説明

導電性ペーストおよび太陽電池

【課題】電荷の損失を減らし、太陽電池の効率を改善できる導電性ペースト、およびこの導電性ペーストを用いて形成されてなる太陽電池を提供する。
【解決手段】導電性粉末、導電性粉末との混合熱が0より小さい第1元素を含む金属ガラス、および有機ビヒクルを含む導電性ペーストと、この導電性ペーストを用いて形成されてなる太陽電池とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペーストおよび太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は太陽エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換素子であって、無制限、無公害の次世代エネルギー源として脚光を浴びている。
【0003】
太陽電池はp型半導体およびn型半導体を含み、光活性層で太陽光エネルギーを吸収すると、半導体の内部で電子−正孔対(electron−hole pair、EHP)が生成され、これらの生成された電子および正孔がn型半導体およびp型半導体にそれぞれ移動し、電極に収集されることによって、外部で電気エネルギーとして利用できる。
【0004】
太陽電池は、太陽エネルギーからできるだけ多くの電気エネルギーを出力することができるように、その効率を上げるのが重要である。このような太陽電池の効率を上げるためには、半導体の内部でできるだけ多くの電子−正孔対を生成するのも重要であるが、生成された電荷を損失することなく、外部に引き出すことも重要である。
【0005】
一方、太陽電池の電極は、導電性ペーストを用いたスクリーン印刷方法で形成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電荷の損失を減らし、太陽電池の効率を改善できる導電性ペーストを提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、上記導電性ペーストを用いて形成されてなる電極を含む太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態は、導電性粉末、前記導電性粉末との混合熱(heat of mixing)が0より小さい第1元素を含む金属ガラス、および有機ビヒクルを含む導電性ペーストを提供する。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記導電性粉末と前記第1元素の共融温度は、前記導電性ペーストを用いて形成されてなる電極の焼成温度より低いことを特徴とする。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記導電性ペーストを用いて形成されてなる電極の焼成温度は約1000℃以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記導電性ペーストを用いて形成されてなる電極の焼成温度は約200℃ないし約1000℃であることを特徴とする。。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記第1元素は、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ルテチウム(Lu)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、トリウム(Th)、カルシウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、バリウム(Ba)、ベリリウム(Be)、ビスマス(Bi)、ゲルマニウム(Ge)、鉛(Pb)、イッテルビウム(Yb)、ストロンチウム(Sr)、ユーロピウム(Eu)、ジルコニウム(Zr)、タリウム(Tl)、リチウム(Li)、ハフニウム(Hf)、マグネシウム(Mg)、リン(P)、砒素(As)、パラジウム(Pd)、金(Au)、プルトニウム(Pu)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ケイ素(Si)、錫(Sn)、チタニウム(Ti)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、白金(Pt)、および水銀(Hg)からなる群より選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記金属ガラスは第2元素および第3元素をさらに含み、前記金属ガラスは下記の化学式1の組成を有する合金であることを特徴とする。
【0014】
【化1】

【0015】
上記化学式1において、A、BおよびCはそれぞれ第1元素、第2元素および第3元素であり、x、yおよびzはそれぞれ第1元素、第2元素および第3元素の組成比であり、x+y+z=100である。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記第1元素、前記第2元素および前記第3元素は、下記関係式1を満たす比率で含まれることを特徴とする。
【0017】
【数1】

【0018】
上記関係式1において、ΔHは第1元素と第2元素との混合熱、ΔHは第2元素と第3元素との混合熱、およびΔHは第3元素と第1元素との混合熱であり、x、yおよびzはそれぞれ第1元素、第2元素および第3元素の組成比であり、x+y+z=100である。
【0019】
本発明の一実施形態において、前記金属ガラスは第2元素、第3元素および第4元素をさらに含み、前記金属ガラスは下記の化学式2の組成を有する合金とすることを特徴とする。
【0020】
【化2】

【0021】
上記化学式2において、A、B、CおよびDはそれぞれ第1元素、第2元素、第3元素および第4元素であり、x、y、zおよびwはそれぞれ第1元素、第2元素、第3元素および第4元素の組成比であり、x+y+z+w=100である。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記第1元素、前記第2元素、前記第3元素および前記第4元素は、下記関係式2を満たす比率で含まれることを特徴とする。
【0023】
【数2】

【0024】
上記関係式2において、ΔHは第1元素と第2元素の混合熱、ΔHは第2元素と第3元素の混合熱、ΔHは第3元素と第4元素の混合熱、ΔHは第4元素と第1元素の混合熱、ΔHは第1元素と第3元素との混合熱、および、ΔHは第2元素と第4元素との混合熱 であり、x、y、zおよびwはそれぞれ第1元素、第2元素、第3元素および第4元素の組成比であり、x+y+z+w=100である。
【0025】
本発明の一実施形態において、前記導電性粉末は、比抵抗が約100μΩcm以下であることを特徴とする。
【0026】
本発明の一実施形態において、前記導電性粉末は、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)またはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする。
【0027】
本発明の一実施形態において、前記導電性粉末、前記金属ガラス、および前記有機ビヒクルは、前記導電性ペーストの総含有量に対してそれぞれ約30質量%ないし約99質量%、約0.1質量%ないし約20質量%、および約0.9質量%ないし約69.9質量%で含まれることを特徴とする。
【0028】
本発明の他の実施形態は、前記導電性ペーストを用いて形成された電極を含む電子素子を提供する。
【0029】
本発明のさらに他の一実施形態は、半導体層、および前記半導体層に電気的に接続され、前記導電性ペーストを用いて形成された電極を含む太陽電池を提供する。
【0030】
本発明のさらに他の一実施形態において、前記電極は、前記半導体層と隣接する領域に位置するバッファー層、および前記バッファー層以外の領域に位置する電極部を含むことを特徴とする。
【0031】
本発明のさらに他の一実施形態において、前記バッファー層、前記半導体層と前記バッファー層の界面、および前記半導体層のうちの少なくとも一つは、結晶化された導電性物質を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る導電性ペーストを用いることで、電極の導電性が改善し、接触抵抗が小さくなりうる。これにより、前記電極を適用した電子素子の電気的特性が改善され、太陽電池において、電荷が効果的に集められ電極側に移動するため、太陽電池の効率の改善が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態であるAl、CuおよびZrを含む三元系合金の各元素の含有比率における混合熱を示す概略図である。
【図2A】本発明の一実施形態である導電性ペーストにおいて、導電性粉末が金属ガラスと固溶体を形成して、金属ガラス内に拡散する形状の断面概略図である。
【図2B】本発明の一実施形態である導電性ペーストにおいて、導電性粉末が金属ガラスと固溶体を形成して、金属ガラス内に拡散する形状の断面概略図である。
【図2C】本発明の一実施形態である導電性ペーストにおいて、導電性粉末が金属ガラスと固溶体を形成して、金属ガラス内に拡散する形状の断面概略図である。
【図2D】本発明の一実施形態である導電性ペーストにおいて、導電性粉末が金属ガラスと固溶体を形成して、金属ガラス内に拡散する形状の断面概略図である。
【図3】本発明の一実施形態である太陽電池の断面概略図である。
【図4】本発明の他の一実施形態である太陽電池の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態に実現でき、ここで説明する実施形態に限られない。
【0035】
以下、「元素」とは金属および半金属を包括する用語である。
【0036】
最初に、本発明の一実施形態における導電性ペーストについて説明する。
【0037】
本発明の一実施形態による導電性ペーストは、導電性粉末、前記導電性粉末との混合熱(heat of mixing)が0より小さい第1元素を含む金属ガラス、および有機ビヒクルを含む。前記混合熱は、Boer,F.R., Boom,R., Matterns,W.C.M., Miedemaal,A.R., Niessen,A.K. (1989) Cohesion in Metals, North−Halland, Amsterdamに記載されている。
【0038】
前記導電性粉末は、比抵抗が約100μΩcm以下である金属より選択することができる。前記比抵抗は、CRC Handbook of Chemistry and Physics, 84th Edition(出版社:CRC Press)に記載されている。
【0039】
前記導電性粉末は、例えば、銀または銀合金のような銀(Ag)含有金属、アルミニウムまたはアルミニウム合金のようなアルミニウム(Al)含有金属、銅(Cu)または銅合金のような銅(Cu)含有金属、ニッケル(Ni)またはニッケル合金のようなニッケル(Ni)含有金属、またはこれらの組み合わせを含むことができる。好ましくは、銀または銀合金のような銀(Ag)含有金属、アルミニウムまたはアルミニウム合金のようなアルミニウム(Al)含有金属、銅(Cu)または銅合金のような銅(Cu)含有金属であり、特に好ましくは銀または銀合金のような銀(Ag)含有金属である。
【0040】
前記導電性粉末を含む導電性ペーストは、これらに限定されない。
【0041】
前記導電性粉末は、約1nmないし約50μmの大きさでありうる。
【0042】
前記金属ガラスは、二種類以上の元素が無秩序な原子構造を有する非晶質状態の合金であって、非晶質金属(amorphous metal)とも呼ぶ。金属ガラスはシリケート(silicate)のような一般のガラスとは異なり比抵抗が小さいため、導電性を示す。
【0043】
前記金属ガラスは、前記導電性粉末との混合熱が0より小さい第1元素を1以上含む。ここで混合熱が0より小さいというのは、2以上の物質が溶融状態で混合される時に、熱力学的に自発的な混合が生じうることを意味し、導電性粉末と第1元素の混合熱が0より小さいというのは、溶融状態で導電性粉末と第1元素が自発的に固溶体を形成する可能性があることを意味する。
【0044】
この時、前記導電性粉末と前記第1元素の共融温度(eutectic temperature)が前記導電性ペーストを用いて形成されてなる電極の焼成温度より低い場合、前記導電性ペーストを用いて形成されてなる電極の焼成中に前記導電性粉末と前記第1元素が溶融状態となり得、溶融状態で導電性粉末は第1元素に固溶されて拡散し得る。前記共融温度は、ASM Handbook Volume 03: Alloy Phase Diagrams(出版社: ASM International, 1992)に記載されている。
【0045】
前記導電性ペーストを用いて形成されてなる電極の焼成温度は約1000℃以下とすることができる。好ましくは約200℃ないし約1000℃である。金属ガラスに含まれる第1元素は、前記温度範囲で前記導電性粉末と共融できるものを選択することができる。
【0046】
特に限定されないが、導電性粉末が銀(Ag)含有金属の場合、約1000℃下で導電性粉末と固溶体を形成できる第1元素は、例えば、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ルテチウム(Lu)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、トリウム(Th)、カルシウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、バリウム(Ba)、ベリリウム(Be)、ビスマス(Bi)、ゲルマニウム(Ge)、鉛(Pb)、イッテルビウム(Yb)、ストロンチウム(Sr)、ユーロピウム(Eu)、ジルコニウム(Zr)、タリウム(Tl)、リチウム(Li)、ハフニウム(Hf)、マグネシウム(Mg)、リン(P)、砒素(As)、パラジウム(Pd)、金(Au)、プルトニウム(Pu)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ケイ素(Si)、錫(Sn)、チタニウム(Ti)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、白金(Pt)、および水銀(Hg)からなる群より選択される少なくとも一つとすることができる。好ましくは銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)である。
【0047】
ここでは、導電性粉末が銀(Ag)である場合だけを例示したが、これに限定されず、導電性粉末が他の金属を含む場合、多様な元素より選択することができる。
【0048】
前記金属ガラスは、前記第1元素以外に第2元素および第3元素をさらに含む三元系合金とすることができる。前記第2元素および第3元素は、それぞれ前記第1元素とは異なり、導電性粉末が銀(Ag)である場合、上記第1元素として記載した群より選択される少なくとも一つを用いることができる。
【0049】
前記金属ガラスが三元系合金である場合、下記化学式1の組成で表される。
【0050】
【化3】

【0051】
上記化学式1において、A、BおよびCはそれぞれ第1元素、第2元素および第3元素であり、x、yおよびzはそれぞれ第1元素、第2元素および第3元素の組成比であり、x+y+z=100である。
【0052】
前記金属ガラスの組成で、導電性粉末の固溶度を高めるための第1元素の組成比は、下記関係式1を満たす比率で含まれる。
【0053】
【数3】

【0054】
上記関係式1において、ΔHは第1元素と第2元素との混合熱、ΔHは第2元素と第3元素との混合熱、およびΔHは第3元素と第1元素との混合熱であり、x、yおよびzはそれぞれ第1元素、第2元素および第3元素の組成比であり、x+y+z=100である。
【0055】
上記範囲内で第1元素の固溶度を高める第1元素の含有比率(x)を決定することができ、上記関係式1のように、金属ガラスの総混合熱が0より小さい場合、金属ガラスの組成が熱力学的に安定化される。
【0056】
上記金属ガラスは、2つ以上の元素を組み合わせた合金とすることができ、例えば、第1元素がアルミニウム(Al)であり、第2元素および第3元素がそれぞれ銅(Cu)およびジルコニウム(Zr)であり得る。
【0057】
この時、AlとCuとの混合熱がΔH、CuとZrとの混合熱がΔH、ZrとAlとの混合熱がΔHであり、Al、CuおよびZrがそれぞれx%、y%およびz%で含まれる三元系合金である場合、第1元素であるAlの含有量は、金属ガラスの混合熱の関係式xyΔH+yzΔH+zxΔHが0より小さい値を有する範囲内で決定することができる。
【0058】
図1は、本発明の一実施形態であるAl、CuおよびZrを含む三元系合金における各元素の含有比率による混合熱を示す概略図である。
【0059】
図1を参照すると、領域Aは三元系合金の混合熱の関係式が−10≦xyΔH+yzΔH+zxΔH≦−6を満たす領域であり、領域Bは三元系合金の混合熱の関係式が−6≦xyΔH+yzΔH+zxΔH≦−3を満たす領域であり、Cは三元系合金の混合熱の関係式が−3≦xyΔH+yzΔH+zxΔH<0を満たす領域である。
【0060】
図1を参照して、適切な混合熱の関係式を有する範囲でx、yおよびz値を決定することができる。
【0061】
上記金属ガラスは、例えば、Cu58.1Zr35.9AlおよびCu46Zr46Alとすることができる。
【0062】
前記金属ガラスは、前記第1元素の他に第2元素、第3元素および第4元素をさらに含む四元系合金とすることもできる。前記第2元素、第3元素および第4元素は、それぞれ前記第1元素とは異なり、上記第1元素として記載した群より選択される少なくとも一つを用いることができる。
【0063】
前記金属ガラスが四元系合金である場合、下記の化学式2の組成で表される。
【0064】
【化4】

【0065】
上記化学式2において、A、B、CおよびDはそれぞれ第1元素、第2元素、第3元素および第4元素であり、x、y、zおよびwはそれぞれ第1元素、第2元素、第3元素および第4元素の組成比であり、x+y+z+w=100である。
【0066】
前記金属ガラスの組成で、導電性粉末の固溶度を高めるための第1元素の組成比は、下記関係式2を満たす比率で含まれる。
【0067】
【数4】

【0068】
上記関係式2において、ΔHは第1元素と第2元素との混合熱、ΔHは第2元素と第3元素との混合熱、ΔHは第3元素と第4元素との混合熱、ΔHは第4元素と第1元素との混合熱,ΔHは第1元素と第3元素との混合熱,および、ΔHは第2元素と第4元素との混合熱であり、x、y、zおよびwはそれぞれ第1元素、第2元素、第3元素および第4元素の組成比であり、x+y+z+w=100である。
【0069】
上記範囲内で第1元素の固溶度を高める第1元素の含有比率(x)を決めることができ、上記関係式2のように、金属ガラスの総混合熱が0より小さい場合、金属ガラスの組成が熱力学的に安定化される。
【0070】
上記金属ガラスは、2つ以上の元素を組み合わせた合金とすることができ、例えば、第1元素がアルミニウム(Al)であり、第2元素、第3元素および第4元素がそれぞれ銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)およびベリリウム(Be)であり得る。
【0071】
この時、AlとCuとの混合熱がΔH、CuとZrとの混合熱がΔH、ZrとBeとの混合熱がΔH、BeとAlとの混合熱がΔH、AlとZrとの混合熱がΔH、CuとBeとの混合熱がΔHであり、Al、Cu、ZrおよびBeがそれぞれx%、y%、z%およびw%で含まれる四元系合金である場合、第1元素であるAlの含有量は、金属ガラスの混合熱の関係式xyΔH+yzΔH+zwΔH+wxΔH+xzΔH+ywΔHが0より小さい値を有する範囲内で決定することができる。
【0072】
上記金属ガラスは、例えばCu45Zr45AlBeとすることができる。
【0073】
上記有機ビヒクルは、上述した導電性粉末と金属ガラスとを混合して適切な粘度を付与できる有機化合物およびこれらを溶解する溶媒を含む。
【0074】
上記有機化合物は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートもしくはシクロヘキシル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリレート単独または前記化合物とを重合して得られる(メタ)アクリレート系樹脂;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、もしくはカルボキシエチルセルロースなどのセルロース系樹脂;ノボラック、もしくはレゾールのようなフェノール樹脂;アルコール樹脂;テフロン;およびこれらの組み合わせよりなる群から選択した少なくとも一つを含むことができ、界面活性剤、増粘剤および安定化剤のような添加剤をさらに含むことができる。
【0075】
上記溶媒は、これらを混合できる形態であれば特に限定されず、例えば、テルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ペンタンジオール、ジペンテン、リモニン、エチレングリコールアルキルエーテル、ジエチレングリコールアルキルエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテルアセテート、トリエチレングリコールアルキルエーテルアセテート、トリエチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールアルキルエーテル、トリプロピレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジメチルフタル酸、ジエチルフタル酸、ジブチルフタル酸、および脱塩水よりなる群から選択した少なくとも一つ以上とすることができる。好ましくはブチルカルビトールである。
【0076】
前記導電性粉末、前記金属ガラス、および前記有機ビヒクルは、前記導電性ペーストの総含有量に対してそれぞれ約30質量%ないし約99質量%、約0.1質量%ないし約20質量%、および約0.9質量%ないし約69.9質量%で含まれることができる。好ましくは約40質量%ないし約98質量%、約1質量%ないし約20質量%、約1質量%ないし約59質量%で含まれ、特に好ましくは約40質量%ないし約95質量%、約2質量%ないし約20質量%、約3質量%ないし約58質量%で含まれる。
【0077】
上述した導電性ペーストは、スクリーン印刷などの方法で形成され、電子素子の電極として用いることができる。
【0078】
この時、例えば、半導体基板上に導電性ペーストを用いて電極を形成する場合、上述のように、導電性粉末は第1元素を含む金属ガラスと固溶体を形成して、溶融した金属ガラス内に拡散できる。
【0079】
これについて、図2Aないし図2Dを参照して説明する。
【0080】
図2Aないし図2Dは、半導体基板110の上に本発明の一実施形態における導電性ペーストを適用した場合において、前記導電性粉末が金属ガラスと固溶体を形成して、金属ガラス内に拡散する形状の断面概略図である。
【0081】
図2Aを参照すると、半導体基板110の上に導電性粉末122aおよび金属ガラス115aを含む導電性ペースト120aを適用する。導電性粉末122aおよび金属ガラス115aは、それぞれ粒子(particle)形態で存在することができる。
【0082】
図2Bを参照すると、金属ガラス115aのガラス遷移温度(Tg)以上に昇温する場合、金属ガラス115aは軟化して液体のような動きを現し、軟化した金属ガラス115aは半導体基板110の上にぬれ性(wettability)を現わし、バッファー層115を形成する。バッファー層115は半導体基板110と密着して、広い面積にかけて半導体基板110と接触できる。この時、金属ガラス115aのガラス遷移温度(Tg)は導電性粉末122aの焼結温度より低いので、導電性粉末122aは依然として粒子形態で存在することができる。これによって、前記導電性ペーストを用いて製造された電極は、前記半導体基板110と隣接する領域に形成されるバッファー層115、および前記バッファー層115が形成されていない領域に形成される電極部を含むことができる。
【0083】
図2Cを参照すると、導電性粉末122aと金属ガラスの共融温度以上に高くする場合、導電性粉末122aと金属ガラスが共融され、導電性粉末122aの一部が金属ガラスと固溶体を形成してバッファー層115内に拡散できる。
【0084】
図2Dを参照すると、バッファー層115内に拡散した導電性粉末122aの一部は、半導体基板110および/または半導体基板110とバッファー層115の界面に拡散できる。半導体基板110を冷却する場合、導電性粉末122aは再結晶化され、結晶化された導電性粉末122bからなる電極部120を形成し、半導体基板110に浸透した導電性粉末122cも再結晶化されうる。
【0085】
したがって、結晶化された導電性粉末122bからなる電極部120が形成される一方、電極部120と半導体基板110との間には金属ガラスからなるバッファー層115が形成され、導電性粉末122cは半導体基板110で浸透して再結晶化されうる。
【0086】
半導体基板110に存在する再結晶化された導電性粉末122cは、太陽光によって半導体基板110に生成された電荷をバッファー層115を通じて電極部120に効果的に移動させるようにすると同時に、半導体基板110と電極部120の間の接触抵抗を小さくして、太陽電池の電荷損失を減らすことができる。これにより、太陽電池の効率を上げることができる。
【0087】
次に、図3を参照して、本発明の一実施形態である太陽電池について説明する。
【0088】
図3は、本発明の一実施形態である太陽電池を示した断面図である。
【0089】
図面において、種々の層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。明細書の全体にわたって類似する部分に対しては同一の図面符号を付けた。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるという時、これは他の部分の「すぐ上」にある場合だけでなく、その中間に他の部分がある場合も含む。一方、ある部分が他の部分の「すぐ上」にあるという時には、中間に他の部分がないことを意味する。
【0090】
以下、説明の便宜上、半導体基板110を中心として上下の位置関係を説明するが、これに限定されることではない。また、半導体基板110のうちの太陽エネルギーを受ける面を前面(front side)といい、前面の反対側にある面を後面(rear side)という。
【0091】
図3を参照すると、本発明の一実施形態である太陽電池は、下部半導体層110aおよび上部半導体層110bを含む半導体基板110を含む。
【0092】
半導体基板110は、結晶質ケイ素または化合物半導体で形成でき、結晶質ケイ素の場合、例えば、シリコンウエハーを用いることができる。下部半導体層110aおよび上部半導体層110bのうちの一つはp型不純物でドーピングされた半導体層とすることができ、他の一つはn型不純物でドーピングされた半導体層とすることができる。例えば、下部半導体層110aはp型不純物でドーピングされた半導体層であり、上部半導体層110bはn型不純物でドーピングされた半導体層でありうる。この時、p型不純物はホウ素(B)のようなIII族化合物とすることができ、n型不純物はリン(P)のようなV族化合物とすることができる。
【0093】
上部半導体層110bの表面は表面組織化(surface texturing)されることができる。表面が表面組織化された上部半導体層110bは、例えば、ピラミッド形状のような凹凸またはハニカム(honeycomb)形状のような多孔性構造でありうる。表面が表面組織化された上部半導体層110bは、光を受ける表面積を広げ、光の吸収率を高め、反射度を減らすことにより、太陽電池の効率を改善することができる。
【0094】
上部半導体層110bの上には複数の前面電極が形成されている。前面電極は基板の一方向に沿って平行に延びており、光吸収損失(shadowing loss)および面抵抗を考慮して、グリッドパターン(grid pattern)を設計することができる。
【0095】
前面電極は、上部半導体層110bと隣接する領域に位置するバッファー層115、および前記バッファー層115以外の領域に位置し、導電性物質を含んでいる前面電極部120を含むことができる。図3でバッファー層115を示しているが、これに限定されず、前記バッファー層115は省略可能である。また、前記バッファー層115は前記上部半導体層110bと隣接する領域の一部だけに位置することもできる。
【0096】
前面電極は、導電性ペーストを用いたスクリーン印刷方法で形成することができる。導電性ペーストは上述した通りである。
【0097】
前面電極部120は導電性物質で形成でき、例えば、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)またはこれらの組み合わせなどを用いて形成できる。
【0098】
上部半導体層110bと前面電極部120との間にはバッファー層115が形成されている。バッファー層115は上述した通りであり、金属ガラスを含んで導電性を有する。
【0099】
バッファー層115は、前面電極部120と接触する部分と、上部半導体層110bと接触する部分を有するので、上部半導体層110bと前面電極部120との間で電荷が移動できる通路(path)の面積を広げて、電荷の損失を減らすことができる。
【0100】
バッファー層115に含まれる金属ガラスは、前面電極部120の導電性ペーストに含まれている成分であって、工程中に前面電極部120の導電性物質より先に溶融して、前面電極部120の下部に位置することができる。
【0101】
バッファー層115、バッファー層115の下部に位置する上部半導体層110bおよび/または上部半導体層110bとバッファー層115の界面には、結晶化された導電性物質122cを含む。結晶化された導電性物質122cは、前記導電性ペーストを用いて前面電極を形成時、焼成段階で溶融し、バッファー層115を通過して上部半導体層110bに拡散した後に結晶化されたもので、バッファー層115と共に上部半導体層110bと前面電極部120の間の接触抵抗を小さくし、太陽電池の電気的特性を改善することができる。
【0102】
前面電極部120の上には前面バスバー(bus bar)電極(図示せず)が形成されていてもよい。バスバー電極は、複数の太陽電池セルを組み立てる時に、隣接する太陽電池セルを連結するためのものである。
【0103】
半導体基板110の下部には誘電膜130が形成されている。誘電膜130は、電荷の再結合を防止すると同時に、電流が漏れることを防止して、太陽電池の効率を上げらることができる。誘電膜130は複数の貫通部135を有し、当該貫通部135を通じて半導体基板110と後述する後面電極とが接触することができる。
【0104】
前記誘電膜130は、例えば、酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(SiN)、酸化アルミニウム(Al)、またはこれらの組み合わせで形成でき、約100Åないし約2000Åの厚さを有することができる。
【0105】
誘電膜130の下部には後面電極が形成されている。後面電極は導電性物質で形成でき、例えば、アルミニウム(Al)のような不透明金属で形成できる。後面電極は前面電極と同様に導電性ペーストを用いたスクリーン印刷方法で形成できる。
【0106】
後面電極は、前面電極と同様に下部半導体層110aと隣接する領域に位置するバッファー層115、および前記バッファー層以外の領域に位置し、導電性物質を含んでいる後面電極部140を含むことができる。図3ではバッファー層115を示しているが、これに限定されず、前記バッファー層115は省略可能である。また、前記バッファー層115は前記下部半導体層110aと隣接する領域の一部分だけに位置することもできる。
【0107】
バッファー層115、バッファー層115の上部に位置する下部半導体層110a、および/または下部半導体層110aとバッファー層115の界面には、結晶化された導電性物質122cを含む。結晶化された導電性物質122cは、前記導電性ペーストを用いて後面電極を形成時、焼成段階で溶融し、バッファー層115を通過して下部半導体層110aに拡散した後に結晶化されたもので、バッファー層115と共に下部半導体層110aと後面電極部140の間の接触抵抗を小さくし、太陽電池の電気的特性を改善することができる。
【0108】
以下、前記太陽電池の製造方法について図3を参照して説明する。
【0109】
まず、シリコンウエハーのような半導体基板110を用意する。この時、半導体基板110は、例えば、p型不純物をドーピングすることができる。
【0110】
次に、半導体基板110を表面組織化する。表面組織化は、例えば、硝酸およびフッ酸のような酸性溶液または水酸化ナトリウムのような塩基性溶液を用いる湿式方法で行うか、またはプラズマを用いた乾式方法で行える。
【0111】
次の半導体基板110に、例えば、n型不純物をドーピングする。ここで、n型不純物はPOClまたはHPO等を高温で拡散させることによってドーピングすることができる。これにより、半導体基板110は他の不純物でドーピングされた下部半導体層110aと上部半導体層110bを含む。
【0112】
次の上部半導体層110bの上に前面電極用導電性ペーストを塗布する。前面電極用導電性ペーストはスクリーン印刷方法で形成することができる。スクリーン印刷は、導電性粉末、金属ガラス、および有機ビヒクルを含む上述した導電性ペーストを、電極が形成される位置に塗布して乾燥する段階を含む。
【0113】
導電性ペーストは、上述のように金属ガラスを含むことができ、金属ガラスは、例えば、溶融紡糸法(melt spinning)、吸入鋳造法(infiltration casting)、気体噴霧法(gas atomization)、イオン照射法(ion irradiation)、または機械的合金法(mechanical alloying)等の公知の方法によって製造することができる。
【0114】
次に、前面電極用導電性ペーストを乾燥する。
【0115】
次に、半導体基板110の後面に、例えば、アルミニウム酸化物(Al)または酸化ケイ素(SiO)をプラズマ化学気相蒸着法で積層して誘電膜130を形成する。
【0116】
次に、誘電膜130の一部にレーザーを照射して、複数の貫通部135を形成する。
【0117】
次に、誘電膜130一面に後面電極用導電性ペーストをスクリーン印刷方法で塗布して乾燥する。
【0118】
次に、後面電極用導電性ペーストを乾燥する。
【0119】
次に、前面電極用導電性ペーストおよび後面電極用導電性ペーストを共焼成(co−firing)する。しかし、これに限定されず、前面電極用導電性ペーストと後面電極用導電性ペーストをそれぞれ焼成することも可能である。
【0120】
焼成は、焼成炉で導電性金属銀の溶融温度より高い温度まで昇温することができ、例えば、約200℃ないし約1000℃で行える。
【0121】
以下、本発明の他の実施形態である太陽電池について、図4を参照して説明する。
【0122】
図4は、本発明の他の実施形態である太陽電池を示す断面図である。
【0123】
本実施形態の太陽電池は、p型またはn型不純物でドーピングされた半導体基板110を含む。半導体基板110は後面側に形成されており、互いに異なる不純物でドーピングされた複数の第1ドーピング領域111aおよび第2ドーピング領域111bを含む。第1ドーピング領域111aは、例えば、n型不純物でドーピングでき、第2ドーピング領域111bは、例えば、p型不純物でドーピングできる。第1ドーピング領域111aと第2ドーピング領域111bは半導体基板110の後面に交互に配置できる。
【0124】
半導体基板110の前面は表面組織化されていることができ、表面組織化によって光の吸収率を高め、反射度を減らして、太陽電池の効率を改善することができる。
【0125】
半導体基板110の上には絶縁膜112が形成されている。絶縁膜112は、光をわずかに吸収する絶縁性のある物質で形成され、例えば、窒化ケイ素(SiNx)、酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化セリウム(CeO)、およびこれらの組み合わせからなる群から形成することができ、単一層または複数層に形成することができる。絶縁膜112は、例えば、約200Åないし約1500Åの厚さを有することができる。
【0126】
絶縁膜112は、太陽電池の表面での光の反射率を減少させ、特定の波長領域の選択性を増加させる反射防止膜(anti−reflective coating)役割を果たすと共に、半導体基板110の表面に存在するシリコンとの接触特性を改善して、太陽電池の効率を上げられる。
【0127】
半導体基板110の後面には複数の貫通部を有する誘電膜150が形成されている。
【0128】
半導体基板110の後面には、第1ドーピング領域111aに接続されている第1電極と、第2ドーピング領域111bに接続されている第2電極がそれぞれ形成されている。第1電極は貫通部を通じて第1ドーピング領域111aと接続され、第2電極は貫通部を通じて第2ドーピング領域111bと接続できる。第1電極と第2電極は交互に配置できる。
【0129】
第1電極は、第1ドーピング領域111aと隣接した領域に位置するバッファー層115、および前記バッファー層115以外の領域に位置する第1電極部121を含み、第2電極は、第2ドーピング領域111bと隣接した領域に位置するバッファー層115、および前記バッファー層115以外の領域に位置する第2電極部141を含むことができる。図4でバッファー層115を示しているが、これに限定されず、前記バッファー層115は省略可能である。また、前記バッファー層115は、前記第1ドーピング領域111aと隣接した領域の一部、前記第2ドーピング領域111bと隣接した領域の一部、またはこれらの組み合わせだけに位置することもできる。
【0130】
第1電極と第2電極は、上述した実施形態と同様に、導電性粉末、金属ガラス、および有機ビヒクルを含む導電性ペーストを用いて形成でき、詳細な説明は上述したことと同様である。
【0131】
第1ドーピング領域111aと第1電極部121の間、および第2ドーピング領域111bと第2電極部141の間には、バッファー層115がそれぞれ形成されている。バッファー層115は上述のように、金属ガラスを含むので、導電性を有し、第1電極部121または第2電極部141と接触する部分と、第1ドーピング領域111aまたは第2ドーピング領域111bと接触する部分を有するので、第1ドーピング領域111aと第1電極部121の間または第2ドーピング領域111bと第2電極部141の間で電荷が移動できる通路の面積を広げて、電荷の損失を減らすことができる。
【0132】
また、バッファー層115、第1ドーピング領域111a、第2ドーピング領域111b、第1ドーピング領域111aとバッファー層115の界面、半導体基板110の第2ドーピング領域111bとバッファー層115の界面のうちの少なくとも一つには、結晶化された導電性物質122cを含む。結晶化された導電性物質122cは、前記導電性ペーストを用いて第1電極および/または第2電極を形成時、焼成段階で溶融し、バッファー層115を通過して半導体基板110の第1ドーピング領域111aおよび/または第2ドーピング領域111bに拡散した後に結晶化されたもので、バッファー層115と共に第1ドーピング領域111aと第1電極部121の間、および第2ドーピング領域111bと第2電極部141の間の接触抵抗を小さくし、太陽電池の電気的特性を改善することができる。
【0133】
本実施形態である太陽電池は、上述した実施形態とは異なって、第1電極および第2電極が全て太陽電池の後面に位置することによって、前面において金属が占める面積を減らして光吸収損失を減少させることができ、そのために太陽電池の効率を上げられる。
【0134】
以下、本実施形態の太陽電池の製造方法について、図4を参照して説明する。
【0135】
まず、例えば、n型不純物でドーピングされている半導体基板110を用意する。次に、半導体基板110を表面組織化した後、半導体基板110の前面および後面に絶縁膜112および誘電膜150を形成する。絶縁膜112および誘電膜150は、例えば、化学気相蒸着で形成することができる。
【0136】
次に、半導体基板110の後面側に、例えば、p型不純物およびn型不純物を順次に高濃度にドーピングして、第1ドーピング領域111aおよび第2ドーピング領域111bを形成する。
【0137】
次に、誘電膜150の一面において、第1ドーピング領域111aに対応する領域に第1電極用導電性ペーストを塗布し、第2ドーピング領域111bに対応する領域に第2電極用導電性ペーストを塗布する。第1電極用導電性ペーストおよび第2電極用導電性ペーストはそれぞれスクリーン印刷方法で形成することができ、それぞれ上述した導電性粉末、金属ガラス、および有機ビヒクルを含む導電性ペーストを用いることができる。
【0138】
次に、第1電極用導電性ペーストおよび第2電極用導電性ペーストと同時に、またはそれぞれ焼成することができ、焼成は焼成炉で導電性金属銀の溶融温度より高い温度まで昇温することができる。
【実施例】
【0139】
前記では上述した導電性ペーストを太陽電池の電極に適用した例だけを具体的に例示したが、これに限定されず、電極を含む全ての電子素子に適用することができる。
【0140】
以下、実施例を通じて本発明についてさらに詳細に説明する。ただし、下記の実施例は単に説明を目的とするものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0141】
銀(Ag)の固溶度測定
[実施例1]
金属ガラスCu46Zr46Alを、厚さが90μmで、幅が0.5cmのリボン状に用意する。前記金属ガラスリボンを長さを1cmに切断した後、その上に銀(Ag)が85質量%含まれている銀(Ag)ペーストを塗布した。次に、前記金属ガラスリボンを大気中で650℃で30分間の熱処理を行って、導電性薄膜を形成した。この時、昇温速度は50℃/分であった。
【0142】
[実施例2]
金属ガラスとしてCu46Zr46Alの代わりにCu58.1Zr35.9Alを使用したことを除いては、実施例1と同様な方法で金属ガラスリボンの上に導電性薄膜を形成した。
【0143】
[比較例1]
金属ガラスにとしてCu46Zr46Alの代わりにCu50Zr50を使用したことを除いては、実施例1と同様な方法で金属ガラスリボンの上に導電性薄膜を形成した。
【0144】
[評価−1]
実施例1および2と比較例1によって形成された金属ガラスリボンおよび導電性薄膜を切断した後、その断面を分析した。
【0145】
表1は、実施例1および2と比較例1で金属ガラスリボンと導電性薄膜の界面から約3μm離れた位置の金属ガラスリボンに存在する銀(Ag)の固溶度を表す。前記銀(Ag)の固溶度は、金属ガラスリボンと導電性薄膜の界面でエネルギー分散型X線分光器(energydispersive x−ray spectroscopy、EDS)を通じて3μm深さでの銀(Ag)の濃度(atomic percent, at%)を測定した。
【0146】
【表1】

【0147】
表1を参照すると、実施例1および2によって形成された金属ガラスリボンが、比較例1によって形成された金属ガラスリボンと比較して、さらに多くの量の銀(Ag)が固溶されたことが分かる。また、アルミニウム(Al)含有量の高い金属ガラスを用いた実施例1が、実施例2よりも銀(Ag)の固溶度が高いことが分かる。
【0148】
導電性ペーストおよび電極の製造
[実施例3]
銀(Ag)粉末および金属ガラスCu46Zr46Alをエチルセルロースバインダーおよびブチルカルビトール溶媒を含む有機ビヒクルに添加した。この時、銀(Ag)粉末、金属ガラスCu46Zr46Alおよび有機ビヒクルを、導電性ペーストの総含有量に対してそれぞれ約84質量%、約4質量%および約12質量%で混合し混合物を得た。
【0149】
次に、3−ロールミルを使用して前記混合物を混練し、導電性ペーストを製造した。
【0150】
シリコンウエハーの上に前記導電性ペーストをスクリーン印刷方法で塗布した。次に、ベルトファーネス(belt furnace)を使用してシリコンウエハーを約500℃まで急激に加熱した後、約900℃まで徐々に加熱した。この後、シリコンウエハーを徐々に冷却して電極を形成した。
【0151】
[実施例4]
金属ガラスとしてCu46Zr46Alの代わりにCu58.1Zr35.9Alを使用したことを除いては、実施例3と同様の方法で導電性ペーストを製造し、当該導電性ペーストを用いた電極を形成した。
【0152】
[比較例2]
金属ガラスとしてCu46Zr46Alの代わりにCu50Zr50を使用したことを除いては、実施例3と同様の方法で導電性ペーストを製造し、当該導電性ペーストを用いて電極を形成した。
【0153】
[評価−2]
実施例3および4と比較例2において形成された電極の接触抵抗値を測定した。接触抵抗値はTransfer length method(TLM)により測定した。
【0154】
表2に、実施例3および4と比較例2によって形成された電極の接触抵抗値を表す。
【0155】
【表2】

【0156】
表2を参照すると、実施例3および4において形成された電極は、比較例2における電極と比較して、接触抵抗が小さいことが分かる。このことから銀(Ag)と固溶体を形成できるアルミニウム(Al)を含む金属ガラスを用いることによって、接触抵抗を小さくすることができることが分かる。また、アルミニウム(Al)含有量の高い金属ガラスを使用することにより、銀(Ag)との固溶度をさらに高めることができ接触抵抗をさらに小さくすることできることが分かる。
【0157】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、次の請求範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の種々の変形および改良形態も本発明の権利範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0158】
110 半導体基板、
110a 下部半導体層
110b 上部半導体層
111a 第1ドーピング領域
111b 第2ドーピング領域
115 バッファー層、
115a 金属ガラス、
120 前面電極部、
120a 導電性ペースト、
121 第1電極部、
122a 導電性粉末、
122b、122c 結晶化された導電性粉末、
130、150 誘電膜、
135 貫通部、
140 後面電極部、
141 第2電極部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粉末、
前記導電性粉末との混合熱が0より小さい第1元素を含む金属ガラス、および
有機ビヒクルを含む導電性ペースト。
【請求項2】
前記導電性粉末と前記第1元素との共融温度が、前記導電性ペーストを用いて形成されてなる電極焼成温度より低いことを特徴とする、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記導電性ペーストを用いて形成されてなる電極焼成温度が1000℃以下であることを特徴とする、請求項2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
前記導電性ペーストを用いて形成されてなる電極焼成温度が200℃ないし1000℃であることを特徴とする、請求項3に記載の導電性ペースト。
【請求項5】
前記第1元素が、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ルテチウム(Lu)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、トリウム(Th)、カルシウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、バリウム(Ba)、ベリリウム(Be)、ビスマス(Bi)、ゲルマニウム(Ge)、鉛(Pb)、イッテルビウム(Yb)、ストロンチウム(Sr)、ユーロピウム(Eu)、ジルコニウム(Zr)、タリウム(Tl)、リチウム(Li)、ハフニウム(Hf)、マグネシウム(Mg)、リン(P)、砒素(As)、パラジウム(Pd)、金(Au)、プルトニウム(Pu)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ケイ素(Si)、錫(Sn)、チタニウム(Ti)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、白金(Pt)、および水銀(Hg)からなる群より選択される少なくとも一つを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項6】
前記金属ガラスが第2元素および第3元素をさらに含み、
前記金属ガラスが下記の化学式1の組成を有する合金である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性ペースト:
【化1】

上記化学式1において、A、BおよびCはそれぞれ第1元素、第2元素および第3元素であり、x、yおよびzはそれぞれ第1元素、第2元素および第3元素の組成比であり、x+y+z=100である。
【請求項7】
前記第1元素、第2元素および第3元素が、下記関係式1を満たす比率で含まれる、請求項6に記載の導電性ペースト:
【数1】

上記関係式1において、ΔHは第1元素と第2元素との混合熱、ΔHは第2元素と第3元素との混合熱、およびΔHは第3元素と第1元素との混合熱であり、x、yおよびzはそれぞれ第1元素、第2元素および第3元素の組成比であり、x+y+z=100である。
【請求項8】
前記金属ガラスが第2元素、第3元素および第4元素をさらに含み、
前記金属ガラスは下記の化学式2の組成を有する合金である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性ペースト:
【化2】

上記化学式2において、A、B、CおよびDはそれぞれ第1元素、第2元素、第3元素および第4元素であり、x、y、zおよびwはそれぞれ第1元素、第2元素、第3元素および第4元素の組成比であり、x+y+z+w=100である。
【請求項9】
前記第1元素、第2元素、第3元素および第4元素が、下記関係式2を満たす比率で含まれる、請求項8に記載の導電性ペースト:
【数2】

上記関係式2において、ΔHは第1元素と第2元素との混合熱、ΔHは第2元素と第3元素との混合熱、ΔHは第3元素と第4元素との混合熱、ΔHは第4元素と第1元素との混合熱,ΔHは第1元素と第3元素との混合熱、および、ΔHは第2元素と第4元素との混合熱であり、x、y、zおよびwはそれぞれ第1元素、第2元素、第3元素および第4元素の組成比であり、x+y+z+w=100である。
【請求項10】
前記導電性粉末の比抵抗が100μΩcm以下であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項11】
前記導電性粉末が、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)またはこれらの組み合わせを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項12】
前記導電性粉末、前記金属ガラス、および前記有機ビヒクルが、前記導電性ペーストの総量に対してそれぞれ30ないし99質量%、0.1ないし20質量%および0.9ないし69.9質量%で含まれることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の導電性ペーストを用いて形成された電極を含む電子素子。
【請求項14】
半導体層、および
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の導電性ペーストを用いて形成され前記半導体層に電気的に接続された電極を含む太陽電池。
【請求項15】
前記電極が、前記半導体層と隣接する領域に位置するバッファー層、および前記バッファー層以外の領域に位置する電極部を含むことを特徴とする、請求項14に記載の太陽電池。
【請求項16】
前記バッファー層、前記半導体層と前記バッファー層の界面、および前記半導体層のうちの少なくとも一つは結晶化された導電性物質を含むことを特徴とする、請求項15に記載の太陽電池。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−94518(P2012−94518A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236427(P2011−236427)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【出願人】(506309168)延世大学校 産学協力団 (4)
【Fターム(参考)】