説明

導電基板、導電基板の製造方法及びレーザー光照射装置

【課題】 基板の材料に関する選択の自由度の向上を図る。
【解決手段】 樹脂材料によって形成された基板2と、基板上の所定の位置に塗布された導電ペーストが焼成されて基板上に形成された導電層3、3、・・・とを設け、導電層が、基板へ向けて照射された第1のレーザー光の照射位置による反射率の相違に基づいて基板上の位置が検出された導電ペーストに対して第2のレーザー光が照射されることにより焼成されて形成された。これにより基板上の導電ペーストのみに対して焼成に必要とされる光量を有する第2のレーザー光が照射されるため、基板として耐熱性の低い材料を用いることが可能となり、基板の材料に関する選択の自由度の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電基板、導電基板の製造方法及びレーザー光照射装置についての技術分野に関する。詳しくは、基板上の導電ペーストの位置検出と導電ペーストに対する焼成をともにレーザー光を照射して行うことにより基板の材料に関する選択の自由度の向上を図る技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の電子機器には導電層が形成された導電基板が配置されている。
【0003】
このような導電基板には、例えば、印刷により基板上に導電層を形成することにより製造されるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
印刷により導電基板を製造する方法にあっては、基板の所定の位置に導電ペースト、例えば、金属ペーストを印刷した後に、低抵抗化を図るための熱処理が行われる。熱処理を行うことにより導電ペーストが焼成され、導電ペーストに含有される不要な分散剤が除去され金属粒子が結合されて導電層が形成され、良好な導電性を確保することができる。
【0005】
熱処理は200°C以上のオーブンに導電ペーストが印刷された基板を挿入して配置することにより行われる。
【0006】
【特許文献1】特開2008−205144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記したように、熱処理して導電層を形成するためには、200°C以上のオーブンに導電ペーストが印刷された基板を配置する必要があり、基板として耐熱性の高い材料によって形成されたものを用いなければならない。
【0008】
従って、基板として耐熱性の低いPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂等の安価な材料を用いることが困難であり、製造コストが高くなると言う問題がある。
【0009】
そこで、本発明導電基板、導電基板の製造方法及びレーザー光照射装置は、上記した問題点を克服し、基板の材料に関する選択の自由度の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
導電基板は、上記した課題を解決するために、樹脂材料によって形成された基板と、前記基板上の所定の位置に塗布された導電ペーストが焼成されて前記基板上に形成された導電層とを備え、前記導電層が、前記基板へ向けて照射された第1のレーザー光の照射位置による反射率の相違に基づいて前記基板上の位置が検出された前記導電ペーストに対して第2のレーザー光が照射されることにより焼成されて形成されたものである。
【0011】
従って、基板上の導電ペーストのみに対して焼成に必要とされる光量を有する第2のレーザー光が照射される。
【0012】
上記した導電基板においては、前記基板へ向けて第3のレーザー光を照射して前記基板上の前記導電層の形成状態を検出することが望ましい。
【0013】
基板へ向けて第3のレーザー光を照射して基板上の導電層の形成状態を検出することにより、導電層の形成状態に応じて第2のレーザー光の光量を変更することが可能である。
【0014】
上記した導電基板においては、前記第2のレーザー光の前記導電ペーストに対する照射強度を照射時間に応じて変化させることが望ましい。
【0015】
第2のレーザー光の導電ペーストに対する照射強度を照射時間に応じて変化させることにより、レーザー光の照射時間による導電ペーストの熱の吸収量に応じてレーザー光の照射強度を変化させることが可能である。
【0016】
上記した導電基板においては、前記基板を所定の方向へ移動し、前記基板の移動方向に直交する方向において前記第1のレーザー光の前記基板に対する照射角度を変化させて導電ペーストの位置を検出し、前記基板の移動方向に直交する方向において前記第2のレーザー光の前記基板に対する照射角度を変化させて前記導電ペーストを焼成することが望ましい。
【0017】
第1のレーザー光の基板に対する照射角度を変化させて導電ペーストの位置を検出し、第2のレーザー光の基板に対する照射角度を変化させて導電ペーストを焼成することにより、導電ペーストに対するレーザー光の照射角度に応じた範囲で導電ペーストの位置検出及び焼成が行われる。
【0018】
上記した導電基板においては、前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光のレーザー光源を共通の光源とすることが望ましい。
【0019】
第1のレーザー光と第2のレーザー光のレーザー光源を共通の光源とすることにより、同一のレーザー光源から出射されたレーザー光が第1のレーザー光と第2のレーザー光として出力される。
【0020】
上記した導電基板においては、前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光と前記第3のレーザー光のレーザー光源を共通の光源とすることが望ましい。
【0021】
第1のレーザー光と第2のレーザー光と第3のレーザー光のレーザー光源を共通の光源とすることにより、同一のレーザー光源から出射されたレーザー光が第1のレーザー光と第2のレーザー光と第3のレーザー光として出力される。
【0022】
導電基板の製造方法は、上記した課題を解決するために、樹脂材料によって形成された基板の所定の位置に導電ペーストを塗布し、前記基板へ向けて第1のレーザー光を照射して照射位置による反射率の相違に基づいて前記基板上の前記導電ペーストの位置を検出し、前記基板上の位置が検出された前記導電ペーストに対して第2のレーザー光を照射し前記導電ペーストを焼成して前記基板上に導電層を形成したものである。
【0023】
従って、基板上の導電ペーストのみに対して焼成に必要とされる光量を有する第2のレーザー光が照射される。
【0024】
上記した導電基板の製造方法においては、前記基板へ向けて第3のレーザー光を照射して前記基板上の前記導電層の形成状態を検出することが望ましい。
【0025】
基板へ向けて第3のレーザー光を照射して基板上の導電層の形成状態を検出することにより、導電層の形成状態に応じて第2のレーザー光の光量を変更することが可能である。
【0026】
上記した導電基板の製造方法においては、前記第2のレーザー光の前記導電ペーストに対する照射強度を照射時間に応じて変化させることが望ましい。
【0027】
第2のレーザー光の導電ペーストに対する照射強度を照射時間に応じて変化させることにより、レーザー光の照射時間による導電ペーストの熱の吸収量に応じてレーザー光の照射強度を変化させることが可能である。
【0028】
上記した導電基板の製造方法においては、前記基板を所定の方向へ移動し、前記基板の移動方向に直交する方向において前記第1のレーザー光の前記基板に対する照射角度を変化させて導電ペーストの位置を検出し、前記基板の移動方向に直交する方向において前記第2のレーザー光の前記基板に対する照射角度を変化させて前記導電ペーストを焼成することが望ましい。
【0029】
第1のレーザー光の基板に対する照射角度を変化させて導電ペーストの位置を検出し、第2のレーザー光の基板に対する照射角度を変化させて導電ペーストを焼成することにより、導電ペーストに対するレーザー光の照射角度に応じた範囲で導電ペーストの位置検出及び焼成が行われる。
【0030】
上記した導電基板の製造方法においては、前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光のレーザー光源を共通の光源とすることが望ましい。
【0031】
第1のレーザー光と第2のレーザー光のレーザー光源を共通の光源とすることにより、同一のレーザー光源から出射されたレーザー光が第1のレーザー光と第2のレーザー光として出力される。
【0032】
上記した導電基板の製造方法においては、前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光と前記第3のレーザー光のレーザー光源を共通の光源とすることが望ましい。
【0033】
第1のレーザー光と第2のレーザー光と第3のレーザー光のレーザー光源を共通の光源とすることにより、同一のレーザー光源から出射されたレーザー光が第1のレーザー光と第2のレーザー光と第3のレーザー光として出力される。
【0034】
レーザー光の照射装置は、上記した課題を解決するために、樹脂材料によって形成され所定の位置に導電ペーストが塗布された基板へ向けて第1のレーザー光を照射して照射位置による反射率の相違に基づいて前記導電ペーストの前記基板上の位置を検出する第1の光学系と、前記第1の光学系によって前記基板上の位置が検出された前記導電ペーストに対して第2のレーザー光を照射し前記導電ペーストを焼成させて導電層を形成する第2の光学系とを備えたものである。
【0035】
従って、基板上の導電ペーストのみに対して焼成に必要とされる光量を有する第2のレーザー光が照射される。
【0036】
上記したレーザー光照射装置においては、前記基板へ向けて第3のレーザー光を照射して前記基板上の前記導電層の形成状態を検出する第3の光学系を設けることが望ましい。
【0037】
基板へ向けて第3のレーザー光を照射して基板上の導電層の形成状態を検出する第3の光学系を設けることにより、導電層の形成状態に応じて第2のレーザー光の光量を変更することが可能である。
【発明の効果】
【0038】
本発明導電基板は、樹脂材料によって形成された基板と、前記基板上の所定の位置に塗布された導電ペーストが焼成されて前記基板上に形成された導電層とを備え、前記導電層が、前記基板へ向けて照射された第1のレーザー光の照射位置による反射率の相違に基づいて前記基板上の位置が検出された前記導電ペーストに対して第2のレーザー光が照射されることにより焼成されて形成されている。
【0039】
従って、基板として耐熱性の低い材料を用いることが可能となり、基板の材料に関する選択の自由度の向上を図ることができる。
【0040】
請求項2に記載した発明にあっては、前記基板へ向けて第3のレーザー光を照射して前記基板上の前記導電層の形成状態を検出するようにしている。
【0041】
従って、焼成状態の安定化による動作の信頼性の高い導電基板を製造することができる。
【0042】
請求項3に記載した発明にあっては、前記第2のレーザー光の前記導電ペーストに対する照射強度を照射時間に応じて変化させるようにしている。
【0043】
従って、レーザー光の照射時間により熱の吸収状態が変化する導電ペーストに対し、熱の吸収量を考慮して導電ペーストの最適な焼成状態を確保し良好な導電性を有する導電層を形成することが可能となる。
【0044】
請求項4に記載した発明にあっては、前記基板を所定の方向へ移動し、前記基板の移動方向に直交する方向において前記第1のレーザー光の前記基板に対する照射角度を変化させて導電ペーストの位置を検出し、前記基板の移動方向に直交する方向において前記第2のレーザー光の前記基板に対する照射角度を変化させて前記導電ペーストを焼成するようにしている。
【0045】
従って、レーザー光の基板に対する照射角度と基板の移動位置とに基づいて導電ペーストの基板に対する位置検出及び導電ペーストに対するレーザー光の照射を簡易かつ確実に行うことができる。
【0046】
請求項5に記載した発明にあっては、前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光のレーザー光源を共通の光源としている。
【0047】
従って、部品点数の削減及び製造コストの低減を図ることができる。
【0048】
請求項6に記載した発明にあっては、前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光と前記第3のレーザー光のレーザー光源を共通の光源としている。
【0049】
従って、一層の部品点数の削減及び製造コストの低減を図ることができる。
【0050】
本発明導電基板の製造方法は、樹脂材料によって形成された基板の所定の位置に導電ペーストを塗布し、前記基板へ向けて第1のレーザー光を照射して照射位置による反射率の相違に基づいて前記基板上の前記導電ペーストの位置を検出し、前記基板上の位置が検出された前記導電ペーストに対して第2のレーザー光を照射し前記導電ペーストを焼成して前記基板上に導電層を形成している。
【0051】
従って、基板として耐熱性の低い材料を用いることが可能となり、基板の材料に関する選択の自由度の向上を図ることができる。
【0052】
請求項8に記載した発明にあっては、前記基板へ向けて第3のレーザー光を照射して前記基板上の前記導電層の形成状態を検出するようにしている。
【0053】
従って、焼成状態の安定化による動作の信頼性の高い導電基板を製造することができる。
【0054】
請求項9に記載した発明にあっては、前記第2のレーザー光の前記導電ペーストに対する照射強度を照射時間に応じて変化させるようにしている。
【0055】
従って、レーザー光の照射時間により熱の吸収状態が変化する導電ペーストに対し、熱の吸収量を考慮して導電ペーストの最適な焼成状態を確保し良好な導電性を有する導電層を形成することが可能となる。
【0056】
請求項10に記載した発明にあっては、前記基板を所定の方向へ移動し、前記基板の移動方向に直交する方向において前記第1のレーザー光の前記基板に対する照射角度を変化させて導電ペーストの位置を検出し、前記基板の移動方向に直交する方向において前記第2のレーザー光の前記基板に対する照射角度を変化させて前記導電ペーストを焼成するようにしている。
【0057】
従って、レーザー光の基板に対する照射角度と基板の移動位置とに基づいて導電ペーストの基板に対する位置検出及び導電ペーストに対するレーザー光の照射を簡易かつ確実に行うことができる。
【0058】
請求項11に記載した発明にあっては、前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光のレーザー光源を共通の光源としている。
【0059】
従って、部品点数の削減及び製造コストの低減を図ることができる。
【0060】
請求項12に記載した発明にあっては、前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光と前記第3のレーザー光のレーザー光源を共通の光源としている。
【0061】
本発明レーザー光照射装置は、樹脂材料によって形成され所定の位置に導電ペーストが塗布された基板へ向けて第1のレーザー光を照射して照射位置による反射率の相違に基づいて前記導電ペーストの前記基板上の位置を検出する第1の光学系と、前記第1の光学系によって前記基板上の位置が検出された前記導電ペーストに対して第2のレーザー光を照射し前記導電ペーストを焼成させて導電層を形成する第2の光学系とを備えている。
【0062】
従って、基板として耐熱性の低い材料を用いることが可能となり、基板の材料に関する選択の自由度の向上を図ることができる。
【0063】
請求項14に記載した発明にあっては、前記基板へ向けて第3のレーザー光を照射して前記基板上の前記導電層の形成状態を検出する第3の光学系を設けている。
【0064】
従って、焼成状態の安定化による動作の信頼性の高い導電基板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
以下に、本発明導電基板、導電基板の製造方法及びレーザー光照射装置の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0066】
以下に示した最良の形態は、本発明導電基板、導電基板の製造方法及びレーザー光照射装置を、印刷により微細な導電パターン(導電層)を形成することにより環境負荷の低減や低コスト化等を図ることができるプリンタブルエレクトロニクス技術により製造する導電基板、導電基板の製造方法及びレーザー光照射装置に適用したものである。
【0067】
このようなプリンタブルエレクトロニクス技術により製造した導電基板は、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ等に適用される。
【0068】
以下の説明にあっては、例として、導電層が形成される被印刷物として機能する基板が上下方向を向く向きで配置された状態で方向を示すが、本発明の実施に関しては、これらの方向に限定されることはない。
【0069】
[導電基板の構成]
導電基板1は、図1に示すように、被印刷物として機能する基板2と基板2上に形成された導電層3、3、・・・とを有し、導電層3、3、・・・が導電パターンとして機能する。
【0070】
基板2は樹脂材料、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリイミド等によって形成されている。
【0071】
導電層3、3、・・・は基板2上に塗布された導電ペースト、例えば、金属ペーストが後述するレーザー光照射装置から照射されたレーザー光によって焼成されて形成され、例えば、銀ナノインクが用いられている。導電層3、3、・・・の材料としては、例えば、金、銅、ニッケル、すず、鉛等を用いることも可能である。尚、導電ペーストは金属ペーストに限られることはなく、導電ペーストとしては、例えば、有機導電ペーストや導電性ポリマー等を用いることが可能である。
【0072】
[レーザー光照射装置等の構成及び導電基板の製造方法]
レーザー光照射装置100はコントローラー10とレーザー光源20と第1の光学系30と第2の光学系40と第3の光学系50を有している(図2参照)。
【0073】
レーザー光照射装置100の下方には、所定の位置に導電ペーストが塗布された基板2が配置され、基板2は所定の方向、例えば、左方から右方へ向けて図示しない移動機構によって移動される。
【0074】
コントローラー10はレーザー光照射装置100の全体の制御を司る機能を有し、レーザー光源20と第1の光学系30と第2の光学系40と第3の光学系50に対して各種の指令を発する。コントローラー10は各種の情報を記憶するメモリー10aを有している。
【0075】
レーザー光源20は、例えば、半導体レーザーであり、コントローラー10の出力指令Pに基づいて、例えば、300nm乃至600nmのレーザー光を基板2に対して出射する。
【0076】
第1の光学系30は第1の走査光学部31と第1の光量検出素子32と第1のA/D変換部33とを有している。
【0077】
レーザー光源20と第1の走査光学部31の間にはレーザー光を反射又は透過する半透過ミラー61が配置され、第1の走査光学部31と第1の光量検出素子32の間にはレーザー光を反射又は透過する半透過ミラー62が配置されている。
【0078】
第1の走査光学部31は、例えば、ポリゴンミラーを有しており、コントローラー10の走査指令Aに基づいてレーザー光源20から出射され半透過ミラー61で反射され半透過ミラー62を透過される第1のレーザー光を基板2へ向けて照射し所定の角度範囲で走査する。第1の走査光学部31から照射された第1のレーザー光によって基板2が前後方向において走査され、基板2の走査時に反射された第1のレーザー光の反射光が半透過ミラー62で反射され第1の光量検出素子32に入射される。
【0079】
このとき第1の光量検出素子32には、第1のレーザー光の照射位置による反射率の相違によって、基板2に塗布された導電ペーストで反射された光量の大きな反射光と基板2の導電ペーストが存在しない部分で反射された光量の小さな反射光とが入射される。第1の光量検出素子32においては、入射された反射光の光量が検出され、光量の検出値が第1のA/D変換部33に送出される。
【0080】
第1のA/D変換部33に送出された反射光の光量の検出値は検出信号として第1のA/D変換部33においてデジタル変換され、変換された検出信号がコントローラー10に送出される。
【0081】
コントローラー10はレーザー光の基板2に対する照射角度(走査角度)と第1のA/D変換部33から送出された検出信号に基づいて、基板2上の導電ペーストの位置を検出(算出)し、検出された導電ペーストの位置情報がメモリー10aに記憶される。
【0082】
第2の光学系40は第2の走査光学部41と第2の光量検出素子42と第2のA/D変換部43とを有している。
【0083】
半透過ミラー61と第2の走査光学部41の間にはレーザー光を反射又は透過する半透過ミラー63、64が順に半透過ミラー61側から配置されている。
【0084】
第2の走査光学部41は、例えば、ポリゴンミラーを有しており、コントローラー10の走査変調指令Bに基づいてレーザー光源20から出射され半透過ミラー61、63、64を順に透過され変調された第2のレーザー光を基板2へ向けて照射し所定の角度範囲で走査する。第2のレーザー光の基板2に対する照射位置は第1のレーザー光の基板2に対する照射位置より基板2の移動方向側にされている。
【0085】
このときコントローラー10においては第1のレーザー光の照射により検出された導電ペーストの位置情報がメモリー10aから読み出され、この位置情報に基づいて導電ペーストのみに対して焼成に必要とされる光量を有する第2のレーザー光が照射される。従って、基板2の導電ペーストが存在しない部分に対しては第2のレーザー光が照射されず、又は、焼成に必要とされる光量よりも小さな光量の第2のレーザー光が照射される。第2のレーザー光が導電ペーストに照射されると、導電ペーストが焼成されて導電層3、3、・・・が形成される。
【0086】
第2のレーザー光が導電ペーストに照射されるときには、第2のレーザー光の反射光が半透過ミラー64を透過され半透過ミラー63で反射され第2の光量検出素子42に入射される。
【0087】
第2の光量検出素子42においては、入射された反射光の光量が検出され、光量の検出値が第2のA/D変換部43に送出される。
【0088】
第2のA/D変換部43に送出された反射光の光量の検出値は検出信号として第2のA/D変換部43においてデジタル変換され、変換された検出信号がコントローラー10に送出される。
【0089】
コントローラー10は第2のA/D変換部43から送出された検出信号に基づいてレーザー光源20から出射されるレーザー光の出力を検出し、検出した出力に基づいて導電ペーストの焼成に必要なレーザー光源20から出射されるレーザー光の出力を調整する。
【0090】
第3の光学系50は第3の走査光学部51と第3の光量検出素子52と第3のA/D変換部53とを有している。
【0091】
第3の走査光学部51と第3の光量検出素子52の間にはレーザー光を反射又は透過する半透過ミラー65が配置されている。
【0092】
第3の走査光学部51は、例えば、ポリゴンミラーを有しており、コントローラー10の走査指令Cに基づいてレーザー光源20から出射され半透過ミラー61、63を順に透過され半透過ミラー64で反射され半透過ミラー65を透過された第3のレーザー光を所定の角度範囲で基板2へ向けて照射する。第3のレーザー光の基板2に対する照射位置は第2のレーザー光の基板2に対する照射位置より基板2の移動方向側にされている。第3の走査光学部51から照射された第3のレーザー光によって基板2が前後方向において走査され、基板2の走査時に反射された第3のレーザー光の反射光が半透過ミラー65で反射され第3の光量検出素子52に入射される。
【0093】
このとき第3の光量検出素子52には、導電ペーストの形成状態に応じて光量が変化される反射光が入射される。第3の光量検出素子52においては、入射された反射光の光量が検出され、光量の検出値が第3のA/D変換部53に送出される。
【0094】
第3のA/D変換部53に送出された反射光の光量の検出値は検出信号として第3のA/D変換部53においてデジタル変換され、変換された検出信号がコントローラー10に送出される。
【0095】
コントローラー10は第3のレーザー光の照射角度(走査角度)と第3のA/D変換部53から送出された検出信号に基づいて、第3のレーザー光が照射されたときの反射光量が導電ペーストの焼成に必要な光量となるように、レーザー光源20の出力を制御して導電ペーストに照射される第2のレーザー光の光量を調整する。
【0096】
尚、上記にはレーザー光照射装置100に第1の光学系30と第2の光学系40と第3の光学系50が設けられている例を示したが、例えば、レーザー光照射装置は第1の光学系30と第2の光学系40と第3の光学系50を一つのセットとして複数のセットを有する所謂マルチヘッドであってもよい。
【0097】
マルチヘッドが設けられていることにより、複数の基板2、2、・・・に対するレーザー光の照射を同時に行うことが可能となり、導電基板1の生産性の向上を図ることができる。
【0098】
[各レーザー光の照射時における具体例]
以下に、各レーザー光の照射時における具体例を各グラフ図を参照して説明する(図3乃至図6参照)。
【0099】
先ず、第1のレーザー光が照射されるときの具体例を示す(図3参照)。
【0100】
図3において、横軸は第1のレーザー光の照射時間を示し、縦軸は第1のレーザー光の基板2に対する走査角度(実線)、第1のレーザー光の出力(一点鎖線)、第1のレーザー光の反射光量(二点鎖線)を示す。
【0101】
図3に示す例は、時間0から時間T3まで第1のレーザー光が走査角度0°から走査角度θまで走査され、時間T1から時間T2までの間で導電ペーストPが検出される状態を示している。第1のレーザー光の出力(光量)は一定値αとされ、反射光量は導電ペーストPが存在しない位置においては小さな光量F1とされ導電ペーストPが存在する位置においては大きな光量F2とされている。
【0102】
このように第1のレーザー光は、基板2を走査して照射位置による反射率の相違に基づいて基板2上の導電ペーストPの位置を検出するためのレーザー光として機能する。
【0103】
次に、第2のレーザー光が照射されるときの具体例を示す(図4参照)。
【0104】
図4において、横軸は第2のレーザー光の照射時間を示し、縦軸は第2のレーザー光の基板2に対する走査角度(実線)、第2のレーザー光の出力(一点鎖線)を示す。
【0105】
図4に示す例は、時間T1から時間T2まで第2のレーザー光によって導電ペーストPが走査され、時間T1から時間T2までの間で導電ペーストPに対して第2のレーザー光が照射される状態を示している。第2のレーザー光の出力(光量)は導電ペーストPが存在しない位置においては光量0とされ導電ペーストPが存在する位置においては大きな光量Fとされている。
【0106】
このように第2のレーザー光は、第1のレーザー光が照射されて位置検出が行われた導電ペーストPに対して照射され導電ペーストPを焼成して導電層3、3、・・・を検出するためのレーザー光として機能する。
【0107】
第2のレーザー光は、レーザー光源20からのレーザー光の出射に伴う温度変化に起因する出力の安定化を図るフィードバック制御に加え、第3のレーザー光の照射による導電ペーストPの最適な焼成状態を維持する制御により、リアルタイムに光量が調整される。
【0108】
尚、上記には、時間0から時間T1までと時間T2から時間T3までの間で光量が0とされた例を示したが、これらの時間帯に基板2にダメージを与えない程度の光量Fよりも小さい第2のレーザー光が照射されていてもよい。
【0109】
次いで、第3のレーザー光が照射されるときの具体例を示す(図5の上段参照)。
【0110】
図5の上段において、横軸は第3のレーザー光の照射時間を示し、縦軸は第3のレーザー光の基板2に対する走査角度(実線)、第3のレーザー光の出力(一点鎖線)、第3のレーザー光の反射光量(二点鎖線)を示す。
【0111】
図5の上段に示す例は、時間0から時間T3まで第3のレーザー光が走査角度0°から走査角度θまで走査され、時間T1から時間T2までの間で導電層3に対して第3のレーザー光が照射される状態を示している。第3のレーザー光の出力(光量)は一定値βとされ、反射光量は導電層3が存在しない位置においては小さな光量F3とされ導電層3が存在する位置においては大きな光量F4とされている。このとき導電層3が最適な状態で形成されたときには、反射光の光量が光量F5であることが予め認識されている。
【0112】
導電ペーストPの焼成によって形成された導電層3、3、・・・に対して第3のレーザー光を照射したときの反射光量は、導電ペーストPに含有される分散剤の不十分な分解等により最適な焼成状態が確保されたときに得られる反射光量に対して低下する。従って、図5の上段の例は、導電層3が最適な状態では形成されていない場合である。
【0113】
そこで、最適な焼成状態が確保されたときに得られる反射光量を予め基準光量として定め、第3のレーザー光が照射されたときに得られる反射光量と基準光量の差分を、以後の焼成時の第2のレーザー光に補正値として加え、第2のレーザー光の光量を調整する。
【0114】
このような制御を基板2の全面に対してリアルタイムに行うことにより、基板2の全体において導電ペーストP、P、・・・の焼成状態のバラツキが少ない良好な導電性を有する導電層3、3、・・・を形成することができる。
【0115】
図5の下段は、上記のような制御を行ったときの第2のレーザー光の調整後の状態を示す例である。第2のレーザー光は調整後において出力が高められ光量F6から光量F7にされている。
【0116】
尚、第2のレーザー光は導電ペーストPに照射されている状態において、図6に示すように、照射時間に応じて照射強度(光量)を変化させるようにすることも可能である。例えば、時間T1からT2において導電ペーストPに照射される最適な焼成状態が確保される光量と同じ光量を、時間に応じて光量を変化させた状態において導電ペーストPに照射するようにしてもよい。
【0117】
導電ペーストPにレーザー光を照射したときには、金属粒子や基板2の材質により経過時間によって熱の吸収状態が変化し、通常、レーザー光の照射直後は熱の吸収率が低いことが知られている。
【0118】
そこで、上記のような時間に応じた第2のレーザー光の光量を変化させる制御を行うことにより、経過時間によって変化する熱の吸収量を考慮して導電ペーストPの最適な焼成状態を確保し良好な導電性を有する導電層3、3、・・・を形成することが可能となる。
【0119】
[まとめ]
以上に記載した通り、導電基板1にあっては、第1のレーザー光が照射されて照射位置による反射率の相違に基づいて基板2上の位置が検出された導電ペーストに対して第2のレーザー光が照射されることにより焼成されて導電層3、3、・・・が形成されている。
【0120】
従って、基板2上の導電ペーストのみに対して焼成に必要とされる光量を有する第2のレーザー光が照射されるため、基板2として耐熱性の低い材料を用いることが可能となり、基板2の材料に関する選択の自由度の向上を図ることができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0121】
また、基板2へ向けて第3のレーザー光を照射して基板2上の導電層3、3、・・・の形成状態を検出するようにしているため、焼成状態の安定化による動作の信頼性の高い導電基板1を製造することができる。
【0122】
さらに、基板2を所定の方向へ移動し、基板2の移動方向に直交する方向において第1のレーザー光と第2のレーザー光の照射角度を変化させて走査するようにしている。従って、レーザー光の基板2に対する照射角度と基板2の移動位置とに基づいて導電ペーストの基板2に対する位置検出及び導電ペーストに対するレーザー光の照射を簡易かつ確実に行うことができる。
【0123】
さらにまた、第1のレーザー光と第2のレーザー光のレーザー光源20を共通の光源としているため、部品点数の削減及び製造コストの低減を図ることができる。
【0124】
加えて、第3のレーザー光についてもレーザー光源20が第1のレーザー光と第2のレーザー光と共通化されているため、一層の部品点数の削減及び製造コストの低減を図ることができる。
【0125】
[その他]
尚、本発明によって製造された導電基板1は、上記したように、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ等に適用されるが、本発明は、他の分野にも適用することが可能である。
【0126】
例えば、印刷により形成される半導体回路を必要とする電子ペーパーの分野、印刷により形成されるキャパシタ構造のメモリーの分野、印刷によって形成されるアンテナの分野、色素増感型太陽電池等の印刷により配線を形成する分野等に適用が可能である。
【0127】
また、プラスチック基板上に銀ナノインクによって配線を形成したり、ペンタセンによるゲート絶縁膜や高分子絶縁膜等を形成するフレキシブルディスプレイの分野にも適用することが可能である。
【0128】
上記した最良の形態において示した各部の具体的な形状及び構造は、何れも本発明を実施する際の具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】図2乃至図6と共に本発明導電基板、導電基板の製造方法及びレーザー光照射装置の実施の形態を示すものであり、本図は、導電基板の概略平面図である。
【図2】レーザー光照射装置等を示す概念図である。
【図3】図4乃至図6と共に各レーザー光の照射時における具体例を示すものであり、本図は、第1のレーザー光が照射されるときの具体例を示すグラフ図である。
【図4】第2のレーザー光が照射されるときの具体例を示すグラフ図である。
【図5】第3のレーザー光が照射されるときの具体例を、第3のレーザー光の反射光量に基づいて制御された第2のレーザー光の調整後の状態と共に示すグラフ図である。
【図6】時間に応じて第2のレーザー光の光量を変化させるようにしたときの例を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0130】
1…導電基板、2…基板、3…導電層、100…レーザー光照射装置、20…レーザー光源、30…第1の光学系、40…第2の光学系、50…第3の光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料によって形成された基板と、
前記基板上の所定の位置に塗布された導電ペーストが焼成されて前記基板上に形成された導電層とを備え、
前記導電層が、前記基板へ向けて照射された第1のレーザー光の照射位置による反射率の相違に基づいて前記基板上の位置が検出された前記導電ペーストに対して第2のレーザー光が照射されることにより焼成されて形成された
導電基板。
【請求項2】
前記基板へ向けて第3のレーザー光を照射して前記基板上の前記導電層の形成状態を検出するようにした
請求項1に記載の導電基板。
【請求項3】
前記第2のレーザー光の前記導電ペーストに対する照射強度を照射時間に応じて変化させるようにした
請求項1に記載の導電基板。
【請求項4】
前記基板を所定の方向へ移動し、
前記基板の移動方向に直交する方向において前記第1のレーザー光の前記基板に対する照射角度を変化させて導電ペーストの位置を検出し、
前記基板の移動方向に直交する方向において前記第2のレーザー光の前記基板に対する照射角度を変化させて前記導電ペーストを焼成するようにした
請求項1に記載の導電基板。
【請求項5】
前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光のレーザー光源を共通の光源とした
請求項1に記載の導電基板。
【請求項6】
前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光と前記第3のレーザー光のレーザー光源を共通の光源とした
請求項2に記載の導電基板。
【請求項7】
樹脂材料によって形成された基板の所定の位置に導電ペーストを塗布し、
前記基板へ向けて第1のレーザー光を照射して照射位置による反射率の相違に基づいて前記基板上の前記導電ペーストの位置を検出し、
前記基板上の位置が検出された前記導電ペーストに対して第2のレーザー光を照射し前記導電ペーストを焼成して前記基板上に導電層を形成した
導電基板の製造方法。
【請求項8】
前記基板へ向けて第3のレーザー光を照射して前記基板上の前記導電層の形成状態を検出するようにした
請求項7に記載の導電基板の製造方法。
【請求項9】
前記第2のレーザー光の前記導電ペーストに対する照射強度を照射時間に応じて変化させるようにした
請求項7に記載の導電基板の製造方法。
【請求項10】
前記基板を所定の方向へ移動し、
前記基板の移動方向に直交する方向において前記第1のレーザー光の前記基板に対する照射角度を変化させて導電ペーストの位置を検出し、
前記基板の移動方向に直交する方向において前記第2のレーザー光の前記基板に対する照射角度を変化させて前記導電ペーストを焼成するようにした
請求項7に記載の導電基板の製造方法。
【請求項11】
前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光のレーザー光源を共通の光源とした
請求項7に記載の導電基板の製造方法。
【請求項12】
前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光と前記第3のレーザー光のレーザー光源を共通の光源とした
請求項8に記載の導電基板の製造方法。
【請求項13】
樹脂材料によって形成され所定の位置に導電ペーストが塗布された基板へ向けて第1のレーザー光を照射して照射位置による反射率の相違に基づいて前記導電ペーストの前記基板上の位置を検出する第1の光学系と、
前記第1の光学系によって前記基板上の位置が検出された前記導電ペーストに対して第2のレーザー光を照射し前記導電ペーストを焼成させて導電層を形成する第2の光学系とを備えた
レーザー光照射装置。
【請求項14】
前記基板へ向けて第3のレーザー光を照射して前記基板上の前記導電層の形成状態を検出する第3の光学系を設けた
請求項13に記載のレーザー光照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−164695(P2012−164695A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21634(P2011−21634)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】