説明

導電性ゴムシートならびにそれを用いたコネクターおよび回路基板の電気的検査用冶具、ならびに導電性ゴムシートの製造方法

【課題】表面実装LSIや電子回路基板と電気的に接続する弾性を有する導電性ゴムシートならびにそれを用いたコネクターおよび回路基板の電気的検査用冶具を提供する。
【解決手段】電気絶縁性材料からなる絶縁部4と、電気絶縁性材料に導電性粒子を配合してなる複数個の導電部3とから形成された異方導電性ゴムシート1,2を、導電部同士が電気的に導通状態となるように、重なる位置に配置された導電性ゴムシートであって、導電性ゴムシートの一方の表面側の異方導電性ゴムシートの少なくとも1つの導電部の表面の面積が、導電性ゴムシートの他方の表面側の異方導電性ゴムシートの対応する位置に配置された導電部の表面の面積よりも大きくなるように形成され、導電性ゴムシートの間に中間層として回路基板等を有し、2層以上の積層状態の導電性シートと中間層として回路基板等が一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装LSIや電子回路基板の検査時に検査基板上に検査物の電極に対面さ
せる位置に置き、表面実装LSIや電子回路基板と電気的に接続する事を目的とした弾性を
有する導電性ゴムシートならびにそれを用いたコネクターおよび回路基板の電気的検査用冶具、ならびに導電性ゴムシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装LSIや電子回路基板の検査時に電気絶縁材料内に厚み方向に導通部が貫通して
いる導電性ゴムシートを検査基板上に置き、該導電性ゴムシートの導電部を検査物である表面実装LSIや電子回路基板の電極に対面させ、検査基板と検査物との間で挟み、圧縮し
た状態を保持しながら表面実装LSIや電子回路基板と電気的に接続して検査する方法が知
られている。
【0003】
近年、被検査物である表面実装LSIや電子回路基板の微細化が進むことで電極間寸法の縮小が求められ、又、多ピン化やパッケージ化による高密度化が進むことで電極寸法の小径化が求められるようになった。それに伴って、導電性ゴムシート及び治具側の検査基板もこれら微細化や高密度化に対応して導通部の微細化、小径化が求められるようになってきた。
【0004】
具体的な例を挙げると治具側の検査基板では、微細化で電極間寸法が縮小され、さらにパッケージ化、高密度化によって電極間に配線される配線の本数の増加が生じるので電極寸法を縮小する結果となった。このことから、治具側の検査基板から導通接点を取る導電性ゴムシートにも対応に迫られ、それによって、導電性ゴムシートも電極間寸法及び電極寸法を縮小する傾向にあった。
【0005】
しかし、電極寸法を縮小した電極径の細い導電ゴムシートでは、被検査物である表面実装LSIや電子回路基板との導通をとることにおいて、検査時における従来の検査治具構造では位置決めが困難となり十分な導通を確保できない状況も生じることが分かった。
【0006】
これは、該従来の検査治具構造では被検査物である表面実装LSIのパッケージ型ICでは外形による位置決めが主流であり、電子回路基板では位置決めガイドピンによる位置決めが一般的である。
【0007】
それに対して導電性ゴムシートの導電部との位置合わせの許容精度と比較すると、表面実装LSIは、当該外形寸法等のばらつきが大きく、また電子回路基板においてもガイドピンの加工精度が導通を十分に確保できないことに起因しているためである。
【0008】
このように被検査物である表面実装LSIや電子回路基板の微細化、高密度化に対応して導電ゴムシートも電極間寸法及び電極寸法を縮小する傾向にあることで導通を確保しづらい方向へ進んでいる。その反面、どちらの被検査物の位置決め方法とも従来の製法と対比し位置ずれを減少させる技術が大きく変化していないため、パッケージでの外形精度や電子回路基板での位置決めガイドピン穴の加工精度が位置決め精度に対する依存度がより大きくなっている。
【0009】
そこで、BGA(ball grid array)型パッケージにおいては外形合わせから電極であるボールによる位置決めが注目され、電子回路基板ではピンによる外形穴合わせから光学系
を用いた位置合わせへと移行し確実に位置決めを行える機構が導入されつつある。しかし、どちらの方法も機構、装置等が複雑で高価なものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
被検査物である表面実装LSIや電子回路基板の検査時に、導電性ゴムシートとの間で確実に位置決めを行え、導通が確保できる機構としては、BGA(ballgrid array)型パッケージにおいては電極であるボールによる位置決めが考えられ、電子回路基板では光学系を用いた位置合わせが挙げられる。
【0011】
しかし、どちらの方法も機構、装置等が複雑で高価なものである。そこで、これら被検査物の電極と接続する導電性ゴムシートを改良することで、被検査物である表面実装LSIや電子回路基板の位置決めに関する加工精度を従来の精度のままで、且つ、安価で容易に導通が確保できる導電性ゴムシートを開発することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、これら従来の問題点を解決する手段として、例えば硬度の高い電気絶縁材料を用いても、電気絶縁材料内に厚み方向に導電部が貫通している特定な導電性ゴムシートとすることにより、導電部の間隔が高密度でありながら、充分な弾性を有し、繰り返し圧縮等による耐久性が優れた導電性ゴムシートが得られることを見いだし本発明に達した。
【0013】
すなわち、本発明の導電性ゴムシートは、
基材となる電気絶縁性材料からなる絶縁部と、電気絶縁性材料に導電性粒子を配合してなる複数個の導電部とから形成された異方導電性ゴムシートを、2層以上に積層状態で、それらの導電部同士が相互に電気的に導通状態となるように、重なる位置に配置された導電性ゴムシートであって、
前記導電性ゴムシートの一方の表面側の異方導電性ゴムシートの少なくとも1つの導電部の表面の面積が、
前記導電性ゴムシートの他方の表面側の異方導電性ゴムシートの対応する位置に配置された導電部の表面の面積よりも大きくなるように形成され、
前記導電性ゴムシートの間に中間層として回路基板等を有し、
前記2層以上の積層状態の導電性シートと中間層として回路基板等が一体化されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の導電性ゴムシートからなるコネクターは、
基材となる電気絶縁性材料からなる絶縁部と、電気絶縁性材料に導電性粒子を配合してなる複数個の導電部とから形成された異方導電性ゴムシートを、2層以上に積層状態で、それらの導電部同士が相互に電気的に導通状態となるように、重なる位置に配置された導電性ゴムシートであって、
前記導電性ゴムシートの一方の表面側の異方導電性ゴムシートの少なくとも1つの導電部の表面の面積が、
前記導電性ゴムシートの他方の表面側の異方導電性ゴムシートの対応する位置に配置された導電部の表面の面積よりも大きくなるように形成され、
前記導電性ゴムシートの間に中間層として回路基板等を有し、
前記2層以上の積層状態の導電性シートと中間層として回路基板等が一体化されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の回路基板の電気的検査用冶具は、
基材となる電気絶縁性材料からなる絶縁部と、電気絶縁性材料に導電性粒子を配合してなる複数個の導電部とから形成された異方導電性ゴムシートを、2層以上に積層状態で、
それらの導電部同士が相互に電気的に導通状態となるように、重なる位置に配置された導電性ゴムシートであって、
前記導電性ゴムシートの一方の表面側の異方導電性ゴムシートの少なくとも1つの導電部の表面の面積が、
前記導電性ゴムシートの他方の表面側の異方導電性ゴムシートの対応する位置に配置された導電部の表面の面積よりも大きくなるように形成され、
前記導電性ゴムシートの間に中間層として回路基板等を有し、
前記2層以上の積層状態の導電性シートと中間層として回路基板等が一体化されている導電性ゴムシートを使用したことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の導電性ゴムシートの製造方法は、
絶縁性のゴム状重合体に磁性を有する導電性粒子を混入した組成物を製造する工程と、
前記組成物をシート状にして、磁石の間に挟み、その厚さ方向に磁場をかけて導電性粒子を配向させる工程と、
前記導電粒子を配向させた状態で硬化させて、導電部となる粒子を保持固定して、異方導電性ゴムシートを得る工程と、
前記工程で得られた異方導電性ゴムシートと、中間層として回路基板等を、複数枚用意して、これらの異方導電性ゴムシートと、中間層として回路基板等を貼り合せることによって、異方導電性ゴムシートを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の導電性ゴムシートは、表面実装LSIや電子回路基板との電気的接続の際に、低い
圧縮荷重で電気的に安定した接続が得られると共に、繰り返し圧縮においても圧縮接続に対する耐久性が優れている。
【0018】
また、複数存在する導電部どうしの間隔が狭く高密度に配置された導電性ゴムシートが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の導電性ゴムシートは、基材となる電気絶縁性材料からなる絶縁部と、電気絶縁性材料に導電性粒子を配合してなる複数個の導電部とから形成された異方導電性ゴムシートを、2層以上に積層状態で、それらの導電部同士が相互に電気的に導通状態となるように、重なる位置に配置された導電性ゴムシートであって、導電性ゴムシートの一方の表面側の異方導電性ゴムシートの少なくとも1つの導電部の表面の面積が、導電性ゴムシートの他方の表面側の異方導電性ゴムシートの対応する位置に配置された導電部の表面の面積よりも大きくなるように形成され、導電性ゴムシートの間に中間層として回路基板等を有し、2層以上の積層状態の導電性シートと中間層として回路基板等が一体化されていることを特徴とする導電性ゴムシートである。
【0020】
すなわち、電気絶縁材料内に導電部を複数個有する導電性ゴムシートであって、その少なくとも1つの導電部において、異方導電性ゴムシートの一方の表面の導電部の面積と、他方の表面の導電部の面積との比が、1.05以上であることを特徴とする導電性ゴムシートである。上記面積の比は、好ましくは1.1以上であり、さらに好ましくは1.15〜10、特に好ましくは1.2〜3である。
【0021】
このような導電部は、導電性ゴムシート中に少なくとも1つであるが、複数個が集団であることが好ましい。かかる場合、導電性ゴムシートの全面もしくは部分的範囲内に、散在していてもよいし連続して配置されていてもよい。
【0022】
本発明の導電性ゴムシートは、被検査物の電気的導通性や電気特性の検査時に、導電性
ゴムシートを検査基板上に配置し、かつ検査物の電極に対面させた位置に置き、検査基板と検査物との間で挟み、必要に応じて圧縮した状態を保持しながら検査物の電極と検査基板の電極とを、導電性ゴムシートの導電部を介して電気的に確実に接続する事ができる。
【0023】
被検査物としては各種の回路基板、例えば、表面実装LSI、電子回路基板、BGA、CSP、各種パッケージ基板などが挙げられる。
本発明の導電性ゴムシートによれば、隣接する導電部の間隔(ピッチ)、すなわち隣接した導電部の中心から中心までの間隔に対し、導電性ゴムシート表面の導電部の幅を大きくすることができるため、回路基板、LSIなどを実装した基板、CSPやBGA等の電極と当該導電部とを確実に当接でき、両者の位置が少々ずれても確実な接続ができる。
【0024】
このため表面実装LSI等の実装基板やCSPやBGA等の電極が微細であっても、また電極のピッチが小さく、高密度になっても確実な接続が可能となった。さらに、回路基板等との接続の場合、回路基板等の電極で導電性ゴムシートの導電部が圧縮されたときに、導電部の周辺の電気絶縁材料部で導電部を支えるので、導電部の歪みも少なく、ゆがみを抑え、安定した導通が得られる。
【0025】
本発明の導電性ゴムシートの構成の一例を図1に示す。図1において、導電部3の面積が大きい導電性ゴムシート1は、基材となるシリコーンゴム等の電気絶縁性材料からなる絶縁部4と、シリコンゴム等にニッケル粒子もしくはこれに金メッキをした粒子等の導電性粒子を配合してなる導電部3とから形成されている。
【0026】
同様に、導電部3の面積が小さい導電性ゴムシート2も基材となるシリコーンゴム等の電気絶縁性材料からなる絶縁部4と、シリコンゴム等にニッケル粒子もしくはこれに金メッキをした粒子等の導電性粒子を配合してなる導電部3とから形成されている。導電部は導電性ゴムシート内で導電性粒子が配向され厚み方向に電気的に導通している構造になっていることが好ましい。この導電性ゴムシート1、2は、その各導電部同士が重なるように位置を合わせて2層以上に積層してもよいし、一体的に成形してもよい。
【0027】
本発明の導電性ゴムシートは、図1のように大面積の導電部の厚さと小面積の導電部の厚さが同等でもよいし、図2のように大面積の導電部の厚さが小さく小面積の導電部の厚さが大きくてもよい。また、図3のように大面積の導電部の厚さが大きく小面積の導電部の厚さが小さくてもよい。 さらに、図4のように大面積の導電部と小面積の導電部がテ
ーパーを有していてもよい。また、図5のように3層以上が積層した形状のものでもよい。また、図6のように導電性のある金属7を接合させてもよい。かかる金属の被検査物との接触面は平面でも良いし、導通方向に沿って断面を見たときに図7のように三角や半球状でも良いしその他形状等、特に制限はない。
【0028】
導電性ゴムシートは例えば次のような方法で製造することができる。絶縁性のゴム状重合体に磁性を有する導電性粒子を混入した組成物を製造し、その組成物をシート状にして図8に示すように磁石の間に挟み、その厚さ方向に磁場をかけて導電性粒子を配向させ、硬化させることで導電部となる粒子を保持固定する。このようにして得られた導電性ゴムシートの上に上記導電性粒子を配合した組成物を積層し、上記と同様にして異方導電性ゴムシートを製造して積層することで目的とする異方導電性ゴムシートを製造することができる。この積層は2回以上繰り返してもよい。なお、平行磁場を作用させる際には、磁場強度の異なる部分を有する磁極板を用いることによって、硬化後のシート中の導電性粒子に粗密状態を生じさせて導電部と絶縁部が存在する導電性シートを形成することができる。
【0029】
また、他の方法として、予め製造した導電性シートの上面と下面の両方に上記導電性粒
子を配合した組成物を積層し、その厚さ方向に磁場をかけて導電性粒子を配向させ、硬化させることで導電性シートを製造することもできる。また、図3のように、予め製造した2枚の異方導電性シートの間に、上記導電性粒子を配合した組成物を積層し、その厚さ方向に磁場をかけて導電性粒子を配向させ、硬化させることで導電性シートを製造することもできる。なお、絶縁性のゴム状重合体に磁性を有する導電性粒子を混入した組成物をシート状にし、図8に示すように磁石の間に挟み、その厚さ方向に磁場をかけて導電性粒子を配向させる際、上型の強磁性体部の面積と、下型の強磁性体部の面積とを変えてもよい。例えば上型の強磁性体部の面積を大きくし、下型の強磁性体部の面積を小さくして、図4のような本発明の導電性ゴムシートを製造してもよい。
【0030】
また他の方法として、別々に製造した導電性ゴムシートを、接着剤の存在下で、あるいは非存在下ではりあわせるなどの方法により、複合化して製造することができる。接着剤としては、シリコーンゴムなどが好適に使用できる。さらに2枚の導電性ゴムシートの間に中間層として回路基板等を有するものでもよい。本発明の異方導電性ゴムシートの各層における導電部の間隔は同じであってもよいが、各層ごとに導電部の間隔を変化させてもよい。
【0031】
本発明の導電性ゴムシートは導電ゴムシートの各層の硬度については特に制限はなく、適宜変化させてもよい。また、導電部の太さの径及びピッチ等についても、表面実装LSI
や電子回路基板の電極部形状及び配列により、個々に対応が可能である。
【0032】
本発明の導電性ゴムシートは、同質の導電性ゴムシートを積層してもよいが、異質の導電性ゴムシートどうしを積層することも有効である。例えば、1層目と2層目の硬度や弾性率を変えたり、3層以上にして外層の硬度や強度を変え、あるいはゴム質重合体の種類を変えて耐久性、耐熱性、対候性などを向上させたり、内層より外層を軟らかくして被検査基板等の電極を傷つけることを防止することもできる。
【0033】
上記ゴム状重合体としては、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソプレン、SBR,NBRなどの共役ジエン系ゴムおよびこれらの水素添加物、スチレンブタジエンジエンブロック共重合体、スチレンイソプレンブロック共重合体などのブロック共重合体およびこれらの水素添加物、クロロプレン、ウレタンゴム、ポリエステル系ゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレン共重合体、エチレンプロピレンジエン共重合体などが挙げられる。耐候性の必要な場合は共役ジエン系ゴム以外のゴム状重合体が好ましく、特に成形加工性および電気特性の点からシリコーンゴムが好ましい。
【0034】
ここでシリコーンゴムについてさらに詳細に説明する。シリコーンゴムとしては、液状シリコーンゴムを架橋または縮合したものが好ましい。液状シリコーンゴムはその粘度が歪速度10ー1secで105ポアズ以下のものが好ましく、縮合型、付加型、ビニル基やヒドロ
キシル基含有型などのいずれであってもよい。具体的にはジメチルシリコーン生ゴム、メチルビニルシリコーン生ゴム、メチルフェニルビニルシリコーン生ゴムなどを挙げることができる。これらのうちビニル基含有シリコーンゴムとしては、通常、ジメチルジクロロシランまたはジメチルジアルコキシシランを、ジメチルビニルクロロシランまたはジメチルビニルアルコキシシランの存在下において、加水分解および縮合反応させ、例えば引き続き溶解−沈澱の繰り返しによる分別を行うことにより得ることができる。
【0035】
この 成分の分子量(標準ポリスチレン換算重量平均分子量)は10,000〜40,000である
ものが好ましい。なお、 上記ゴム状重合体の分子量分布指数(標準ポリスチレン換算重
量平均分子量と標準ポリスチレン換算数平均分子量との比(以下「Mw /Mn 」と記す)は、得られる導電性エラストマーの耐熱性の点から2 以下が好ましい。
【0036】
導電性粒子としては、例えばニッケル、鉄、コバルトなどの磁性を示す金属粒子またはこれらの合金の粒子もしくはこれらを含有する粒子に貴金属を含有させるか、またはこれらの芯粒子に貴金属をメッキなどにより被覆したもの、非磁性金属粒子もしくはガラスビーズなどの無機質粒子またはポリマー粒子を芯粒子とし、これらにニッケル、コバルトなどの導電性磁性体を含有もしくは被覆し貴金属を被覆したもの、あるいは導電性磁性体と貴金属の両方を被覆した粒子などを挙げることができる。貴金属としては、金、銀、パラジウム、ロジウムなどが挙げられ、好ましくは金、銀である。これらの中ではニッケル粒子を芯粒子とし、その表面に金や銀などの貴金属を被覆した粒子が好ましい。 また、金
の被覆と銀の被覆の両方を併用したものが好ましい。芯粒子の表面への貴金属の被覆方法については特に制限はないが、例えば化学メッキ、無電解メッキなどにより行うことができる。
【0037】
また、導電性粒子の粒子径は1〜1000μmであることが好ましく、さらに好ましくは2〜500μm、より好ましくは5〜300μm、特に好ましくは10〜200μmである。また、導電性粒子の粒子径分布(Dw/Dn)は1〜10であることが好ましく、さらに好ましくは1.01〜7、より好ましくは1.05〜5、特に好ましくは1.1〜4である。また、導電性粒子の含水率は
5%以下が好ましく、さらに好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下である。この導電性粒子の形状は特に限定されるものではないが、上記(a)成分および(b)成分またはそれらの混合物に対する分散の容易性から球状、星形状あるいはこれらが凝集した塊状であることが好ましい。
【0038】
本発明において、導電性粒子は、ゴム状重合体100重量部に対して30〜1000重量部、好
ましくは50〜750 重量部の割合で用いられる。この割合が30重量部未満の場合には、得られる導電性ゴムシートは、使用時にも電気抵抗値が十分に低くならず、従って良好な接続機能を有しないものとなり、また 1,000重量部を超えると硬化されたエラストマーが脆弱になって導電性ゴムシートとして使用することが困難となる。本発明の導電性ゴムシートには、必要に応じて、通常のシリカ粉、コロイダルシリカ、エアロゲルシリカ、アルミナなどの無機充填材を含有させることができる。このような無機充填材を含有させることにより、未硬化時におけるチクソ性が確保され、粘度が高くなり、しかも導電性粒子の分散安定性が向上すると共に、硬化後におけるゴムシートの強度が向上する。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明の具体例を示す。
実施例1[導電性ゴムシートの製造]
電気的絶縁材料として硬度が40度のシリコーンゴムを用い、粒子表面に粒子の3重量%の金メッキをしたニッケル粒子を7重量%となる割合で混合し、成形材料組成物を調製した。ニッケル粒子の平均粒子径は40μmであった。次に図8に示すような金型を用い、上記の割合で調製した成形材料組成物を金型の間に流し込んだ。この金型は表面実装LSIや電子回路基板の電極部に対応したパターンの強磁性体部25とそれ以外の非磁性体2
6とが上型22下型23の対向磁極からなる一対の平坦な磁極板21で、且つ導電性ゴムシートに必要な厚さに応じてスペーサー24を有するものである。 次に、真空下で脱泡
した後、その上に上型を被せ成形品の厚さ方向に加圧力と電磁石による平行磁場を作用させ成形した。成形は、室温にて厚さ方向の4000ガウスの平行磁場で、100℃で1時間架橋を行い、一層目の導電性ゴムシートを作製した。
【0040】
次に、上記金型から1層目の導電性ゴムシートを取り外し、前記の金型よりも各磁性体部の面積が大きい上型と下型を準備し、2層目の導電性ゴムシートの作製に移った。まず、1層目と同じ割合でシリコーンゴムと導電性磁性体粒子とを混合して組成物を調製する。この組成物を下型の上に乗せた1層目の導電性ゴムシートの上にシート状に広げ、真空脱法する。これ以降は1層目と同じ方法により、積層された導電性ゴムシートを作製した
。導電性ゴムシートの導電部のピッチは1.27mmであり、厚さは1mmであり、導電性ゴムシートの上側の導電部は直径が1mmの円形であり、下側の導電部は直径が0.5mmの円形であった。
【0041】
以上のようにして製造した導電性ゴムシートの使用例を図9に示す。表面実装LSI14
と検査基板11上との間に、上記で製造した導電性ゴムシート1を電極位置合わせをして挟み固定した。これを加圧圧縮した状態で保持し、検査基板11の電極12より導電性ゴムシート1の導電部3を通じて表面実装LSI14の電極13へ導通させ、表面実装LSI14の電気的動作検査を行った。その結果、十分な性能を持って電気的導通及びショートの検査が行えた。また、長時間使用したが、導通不良や劣化が無く、長期間にわたって繰り返し検査をすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本発明の導電性ゴムシートの構成の一例を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の導電性ゴムシートの構成の一例を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明の導電性ゴムシートの構成の一例を示す模式図である。
【図4】図4は、本発明の導電性ゴムシートの構成の一例を示す模式図である。
【図5】図5は、本発明の導電性ゴムシートの構成の一例を示す模式図である。
【図6】図6は、本発明の導電性ゴムシートの構成の一例を示す模式図である。
【図7】図7は、本発明の導電性ゴムシートの構成の一例を示す模式図である。
【図8】図8は、本発明の導電性ゴムシートの製造に用いた金型の一例を示す模式図である。
【図9】図9は、本発明の導電性ゴムシートを用いたLSI等の電気的検査の構成の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0043】
1、2 導電性ゴムシート
3 導電部
4 絶縁部
12、13 電極
21 磁性板
22 上型
23 下型
24 スペーサー
25 強磁性体部
26 非磁性体部
31 被検査物(LSI)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材となる電気絶縁性材料からなる絶縁部と、電気絶縁性材料に導電性粒子を配合してなる複数個の導電部とから形成された異方導電性ゴムシートを、2層以上に積層状態で、それらの導電部同士が相互に電気的に導通状態となるように、重なる位置に配置された導電性ゴムシートであって、
前記導電性ゴムシートの一方の表面側の異方導電性ゴムシートの少なくとも1つの導電部の表面の面積が、
前記導電性ゴムシートの他方の表面側の異方導電性ゴムシートの対応する位置に配置された導電部の表面の面積よりも大きくなるように形成され、
前記導電性ゴムシートの間に中間層として回路基板等を有し、
前記2層以上の積層状態の導電性シートと中間層として回路基板等が一体化されていることを特徴とする導電性ゴムシート。
【請求項2】
基材となる電気絶縁性材料からなる絶縁部と、電気絶縁性材料に導電性粒子を配合してなる複数個の導電部とから形成された異方導電性ゴムシートを、2層以上に積層状態で、それらの導電部同士が相互に電気的に導通状態となるように、重なる位置に配置された導電性ゴムシートであって、
前記導電性ゴムシートの一方の表面側の異方導電性ゴムシートの少なくとも1つの導電部の表面の面積が、
前記導電性ゴムシートの他方の表面側の異方導電性ゴムシートの対応する位置に配置された導電部の表面の面積よりも大きくなるように形成され、
前記導電性ゴムシートの間に中間層として回路基板等を有し、
前記2層以上の積層状態の導電性シートと中間層として回路基板等が一体化されていることを特徴とする導電性ゴムシートからなるコネクター。
【請求項3】
基材となる電気絶縁性材料からなる絶縁部と、電気絶縁性材料に導電性粒子を配合してなる複数個の導電部とから形成された異方導電性ゴムシートを、2層以上に積層状態で、それらの導電部同士が相互に電気的に導通状態となるように、重なる位置に配置された導電性ゴムシートであって、
前記導電性ゴムシートの一方の表面側の異方導電性ゴムシートの少なくとも1つの導電部の表面の面積が、
前記導電性ゴムシートの他方の表面側の異方導電性ゴムシートの対応する位置に配置された導電部の表面の面積よりも大きくなるように形成され、
前記導電性ゴムシートの間に中間層として回路基板等を有し、
前記2層以上の積層状態の導電性シートと中間層として回路基板等が一体化されている導電性ゴムシートを使用したことを特徴とする回路基板の電気的検査用冶具。
【請求項4】
請求項1に記載の導電性ゴムシートを製造する方法であって、
絶縁性のゴム状重合体に磁性を有する導電性粒子を混入した組成物を製造する工程と、
前記組成物をシート状にして、磁石の間に挟み、その厚さ方向に磁場をかけて導電性粒子を配向させる工程と、
前記導電粒子を配向させた状態で硬化させて、導電部となる粒子を保持固定して、異方導電性ゴムシートを得る工程と、
前記工程で得られた異方導電性ゴムシートと、中間層として回路基板等を、複数枚用意して、これらの異方導電性ゴムシートと、中間層として回路基板等を貼り合せることによって、異方導電性ゴムシートを製造することを特徴とする導電性ゴムシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−318923(P2006−318923A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167621(P2006−167621)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【分割の表示】特願平10−16407の分割
【原出願日】平成10年1月12日(1998.1.12)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】