説明

導電性ゴムローラの製造装置

【課題】本発明は、電子写真装置の帯電部材として用いた場合に良好な画像が得られる導電性ゴムローラを長時間安定して押出すことができ、体積固有抵抗の異なるゴム材料を連続して押出し機に投入した場合に周方向の抵抗ムラが悪化する時間を短縮できる導電性ゴムローラの製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】クロスヘッドダイを使用した導電性ゴムローラの製造において、ゴム材料が経由する環状流路の表面に形成された樹脂層の水の接触角が100度以上であり、かつ、該樹脂層を構成する樹脂は、ロックウエル硬さがM100以上M130以下である樹脂、又は該樹脂とフッ素樹脂との複合樹脂であることを特徴とする導電性ゴムローラの製造装置、及び該製造装置を用いた製造方法により得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ローラの製造装置に関し、詳しくは電子写真複写機等の電子写真感光体周りの帯電ローラや転写ローラ等として好適な導電性ゴムローラの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機及び電子写真印刷機等の電子写真装置は、電子写真感光体表面上を均一に帯電させ、電子写真感光体表面上に印刷パターンの静電潜像を形成する。この静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成し、これを熱により記録用紙上に転写する方式のものが知られている。この方式において、電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置に用いられる帯電方式として、接触帯電方式の採用が進められている。接触帯電方式は、電子写真感光体に接触配置された帯電部材に電圧を印加することによって電子写真感光体を所定の極性、電位に帯電させる方式であり、電源の電圧を低くすることができる利点を有する。またオゾンなどのコロナ生成物の発生を少なくすることができ、構造が簡単で低コスト化を図ることができるなどの利点もある。
【0003】
この接触帯電方式は、電子写真感光体表面に導電性を有する弾性ローラを所定の押圧力で当接させるものであり、帯電部材は電子写真感光体との均一密着性が必要なために、適度な弾性が求められる。したがって、該帯電部材にはゴム弾性を有する弾性層が使用される。このような導電性ゴムローラは図1に示されるように、導電性軸体1上に弾性層2が形成されている。該弾性層には所定の電気特性、高寸法精度、高耐久性が要求されており、特に電気特性に関しては1×104〜1×1010Ω・cmの体積固有抵抗を有することが要求される。
【0004】
前記導電性ゴムローラの製法としては、次の方法が知られている。押出成形により中空円筒状の未加硫ゴムチューブを成形し、これを加硫してゴムチューブとし、当該ゴムチューブの貫通孔に導電性軸体を挿入して、円筒研削盤による研削や紫外線照射などに代表される表面処理などの二次工程を経て製造する方法である。
【0005】
また、より安価に導電性ゴムローラを製造するために、ゴムチューブの貫通孔に導電性軸体を挿入する工程を省略すべく、特許文献1に示されるような方法が知られている。これは、クロスヘッドダイによる被覆押出成形を用いて軸芯上に未加硫導電性ゴム組成物を被覆して未加硫導電性ゴムローラを得た後に、当該未加硫導電性ゴムローラを加硫して、さらに研磨や表面処理などの二次工程を施して製造する方法である。
【0006】
図2に前記クロスヘッドダイを具備する押出成形装置の例を模式的に示す。図2のクロスヘッドダイを具備する押出成形装置は、押出機3とクロスヘッドダイ12から構成される。押出機3は未加硫ゴム材料4を投入する投入口7と未加硫ゴム材料4を可塑化及び混練しながら搬送するためのシリンダ8とスクリュー9、さらに可塑化及び混練された未加硫ゴム材料を排出するための排出口10を有している。排出口10は未加硫ゴム材料の混練促進と異物除去を目的としたブレーカプレート11を有している。押出機3の排出口10はブレーカプレート11を介して、クロスヘッドダイ12を構成する外側ダイ13の未加硫ゴム材料導入口16と連結する。クロスヘッドダイ12は外側ダイ13と内側ダイ14で構成される環状流路15を備える。外側ダイ13は内部貫通孔を有し、当該内部貫通孔(内部貫通テーパ孔)壁面は環状流路15の外壁となる。内側ダイ14の外周面は外側ダイ13の内部貫通テーパ孔の一部と嵌合固定されつつ、環状流路15の内壁となり、外側ダイ13の内部貫通テーパ孔と環状流路を構成する。内側ダイ14は環状流路15の軸と同じ向きに貫通孔を具備し、当該貫通孔には導電性軸体5を装着することができる。外側ダイ13の内部貫通テーパ孔の先端にはダイリップ17が取り付けられており、未加硫ゴム材料を導電性軸体5に被覆した未加硫ゴムローラ6が排出される。
【0007】
続いて、図2に示すクロスヘッド押出成形装置を用いて導電性ゴムローラを得る方法について説明する。押出機3の投入口7に投入された未加硫ゴム材料4は、シリンダ8内にてシリンダ8とスクリュー9によりせん断力を受けて、可塑化及び混練されつつ、排出口10へ搬送される。続いてブレーカプレート11を通過して、クロスヘッドダイの未加硫ゴム材料導入口16へ搬送される。未加硫ゴム材料4は、内側ダイ14に当たって二手に分かれ、内側ダイ14を回り込んで内側ダイ14の押出し機側と反対部分で再び合流する。続いて未加硫ゴム材料4は、環状流路15を経由してダイリップ17方向に流れ、あらかじめ内側ダイ貫通孔に装着された導電性軸体5上に被覆されて、未加硫ゴムローラ6となる。その後、得られた未加硫ゴムローラを熱風炉などで加硫して導電性ゴムローラを得る。
【0008】
さて、このようなクロスヘッド押出成形装置を用いて導電性ゴムローラを得る場合には、ゴムの加硫が部分的に進行して弾性を失い、弾性層の表面が不均一になり、成形が不可能になる、いわゆるヤケという不具合が発生する場合がある。クロスヘッドダイ内では未加硫ゴム材料に流速差が生じることがある。特にクロスヘッドダイ内では壁面との摩擦により流速の遅くなった未加硫ゴム材料が、内側ダイ14に当たって二手に分かれ、内側ダイ14を回り込んで内側ダイ14の押出し機側と反対部分で再び合流する箇所、いわゆるウェルドラインに集中する傾向がある。このため、ウェルドライン付近のゴムはその他の箇所の未加硫ゴム材料と比較して、クロスヘッドダイに導入されてからダイリップより排出されるまでの時間、すなわちクロスヘッドダイ内における滞在時間が長くなる。したがって受ける熱履歴が大きくなることから、ヤケが発生し易くなると推察する。
【0009】
また、体積固有抵抗の異なるゴム材料を連続して押出し機に投入した場合、ウェルドライン付近では未加硫ゴム材料の入れ替り速度が遅いため、先に投入した未加硫ゴム材料と後に投入した未加硫ゴム材料が混在することになる。この場合にも、導電性ゴムローラを構成する未加硫ゴム材料の円周方向における体積固有抵抗に、バラツキが生じてしまう課題がある。
【0010】
以上のような理由で、クロスヘッド押出成形で得られる導電性ゴムローラは、当該導電性ゴムローラ円周方向における体積固有抵抗が不均一となるため、電子写真感光体を均一に帯電することができなくなり、画像不良を起こす場合がある。
【0011】
このような課題を解決する方法としては、ゴム材料流路を表面処理することで摩擦を低減し、流動性を向上させることでゴム材料の入れ替え速度を速くする方法が考えられる。前記材料流路の表面処理により摩擦低減を行った装置としては、特許文献2に示されるように材料流路をフッ素樹脂皮膜(PTFE)でコーティングした装置や、特許文献3に示されるように材料流路をニッケル合金皮膜でメッキした装置が提案されている。
【0012】
ところが、材料流路をフッ素樹脂皮膜(PTFE)でコーティングした装置では、ゴム材料の入れ替え速度は向上したもののフッ素樹脂皮膜の耐久性に難があり、長時間連続して押出しをするとフッ素樹脂皮膜にキズが発生し、流動性が悪化する課題があった。また、材料流路をニッケル合金皮膜でメッキした装置では、耐久性には問題が無く、長時間連続して押出すことが可能であったが、ゴム材料の入れ替え速度の向上が不十分であった。
【0013】
【特許文献1】特開2001−310362号公報
【特許文献2】特開昭61−10432号公報
【特許文献3】特開2004−148548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、電子写真装置の帯電部材に用いた場合良好な画像が得られる導電性ゴムローラの製造装置において、ゴム材料をゴム押出し機のクロスヘッドダイに通過させる押出し工程にて長時間安定して押出可能な製造装置、製造方法を提供することである。また、体積固有抵抗の異なるゴム材料を連続して押出し機に投入した場合に周方向の抵抗ムラが悪化する時間を短縮できる導電性ゴムローラの製造装置、製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するための本発明は、以下の通りである。
導電性軸体をクロスヘッドダイに通過させ、該クロスヘッドダイより導電性粒子を含むゴム材料を押し出し、該導電性軸体の外周上にゴム弾性層を形成する導電性ゴムローラの製造装置であって、該クロスヘッドダイは、外側ダイと内側ダイで規定される前記ゴム材料が通過する環状流路を有し、該環状流路の表面に設けられる樹脂層は、水の接触角が100度以上であり、かつ、該樹脂層を構成する樹脂は、ロックウエル硬さがM100以上M130以下である樹脂、又は該樹脂とフッ素樹脂との複合樹脂であることを特徴とする導電性ゴムローラの製造装置による。
【0016】
前記ロックウエル硬さがM100以上M130以下である樹脂が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂であることを特徴とする請求項1記載の導電性ゴムローラの製造装置による。
【0017】
前記環状流路の表面に設けられる樹脂層が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を20質量%以上含むことを特徴とする導電性ゴムローラの製造装置による。
【0018】
前記環状流路の表面に設けられる樹脂層の膜厚が、20μm以上500μm以下であることを特徴とする導電性ゴムローラの製造装置による。
【0019】
前記導電性ゴムローラの製造装置を用いて、導電性軸体の外周上に導電性粒子を含むゴム材料を押し出し、ゴム弾性層を形成する工程、該ゴム弾性層を加硫する工程を含む導電性ゴムローラの製造方法による。
【0020】
前記ゴム材料に含まれる導電性粒子がカーボンブラックであることを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法による。
【0021】
前記ゴム材料が、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムを含むことを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法による。
【0022】
前記製造方法により製造された導電性ゴムローラによる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電子写真装置の帯電部材として用いた場合に良好な画像が得られる導電性ゴムローラの製造装置において、ゴム材料をゴム押出し機のクロスヘッドダイに通過させる押出し工程にて長時間安定して押出し可能な製造装置、製造方法を提供できる。また、体積固有抵抗の異なるゴム材料を連続して押出し機に投入した場合に周方向の抵抗ムラが悪化する時間を短縮可能な導電性ゴムローラの製造装置、製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
本発明は、導電性軸体をクロスヘッドダイに通過させ、該クロスヘッドダイより導電性粒子を含むゴム材料を押し出し、該導電性軸体の外周上にゴム弾性層を形成する導電性ゴムローラの製造装置であって、該クロスヘッドダイは、外側ダイと内側ダイで規定される前記ゴム材料が通過する環状流路を有し、該環状流路は、水の接触角が100度以上であり、かつ、ロックウエル硬さがM100以上M130以下である樹脂層が設けられていることを特徴とする導電性ゴムローラの製造装置、また該製造装置を用いた導電性ゴムローラの製造方法である。
【0025】
前記クロスヘッドダイを具備する押出し成形装置は、図2に模式的に示した要件を満たしている必要がある。該押出し成形装置中の押出機3としては、図2に示した要件を満たしていれば特に限定はされず、従来公知の装置、技術を使用することができる。
【0026】
前記クロスヘッドダイ12は外側ダイ13と内側ダイ14で構成される環状流路15を備えている。該環状流路15の表面に設けられた樹脂層は、水の接触角が100度以上であり、かつ、該樹脂層を構成する樹脂は、ロックウエル硬さがM100以上M130以下である樹脂、又は該樹脂とフッ素樹脂との複合樹脂であることが必要である。該樹脂層の水の接触角が100度未満であると該環状流路の摩擦が大きくなり、ウェルドライン付近でのゴムの入替り速度が遅くなる。また水の接触角は大きいほど摩擦が小さくなり好ましい。なお、理論上の上限は180度である。
【0027】
また、該樹脂層を構成する樹脂のロックウエル硬さがM100より小さい場合には十分な耐久性が得られず、長時間連続して押出しをすると樹脂層表面にキズが発生し、流動性が悪化する。ロックウエル硬さがM130より大きい場合には加工性が悪くなり、前記環状流路表面に均一に樹脂層を形成することができない。
該樹脂としては、ポリエーテルエーテルケトン樹脂が好ましい。
【0028】
前記複合樹脂に含まれるフッ素樹脂としては、特に限定されず、従来公知のフッ素樹脂を用いることができる。例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ECTFE(クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体)等が挙げられる。耐熱性、離型性、耐薬品性のそれぞれに優れていることからPTFE及びPFAが好ましく、溶融粘度が低いためピンホールの少ない連続被膜を得ることが可能であることからPFAがより好ましい。
【0029】
前記環状流路の樹脂層に含まれるポリエーテルエーテルケトン樹脂の割合は、20質量%以上含まれることが好ましく、30質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。複合樹脂皮膜中のポリエーテルエーテルケトン樹脂の割合が20質量%より小さい場合には、十分な耐久性が得られず、長時間連続して押出しをすると樹脂層表面にキズが発生し、流動性が悪化する可能性がある。フッ素樹脂を含有しないポリエーテルエーテルケトン樹脂単体でも必要特性を得られるが、フッ素樹脂との複合樹脂を形成することで加工性が改良され、より複雑な面に対しても樹脂層を形成することが可能となる。
【0030】
前記環状流路の樹脂層の膜厚は20μm以上500μm以下であることが好ましく、30μm以上200μm以下であることがより好ましい。膜厚が20μmより小さい場合には、目的とする該環状流路表面の摩擦低減の効果が十分に得られず、また耐久性も悪化する可能性がある。膜厚が500μmをこえる場合には、均一な複合樹脂皮膜の形成が技術上困難である。
【0031】
前記環状流路の樹脂層を構成する樹脂は、該環状流路表面の全体に形成されていても良く、またその一部に形成されていても良い。ウェルドライン付近における入替り速度が遅く、熱履歴の大きい未加硫ゴム材料を減少させるため、該環状流路の樹脂層を構成する樹脂は少なくとも該環状流路のゴム材料導入口からウェルドラインまでの間は形成されていることが好ましい。
【0032】
前記環状流路の樹脂層の形成方法としては特に限定されず、従来公知の技術が使用できる。例えば、フッ素樹脂水分散液中にポリエーテルエーテルケトン樹脂粉末を混合し、素面化した該環状流路の金属表面に直接塗着し焼成する方法がある。また、ポリエーテルエーテルケトン樹脂単体又はポリエーテルエーテルケトン樹脂とフッ素樹脂からなる複合樹脂を溶融し一体に密着形成する方法などが挙げられる。均一な複合樹脂皮膜が得られ、該環状流路の金属表面との密着性が強いことから、後者の方法が好ましい。
【0033】
また、本発明は、前記導電性ゴムローラの製造装置を用いて、導電性軸体の外周上に導電性粒子を含むゴム材料を押し出し、ゴム弾性層を形成する工程、該ゴム弾性層を加硫する工程を含む導電性ゴムローラの製造方法である。
【0034】
前記加硫工程は特に制限されず、公知の技術を用いることができ、例えば、蒸気加硫、オーブン加熱加硫、熱風加熱加硫及びプレス加硫などが挙げられる。
【0035】
前記導電性軸体(芯金)としては、例えば、鉄、銅及びステンレス等の金属、カーボン分散樹脂、金属或いは金属酸化物分散樹脂等が用いられ、その形状としては、棒状及び板状等が使用できる。本発明における導電性軸体としては、ステンレススチール、クロム、ニッケル等にてめっき処理した鉄、黄銅及び導電性プラスチック、アルミニウム、銅、鉄、又はこれらを含む合金等の良導体が好適に用いられる。0.1〜1.5mm程度の厚さを有することが好ましく、環状であっても、また棒状であってもよい。
【0036】
前記ゴム材料中のゴム成分としては特に限定されず、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、水添アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、エピハロヒドリン系ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴムなどを挙げることができる。
【0037】
前記ゴム成分中に分散させる導電性粒子としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、及び、熱分解カーボンなどの導電性のカーボンを用いることができる。ゴム用カーボンとして、具体的には、Super Abrasion Furnace(SAF:超耐摩耗性)、Intermediate Super Abrasion Furnace(ISAF:準超耐摩耗性)、High Abrasion Furnace(HAF:高耐摩耗性)、Fast Extruding Furnace(FEF:良押し出し性)、General Purpose Furnace(GPF:汎用性)、Semi Rein Forcing Furnace(SRF:中補強性)、Fine Thermal(FT:微粒熱分解)及びMedium Thermal(MT:中粒熱分解)等が挙げられる。
【0038】
また、天然グラファイト及び人造グラファイトなどのグラファイトを用いることもできる。また、TiO2、SnO2、ZnOなどの金属酸化物、SnO2とSb23の固溶体、ZnOとAl23の固溶体などの複合酸化物、Cu、Agなどの金属粉等を始めとして、各種公知のものが使用できる。それらを単体若しくは複数種をブレンドして使用してもよい。また導電性ポリマー、イオン導電剤などを前記導電性粒子と併用して導電性を付与しても良い。
【0039】
また前記ゴム材料に、加硫剤、加硫促進剤、導電剤、帯電制御剤、可塑剤、老化防止剤等を適宜に添加することもできる。さらに、帯電防止剤、紫外線吸収剤、補強剤、充填剤、滑剤、離型剤、顔料、染料、難燃剤等を必要に応じて適宜に添加することもできる。
【0040】
以下に本発明の製造装置を用いた導電性ゴムローラの製造方法について具体的に説明するが、特にこの説明に限定されるものではない。図2において、押出機3の投入口7に投入された未加硫ゴム材料4は、シリンダ8内にてシリンダ8とスクリュー9によりせん断力を受けて、可塑化及び混練されつつ、排出口10へ搬送される。続いてブレーカプレート11を通過して、クロスヘッドダイの未加硫ゴム材料導入口16へ搬送される。未加硫ゴム材料4は、内側ダイ14に当たって二手に分かれ、内側ダイ14を回り込んで内側ダイ14の押出し機側と反対部分で再び合流する。続いて未加硫ゴム材料4は、環状流路15を経由してダイリップ17方向に流れ、あらかじめ内側ダイ貫通孔に装着された導電性軸体5上に被覆されて、未加硫ゴムローラ6となる。その後、得られた未加硫ゴムローラを熱風炉などで加硫する加硫工程を経て所望の導電性ゴムローラを得る。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0042】
各実施例及び比較例で使用したクロスヘッドダイ12における環状流路15の樹脂層の形成は以下の通り行なった。
【0043】
(実施例1〜8及び比較例1〜6)
本実施例にて用いるクロスヘッドダイ12には、(株)三葉製作所製のものを用いた。クロスヘッドダイ12の環状流路15を構成する鉄からなる基材を400℃で2時間空焼きした後、アルミナによるサンドブラストを行ない、基材表面に残っている不純物を除去するとともに、基材表面を粗面化した。次に基材表面にプライマーを塗布し、400℃で60分間焼成し、基材とプライマー層とを一体に密着させた。次いで、各樹脂又は各複合樹脂を溶融混合後、基材表面のプライマー層表面に各膜厚にて塗布し、420℃で60分間焼成した後、徐々に冷却することで基材表面に樹脂層を形成した。表1に各実施例及び比較例で使用した樹脂層形成用樹脂のロックウエル硬さを、表2に使用したフッ素樹脂のロックウエル硬さを示した。また、表3に使用した樹脂、フッ素樹脂及びその使用比率を示し、さらに樹脂層の膜厚、水の接触角を示した。
【0044】
前記樹脂層の膜厚は、試験片(鉄製3×5cm)に樹脂層を形成し、樹脂層の一部をカッターで削り取った後、表面粗さ測定器「SE3500」((株)小坂研究所製)にて測定した。
【0045】
前記樹脂層の水の接触角はJIS規格K−6768に則って測定を実施した。
【0046】
前記樹脂層のロックウエル硬さは、(株)ミツトヨ製のロックウエル硬さ試験機「AR−20」にて測定した。
【0047】
(比較例7)
無電解ニッケル−タングステン−リンの無電解メッキ浴中に、下地メッキを施した基材を浸漬して所望のメッキを施した。
【0048】
(比較例8)
公知のハードクロムメッキ処理を施した。
【0049】
各実施例及び比較例で使用したゴム材料は以下の通りである。下記材料をオープンロールで混練したゴム材料を使用した。
・NBR(アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム)(商品名:「Nipol1042」、日本ゼオン(株)製)100質量部
・カーボンブラック1(商品名:「シーストG−SO」、東海カーボン(株)製)25質量部
・カーボンブラック2(商品名:「旭HS−500」、旭カーボン製)6質量部
・ステアリン酸亜鉛(商品名:「ジンクステアレート」、日本油脂(株)製)1質量部
・酸化亜鉛(商品名:「酸化亜鉛2種」、ハイテック(株)製)5質量部
・液状エポキシ化ポリブタジエン(商品名:「アデカザイザーBF−1000」、(株)ADEKA製)10質量部
・炭酸カルシウム(商品名:「ナノックス#30」、丸尾カルシウム(株)製)30質量部
・DM(ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド)(商品名:「ノクセラーDM−P」、大内新興化学(株)製)1質量部
・TS(テトラメチルチウラムモノスルフィド)(商品名:「ノクセラーTS」、大内新興化学(株)製)3質量部
・硫黄(商品名:「サルファックス200S」、鶴見化学工業(株)製)1.2質量部。
【0050】
続いて、得られた未加硫ゴム組成物を本発明の押出成形装置を用いて押出し、未加硫導電性ゴムローラを得た。導電性軸体にはクロムメッキを施した鉄製の芯金を用いた。なお、押出機にはシリンダ内径φ70mm、L/Dが20であるベント式押出機(製品名:「70K−20D−HB」、(株)三葉製作所製)を用いた。スクリュフライト形状は、ベントゾーンを除く箇所についてフルフライト形状とし、押出成形温度はシリンダ、外側ダイ、ダイリップを90℃とする温度条件で成形を行った。また、押出し速度は10.4kg/hで行った。
【0051】
得られた未加硫ゴムローラを160℃の熱風炉で一時間加硫した後、導電性ゴムローラのゴム部長さが230mmになるようにゴム部の両端部を切断し、続いて当該ゴム部を回転砥石で研摩し導電性ゴムローラを得た。
【0052】
押出し成形機の長時間安定性、すなわち前記環状流路15の樹脂層の耐久性は磨耗試験で評価し、流動性はゴム入替え時間で評価した。評価方法及び評価基準は以下の通り行なった。
【0053】
(磨耗試験)
JIS規格K−7204に則って磨耗量の測定を実施した。
評価は下記基準で行った。結果を表3に示す。
〇 :5.00mg未満
× :5.00mg以上。
【0054】
(ゴム入替え時間)
押出し成形機を用いて連続して導電性ゴムローラを成形し、その周方向の抵抗ムラを測定した。投入したゴム材料としては、まず高抵抗のゴム材料を投入した後、連続して低抵抗のゴム材料を押出し機に投入した。高抵抗、低抵抗の材料には同じ材料を用い、オープンロールの練り時間を変更することで抵抗を調節した。図2において低抵抗のゴム材料がダイリップ17まで到達すると、図1において押出された導電性ゴムローラの弾性層2の部分では2種類のゴム材料が混在することになるため、周方向の抵抗ムラが上昇し始める。そのまま低抵抗のゴム材料を押出しつづけると、徐々にゴム材料は低抵抗のゴム材料に置き換わり、完全に置き換わると周方向の抵抗ムラは元に戻る。この間、周方向の抵抗ムラが悪化し始めてから、元の値に戻るまでの時間をゴム入替え時間として評価を行なった。
周方向の抵抗ムラは、N/N環境(23℃/50%RH)下において、ゴムローラ試験片の両端部に荷重500gを加え、芯金端部より200Vの直流電圧を印加し、回転速度30rpmにおいて1分間ローラ抵抗値を測定した。このとき、抵抗ムラが上昇し始めたときから、元の抵抗ムラの値に戻るまでの時間を測定した。
評価は下記基準で行った。結果を表3に示す。
◎ :ゴム入替え時間が20分未満
〇 :ゴム入替え時間が20分以上25分未満
× :ゴム入替え時間が25分以上。
【0055】
(総合判定)
総合判定は下記基準で行なった。結果を表3に示す。
◎ :テーバー磨耗量評価が〇、かつゴム入替え時間評価が◎
〇 :テーバー磨耗量評価が〇、かつゴム入替え時間評価が〇
× :テーバー磨耗量評価若しくはゴム入替え時間評価の何れかが×。
【0056】
表3より明らかなように、本発明の導電性ゴムローラの製造装置を用いた場合、周方向の抵抗ムラが小さく、電子写真装置の帯電部材として用いた場合に良好な画像が得られる導電性ゴムローラを長時間安定して押出すことができる。また、体積固有抵抗の異なるゴム材料を連続して押出し機に投入した場合に、周方向の抵抗ムラが悪化する時間を短縮できる。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

(*1)比較例7は該環状流路15の表面をニッケル合金皮膜でメッキ
(*2)比較例8は該環状流路15の表面をハードクロムでメッキ。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】導電性ゴムローラ斜視図
【図2】クロスヘッド押出成形装置模式図
【符号の説明】
【0061】
1 導電性軸体
2 弾性層
3 押出機
4 未加硫ゴム材料
5 導電性軸体
6 未加硫ゴムローラ
7 ゴム材料投入口
8 シリンダ
9 スクリュー
10 排出口
11 ブレーカプレート
12 クロスヘッドダイ
13 外側ダイ
14 内側ダイ
15 環状流路
16 未加硫ゴム材料導入口
17 ダイリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸体をクロスヘッドダイに通過させ、該クロスヘッドダイより導電性粒子を含むゴム材料を押し出し、該導電性軸体の外周上にゴム弾性層を形成する導電性ゴムローラの製造装置であって、
該クロスヘッドダイは、外側ダイと内側ダイで規定される前記ゴム材料が通過する環状流路を有し、
該環状流路の表面に設けられる樹脂層は、水の接触角が100度以上であり、
かつ、該樹脂層を構成する樹脂は、ロックウエル硬さがM100以上M130以下である樹脂、又は該樹脂とフッ素樹脂との複合樹脂であることを特徴とする導電性ゴムローラの製造装置。
【請求項2】
前記ロックウエル硬さがM100以上M130以下である樹脂が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂であることを特徴とする請求項1記載の導電性ゴムローラの製造装置。
【請求項3】
前記環状流路の表面に設けられる樹脂層は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を20質量%以上含むことを特徴とする請求項2に記載の導電性ゴムローラの製造装置。
【請求項4】
前記環状流路の表面に設けられる樹脂層の膜厚が、20μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の導電性ゴムローラの製造装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の導電性ゴムローラの製造装置を用いて、導電性軸体の外周上に導電性粒子を含むゴム材料を押し出し、ゴム弾性層を形成する工程、該ゴム弾性層を加硫する工程を含む導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項6】
前記ゴム材料に含まれる導電性粒子がカーボンブラックであることを特徴とする請求項5に記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項7】
前記ゴム材料は、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムを含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項8】
請求項5から7のいずれかに記載の製造方法により製造された導電性ゴムローラ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−96110(P2009−96110A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271210(P2007−271210)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】