説明

導線結合方法と導線結合装置

【課題】絶縁被覆を剥がさない状態で装置にセットし、導線を結合する。
【解決手段】絶縁被覆によって被覆された複数本の導線を加熱することによって導線同士が結合された結合部を形成する導線結合装置であって、誘導加熱装置の誘導加熱コイル21の内部に、空気通路38と、スラッジ飛ばし用水通路41とを形成し、空気通路38とスラッジ飛ばし用水通路41とを連通孔42によって連通させ、誘導加熱コイル21の内周面37に、空気通路に連通する噴出孔39を複数設ける。誘導加熱コイル21によって導線を加熱し、絶縁被覆を炭化させた後、噴出孔39から空気とスラッジ飛ばし用水の混合流体を噴射し、炭化した絶縁被覆を吹き飛ばす。絶縁被覆の除去が完了したら、誘導加熱コイル21により再度導線を加熱することにより、導線の芯線を溶融させて芯線同士を結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、導線結合方法と、この方法の実施に直接使用する導線結合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の導線をロウ付けにより結合する場合に、絶縁被覆材を剥がした導線間にロウ材を挟み込んだ状態で、加熱コイルと絶縁部材により挟み込んで加圧し、加熱コイルに高周波電流を流すことによりロウ材を加熱、溶融して導線同士をロウ付けする方法および装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2787838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載のものもそうであるが、従来の導線結合方法および導線結合装置では、導線を導線結合装置にセットする前に、導線に被覆されている絶縁被覆材を剥がさなければならなかった。そのため、工程数が増え、生産性が悪いという課題がある。
そこで、この発明は、絶縁被覆を剥がさない状態で装置にセットしても、導線を結合することができる導線結合方法および導線結合装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る導線結合方法では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、絶縁被覆によって被覆された少なくとも2本の導線(例えば、後述する実施例における導線100)を加熱装置(例えば、後述する実施例における誘導加熱装置20)によって結合する導線結合方法であって、
少なくとも2本の前記導線を前記絶縁被覆によって被覆された状態のまま前記加熱装置に配置する工程と、
前記加熱装置によって前記導線を加熱して前記絶縁被覆を溶融または炭化させる工程と、
溶融または炭化した前記絶縁被覆に向かって流体を吹きつけることにより、溶融または炭化した前記絶縁被覆を吹き飛ばして除去する工程と、
前記絶縁被覆が除去された前記導線を前記加熱装置によってさらに加熱して該導線同士を結合する工程と、
を備えることを特徴とする導線結合方法である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記流体は液体を含むことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記加熱装置は、前記導線を誘導加熱する誘導加熱装置(例えば、後述する実施例における誘導加熱装置20)により構成されていることを特徴とする。
【0007】
また、この発明に係る導線結合装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項4に係る発明は、絶縁被覆によって被覆された少なくとも2本の導線(例えば、後述する実施例における導線100)を加熱することによって導線同士が結合された結合部を形成する導線結合装置(例えば、後述する実施例における導線結合装置1)であって、
前記導線を加熱する加熱手段(例えば、後述する実施例における誘導加熱コイル21、交流電源24等)と、
前記導線に向かって流体を噴射し、前記加熱手段によって加熱されて溶融または炭化した前記絶縁被覆を吹き飛ばして除去する流体噴射手段(例えば、後述する実施例における空気通路38、噴出孔39,86、スラッジ飛ばし用水通路41,89等)と、
を備え、
前記加熱手段によって、前記導線の前記絶縁被覆を溶融または炭化するときの加熱と、前記絶縁被覆を除去された前記導線同士を結合して結合部を形成するときの加熱とを行うことを特徴とする導線結合装置である。
【0008】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の発明において、前記流体噴射手段によって噴射される前記流体は液体を含むことを特徴とする。
【0009】
請求項6に係る発明は、請求項4にまたは請求項5に記載の発明において、前記加熱手段は、前記導線を誘導加熱する誘導加熱手段(例えば、後述する実施例における誘導加熱コイル21)により構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の発明において、前記加熱手段は、交流電源(例えば、後述する実施例における交流電源24)に接続されたコイル(例えば、後述する実施例における誘導加熱コイル21)と、前記コイルによって囲まれて形成された導線挿入空間(例えば、後述する実施例における開口34)と、を備え、前記流体噴射手段は、前記コイルの内部に形成された流体通路(例えば、後述する実施例における空気通路38、スラッジ飛ばし用水通路41,89)と、前記流体通路から前記導線挿入空間に向かって開口する噴出孔(例えば、後述する実施例における噴出孔39、86)と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項8に係る発明は、請求項7に記載の発明において、前記流体通路は、気体が通過する気体通路(例えば、後述する実施例における空気通路38)および液体が通過する液体通路(例えば、後述する実施例におけるスラッジ飛ばし用水通路41)と、前記気体通路と前記液体通路とを連通する連通路(例えば、後述する実施例における連通孔42)と、を備え、前記気体または前記液体が前記連通路を通ることによって前記気体および前記液体の混合流体が生成され、この混合流体が前記噴出孔から噴射されることを特徴とする。
【0012】
請求項9に係る発明は、請求項8に記載の発明において、前記流体噴射手段は、
前記気体通路への前記気体の供給の有無を設定可能な気体供給設定手段(例えば、後述する実施例における空気調整バルブ27)と、
前記液体通路への前記液体の供給の有無を設定可能な液体供給設定手段(例えば、後述する実施例における切り換えバルブ28)と、
前記気体供給設定手段と前記液体供給設定手段とを制御して、前記気体通路への前記気体の供給の有無および前記液体通路への前記液体の供給の有無を切替える制御手段(例えば、後述する実施例における誘導加熱コイル統合制御ユニット13、スラッジ飛ばし用水制御ユニット14)と、
を備え、
前記制御手段は、前記液体通路に前記液体を供給するとともに前記気体通路に前記気体を供給して前記液体と前記気体の混合流体を前記噴出孔から噴射した後、流体の供給を停止するときに、前記液体通路への前記液体の供給を停止した後に、前記気体通路への前記気体の供給を停止することを特徴とする。
【0013】
請求項10に係る発明は、請求項7に記載の発明において、前記流体通路は、気体が通過する気体通路(例えば、後述する実施例における空気通路38)および液体が通過する液体通路(例えば、後述する実施例におけるスラッジ飛ばし用水通路89)と、前記気体通路と前記噴出孔とを連通する連通路(例えば、後述する実施例における連通路87)と、を備え、前記液体通路は前記連通路に連通し、前記連通路の流路断面積は前記気体通路の流路断面積よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、導線を絶縁被覆によって被覆された状態のまま加熱装置に配置した後に、被覆されていた絶縁被覆を除去して、導線同士を結合することができる。したがって、導線を加熱装置に配置する前に絶縁被覆を除去する工程が不要となり、工程数を低減することができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、加熱された導線または絶縁被覆に向かって吹き付けられた液体が気化することにより、溶融または炭化した絶縁被覆の周囲で急激に体積膨張が起こり、溶融または炭化した絶縁被覆を効果的に吹き飛ばして除去することができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、誘導加熱装置によって非接触で導線を加熱して、絶縁被覆を溶融または炭化することができるので、溶融または炭化した絶縁被覆に流体を吹き付ける際に、誘導加熱装置が流体の吹き付けの妨げになるのを抑制することができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、加熱手段によって導線を加熱し、流体噴射手段により絶縁被覆を除去して、導線同士を結合することができるので、導線を加熱手段に配置する前に絶縁被覆を除去する工程が不要となり、工程数を低減することができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、加熱された導線または絶縁被覆に向かって吹き付けられた液体が気化することにより、溶融または炭化した絶縁被覆の周囲で急激に体積膨張が起こり、溶融または炭化した絶縁被覆を効果的に吹き飛ばして除去することができる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、誘導加熱手段によって非接触で導線を加熱して、絶縁被覆を溶融または炭化することができるので、溶融または炭化した絶縁被覆に流体を吹き付ける際に、誘導加熱装置が流体の吹き付けの妨げになるのを抑制することができる。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、流体通路がコイルの内部に形成されていることにより、コイルと流体通路を別々に設ける場合に比べて、装置の小型化を図ることができる。
【0021】
請求項8に係る発明によれば、共通の噴出孔から気体および液体の混合流体を噴射することができるので、気体を噴射する噴出孔と液体を噴射する噴出孔をそれぞれ設ける場合に比べて、構成が簡単になる。
【0022】
請求項9に係る発明によれば、気体通路内に不必要な液体が残留するのを抑制することができる。
【0023】
請求項10に係る発明によれば、連通路の流路断面積が気体通路の流路断面積よりも小さいので、気体を連通路に流したときに気体の流速が大きくなり、連通路に負圧が生じて液体通路の液体が連通路に吸引され、連通路において気体と液体とを混合することができ、その混合流体を噴出孔から噴射することができる。その結果、スラッジ吹き飛ばし用水を加圧することなく、気体と液体の混合流体を噴射することができる。また、共通の噴出孔から気体および液体の混合流体を噴射することができるので、気体を噴射する噴出孔と液体を噴射する噴出孔をそれぞれ設ける場合に比べて、構成が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明に係る導線結合方法の実施に直接使用する導線結合装置の実施例1における概略構成図である。
【図2】実施例1における導線結合装置の正面図である。
【図3】実施例1における導線結合装置の要部を示す斜視図である。
【図4】実施例1における導線結合装置の前記要部の平面図である。
【図5】実施例1における導線結合装置の前記要部の正面図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【図7】図5のB矢視図である。
【図8】実施例1の導線結合装置を使用した導線結合方法を示すフローチャートである。
【図9】この発明の実施例2の導線結合装置における要部を示す斜視図である。
【図10】実施例2における導線結合装置の前記要部の平面図である。
【図11】実施例2における導線結合装置の前記要部の正面図である。
【図12】図11のC−C断面図である。
【図13】図11のD矢視図である。
【図14】この発明の実施例3の導線結合装置における要部を示す斜視図である。
【図15】図14のE−E断面の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明に係る導線結合方法と、この導線結合方法の実施に直接使用する導線結合装置の実施例を図1から図15の図面を参照して説明する。
<実施例1>
初めに、この発明の実施例1を図1から図8の図面を参照して説明する。
図1は、実施例1の導線結合装置の概略構成図、図2は同概略正面図である。
図1に示すように、導線結合装置1は、誘導加熱コイル(加熱手段)21を備えた誘導加熱装置(加熱装置)20と、誘導加熱コイル21に印加する電流および周波数を制御する電源制御ユニット11と、誘導加熱コイル21に供給する冷却水量を制御する冷却水制御ユニット12と、誘導加熱コイル21の位置制御および空気供給量を制御する誘導加熱コイル統合制御ユニット(制御手段)13と、スラッジ飛ばし用水供給タイミングを制御するスラッジ飛ばし用水制御ユニット(制御手段)14と、を備えている。
【0026】
図1、図2に示すように、誘導加熱装置20は、金属製の誘導加熱コイル21と、誘導加熱コイル21に連結された金属製の基板22と、基板22を支持する支持部材29と、支持部材29が連結され誘導加熱コイル21を鉛直方向に上下動させるための誘導加熱コイル支持軸23と、誘導加熱コイル21を上下動させるためのモータ30と、誘導加熱コイル21に交流電流を印加するための交流電源24と、複数の導線100を束ねた導線束101を支持固定するチャック25と、チャック25を支持するチャック支持軸26と、誘導加熱コイル21に冷却水を供給する冷却水循環装置60と、誘導加熱コイル21に供給する空気量を調整する空気調整バルブ(気体供給設定手段)27と、誘導加熱コイル21に供給するスラッジ飛ばし用水の供給・停止を切り換える切り換えバルブ(液体供給設定手段)28を備えている。
【0027】
図3、図4に示すように、誘導加熱コイル21は、平面視において、先端側が略半円弧状をなす円弧部31と、円弧部31の両端から直線的に延びる直線部32とにより略U字状に形成されている。両直線部32,32の間には、絶縁材33を挟んだ一対の基板22,22が挟装されており、絶縁材33を挟んでそれぞれの側において直線部32と基板22とが連結されている。また、円弧部31の中央であって円弧部31と基板22との間には、上下方向に貫通する略円形の開口(導線挿入空間)34が形成されており、誘導加熱コイル21を支持部材29を介して誘導加熱コイル支持軸23にセットしたときに開口34の軸心が上下方向を向くようになっている。また、基板22,22に交流電源24が接続され、誘導加熱コイル21に交流電流を印加することができるように構成されている。なお、交流電源24には電源制御ユニット11が接続されており、電源制御ユニット11からの指示により所望の交流電流を誘導加熱コイル21に印加することができるようになっている。
【0028】
また、誘導加熱コイル21は、平面視において内側に配置された内側管部35と、内側管部35の外側に配置された外側管部36とを備え、直線部32においては、内側管部35が外側管部36よりも後方(円弧部31から離間する方向)に延出している。
図6に示すように、内側管部35は、その内周面37が下方に広がる断面三角形状をなし、内部は空気が流通可能な空気通路(気体通路、流体通路)38となっていて、内側管部35の長手方向の両端部において空気通路38は閉塞している。
円弧部31における内側管部35の内周面37は下方に末広がりの円錐状をなしており、ここには、軸心を開口34の中央に向けた円形の噴出孔39が、周方向に所定間隔おきに複数設けられている。
外側管部36は断面矩形をなし、その内部は冷却水が流通可能な冷却水通路40となっていて、外側管部36の長手方向の両端部において冷却水通路40は閉塞している。
【0029】
内側管部35の外周面に外側管部36の内周面が面接触した状態で内側管部35と外側管部36は連結固定されている。そして、内側管部35と外側管部36との連結部に、スラッジ飛ばし用水が流通可能なスラッジ飛ばし用水通路(液体通路、流体通路)41が、内側管部35と外側管部36との接触面に沿って形成されている。スラッジ飛ばし用水通路41は、外側管部36の長手方向の両端部近傍において閉塞している。
また、円弧部31における内側管部35には、噴出孔39と対向する位置(換言すると、噴出孔39と周方向同一位置)に、空気通路38とスラッジ飛ばし用水通路41とを連通する連通孔(連通路)42が、噴出孔39と対をなして設けられている。
【0030】
空気通路38は、その長手方向の各端部近傍において空気供給管43,43に接続されており、各空気供給管43は、図1に示すように、空気供給主管44、空気調整バルブ27を介してファン等からなる空気供給装置(図示略)に接続されている。空気通路38への空気の供給・停止および空気供給量制御は、誘導加熱コイル統合制御ユニット13が空気調整バルブ27の開閉およびバルブ開度を制御することにより行われる。
そして、空気供給主管44を介して空気通路38に空気を供給すると、噴出孔39から開口34の中央に向けて空気が噴射される。
【0031】
スラッジ飛ばし用水通路41は、その長手方向の各端部近傍においてスラッジ飛ばし用水供給管45,45に接続され、各スラッジ飛ばし用水供給管45は、図1に示すように、スラッジ飛ばし用水供給主管46、切り換えバルブ28を介してスラッジ飛ばし用水供給装置(図示略)に接続されている。スラッジ飛ばし用水通路41へのスラッジ飛ばし用水の供給・停止は、スラッジ飛ばし用水制御ユニット14が切り換えバルブ28の開閉を制御することにより行われる。
そして、空気供給主管44を介して空気通路38に空気を供給するとともに、スラッジ飛ばし用水供給主管46を介してスラッジ飛ばし用水通路41にスラッジ飛ばし用水を供給すると、スラッジ飛ばし用水がスラッジ飛ばし用水通路41から連通孔42を通って噴出孔39に向かって流出し、空気通路38あるいは噴出孔39においてスラッジ飛ばし用水と空気が混合され、この気液混合流体が噴出孔39から開口34の中央に向けて噴射される。
【0032】
冷却水通路40は、その長手方向の一端部近傍において冷却水供給管47に接続され、他端部近傍において冷却水排出管48に接続され、これら冷却水供給管47と冷却水排出管48は冷却水循環装置60に接続されている。
冷却水循環装置60は、冷却水を貯留する冷却水タンク61と、冷却水タンク61から冷却水を汲み上げる冷却水ポンプ62と、冷却水ポンプ62を駆動するモータ63と、冷却水ポンプ62で汲み上げた冷却水を誘導加熱コイル21の冷却水通路40に供給する冷却水配管64と、冷却水通路40から排出された冷却水を冷却水タンク61に戻す冷却水配管65と、冷却水配管65に設けられ冷却水を冷却する熱交換器66と、を備えており、冷却水配管64に冷却水供給管47が接続され、冷却水配管65に冷却水排出管48が接続されている。これにより、冷却水タンク61の冷却水を加熱コイル21の冷却水通路40に流して加熱コイル21を冷却し、暖められた冷却水を熱交換器66によって冷却して冷却水タンク61に戻すことができ、冷却水を循環利用している。
【0033】
なお、冷却水配管64には、リリーフ弁67と、冷却水供給流量を検出する冷却水流量計68と、冷却水温度を検出する冷却水温度センサ69とが設けられており、冷却水流量計68と冷却水温度センサ69はそれぞれ検出値に応じた出力信号を冷却水制御ユニット12に出力する。冷却水ポンプ32の運転停止および冷却水流量制御は、冷却水流量計68や冷却水温度センサ69の出力信号等に基づき、冷却水制御ユニット12がインバータ40を介してモータ33を制御することにより行われる。
【0034】
また、誘導加熱装置20は、誘導加熱コイル21の開口34の中央部分の温度を非接触で検出する赤外線温度計49を備え、赤外線温度計49は検出値に応じた出力信号を誘導加熱コイル統合制御ユニット13に出力する。
また、誘導加熱コイル21の上下方向の位置を調整するためのモータ30は、誘導加熱コイル統合制御ユニット13により制御される。モータ30を駆動すると支持部材29が誘導加熱コイル支持軸23に沿って上下方向に移動し、これにより誘導加熱コイル21の高さを所望の位置に調整することができるようになっている。
【0035】
また、チャック25は、導線束101を平面視両側から挟み込む一対のチャック部材25a,25bで構成されており、互いに接近離反する方向に移動可能となっていて、チャック25を閉じて導線束101を挟持すると、導線束101が誘導加熱コイル21の開口34の中央に配置されるように構成されている。
さらに、誘導加熱コイル統合制御ユニット13には、電源制御ユニット11、冷却水制御ユニット12、スラッジ飛ばし用水制御ユニット14が接続されており、各ユニット11,12,14を総合して制御できるように構成されている。
【0036】
次に、この誘導加熱装置1を用いて導線束101の導線100同士を結合する方法、すなわち導線結合方法について図8のフローチャートに従って説明する。
まず、ステップS101において、芯線が絶縁被覆(いずれも図示略)により被覆された状態のままの複数(2本以上)の導線100を束ねた導線束101を用意し、この導線束101を誘導加熱コイル21の開口34に挿通し、導線束101をチャック25により支持固定する。
次に、ステップS102に進み、誘導加熱コイル21が導線束101の被結合位置と同一高さに配置されるように、誘導加熱コイル21の高さ位置を調整した後、誘導加熱コイル21に交流電流を印加して、電線束101の各電線100を誘導加熱する。また、適宜、冷却水ポンプ62を駆動して誘導加熱コイル21の冷却水通路40に冷却水を流し、誘導加熱コイル21を冷却する。
【0037】
次に、ステップS103に進み、誘導加熱コイル21の開口34内の温度、すなわち電線束101の被結合部の温度を、赤外線温度計49により監視する。
次に、ステップS104に進み、被結合部の温度が、電線100の絶縁被覆を炭化させる温度(以下、炭化温度と略す)まで達したか否かを判定する。
ステップS104における判定結果が「NO」である場合には、被結合部の温度が炭化温度に達していないので、ステップS103に戻る。
【0038】
ステップS104における判定結果が「YES」である場合には、被結合部の温度が炭化温度に達しているので、ステップS105に進み、誘導加熱コイル21への交流電流の印加を停止し、誘導加熱コイル21の空気通路38に空気を供給するとともに、スラッジ飛ばし用水通路41にスラッジ飛ばし用水を供給して、スラッジ飛ばし用水と空気とを混合させた気液混合流体を噴出孔39から導線束101の被結合部に向けて噴射する。
【0039】
このように気液混合流体を導線束101の被結合部に噴射すると、スラッジ飛ばし用水が、加熱された導線100または絶縁被覆に吹き付けられた際に気化し、溶融または炭化した絶縁被覆の周囲で急激に体積膨張が起こり、空気流と協働して、溶融または炭化した絶縁被覆を効果的に吹き飛ばして除去することができる。
なお、導線束101の被結合部に気液混合流体を噴射する時点での導線100の絶縁被覆の形態は、溶融状態であっても炭化した状態であってもよいが、溶融した形態よりも炭化した形態の方が、絶縁被覆が芯線に付着して残留してしまうのを防ぎ易いという利点がある。
【0040】
次に、ステップS106に進み、スラッジ飛ばし用水と空気の供給を開始してから所定時間が経過したか否かを判定する。
ステップS106における判定結果が「NO」である場合には、前記所定時間が経過するまでスラッジ飛ばし用水と空気の供給を継続する。
ステップS106における判定結果が「YES」である場合には、絶縁被覆の除去が完了し、除去後に引き続き行われるスラッジ飛ばし用水と空気の噴射による被結合部に対する一次冷却が完了したと判断し、ステップS107に進んで、スラッジ飛ばし用水の供給を停止する。なお、空気通路38への空気の供給は停止させずに継続し、空気だけを噴出孔39から導線束101の被結合部に向けて噴射し、被接合部に対する二次冷却を行う。
次に、ステップS108に進み、スラッジ飛ばし用水を停止してから所定時間が経過したか否かを判定する。
ステップS108における判定結果が「NO」である場合には、前記所定時間が経過するまで空気の供給を継続する。
ステップS108における判定結果が「YES」である場合には、各導線100から絶縁被覆を除去した被結合部が常温まで冷却されたと判断し、ステップS109に進んで、空気の供給を停止する。
【0041】
次に、ステップS110に進み、再度、誘導加熱コイル21に交流電流を印加して、絶縁被覆を除去された各電線100を誘導加熱し、各電線100の芯線を溶解させて芯線同士を結合する。このときも、適宜、冷却水ポンプ62を駆動して誘導加熱コイル21の冷却水通路40に冷却水を流し、誘導加熱コイル21を冷却する。なお、芯線を溶解させるときの加熱温度は、絶縁被覆を溶解または炭化させるときの加熱温度よりも高い。
【0042】
次に、ステップS111に進み、誘導加熱コイル21への通電を停止し、さらに、ステップS112に進んで、誘導加熱コイル21の空気通路38に空気を供給し、噴出孔39から導線束101の結合部に空気を噴射して結合部を冷却する。
結合部の冷却後、ステップS113に進んで空気の供給を停止し、さらに、ステップS114に進み、チャック25を開いて導線束101を取り外し、導線束101の結合が完了する。
【0043】
この導線結合装置1および導線結合方法によれば、導線100を絶縁被覆によって被覆された状態のまま誘導加熱コイル21にセットした後に、被覆されていた絶縁被覆を除去して、導線100同士を結合することができる。したがって、導線100を誘導加熱コイル21にセットする前に予め絶縁被覆を除去する工程が不要となり、工程数を低減することができる。
【0044】
また、誘導加熱コイル21によって非接触で導線100を加熱して、絶縁被覆を溶融または炭化することができるので、溶融または炭化した絶縁被覆にスラッジ飛ばし用水および空気を吹き付ける際に、誘導加熱コイル21がこれら流体の吹き付けの妨げになることがない。
【0045】
また、前述したように、スラッジ飛ばし用の水と空気の気液混合流体を、加熱された導線束101の被結合部に噴射しているので、加熱された導線100または絶縁被覆に吹き付けられた水が気化することにより、溶融または炭化した絶縁被覆の周囲で急激に体積膨張が起こり、空気流と協働して、溶融または炭化した絶縁被覆を効果的に吹き飛ばして除去することができる。
【0046】
また、絶縁被覆を除去した後に、被結合部の温度を一旦常温まで下げてから、再度、被結合部を加熱して導線100の芯線を溶解しているので、複数回の溶解・結合を行う際に、結合部によって接合状態にバラツキが生じるのを抑制することができる。また、被結合部の温度を一旦下げる一次冷却の際に、空気とスラッジ飛ばし用水とを噴射しているので、空気だけで被結合部を冷却する場合に比べて短時間で冷却することができる。
【0047】
さらに、この導線結合装置1によれば、空気通路39およびスラッジ飛ばし用水通路41を誘導加熱コイル21の内部に形成しているので、誘導加熱コイル21とは別体にこれら通路を有する部材を設ける場合に比べて、部品点数を低減することができ、装置構成が簡単になり、装置の小型化を図ることができる。さらに、共通の噴出孔39からスラッジ飛ばし用水と空気の気液混合流体を噴射することができるので、空気を噴射する噴出孔とスラッジ飛ばし用水を噴射する噴出孔をそれぞれ設ける場合に比べて、構成が簡単になる。
また、スラッジ飛ばし用水と空気の供給を停止する際に、初めにスラッジ飛ばし用水を停止した後に、空気を停止しているので、空気通路38内に不必要なスラッジ飛ばし用水が残留するのを抑制することができる。
【0048】
<実施例2>
次に、この発明に係る導線結合装置1の実施例2を図9から図13の図面を参照して説明する。なお、図9から図13の図面はそれぞれ、実施例1の図3から図7の図面に対応している。
実施例2の導線結合装置1が実施例1のものと相違する点は、誘導加熱コイル21の構成にある。以下、同一態様部分については同一符号を付して簡単に説明し、相違点について詳述する。
【0049】
図9、図10に示すように、実施例2の誘導加熱コイル21は、平面視略U字状をなし、円弧部31と直線部32とを有する点、両直線部32,32の間に一対の基板22,22と絶縁材33が挟装されている点、円弧部31の中央に上下方向に貫通する略円形の開口34が形成されている点、誘導加熱コイル21を支持部材29を介して誘導加熱コイル支持軸23にセットしたときに開口34の軸心が上下方向を向くようにされている点、基板22,22を介して誘導加熱コイル21に交流電流を印加することができる点は、実施例1の誘導加熱コイル21と同じである。
【0050】
しかしながら、実施例1の誘導加熱コイル21では、空気通路38とスラッジ飛ばし用水通路41とを水平面上にて並行して設けたが、実施例2の誘導加熱コイル21では、これら通路を上下方向に重ねて配置している。
詳述すると、実施例2における誘導加熱コイル21は、正面視において下側に配置された下側管部81と、下側管部81の上側に配置された上側管部82とを備え、直線部32においては、下側管部81が上側管部82よりも後方(円弧部31から離間する方向)に延出している。
【0051】
図12に示すように、下側管部81は、その内周面83が下方に広がる断面三角形状をなし、内部は空気が流通可能な空気通路38となっていて、下側管部81の長手方向の両端部において空気通路38は閉塞している。
円弧部31における下側管部81の内周面83は下方に末広がりの円錐状をなしており、ここには、軸心を開口34の中央に向けた円形の噴出孔39が、周方向に所定間隔おきに複数設けられている。
【0052】
上側管部82は、その内周面84が上方に広がる断面三角形状をなし、内部は冷却水が流通可能な冷却水通路40となっていて、上側管部82の長手方向の両端部において冷却水通路40は閉塞している。
円弧部31における上側管部82の内周面84は上方に末広がりの円錐状をなしている。
円弧部31において、下側管部81の外径と上側管部82の外径は同一径であり、下側管部81の内径は上側管部82の内径よりも若干小径であり、下側管部81の高さ寸法と上側管部82の高さ寸法はほぼ同一高さとなっている。
【0053】
そして、下側管部81の上面に上側管部82の下面が面接触した状態で下側管部81と上側管部82は連結固定されている。そして、下側管部81と上側管部82との連結部に、スラッジ飛ばし用水が流通可能なスラッジ飛ばし用水通路41が、下側管部81と上側管部82との接触面に沿って形成されている。スラッジ飛ばし用水通路41は、上側管部82の長手方向の両端部近傍において閉塞している。
また、円弧部31における下側管部81には、噴出孔39と周方向同一位置に、空気通路38とスラッジ飛ばし用水通路41とを連通する連通孔42が、噴出孔39と対をなして設けられている。
なお、図12において噴出孔39は下側管部81および上側管部82の接触面と略平行、すなわち水平面と略平行に形成されているが、上方向に角度を付けて、下側管部81および上側管部82の接触面が位置する高さに向けられるように形成してもよい。
【0054】
実施例2の誘導加熱コイル21において、空気通路38には、その長手方向の各端部近傍に空気供給管43,43が接続され空気供給主管44を介して空気が供給可能に構成されている点、スラッジ飛ばし用水通路41には、その長手方向の各端部近傍にスラッジ飛ばし用水供給管45,45が接続されスラッジ飛ばし用水供給主管46を介してスラッジ飛ばし用水が供給可能に構成されている点、冷却水通路40には、その長手方向の一端部近傍に冷却水供給管47に接続され、他端部近傍に冷却水排出管48に接続され、冷却水循環装置60によって冷却水を循環可能に構成されている点は、実施例1の誘導加熱コイル21と同じである。
【0055】
このように構成された実施例2の誘導加熱コイル21において、空気供給主管44を介して空気通路38に空気を供給するとともに、スラッジ飛ばし用水供給主管46を介してスラッジ飛ばし用水通路41にスラッジ飛ばし用水を供給すると、スラッジ飛ばし用水がスラッジ飛ばし用水通路41から連通孔42を通って空気通路38に流出し、空気通路38あるいは噴出孔39においてスラッジ飛ばし用水と空気が混合され、この気液混合流体を噴出孔39から開口34の中央に向けて噴射することができる。
【0056】
そして、実施例2の誘導加熱コイル21においても、スラッジ飛ばし用水と空気の気液混合流体を、加熱させた導線束101の被結合部に噴射すると、スラッジ飛ばし用水が、加熱された導線100または絶縁被覆に吹き付けられた際に気化し、溶融または炭化した絶縁被覆の周囲で急激に体積膨張が起こり、空気流と協働して、溶融または炭化した絶縁被覆を効果的に吹き飛ばして除去することができる。
【0057】
したがって、この実施例2の誘導加熱コイル21を有する導線結合装置1を用いて、実施例1と同様の導線結合方法を実施すると、導線100を絶縁被覆によって被覆された状態のまま誘導加熱コイル21にセットした後に、被覆されていた絶縁被覆を除去して、導線100同士を結合することができる。
また、この実施例2において誘導加熱コイル21は、空気通路38、スラッジ飛ばし用水通路41、および冷却水通路40が上下方向に重ねて配置されている分、実施例1の場合に比べて幅の狭い空間においても誘導加熱コイル21を挿入して導線結合を行うことができる。
【0058】
<実施例3>
次に、この発明に係る導線結合装置1の実施例3を図14、図15の図面を参照して説明する。
実施例3の導線結合装置1が実施例2のものと相違する点は、誘導加熱コイル21の構成にある。以下、同一態様部分については同一符号を付して簡単に説明し、相違点について詳述する。
【0059】
図14、図15に示すように、実施例3の誘導加熱コイル21は、平面視略U字状をなし、円弧部31と直線部32とを有する点、両直線部32,32の間に一対の基板22,22と絶縁材33が挟装されている点、円弧部31の中央に上下方向に貫通する略円形の開口34が形成されている点、誘導加熱コイル21を支持部材29を介して誘導加熱コイル支持軸23にセットしたときに開口34の軸心が上下方向を向くようにされている点、基板22,22を介して誘導加熱コイル21に交流電流を印加することができる点、空気通路38を有する下側管部81の上に冷却水通路40を有する上側管部82が重ねて配置されている点は、実施例2の誘導加熱コイル21と同じである。
【0060】
しかしながら、実施例3の誘導加熱コイル21では、下側管部81の断面形状が略矩形をなし、空気通路38の断面形状も矩形をなしていて、円弧部31における下側管部81の内周面85の上部には、周方向全周に亘って連続して形成された噴出孔86がスリット状に設けられている。また、円弧部31における下側管部81には、噴出孔86と空気通路38とを連通する連通路87が円弧部31の全周に亘って形成されている。この連通路87は、空気通路38の下部から斜め上向きに傾斜して延び、その延長線が円弧部31の開口34の中心に向かうように設定されている。
【0061】
また、実施例3の誘導加熱コイル21では、円弧部31から直線部32に亘って下側管部81のさらに下側に、上方を開いた断面略コ字形の第2下側管部88が配置されており、第2下側管部88の上面が下側管部81の下面に面接触した状態で下側管部81と第2下側管部88は連結固定されている。円弧部31において、第2下側管部88の外径と下側管部81の外径は同一径であり、第2下側管部88の内径は上側管部82の下部内径と同一径となっている。
そして、下側管部81と第2下側管部88とで囲まれた空間がスラッジ飛ばし用水通路89となっていて、スラッジ飛ばし用水通路89は第2下側管部88の長手方向両端部近傍において閉塞している。
【0062】
また、円弧部31における下側管部81には、スラッジ飛ばし用水通路89と連通路87とを連通する第2連通路90が周方向所定間隔おきに複数設けられている。第2連通路90は断面円形をなし、軸心を上下方向に向けて配置されている。
ここで、各流路において流体の流れ方向に対して直角に切ったときの断面積(以下、流路断面積という)を比較すると、連通路87の流路断面積S2は空気通路38の流路断面積S1よりも小さく、第2連通路90の流路断面積S3は連通路87の流路断面積S2よりも小さい(S1>S2>S3)。
【0063】
実施例3の誘導加熱コイル21において、空気通路38には、その長手方向の各端部近傍に空気供給管43,43が接続され空気供給主管44を介して空気が供給可能に構成されている点、スラッジ飛ばし用水通路89には、その長手方向の各端部近傍にスラッジ飛ばし用水供給管45,45が接続されスラッジ飛ばし用水が供給可能に構成されている点、冷却水通路40には、その長手方向の一端部近傍に冷却水供給管47に接続され、他端部近傍に冷却水排出管48に接続され、冷却水循環装置60によって冷却水を循環可能に構成されている点は、実施例1の誘導加熱コイル21と同じである。
【0064】
このように構成された実施例3の誘導加熱コイル21において、空気供給主管44を介して空気通路38に空気を供給すると、空気は空気通路38から連通路87に流れ、噴出孔86から開口34の中央に向けて噴射される。ここで、連通路87の流路断面積S2は空気通路38の流路断面積S1よりも小さいので、空気は連通路87を通る際に流速が上昇し高速で流れる。その結果、連通路87に負圧が生じて、スラッジ飛ばし用水通路89内のスラッジ飛ばし用水が連通路90を介して連通路87に吸引され、連通路87内において空気とスラッジ飛ばし用水が混合される。その結果、この気液混合流体を噴出孔86から開口34の中央に向けて噴射することができる。
【0065】
そして、実施例3の誘導加熱コイル21においても、スラッジ飛ばし用水と空気の気液混合流体を、加熱させた導線束101の被結合部に噴射すると、スラッジ飛ばし用水が、加熱された導線100または絶縁被覆に吹き付けられた際に気化し、溶融または炭化した絶縁被覆の周囲で急激に体積膨張が起こり、空気流と協働して、溶融または炭化した絶縁被覆を効果的に吹き飛ばして除去することができる。
【0066】
したがって、この実施例3の誘導加熱コイル21を有する導線結合装置1を用いて、実施例1と同様の導線結合方法を実施すると、導線100を絶縁被覆によって被覆された状態のまま誘導加熱コイル21にセットした後に、被覆されていた絶縁被覆を除去して、導線100同士を結合することができる。
【0067】
また、実施例3の誘導加熱コイル21の場合には、スラッジ吹き飛ばし用水を加圧せず、ほぼ大気圧程度で供給すれば、気液混合流体を噴射することができる。そして、スラッジ飛ばし用水を加圧する必要がないので、実施例1,2においてスラッジ飛ばし用水供給主管46に設けていた水噴射の有無を切り換える切り換えバルブ28を省略することもできる。ただし、切り換えバルブ28をなくした場合には、空気だけ噴射して導線束101の被結合部の冷却を行うことはできなくなるが、その分を気液混合流体による冷却で賄うようにすればよい。この場合、図8のフロ−チャートにおけるステップS107,S108をなくし、ステップS106からステップS109に進めばよい。
【0068】
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、前述した実施例では、加熱装置(加熱手段)として誘導加熱手段(誘導加熱コイル21)を用いたが、これに限るものではなく、ヒュージングを用いることも可能である。
前述した実施例1,2では、流体を噴出する噴出孔39に直接連通する通路を空気通路38とし、この空気通路38に連通孔42を介して連通する通路をスラッジ飛ばし用水通路41としたが、この配置を逆にし、流体を噴出する噴出孔39に直接連通する通路をスラッジ飛ばし用水通路41とし、このスラッジ飛ばし用水通路41に連通孔42を介して連通する通路を空気通路38としてもよい。このようにすると、空気の圧力でスラッジ飛ばし用水を押し出しながら気液混合流体を噴出孔39から噴射することができるので、スラッジ飛ばし用水の水圧を低くすることができる。
また、前述した実施例3では、円弧部31における下側管部81の内周面85に、噴出孔86を周方向全周に亘って連続してスリット状に設けたが、実施例1,2と同様に、噴出孔86を周方向所定間隔おきに設けることも可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 導線結合装置
13 誘導加熱コイル統合制御ユニット(制御手段、流体噴射手段)
14 スラッジ飛ばし用水制御ユニット(制御手段、流体噴射手段)
20 誘導加熱装置(加熱装置)
21 誘導加熱コイル(加熱手段、誘導加熱手段)
24 交流電源(加熱手段)
27 空気調整バルブ(気体供給設定手段、流体噴射手段)
28 切り換えバルブ(液体供給設定手段、流体噴射手段)
34 開口(導線挿入空間)
38 空気通路(気体通路、流体通路、流体噴射手段)
39,86 噴出孔(流体噴射手段)
41,89 スラッジ飛ばし用水通路(液体通路、流体通路、流体噴射手段)
42 連通孔(連通路、流体通路、流体噴射手段)
87 連通路(流体通路、流体噴射手段)
100 導線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁被覆によって被覆された少なくとも2本の導線を加熱装置によって結合する導線結合方法であって、
少なくとも2本の前記導線を前記絶縁被覆によって被覆された状態のまま前記加熱装置に配置する工程と、
前記加熱装置によって前記導線を加熱して前記絶縁被覆を溶融または炭化させる工程と、
溶融または炭化した前記絶縁被覆に向かって流体を吹き付けることにより、溶融または炭化した前記絶縁被覆を吹き飛ばして除去する工程と、
前記絶縁被覆が除去された前記導線を前記加熱装置によってさらに加熱して該導線同士を結合する工程と、
を備えることを特徴とする導線結合方法。
【請求項2】
前記流体は液体を含むことを特徴とする請求項1に記載の導線結合方法。
【請求項3】
前記加熱装置は、前記導線を誘導加熱する誘導加熱装置により構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の導線結合方法。
【請求項4】
絶縁被覆によって被覆された少なくとも2本の導線を加熱することによって導線同士が結合された結合部を形成する導線結合装置であって、
前記導線を加熱する加熱手段と、
前記導線に向かって流体を噴射し、前記加熱手段によって加熱されて溶融または炭化した前記絶縁被覆を吹き飛ばして除去する流体噴射手段と、
を備え、
前記加熱手段によって、前記導線の前記絶縁被覆を溶融または炭化するときの加熱と、前記絶縁被覆を除去された前記導線同士を結合して結合部を形成するときの加熱とを行うことを特徴とする導線結合装置。
【請求項5】
前記流体噴射手段によって噴射される前記流体は液体を含むことを特徴とする請求項4に記載の導線結合装置。
【請求項6】
前記加熱手段は、前記導線を誘導加熱する誘導加熱手段により構成されていることを特徴とする請求項4にまたは請求項5記載の導線結合装置。
【請求項7】
前記加熱手段は、交流電源に接続されたコイルと、前記コイルによって囲まれて形成された導線挿入空間と、を備え、前記流体噴射手段は、前記コイルの内部に形成された流体通路と、前記流体通路から前記導線挿入空間に向かって開口する噴出孔と、を備えていることを特徴とする請求項6に記載の導線結合装置。
【請求項8】
前記流体通路は、気体が通過する気体通路および液体が通過する液体通路と、前記気体通路と前記液体通路とを連通する連通路と、を備え、
前記気体または前記液体が前記連通路を通ることによって前記気体および前記液体の混合流体が生成され、この混合流体が前記噴出孔から噴射されることを特徴とする請求項7に記載の導線結合装置。
【請求項9】
前記流体噴射手段は、
前記気体通路への前記気体の供給の有無を設定可能な気体供給設定手段と、
前記液体通路への前記液体の供給の有無を設定可能な液体供給設定手段と、
前記気体供給設定手段と前記液体供給設定手段とを制御して、前記気体通路への前記気体の供給の有無および前記液体通路への前記液体の供給の有無を切替える制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記液体通路に前記液体を供給するとともに前記気体通路に前記気体を供給して前記液体と前記気体の混合流体を前記噴出孔から噴射した後、流体の供給を停止するときに、前記液体通路への前記液体の供給を停止した後に、前記気体通路への前記気体の供給を停止することを特徴とする請求項8に記載の導線結合装置。
【請求項10】
前記流体通路は、気体が通過する気体通路および液体が通過する液体通路と、前記気体通路と前記噴出孔とを連通する連通路と、を備え、
前記液体通路は前記連通路に連通し、
前記連通路の流路断面積は前記気体通路の流路断面積よりも小さいことを特徴とする請求項7に記載の導線結合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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