説明

導電性ゴムローラ

【課題】クラウン形状またはテーパー形状の導電性ゴム層を有し、導電性ゴム層の外側に表面層を形成する必要がなく、低硬度で軸方向の抵抗値ムラが小さい導電性ゴムローラを提供する。
【解決手段】導電性軸芯体上に導電性ゴム層が設けられた導電性ゴムローラにおいて、該導電性ゴム層は内層と外層からなるクラウン形状またはテーパー形状を有する二層構造であり、該内層は発泡ゴムからなり、該外層は少なくともエピクロロヒドリン系ゴムを含むゴム成分からなるものであって、23℃/55%RH環境における該内層の体積固有抵抗値をRi、該外層の体積固有抵抗値をRoとした場合に、Ro/Riの値が0.01以上100以下であることを特徴とする導電性ゴムローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機・レーザビームプリンタ等の電子写真プロセスに使用される導電性ゴムローラに関する。
【背景技術】
【0002】
静電式複写機、レーザープリンター、ファクシミリなどの種々の電子写真装置には、導電性ゴムローラを始めとする各種導電性ゴム部品が使用されている。これらの導電性ゴムローラは、装置の高速化、良画質化に応えるために、当接により一様なニップ幅を保つことが要求され、抵抗値や硬度などの各種特性が均一であることが望まれている。近年更なる高画質化が進み、例えばローラ表面は非発泡層あるいは微細発泡層を有していながら、ローラ硬度は低硬度化するといった、単一ゴム層からなる導電性ゴムローラでは対応が困難な要求がなされる場合がある。
【0003】
このような高度な要求に対応するために、二層以上の層構成からなる多層構造の導電性ゴムローラについて、従来から数多くの検討がなされている。多層構造の導電性ゴムローラの製造方法としては、押出機を用いた二層同時成型が挙げられる(例えば特許文献1)。二層同時成型は、複数層を同時一体的に押出し形成することにより工数の簡素化が図られる。例えば押出し成型後の加硫、発泡工程にマイクロ波を用いた連続加硫を行った場合、更に効率的な生産が可能である。
【0004】
さらに多層構造の導電性ゴムローラを電子写真装置用の導電性ゴムローラとして用いた場合、均一なニップ幅を確保するためにクラウン形状やテーパー形状にする検討もなされている。しかし多くの場合、抵抗値などの特性が軸方向でムラが生じやすくなるという観点から、最表層よりも内側の層でクラウン形状をつくり、その上に塗工やチューブ被覆等の手段を用いて、均一な膜厚を有する最表層を形成する必要があった。そのため、多くの場合クラウン形状またはテーパー形状の多層構造を有する導電性ゴムローラを得るためには、軸体の外側にベースゴム層を形成し、その外側にクラウン形成層を形成し、さらにその外側に均一な膜厚を有する表面層を形成する必要があった(例えば特許文献2)。塗工などの表面層を形成する工程は工程そのものが複雑になりやすく、そのため歩留まりの悪化や設備の導入などの理由から十分に低コストな導電性ゴムローラを得ることが難しくなりやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−238923号公報
【特許文献2】特開2005−274768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、クラウン形状またはテーパー形状の導電性ゴム層を有し、導電性ゴム層の外側に表面層を形成する必要がなく、低硬度で軸方向の抵抗値ムラが小さい導電性ゴムローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は以下の本発明〔1〕〜〔4〕によって解決される。
〔1〕導電性軸芯体上に導電性ゴム層が設けられた導電性ゴムローラにおいて、該導電性ゴム層は内層と外層からなるクラウン形状またはテーパー形状を有する二層構造であって、該内層は発泡ゴムからなる層であり、該外層は少なくともエピクロロヒドリン系ゴムを含むゴム成分からなる層であって、23℃/55%RH環境における該内層の体積固有抵抗値をRi、該外層の体積固有抵抗値をRoとした場合に、Ro/Riの値が0.01以上100以下であることを特徴とする導電性ゴムローラ。
〔2〕前記クラウン形状またはテーパー形状のクラウン量またはテーパー量(前記導電性ゴムローラの中央部の外径と端部の外径の差)が20μm以上500μm以下であることを特徴とする前記〔1〕に記載の導電性ゴムローラ。
〔3〕前記エピクロロヒドリン系ゴムは、エピクロロヒドリン/エチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの三元共重合体であることを特徴とする、前記〔1〕または〔2〕に記載の導電性ゴムローラ。
〔4〕前記導電性ゴム層が、マイクロ波による連続加硫工程によって得られたものであることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の導電性ゴムローラ。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、クラウン形状またはテーパー形状の導電性ゴム層を有し、導電性ゴム層の外側に表面層を形成する必要がなく、低硬度で軸方向の抵抗値ムラが小さい導電性ゴムローラが提供される。この導電性ゴムローラは電子写真用装置用のローラとして用いられ、特には転写ローラなどに好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の導電性ゴム層がクラウン形状である導電性ゴムローラの概略構成図である。
【図2】本発明の導電性ゴム層がテーパー形状である導電性ゴムローラの概略構成図である。
【図3】本発明の導電性ゴムローラの製造に使用される加硫装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の導電性ゴムローラは導電性軸芯体上に導電性ゴム層が設けられた導電性ゴムローラであって、該導電性ゴム層は内層と外層の二層構造で構成されており、該導電性ゴム層はクラウン形状またはテーパー形状を有するものである。
【0011】
図1および図2は、本発明の導電性ゴムローラの一例の軸方向断面図を示す。導電性軸芯体61の周りに、発泡ゴムからなる内層62が形成され、さらにその外周にゴム成分からなる外層63が形成されており、外層63はクラウン形状またはテーパー形状に研削されている。
〔内層〕
内層を形成する導電性発泡ゴムの原料組成物は、特に限定されない。アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム等に、カーボンブラックや金属酸化物等の導電材を配合したものを用いることができる。アクリロニトリルブタジエンゴムやエピクロルヒドリンゴムはイオン導電性を有しているので、カーボンブラック等の導電材を用いることなく所望の導電性を得られる場合がある。イオン導電性ゴムを用いた場合、カーボンブラック等の導電剤を用いた場合と比較して、抵抗値のムラやロットばらつきなどを小さくすることができるため、アクリロニトリルブタジエンゴムやエピクロルヒドリンゴムなどのイオン導電性ゴムを用いることが好ましい。
〔外層〕
外層を形成する導電性ゴムの原料組成物は、少なくともエピクロロヒドリン系ゴムを含むゴム成分からなるもので構成される。エピクロルヒドリンゴムはイオン導電性を有しており、クラウン形状やテーパー形状のように外層の厚さが軸方向で異なる場合でも抵抗値が大きく変化することがない。ゴム成分としては、必要に応じてアクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム等を併用することができる。エピクロロヒドリン系ゴムとしては、エピクロロヒドリン/エチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの三元共重合体であることが好ましい。
【0012】
外層を形成する導電性ゴムは発泡ゴムであっても非発泡ゴムであっても良く、使用目的にあわせて適宜選択すればよく、発泡ゴムを用いた場合の発泡セル径に関しても使用目的にあわせて適宜選択すればよい。
【0013】
内層と外層の厚さについては特に限定されるものではなく、使用目的に応じて適宜選択すればよい。内層が薄くなりすぎると発泡ゴムとしての機能が不十分となりやすく、導電性ゴムローラの硬度が高くなり易くなる。このため、内層の厚さは、内層と外層の合計厚さに対して、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上である。
〔クラウン形状またはテーパー形状〕
本発明の導電性ゴムローラはローラの中央部の外径が端部の外径よりも大きいクラウン形状またはテーパー形状である。クラウン形状は軸方向の断面図において、中央部から両端部にかけて中央部の外径が最大となるなめらかな曲線を有する形状である。曲線は特に限定されず、円弧や二次曲線等必要に応じて適宜選択すればよい。テーパー形状はゴム部の中央部に外径が一定の領域と、その両端からゴム端部にかけて直線的に外径が小さくなる領域を有する形状である。中央部の外径が一定の領域はゴム部全長に対して10%以上80%以下が好ましい。この範囲内であれば、均一なニップ幅を確保することが容易である。
【0014】
クラウン量またはテーパー量(導電性ゴムローラの中央部の外径と端部の外径の差)は、導電性ゴムローラの硬度や電子写真装置にセットした場合の押し圧等によって適宜選択すればよい。クラウン量またはテーパー量が小さすぎると中央部のニップ幅が小さくなりやすくなり、クラウン量またはテーパー量が大きくなりすぎると両端部の当接が不十分になりやすくなる。このため、クラウン量またはテーパー量は、好ましくは20μm以上500μm以下、より好ましくは30μm以上400μm以下、さらに好ましくは40μm以上300μm以下である。
【0015】
本発明の導電性ゴムローラは、内径、外径、内層厚さ及び外層厚さが一様な2層構造の導電性ゴムチューブを導電性軸芯体に圧入して、外層のみを研磨することによってクラウン形状またはテーパー形状の導電性ゴムローラを得ている。
〔内層と外層の抵抗値〕
内層と外層の抵抗値は、23℃/55%RH環境で内層の体積固有抵抗値をRi、外層の体積固有抵抗値をRoとすると、Ro/Riの値が0.01以上100以下であることが必要である。Ro/Riの値がこの範囲を逸脱すると、導電性ゴムローラがクラウン形状またはテーパー形状であり、外層の厚さが軸方向で均一ではないために、軸方向の抵抗値ムラが大きくなりすぎてしまうという問題が生じやすくなる。尚、軸方向の抵抗値ムラは1.5以下が好ましい。
〔硬度〕
本発明の導電性ゴムローラの硬度はアスカーC型の硬度計で10度〜40度の範囲であることが好ましい。硬度が10度以上であれば圧縮永久歪が大きくなりすぎることがなく、また40度以下であれば十分なニップ幅を得ることができる。
[導電剤]
本発明では、内層の導電性発泡ゴム層に、カーボンブラック等の電子導電剤やLiCIO4等のイオン導電剤を必要により配合することが可能である。
【0016】
導電剤として、公知の導電性物質を用いることが可能である。例えば、電子導電剤として、導電性カーボンブラック、TiO2、SnO2、ZnO、SnO2とSbO3の固溶体等の金属酸化物、Cu、Agなどの金属粉末等、また、イオン導電剤として、LiClO4、NaSCNなどが挙げられる。導電剤はゴム原料に単独で若しくは複数併用で添加し分散させる。なお、その種類、使用量は、必要な導電性から適宜に決定する。また、発泡ゴム層の導電性を得るために、ゴム原料の主鎖あるいは側鎖に極性を有する官能基を導入することによっても可能である。
【0017】
なお、電子導電剤としては、少量の使用で十分な導電性を得ることができることから導電性カーボンブラックを使用することが好ましく、その使用量は通常上記ゴム原料100質量部に対して5質量部以上95質量部以上が適当である。
【0018】
また本発明では、外層の導電性ゴム層に上記イオン導電剤を用いることが可能である。
本発明では、内層および外層の導電性ゴム層に炭酸カルシウム等の充填剤、老化防止剤を必要により配合することが可能である。
[導電性軸芯体]
導電性軸芯体は導電性を有し、導電性ゴムロールの表面が当接される部材に対して、軸芯体上に形成される外層の表面を密着支持する機能を有しているものであればいずれでもよい。材質としては、例えば、鉄、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル等の金属やその合金を挙げることができる。また、これらの表面に耐傷性付与を目的として、導電性を損なわない範囲で、メッキ処理等を施してもよい。更に、導電性軸芯体として、樹脂製の基材の表面を金属等で被覆して表面導電性としたものや、導電性樹脂組成物から製造されたものも使用可能である。
[導電性ゴムローラの製法]
本発明の導電性ゴムローラは、以下のようにして製造できる。二層構造の導電性ゴムチューブの製造に用いる加硫発泡装置の概要を図3に示す。
【0019】
上記した内層用と外層用の原料組成物をそれぞれ、バンバリーミキサー、ニーダー等の密閉式混練機で混練した後、オープンロール、リボン成形分出し機によりリボン状に成形する。これらを二層同時押出機11に投入して、二層同時に円筒状に押し出し、未加硫のチューブを製造する。
【0020】
[発泡剤]
本発明では、内層の発泡ゴム層形成のために発泡剤が使用される。その発泡剤としては、p−トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)系、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)系等の有機発泡剤が使用可能であるが、OBSHを用いることが好ましい。発泡剤は、発泡ゴム層が必要とする弾性度を達成するために適宜の量とするが、ゴム原料100質量部に対して1質量部以上20質量部以下が適当である。
[発泡助剤]
発泡剤の分解温度は、尿素、酸化亜鉛等を発泡助剤として加えて低下させることもできる。この発泡助剤としては、尿素系化合物;酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、サリチル酸、ステアリン酸等を主成分とする化合物などが挙げられ、発泡剤に対応して選択して使用する。
[加硫剤]
加硫剤としては、硫黄、金属酸化物等が使用可能であり、特に硫黄が好ましい。なお、加硫剤は、導電性ゴム層が必要とする弾性度及び強度を達成するために適宜の量とするが、ゴム原料100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下が適当である。
[加硫促進剤]
本発明では、加硫剤とともに加硫促進剤を使用することが好ましい。かかる加硫促進剤としては各種知られているが、チアゾール系加硫促進剤やチウラム系加硫促進剤を使用することができる。そして、チアゾール系加硫促進剤とチウラム系加硫促進剤を併用するとCセット性に効果があることが一般的に知られているので、併用することが好ましい。
【0021】
チアゾール系加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等があるが、チウラム系加硫促進剤との併用に賞用されるジベンゾチアジルジスルフィドが好ましい。また、チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。スコーチ性に優れたテトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドを使用することが好ましい。なお、その他のチアゾール系加硫促進剤及びチウラム系加硫促進剤においても使用条件を整えることで使用可能である。
〔押出機〕
二層同時押出機は、外層用のスクリュー径70mmの押出機(不図示)と内層用のスクリュー径60mmの押出機11をクロスヘッドで接続したものである。押出機のスクリュー径に特に制限はなく、所望の吐出量が得られるように適宜選択して用いればよい。内層、外層の肉厚は、押出機の回転数を調節して所望の肉厚になるように調整される。押出機の口金は、チューブの内径・外径を考慮して適宜調整される。
【0022】
〔加硫装置〕
押出機により製造されたチューブはマイクロ波の加熱による加硫装置(マイクロ波加硫装置、UHF)12に連続的に導入される。このUHF12で未加硫のチューブは加熱され、加硫と発泡が行われる。マイクロ波による連続加硫を用いることによって、加硫チューブの内外径が一定であり、かつ加硫毎のばらつきも小さくすることができるため、内層および外層の厚さを一定に保つことができる。このUHF12の加熱区間(マイクロ波の有効照射区間)は2m以下であることが好ましい。加熱区間が2mを超えても加硫発泡には問題ないが、装置が大きくなるだけであり、広大な設置場所が必要になることや経済性が悪くなることから好ましくない。UHF12の出力は1.0kW以上2.0kW以下が適当である。UHF12の出力が1.0kW以上であれば未加硫未発泡であるチューブを十分に加硫・発泡することができ、また、2.0kW以下であれば加熱が早すぎることがなく、加硫や発泡のコントロールが容易に制御でき、チューブの円筒状を保つことができる。
【0023】
UHF12で加硫発泡されたチューブは、UHF12に続く熱風加硫装置(HAV)13に搬送され、加硫が完結されて、発泡ゴムチューブが得られる。なお、HAV13に送られる熱風の温度は、原料組成物の組成、発泡倍率、加硫度等により異なるが、通常100℃以上250℃以下とするのが適当である。また、送風量についても、原料組成物の組成、発泡倍率、加硫度等により適宜に設定する。なお、発泡ゴムチューブの内層と外層を合わせた厚みは、導電性ゴムローラの使用目的により変わるが、通常2mm以上20mm以下、好ましくは2.5mm以上15mm以下、特に好ましくは3mm以上12mm以下である。
【0024】
尚、押出機からの未加硫チューブをUHF12内やHAV13内を搬送する際には、フッ素樹脂を被覆したベルトやコロを使用することが好ましい。これによって、加硫が完了していないチューブがベルトやコロに付着してチューブ表面が剥落することを防止し、チューブの歪みを防止することができる。
【0025】
このようにして得られた発泡ゴムチューブは、引き取り機14により引き取られ、定尺切断機15に送られ、所定長さに切断される。更に、切断等で生じた歪みは必要に応じて取り除かれる。所定長さに切断された発泡ゴムチューブは、その内側に軸芯体が圧入され、ローラ状の成形体とされる。軸芯体の表面には、圧入前に必要に応じて接着剤が塗布される。
【0026】
ローラ状の成形体は、その発泡ゴムチューブの表面が砥石で研磨されて、使用目的に応じたクラウン形状またはテーパー形状とされる。研磨機の研磨砥石の幅は発泡ゴムチューブの全長よりも幅広であることが好ましく、研磨砥石の回転速度は例えば2000rpm程度である。
【0027】
導電性ゴム層の体積固有抵抗値、導電性ゴムローラの軸方向の電気抵抗値ムラ、硬度、及び画像は後述の方法により評価される。
〔電子写真装置〕
本発明の導電性ゴムローラは電子写真装置の転写部で用いる転写ローラとして使用することができる。
【実施例】
【0028】
以下に実施例及び比較例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。評価条件は以下の通りである。
〔1.体積固有抵抗値〕
発泡剤を添加していない内層用ゴム組成物と外層用ゴム組成物を、それぞれ150mm×150mm×2mmの金型を使用し、160℃で20分間加硫してシートを製造する。この厚さ2mmの加硫シートを用いて、東亜電波工業(株)極超絶縁計SM−8220により、23℃/55%RH(N/N)の環境下で100Vの電圧を印加して内層の体積固有抵抗値Riと外層の体積固有抵抗値Roを測定する。
〔2.軸方向抵抗値ムラ〕
導電性ゴムローラを、23℃/55%RHの(N/N)環境下で48時間置いた後、軸芯体の端部に各4.9Nの荷重が掛かるようにして、外径30mm、長さ228mmで軸方向(長さ方向)に均等に6分割されたステンレス製のドラムに圧着させる。次いで、ステンレス製ドラムを30rpmで回転させ、それにつれて導電性ゴムローラも従動回転させる。その状態で、軸芯体とステンレスドラム間に50Vの電圧を印加して6分割された領域それぞれの電気抵抗を測定する。6部分の抵抗値の中から最大値を最小値で除した値を軸方向抵抗値ムラとする。
【0029】
〔3.硬度〕
導電性ゴムローラのゴム層表面の任意の場所を周方向に90°毎に4箇所、軸方向で3箇所、アスカーC型の硬度計(4.9N荷重)でアスカーC硬さを測定する。
〔4.クラウン量またはテーパー量〕
導電性ゴムローラの導電性ゴム部分の中央部の外径と、導電性ゴム部分の両端から2mm内側の外径の平均値との差をクラウン量またはテーパー量とする。
〔5.画像評価〕
導電性ゴムローラをカラーレーザープリンター(カラーレーザージェット CP3525dn ヒューレット・パッカード社製)の一次転写ローラとしてセットし、L/L環境下(15.0℃、10%RH)でイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの何れか単色のベタ画像を印刷する。濃度ムラのレベルが、実用上問題ないものを○、○よりもレベルは劣るが実用上問題ないものを△、実用上使用不可能であるものを×と表示する。
【0030】
〔6.原料〕
各実施例及び比較例で使用したゴム材料は以下の通りである。
・NBR:アクリロニトリルブタジエンゴム「ニポールDN401LL」(商品名、日本ゼオン株式会社製)
・GECO:エピクロロヒドリンゴム「EPION‐301」(商品名、ダイソー株式会社製)
・EPDM:エチレンプロピレンゴム「エスプレン505A」(商品名、住友化学工業株式会社製)
・酸化亜鉛:酸化亜鉛2種(商品名、ハクスイテック株式会社製)
・ステアリン酸:ルナックS(商品名、花王株式会社製)
・HAFカーボンブラック:カーボンブラック「旭#70」(商品名、旭カーボン株式会社製)
・FTカーボンブラック:カーボンブラック「旭#15」(商品名、旭カーボン株式会社製)
・M:2−メルカプトベンゾチアゾール「ノクセラーM−P」(商品名、チアゾール系加硫促進剤、大内新興化学工業株式会社製)
・DM:ジベンゾチアジルジスルフィド「ノクセラーDM−P」(商品名、チアゾール系加硫促進剤、大内新興化学工業株式会社製)
・TET:テトラエチルチウラムジスルフィド「ノクセラーTET−G」(商品名、チウラムジスルフィド系加硫促進剤、大内新興化学工業株式会社製)
・BZ:ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛「ノクセラーBZ−P」(商品名、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤、大内新興化学工業株式会社製)
・硫黄:硫黄「サルファックスPMC」(商品名、鶴見化学工業株式会社製)
・OBSH:p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド「ネオセルボンN#1000S」(商品名、永和化成工業株式会社製)
【0031】
〔実施例1〜9及び比較例1〜7〕
図3の加硫発泡装置を用いて二層構造の導電性ゴムチューブを製造した。この装置は、押出機11を除くUHF12から定尺切断機15までは、全長約13mである。UHF12は全長約4m、HAV13は全長約6m、引き取り機14と定尺切断機15の長さは併せて約1mであり、それらは0.1〜1.0mの間隔で配置されている。また押出機からの未加硫チューブをUHFやHAVに搬送するためのベルトの表面はフッ素樹脂で被覆されている。
【0032】
表1に示す組成の内層用の原料組成物と外層用の原料組成物をそれぞれ、バンバリーミキサーで混練した後、二層同時押出機(温度60℃)に投入し、内径2.5mm、外径12.5mm、内層厚み3mm、外層厚み2mmの、内径、外径、内層厚み及び外層厚みが一様な未加硫のチューブを得た。尚、口金はニップル径1.8mm、ダイス径6.0mm、外層用押出し機はスクリュー径70mm、設定温度は60℃、吐出量は10.3kg/hであった。また、内層用押出し機はスクリュー径60mm、設定温度は60℃、吐出量は8.1kg/hであった。
【0033】
次いでこの未加硫のチューブをUHF(出力1.5kW)内に連続的に導入して加硫発泡処理した。この加硫発泡されたチューブをHAV(設定温度200℃)に搬送して、加硫を完結させ発泡ゴムチューブを得た。この発泡ゴムチューブを、引き取り機により引き取り、定尺切断機によって長さ240mmに切断した。
【0034】
このようにして得られた発泡ゴムチューブの内側に直径6mmの導電性軸芯体を挿入してローラ状の成形体(ゴム層の長さ228mm、外径16mm)を得た。この成形体を研磨機(株式会社シギヤ精機製作所製、GRN−20)を用いて外層部を研磨して、中央部の外径が14mm、中央部の外径が一定のストレート部分の幅が70mmのテーパー形状の導電性ゴムローラを得た。
各導電性ゴムローラを評価し、表1及び表2の結果を得た。
【0035】
実施例1〜3は、内層にイオン導電性の原料ゴム組成物を用い、外層にエピクロルヒドリンを用いたイオン導電性ゴム組成物を用いた場合の例である。Ro/Riの値が0.01以上100以下の範囲内にあるため、軸方向抵抗値ムラは良好な値を示し、画像評価においても濃度ムラのない良好な結果が得られた。
【0036】
実施例4は、内層にカーボンブラック(導電材)を用いた電子導電性のゴム組成物を使用した場合の例である。外層にエピクロルヒドリンを用いたイオン導電性ゴム組成物を用いており、Ro/Riの値が21.4と本発明の範囲内であるため、軸方向抵抗値ムラは1.28と良好な値を示し、良好な画像が得られた。
【0037】
実施例5は、外層に発泡ゴムを用いた場合の例である。外層にエピクロルヒドリンゴムを含んでおり、Ro/Riの値が1であるため軸方向抵抗値ムラは1.16と良好な値を示し、良好な画像が得られた。
【0038】
実施例6〜9はそれぞれクラウン量或いはテーパー量を変化させた場合の例であるが、本発明の範囲内であるため良好な結果が得られた。
【0039】
比較例1〜2はRo/Riの値が0.01以上100以下の範囲にないため、軸方向抵抗値ムラがそれぞれ1.58、1.52と大きすぎる値を示し、画像評価においても濃度ムラが実用上使用不可能なレベルであった。
【0040】
比較例3は外層用の原料ゴム組成物としてカーボンブラックを用いた電子導電性のゴム組成物を使用した場合の例である。外層にエピクロルヒドリンを含んでいないため、軸方向抵抗値ムラが1.84と大きすぎる値を示し、画像評価結果も実用上使用不可能なレベルであった。
【0041】
比較例4〜7はそれぞれクラウン量或いはテーパー量を変化させた場合の例であるが、それぞれクラウン量、テーパー量が小さすぎたり、大きすぎたりしたため、均一なニップ幅を確保することができず、画像ムラが発生してしまった。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【符号の説明】
【0044】
61 導電性軸芯体
62 内層(発泡ゴム層)
63 外層
11 内層用押出機
12 マイクロ波加硫装置(UHF)
13 熱風加硫装置(HAV)
14 引き取り機
15 定尺切断機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸芯体上に導電性ゴム層が設けられた導電性ゴムローラにおいて、該導電性ゴム層は内層と外層からなるクラウン形状またはテーパー形状を有する二層構造であり、該内層は発泡ゴムからなり、該外層は少なくともエピクロロヒドリン系ゴムを含むゴム成分からなるものであって、23℃/55%RH環境における該内層の体積固有抵抗値をRi、該外層の体積固有抵抗値をRoとした場合に、Ro/Riの値が0.01以上100以下であることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項2】
前記クラウン形状またはテーパー形状のクラウン量またはテーパー量(前記導電性ゴムローラの中央部の外径と端部の外径の差)が20μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項3】
前記エピクロロヒドリン系ゴムが、エピクロロヒドリン/エチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテルの三元共重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項4】
前記導電性ゴム層が、マイクロ波による連続加硫工程によって得られたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ゴムローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−164178(P2011−164178A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23973(P2010−23973)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】