説明

導電性インク組成物、及びそれを用いて製造された電気的導通部位

【課題】 電気的導通部位を形成する金属種が、低コストで、耐エレクトロマイグレーション性に優れる銅のみであり、且つ、大気中での加熱処理で電気的導通部位の形成が可能な導電性インク組成物、及びそれを用いて製造された電気的導通部位を提供する。
【解決手段】 アルカノールアミン、還元力を有するカルボン酸、及び銅粒子を含有する導電性インク組成物、及びそれを基材に塗布又は充填し、当該基材を大気中で加熱処理することで製造された電気的導通部位。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性インク組成物、及びそれを用いて製造された電気的導通部位に関する。本発明の導電性インク組成物は、エレクトロニクス分野で配線形成用材料として好適に用いることができる。また、本発明の導電性インク組成物を用いることにより、大気中加熱処理にて電気的導通部位を製造できる。
【背景技術】
【0002】
近年、省コストや低環境負荷への観点から、スクリーン印刷等の印刷法で導電性インクを所望のパターンに印刷し、回路基板における配線や電極等の電気的導通部位を形成する技術が注目を集めている。
【0003】
現状、このような方法に用いる導電性インクとしては、銀粒子を利用した導電性インクが主流となっている。銀粒子の導電性インクは導電性に優れることはもとより、大気中での処理によっても高い導電性を有する電気的銅通部位を形成できる利点をもつ(例えば、特許文献1参照)。しかし、銀粒子の導電性インクは、銀がエレクトロマイグレーション(electromigration)を発生しやすいという問題や、銀自体が高価な金属であるといった問題がある。ここで、エレクトロマイグレーションとは、電界の影響で、金属成分(例えば、配線や電極に使用した金属)が非金属媒体(例えば、絶縁物)の上や中を横切って移動する現象である。
【0004】
そこで、低コストで、エレクトロマイグレーションが生じるおそれが少なく、且つ高い導電性をもつ銅を主成分とする電気的導通部位を、印刷法により形成可能な導電性インクが望まれている。
【0005】
銅を主成分とする導電性インクとしては、銅粒子をペースト化した銅ペーストが検討されている。銅ペーストとは、一般的には、銅粒子、バインダー樹脂、及び溶剤を混合しペースト状にしたものであり、バインダー樹脂の硬化収縮により、銅粒子相互を物理的に接触させ、電気的導通を発現させるものである(例えば、特許文献2参照)。このような銅ペーストでは大気中での加熱処理で電気的導通部位の形成が可能である。しかし、銅ペーストは加熱処理時における銅粒子の酸化の影響を少なくするため、粒子径が10〜100μm程度の銅粒子を利用しており、配線等の電気的導通部位を形成する場合において、配線幅が数十μm程度の微細配線パターンには適用できないという問題があった。
【0006】
そこで、微細な銅粒子を利用する検討も行われている。例えば、窒素、酸素、硫黄等のヘテロ原子を分子構造内に有する有機化合物を金属銅表面に吸着させ、酸素や水との接触を妨げ酸化を防ぐと同時に、金属銅粒子相互の凝集を抑制した、平均粒子径が数nm〜数100nm程度の銅粒子を利用する方法が多数提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
しかしながら、このような微細な銅粒子を利用した導電性インクは、一般的に水素を含む還元雰囲気下での加熱が必要であり、仮に大気中で加熱処理を行った場合、銅粒子が酸化され、電気的導通部位を形成できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−143325号公報
【特許文献2】特開平1−167385号公報
【特許文献3】特開2007−321215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気的導通部位を形成する金属種が、低コストで、耐エレクトロマイグレーション性に優れる銅のみであり、且つ、大気中での加熱処理で電気的導通部位の形成が可能な導電性インク組成物、及びそれを用いて製造された電気的導通部位を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、アルカノールアミン、還元力を有するカルボン酸、及び銅粒子を含有する導電性インク組成物が、上記した課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりの導電性インク組成物、及びそれを用いて製造された電気的導通部位に関するものである。
[1]アルカノールアミン、還元力を有するカルボン酸、及び銅粒子を含有することを特徴とする導電性インク組成物。
[2]アルカノールアミンが下記一般式(1)、及び一般式(2)で示されるアルカノールアミンの少なくとも一種であることを特徴とする上記[1]に記載の導電性インク組成物。
【0012】
【化1】

【0013】
[R、Rは各々独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、炭素数3〜6の分岐状若しくは環式のアルキル基を表し、R、Rは各々独立して、水素原子、又はメチル基を表し、Xはメチレン基、又はエチレン基を表す。]
【0014】
【化2】

【0015】
[R、Rは各々独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、炭素数3〜6の分岐状若しくは環式のアルキル基を表し、Yはメチレン基、又はエチレン基を表す。]
[3]アルカノールアミンが、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N−メチル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N,N−ジメチル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、3−ヒドロキシプロピルアミン、N−メチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、3−(メチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(エチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジエチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、4−アミノ−1,2−ブタンジオール、4−(メチルアミノ)−1,2−ブタンジオール、及び4−(ジメチルアミノ)−1,2−ブタンジオールからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の導電性インク組成物。
[4]還元力を有するカルボン酸が、ギ酸、ヒドロキシ酢酸、グリオキシル酸、及びシュウ酸からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の導電性インク組成物。
[5]銅粒子の形態が、樹枝状、球状、鱗片状、又は不定型からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の導電性インク組成物。
[6]銅粒子の平均粒子径が、0.01〜5μmの範囲であることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載の導電性インク組成物。
[7]導電性インク組成物全量に対し、アルカノールアミンの濃度が0.1〜80重量%、還元力を有するカルボン酸の濃度が0.1重量%〜80重量%、及び銅粒子の濃度が0.1〜99重量%であることを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれかに記載の導電性インク組成物。
[8]さらに希釈剤を含有することを特徴とする上記[1]〜[7]のいずれかに記載の導電性インク組成物。
[9]導電性インク組成物の粘度が、1〜1000Pa・sの範囲であることを特徴とする上記[1]〜[8]のいずれかに記載の導電性インク組成物。
[10]上記[1]〜[9]のいずれかに記載の導電性インク組成物を、基材に塗布又は充填し、当該基材を加熱処理することで製造することを特徴とする電気的導通部位。
[11]加熱処理を大気中で行うことを特徴とする上記[10]に記載の電気的導通部位。
【発明の効果】
【0016】
本発明は以下に示す効果を奏する。
【0017】
(1)本発明の導電性インク組成物は、塗布又は充填、加熱といった簡便な方法で、導電性パターン等の電気的導通部位を形成することが可能であるため、省エネルギー、低コスト、低環境負荷を達成でき、工業的に極めて有用である。特に、配線幅が数十μm程度の微細配線パターンに有用である。
【0018】
(2)本発明の電気的導通部位は、本発明の導電性インク組成物を用いることにより、大気中での加熱処理で電気的導通部位の形成が可能なため、水素を含む還元雰囲気を必要とせず安全性に優れる。また、大掛かりな設備も必要としないため、コスト性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
【0020】
まず、本発明の導電性インク組成物について説明する。
【0021】
本発明の導電性インク組成物は、アルカノールアミン、還元力を有するカルボン酸、及び銅粒子を含む。
【0022】
本発明の導電性インク組成物は、加熱処理することにより、還元力を有するカルボン酸が銅粒子表面の銅酸化物を溶解し、銅粒子表面に金属銅を露出させると同時に、還元力を有するカルボン酸が、銅酸化物が溶解し生じた銅イオン還元し、金属銅となることで、電気的導通部位が形成される。また、アルカノールアミンは、銅粒子に配位することにより、銅粒子の分散性の向上や、銅粒子が大気に接触し酸化されるのを防ぐ効果を有する他、電気的導通部位形成時の銅イオンの還元反応を安定化する効果を有する。
【0023】
本発明の導電性インク組成物において、アルカノールアミンは、銅粒子に配位し、銅粒子の分散性の向上や、銅粒子が大気に接触し酸化されるのを防ぐ効果を有し、さらに電気的導通部位形成時の銅イオンの還元反応を安定化する効果をもつものであればよく、特に限定はなく、例えば、下記一般式(1)、及び一般式(2)で示されるアルカノールアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0024】
【化3】

【0025】
[R、Rは各々独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、炭素数3〜6の分岐状若しくは環式のアルキル基を表し、R、Rは各々独立して、水素原子、又はメチル基を表し、Xはメチレン基、又はエチレン基を表す。]
【0026】
【化4】

【0027】
[R、Rは各々独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、炭素数3〜6の分岐状若しくは環式のアルキル基を表し、Yはメチレン基、又はエチレン基を表す。]
一般式(1)におけるR、R2、及び一般式(2)におけるR、R6、は水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、炭素数3〜6の分岐状若しくは環式のアルキル基であり、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられ、炭素数3〜6の分岐状アルキル基としては、例えばi−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、i−ペンチル基、sec−ペンチル基、t−ペンチル基、neo−ペンチル基、i−ヘキシル基等が挙げられ、炭素数3〜6の環式のアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0028】
具体的な一般式(1)で示される化合物としては、一般式(1)において、R、Rが共に水素原子であり、Xがメチレン基のものとしては、例えば、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−n−プロピルエタノールアミン、N,N−ジ(n−プロピル)エタノールアミン、N−i−プロピルエタノールアミン、N,N−ジ(i−プロピル)エタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N,N−ジ(n−ブチル)エタノールアミン、N−i−ブチルエタノールアミン、N,N−ジ(i−ブチル)エタノールアミン、N−t−ブチルエタノールアミン、N,N−ジ(t−ブチル)エタノールアミン、N−n−ペンチルエタノールアミン、N,N−ジ(n−ペンチル)エタノールアミン、N−n−ヘキシルエタノールアミン、N,N−ジ(n−ヘキシル)エタノールアミン、N−シクロヘキシルエタノールアミン、N,N−ジシクロヘキシルエタノールアミン等が挙げられる。
【0029】
また、一般式(1)において、R、Rが共にメチル基であり、Xがメチレン基のものとしては、例えば、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N−メチル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N,N−ジメチル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N−エチル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N,N−ジエチル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N−n−プロピル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N,N−ジ(n−プロピル)−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N−i−プロピル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N,N−ジ(i−プロピル)−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N−n−ブチル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N,N−ジ(n−ブチル)−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N−i−ブチル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N,N−ジ(i−ブチル)−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N−t−ブチル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N,N−ジ(t−ブチル)−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N−n−ペンチル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N,N−ジ(n−ペンチル)−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N−n−ヘキシル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N,N−ジ(n−ヘキシル)−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N−シクロヘキシル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N,N−ジシクロヘキシル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン等が挙げられる。
【0030】
また、一般式(1)において、R、Rが共に水素原子であり、Xがエチレン基のものとしては、例えば、3−ヒドロキシプロピルアミン、N−メチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N−エチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジエチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N−n−プロピル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジ(n−プロピル)−3−ヒドロキシプロピルアミン、N−i−プロピル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジ(i−プロピル)−3−ヒドロキシプロピルアミン、N−n−ブチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジ(n−ブチル)−3−ヒドロキシプロピルアミン、N−i−ブチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジ(i−ブチル)−3−ヒドロキシプロピルアミン、N−t−ブチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジ(t−ブチル)−3−ヒドロキシプロピルアミン、N−n−ペンチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジ(n−ペンチル)−3−ヒドロキシプロピルアミン、N−n−ヘキシル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジ(n−ヘキシル)−3−ヒドロキシプロピルアミン、N−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジシクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピルアミン等が挙げられる。
【0031】
また、一般式(1)において、R、Rが共にメチル基であり、Xがエチレン基のものとしては、例えば、1,1−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N−メチル−1,1−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−1,1−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N−エチル−1,1−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジエチル−1,1−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N−n−プロピル−1,1−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジ(n−プロピル)−1,1−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N−i−プロピル−1,1−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジ(i−プロピル)−1,1−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N−n−ブチル−1,1−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジ(n−ブチル)−1,1−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N−i−ブチル−1,1−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジ(i−ブチル)−1,1−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N−t−ブチル−1,1−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジ(t−ブチル)−1,1−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N−n−ペンチル−1,1−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジ(n−ペンチル)−1,1−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N−n−ヘキシル−1,1−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジ(n−ヘキシル)−1,1−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N−シクロヘキシル−1,1−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジシクロヘキシル−1,1−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン等が挙げられる。
【0032】
具体的な一般式(2)で示される化合物としては、Yがメチレン基のものとしては、例えば、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、3−(メチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(エチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジエチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(n−プロピルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジ−n−プロピルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(i−プロピルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジ−i−プロピルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(n−ブチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジ−n−ブチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(i−ブチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジ−i−ブチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(t−ブチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジ−t−ブチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(n−ペンチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジ−n−ペンチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(n−ヘキシルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジ−n−ヘキシルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(シクロヘキシルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジシクロヘキシルアミノ)−1,2−プロパンジオール等が挙げられる。
【0033】
また、一般式(2)において、Yがエチレン基のものとしては、例えば、4−アミノ−1,2−ブタンジオール、4−(メチルアミノ)−1,2−ブタンジオール、4−(ジメチルアミノ)−1,2−ブタンジオール、4−(エチルアミノ)−1,2−ブタンジオール、4−(ジエチルアミノ)−1,2−ブタンジオール、4−(n−プロピルアミノ)−1,2−ブタンジオール、4−(ジ−n−プロピルアミノ)−1,2−ブタンジオール、4−(i−プロピルアミノ)−1,2−ブタンジオール、4−(ジ−i−プロピルアミノ)−1,2−ブタンジオール、4−(n−ブチルアミノ)−1,2−ブタンジオール、4−(ジ−n−ブチルアミノ)−1,2−ブタンジオール、4−(i−ブチルアミノ)−1,2−ブタンジオール、4−(ジ−i−ブチルアミノ)−1,2−ブタンジオール、4−(t−ブチルアミノ)−1,2−ブタンジオール、4−(ジ−t−ブチルアミノ)−1,2−ブタンジオール、4−(n−ペンチルアミノ)−1,2−ブタンジオール、4−(ジ−n−ペンチルアミノ)−1,2−ブタンジオール、4−(n−ヘキシルアミノ)−1,2−ブタンジオール、4−(ジ−n−ヘキシルアミノ)−1,2−ブタンジオール、4−(シクロヘキシルアミノ)−1,2−ブタンジオール、4−(ジシクロヘキシルアミノ)−1,2−ブタンジオール等が挙げられる。
【0034】
上記した一般式(1)、(2)で示されるアルカノールアミンのうち、電気的導通部位を形成する際の除去性、及び製造時又は入手時のコストを考慮すると、アルカノールアミンとしては、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N−メチル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N,N−ジメチル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、3−ヒドロキシプロピルアミン、N−メチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、3−(メチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(エチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジエチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、4−アミノ−1,2−ブタンジオール、4−(メチルアミノ)−1,2−ブタンジオール、及び4−(ジメチルアミノ)−1,2−ブタンジオール等が好ましく、特にエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、及び3−(ジエチルアミノ)−1,2−プロパンジオール等からなる群の中より選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0035】
本発明の導電性インク組成物においては、本発明の趣旨に反しない程度であれば、上記した以外のアルカノールアミンを含んでいても差し支えない。
【0036】
本発明の導電性インク組成物において、アルカノールアミンは市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでも良く、特に限定されない。合成方法としては、例えば、一般式(1)で示されるアルカノールアミンにおいて、Xがメチレン基である化合物を合成する方法としては、対応するアミンとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、若しくはイソブチレンオキサイドを反応させ、アルカノールアミンとする方法等が挙げられる。また、例えば、一般式(1)で示されるアルカノールアミンにおいて、Xがエチレン基である化合物を合成する方法としては、水とアクリロニトリルを反応させ、生ずるシアノエチル基を還元しアルカノールアミンとし、さらに修飾し誘導体とする方法等が挙げられる。一方、一般式(2)で示されるアルカノールアミンを合成する方法としては、例えば、対応するアミンとグリシドールを反応させる方法等が挙げられる。また、アルカノールアミンの純度としては、特に限定はなく、電子材料分野での使用を考慮すると、95%以上が好ましく、99%以上が特に好ましい。
【0037】
本発明の導電性インク組成物において、還元力を有するカルボン酸としては、銅イオンを金属銅へと還元できるものであれば、特に限定はなく、例えば、ギ酸、ヒドロキシ酢酸、グリオキシル酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、及びクエン酸等が挙げられる。中でも、電気的導通部位を形成する際の除去性、及び製造時又は入手時のコストを考慮すると、ギ酸、ヒドロキシ酢酸、グリオキシル酸、及びシュウ酸からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、ギ酸を用いることが特に好ましい。
【0038】
本発明の導電膜形成用組成物において、還元力を有するカルボン酸は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよく、特に限定されない。
【0039】
本発明の導電膜形成用組成物において、還元力を有するカルボン酸の純度は、特に限定はなく、電子材料分野での使用を考慮すると、95%以上が好ましく、99%以上が特に好ましい。
【0040】
本発明の導電性インク組成物において、銅粒子は、特に限定はなく、少なくとも銅を主成分とする金属粒子である。単体であってもその他金属との合金であっても差し支えなく、銅の優れた特性を発現させるためには、銅の含有量が90重量%以上が好ましく、99重量%以上が特に好ましい。
【0041】
銅粒子の形状は、特に限定はなく、樹枝状、球状、鱗片状、又は不定型からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、中でも球状の銅粒子がインクとした際の印刷性の面から好ましい。
【0042】
銅粒子の平均粒子径は、金属表面の活性抑制及び銅粒子が沈降・メッシュが目詰まり防止の観点から、0.01〜5μmの範囲であることが好ましく、0.1〜3μmの範囲であることが特に好ましい。尚、銅粒子の平均粒子径の測定方法としては、一般的な測定方法を用いることができる。例えば、透過型電子顕微鏡(TEM),電界放射型透過電子顕微鏡(FE−TEM),電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等を適宜使用することができる。平均粒子径の値は、上記装置を用いて測定し、観測された視野の中から、粒子径が比較的そろっている箇所を3箇所選択し、粒径測定に最も適した倍率で撮影する。各々の写真から、一番多数存在すると思われる粒子を100個選択し、その直径をものさしで測り、測定倍率を除して粒子径を算出する。これらの値を算術平均することにより求めた。
【0043】
また、銅粒子は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでも良く、特に限定はなく、工業用に市販されているもので十分である。また銅粒子の純度については特に限定はなく導電性薄膜とした際に、導電性に悪影響を与える恐れがあるため、95%以上が好ましく、99%以上が特に好ましい。
【0044】
本発明の導電性インク組成物において、各成分の濃度は特に制限はなく、導電性インク組成物全量に対し、アルカノールアミンの濃度が0.1重量%〜80重量%、還元力を有するカルボン酸の濃度が0.1重量%〜80重量%、及び銅粒子の濃度が0.1〜99重量%の範囲で含有することが好ましく、特に、アルカノールアミンの濃度が2重量%〜48重量%、還元力を有するカルボン酸の濃度が2重量%〜48重量%、及び銅粒子の濃度が50〜96重量%の範囲で含有することが好ましい[ただし、アルカノールアミン、還元力を有するカルボン酸、及び銅粒子の合計量が100重量%を超えることはない。]。
【0045】
アルカノールアミンの濃度をこの範囲とすることにより、金属粒子、及び/又はギ酸銅粒子が十分に分散し、また導電性インク組成物全量における銅の濃度が低下し、所望する膜厚の電気的導通部位を得るための導電性インク組成物の塗布量が増加することもない。
【0046】
また、還元力を有するカルボン酸の濃度をこの範囲とすることにより、銅粒子表面の酸化皮膜を溶解することができ導電性能が著しく低下することがなく、また所望する膜厚の電気的導通部位を得るための導電性インク組成物の塗布量が増加することもない。
【0047】
さらに、銅粒子の濃度をこの範囲とすることにより、電気的導通部位が形成可能であり、また導電性インク組成物の粘度上昇又は固化が起こることもない。
【0048】
本発明の導電性インク組成物は、上記成分に加えて、希釈剤を含有しても一向に差し支えない。
【0049】
本発明の導電性インク組成物において、希釈剤は、その濃度を変えることにより、導電性インク組成物の粘度を、所望の粘度に容易に調整することができる。
【0050】
本発明の導電性インク組成物において希釈剤は、アルカノールアミン、還元力を有するカルボン酸、及び銅粒子と反応しないものであれば、何ら差し支えなく用いることができ、特に限定はなく、例えば、アルコール類、グリコール類、エーテル類、エステル類、脂肪族炭化水素類、及び芳香族炭化水素類からなる群より選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。
【0051】
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ターピネオール等が挙げられる。
【0052】
グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0053】
エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジブチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン等が例示される。
【0054】
エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトン等が例示される。
【0055】
脂肪族炭化水素類としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、シクロヘキサン、デカリン等が例示される。
【0056】
芳香族炭化水素類としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が例示される。
【0057】
これらの中でもコスト、及び安全性の面から、ヘキサノール、ターピネオール、エチレングリコール、メチル−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、n−ヘキサン、及びγ−ブチロラクトンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0058】
本発明の導電性インク組成物において、希釈剤は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよい。
【0059】
本発明の導電性インク組成物において、希釈剤の純度は、特に限定はなく、電子材料分野での使用を考慮すると、95%以上が好ましく、99%以上が特に好ましい。
【0060】
本発明の導電性インク組成物において、希釈剤の濃度は特に限定はなく、導電性インク組成物全量における銅の濃度が低下し、所望する膜厚の電気的導通部位を得るための導電性インク組成物の塗布量が増加することがないことから、導電性インク組成物全量に対し、希釈剤の濃度が1〜90重量%の範囲であることが好ましい。
【0061】
本発明の導電性インク組成物において、導電性インク組成物の粘度は、所望する塗布方法により、適宜、調整すれば良く、特に限定はなく、例えば、スクリーン印刷法により塗布し、パターン形成を行う場合、通常1〜1000Pa・sの範囲に調整することが好ましい。
【0062】
次に本発明の導電性インク組成物を用いた電気的導通部位について説明する。
【0063】
本発明において、「電気的導通部位」とは、本発明の導電性インク組成物を用いて形成された電気的導通を有する部位を意味する。例えば、導電性薄膜、配線、電極、スルーホールを介した両面及び/又は多層間の電気的導通部位、基板と被接合物との電気的導通を有する接合部位等が挙げられる。
【0064】
本発明の電気的導通部位は、本発明の導電性インク組成物を、基材に塗布又は充填し、当該基材を加熱処理することで行われる。例えば、本発明の導電性インク組成物を基材上に塗布した後に、加熱処理することによって、ギ酸銅粒子中に含まれる銅イオンを還元させると共に、配位性化合物が揮発し除去され、当該基材上に電気的導通部位を容易に形成することができる。
【0065】
本発明の電気的導通部位において、基材としては、公知のものを用いることができ、特に限定はなく、例えば、樹脂、紙、ガラス、シリコン系半導体、化合物半導体、金属酸化物、金属窒化物、木材等からなる一種又は二種以上、若しくは二種以上の複合基材が挙げられる。
【0066】
樹脂としては、具体的には、例えば低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂)、アクリル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、セルロース誘導体等が例示される。
【0067】
紙としては、具体的には、例えば非塗工印刷用紙、微塗工印刷用紙、塗工印刷用紙(アート紙、コート紙)、特殊印刷用紙、コピー用紙(PPC用紙)、未晒包装紙(重袋用両更クラフト紙、両更クラフト紙)、晒包装紙(晒クラフト紙、純白ロール紙)、コートボール、チップボール、段ボール等が例示される。
【0068】
ガラスとしては、具体的には、例えばソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、シリカガラス、石英ガラス等が例示される。
【0069】
シリコン系半導体としては、具体的には、例えば単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、ポリシリコン等が例示される。
【0070】
化合物半導体としては、具体的には、例えばCdS、CdTe、GaAs等が例示される。
【0071】
金属酸化物としては、具体的には、例えばアルミナ、サファイア、ジルコニア、チタニア、酸化イットリウム、酸化インジウム、ITO(インジウム錫酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、ネサ(酸化錫)、ATO(アンチモンドープ酸化錫)、フッ素ドープ酸化錫、酸化亜鉛、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、ガリウムドープ酸化亜鉛等が例示される。
【0072】
金属窒化物としては、具体的には、例えば窒化アルミニウム、窒化珪素等が例示される。
【0073】
また、複合基材としては、具体的には、例えば、紙−フェノール樹脂、紙−エポキシ樹脂、紙−ポリエステル樹脂等の紙−樹脂複合基材や、ガラス布−エポキシ樹脂、ガラス布−ポリイミド系樹脂、ガラス布−フッ素樹脂等のガラス布−樹脂複合基材が挙げられる。
【0074】
本発明の電気的導通部位において、加熱処理は、大気中で行うことができる。従来の導電性インク組成物を電気伝導通部位の製造に用いる際の加熱処理は、窒素雰囲気等の非酸化性雰囲気で行う必要があった。それに対して、本発明の導電性インク組成物を用いて電気的導通部位を製造する際には、加熱処理時に還元力を有するカルボン酸が銅粒子表面の銅酸化物を溶解し、銅粒子表面に金属銅を露出させると同時に、銅酸化物が溶解し生じた銅イオンが還元力を有するカルボン酸により還元され金属銅となることから大気中で行うことができる。
【0075】
本発明の電気的導通部位において、加熱処理の温度は、アルカノールアミン、及び還元力を有するカルボン酸が揮発し除去される温度であればよく、特に限定はなく、有機基材を利用できることから、60〜300℃が好ましく、80〜200℃の範囲が特に好ましい。
【0076】
また、加熱処理の時間は、温度や所望する導電性により適宜選択すればよく、200℃程度の加熱温度を設定した場合には、通常10〜60分程度である。
【0077】
本発明の電気的導通部位において、本発明の導電性インク組成物を基材に塗布する方法としては、公知の方法によって行うことができ、特に限定はなく、例えば、スクリーン印刷法、ディップコーティング法、スプレー塗布法、スピンコーティング法、インクジェット法、ディスペンサーでの塗布法等が挙げられる。塗布の形状としては面状であっても、ドット状であっても、問題は無く、特に限定されない。導電性インク組成物を基材に塗布する塗布量としては、所望する電気的導通部位の膜厚に応じて適宜調整すればよく、乾燥後の導電性インク組成物の膜厚が0.01〜5000μmの範囲が好ましく、特に好ましくは0.1〜1000μmの範囲となるよう塗布すれば良い。
【0078】
本発明の電気的導通部位は、様々な工業製品を製造する工程の一部として利用することができ、本発明の電気的導通部位により一部〜全体を製造した電気的導通部位を有する工業製品を得ることができる。
【0079】
本発明の電気的導通部位により一部〜全体を製造した電気的導通部位を有する工業製品としては、特に限定するものではなく、例えば、有機エレクトロルミネッセンスパネル、プラズマディスプレイパネル、液晶パネル等の画像表示装置;LED(Light Emitting Diode)発光装置、及び有機エレクトロルミネッセンス発光装置等の発光装置;1層(片面)プリント配線基板、2層(両面)プリント配線基板、多層プリント配線基板、フレキシブルプリント配線基板等の回路基板;積層コンデンサ、固体電解コンデンサ等のコンデンサ;シリコン系太陽電池、化合物半導体系太陽電池、色素増感型太陽電池、有機半導体型太陽電池等の太陽電池;リチウム二次電池、ニッケル−水素二次電池等の二次電池;電波方式認識タグ;電磁波遮蔽シールド等が挙げられる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定して解釈されるものではない。
【0081】
なお、以下の実施例において、銅粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)で、観測した視野の中から、粒子径が比較的そろっている箇所を3箇所選択し、10,000倍の倍率で撮影を行い、それぞれの写真から、粒子を計100個選択し、その直径をものさしで測り、測定倍率を除して粒子径を算出し、これらの値を算術平均することにより求めた。TEMは日本電子製、商品名「JEM−2000FX」を使用した。
【0082】
また、導電性インク組成物の粘度は、レオメーター(ティー・エイ・インスツルメント社製、商品名:ARレオメーター AR2000ex)を用い、測定温度30℃で測定した。
【0083】
実施例1 エタノールアミン、ギ酸、及び銅粒子を含む導電性インク組成物の調製
テトラヒドロフラン(キシダ化学社製 特級)10gに、一般式(1)で示されるアルカノールアミンであるエタノールアミン(キシダ化学社製 特級)0.89g、還元力を有するカルボン酸であるギ酸(キシダ化学社製 特級)0.89g、及び銅粒子(三井金属社製、平均粒子径0.9μm)7.1gを順次添加し、乳鉢で完全に分散状態になるまで十分に混練した。次に、この混合物を、減圧条件下、40℃で、テトラヒドロフランと余分な水分を除去することで、ペースト状の導電性インク組成物を調製した。得られた導電性インク組成物(エタノールアミン:10.0重量%、ギ酸:10.0重量%、銅粒子:80.0重量%)の粘度は129Pa・sであった(以下、表記を簡潔にするため、ペーストAと称する)。
【0084】
実施例2 1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、ギ酸、銅粒子、及びエチレングリコールを含む導電性インク組成物の調製
テトラヒドロフラン(キシダ化学社製 特級)10gに、一般式(1)で示されるアルカノールアミンである1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン(東京化成社製 特級)0.8g、ギ酸(キシダ化学社製 特級)0.8g、銅粒子(三井金属社製、平均粒子径2.49μm)9.6g、及び希釈剤であるエチレングリコール(キシダ化学社製 特級)0.8gを順次添加し、乳鉢で完全に分散状態になるまで十分に混練した。次に、この混合物を、減圧条件下、40℃で、テトラヒドロフランと余分な水分を除去することで、ペースト状の導電性インク組成物(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン:6.7重量%、ギ酸:6.6重量%、銅粒子:80.0重量%、エチレングリコール6.7重量%)を調製した。得られた導電性インク組成物の粘度は108Pa・sであった(以下、表記を簡潔にするため、ペーストBと称する)。
【0085】
実施例3 3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、ギ酸、及び銅粒子を含む導電性インク組成物の調製
テトラヒドロフラン(キシダ化学社製 特級)10gに、一般式(2)で示されるアルカノールアミンである3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール(東京化成社製 特級)0.89g、ギ酸(キシダ化学社製 特級)1.5g、及び銅粒子(三井金属社製、平均粒子径0.76μm)6.0gを順次添加し、乳鉢で完全に分散状態になるまで十分に混練した。次に、この混合物を、減圧条件下、40℃で、テトラヒドロフランと余分な水分を除去することで、ペースト状の導電性インク組成物を調製した。得られた導電性インク組成物(3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール:10.6重量%、ギ酸:17.9重量%、銅粒子:71.5重量%)の粘度は139Pa・sであった(以下、表記を簡潔にするため、ペーストCと称する)。
【0086】
実施例4 3−(ジエチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、ギ酸、銅粒子を含む導電性インク組成物の調製
テトラヒドロフラン(キシダ化学社製 特級)10gに、一般式(2)で示されるアルカノールアミンである3−(ジエチルアミノ)−1,2−プロパンジオール(東京化成社製 特級)1.2g、ギ酸(キシダ化学社製 特級)2.5g、及び銅粒子(Alfa Aesar社製 Copper Powder、平均粒子径1.02μm)5.6gを順次添加し、乳鉢で完全に分散状態になるまで十分に混練した。次に、この混合物を、減圧条件下、40℃で、テトラヒドロフランと余分な水分を除去することで、ペースト状の導電性インク組成物(3−(ジエチルアミノ)−1,2−プロパンジオール:12.9重量%、ギ酸:26.9重量%、銅粒子:60.2重量%)を調製した。得られた導電性インク組成物の粘度は68Pa・sであった(以下、表記を簡潔にするため、ペーストDと称する)。
【0087】
比較例1 エタノールアミン、及び銅粒子を含む導電性インク組成物の調製
テトラヒドロフラン(キシダ化学社製 特級)10gに、エタノールアミン(キシダ化学社製 特級)1.8g、及び銅粒子(三井金属社製、平均粒子径0.9μm)7.1gを順次添加し、乳鉢で完全に分散状態になるまで十分に混練した。次に、この混合物を、減圧条件下、40℃で、テトラヒドロフランと余分な水分を除去することで、ペースト状の導電性インク組成物(エタノールアミン:20.2重量%、銅粒子:79.8重量%)を調製した。得られた導電性インク組成物の粘度は98Pa・sであった(以下、表記を簡潔にするため、ペーストEと称する)。
【0088】
比較例2 ギ酸、及び銅粒子を含む導電性インク組成物の調製
テトラヒドロフラン(キシダ化学社製 特級)10gに、ギ酸(キシダ化学社製 特級)1.8g、及び銅粒子(三井金属社製、平均粒子径0.9μm)7.1gを順次添加し、乳鉢で完全に分散状態になるまで十分に混練した。次に、この混合物を、減圧条件下、40℃で、テトラヒドロフランと余分な水分を除去することで、ペースト状の導電性インク組成物(ギ酸:20.2重量%、銅粒子:79.8重量%)を調製した。得られた導電性インク組成物の粘度は21Pa・sであった(以下、表記を簡潔にするため、ペーストFと称する)。
【0089】
比較例3 エタノールアミン、及びギ酸銅を含む導電性インク組成物の調製
テトラヒドロフラン(キシダ化学社製 特級)10gに、エタノールアミン(キシダ化学社製 特級)1.8g、及びギ酸銅(キシダ化学社製)1.8gを順次添加し、乳鉢で完全に分散状態になるまで十分に混練した。次に、この混合物を、減圧条件下、40℃で、テトラヒドロフランと余分な水分を除去することで、ペースト状の導電性インク組成物(エタノールアミン:50.0重量%、銅粒子:50.0重量%)を調製した。得られた導電性インク組成物の粘度は98Pa・sであった(以下、表記を簡潔にするため、ペーストGと称する)。
【0090】
実施例5〜8、比較例4〜6 導電性評価、及び印刷性評価.
ガラス基材上に、ペーストA〜Gを、スクリーン印刷法(スクリーン仕様、メッシュ数:200、線径:40μm、織厚:115μm、目開き:87μm、空間率:46.9%、ペースト透過体積:53.94mg/cm)を用いてガラス基板に塗布し、幅0.2mm×長さ30mm、膜厚54μmの均一な塗布膜とした。次に、大気中において、これらペーストを塗布したガラス基材を30分間、160℃で加熱処理を行い、導電膜(電気的導通部位)を得た。形成された各導電膜について、表面抵抗値を四探針抵抗測定機(三菱化学社製商品名、「ロレスタGP」)にて測定した。
【0091】
また、形成された各導電膜を切断し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、各導電膜の平均膜厚を評価した。すなわち、各導電膜について、走査型電子顕微鏡(SEM)で観測した視野の中から、ランダムに3箇所選択し、5000倍の倍率で撮影を行い、それぞれの写真において、導電膜の膜厚を計測し、これらの値を撮影倍率で除し、3箇所の膜厚を算術平均して得られた値を各導電膜の平均膜厚とした。
【0092】
導電性の評価は、各導電膜において、表面抵抗値と、走査型電子顕微鏡(SEM)の観察結果から得られた平均膜厚から算出した体積抵抗値の比較により行った。
【0093】
また、印刷性の評価については、目視で配線の状態を確認し、
欠け、かすれ、断線が無い場合:○,
欠け、かすれ、断線がある場合:×,
と評価した。
【0094】
これら評価の結果を表1に併せて示す。
【0095】
【表1】

【0096】
表1から明らかなとおり、実施例5〜8において、アルカノールアミン、還元力を有するカルボン酸、及び銅粒子を含有する導電性インク組成物を用いて形成された導電膜は、大気中での加熱処理によっても良好な導電性を示し、また断線も全く見られなかった。
【0097】
これに対し、比較例4、5において、アルカノールアミン、若しくは還元力を有するカルボン酸含を含まない導電性インク組成物を用いて形成された導電膜は、導電性が低かった。また、比較例6において、還元力を有するカルボン酸を含まない導電性インク組成物を用いて形成された導電膜は全く導電性を示さず、加熱処理後の導電膜に断線が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカノールアミン、還元力を有するカルボン酸、及び銅粒子を含有することを特徴とする導電性インク組成物。
【請求項2】
アルカノールアミンが下記一般式(1)、及び一般式(2)で示されるアルカノールアミンの少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の導電性インク組成物。
【化1】

[R、Rは各々独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、炭素数3〜6の分岐状若しくは環式のアルキル基を表し、R、Rは各々独立して、水素原子、又はメチル基を表し、Xはメチレン基、又はエチレン基を表す。]
【化2】

[R、Rは各々独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、炭素数3〜6の分岐状若しくは環式のアルキル基を表し、Yはメチレン基、又はエチレン基を表す。]
【請求項3】
アルカノールアミンが、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N−メチル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、N,N−ジメチル−1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチルアミン、3−ヒドロキシプロピルアミン、N−メチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、3−(メチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(エチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−(ジエチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、4−アミノ−1,2−ブタンジオール、4−(メチルアミノ)−1,2−ブタンジオール、及び4−(ジメチルアミノ)−1,2−ブタンジオールからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性インク組成物。
【請求項4】
還元力を有するカルボン酸が、ギ酸、ヒドロキシ酢酸、グリオキシル酸、及びシュウ酸からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性インク組成物。
【請求項5】
銅粒子の形態が、樹枝状、球状、鱗片状、又は不定型からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の導電性インク組成物。
【請求項6】
銅粒子の平均粒子径が、0.01〜5μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の導電性インク組成物。
【請求項7】
導電性インク組成物全量に対し、アルカノールアミンの濃度が0.1〜80重量%、還元力を有するカルボン酸の濃度が0.1重量%〜80重量%、及び銅粒子の濃度が0.1〜99重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の導電性インク組成物。
【請求項8】
さらに希釈剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の導電性インク組成物。
【請求項9】
導電性インク組成物の粘度が、1〜1000Pa・sの範囲であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の導電性インク組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の導電性インク組成物を、基材に塗布又は充填し、当該基材を加熱処理することで製造することを特徴とする電気的導通部位。
【請求項11】
加熱処理を大気中で行うことを特徴とする請求項10に記載の電気的導通部位。

【公開番号】特開2012−131895(P2012−131895A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284627(P2010−284627)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】