説明

導電性ゴムローラ及び転写ローラ

【課題】転写ローラ等に有用な、環境変化、長時間通電等によるローラ抵抗値の変動が少なく、低硬度かつ汚染性のない導電性ゴムローラを提供する。
【解決手段】発泡ゴム層のゴム成分として、EO含有量50モル%以上60モル%以下、AGE含有量2モル%以上10モル%以下であるエピクロルヒドリンゴムとAN含有量16質量%以上20質量%以下であるNBRを含み、該ゴム成分100質量部中、エピクロルヒドリンゴムが25質量部以上40質量部以下であり、かつ、該ゴム層が、硫黄及び/又は硫黄供与剤で架橋され、化学発泡されたものであり、アスカーC硬度で15度以上40度以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写装置、プリンター、静電記録装置等の画像形成装置において使用される導電性ゴムローラ及び転写ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機、静電記録装置等の画像形成装置においては、電圧印加した導電性ゴムローラを電子写真感光体表面に押し当て帯電する接触帯電方式が主流となっており、転写方式も、導電性ゴムローラを用いた接触転写方式が主流となっている。また、カラー出力が可能な電子写真方式の画像形成装置の多くでは、複数色からなるカラー画像を形成するため、感光体上のトナー像を紙等の画像記録体に直接転写せず、中間転写ベルトや転写搬送ベルトにトナー像を重ねて転写(一次転写)した後、この複数色のトナー像を一括して紙等の画像記録体に転写(二次転写)する方法が用いられている。これらの転写工程に対して導電性ゴムローラが配置されているのが一般的である。
【0003】
なお、このような導電性ゴムローラにおいては、電子写真感光体や中間転写ベルトのような相手部材との密着性を高めるために適度に柔軟(低硬度)であることが望まれている。ローラ硬度が高い場合、電子写真感光体等とのニップ幅が小さくなるため、例えば、転写ローラの場合、転写率が低下したり、感光体の表面の摩耗や損傷により画像の欠陥を生じたりしやすい。また、硬度が小さすぎる場合は、柔らかすぎて圧縮永久歪みが大きくなり耐久性が劣るほか、搬送力が強くなりすぎ画像に欠陥を生じやすい。
【0004】
導電性ゴムローラを低硬度化する方法としては、軟化剤、可塑剤等の各種添加剤を用いる方法がある。しかし、軟化剤や可塑剤を添加した導電性ゴムローラを電子写真感光体や中間転写ベルトのような相手部材と接触使用した場合、導電性ゴムローラ内から低分子量の各種添加剤がブリードアウトし、これらの表面に付着し、画像劣化や汚染が起きる問題が生じ易い。そのため、導電性ゴムローラの低硬度化は、ゴム層を発泡ゴムにすることが行われている。なお、ゴム層の発泡は、一般的に化学発泡剤を用いて行われている。
【0005】
近年、このような導電性ゴムローラでは、ゴム層のゴム成分として、電気抵抗が小さいポリマー(極性ゴム)を使用し、必要な電気抵抗値を達成している。なお、極性ゴムによる導電性はカーボンブラック等の導電剤に頼らないため、材料ロットによる抵抗値のばらつきや抵抗値の印加電圧に対する依存性が小さく、極めて扱い易い材料である。
【0006】
なお、このような極性ゴムとして、加硫物の体積固有抵抗が1×107〜3×109Ω・cmであるエピクロルヒドリンゴムがある。エピクロルヒドリンゴムは、エピクロルヒドリン(ECH)の単独重合体、エピクロルヒドリン(ECH)とエチレンオキサイド(EO)の2元共重合体等がある。その組成比率によって抵抗値が変動し、組成中のEO含有量が高いほど抵抗値が低いことが知られている。また、さらにアリルグリシジルエーテル(AGE)を共重合したものは、硫黄、硫黄供与剤の少なくとも一方や過酸化物による架橋が可能であり、脱ハロゲン化反応を伴わないため、耐汚染性や耐金属腐食性に優れた加硫物が得られる。導電性ゴムローラ、特に転写ローラでは、求められている体積固有抵抗は1×108Ω・cmから2×109Ω・cmの場合が多い。ゴム成分としてエピクロルヒドリンゴムを単独あるいは数種ブレンドすることで所定の抵抗値に調整することは可能である。しかし、ゴム成分がエピクロルヒドリンゴムのみである場合は、低温低湿時と高温高湿時で抵抗が大きく異なる、いわゆる環境依存性が大きいという欠点があり、さらに、加工性も悪く、高コストであるといった問題がある。
【0007】
そのため、エピクロルヒドリンゴムに、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム等の不飽和ゴムをブレンドする方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0008】
この特許文献1では、製造された導電性ゴムローラは、カーボンブラック等の導電剤により導電性を付与したゴムローラよりも安定した電気抵抗、耐圧縮性、転写性に優れたローラが得られている。しかしながら、エピクロルヒドリンゴムにブレンドする不飽和ゴムの検討が十分になされておらず、このためブレンドするゴムによっては導電性ゴムローラの環境依存性が大きくなるという問題は解決されていない。
【0009】
このような問題を解決する方法として、EOを48モル%以上含有するエピクロルヒドリンゴムにアクリロニトリル(AN)含量が20質量%以下のNBRをブレンドする方法がある(例えば、特許文献2)。
【0010】
なお、NBRは、エピクロルヒドリンゴム同様、イオン導電性を有し、加硫物の体積固有抵抗は2×109Ω・cmから1×1010Ω・cm程度であることが知られている。
【0011】
特許文献2では、製造される導電性ゴムローラは、電気抵抗の環境依存性が小さく、電気抵抗のばらつきが小さい導電性ゴムローラが得られる。しかしながら、低硬度化に関する十分な記載はなく、導電性ゴムローラの硬度によっては発生する、転写不良や感光体表面の摩耗や損傷による画像不良を解決する方策を示していない。
【0012】
それに対して、EOを50モル%以上含有するエピクロルヒドリンゴムにAN含量が10質量%から20質量%のNBRをブレンドした導電性発泡体を備えた導電性ゴムローラが提案されている(例えば、特許文献3)。
【0013】
この特許文献3に開示された導電性ゴムローラは、転写効率の変化が少なく、かつ十分なニップ幅が得られる導電性ローラが得られる。しかし、この特許文献3には耐汚染性については十分に検討されていず、エピクロルヒドリンゴムの組成によって、感光体や転写ベルトが汚染され、画像不良が発生するという問題が生じる場合がある。
【特許文献1】特許第3768243号公報
【特許文献2】特許第3656904号公報
【特許文献3】特開2006−259131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、上記課題を解決した、電子写真複写装置等の画像形成装置において使用する導電性ゴムローラとして、環境変化等によるローラ抵抗値の変動量が小さく、低硬度かつ汚染のない導電性ゴムローラ、特に転写ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、ゴム成分として特定組成のエピクロルヒドリンゴムと特定組成のNBRを併用し、架橋剤、化学発泡剤等を用いることにより上記課題が達成されること見出し、さらに検討して、本発明に至った。
【0016】
すなわち、本発明は、導電性軸体上にゴム層を有する導電性ゴムローラであって、ゴム層のゴム成分が、エチレンオキサイド含有量50モル%以上60モル%以下かつアリルグリシジルエーテル含有量2モル%以上10モル%以下であるエピクロルヒドリンゴム及びアクリロニトリル含有量16質量%以上20質量%以下であるアクリロニトリルブタジエンゴムを含むものであり、該エピクロルヒドリンゴムが、総ゴム成分100質量部に対して、25質量部以上40質量部以下であり、ゴム層が、硫黄及び/又は硫黄供与剤で架橋されており、かつ、ゴム層が、化学発泡されており、その硬さがアスカーC硬度で15度以上40度以下であることを特徴とする導電性ゴムローラである。
【0017】
また、本発明は、硫黄及び硫黄供与剤からの放出される硫黄が、総量で、総ゴム成分100質量部当たり、0.5質量部以上3.5質量部以下である上記導電性ゴムローラである。
【0018】
さらに、本発明は、化学発泡に使用する化学発泡剤がアゾジカルボンアミド又は4、4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)である上記導電性ゴムローラである。
【0019】
また、本発明は、化学発泡剤の配合量が、総ゴム成分100質量部に対して、2質量部以上10質量部以下である上記導電性ゴムローラである。
【0020】
そして、本発明は、電子写真装置に搭載される転写装置の転写ローラが、上記導電性ゴムローラであることを特徴とする転写ローラである。
【0021】
そして、また、本発明は、電子写真装置に搭載される中間転写ベルト又は転写搬送ベルトの内側に配置される転写ローラが、上記導電性ゴムローラであることを特徴とする転写ローラである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の導電性ゴムローラは、環境変化、長時間通電等によるローラ抵抗値の変動が小さく、低硬度かつ汚染のない導電性ゴムローラである。そのため、本発明の導電性ゴムローラは、電子写真感光体等の像担持体の周りの各種導電性ローラ、特に像担持体表面に形成担持されたトナー像を紙等の記録媒体や転写材に転写させる転写装置の転写ローラとして好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の導電性ゴムローラについて詳述する。
【0024】
本発明では、ゴム成分として、少なくともエピクロルヒドリンゴムとアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)を併用する。
【0025】
エピクロルヒドリンゴムとして、エチレンオキサイド(EO)含有量50モル%以上60モル%以下、アリルグリシジルエーテル(AGE)含有量2モル%以上10モル%以下のエピクロルヒドリン(ECH)−EO−AGE3元共重合ゴム(GECO)を用いる。EO含有量が50モル%未満では、導電性ゴムローラのゴム層に必要な抵抗値が得にくいので、配合割合を多くする必要があり、環境依存性が高くなってしまう。また、EO含有量が60モル%超では、エピクロルヒドリンゴムの配合割合は少量で済み、環境依存性に優れた導電性ゴムローラが得られる。しかし、耐オゾン性に劣るNBRを多く配合することとなり、長時間通電による抵抗変動が大きく、画像不良が発生してしまう。
【0026】
本発明では、ゴム成分の加硫は硫黄および硫黄供与剤の少なくとも一方にて行う。したがって、本発明においては、硫黄、硫黄供与剤による架橋を可能とするため、AGEが共重合されたエピクロルヒドリンゴムであることが必須である。AGEの含有量は、2モル%以上10モル%以下、好ましくは、3モル%以上6モル%以下である。含有量が2モル%より少ない場合、架橋点が少なすぎて、圧縮永久歪みが大きくなり耐久性が劣る他、エピクロルヒドリンゴムの低分子量成分の染み出し等により、感光体や転写ベルト等を汚染してしまう。また、含有量が10モル%より多い場合、架橋点が多すぎて分子の運動性が阻害されしまい導電性ゴムローラの弾性体に必要な電気抵抗値が得にくいため、エピクロルヒドリンゴムの配合割合が必然的に多くなり、環境依存性が高くなってしまう。
【0027】
また、NBRは、アクリロニトリル(AN)含有量が16質量%以上20質量%以下のものを使用する。AN含有量が16質量%未満では、極性基が少なすぎて、所定の抵抗値を得るには、エピクロルヒドリンゴムの配合割合が多くなり、環境依存性が大きくなる。また、AN含有量が20質量%を超えると抵抗の環境依存性が大きくなり好ましくない。
【0028】
本発明において、原料ゴム成分として、他のゴムを併用することも可能であるが、少なくとも上記エピクロルヒドリンゴムと上記NBRを併用する。原料ゴム100質量部に対して、エピクロルヒドリンゴムが25質量部以上40質量部以下で含有されていることが重要である。エピクロルヒドリンゴムが25質量部未満である場合、環境依存性に優れた導電性ゴムローラが得られるものの耐オゾン性に劣るNBRの配合割合が多くなり、長時間通電による抵抗変動が大きく、画像不良が発生してしまう。また、エピクロルヒドリンゴムが40質量部より多い場合、通電耐久性に優れた導電性ゴムローラが得られるものの環境依存性が大きくなる。
【0029】
なお、上記硫黄供与剤とは、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド(TRA)、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール(MDB)、4−4’−ジチオジモルホリン等の熱解離により活性硫黄を放出する化合物である。これらは数種併用して使用することも可能である。なお、AGE等の不飽和基を導入したエピクロルヒドリンゴムの架橋は、硫黄、硫黄供与剤で行うほか、有機過酸化物を用いても可能である。しかしながら、有機過酸化物加硫は酸素存在下での加硫が困難であり、加硫工程が限定される問題がある。また、エピクロルヒドリンゴムは、トリアジンチオール、2,3−ジメチルキノキサリン等でも架橋が可能である。しかし、トリアジン、キノキサリン加硫の場合、金属塩等の副生成物により感光体や転写ベルト等を汚染してしまうほか、スコーチが早く貯蔵安定性に劣るなどの問題がある。なお、NBRの加硫は硫黄、硫黄供与剤や有機過酸化物にて可能であるが、硫黄、硫黄供与剤で行うことが一般的である。
【0030】
硫黄加硫はゴム加硫方法として最も一般的であり、組成物も安価でどのような加硫工程でも製造可能である。
【0031】
硫黄及び硫黄供与剤の配合量としては、導電性ゴムローラの特性を満足すれば、特に制限されない。しかし、硫黄および硫黄供与剤からの放出される硫黄の総量が、総ゴム成分100質量部当たり、0.5質量部以上3.5質量部以下であることが好ましい。硫黄の総量が0.5質量部未満の場合、ゴム層の架橋密度が低すぎて圧縮永久歪みが大きくなり耐久性が劣り、画像不良の原因となる可能性がある。また、3.5質量部を超える場合は、ブルーム等により感光体や中間転写ベルト等の相手部材を汚染する可能性がある。
【0032】
また、本発明の導電性ゴムローラのゴム層は、化学発泡されて、アスカーC硬度で15度以上40度以下、好ましくは20度以上35度以下である発泡ゴム層である。
【0033】
化学発泡とは、ゴム成分に化学発泡剤を配合し、加熱発泡させる方法であり、最も一般的な化学発泡剤は有機発泡剤である。有機発泡剤は、熱の影響下で化学的に分解し、ガスを放出する物質である。この方法では一定の温度範囲で速やかに発生ガスが放出されるため、比較的大きい気泡が形成され、低硬度かつ弾性に優れた導電性ローラを得ることが可能となる。
【0034】
なお、発泡ゴム層の硬度がアスカーC硬度で15度未満の場合、圧縮永久ひずみが大きくなり耐久性が劣るほか、搬送力が強すぎて画像不良を生じてしまう。また、アスカーC硬度が40度より大きい場合、感光体等とのニップ幅が小さすぎて、例えば、転写ローラでは、転写率が低下したり、感光体の表面の摩耗や損傷により画像の欠陥を生じたりする。
【0035】
化学発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、4、4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DTP)などが使用できる。なお、DTPの場合は、分解副生成物として毒性のあるホルムアルデヒドやアミン臭の強いヘキサメチレンテトラミンが発生するので、ADCAあるいはOBSHを使用することが好ましい。
【0036】
化学発泡剤の配合量は、総ゴム成分100質量部当たり、2質量部以上10質量部以下であることが好ましい。配合量が2質量部未満の場合、発生ガス量が少なすぎて所望の硬度に調整するのが困難となる。また、配合量が10質量部を超えると、硬度が低くなりすぎて圧縮永久歪みが大きくなり、画像に欠陥を生じ易くなる。さらに、発泡ゴム層中の化学発泡剤の分解残渣が多くなり、ゴムローラの電気特性を阻害し、例えば、環境依存性が大きくなるといった問題を生じやすい。
【0037】
また、本発明の導電性ゴムローラに使用されるゴム組成物には、一般のゴムに使用されるその他の成分を必要に応じて含有させることができる。例えば、加硫促進剤、カーボンブラック、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、タルク等の充填剤、酸化亜鉛、ステアリン酸等の加硫助剤、尿素等の発泡助剤が挙げられる。なお、カーボンブラックを導電剤として用いた場合、抵抗むらや抵抗の電圧依存性が大きくなり好ましくない。カーボンブラックを配合する場合は、電子導電性が発現し難い品種(SRF級やFT級、MT級等の粒子径が比較的大きく、低ストラクチャーなカーボンブラック)を10質量部以上30質量部以下ゴム補強材として含有することが好ましい。また、第4級アンモニウム塩等のイオン導電剤や、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート(DOP)等の可塑剤、アミン系の老化防止剤等は感光体を汚染するので使用するのは好ましくない。
【0038】
本発明の導電性ゴムローラの製造方法としては、下記のような方法を挙げることができる。
【0039】
まず、上記したゴム成分にカーボンブラック等の補強性充填剤、硫黄、硫黄供与剤及び化学発泡剤、必要により他の添加剤を配合した未加硫の導電性ゴム組成物を調製する。次いで、該導電性ゴム組成物を押し出し機からチューブ状に押し出し、加硫発泡して導電性発泡ゴムチューブを得、そのチューブを所定の長さに切断した後、導電性軸体を挿入し、必要により、さらに2次加硫して、導電性ゴムローラとする。
【0040】
あるいは、導電性軸体を収めた円筒状金型に、上記未加硫の導電性ゴム組成物を注入し、金型内で加硫発泡させ、金型から取り出した後、必要により、さらに2次加硫して、導電性ゴムローラとする。
【0041】
クロスダイを備える押し出し機で導電性軸体と共に上記未加硫の導電性ゴム組成物を押し出し、その後、加硫発泡し、導電性軸体の両端の必要長さが裸出するようにゴム層をトリミングして、導電性ゴムローラとする。
【0042】
なお、導電性軸体は、少なくとも表面が導電性であり、導電性ゴムローラとして使用されるものであればいずれでも使用できる。また、その形状も、円柱状、円筒状のいずれでも良い。すなわち、SUS、真鍮、鉄、ニッケル、銅等の棒、パイプが適宜使用でき、また、導電性の樹脂製の棒、パイプも十分な強度があれば使用できる。なお、電子写真装置等の画像形成装置の感光体の周りで使用する導電性ゴムローラ用の導電性軸体としてはその外径が2mm以上15mm以下、好ましくは4mm以上10mmであることが望ましい。
【0043】
さらに、導電性軸体にはニッケル等の金属メッキをしておくことも可能であり、接着剤を塗布することも好ましい。
【0044】
上記した製造方法で製造された導電性ゴムローラは、さらに、ゴム層が研磨されて、所定の外径あるいは形状とされて、機能が調整さることもある。また、必要により、ゴム層表面に表面層を設けることもできる。ゴム層表面からの低分子量物のブリードを防ぐために紫外線等のエネルギー線や熱処理で表面を改質することも可能である。
【0045】
本発明では、製造が容易であり、かつ安価に製造できることから、発泡ゴムのチューブに導電性軸体を挿入する方法により、導電性ゴムローラを製造することが望ましい。以下にその方法を示す。
【0046】
未加硫の導電性ゴム組成物を押出し機によりチューブ状に2m/分から10m/分の間の速度で押出し、加硫缶や熱風炉で140℃から160℃の間で、20分から50分の間加熱し、導電性の発泡ゴム(弾性体)チューブを作成する。次いで、所定長さに切断した導電性ゴムチューブに接着剤を塗布した導電性軸体を挿入して、更に150℃から200℃で、10分から60分の間加熱することにより、ゴム層の発泡加硫を完結すると共に導電性軸体と導電性ゴムチューブを接着する。この導電性軸体に導電性発泡ゴム層が接着されたゴムローラを研磨砥石GC#60からGC#120を取り付けた研磨機にセットし、ローラ回転速度1500RPMから2000RPM、送り速度300mm/分から700mm/分で研磨する。なお、この後、必要に応じてゴム層の外周上に樹脂等の表面層を設けることも好ましい。
【0047】
本発明の導電性ゴムローラは、電子写真複写装置、プリンター、静電記録装置等の画像形成装置において、感光体周りに使用される帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラや中間転写ベルトまたは転写搬送ベルトの内側に配置される転写ローラ等に好適に使用できる。中でも、感光体等の像担持体に電子写真プロセス、静電記録プロセス等の作像手段で形成担持させたトナー像による可転写画像を紙等の被転写材に転写させる画像形成装置に搭載される転写ローラとして好ましく使用できる。
【実施例】
【0048】
以下に実施例及び比較例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0049】
なお、各実施例及び比較例で使用した資材は以下の通りである。
1)原料ゴム
・エピクロルヒドリンゴム
GECO1:ECH−EO−AGE3元共重合ゴム「EpichlomerCG102」(商品名、ダイソー株式会社製、共重合比率(モル%)=42:54:4)
GECO2:ECH−EO−AGE3元共重合ゴム「EPION301」(商品名、ダイソー株式会社製、共重合比率(モル%)=23:73:4)
GECO3:ECH−EO−AGE3元共重合ゴム「EpichlomerCG105」(商品名、ダイソー株式会社製、共重合比率(モル%)=48:48:4)
ECO:ECH−EO2元共重合ゴム「EpichlomerC」(商品名、ダイソー株式会社製、共重合比率(モル%)=50:50)
・アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)
NBR1:AN含有量18質量%のNBR「Nipol DN401LL」(商品名、日本ゼオン株式会社製)
NBR2:AN含有量15質量%のNBR「Nipol DN407」(商品名、日本ゼオン株式会社製)
NBR3:AN含有量22質量%のNBR「N260S」(商品名、JSR株式会社製)
【0050】
2)補強性充填剤
・カーボンブラック(FT級):「HTC#20」(商品名、新日化カーボン株式会社製、トルエン着色透過度55%、よう素吸着量19mg/g、DBP吸油量29ml/100g)
【0051】
3)硫黄/硫黄供与剤
・S:イオウ「サルファックスPMC」(商品名、鶴見化学工業株式会社製)
・DM:ジベンゾチアジルジスルフィド「ノクセラーDM」(商品名、大内新興化学工業株式会社製)、(加硫促進剤)
・TET:テトラエチルチウラムジスルフィド「ノクセラーTET」(商品名、大内新興化学工業株式会社製)、(加硫促進剤)
【0052】
4)発泡剤類
・ADCA:アゾジカルボンアミド「ビニホールAC#LQ」(商品名、永和化成株式会社製)、発泡剤
・OBSH:4、4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)「ネオセルボン1000S」(商品名、永和化成株式会社製)、発泡剤
・尿素:「セルペーストA」(商品名、永和化成株式会社製)、発泡助剤
【0053】
5)その他
・酸化亜鉛:酸化亜鉛2種(ハクスイテック株式会社製)、加硫促進助剤
・ステアリン酸:「ルナックS20」(商品名、花王株式会社製)、加硫促進助剤
【0054】
以下の実施例、比較例で得られた導電性ゴムローラについて、ローラ抵抗、同環境依存性、通電耐久、汚染性及びローラ硬度を、下記にて測定評価した。
【0055】
<ローラ抵抗及び同環境依存性>
導電性軸体の両側に片側4.9Nの荷重がかかるようにして、導電性ゴムローラを外径30mmのアルミニウム製のドラムに圧着し、0.5Hzで回転させた。この状態で、導電性軸体とアルミニウムドラムとの間に1000Vの電圧を印加し、23℃/55%RH環境(N/N環境)下で回路に流れる電流を測定し、オームの法則から抵抗値を算出し、その値を当該ローラの抵抗R0とした。なお、この時に測定した電流値は導電性ゴムローラ1回転分の平均値を取った。
【0056】
上記測定を、10℃/15%RH(L/L)環境及び32℃/80%RH(H/H)の環境でも行い、それぞれの抵抗値RLL及びRHHを求めた。次いで、これらの抵抗値の比(RLL/RHH)の対数の絶対値を求め、この値を環境変動桁とした。この環境変動桁から下記の評価基準に基づき、環境依存性を評価した。
○:環境変動桁≦1.3 (環境依存性小)
△:1.3<環境変動桁≦1.4(環境依存性中)
×:1.4<環境変動桁 (環境依存性大)
【0057】
<通電耐久>
上記ローラ抵抗RLLを測定した導電性ゴムローラをヒューレットパッカード製のレーザープリンター「レーザージェット1018」(商品名)に転写ローラとして組込み、N/N環境下で、10万枚通紙耐久試験を行った。その後、導電性ゴムローラをレーザープリンターから取り外し、L/L環境にて24時間置いた後に、再びN/N環境下でローラ抵抗を測定し、通電耐久後のローラ抵抗RTとした。ローラ抵抗値の使用前と通電耐久後の比(RT/RLL)の対数の絶対値を耐久変動桁とした。この耐久変動桁から下記評価基準に基づき、通電耐久を評価した。なお、この耐久変動桁が小さいほど通電耐久が良好であると判断される。
○:耐久変動桁≦0.2 (通電耐久最良)
△:0.2<耐久変動桁≦0.3 (通電耐久良好)
×:0.3<耐久変動桁 (通電耐久劣)
【0058】
<汚染性>
導電性ゴムローラをレーザープリンター「レーザージェット1018」(商品名)の電子写真感光体に接触させ、導電性軸体の両端に各9.8Nの荷重を加えた状態で、40℃95%RHの環境下に120時間置いた。その後、荷重を外し、この電子写真感光体をカートリッジに戻し、ベタ黒で30枚印字した。カートリッジに感光体を戻す前に感光体へ表面を目視により観察した結果と、得られた画像を目視にて観察した結果から、汚染性を下記基準で評価した。
○:電子写真感光体に付着物が無く、得られた画像も良好
△:電子写真感光体に僅かに付着物があるが、得られた画像は実用可能
×:電子写真感光体に付着物があり、得られた画像も実用不可
【0059】
<ローラ硬度>
導電性ゴムローラを軸受で受けた状態で、ゴム層表面に総圧500gの荷重とともにアスカーC型スプリング式硬さ試験機(商品名、高分子計器株式会社製)の押し針を押し付けてアスカーC硬度を測定した。なお、測定は中央部、両端から5cmの箇所についてローラを120度回転させて測定し、3×3の9箇所の平均値を当該ローラのローラ硬度とした。
【0060】
実施例1
原料ゴムとして、GECO1(EO 54モル%、AGE 4モル%)30質量部とNBR1(AN 18質量%)70質量部を用いた。この原料ゴムに対して、カーボンブラック30質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸1質量部、S 1.5質量部、DM 1.5質量部、TET 1.0質量部、ADCA 4.0質量部、OBSH 1.0質量部及び尿素1.0質量部を用いた。なお、この配合での総放出硫黄量は1.7質量部であった。また、総発泡剤量は5.0質量部であった。
【0061】
上記原材料をオープンロールで混練を行い、未加硫のゴム組成物を得た。この未加硫のゴム組成物を押出し機でチューブ状に押出した後、加硫缶にて160℃で40分間発泡加硫を行い、発泡ゴムチューブを作製した。なお、発泡後のチューブの内径は約5.0mmであり、外径は約18mmであった。長さ24cmに切断したチューブにφ6mmの導電性軸体(SUS製、表面にホットメルト接着剤塗布)を挿入し、熱風炉にて180℃で30分間加熱して、導電性軸体に発泡ゴム中部を固定して、ローラ状の成形体を得た。この成形体を外径が15mmになるように研磨して、導電性ゴムローラを得た。
【0062】
得られた導電性ゴムローラについて、上記評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
比較例1
GECO1に換えて、GECO2(EO 73モル%、AGE 4モル%)23質量部を用い、NBR1を77質量部に増やした以外は、実施例1と同様にして導電性ローラを得た。得られた導電性ゴムローラについて、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0064】
比較例2
GECO1に換えて、GECO3(EO 15モル%、AGE 4モル%)35質量部を用い、NBR1を65質量部に減らした以外は、実施例1と同様にして導電性ローラを得た。得られた導電性ゴムローラについて、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0065】
比較例3
GECO1に換えて、ECO(EO 50モル%、AGE 0モル%)35質量部を用い、NBR1を65質量部に減らした以外は、実施例1と同様にして導電性ローラを得た。得られた導電性ゴムローラについて、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0066】
比較例4
NBR1に換えて、NBR2(AN 15質量%)58質量部を用い、GECO1を42質量部に増やした以外は、実施例1と同様にして導電性ローラを得た。得られた導電性ゴムローラについて、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0067】
比較例5
NBR1に換えて、NBR3(AN 22質量%)78質量部を用い、GECO1を22質量部に減らした以外は、実施例1と同様にして導電性ローラを得た。得られた導電性ゴムローラについて、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
表1に見られるように、エピクロルヒドリンゴム及びNBRのそれぞれの重合組成は本発明の範囲内が適している。
【0070】
すなわち、EO含有量が比較例1では、環境依存性に優れた導電性ゴムローラが得られるものの、NBRの配合が多く必要で、通電耐久に劣る。また、EO含有量が少ない比較例2は、通電耐久に優れた導電性ゴムローラが得られるものの、エピクロルヒドリンゴムが多く配合することが必要で、環境依存性に劣る。AGE含有量が範囲外である比較例3は、架橋点の数が少なすぎて、耐久性に劣る他、感光体を汚染してしまう。
【0071】
AN含有量が少ない比較例4は、イオン導電性を発現するのに必要なニトリル基が少なすぎて、所定の抵抗値を得るために、エピクロルヒドリンゴムの配合を多くすることになり、環境依存性が大きくなる。また、AN含有量が多い比較例5では、通電耐久、環境依存性ともに大きくなり、好ましくない。
【0072】
実施例2〜3、比較例6〜7
GECO1/NBR1の使用量をそれぞれ25質量部/75質量部(実施例2)、40質量部/60質量部(実施例3)、20質量部/80質量部(比較例6)、45質量部/55質量部(比較例7)とする以外は、実施例1と同様にして導電性ローラを得た。得られた導電性ゴムローラについて、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
表2より、エピクロルヒドリンゴムの配合量として、本発明の範囲が適していることがわかる。すなわち、エピクロルヒドリンゴムの配合量が少ない比較例6は、環境依存性に優れた導電性ゴムローラが得られるものの耐オゾン性に劣るNBRの配合割合が多く、長時間通電による抵抗変動が大きい。また、エピクロルヒドリンゴムの配合量が多い比較例7は通電耐久性に優れた導電性ゴムローラが得られるものの環境依存性が大きくなる。
【0075】
実施例4、5
発泡剤の使用量を表3に示すように変更する以外は実施例1と同様にして、導電性ゴムローラを得た。得られた導電性ゴムローラについて、実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
【0076】
比較例8
発泡剤及び硫黄の使用量を表3に示すように変更する以外は実施例1と同様にして、導電性ゴムローラを得た。得られた導電性ゴムローラについて、実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
【0077】
【表3】

【0078】
表3より、発泡ゴム層の硬さ(ローラ硬度)は、本発明の範囲が適していることがわかる。すなわち、ローラ硬度が本発明の範囲外である比較例8では、耐久性が劣る他、感光体の汚染がある。
【0079】
実施例6〜10
硫黄/硫黄供与剤、発泡剤類の使用量を表4に示すように変更する以外は実施例1と同様にして、導電性ゴムローラを得た。得られた導電性ゴムローラについて、実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
【0080】
【表4】

【0081】
表4に見られるように、硫黄、硫黄供与剤から放出される硫黄の総量(総放出硫黄)が、原料ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以上3.5質量部以下が好ましい。すなわち、総放出硫黄が0.5質量部未満の実施例8では、ゴムの架橋密度が小さすぎて長時間通電による抵抗変動が大きくなる傾向にあり、また、汚染性も実用可能な画像が得られるものの、僅かではあるが感光体に付着物が残り、評価は△となった。総放出硫黄が3.5質量部を超える実施例9では、環境依存性、通電耐久に優れた導電性ゴムローラが得られたが、実用可能な画像が得られるものの、僅かではあるが硫黄、硫黄供与剤に起因する付着物が感光体表面に残り、汚染性は△であった。
【0082】
表4に見られるように、化学発泡剤の配合量は、原料ゴム成分100質量部に対して、2質量部以上10質量部以下であることが好ましい。配合量が10質量部を超える実施例10では、ゴム層中に化学発泡剤の分解残渣が多くなり、環境依存性が大きくなる傾向にあるほか、実用可能な画像が得られるものの、僅かではあるが化学発泡剤の分解残渣に起因する付着物が感光体表面に残り、汚染性評価は△であった。
【0083】
以上に示したように、本発明の導電性ゴムローラは、環境変化や長時間通電等によるローラ抵抗値の変動量が小さく、低硬度かつ汚染性のない導電性ゴムローラであり、電子写真感光体等の像担持体の周りの各種導電性ローラとして好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸体上にゴム層を有する導電性ゴムローラであって、
ゴム層のゴム成分が、エチレンオキサイド含有量50モル%以上60モル%以下かつアリルグリシジルエーテル含有量2モル%以上10モル%以下であるエピクロルヒドリンゴム及びアクリロニトリル含有量16質量%以上20質量%以下であるアクリロニトリルブタジエンゴムを含むものであり、
該エピクロルヒドリンゴムが、総ゴム成分100質量部に対して、25質量部以上40質量部以下であり、
ゴム層が、硫黄及び/又は硫黄供与剤にて架橋されており、
かつ、ゴム層が、化学発泡されており、その硬さがアスカーC硬度で15度以上40度以下である
ことを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項2】
硫黄及び硫黄供与剤から放出される硫黄が、総量で、総ゴム成分100質量部当たり0.5質量部以上3.5質量部以下である請求項1に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項3】
化学発泡に使用する化学発泡剤が、アゾジカルボンアミド又は4、4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)である請求項1又は2に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項4】
化学発泡剤の配合量が、総ゴム成分100質量部に対して、2質量部以上10質量部以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項5】
電子写真装置に搭載される転写装置の転写ローラが、請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性ゴムローラであることを特徴とする転写ローラ。
【請求項6】
電子写真装置に搭載される中間転写ベルト又は転写搬送ベルトの内側に配置される転写ローラが、請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性ゴムローラであることを特徴とする転写ローラ。

【公開番号】特開2008−216462(P2008−216462A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51531(P2007−51531)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】