説明

導電性ペースト及び導電性ペーストを使用して作製した半導体装置

【課題】導電性ペーストとした時に特に導電性に優れる導電性ペーストであり、該導電性ペーストを使用して作製した半導体装置は接着強度、耐熱性、導電性に優れる半導体装置を提供することである。
【解決手段】熱硬化性樹脂と導電性粉末とを含む導電性ペーストであって、前記導電性粉末が導電性粒子と脂肪酸エステル化合物を含む導電性粉末であることを特徴とする導電性ペースト及び該導電性ペーストを用いて作製された半導体装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペースト及び導電性ペーストを使用して作製した半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
導電性の粉末を有機バインダーに分散した導電性ペーストは、電子部品等の電極や回路の形成、プリント配線基板のスルーホール接続、配線クロスオーバー用、半導体素子の接着、ヒートシンクなどの放熱部材の接着、さらには電磁波シールド用など多岐にわたる用途で使用されている。このような導電性ペーストに使用される導電性粉末は化学還元法、電解法、アトマイズ法などで得られた導電性粒子をスタンプミル、アトライター、ボールミルなどの粉砕機を使用して粉砕(フレーク化)して用いることが一般的である。ここでフレーク化工程においては導電性粒子同士の凝集を防ぐ目的で脂肪酸、脂肪酸塩、高級脂肪族アルコール、高級脂肪族アルコールのエステル、高級脂肪族アミン、高級脂肪族アミド、ポリエチレンワックスなどが滑剤として使用されている(例えば特許文献1〜3参照)。また、導電性を確保するため、フレーク化工程後に滑剤を除去している。(例えば特許文献3参照)
近年導電性ペーストに対する要求も一段と厳しくなってきており、特に環境対応としての鉛フリー化に伴う半田代替用、電極の極小化、回路の微細化などによりこれまで以上に良好な導電性が求められてきているが、従来から使用されてきた脂肪酸などからなる滑剤は金属表面と強固に結合し得られた導電性粉末の表面に残存し、導電性の更なる向上を困難なものにしていた。
【特許文献1】特開2000−080409号公報
【特許文献2】特開2001−303111号公報
【特許文献3】特開2003−268402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、導電性ペーストとして用いた場合に良好な導電性を示すことが可能であり、該導電性ペーストを使用して作製した半導体装置は接着強度、耐熱性、導電性に優れるものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような目的は、下記[1]〜[7]に記載の本発明により達成される。
[1]熱硬化性樹脂と導電性粉末とを含む導電性ペーストであって、前記導電性粉末が導電性粒子と脂肪酸エステル化合物を含む導電性粉末であることを特徴とする導電性ペースト。
[2]前記脂肪酸エステル化合物が炭素数10以上30以下の脂肪酸のアルキルエステル化合物である[1]項に記載の導電性ペースト。
[3]前記脂肪酸エステル化合物が脂肪酸のメチルエステル化合物である[1]又は[2]項に記載の導電性ペースト。
[4]前記脂肪酸エステル化合物が不飽和脂肪酸のエステル化合物である[1]〜[3]項のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
[5]前記導電性粉末が銀である[1]〜[4]項のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
[6]前記熱硬化性樹脂が、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、ラジカル重合性のアクリル樹脂、及びマレイミド樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂からなる[1]〜[5]項のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
[7][1]〜[6]項のいずれか1項に記載の導電性ペーストを用いて作製された半導体装置。
【発明の効果】
【0005】
本発明の導電性ペーストは、導電性ペーストに用いた場合にこれまで以上に良好な導電性を発揮し、該導電性ペーストを使用して作製した半導体装置は接着強度、耐熱性、導電性に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、熱硬化性樹脂と導電性粉末とを含む導電性ペーストであって、前記導電性粉末が導電性粒子と脂肪酸エステル化合物を含む導電性粉末を用いることにより、得られた導電性ペーストを用いて作製された半導体装置は特に良好な導電性を示し、かつ接着強度、耐熱性にも優れるものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0007】
本発明に用いる熱硬化性樹脂は、加熱により3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂で、樹脂、硬化剤、硬化促進剤等を含む一般的な熱硬化性樹脂であり、特に限定されるものではないが、ペーストを形成する材料であることから室温で液状であることが望ましい。例えば、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、ラジカル重合性のアクリル樹脂、マレイミド樹脂などが挙げられる。
【0008】
シアネート樹脂は、分子内に−NCO基を有するもので具体的に例示すると、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、1,3−ジシアナトナフタレン、1,4−ジシアナトナフタレン、1,6−ジシアナトナフタレン、1,8−ジシアナトナフタレン、2,6−ジシアナトナフタレン、2,7−ジシアナトナフタレン、1,3、6−トリシアナトナフタレン、4,4'−ジシアナトビフェニル、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、トリス(4−シアナトフェニル)ホスフェート、及びノボラック樹脂とハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類などが挙げられ、これらの多官能シアネート樹脂のシアネート基を三量化することによって形成されるトリアジン環を有するプレポリマーも使用できる。このプレポリマーは、上記の多官能シアネート樹脂モノマーを、例えば、鉱酸、ルイス酸などの酸、ナトリウムアルコラート、第三級アミン類などの塩基、炭酸ナトリウムなどの塩類を触媒として重合させることにより得られる。
【0009】
シアネート樹脂の硬化促進剤としては、一般に公知のものが使用できる。例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトン鉄などの有機金属錯体、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化亜鉛などの金属塩、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン等のアミン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの硬化促進剤は1種又は2種以上混合して用いることができる。シアネート樹脂とエポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、マレイミド樹脂を併用することも可能である。
【0010】
エポキシ樹脂は、グリシジル基を分子内に1つ以上有する化合物であるが、グリシジル基は1分子に2つ以上含まれていることが好ましい。グリシジル基が1つの化合物のみでは反応させても十分な硬化物特性を示すことができないからである。グリシジル基を1分子に2つ以上含む化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノール等のビスフェノール化合物又はこれらの誘導体、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF、水素添加ビフェノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シジロヘキサンジエタノール等の脂環構造を有するジオール又はこれらの誘導体、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール等の脂肪族ジオール又はこれらの誘導体等をエポキシ化した2官能のもの、トリヒドロキシフェニルメタン骨格、アミノフェノール骨格を有する3官能のもの、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等をエポキシ化した多官能のもの等が挙げられるがこれらに限定されるわけではなく、また導電性ペーストとして室温で液状である必要があるので、単独で又は混合物として室温で液状のものが好ましい。通常行われるように反応性の希釈剤を使用することも可能である。反応性希釈剤としては、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテルといった1官能の芳香族グリシジルエーテル類、脂肪族グリシジルエーテル類などが挙げられる。エポキシ樹脂を硬化させる目的で硬化剤を使用する。
【0011】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジカルボン酸ジヒドラジド化合物、酸無水物、フェノール樹脂等が挙げられる。ジヒドラジド化合物としては、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、P−オキシ安息香酸ジヒドラジド等のカルボン酸ジヒドラジドなどが挙げられ、酸無水物としてはフタル酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水マレイン酸とポリブタジエンの反応物、無水マレイン酸とスチレンの共重合体などが挙げられる。フェノール樹脂とは1分子内にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物であり、1分子内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物の場合には架橋構造をとることができないため硬化物特性が悪化し使用できない。また1分子内のフェノール性水酸基数は2つ以上であれば使用可能であるが、好ましいフェノール性水酸基の数は2〜5である。これより多い場合には分子量が大きくなりすぎるので導電性ペーストの粘度が高くなりすぎるため好ましくない。より好ましい1分子内のフェノール性水酸基数は2つ又は3つである。このような化合物としては、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、メチルエチリデンビス(メチルフェノール)、シクロへキシリデンビスフェノール、ビフェノールといったビスフェノール類及びその誘導体、トリ(ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(ヒドロキシフェニル)エタンといった3官能のフェノール類及びその誘導体、フェノールノボラック、クレゾールノボラックといったフェノール類とホルムアルデヒドを反応することで得られる化合物で2核体又は3核体がメインのもの及びその誘導体などが挙げられる。
【0012】
エポキシ樹脂の硬化促進剤としては、イミダゾール類、トリフェニルホスフィン又はテトラフェニルホスフィンの塩類、ジアザビシクロウンデセン等アミン系化合物及びその塩類等が挙げられるが、2−メチルイミダゾール,2−エチルイミダゾール,2−フェニルイミダゾール,2−フェニル−4−メチルイミダゾール,2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール,2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール,2−C1123−イミダゾール、2−メチルイミダゾールと2,4−ジアミノ−6−ビニルトリアジンとの付加物といったイミダゾール化合物が好適に用いられる。なかでも特に好ましいのは融点が180℃以上のイミダゾール化合物である。
【0013】
ラジカル重合性のアクリル樹脂としては、例えば、不飽和二重結合を有する(メタ)アクリル樹脂などがあるが、特に限定されるものではない。なかでも分子量が500〜10000のポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリブタジエン、ブタジエンアクリロニトリル共重合体で(メタ)アクリル基を有するものが好ましい。
ポリエーテルとしては、炭素数が3〜6の2価の有機基がエーテル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応により得ることが可能である。
ポリエステルとしては、炭素数が3〜6の2価の有機基がエステル結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応により得ることが可能である。
ポリカーボネートとしては、炭素数が3〜6の2価の有機基がカーボネート結合を介して繰り返したものが好ましく、芳香族環を含まないものが好ましい。ポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応により得ることが可能である。
【0014】
ポリ(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートとの共重合体又は水酸基を有する(メタ)アクリレートと極性基を有さない(メタ)アクリレートとの共重合体などが好ましい。これら共重合体とカルボキシ基と反応する場合には水酸基を有するアクリレート、水酸基と反応する場合には(メタ)アクリル酸又はその誘導体を反応することにより得ることが可能である。
ポリブタジエンとしては、カルボキシ基を有するポリブタジエンと水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応、水酸基を有するポリブタジエンと(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応により得ることが可能であり、また無水マレイン酸を付加したポリブタジエンと水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応により得ることも可能である。
ブタジエンアクリロニトリル共重合体としては、カルボキシ基を有するブタジエンアクリロニトリル共重合体と水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応により得ることが可能である。
【0015】
必要により以下に示す化合物を併用することも可能である。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,2−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレートや水酸基を有する(メタ)アクリレートとジカルボン酸又はその誘導体を反応して得られるカルボキシ基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここで使用可能なジカルボン酸としては、例えばしゅう酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0016】
上記以外にもメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャルブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャルブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジンクモノ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,2−ジ(メタ)アクリルアミドエチレングリコール、ジ(メタ)アクリロイロキシメチルトリシクロデカン、N−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−(メタ)アクリロイロキシエチルフタルイミド、n−ビニル−2−ピロリドン、スチレン誘導体、α−メチルスチレン誘導体などを使用することも可能である。
【0017】
さらに重合開始剤として熱ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。通常熱ラジカル重合開始剤として用いられるものであれば特に限定しないが、望ましいものとしては、急速加熱試験(試料1gを電熱板の上にのせ、4℃/分で昇温した時の分解開始温度)における分解温度が40〜140℃となるものが好ましい。分解温度が40℃未満だと、導電性ペーストの常温における保存性が悪くなり、140℃を越えると硬化時間が極端に長くなるため好ましくない。これを満たす熱ラジカル重合開始剤の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、P−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、桂皮酸パーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、α、α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチ−ルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が挙げられるが、これらは単独又は硬化性を制御するため2種類以上を混合して用いることもできる。
【0018】
マレイミド樹脂は、1分子内にマレイミド基を1つ以上含む化合物であり、例えば、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等のビスマレイミド樹脂が挙げられる。より好ましいマレイミド樹脂は、ダイマー酸ジアミンと無水マレイン酸の反応により得られる化合物、マレイミド酢酸、マレイミドカプロン酸といったマレイミド化アミノ酸とポリオールの反応により得られる化合物である。マレイミド化アミノ酸は、無水マレイン酸とアミノ酢酸又はアミノカプロン酸とを反応することで得られ、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオールが好ましく、芳香族環を含まないものが特に好ましい。マレイミド基は、アリル基と反応可能であるのでアリルエステル樹脂との併用も好ましい。アリルエステル樹脂としては、脂肪族のものが好ましく、中でも特に好ましいのはシクロヘキサンジアリルエステルと脂肪族ポリオールのエステル交換により得られる化合物である。またシアネート樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂との併用も好ましい。
【0019】
本発明で用いる導電性粉末は、導電性粒子と脂肪酸エステル化合物を含むものであり、導電性粒子は、機械的粉砕法、化学還元法、電解法、アトマイズ法のいずれかの方法により得ることができ、得られた導電性粒子をスタンプミル、アトライター、ボールミルなどの粉砕機を使用して粉砕(フレーク化)するフレーク化工程において滑剤として脂肪酸エステル化合物を使用することで作製することができる。
【0020】
導電性粒子としては、平均粒径が0.5μm以上30μm以下のものが好ましく、より好ましい平均粒径は0.5μm以上10μm以下である。平均粒径がこれより小さい場合には非常に凝集しやすく、これより大きい場合にはフレーク処理により得られた導電性粉末が大きすぎるためである。このような導電性粒子は機械的粉砕法等でも得ることは可能であるが、導電性粒子の種類によっては目的とする粒径が得られない等不具合が発生する場合があり、化学還元法、電解法、アトマイズ法のいずれかにより得られることが好ましい。導電粒子としては導電性を有するものであれば使用可能であるが、金属粒子が好ましい。好ましい金属粒子としては銀、金、白金、パラジウムなどの貴金属粒子、銅、銅合金、ニッケルなどの非貴金属粒子が挙げられるが、特に好ましいものは銀である。ここで銀とは純銀又は銀合金である。銀合金としては銀を50重量%以上、好ましくは70重量%以上含有する銀−銅合金、銀−パラジウム合金、銀−錫合金、銀−亜鉛合金、銀−マグネシウム合金、銀−ニッケル合金などが挙げられる。銀が好ましいのは良好な導電性、熱伝導性を有する上に酸化されにくく加工性にも優れるからである。
特に10μmより小さい銀粒子が必要な場合には、溶融金属を水中に噴霧する水アトマイズ法又は硝酸銀溶液を還元剤により還元する化学還元法が適している。
【0021】
次に導電性粒子をフレーク化するが、これは球状に近い粒子を導電性ペーストに使用する場合には粒子同士の接触を確保するのが難しいことと、一般に球状に近い粒子は分散性がよくなく導電性ペースト中で分離しやすいためである。フレーク化にはスタンプミル、アトライター、ボールミルなどの粉砕機が使用され、処理時に凝集防止の目的で滑剤が使用される。本発明で使用する滑剤は脂肪酸エステル化合物である。これは一般的に使用されている脂肪酸を滑剤として使用した場合に比べ得られた粉末を導電性ペーストとして評価した場合良好な導電性を示すためである。脂肪酸エステル化合物としては炭素数が10以上30以下の脂肪酸のエステル化合物が好ましく、より好ましいのは炭素数が14以上20以下の脂肪酸のアルキルエステル化合物である。これより少ない場合にはフレーク化処理後の乾燥工程で揮発してしまい凝集の原因となり、これより多い場合にはフレーク化処理中の分散が悪く効果的にフレーク化できないからである。
【0022】
このような化合物としては、例えば、飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物として、カプリン酸メチル、カプリン酸エチル、カプリン酸ブチル、カプリン酸のその他アルキルエステル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸のその他アルキルエステル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸のその他アルキルエステル、ペンタデシル酸メチル、ペンタデシル酸エチル、ペンタデシル酸ブチル、ペンタデシル酸のその他アルキルエステル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸ブチル、パルミチン酸のその他アルキルエステル、マーガリン酸メチル、マーガリン酸エチル、マーガリン酸ブチル、マーガリン酸のその他アルキルエステル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸のその他アルキルエステル、アラキジン酸メチル、アラキジン酸エチル、アラキジン酸ブチル、アラキジン酸のその他アルキルエステル、ベヘン酸メチル、ベヘン酸エチル、ベヘン酸ブチル、ベヘン酸のその他アルキルエステル、リグノセリン酸メチル、リグノセリン酸エチル、リグノセリン酸ブチル、リグノセリン酸のその他アルキルエステル、セロチン酸メチル、セロチン酸エチル、セロチン酸ブチル、セロチン酸のその他アルキルエステル、モンタン酸メチル、モンタン酸エチル、モンタン酸ブチル、モンタン酸のその他アルキルエステル、メリシン酸メチル、メリシン酸エチル、メリシン酸ブチル、メリシン酸のその他アルキルエステルなどが挙げられ、不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物として、ミリストレイン酸メチル、ミリストレイン酸エチル、ミリストレイン酸ブチル、ミリストレイン酸のその他アルキルエステル、パルミトレイン酸メチル、パルミトレイン酸エチル、パルミトレイン酸ブチル、パルミトレイン酸のその他アルキルエステル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチルエステル、オレイン酸のその他アルキルエステル、エライジン酸メチル、エライジン酸エチル、エライジン酸ブチル、エライジン酸のその他アルキルエステル、バクセン酸メチル、バクセン酸エチル、バクセン酸ブチル、バクセン酸のその他アルキルエステル、ガドレイン酸メチル、ガドレイン酸エチル、ガドレイン酸ブチル、ガドレイン酸のその他アルキルエステル、エルカ酸メチル、エルカ酸エチル、エルカ酸ブチル、エルカ酸のその他アルキルエステル、ネルボン酸メチル、ネルボン酸エチル、ネルボン酸ブチル、ネルボン酸のその他アルキルエステル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸ブチル、リノール酸のその他アルキルエステル、リノレン酸メチル、リノレン酸エチル、リノレン酸ブチル、リノレン酸のその他アルキルエステル、エレオステアリン酸メチル、エレオステアリン酸エチル、エレオステアリン酸ブチル、エレオステアリン酸のその他アルキルエステル、ステアリドン酸メチル、ステアリドン酸エチル、ステアリドン酸ブチル、ステアリドン酸のその他アルキルエステル、アラキドン酸メチル、アラキドン酸エチル、アラキドン酸ブチルエステル、アラキドン酸のその他アルキルエステル、エイコサペンタエン酸メチル、エイコサペンタエン酸エチル、エイコサペンタエン酸ブチル、エイコサペンタエン酸のその他アルキルエステル、イワシ酸メチル、イワシ酸エチル、イワシ酸ブチル、イワシ酸のその他アルキルエステル、ドコサヘキサエン酸メチル、ドコサヘキサエン酸エチル、ドコサヘキサエン酸ブチル、ドコサヘキサエン酸のその他アルキルエステルなどが挙げられ、これらは単独でも複数種を併用してもかまわない。
【0023】
より好ましいものとしては、脂肪酸のメチルエステル化合物であり、パルミチン酸メチル、パルミトレイン酸メチル及びオレイン酸メチルのなかから選ばれる少なくとも1種であり、パルミチン酸メチル、パルミトレイン酸メチル及びオレイン酸メチルのなかから選ばれる少なくとも1種とその他の飽和脂肪酸のメチルエステル化合物との併用である。さらに好ましいものとしては、不飽和脂肪酸のメチルエステル化合物であるパルミトレイン酸メチル及びオレイン酸メチルのなかから選ばれる少なくとも1種であり、パルミトレイン酸メチル及びオレイン酸メチルのなかから選ばれる少なくとも1種と飽和脂肪酸のメチルエステル化合物との併用である。また脂肪酸、脂肪酸塩、高級脂肪族アルコール、高級脂肪族アルコールのエステル、高級脂肪族アミン、高級脂肪族アミド、ポリエチレンワックスなどとの併用も可能である。
【0024】
脂肪酸エステル化合物は得られる導電性粉末の表面積1m2あたり0.005g以上0.5g以下となるように使用することが好ましい。この範囲内であればフレーク化工程中に凝集が発生せず、良好な導電性を得ることができる。これより少ないとフレーク化工程中に凝集が発生しやすく、これより多いと得られた導電性粉末に残存する脂肪酸エステル化合物が多くなりすぎ導電性ペーストとした時に導電性の悪化に繋がる恐れがあるからである。
フレーク化は乾式でも湿式でも可能であるが湿式で行うほうが品質安定の観点から好ましい。湿式で行う場合の溶媒はメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ジメチルケトン、ジエチルケトン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、トルエン、キシレンが挙げられ、これらは単独でも複数種を併用してもかまわない。
【0025】
フレーク化処理後ろ過することにより凝集物、粗大粒子を取り除いた後、乾燥することにより導電性粉末を得ることができる。得られた導電性粉末は示唆熱天秤(TGA)にて窒素雰囲気中、室温と室温から500℃まで昇温し500℃にて1時間保持した後での重量減少率が0.05重量%以上2重量%以下であることが好ましい。より好ましい重量減少率は0.05重量%以上1重量%以下である。これより少ないと乾燥後に徐々に凝集が進む恐れがあり、これより多いと残存する滑剤量が多くなりすぎ導電性ペーストとした時に導電性の悪化に繋がる恐れがある。得られた導電性粉末はレーザー回折法による50%平均粒径が1μm以上50μm以下であることが好ましい。より好ましい50%平均粒径は1μm以上15μm以下であり、さらに好ましいのは3μm以上10μm以下である。下限値より小さいと導電性ペーストとした時に粘度が高くなりすぎ十分な導電性を得るだけの導電性粉末を配合できなくなり、上限値より大きいと導電性ペーストとした時に微細加工ができなくなるためである。
【0026】
導電性ペーストとしては、必要に応じてその他の添加剤を使用してもよい。その他の添加剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシランカップリング剤や、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤等のカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力化成分、ハイドロタルサイト等の無機イオン交換体、消泡剤、界面活性剤、各種重合禁止剤、酸化防止剤等、種々の添加剤を適宜配合しても差し支えない。
【0027】
本発明の導電性ペーストは、例えば各成分を予備混合した後、3本ロールを用いて混練した後真空下脱泡することにより製造することができる。
本発明の導電性ペーストを用いて半導体装置を作製する方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、市販のダイボンダーを用いて、リードフレームの所定の部位に導電性ペーストをディスペンス塗布した後、チップをマウントし、加熱硬化する。その後、ワイヤーボンディングして、エポキシ樹脂を用いてトランスファー成形することによって半導体装置を作製する。またはフリップチップ接合後アンダーフィル材で封止したフリップチップBGAなどのチップ裏面に導電性ペーストをディスペンスしヒートスプレッダー、リッドといった放熱部品を搭載し加熱硬化するなどといった使用方法も可能である。
【0028】
以下実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
(導電性粉末の作製)
半径が15cmで高さが30cmの円筒容器と、この円筒容器内に配置された攪拌翼(半径14cm)とを備えた攪拌ボールミルを準備した。
硝酸銀を化学還元することで得られた平均粒径約5μm、比表面積0.2m2/gの還元銀粒子10kg及び30kgのチタン製ボール(直径0.8mm)を攪拌ボールミルの円筒容器内に仕込み、さらにエタノール8kg、オレイン酸メチル0.1kg、パルミチン酸メチル0.1kgを添加した。攪拌翼の回転数を500rpmに設定して、攪拌ボールミルを始動させてフレーク化を開始した。攪拌ボールミルを2時間運転した後に回転を停止した。その後円筒容器の内容物をろ過しろ液を乾燥することで導電性粉末1を得た。
導電性粉末1のオレイン酸メチル0.1kg、パルミチン酸メチル0.1kgのかわりに、導電性粉末2ではパルミチン酸メチル0.2kgを、導電性粉末3ではパルミチン酸0.2kgを、導電性粉末4ではオレイン酸0.15kg、N,N−ジメチルステアリルアミド0.05kgを添加した。導電性粉末1と同様の方法にて作製した。
以下の方法により評価した特性値を表1に示す。
【0030】
・タップ密度:導電性粉末100gをメスシリンダーに入れ振とうを加えた後容量を読み取ることにより算出した。
・比表面積:BET法により測定した。
・50%平均粒径:レーザー回折粒度測定装置((株)島津製作所製、SALD−3000J)にて測定した。
・重量減少率:示唆熱天秤(TGA)に約50mgの導電性粉末をセットし、窒素雰囲気中、室温と室温から500℃まで昇温し500℃にて1時間保持した後での重量減少率を測定した。
【0031】
【表1】

【0032】
[実施例1]
エポキシ樹脂(東都化成(株)製、YDF−170、エポキシ当量160〜180、以下エポキシ樹脂)、希釈剤としてクレジルグリシジルエーテル(エポキシ当量185、以下希釈剤1)、硬化剤としてビスフェノールF(大日本インキ工業(株)製、DIC−BPF、水酸基当量100、以下硬化剤)、ジシアンジアミド、硬化促進剤(四国化成工業(株)製、キュアゾール2MZ−A)、グリシジル基を有するカップリング剤(信越化学工業(株)製、KBM−403E、以下カップリング剤1)、上記の導電性粉末1を用いて、表2のように配合し、3本ロールを用いて混練し、脱泡することで導電性ペーストを得た。配合割合は重量部である。
【0033】
[実施例2]
実施例1の導電性粉末1の変わりに導電性粉末2を使用した以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを作製し、実施例1と同様に評価した。
[実施例3〜7]
1,4−シクロヘキサンジメタノール/1,6−ヘキサンジオール(=3/1(重量比))と炭酸ジメチルの反応により得られたポリカーボネートジオールとメチルメタクリレートの反応により得られたポリカーボネートジメタクリレート化合物(分子量1000、以下アクリル樹脂1)、酸価108mgKOH/gで分子量4600のアクリルオリゴマーと2−ヒドロキシメタクリレート/ブチルアルコール(=1/2(モル比))との反応により得られたメタクリル化アクリルオリゴマー(分子量5000、以下アクリル樹脂2)、ポリテトラメチレングリコールとマレイミド化酢酸の反応により得られたビスマレイミド化合物(分子量580、以下マレイミド樹脂)、シクロヘキサンジカルボン酸のジアリルエステルとポリプロピレングリコールとの反応により得られたジアリルエステル化合物(分子量1000、ただし原料として用いたシクロヘキサンジカルボン酸のジアリルエステルを約15%含む、以下アリルエステル樹脂)、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド(日本油脂(株)製、パークミルD、急速加熱試験における分解温度:126℃、以下重合開始剤1)及びジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(日本油脂(株)製、パーロイルTCP、急速加熱試験における分解温度:82℃、以下重合開始剤2)を、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(日本化成(株)製、CHDMMA、以下希釈剤2)、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸(共栄社化学(株)製、ライトエステルHO−MS、以下希釈剤3)、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステル1、6HX、以下希釈剤4)、テトラスルフィド結合及びエトキシシラン基を有する化合物(日本ユニカー(株)製、A−1289、以下カップリング剤2)を表2のように配合し、3本ロールを用いて混練し、脱泡することで導電性ペーストを作製し実施例1と同様に評価した。
【0034】
[比較例1、2]
比較例1は、実施例1の導電性粉末1の変わりに導電性粉末3を使用した以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを作製し、実施例1と同様に評価した。比較例2は、実施例1の導電性粉末1の変わりに導電性粉末4を使用した以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを作製し、実施例1と同様に評価した。
【0035】
1.導電性:表2に示す導電性ペーストを用いて、幅4mm、長さ約50mm、厚み0.04mmとなるようにガラス板上に印刷し175℃60分間硬化した。硬化後長さ方向40mmの抵抗値を測定し体積抵抗率を算出した。体積抵抗率が5×10-5Ω・cm以下のものを合格とした。
2.接着強度:表2に示す導電性ペーストを用い、6×6mmのシリコンチップを銅フレームにマウントし、175℃オーブン中60分硬化した。使用した銅フレームは銀スポットメッキ(ダイパッド部に銀メッキあり)で、硬化後及び吸湿処理(85℃、85%、72時間)後に自動接着力測定装置を用い260℃での熱時ダイシェア強度を測定した。260℃熱時ダイシェア強度が30N/チップ以上の場合を合格とした。接着強度の単位はN/チップである。
3.半田耐熱性:表2に示す導電性ペーストを用い、下記の基板(リードフレーム)とシリコンチップを175℃60分間硬化し接着した。封止材料(スミコンEME−7026、住友ベークライト(株)製)を用い封止し、30℃、相対湿度60%、168時間吸湿処理した後、IRリフロー処理(260℃、10秒、3回リフロー)を行った。処理後のパッケージを超音波探傷装置(透過型)により剥離の程度を測定した。ダイアタッチ部の剥離面積が10%未満の場合を合格とした。剥離面積の単位は%である。
パッケージ:QFP(14×20×2.0mm)
リードフレーム:Ni−Pd/Auめっきした銅フレーム
チップサイズ:6×6mm
【0036】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の導電性ペーストは、特に導電性に優れるため、導電材料として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と導電性粉末とを含む導電性ペーストであって、前記導電性粉末が導電性粒子と脂肪酸エステル化合物を含む導電性粉末であることを特徴とする導電性ペースト。
【請求項2】
前記脂肪酸エステル化合物が炭素数10以上30以下の脂肪酸のアルキルエステル化合物である請求項1記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記脂肪酸エステル化合物が脂肪酸のメチルエステル化合物である請求項1又は2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
前記脂肪酸エステル化合物が不飽和脂肪酸のエステル化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項5】
前記導電性粒子が銀である請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂が、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、ラジカル重合性のアクリル樹脂、及びマレイミド樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性ペースト。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性ペーストを用いて作製された半導体装置。