説明

導火線及び該導火線を利用した爆発装置

【課題】導火線が燃焼する時、その燃焼が激しくなく、火花が発生せず、制御しやすく、且つ、重量が軽く、機械強度が強く、小型の爆発装置に応用することができる導火線及び該導火線を利用した爆発装置を提供する。
【解決手段】導火線10は、少なくとも一つのカーボンナノチューブワイヤ複合構造体110を含む。前記カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110は、複数のカーボンナノチューブ112からなるカーボンナノチューブワイヤ111と、助燃部材114と、を含み、前記助燃部材114が前記カーボンナノチューブワイヤ111の表面に被覆される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導火線及び該導火線を利用した爆発装置に関し、特にカーボンナノチューブを使用した導火線及び該導火線を利用した爆発装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
導火線は、例えば、爆破作業、爆竹、花火などに広く応用される。導火線とは、黒色火薬を心薬とし、紙などでひも状に被覆した線のことである。爆発物などにつなげ、端に火をつけると、一定の速度で燃焼しながら進み、一定時間後に他の端から火を吹き、爆発物に点火する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記黒色火薬は、その化学的性質が活発であり、それ自体が燃焼又は爆発できるので、火花が発生しやすい。また、前記黒色火薬の燃焼速度が制御しにくい。従って、前記導火線は、製造時、及び貯蔵時において、大きな危険を有するという欠点がある。
【0005】
従って、本発明は、安全な導火線及び該導火線を利用した爆発装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
導火線は、少なくとも一つのカーボンナノチューブ複合構造体を含み、前記カーボンナノチューブ複合構造体が、複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブワイヤと、助燃部材と、を含み、前記助燃部材が前記カーボンナノチューブワイヤの表面に被覆される。
【0007】
前記カーボンナノチューブワイヤにおける各々のカーボンナノチューブの表面には、前記助燃部材が被覆される。
【0008】
爆発装置は、前記導火線と、爆発物と、を含む。前記導火線が前記爆発物に連接される。
【発明の効果】
【0009】
従来の導火線と比べると、本発明の導火線は次の優れた点がある。第一に、前記導火線が複数のカーボンナノチューブを含み、前記複数のカーボンナノチューブの表面に前記助燃部材が形成され、該助燃部材がナノメートルスケールの厚さに形成されるので、前記導火線が燃焼する時、その燃焼が激しくなく、火花が発生せず、制御しやすいので、高い安全性を有する。また、前記カーボンナノチューブの重量が軽く、強い機械強度を有するので、該カーボンナノチューブを利用した導火線は、重量が軽く、機械強度が強く、小型の爆発装置に応用することができる。前記導火線の製造方法が簡単であるので、該導火線は、コストが低い。従って、前記導火線を利用した爆発装置は、高い安全性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1に係る導火線の構造を示す図である。
【図2】本発明の実施例1に係る導火線における一つのカーボンナノチューブとその表面に被覆された助燃部材との断面を示す図である。
【図3】本発明の実施例1に係る導火線における非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図4】本発明の実施例1に係る導火線におけるねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図5】本発明の実施例2に係る導火線の構造を示す図である。
【図6】本発明の実施例3に係る導火線の構造を示す図である。
【図7】本発明の実施例に係る爆発装置の構造を示す図である。
【図8】本発明の実施例に係る導火線におけるカーボンナノチューブ複合構造体の製造装置を示す図である。
【図9】本発明の実施例に係る導火線におけるカーボンナノチューブ複合構造体の製造方法において利用されたカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図10】図9中のカーボンナノチューブフィルムを引き出す見取り図である。
【図11】図9中のカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブセグメントの構造を示す図である。
【図12】本発明の実施例に係る助燃部材である銀が堆積されたカーボンナノチューブフィルムの構造のSEM写真である。
【図13】図12中の助燃部材である銀が堆積されたカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの構造のSEM写真である。
【図14】本発明の実施例に係る導火線におけるねじれ状カーボンナノチューブワイヤ複合構造体のSEM写真である。
【図15】図14中のねじれ状カーボンナノチューブワイヤ複合構造体におけるカーボンナノチューブのSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0012】
図1及び図2を参照すると、本発明の実施例は、導火線10を提供する。前記導火線10は、一本のカーボンナノチューブワイヤ複合構造体110からなる。該カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110は、複数のカーボンナノチューブワイヤ111及び助燃部材114を含む。該カーボンナノチューブワイヤ111は、複数のカーボンナノチューブ112からなり、該複数のカーボンナノチューブ112が前記カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110の長手方向に沿って、配向して配列される。前記助燃部材114は、各々の前記カーボンナノチューブ112の表面に被覆される。前記導火線10の一端に火をつけると、前記助燃部材114が前記カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110の長手方向に沿って連続的に燃焼反応を行うことができる。
【0013】
前記カーボンナノチューブワイヤ111は、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又はねじれ状カーボンナノチューブワイヤである。
【0014】
図3を参照すると、前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、該カーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列され、端と端が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。該非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、分子間力で端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。各々の前記カーボンナノチューブセグメントは、該カーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列され、端と端が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。
【0015】
図4を参照すると、前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、該カーボンナノチューブワイヤの中心軸を軸に、螺旋状に配列された複数のカーボンナノチューブを含む。前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、分子間力で端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。各々の前記カーボンナノチューブセグメントは、分子間力で端と端が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、直径が0.5ナノメートル〜100マイクロメートルである。
【0016】
前記カーボンナノチューブワイヤ111の直径は、4.5ナノメートル〜1ミリメートルであり、10マイクロメートル〜30マイクロメートルであることが好ましい。前記カーボンナノチューブワイヤ111におけるカーボンナノチューブ112と前記助燃部材114との質量比が1:10〜1:1であり、1:5〜4:5であることが好ましい。前記カーボンナノチューブワイヤ111の直径が小さいので、前記導火線10の燃焼が激しくなく、その燃焼が中止されやすい。従って、前記導火線10は、制御しやくなる。
【0017】
前記カーボンナノチューブ112は、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブの一種又は多種である。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5ナノメートル〜50ナノメートルであり、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1.0ナノメートル〜50ナノメートルであり、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5ナノメートル〜50ナノメートルである。
【0018】
前記カーボンナノチューブワイヤ111におけるカーボンナノチューブ112の表面に助燃部材114が被覆される。該助燃部材114とは、前記カーボンナノチューブワイヤ111の燃焼を助ける材料である。即ち、前記助燃部材114は、化学反応により熱を放出することによって、前記カーボンナノチューブワイヤ111を燃焼させるものである。
【0019】
前記助燃部材114は、固体状態の強酸化剤又は金属である。該固体状態の強酸化剤は、強酸化性を有する金属酸化物及び塩基類を含む。該強酸化性を有する金属酸化物は、酸化第一鉄(FeO)、二酸化マンガン(MnO)又は四酸化三マンガン(Mn)などである。前記塩基類は、硝酸カリウム及び硝酸アンモニウムなどの硝酸塩と、過マンガン酸カリウム(KMnO)及び過マンガン酸ナトリウム(NaMnO)などの過マンガン酸塩と、二クロム酸カリウム(KCr)及び二クロム酸ナトリウム(NaCr)などの重クロム酸塩を含む。前記金属は、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、銀又はチタンなどである。
【0020】
本実施例において、前記カーボンナノチューブワイヤ111が非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤであり、前記助燃部材114が銀からなり、前記カーボンナノチューブワイヤ111と前記銀との質量比例は、1:10である。前記助燃部材114が各々の前記カーボンナノチューブ112の表面に被覆され、その厚さが10ナノメートル〜20ナノメートルである。各々の前記カーボンナノチューブ112の表面に被覆された前記助燃部材114が薄いので、前記導火線10の直径が小さい。従って、該導火線10に点火すると、その燃焼が激しくなく、ほとんど火花は発生しない。従って、前記導火線10は、優れた安全性を有し、正確に爆発物に点火することができる。
【0021】
勿論、前記助燃部材114は、前記カーボンナノチューブワイヤ111における各々のカーボンナノチューブ112の表面に被覆せず、単に該カーボンナノチューブワイヤ111の表面に被覆されてもよい。
【0022】
(実施例2)
図1及び図5を参照すると、本実施例2は、導火線20を提供する。前記導火線20は、複数のカーボンナノチューブワイヤ複合構造体110を含む。前記複数のカーボンナノチューブワイヤ複合構造体110は前記導火線20の長手方向に沿って、平行して緊密に配列される。各々の前記カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110は、複数のカーボンナノチューブワイヤ111及び助燃部材114を含む。該カーボンナノチューブワイヤ111は、複数のカーボンナノチューブ112からなる。該複数のカーボンナノチューブ112は、前記カーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列され、端と端が接続される。前記助燃部材114は、各々の前記カーボンナノチューブ112の表面が被覆される。前記導火線20の直径が20ミリメートル〜30ミリメートルに達することができる。複数の前記カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110が前記導火線20の長手方向に沿って、平行して緊密に配列されるので、前記助燃部材114は、前記複数の前記カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110の長手方向に沿って反応を行って、前記導火線20が優れた燃焼特性を有する。
【0023】
また、前記カーボンナノチューブワイヤ111は、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤに制限されず、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤであってもよい。
【0024】
(実施例3)
図1及び図6を参照すると、本実施例3は、導火線30を提供する。前記導火線30は、複数のカーボンナノチューブワイヤ複合構造体110からなる。前記複数のカーボンナノチューブワイヤ複合構造体110が互いに絡み合って、前記導火線30の長手方向に沿って、螺旋状に緊密に配列される。各々の前記カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110は、カーボンナノチューブワイヤ111及び助燃部材114を含む。該カーボンナノチューブワイヤ111は、複数のカーボンナノチューブ112からなる。該複数のカーボンナノチューブ112は、前記カーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列され、端と端が接続される。前記助燃部材114は、各々の前記カーボンナノチューブ112の表面に被覆される。前記導火線20の直径が20ミリメートル〜30ミリメートルに達することができる。複数の前記カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110が互いに絡み合うので、各々の前記カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110の間の結合力が強くなる。従って、前記導火線30は、優れた力学性能及び優れた強度を有する。
【0025】
また、前記カーボンナノチューブワイヤ111は、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤに制限されず、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤであってもよい。
【0026】
本発明の実施例の導火線におけるカーボンナノチューブワイヤ複合構造体110は、複数のカーボンナノチューブ112及び助燃部材114を含む。なお、前記カーボンナノチューブ112の直径が小さく、重量が軽く及び優れた強度を有するので、該カーボンナノチューブ112を利用した導火線は、直径が小さく、重量が軽く及び優れた強度を有する。従って、前記導火線は、小型の爆発装置に応用されることができる。
【0027】
図7を参照すると、本実施例は、爆発装置40を提供する。該爆発装置40は、導火線42及び爆発物44を含む。前記導火線42は、前記爆発物44に連接される。具体的には、前記導火線42は、前記爆発物44の中に直接挿入できる。前記導火線42に点火すると、該導火線42が燃焼して放出した熱が、前記爆発物44に伝導され、該爆発物44が爆発する。
【0028】
前記導火線42としては、前記実施例1〜3における導火線10、20、30を採用できる。前記爆発物44は、花火、爆竹、雷管、爆薬又は爆弾などである。
【0029】
図8及び図9を参照すると、本発明は、カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110の製造方法を提供する。該製造方法は、下記のステップを含む。
【0030】
第一ステップでは、カーボンナノチューブアレイ216を提供する。
【0031】
前記カーボンナノチューブアレイ216は、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)であり、該超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法は、化学気相堆積法を採用する。該製造方法は、次のステップを含む。ステップ(a)では、平らな基材を提供し、該基材はP型のシリコン基材、N型のシリコン基材及び酸化層が形成されたシリコン基材のいずれか一種である。本実施例において、4インチのシリコン基材を選択することが好ましい。ステップ(b)では、前記基材の表面に、均一的に触媒層を形成する。該触媒層の材料は鉄、コバルト、ニッケル及びその2種以上の合金のいずれか一種である。ステップ(c)では、前記触媒層が形成された基材を700℃〜900℃の空気で30分〜90分間アニーリングする。ステップ(d)では、アニーリングされた基材を反応炉に置き、保護ガスで500℃〜740℃の温度で加熱した後で、カーボンを含むガスを導入して、5分〜30分間反応を行って、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1)を成長させることができる。該カーボンナノチューブアレイの高さは100マイクロメートル以上である。該カーボンナノチューブアレイは、互いに平行し、基材に垂直に生長する複数のカーボンナノチューブからなる。該カーボンナノチューブは、長さが長いため、部分的にカーボンナノチューブが互いに絡み合っている。生長の条件を制御することによって、前記カーボンナノチューブアレイは、例えば、アモルファスカーボン及び残存する触媒である金属粒子などの不純物を含まなくなる。
【0032】
本実施例において、前記カーボンを含むガスとしては、例えば、アセチレン、エチレン、メタンなどの活性な炭化水素が選択され、エチレンを選択することが好ましい。保護ガスは窒素ガスまたは不活性ガスであり、アルゴンガスが好ましい。
【0033】
本実施例により提供されたカーボンナノチューブアレイは、前記の製造方法により製造されることに制限されず、アーク放電法またはレーザー蒸発法で製造してもよい。
【0034】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブアレイ216から、一枚のカーボンナノチューブフィルム214を引き伸ばす。
【0035】
まず、ピンセットなどの工具を利用して前記カーボンナノチューブアレイ216における複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。例えば、一定の幅を有するテープを利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。次に、所定の速度で前記複数のカーボンナノチューブを引き出し、複数のカーボンナノチューブ束からなる連続のカーボンナノチューブフィルム214を形成する。
【0036】
前記複数のカーボンナノチューブを引き出す工程において、前記複数のカーボンナノチューブがそれぞれ前記基材から脱離すると、分子間力で前記カーボンナノチューブ束が端と端で接合され、連続的なカーボンナノチューブフィルム214が形成される(図10を参照)。
【0037】
図9を参照すると、前記カーボンナノチューブフィルム214は、自立構造を有したものである。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブフィルムを独立して利用することができるという形態のことである。すなわち、前記カーボンナノチューブフィルムを対向する両側から支持して、前記カーボンナノチューブフィルムの構造を変化させずに、前記カーボンナノチューブフィルムを懸架させることができることを意味する。前記カーボンナノチューブフィルム214において、前記複数のカーボンナノチューブの大部分は、前記カーボンナノチューブフィルム214の表面に平行に、カーボンナノチューブフィルム214を引き出す方向に沿って、且つ、同じ方向に沿って配列されている。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で端と端が接続されている。
【0038】
微視的には、前記カーボンナノチューブフィルム214において、前記同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブ以外に、該同じ方向に沿っておらずランダムな方向を向いたカーボンナノチューブも存在している。ここで、該ランダムな方向を向いたカーボンナノチューブは、前記同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブと比べて、割合は小さい。
【0039】
図11を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルム214は、複数のカーボンナノチューブセグメント143bを含む。前記複数のカーボンナノチューブセグメント143bは、長さ方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143bは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブを含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143bにおいて、前記複数のカーボンナノチューブの長さは実質的に同じである。
【0040】
第三ステップでは、前記カーボンナノチューブフィルム214の表面に助燃部材114を形成して、前記カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110を形成する。
【0041】
前記助燃部材114は、固体状態の強酸化剤又は金属からなる。該固体状態の強酸化剤は、強酸化性を有する金属酸化物及び塩基類を含む。
【0042】
前記カーボンナノチューブフィルム214の表面に助燃部材114を形成することは、物理的方法、化学的方法又は他の方法を採用できる。物理的方法とは、例えば真空蒸着法又はイオンスパッタリング法などの物理気相成長法を含む。化学的方法とは、例えば電気めっき又は化学めっきなどの方法を含む。また、前記カーボンナノチューブフィルム214を、強酸化性を有する塩基類の溶液に浸漬した後、該カーボンナノチューブフィルム214を乾燥させて、前記塩基類が前記カーボンナノチューブフィルム214におけるカーボンナノチューブの表面に被覆することも可能である。
【0043】
本実施例において、真空蒸着法で前記カーボンナノチューブフィルム214の表面に助燃部材114を形成する。図8を参照して、該助燃部材114は次の工程により得られる。まず、反応室210を提供し、該反応室210が底部(図示せず)及び頂部(図示せず)を有する。前記反応室210の底部及び頂部にそれぞれ一つの蒸着源212を設置する。前記頂部における蒸着源212と、前記底部における蒸着源212とが対向して間隔を置いて設置される。前記頂部における蒸着源212と、前記底部における蒸着源212との間に堆積領域が形成される。各々の蒸着源212を加熱装置(図示せず)によって加熱することができる。前記カーボンナノチューブフィルム214は、前記頂部における蒸着源212と、前記底部における蒸着源212との間に前記二つの蒸着源212と対向して間隔を置いて設置される。即ち、前記カーボンナノチューブフィルム214は、前記堆積領域に設置される。前記反応室210が、真空装置(図示せず)と連接される。前記真空装置により、該反応室210の内部の空気を排出し、該反応室210の中を真空化する。前記蒸着源212から蒸着される材料は、前記助燃部材114の材料である。本実施例において、前記助燃部材114の材料が銀である。
【0044】
次に、前記加熱装置によって前記蒸着源212を加熱すると、前記助燃部材114の材料は溶融して蒸気になる。前記助燃部材114の材料の蒸気は、前記カーボンナノチューブフィルム214に接触すると、該カーボンナノチューブフィルム214の表面において凝集し、助燃部材114が形成される。前記カーボンナノチューブフィルム214における隣接するカーボンナノチューブの間には隙間が存在し、該カーボンナノチューブフィルム214が薄いので、前記助燃部材114は、前記カーボンナノチューブフィルム214の中に浸透でき、各々のカーボンナノチューブ112の表面に被覆できる。本実施例において、各々の前記カーボンナノチューブ112の表面に銀層が被覆される。図12及び図13は、前記助燃部材114である銀層が堆積されたカーボンナノチューブフィルムの構造の写真である。
【0045】
勿論、前記カーボンナノチューブフィルム214の表面に多層の異なる助燃部材114を堆積するために、前記反応室210の底部及び頂部にそれぞれ複数の蒸着源212を設置することができる。前記頂部における蒸着源212と、前記底部における蒸着源212とがそれぞれ、対向して間隔を置いて設置される。前記頂部における蒸着源212と、それと対向する前記底部における蒸着源212との間に堆積領域が形成される。前記反応室210において、複数の蒸着源212が設置されるので、複数の堆積領域が形成される。各々の前記堆積領域における蒸着源212に含まれる助燃部材114の材料は互いに異なる。前記加熱装置により、各々の蒸着源212を加熱し、前記カーボンナノチューブフィルム214を順次に前記複数の堆積領域を通過させ、前記カーボンナノチューブフィルム214の表面に順次に多層の異なる助燃部材114を堆積することができる。
【0046】
前記助燃部材114の蒸気密度を高め、及び前記助燃部材114が酸化されることを防止するために、前記反応室210の圧力が1Pa以下に達する必要がある。本実施例において、前記反応室210の圧力が4×10−4Paである。
【0047】
勿論、前記第一ステップにおいて、カーボンナノチューブアレイ216を前記真空の反応室210に直接置くことができる。まず、前記真空の反応室210にピンセットなどの工具を利用して、前記カーボンナノチューブアレイ216から、カーボンナノチューブフィルム214を引き伸ばす。次に、前記蒸着源212を加熱し、前記カーボンナノチューブフィルム214の表面に助燃部材114を堆積する。所定の速度で前記カーボンナノチューブアレイ216から、カーボンナノチューブフィルム214を連続的に引き伸ばすと同時に、該カーボンナノチューブフィルム214を前記蒸着源212の堆積領域を通過させ、前記カーボンナノチューブフィルム214の表面に前記助燃部材114を堆積させる。従って、前記真空の反応室210を利用して、表面に前記助燃部材114が堆積されたカーボンナノチューブフィルムを連続的に製造することができる。
【0048】
前記カーボンナノチューブフィルム214の幅が大きい(100マイクロメートル以上)場合、前記カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110を形成する方法は、前記助燃部材114が堆積されたカーボンナノチューブフィルムを機械加工するステップを含む。前記機械加工するステップは、機械加工室220の中で行われる。前記機械加工する方法は、下記の二種がある。第一種:前記助燃部材114が堆積されたカーボンナノチューブフィルムをねじり、カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110を形成する。第二種:前記助燃部材114が堆積されたカーボンナノチューブフィルムを切断し、カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110を形成する。
【0049】
前記助燃部材114が堆積されたカーボンナノチューブフィルムをねじり、カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110を形成する方法は、下記の二種がある。
【0050】
第一種:前記助燃部材114が堆積されたカーボンナノチューブフィルムに接着されたピンセットなどの工具を回転モーターに固定し、該回転モーターを回転させることによって、前記助燃部材114が堆積されたカーボンナノチューブフィルムをねじり、カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110を形成する。
【0051】
第二種:紡績の軸を提供し、該紡績の軸の一端を前記助燃部材114が堆積されたカーボンナノチューブフィルムに接着させた後、前記紡績の軸を時計回り又は反時計回りの方向に沿って、回転させることによって、前記助燃部材114が堆積されたカーボンナノチューブフィルムをねじり、カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110を形成する。
【0052】
前記二種の方法で製造されたカーボンナノチューブワイヤ複合構造体110は、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ複合構造体である。図14及び図15は、カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110のSEM写真である。
【0053】
前記助燃部材114が堆積されたカーボンナノチューブフィルムを切断して、カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110を形成する方法では、前記カーボンナノチューブフィルム214の引き伸ばし方向に沿って、前記助燃部材114が堆積されたカーボンナノチューブフィルムを切断し、複数のカーボンナノチューブワイヤ複合構造体110を形成する。該カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110は、本発明の実施例1における導火線10である。
【0054】
勿論、前記複数のカーボンナノチューブワイヤ複合構造体110を積層し、又はねじることによって、大きな直径を有するカーボンナノチューブワイヤ複合構造体110を形成することができる。
【0055】
前記カーボンナノチューブフィルム214の幅が小さい(例えば、0.5ナノメートル〜100マイクロメートル)場合、前記助燃部材114が堆積されたカーボンナノチューブフィルムを処理する必要がなく、カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110とすることができるが、前記助燃部材114が堆積されたカーボンナノチューブフィルムをねじることによって、カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110を形成することもできる。
【0056】
前記カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110をスプール224に収集することもできる。具体的には、前記カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110を前記スプール224に巻き付ける。
【0057】
また、前記助燃部材114が堆積された複数のカーボンナノチューブフィルムを積層してねじることによって、カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110を形成することができる。これによって、形成されたカーボンナノチューブワイヤ複合構造体110の直径は、引き伸ばされた前記カーボンナノチューブフィルム214のサイズに制限されず、実際の応用に応じていずれかの直径を有するカーボンナノチューブワイヤ複合構造体110を形成できる。さらに、複数の前記カーボンナノチューブワイヤ複合構造体110を平行に設置し、本発明の実施例2における非ねじれ状導火線20を形成することができる。或いは、複数のカーボンナノチューブワイヤ複合構造体110をねじり、本発明の実施例3におけるねじれ状導火線30を形成することができる。
【0058】
前記導火線は、前記方法に制限されず、例えば、カーボンナノチューブワイヤを製造して、前記カーボンナノチューブワイヤの表面に助燃部材114を形成することにより得られる。
【0059】
本発明の導火線は次の優れた点がある。第一に、前記導火線が複数のカーボンナノチューブを含み、前記複数のカーボンナノチューブの表面に助燃部材が形成され、該助燃部材がナノメートルスケールの厚さに形成されるので、前記導火線が燃焼する時、その燃焼が激しくなく、火花が発生せず、制御しやすいので、高い安全性を有する。また、前記カーボンナノチューブの重量が軽く、強い機械強度を有するので、該カーボンナノチューブを利用した導火線は、重量が軽く、機械強度が強く、小型の爆発装置に応用することができる。前記導火線の製造方法が簡単であるので、該導火線は、コストが低い。従って、前記導火線を利用した爆発装置は、高い安全性を有する。
【符号の説明】
【0060】
10、20、30、42 導火線
110 カーボンナノチューブワイヤ複合構造体
111 カーボンナノチューブワイヤ
112 カーボンナノチューブ
114 助燃部材
40 爆発装置
44 爆発物
216 カーボンナノチューブアレイ
214 カーボンナノチューブフィルム
212 蒸着源
210 反応室
220 機械加工室
224 スプール
143b カーボンナノチューブセグメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのカーボンナノチューブ複合構造体を含む導火線において、
前記カーボンナノチューブ複合構造体が、
複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブワイヤと、
助燃部材と、
を含み、
前記助燃部材が前記カーボンナノチューブワイヤの表面に被覆されることを特徴とする導火線。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブワイヤにおける各々のカーボンナノチューブの表面に、前記助燃部材が被覆されることを特徴とする、請求項1に記載の導火線。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の導火線と、爆発物と、を含む爆発装置において、
前記導火線が前記爆発物に連接されることを特徴とする爆発装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図3】
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【図4】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−73966(P2011−73966A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218850(P2010−218850)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】