説明

導電性ガラスストランドおよびこのストランドを含んでなる構造

本発明は、(固形分重量に対して)6から50重量%、好ましくは6から45重量%の皮膜形成剤;5から40重量%の、可塑剤、界面活性剤および/または分散剤から選択される少なくとも1種の化合物;20から75重量%の導電性粒子;0から10重量%のドーパント;0から10重量%の増粘剤;および0から15重量%の添加剤を含む導電性コーティング組成物によりコーティングされたガラスヤーンおよびガラスヤーン構造に関する。本発明は、前記ヤーンおよびヤーン構造をコーティングするために使用される導電性コーティング組成物、それを製造する方法、前記ヤーンまたはヤーン構造を含む複合材料にさらに関する。本発明は、抵抗発熱可能または電磁防護具として使用可能な構造および複合材料を製造するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性コーティングを含んでなるガラスストランドに関する。
【0002】
本発明は、前記ストランドをコーティングするのに使用される導電性コーティング組成物、これらのストランドの製造方法、これらのストランドから形成される強化構造およびこれらのストランドを含む複合材料に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、強化ガラスストランドは、溶融ガラスに満たされているブッシュの多数のオリフィスから重力により流れ出る溶融ガラスの流れを機械的に延伸してフィラメントを形成し、それらをまとめてベースストランド(base strand)とし、次いで集められることにより作製されている。
【0004】
延伸の間、およびストランドにまとめられる前に、ガラスフィラメントは、サイジング部材上を通ることにより、サイジング組成物、一般的に水溶性サイジング組成物がコーティングされる。
【0005】
サイズ剤の役割は2つの点で必須である。
【0006】
ストランドの製造中、それは、プロセスの部材上の高速でのフィラメントの摩擦から生じる摩耗からフィラメントを保護し、潤滑剤として機能する。それは、この摩擦の間生じる帯電荷の除去も可能とする。最後に、フィラメント同士の結合を与えることにより、ストランドに結合力も与える。
【0007】
複合材料を製造する目的に使用する間、サイズ剤はガラスの濡れおよび強化すべきマトリックスによるストランドの含浸を改善し、ガラスと前記マトリックスの間の接着を促進し、それにより向上した機械的性質を持つ複合材料が得られる。
【0008】
種々の形態のガラスストランド(連続ストランド、チョップドストランドまたはミルドストランド、マット、グリッド、織布など)は、様々な性質のマトリックス、例えば、熱可塑性または熱硬化性材料およびセメントを効果的に強化するために通常使用される。
【0009】
一般的にガラスストランドは、電流を通すことのできる粒子を主成分とするコーティングの塗布により導電性にされる。コーティングは、水性媒体中で分散または懸濁状態にある導電性粒子を、サイズ剤が塗布されているストランド上に堆積させ、適切な温度に加熱して水を除去することにより得られる。
【0010】
上述のコーティングの調製に知られている組成物は、適当な場合、熱分解により炭素を与えることのできる炭素含有化合物を組成物中に(米国特許第3269883号)またはサイズ剤中に(米国特許第3247020号)導入することにより、導電性粒子として、グラファイト、カーボンブラックまたは熱の作用下で分解して金属を与えることのできる有機金属化合物を利用している。
【0011】
米国特許第4090984号において、少なくとも1種のポリアクリレートエマルション、1種のカーボンブラック分散液および1種のチキソトロピックゲル化剤を含んでなる半導電性コーティング組成物が使用されている。カーボンブラック分散液は、組成物100部あたり20−40部に相当する。実施例1では、カーボンブラック含量は、組成物中に存在する固形分の11.9重量%に等しい。
【0012】
米国特許第4209425号において、コーティング組成物は、特にグラファイトまたは炭素からできている導電性粒子、少なくとも1種の界面活性剤、1種のチキソトロピックゲル化剤および任意に1種の有機シランカップリング剤および/または1種の消泡剤を含んでなる。組成物中の導電性粒子の含量は、組成物の固形分の5から15重量%である。
【0013】
上記で言及してきた組成物では、最終的なコーティング中の導電性粒子の含量は低いままであり、そのため導電性は低レベルである。
【0014】
近年、高い導電性を示し、そのためジュール効果により加熱可能なガラスストランドを取り込んだ新規材料が出現した。これらの材料には、特に、熱可塑性または熱硬化性ポリマータイプの有機マトリックスまたはセメントマトリックスを持つ複合材料があるが、そのような材料では上述のストランドが強化の役割を果たしている。
【0015】
導電性の向上は、他の性質を犠牲にしてなされるべきではない。複合材料に関しては、 ストランドがとりわけマトリックスを強化するように意図され、したがってストランドはこのために全ての特質を示さなければならないことを、特に記憶しなければならない。
【0016】
特に、導電性コーティングは:
− フィラメント同士の結合を与え、複合材料が関係する場合、許容可能なまたは向上した機械的性質を得るためにストランドも結合し、
− 強化構造が建設現場で使用される場合に起こる機械的攻撃からガラスストランドを保護し、
− 満足できる耐久性を与えるために、化学腐食および環境に関連する攻撃からガラスストランドを保護し、
− 強化すべきポリマーマトリックスに良好な結合を与え、すなわちストランドとマトリックスが互いに適合性であるようにしなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の主題は、ガラスストランドおよび高い導電性を示すうえに上述の強化に関する要件を満たすことのできるコーティングを備えたガラスストランドを取り込んでいる構造である。
【0018】
本発明の他の主題は、上述のガラスストランドおよび構造のコーティングに使用される導電性水性コーティング組成物である。
【0019】
本発明の他の主題は、電流を通すことのできるガラスストランドおよびガラスストランド構造の製造方法である。
【0020】
本発明のさらなる主題は、電流を通すことのできる上述のストランドまたは構造により強化されているマトリックスを含んでなる複合材料である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明によるガラスストランドおよびガラスストランド構造は、(固形分の重量%として)以下を含んでなる導電性コーティング組成物によりコーティングされている:
− 6から50%、好ましくは6から45%の皮膜形成剤、
− 5から40%の、可塑剤、界面活性剤および/または分散剤から選択される少なくとも1種の化合物、
− 20から75%の導電性粒子、
− 0から10%のドープ剤
− 0から10%の増粘剤、
− 0から15%の添加剤。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の文脈において、「ガラスストランド」という用語は、ブッシュの下で多数のフィラメントを加撚せずに集めることにより得られるベースストランドおよび特にロービングの形態にあるこれらのストランドの集合体ならびに加撚操作が施されたストランドおよびこれらのストランドの集合体の両方を意味すると理解される。本発明によるガラスストランドにおいて、フィラメントは、特に導電性コーティングの皮膜形成剤と相溶性のあるサイジング組成物によりコーティングされている。したがって、導電性コーティングはストランド上にすでに存在するサイズ剤上に重なることになり、このコーティングの塗布がコーティング操作に例えられることを意味する。
【0023】
さらに同じ文脈において、「ストランド構造」という用語は、撚り合わせたストランドを集めることにより得られる構造、例えば織布または撚り合わせていないストランド、例えば連続ストランドのマットまたはベールおよびグリッドの形態の不織布を意味すると理解される。
【0024】
本発明による皮膜形成剤はいくつかの役割を果たす。それは、導電性粒子をガラスストランドに接着させ、これらの粒子同士の結合および適当な場合強化すべき材料との結合を提供することにより、コーティングに機械的結合力を与える。それはフィラメント同士の結合に寄与し、最後に、機械的損傷ならびに化学的攻撃および環境からくる攻撃からストランドを保護する。
【0025】
皮膜形成剤は、一般的に、ストランドに柔軟性を与えるよう、好ましくは弾性を有するポリマーである。柔軟性のあるストランドは、巻取りパッケージ(wound package)の形態で集めることができ高度に「適合性のある(conformable)」、すなわち最も多様な形態に実質的に完全に適合することのできる構造の製造に特に有利であることが分かっている。
【0026】
皮膜形成剤は、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリル(ホモポリマーまたはコポリマー)、スチレンポリマー、例えば、スチレン−ブタジエン(SBR)タイプ、ポリ(塩化ビニル)(特にラテックスまたはプラスチゾルの形態)、ポリウレタンおよびこれらのポリマーのブレンドから選択してよい。一般的に、熱可塑性ポリオレフィンは、その絶縁性および高いクリープ能力の結果として避けられる。
【0027】
ポリマーの選択は、強化すべきマトリックスの性質にも依存する。接合材に関しては、ポリアクリル、スチレンポリマーおよびポリ(塩化ビニル)が好ましい。
【0028】
皮膜形成剤の含量が固形分の6重量%未満の場合、コーティングの粘着が不十分である。50%、特に45%を超える場合、導入すべき導電性粒子の量が低すぎて、満足できるレベルの導電性を達成できない。好ましくは、コーティング中の皮膜形成剤の量は、固形分の10から35重量%、さらにより良好には15から35%に相当する。
【0029】
可塑剤は、皮膜形成剤のガラス転移温度を20℃の程度の値まで下げることができるのでコーティングをより柔軟にでき、熱処理後の収縮の制限も可能である。ブタジエンとアクリルモノマーの共重合により得られるポリマーが好ましい。
【0030】
コーティング中の可塑剤の量は、一般的には固形分の0から15重量%、好ましくは0から10%、さらに良好には3から10%に相当する。
【0031】
界面活性剤は、導電性粒子の懸濁および分散を改善し、他の成分と水の間の相溶性を向上させる。コーティング組成物の安定性および粒子の不均一分散の問題を避けるため、カチオンまたは非イオン界面活性剤を使用するのが好ましい。
【0032】
コーティング中の界面活性剤の量は、一般的には固形分の10重量%未満、好ましくは0.5から10%に相当する。
【0033】
分散剤は、導電性粒子の水中での分散を助け、沈殿時のその分離を低減する。
【0034】
コーティング中の分散剤の量は、一般的には固形分の2から20重量%、好ましくは3から10%に相当する。
【0035】
可塑剤、界面活性剤および分散剤は、上述の分野のそれぞれに固有な機能を1つ持つこともあるが、複数有することもある。これらの薬剤の選択および使用する量は、皮膜形成剤および導電性粒子に依存する。
【0036】
これらの薬剤は特に以下のものから選択できる:
☆ 有機化合物、特に、
− 好ましくは1から30のエチレンオキシド基および0から15のプロピレンオキシド基を含む、エトキシ化/プロポキシ化アルキルフェノールなどの、任意にハロゲン化されている脂肪族または芳香族のポリアルコキシ化化合物、好ましくは1から40のエチレンオキシド基および0から20のプロピレンオキシド基を含むエトキシ化/プロポキシ化ビスフェノールまたはエトキシ化/プロポキシ化脂肪族アルコールであってアルキル鎖が好ましくは8から20の炭素原子を含んでなり2から50のエチレンオキシド基および20までのプロピレンオキシド基を含むエトキシ化/プロポキシ化脂肪族アルコール。これらのポリアルコキシ化化合物はブロックコポリマーでもランダムコポリマーでもよい、
− ポリアルコキシ化脂肪酸エステル、例えばアルキル鎖が好ましくは8から20の炭素原子を含んでなり2から50のエチレンオキシド基および20までのプロピレンオキシド基を含むポリエチレングリコール脂肪酸エステル、
− アミノ化合物、例えば任意にアルコキシ化されているアミン、アミンオキシドまたはアルキルアミド、コハク酸およびタウリン酸のナトリウム、カリウムまたはアンモニウム塩、糖誘導体、特にソルビタン誘導体、アルキル硫酸およびアルキルリン酸のナトリウム、カリウムまたはアンモニウム塩ならびにポリエーテルフォスフェート、
☆ 無機化合物、例えばシリカ誘導体、これらの化合物を単独で使用しても上述の有機化合物とのブレンドとして使用してもよい。
【0037】
可塑剤、界面活性剤および分散剤の全量が5%未満である場合、導電性粒子の低い分散(凝集体の存在)および/または相分離が見られる。含量が40%を超す場合、機械的性能の深刻な低下が起こる。
【0038】
導電性粒子はガラスストランドに導電性を与えることができる。本発明によると、それらは炭素系粒子、特にグラファイトおよび/またはカーボンブラック粒子である。
【0039】
グラファイトの源が天然であるか合成であるかは導電性に何も影響を与えない。したがって、グラファイトの種類、単体であるか混合物であるかを識別することなく使用できる。
【0040】
粒子は、例えば、球形、薄片または針状など、どのような形状でもよい。それでも、異なる形状の粒子の混合物の導電性が、同じ量の同一の形状の粒子に対して向上していることが見いだされた。好ましくは、30から60%の導電性粒子が、好ましくは5から20、特に10程度の高いアスペクト比(最小寸法に対する最大寸法の比により定義)を有し、有利には少なくとも15%の粒子が薄片または針状で提供される。
【0041】
形状にならび、粒子の大きさも、導電性の点から重要なパラメータである。一般則として、最大寸法を考慮に入れて、粒子の大きさは250μmを超えず、好ましくは100μmを超えない。
【0042】
有利には、一般的にグラファイトからできている上述の粒子は、粒径が1μm未満、好ましくは平均径が50から100nmである導電性カーボンブラックパウダーを組み合わされる。カーボンブラック粒子は、その小ささの結果として、グラファイト粒子間の接点を作ることが可能であり、導電性をさらに高めることができる。
【0043】
好ましくは、導電性コーティング組成物は(固形分の重量%として)以下を含んでなる:
− 10から100μmの大きさの2.5から45%、さらに良好には15から40%のグラファイト粒子であって、これらの粒子の少なくとも5重量%が、アスペクト比が5以上の薄片または針状で提供されるグラファイト粒子、
− 10μm未満の大きさで、好ましくは4μm程度の平均径を有する、0から45%、好ましくは5から25%のグラファイト粒子、
− 1μm未満の大きさの、2.5から45%、好ましくは15から40%のカーボンブラック粒子。
【0044】
すでに示したとおり、導電性粒子の量は、コーティングの固形分の20から75重量%に相当する。含量が20%未満であると、浸透閾値に達しないため導電性はない。含量が75%を超えると、粒子の1部がガラスストランドに付着しなくなる。
【0045】
ドープ剤は、自由電子を与えることにより、または電子の非局在化を促進することにより、導電性を向上させることができる。
【0046】
ドープ剤は、クロトン酸アンモニウム、ドデシル硫酸リチウムおよびアセチルアセトネート銅などの有機塩あるいはポリリン酸アンモニウム、塩化チタンまたは塩化亜鉛などの無機塩から選択される。好ましくは、クロトン酸アンモニウムが使用される。
【0047】
ドープ剤は、コーティングの固形分の5重量%未満に相当するのが有利である。それでも、導入される量に対して導電率の上昇が低くとどまる事実および耐老化性の問題が起こることがある事実のため、ドープ剤の含量を1%に制限することが好ましい。多くの場合、ドープ剤は加えられない。
【0048】
増粘剤は、粒子の分散を安定化し放置時の粒子の沈殿を防ぐことにより、ストランドへの塗布の条件にコーティング組成物の粘度を調整することができ、したがって、ストランド上への所望量の堆積を可能にする。
【0049】
増粘剤は、カルボキシメチルセルロース、ガム、例えばグアーガムまたはキサンタンガムなど、アルギナート、ポリアクリル、ポリアミドおよびこれらの化合物のブレンドなど、親水性の高い化合物から選択される。
【0050】
増粘剤が使用される場合、その量は化合物の性質(カルボキシメチルセルロースの場合、そのグレード)により変わる。
【0051】
好ましくは、増粘剤の含量は、コーティングの固形分の10重量%未満である。
【0052】
導電性コーティングは、ガラスストランド用の通常の添加剤、特に、ガラスと強化すべき材料の間の結合強化が可能なシランなどの接着促進剤、鉱物油、脂肪酸エステル、例えばパルミチン酸イソプロピルおよびステアリン酸ブチルまたは有機ポリマーなどの潤滑剤および/または消泡剤、あるいは、EDTAの誘導体または没食子酸の誘導体などの錯化剤も含んでよい。
【0053】
好ましくは、添加剤の全量は、コーティングの固形分の10重量%未満である。
【0054】
本発明によるガラスストランドをコーティングできる導電性コーティング組成物は、上述の成分および水を含んでなる。
【0055】
コーティング組成物中の水の含量は、塗布の条件、特に粘度および堆積すべき導電性粒子の含量に依存する。一般則として、190mPa・s以上であって、好ましくは40000mPa・s未満、有利には20000mPa・s未満、さらに良好には10000mPa・s、特には5400mPa・s以下の粘度を得るように水の量が決定される。
【0056】
組成物は、種々の成分を、好ましくは個別に、導電性粒子を分散状態または懸濁状態に保つに十分な攪拌とともに水性媒体に導入することにより、従来調製されている。
【0057】
増粘剤が使用される場合、増粘剤は水溶液の形態で最初に導入され、好ましくは良好な溶解のためおよそ80℃に加熱される。
【0058】
一般的に、コーティング組成物は、調製の実質的に直後に使用されるが、20から25℃の温度でおよそ6ヶ月の貯蔵期間の後でも使用可能である。適当な場合、激しく攪拌すると、組成物の品質に影響を与えることなく、沈殿により分離していた粒子を再分散することが可能である。
【0059】
本発明によると、導電性コーティングによりコーティングされたガラスストランドおよびストランド構造を製造する方法は、以下の工程を含んでなる:
− ガラスストランドまたはガラスストランド構造を上述の導電性コーティング組成物によりコーティングする工程、および
− このようにコーティングされた前記ストランドまたは前記構造を、水を除去し導電性コーティングを強化するに十分な温度で加熱する工程。
【0060】
組成物は、繊維に解した後プロセスの種々の段階のガラスストランドに、好ましくは巻取りパッケージから生じるストランド、例えばロービングに塗布され、あるいは種々の方法:ランダムの方法で(マットまたはベール)または秩序だった方法で(グリッド)堆積した連続ストランドの重ね合わせまたはストランドの撚り合わせとともに織ることによりストランドがまとめられた構造に塗布される。
【0061】
好ましい実施形態によると、ストランドまたはストランド構造のコーティングは、導電性コーティング組成物の浴への浸漬により実施される。浴中で、ストランドまたは構造は、堆積すべきコーティング組成物の量の制御を可能にする装置を通る。
【0062】
ストランドの場合、前記装置は浴中に位置するブッシュでよく、好ましくは、最大の開口部から入るストランドが、その表面全体に均一に組成物がコーティングされるように、円錐の角度が決められているコニカルブッシュ(conical bushing)である。
【0063】
ストランド構造に関しては、前記装置は、浴の出口に位置する、織物産業で使用される種類のパディング機でよい。
【0064】
任意に、ブッシュ中またはパディング機上を通る前に、ストランドまたは構造は、ストランドの「開放(opening)」を目標としフィラメントのより良好な含浸を可能にする装置上を通ってもよい。この装置は、ストランドの処理の場合、ターンロールを形成する1つまたは複数の一連のバーまたはストランド構造の処理には一連のローラーから構成されていてよい。
【0065】
浴の出口で、ストランドまたは構造は熱処理され、水の除去およびコーティングの強化が実施される。一般則として、処理温度は、およそ105℃を超えおよそ220℃未満であり、好ましくは160℃未満である。水の迅速な除去によりもたらされるコーティングの膨れを防ぐため、ストランドまたは構造を、必要があれば処理の継続時間を長くしながら、示される最低温度に近い温度で加熱し、あるいは全温度範囲にわたり、段階的に、または温度勾配を付けて連続的に、処理を実施することが好ましい。好ましくは、最高温度は、およそ150℃未満のままであり、より良好には130℃未満である。
【0066】
このためにはどのような適切な加熱装置を利用してもよく、例えば赤外炉または接触によりストランドまたは構造を加熱できる装置、例えば、1つまたは複数の回転加熱ドラムから構成される装置がある。
【0067】
処理の温度および継続時間は、強化されたコーティングが得られるように、使用する装置の種類により選択される。表示としては、炉中の処理は、105℃程度の温度で、一般的に3時間を超えない時間、十分に実施できる。
【0068】
熱処理の後、ガラスストランドは、例えば巻取りパッケージの形態で集められ、あるいは、並進運動する受容担体上に堆積してマットを形成する。
【0069】
本発明によるガラスストランドおよびストランド構造は、強化機能を与えるのに特有な品質を有しながら導電性も有する点に特徴がある。ストランドおよび構造は、導電性コーティングの量が、その全重量の最大200%、より一般的には20から60%程度に相当し、この比較的高い導電性粒子の含量が全体的に有利なレベルの性能を与えている点で注目に値する。このレベルの評価は、体積抵抗率(体積導電率の逆数に等しい)の値により与えられるが、導電性ストランドの分野で標準的な参考用語である。本発明によるストランドの体積抵抗率は1000Ω・cm未満、好ましくは100Ω・cm、有利には10Ω・cm、さらに良好には1Ω・cm未満である。10から100Ω・cmの間の体積抵抗率を示すストランドおよび構造が、ジュール効果加熱のために使用可能である。前記抵抗率が1Ω・cm未満であるものは、電磁遮蔽用に特に好適である。
【0070】
導電性ストランドおよび本発明による構造の構成要素であるストランドは、どのような種類のガラスから製造してもよいが、例えば、E−、C−、R−およびAR−ガラスがある。E−ガラスが好ましい。
【0071】
ストランドを構成するガラスフィラメントの直径は、例えば5から30μmのように、大幅に変動してよい。同様に、ストランドの単位長さあたりの重量にも大きな変動が起こることがあり、目的とする用途により68から2400テックスの範囲になりうる。
【0072】
本発明による導電性ガラスストランドおよび導電性構造は、種々の材料の強化に使用でき、特にジュール効果により加熱できる導電性複合材料を形成するために使用できる。上述のとおり、そのような複合材料は、建築物の加熱あるいは道路、橋または着陸滑走路の除氷に使用できる。
【0073】
前記構造は、それ自体、表面に塗布されたまたは壁表面または地面に取り込まれた電磁遮蔽要素または発熱体として作用できる。
【0074】
遮蔽要素として、構造の目的は、電子機器の満足できる操作に有害な電磁波を弱め、あるいは特定の公共の場または私的な場(病院、映画館、刑務所など)での携帯電話の使用を制限し、実際には防止することである。
【0075】
グリッドの形態の構造は、例えば、橋などの構造に特に取り込まれ、腐食のおそれを増す金属成分の存在に関連するバッテリー効果を制限できる。
【実施例】
【0076】
以下の実施例は、本発明を限定することなく説明することが可能である。
【0077】
これらの実施例において、以下の方法を使用する:
☆ 強熱減量は以下のとおり測定する。所定量(およそ1グラム)のカットストランドを、磁製るつぼに導入する(重量、W1)。るつぼを、炉の中に入れ105℃で1時間加熱し、吸着水を蒸発させる。炉から出し冷却の後、るつぼを秤量し(重量、W2)、炉の中に入れ700℃で5時間加熱する。無水状態で冷却後、炉から出すと同時にるつぼを秤量する(重量、W3)。
【0078】
強熱減量は、W2−W3/W2−W1に等しい。
【0079】
☆ ストランドの引張強度は、以下の条件で測定する。
【0080】
長さ240mmの2000テックスのベースストランドのロービングの端を、70mmの距離で、バルコラン(登録商標)で裏打ちされている平らな締め付け具の間におく。ロービングを、100mm/分の速度で切れるまで引く。強度をMPaで表す。
【0081】
☆ 体積抵抗率は、以下の関係から計算により得られる。
ρ=R×S/l
上式においてρはΩ・cmで表す抵抗率であり、
RはΩで表す抵抗であり、
Sはcm2で表すストランドの断面であり、
lはcmで表す繊維の長さである。
【0082】
抵抗Rは、2つの電極の距離を20cmにしてオーム計を利用して測定する。
【0083】
☆ dBで表す電磁遮蔽は、100MHzと2.7GHzの間で、MIL規格MIL−STD−285(1956年6月27日)の条件で測定する。
〔実施例1〕
【0084】
a)コーティング組成物の調製
(固形分の重量%として)以下を含むコーティング組成物を調製する:
− 皮膜形成剤:ポリビニルピロリドン(1) 20
− 増粘剤:カルボキシメチルセルロール(2)
− 可塑剤:
● ビスフェノールAビス(ポリエチレングリコール)
エーテル(3) 16.5
● オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)
エタノール(4) 8.5
− カチオン分散剤(5)
− 導電性粒子
● 天然グラファイトパウダー(6) 30
(粒子の平均径:3μm)
● 薄片の形態に膨張した合成グラファイト(7) 10
(粒子の大きさ:10−50μm)
● 天然グラファイトパウダー(8) 10
(粒子の平均径:5μm)
激しく攪拌されている80℃の水の入った容器に成分を加えて組成物を調製するが、増粘剤を最初に入れ、導電性粒子を最後に入れる。
【0085】
組成物の粘度は20℃で3800mPa・sである。
【0086】
b)ガラスストランドの製造
ロービングから解かれた直径が15.8μm(長さあたりの重量:2000テックス)の4000フィラメントで構成されるガラスストランドを、a)で得られた組成物の浴に浸漬する。ストランドは、2.5m/分の速度でストランドガイドにより浴に入り、次いでコニカルブッシュ(小さい直径:2.2mm)中を通過し、浴の出口で、軸の周りに回転するフレームに巻かれる。このフレームを105℃に加熱した炉に3時間入れる。
【0087】
前記ストランドは以下の特性を示す。
【0088】
☆ 強熱減量:21.0%
☆ 抵抗率:7.8Ω・cm(標準偏差:2.3)
☆ 引張強度:863MPa(標準偏差:23)
〔実施例2〕
【0089】
実施例1の条件で操作を実施するが、導電性コーティング組成物は(固形分の重量%として)以下を含んでなる:
− 皮膜形成剤:ポリビニルピロリドン(1) 20
− 増粘剤:カルボキシメチルセルロール(2)
− 可塑剤:
● ビスフェノールAビス(ポリエチレングリコール)
エーテル(3) 16
● オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)
エタノール(4)
− カチオン分散剤(5)
− 導電性粒子
● 天然グラファイトパウダー(6)(粒子の平均径:3μm) 25
● 薄片の形態に膨張した合成グラファイト(7) 15
(粒子の大きさ:10−50μm)
● 合成グラファイトパウダー(9)(粒子の平均径:10μm) 10
組成物の粘度は、20℃で5400mPa・sである。
【0090】
ストランドは、20.0%の強熱減量を示す。
【0091】
促進老化試験の前後でのストランドの抵抗率および引張強度測定値は以下のとおりである(標準偏差は括弧内に示す):
時間(日) t=0 t=1 t=14
抵抗率(Ω・cm) 1.55(0.4) 1.7(0.2) 1.8(0.2)
引張強度(MPa) 1130(62) 1044(50) 950(78)
14日間エージングした後、抵抗率は実質的に変化なく、引張強度は初期値の84%に等しい。
〔実施例3および4〕
【0092】
これらの実施例は、高アスペクト比の導電性粒子の量が抵抗率に及ぼす影響を表している。
【0093】
以下の組成物(固形分の重量に対する%)を使用するという変更をして、実施例1の条件で操作を実施する:
− 皮膜形成剤:ポリビニルピロリドン(1) 20.0
− 増粘剤:カルボキシメチルセルロール(2) 2.00
− 可塑剤:
● ビスフェノールAビス(ポリエチレングリコール)
エーテル(3) 10.25
● オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)
エタノール(4) 10.25
− カチオン分散剤(5) 7.50
− 導電性粒子
● 薄片形態のグラファイトパウダー(10) 実施例3 実施例4
(粒子の大きさ:10−50μm) 2.5 15.0
● 合成グラファイトパウダー(9) 47.5 35.0
(粒子の平均径:10μm)
組成物の粘度は、20℃でそれぞれ4900mPa・sおよび5400mPa・sである。
【0094】
得られたストランドは、以下の特性を示す(標準偏差は括弧内に示す)
実施例3 実施例4
強熱減量(%) 20.4 19.8
抵抗率(Ω・cm) 2.9(0.8) 2.3(0.3)
引張強度(MPa) 1320(115) 1348(58)
粒子の全量が同等な場合、薄片の形態にある粒子の相対比率の上昇が、抵抗率を低下させ導電性を上昇させることが見いだされる。
〔実施例5〕
【0095】
ストランドが、直径13.6μm(長さあたりの重量:300テックス)である800フィラメントから構成される点、ブッシュの小さな直径が1.2mmに等しい点および導電性コーティング組成物が(固形分の重量%として)以下を含んでなる点を変更して、実施例1の条件で操作を実施する:
− 皮膜形成剤:ポリビニルピロリドン(1) 20.0
− 増粘剤:カルボキシメチルセルロール(2) 2.0
− 可塑剤:
● ビスフェノールAビス(ポリエチレングリコール)
エーテル(3) 17.0
● オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)
エタノール(4) 6.0
− 非イオン分散剤(11) 5.0
− 導電性粒子
● 薄片の形態に膨張した合成グラファイト(7) 25.0
(粒子の大きさ:10−50μm)
● カーボンブラックパウダー(12) 25.0
(粒子の平均径:50nm)
組成物の粘度は、20℃で4800mPa・sである。
【0096】
ストランドは以下の特性を示す(標準偏差を括弧内に示す):
☆ 強熱減量:14.4%
☆ 抵抗率:0.3Ω・cm(0.04);20℃で15週間貯蔵後も同じ
☆ 引張強度:1361(93)MPa
〔実施例6〕
【0097】
実施例1の条件で操作を実施するが、導電性コーティング組成物は(固形分の重量%として)以下を含んでなる:
− 皮膜形成剤:
● アクリルポリマー(13) 33.8
● アクリルコポリマー(14) 10.0
− 界面活性剤:
● 2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン
−4,7−ジオール(15) 0.2
● 10EOC12−C14アルコール(16) 1.0
− 非イオン分散剤(11) 5.0
− 導電性粒子
● 薄片の形態に膨張した合成グラファイト(7) 20.0
(粒子の大きさ:10−50μm)
● 合成グラファイトパウダー(17) 10.0
(粒子の大きさ:1−10μm)
● カーボンブラックパウダー(12) 20.0
(粒子の平均径:50nm)
組成物の粘度は、20℃で590MPa・sである。
【0098】
ストランドは、42.1%の強熱減量を示す。
【0099】
促進老化試験前後のストランドの抵抗率および引張強度を以下に示す(標準偏差を括弧内に示す):
時間(日) t=0 t=1 t=3
抵抗率 0.18(0.01) 0.18(0.03) 0.18(0.01)
(Ω・cm)
引張強度 1876(115) 1695(78) 1565(43)
(MPa)
時間(日) t=7 t=14
抵抗率 0.17(0.02) 0.15(0.01)
(Ω・cm)
引張強度 1503(158) 1697(38)
(MPa)
促進老化条件下のストランドの耐性は優れている。高度な性能、特に引張強度が、時間が経過しても維持されている。
〔実施例7〕
【0100】
実施例1の条件で操作を実施するが、導電性コーティング組成物は(固形分の重量%として)以下を含んでなる:
− 皮膜形成剤:
● アクリルポリマー(13) 38.9
● アクリルコポリマー(14) 11.5
− 界面活性剤:
● 2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン
−4,7−ジオール(15) 0.2
● 10EOC12−C14アルコール(16) 1.0
− 非イオン分散剤(11) 4.4
− 導電性粒子
● 薄片の形態に膨張した合成グラファイト(7) 22.0
(粒子の大きさ:10−50μm)
● カーボンブラックパウダー(12) 22.0
(粒子の平均径:50nm)
組成物の粘度は、20℃で1820mPa・sである。
【0101】
ストランドは以下の特性を示す:
☆ 強熱減量:39.8%
☆ 抵抗率
t=0日:0.17Ω・cm(標準偏差:0.01)
t=14日:0.16Ω・cm(標準偏差:0.03)
☆ 引張強度
t=0日:1864MPa(標準偏差:50)
t=14日:1648MPa(標準偏差:72)
〔実施例8〕
【0102】
実施例1の条件で操作を実施するが、導電性コーティング組成物は(固形分の重量%として)以下を含んでなる:
− 皮膜形成剤:
● アクリルポリマー(13) 23.8
● アクリルコポリマー(14) 20.0
− 可塑剤/界面活性剤:
● 非イオン界面活性剤(15) 0.2
● エトキシ化脂肪族アルコール(16) 1.0
− カチオン分散剤(5) 5.0
− 導電性粒子
● 薄片の形態に膨張した合成グラファイト(10) 20.0
(粒子の大きさ:10−50μm)
● 合成グラファイトパウダー(17) 10.0
(粒子の大きさ:1−10μm)
● カーボンブラックパウダー(12) 20.0
(粒子の大きさ:50nm)
組成物の粘度は、20℃で190mPa・sである。
【0103】
ストランドは以下の特性を示す。
【0104】
☆ 強熱減量:39.51%
☆ 抵抗率:0.17Ω・cm
☆ 引張強度:1673.3MPa
〔実施例9〕
【0105】
この実施例は、コーティングの量がストランドの導電性および機械的性質に与える影響を表す。
【0106】
a)コーティング組成物の調製
(固形分の重量%として)以下を含んでなる組成物を調製する:
− 皮膜形成剤
● スチレンブタジエンコポリマー(18) 46.5
− 非イオン分散剤(11) 6.0
− 消泡剤(19) 1.0
− 導電性粒子
● 薄片の形態に膨張した合成グラファイト(7) 18.6
(粒子の大きさ:10−50μm)
● 合成グラファイトパウダー(17) 9.3
(粒子の大きさ:1−10μm)
● カーボンブラックパウダー(12) 18.6
(粒子の大きさ:50nm)
激しく攪拌しながら、室温(およそ25℃)の水の入った容器に成分を加えることにより調製するが、導電性粒子を最後に導入する。
【0107】
組成物は、20℃で800mPa・sの粘度を示す。
【0108】
b)ガラスストランドの製造
ガラスストランドが、直径13μm(単位長さあたりの重量:275テックス)の800フィラメントから構成されている点を変更して、実施例1の条件で操作を実施する。
【0109】
導電性コーティング組成物の量を変えて、ガラスストランド上に堆積させる(試験1−3)。
【0110】
試験1 試験2 試験3
強熱減量(%) 21.9 30.6 45.7
体積抵抗率(Ω・cm) 0.23 0.16 0.14
引張強度(MPa) 2035 2045 2059
ストランド上に堆積するコーティング組成物の量の関数として体積抵抗率が低下し、導電性が上昇することが見いだされる。同時に、引張強度のレベルは実質的に変化しない(上昇が見られるが有意でない)。
〔実施例10〕
【0111】
導電性粒子(P)と皮膜形成剤(F)の合計に対する導電性粒子(P)の重量の比を変えて、実施例9の条件で操作を実施する。強熱減量は21から23%である。
試験 P/P+F(%) 体積抵抗率(Ω・cm)
1 25 4.11
2 30 1.14
3 35 0.75
4 40 0.42
5 50 0.23
6 60 0.24
これらの値に関して、浸透閾値(ストランドが満足できる導電性を示し始めるP/P+Fの比に相当)が30と35%の間であると推測される。
〔実施例11〕
【0112】
a)コーティング組成物の調製
実施例9の条件で操作を実施するが、コーティング組成物は(固形分の重量%として)以下を含んでなる:
− 皮膜形成剤:
● スチレンブタジエンコポリマー(20) 46.5
− 非イオン分散剤(11) 6.0
− 消泡剤(19) 1.0
− 導電性粒子
● 薄片の形態に膨張した合成グラファイト(7) 18.6
(粒子の大きさ:10−50μm)
● 合成グラファイトパウダー(17) 9.3
(粒子の大きさ:1−10μm)
● カーボンブラックパウダー(12) 18.6
(粒子の大きさ:50nm)
組成物は、20℃で230mPa・sの粘度を示す。
【0113】
b)ガラス織布の製造
35mmの正方形メッシュおよび0.4mmの厚さを示すガラス織布(単位面積あたりの重量:165g/m2)を、a)で得られた組成物を満たした幅300mmの大桶に浸す。大桶の出口で、2つのカレンダーロールの間(圧力:0.6バール;回転速度:0.5m/分)に織布を通して絞り、次いでそれぞれ90℃、130℃、150℃および90℃に加熱されている4つの区画室を含んでなる空気炉に通す。各区画室での滞留時間は2分である。
【0114】
30%(試験1)、60%(試験2)および115%(試験3)のコーティングのレベル(コーティングの重量/未コーティングの織布の重量)で種々の試験を実施した。高いレベル(試験2および3)を得るために、含浸浴へ数回通過させた。
【0115】
周波数の関数としての電磁遮蔽の曲線を図1に示す。
【0116】
本発明による織布は、調べた全周波数範囲にわたり、コーティングのレベルによって、5dBより高く25dB未満の遮蔽値を示す。
【0117】
10dBの遮蔽値が電磁場強度の3分の1の減衰に相当し、20dBの値が10分の1の減衰に相当し、30dBの値が30分の1の減衰に相当することが明示される。
【0118】
試験1から3は、電磁遮蔽に好適である利用可能な織布として、同程度の大きさの値を示す。特に、試験2の性能のレベルは、銅ワイヤーおよびガラスストランドに基づき、それらを一つに合わせ導電性コーティングを施し、横糸と縦糸に配置した織布で得られるレベルと同等である。しかし、この織布は完全に満足できるものでなく、その理由は、一方で交差点での銅ワイヤーの接触が常に確実ではなく、他方で銅が酸化して絶縁表面層を形成する傾向があり導電性の低下を起こすからである。
〔実施例12〕
【0119】
(固形分の重量%として)コーティングが以下を含んでなる点を変えて、実施例11の条件で操作を実施する:
− 皮膜形成剤:
● スチレンブタジエンコポリマー(20) 37.0
− 非イオン性分散剤(11) 7.0
− 消泡剤(19) 1.0
− 導電性粒子
● 膨張した合成グラファイト(7) 22.0
● 合成グラファイトパウダー(17) 11.0
● カーボンブラックパウダー(12) 22.0
組成物は、20℃で545mPa・sの粘度を示す。
【0120】
織布を、32%(試験1)、64%(試験2)および160%(試験3)のコーティングレベルで含浸した。
【0121】
周波数の関数としての電磁遮蔽の曲線を図2に示す。
【0122】
試験1から3が、実施例11のものと比べ向上したレベルの性能を示すことが観察される。
(1)「Luviskol(登録商標)K 90」の表示でBASFが販売
(2)「Blanose(登録商標)7 MC」の表示でAqualonが販売
(3)「Simulsol(登録商標)BPPE」の表示でSEPPICが販売
(4)「Antarox(登録商標)CA 630」の表示でRhodia HPCIIが販売
(5)「Solsperse(登録商標)20000」の表示でAveciaが販売
(6)「GK UF2 96/97」の表示でKropfmulhが販売
(7)「Grafpower(登録商標)TG 407」の表示でUcarが販売
(8)「GK UF4 96/97」の表示でKropfmulhが販売
(9)「SPF 16」の表示でUcarが販売
(10)「Grafpower(登録商標)TG 40」の表示でUcarが販売
(11)「Solsperse(登録商標)27000」の表示でAveciaが販売
(12)「Vulcan(登録商標)XC 72R」の表示でCabot S.A.が販売
(13)「Latex 651」の表示でUcarが販売
(14)「Carboset(登録商標)514 W」の表示でNoveonが販売
(15)「Surfynol(登録商標)104−PA」の表示でAir Productsが販売
(16)「Simulsol(登録商標)P10」の表示でSEPPICが販売
(17)「SPF 17」の表示でUcarが販売
(18)「Styronal(登録商標)ND430」の表示でBASFが販売
(19)「Tego Foamex(登録商標)830」の表示でDegussaが販売
(20)「Styronal(登録商標)D517」の表示でBASFが販売
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】周波数の関数としての電磁遮蔽の曲線。
【図2】周波数の関数としての電磁遮蔽の曲線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含んでなる(固形分の重量%として)導電性コーティング組成物をコーティングしてあるガラスストランドまたはガラスストランド構造:
6から50%、好ましくは6から45%の皮膜形成剤、
5から40%の、可塑剤、界面活性剤および/または分散剤から選択される少なくとも1種の化合物、
20から75%の導電性粒子、
0から10%のドープ剤
0から10%の増粘剤、
0から15%の添加剤。
【請求項2】
前記皮膜形成剤が、好ましくは弾性を有するポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載のストランドまたは構造。
【請求項3】
前記皮膜形成剤が、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリル、スチレンポリマー、ポリ(塩化ビニル)、ポリウレタンおよびこれらのポリマーのブレンドから選択されることを特徴とする、請求項2に記載のストランドまたは構造。
【請求項4】
前記可塑剤、界面活性剤および/または分散剤が、任意にハロゲン化された、脂肪族または芳香族のポリアルコキシ化化合物、ポリアルコキシ化脂肪酸エステル、アミノ化合物、シリカ誘導体およびこれらの化合物のブレンドから選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のストランドまたは構造。
【請求項5】
前記導電性粒子が炭素を主成分とし、特にグラファイトおよび/またはカーボンブラック粒子であることを特徴とする、請求項1から4に記載のストランドまたは構造。
【請求項6】
前記粒子の大きさが250μm以下、好ましくは100μm以下であることを特徴とする、請求項5に記載のストランドまたは構造。
【請求項7】
前記粒子の30から60%が、5から20の間のアスペクト比を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載のストランドまたは構造。
【請求項8】
前記粒子の少なくとも15%が、薄片または針状形状であることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のストランドまたは構造。
【請求項9】
以下を含んでなることを特徴とする、ガラスストランドまたはガラスストランド構造のための導電性水性コーティング組成物:
6から50%、好ましくは6から45%の皮膜形成剤、
5から40%の、可塑剤、界面活性剤および/または分散剤から選択される少なくとも1種の化合物、
20から75%の導電性粒子、
0から10%のドープ剤
0から10%の増粘剤、
0から15%の添加剤。
【請求項10】
190mPa・s以上、好ましくは40000mPa・s未満の粘度、有利には20000mPa・s未満、より良好には10000mPa・s未満、特には5400mPa・s以下の粘度を示すことを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
下記を含んでなることを特徴とする、請求項10に記載の組成物:
10から100μmの大きさの2.5から45%、さらに良好には15から40%のグラファイト粒子であって、これらの粒子の少なくとも5重量%が、アスペクト比が5以上の薄片または針状で提供されるグラファイト粒子、
10μm未満の大きさの、好ましくは4μm程度の平均径を有する、0から45%、好ましくは5から25%のグラファイト粒子、
1μm未満の大きさの、2.5から45%、好ましくは15から40%のカーボンブラック粒子。
【請求項12】
下記の工程を含んでなる、請求項1から8のいずれかに記載のガラスストランドまたはガラスストランド構造を調製する方法:
ガラスストランドまたはガラスストランド構造を、請求項1から11のいずれかに記載の導電性コーティング組成物によりコーティングする工程および
前記のコーティングされたストランドまたは前記のコーティングされた構造を、水を除去し導電性コーティングを強化するに十分な温度で加熱する工程。
【請求項13】
前記コーティングが、導電性コーティング組成物の浴中への浸漬により実施されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記加熱が、およそ105℃を超えおよそ220℃未満の、好ましくはおよそ160℃未満の温度で実施されることを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
撚り合わされたストランドの集合体、例えば織布の形態あるいは撚り合わされていないストランド、例えば連続ストランドのマットまたはベールまたはグリッドなどの不織布の形態で提供されることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載のガラスストランド構造。
【請求項16】
100MHzと2.7GHzの間で測定して、5から50dB、好ましくは5から35dBの電磁遮蔽値を示すことを特徴とする、請求項15に記載の構造。
【請求項17】
請求項1から8、15または16のいずれかによるガラスストランドまたはガラスストランド構造により強化されたマトリックスを含んでなる複合材料。
【請求項18】
前記マトリックスが熱可塑性または熱硬化性ポリマーあるいは接合材であることを特徴とする、請求項17に記載の材料。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−522073(P2007−522073A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552673(P2006−552673)
【出願日】平成17年2月11日(2005.2.11)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050087
【国際公開番号】WO2005/077854
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(501399290)サン−ゴバン ベトロテックス フランス ソシエテ アノニム (33)
【Fターム(参考)】