
前記回路網が、回路網ブリッジを使用して前記基板上の他の同様に構成された回路網と通信可能である、請求項4〜6のいずれか一項に記載の導波路回路網又は導波路バス。
【請求項8】
各回路網ブリッジが、相互結合導波路又は端部結合導波路として構成された受動導波路構成要素である、請求項7に記載の導波路回路網又は導波路バス。
【請求項9】
前記誘電体導波路、回路網ハブ、及び回路網ブリッジが、印刷、射出圧縮成形及びエッチングのうちの1つの製造方法を使用して前記基板上に構成された、請求項5と請求項7に記載の導波路回路網又は導波路バス。
【請求項10】
前記誘電体導波路が、複数の個別の区分と、複数の隙間を有し前記個別の区分が集まる少なくとも1つの接合部とを有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の導波路回路網又は導波路バス。
【請求項11】
各隙間の幅が、前記誘電体導波路を介して伝送される信号周波数の波長の約10パーセントである、請求項10に記載の導波路回路網又は導波路バス。
【請求項12】
各集積回路が、導波路結合器を使用して前記誘電体導波路に結合された、請求項1〜11のいずれか一項に記載の導波路回路網又は導波路バス。
【請求項13】
前記導波路結合器が、平面ホーンアンテナとして構成された、請求項12に記載の導波路回路網又は導波路バス。
【請求項14】
前記誘電体導波路が、前記無線周波数信号を並列かつ/又は直列に伝送できるように構成された、請求項2に記載の導波路回路網又は導波路バス。
【請求項15】
前記基板が、プリント回路基板である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の導波路回路網又は導波路バス。
【請求項16】
導波路回路網又は導波路バスであって、
複数の集積回路が上に配置されたプリント回路基板と、
前記プリント回路基板上又は前記プリント回路基板内の誘電体導波路とを有し、
前記複数の集積回路が、前記誘電体導波路を介して結合された、導波路回路網又は導波路バス。
【請求項17】
基板の表面に取り付けられたか又は前記基板に組み込まれるように構成された誘電体導波路であって、
前記基板上に配置された集積回路に接続できるように構成された第1の端と、
別の同等な誘電体導波路に接続できるように構成された第2の端とを有する誘電体導波路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−46413(P2013−46413A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−138606(P2012−138606)
【出願日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】