説明

導電性ロール

【課題】 カーボンブラックの凝集等によるリークの発生による黒スジ等の画像不良が生じない導電性ロールを提供する。
【解決手段】 芯金の外周にイオン導電性を有すると共にカーボン微粉末が含有されている導電性ゴムからなる少なくとも一層のゴム弾性層を有する導電性ロールにおいて、インピーダンスアナライザーを用いて前記ゴム弾性層に交流電圧1.0Vを印加して測定した際の周波数100mHz〜10kHzの位相差θの最大値θmaxおよび最小値θminの関係が、下記式を満足することを特徴とする導電性ロール。
【数1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真式複写機及びプリンタなどの画像形成装置に用いられる導電性ロール及びその検査方法に関し、特に帯電ロール及びその検査に好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に用いられる帯電ロールとしては、例えば、エピクロルヒドリン系ゴムに過塩素酸リチウム等のイオン性導電剤を添加したものが用いられている。
【0003】
このようなイオン性導電剤を添加した帯電ロールは、環境変動による電気抵抗値の変動が大きいという欠点を有しており、画像の不具合の原因となる。
【0004】
一方、カーボンブラックにより導電性を付与したロールや、イオン性導電剤に加えてカーボンブラックを添加したハイブリッド型の帯電ロールも検討されている。この場合、環境依存性は比較的小さいが、局部的にカーボンブラックが凝集(分散不良)した場合に、凝集点から感光体に向かってリークが生じ、黒スジ等の画像不良が生じるという問題があった。
【0005】
そこで、カーボンブラックにより導電性を付与した現像ロールではあるが、電気抵抗値のバラツキを抑えて所定の電気抵抗値を得ることができ、安定して使用できる現像ロールを先に提案した(特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、電気抵抗値のバラツキのみでは実際に画像評価した際の特性が判断できないことがわかった。すなわち、電気抵抗値のバラツキが同等であっても、画像評価した際に差が生じることがあった。
【特許文献1】特開2003−202750号公報 (特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑み、カーボンブラックの凝集等によるリークの発生による黒スジ等の画像不良が生じない導電性ロール及びその検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、
芯金の外周にイオン導電性を有すると共にカーボン微粉末が含有されている導電性ゴムからなる少なくとも一層のゴム弾性層を有する導電性ロールにおいて、インピーダンスアナライザーを用いて前記ゴム弾性層に交流電圧1.0Vを印加して測定した際の周波数100mHz〜10kHzの位相差θの最大値θmaxおよび最小値θminの関係が、下記式を満足することを特徴とする導電性ロールにある。
【0009】
【数1】

本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記最小値θminが下記式を満足することを特徴とする導電性ロールにある。
【0010】
【数2】

本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記ゴム弾性層がエピクロルヒドリン系ゴムからなることを特徴とする導電性ロールにある。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記ゴム弾性層がイオン性導電剤を含有することを特徴とする導電性ロールにある。
【0012】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記ゴム弾性層の表面にはイソシアネートを含む表面処理液により表面処理された表面処理層が設けられており、交流電圧1.0Vを印加した際の周波数100mHz〜10kHzの位相差θの最大値θmaxおよび最小値θminの関係が上記式を満足し且つ前記表面処理層を除去したゴム弾性層に交流電圧1.0Vを印加した際の周波数100mHz〜10kHzの位相差θの最大値θmaxおよび最小値θminの関係も上記式を満足することを特徴とする導電性ロールにある。
【0013】
本発明の第6の態様は、第5の態様において、前記表面処理液が、さらにカーボンブラックと、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーから選択される少なくとも1種のポリマーとの少なくとも一方を含有したものであることを特徴とする導電性ロールにある。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によると、イオン導電性を有すると共にカーボン微粉末を含有する導電性ロールであって、交流電圧1.0Vを印加して測定した際の周波数100mHz〜10kHzの位相差θの最大値θmaxおよび最小値θminの関係が所定の範囲にある導電性ロール及びその検査方法が提供でき、例えば、帯電ロールとして用いた際の特性が非常に安定しているという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、イオン導電性を有すると共にカーボン微粉末を含有するゴム弾性層を有する導電性ロールにおいて、カーボン微粉末の分散状態の不良は従来のように電気抵抗値では判断できないが、位相差θの周波数特性により判断することができるという知見に基づいて完成されたものである。
【0016】
なお、本出願人は、先に、導電性カーボン微粉末により導電性を付与したゴム弾性層を有する導電性ロールに関し、分散状態の真の優劣は従来のように電気抵抗値では判断できないが、インピーダンスにより判断するという発明を出願したが(特願2004−381374号)、本発明は、イオン導電性を有するゴム弾性体は、カーボン微粉末により導電性を付与したゴム弾性体とは異なる挙動を示すが、所定の周波数範囲の位相差を観察すれば凝集等の分散不良を検出できるという知見に基づいて完成されたものである。
【0017】
すなわち、本発明者らは、カーボン微粉末の分散状態を詳細に観察すると、分散状態が多少悪いものに関してはカーボン微粉末が局部的な凝集を起こした結果生じるカーボンの抜けたゴム領域が観察でき、このカーボンの抜けたゴム領域の有無は、電気抵抗値には影響を殆ど与えないが、所定の周波数範囲の位相差に変化が生じることを知見し、本発明を完成させた。
【0018】
本発明の導電性ロールは、イオン導電性を有すると共にカーボン微粉末を含有することが前提条件となる。
【0019】
ここで、本発明の対象となる導電性ロールがカーボン微粉末を含有するのは充填材としてであり、このカーボン微粉末の導電パスによる電子導電性をできるだけ発現させずに、イオン導電性を有意に発現させることが重要なポイントとなる。したがって、添加したカーボン微粉末をできるだけ均一に分散させて偏って導電パスを形成しないようにすることが重要となる。なお、充填材として、炭酸カルシウム等の導電パスを形成しないものを用いた場合には、炭酸カルシウムが吸湿性が高いため、環境変化により吸湿してイオン導電性が急激に高くなるなどの問題がある。
【0020】
本発明において、イオン導電性を有するとは、エピクロルヒドリン系ゴムのようにゴム基材自体がイオン導電性を有するもの、又は、このようなイオン導電性を有するゴム基材又は一般のゴム基材にイオン性導電剤を添加してイオン導電性を付与したものである。
【0021】
ゴム弾性層を形成するゴム基材は、エピクロルヒドリン系ゴム、クロロプレン、ニトリルゴム(NBR)、ミラブルポリウレタンなど、あるいはこれらのブレンドを挙げることができるが、エピクロルヒドリン系ゴムを主体としたものが好ましい。
【0022】
エピクロルヒドリン系ゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体等を挙げることができる。
【0023】
また、ゴム弾性層にはイオン性導電剤が添加されていてもよい。イオン性導電剤としては、例えば、Li,Na,K等のアルカリ金属塩、酢酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩等を挙げることができる。また、イオン性導電剤の添加量は、所望の導電性が付与できる範囲とすればよいが、例えば、ゴム成分100重量部に対して、0.001〜3.0重量部程度用いる。
【0024】
また、本発明のゴム弾性層は、カーボン微粉末が含有されている。ここで、カーボン微粉末としては、カーボンブラックを主体とする少なくとも一種のカーボンブラックなどである。カーボンブラックは、導電性カーボンブラック、導電性が比較的弱い弱導電性カーボンブラックなどがあるが、本発明では、導電性は主としてイオン導電により発現されるので、弱導電性カーボンブラックを用いるのが好ましい。勿論、複数種のカーボンブラックを混合して用いてもよい。なお、カーボンブラックの添加量は、狙いの電気抵抗値によって異なるが、例えば、ゴム基材100重量部に対して、40〜150重量部、好ましくは70〜110重量部程度添加する。
【0025】
本発明の導電性ロールでは、カーボン微粉末の分散性ができるだけ良好であるのが好ましいので、本発明の目的を損なわない範囲で、分散性を向上させる添加剤を添加してもよい。また、このようにカーボン微粉末の分散性を向上させるためにはゴム成分のブレンドを検討してもよく、例えば、エピクロルヒドリンゴムを用いる場合には、NBRをブレンドすることにより、カーボン微粉末の分散性を向上させることができる。なお、NBRとして特に液状NBRを用いると、カーボン分散性を向上させる添加剤として作用し、好ましい。
【0026】
本発明の導電性ロールは、このようにイオン導電性を有すると共にカーボン微粉末を含有するものであり、その電気抵抗値は印加電圧に依存して変化するが、5V、50V及び100Vをそれぞれ印加した際の電気抵抗値Rv、Rv50及びRv100が10〜10Ωの範囲にあるのが好ましい。
【0027】
本発明の導電性ロールは、このようなゴム弾性層に交流電圧1.0Vを印加した際の周波数100mHz〜10kHzの位相差θの最大値θmaxおよび最小値θminの関係が上記式を満たす導電性ゴム弾性層を有するものであり、このような導電性ゴム弾性層を有すれば、1層構造でも2層構造でもよい。また、表面に、汚染防止やリーク防止などの目的で保護層や高抵抗層を有するものであっても、その下のゴム弾性層が上述した条件を満足するものであれば、本発明の範囲となる。なお、詳細は後述するが、ゴム弾性層がエピクロルヒドリン系ゴムからなり、当該ゴム弾性層の表面にイソシアネートを含む表面処理液により表面処理された表面処理層が設けられている場合には、当該表面処理層を除去したゴム弾性層が上述した条件を満足するのは勿論であるが、表面処理層を設けたゴム弾性層自体も、交流電圧1.0Vを印加した際の周波数100mHz〜10kHzの位相差θの最大値θmaxおよび最小値θminの関係が|θmax/θmin|≦5を満足するのが好ましく、特に最小値θminが30(degrees)以上であるのが好ましい。
【0028】
ここで、本発明において、交流電圧1.0Vを印加した際の周波数100mHz〜10kHzの位相差θの最大値θmaxおよび最小値θminの関係が|θmax/θmin|≦5を満足するという条件は、後述する試験結果より算出されたものであるが、以下のように解釈することができる。なお、ここで、最大値θmaxは周波数100mHz〜10kHzの位相差θの最大値であり、最小値θminは周波数100mHz〜10kHzの位相差θの最小値である。
【0029】
最大値θmaxおよび最小値θminの絶対値の差が小さくなると上述した条件を満たし易くなり、最大値θmaxおよび最小値θminの絶対値の差が大きくなると上述した条件を満たし難くなる。よって、最大値θmaxおよび最小値θminの関係が上述した範囲から外れる状態とは、規定周波数範囲において位相差の変化が非常に大きい状態であり、この状態は、導電性弾性層内でカーボン微粉末が局部的凝集により導電パスを形成し、周波数100mHz〜10kHzの低周波領域で位相差に最大最小の差が明確に現れるようになるためである。
【0030】
よって、本発明の導電性ロールを製造するにはカーボン微粉末の分散性をできるだけ向上させるようにすればよく、その製造方法は特に限定されないが、カーボンブラックの分散性を良好にした製造条件を一度設定しても、カーボンブラックのロットによっても分散性が異なるので、位相差θの周波数特性を検査することで、確実に上述した関係を満足するものを得ることができる。
【0031】
このような観点から本発明の検査方法は完成された。すなわち、本発明の検査方法は、導電性ロールの検査方法において、交流電圧1.0Vを印加した際の周波数100mHz〜10kHzの位相差θの最大値θmaxおよび最小値θminの関係が|θmax/θmin|≦5を満足するが否か、好ましくは、さらに最小値θminが30(degrees)以上であるか否かを検査するものである。これにより、例えば、画像特性を検査することなく、カーボン微粉末の分散性の優劣を判断することができる。また、ゴムシートを作製し、これを検査することによってもカーボン微粉末の分散性の優劣を判断することができるので、最終的な製品不良を大幅に低減することができるという効果を奏する。
【0032】
本発明の検査方法は、何れの製造方法による導電性ロールにも適用でき、カーボン微粉末の分散性にバラツキが生じ易い製造方法による導電性ロールに用いた場合に不良率を大幅に低減できるものである。
【0033】
ここで、交流電圧1.0Vを印加した際の周波数100mHz〜10kHzの位相差θの最大値θmaxおよび最小値θminの関係が|θmax/θmin|≦5を満足しないもの、さらに最小値θminが30(degrees)未満のものは、カーボン微粉末の凝集体が多く形成されて凝集体同士が導電パスを形成しているものと推測される。
【0034】
本発明の検査方法における印加電圧を1.0Vとしたのは、検査時に高電圧の履歴をゴム弾性層に残留させないためである。例えば、帯電ロールとして実機に搭載された場合には、本発明の検査方法における印加電圧の500倍〜1000倍程度の高電圧が印加されることになる。しかしながら、このような高電圧で検査すると、高電圧の履歴が帯電ロールに残ることになり、外観不良(ゴム表面のキズ等)が生じる虞があり、決して好ましくはない。検査においては、実機内で生じる現象をそのまま再現する必要はなく、相対的な比較で判定できれば十分であり、より好ましいことになる。本発明の検査方法は、非常に低電圧での検査で且つ画像特性を検査することなく製品不良を防止できるという点でも非常に優れるものである。
【0035】
本発明の導電性ロールは、保護層や高抵抗層として樹脂製のチューブなどを被せた構成としてもよいが、エピクロルヒドリン系ゴムを主体とするゴム弾性層の場合には、表面にイソシアネートを含む表面処理液により表面処理された表面処理層を設けてもよい。このように形成された表面処理層は被覆チューブを被せた場合と比較して電気抵抗値を大きく変化させることなく、且つ非汚染性を付与する点でも優れているからである。
【0036】
ここで、イソシアネート処理により表面処理層を形成するための表面処理液は、イソシアネート化合物を有機溶剤に溶解させたもの、さらには、これにカーボンブラックを添加したものを用いることができる。また、イソシアネート化合物を有機溶剤に溶解させたものに、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーから選択される少なくとも1種のポリマーを添加したもの、さらには、上述したポリマーと導電性付与剤とを添加したものを用いることもできる。
【0037】
ここで、イソシアネート化合物としては、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)及び3,3−ジメチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネート(TODI)および前記記載の多量体および変性体などを挙げることができる。
【0038】
なお、本発明の導電性ロールは、特に帯電ロールとして好適である。
【0039】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
エピクロルヒドリンゴム(エピクロマーCG102:ダイソー社製)100重量部に対して充填剤として平均粒径200nmのカーボンを100重量部、導電剤として過塩素酸リチウム(LiClO)を0.3重量部添加し、加硫剤を加えロールミキサーで混練りし、平板プレスによりプレス加硫させ平板シートを得た。これを実施例1とした。
【0041】
(実施例2)
実施例1の導電性ゴムを直径8mmの金属製シャフトの表面にプレス加硫し、直径11mmに研磨加工して導電性ロールを製造した。これを実施例2とした。
【0042】
(実施例3)
実施例2の導電性ロールを、酢酸エチル100重量部に対し、イソシアネート化合物(MDI;大日本インキ社製)20重量部添加混合溶解させた表面処理液を用いて表面処理を行い、表面処理層を形成した。すなわち、表面処理液を23℃に保ったままロールを30秒浸漬し、その後、120℃に保持されたオーブンで1時間加熱することにより表面処理層を形成したものを実施例3とした。
【0043】
(実施例4)
エピクロルヒドリンゴム(エピクロマーCG102:ダイソー社製)100重量部に対し、添加剤として液状NBR(Nipol1312:日本ゼオン社製)を10重量部添加し、充填剤として平均粒径200nmのカーボンを20重量部、導電性付与剤として導電性カーボンであるアセチレンブラック(デンカブラック:電気化学社製)を15重量部添加し、イオン性導電剤としてp−トルエンスルホナートテトラエチルアンモニウム(Et4N−pTS)を0.8重量部添加し、加硫剤を加えロールミキサーで混練りし、平板プレスによりプレス加硫させ平板シートを得た。これを実施例4とした。
【0044】
(実施例5)
実施例4の導電性ゴムを用いる以外は、実施例2と同様に製造して実施例5の導電性ロールを製造した。
【0045】
(実施例6)
実施例5の導電性ロールの表面を、実施例3と同様に処理して実施例6の導電性ロールとした。
【0046】
(実施例7)
エピクロルヒドリンゴム(エピクロマーCG102:ダイソー社製)80重量部に対し、添加剤として液状NBR(Nipol1312:日本ゼオン社製)を20重量部添加し、充填剤として平均粒径200nmのカーボンを80重量部添加し、導電性付与剤として導電性カーボン(トーカブラック#5500:東海カーボン社製)を20重量部添加し、イオン性導電剤としてトリフルオロ酢酸ナトリウム(CFCOONa)を0.8重量部添加し、加硫剤を加え、ロールミキサーで混練し、平板プレスによりプレス加硫させ平板シートを得た。これを実施例7とした。
【0047】
(実施例8)
実施例7の導電性ゴムを用いる以外は、実施例2と同様に製造して、実施例8の導電性ロールとした。
【0048】
(実施例9)
実施例8の導電性ロールの表面を、実施例3と同様に処理して実施例9の導電性ロールとした。
【0049】
(比較例1)
実施例1とは異なる製造ロットのカーボンを添加した以外は、実施例1と同様に製造し、これを比較例1とした。
【0050】
(比較例2)
比較例1で使用した製造ロットのカーボンを添加した以外は、実施例2と同様に製造し、これを比較例2とした。
【0051】
(比較例3)
比較例2の導電性ロールの表面を、実施例3と同様に表面処理し、これを比較例3とした。
【0052】
(比較例4)
実施例7において液状NBR(Nipol1312:日本ゼオン社製)を抜いて配合し、実施例1と同様に製造して比較例4とした。
【0053】
(比較例5)
比較例4の導電性ゴムを用いる以外は、実施例2と同様に製造して比較例5の導電性ロールとした。
【0054】
(比較例6)
比較例5の導電性ロールの表面を、実施例3と同様に処理して比較例6の導電性ロールとした。
【0055】
(比較例7)
実施例7において、導電性カーボン(トーカブラック#5500:東海カーボン(株)社製)を他の導電性カーボンであるケッチェンブラックEC(ケッチェンブラックインターナショナル(株)社製)に変更し、実施例1と同様に製造して比較例7とした。
【0056】
(比較例8)
比較例7の導電性ゴムを用いる以外は、実施例2と同様に製造して、比較例8の導電性ロールとした。
【0057】
(比較例9)
比較例8の導電性ロールの表面を、実施例3と同様に処理して、比較例9の導電性ロールとした。
【0058】
(試験例1)平板シートの電気抵抗測定
実施例1、4、7および比較例1、4、7において印加電圧を100Vとして電気抵抗値(表面抵抗並びに体積抵抗)を測定した。なお、測定に際しては電極の位置を変えながら8箇所測定し、そのときの最大値、最小値、平均値をそれぞれ測定した。また、測定にはULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A(株式会社アドバンテスト製)を用いて測定した。その結果を下記表1および表2に示す。
【0059】
(試験例2)ロールの電気抵抗測定
実施例2、3、5、6、8、9及び比較例2、3、5、6、8、9の導電性ロールについて、印加電圧100Vとしたときの電気抵抗値を測定した。電気抵抗値の測定は、ロールをSUS304板からなる電極部材の上に置いてロールの両端に500gの荷重をかけた状態で、電圧を30秒間印加した後、芯金と電極部材との間の抵抗値を、ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A(株式会社アドバンテスト製)を用いて測定した。また、周方向に45°ずつ回転させて回転方向に亘って8ヶ所測定し、そのときの最大値、最小値、平均値をそれぞれ測定した。
【0060】
表面抵抗に関してはロール表面に導電性テープを巻き、ギャップ間距離を1cm、印加電圧100Vとし、30秒印加した後の抵抗値を測定した。また、測定に際しては軸方向に8箇所測定し、そのときの最大値、最小値、平均値を測定した。その結果を下記表1および表2に示す。
【0061】
(試験例3)位相差θの周波数特性評価
実施例1〜9及び比較例1〜9のシート及びロールの位相差θの周波数特性をインピーダンスアナライザー(BHA社製;インピーダンスアナライザーIM6e)を用いて測定した。測定は、N/N環境(25℃、50%RH)下、ロールの両端に500gの荷重を付加した状態で、印加電圧を1Vとして測定し、交流周波数100mHz〜10kHzにおける位相差θの比率であるθmax/θminを求めた。
【0062】
実施例1〜9及び比較例1〜9の|θmax/θmin|を表1に示す。また、実施例1、4,7及び比較例1、4、7(シート)、実施例2、5、8及び比較例2、5、8(導電性ロール)並びに実施例3、6、9及び比較例3、6、9(帯電ロール)の周波数特性を図1〜図9に示す。
【0063】
(試験例4)画像評価
実施例3及び比較例3のロールを帯電ロールとして、市販のプリンタに実装し、L/L環境(10℃、30%RH)、N/N環境(25℃、50%RH)、及びH/H環境(35℃、85%RH)のそれぞれで画像評価を行った。この結果を表1および表2に併せて示す。
【0064】
(試験例5)再研磨品のインピーダンス測定
実施例3、6、9及び比較例3、6、9の帯電ロールの表面を0.5mm再研磨して、表面処理層を取り除き、試験例3と同様にインピーダンスを測定し、位相差θの比率であるθmax/θminを求めた。この結果を表3に示す。
【0065】
【表1】



【0066】
【表2】



【0067】
【表3】



【0068】
(試験結果)
以上の試験結果より、以下のことがわかった。
【0069】
実施例1〜3の場合には、|θmax/θmin|が5より小さく、ポリマーに対してカーボンの分散性が良好であり、ポリマー中にカーボン微粉末の導電パスはそれほど形成されていないことがわかった。この結果、導電パスによるリークは抑えられ、安定した抵抗値を維持し、且つ、位相差θも上記の値に安定することがわかった。
【0070】
また、これらについては、表面処理を施した後(実施例3)、画像評価を行なった結果、全環境下において良好な結果が得られた。
【0071】
一方、比較例1及び2の場合、ポリマーへの分散に悪影響を与えるカーボンロットを使用したためか、|θmax/θmin|が5より著しく大きくなり、同一の練り条件の下では分散性は悪化していることが確認された。また、この結果、凝集塊が多数形成されてポリマー内に導電パスが容易に形成されたため、電子導電性が発現し、リークの原因になることがわかった。
【0072】
表面処理後(比較例3)も、画像評価の際には、リークによる黒スジが発生し、画像不良となることも確認された。
【0073】
実施例1〜3と同様な傾向が、添加剤として液状NBRを添加し、また、イオン性導電剤を変更した実施例4〜9においても確認され、液状NBRを添加した場合には、導電性カーボンを用いても、分散が非常に良好なためか、電子導電性の発現はなく、イオン導電性が維持されることがわかった。
【0074】
一方、導電性カーボンを添加して液状NBRを添加しない比較例4〜6では電子導電性が発現し、また、導電性の強いケッチェンブラックを添加した比較例7〜9では液状NBRを添加しても電子導電性が発現することがわかった。
【0075】
さらに、試験例5の結果より、表面処理した後、表面処理層を除去した場合の|θmax/θmin|やθminの値は、表面処理前の値とほぼ同一であることがわかった。この結果、表面処理した後でも、表面処理層を研磨により除去すれば、表面処理前の状態がわかることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施例1及び比較例1の周波数特性を示す図である。
【図2】実施例2及び比較例2の周波数特性を示す図である。
【図3】実施例3及び比較例3の周波数特性を示す図である。
【図4】実施例4及び比較例4の周波数特性を示す図である。
【図5】実施例5及び比較例5の周波数特性を示す図である。
【図6】実施例6及び比較例6の周波数特性を示す図である。
【図7】実施例7及び比較例7の周波数特性を示す図である。
【図8】実施例8及び比較例8の周波数特性を示す図である。
【図9】実施例9及び比較例9の周波数特性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金の外周にイオン導電性を有すると共にカーボン微粉末が含有されている導電性ゴムからなる少なくとも一層のゴム弾性層を有する導電性ロールにおいて、インピーダンスアナライザーを用いて前記ゴム弾性層に交流電圧1.0Vを印加して測定した際の周波数100mHz〜10kHzの位相差θの最大値θmaxおよび最小値θminの関係が、下記式を満足することを特徴とする導電性ロール。
【数1】

【請求項2】
請求項1において、前記最小値θminが下記式を満足することを特徴とする導電性ロール。
【数2】

【請求項3】
請求項1又は2において、前記ゴム弾性層がエピクロルヒドリン系ゴムからなることを特徴とする導電性ロール。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記ゴム弾性層がイオン性導電剤を含有することを特徴とする導電性ロール。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記ゴム弾性層の表面にはイソシアネートを含む表面処理液により表面処理された表面処理層が設けられており、交流電圧1.0Vを印加した際の周波数100mHz〜10kHzの位相差θの最大値θmaxおよび最小値θminの関係が上記式を満足し且つ前記表面処理層を除去したゴム弾性層に交流電圧1.0Vを印加した際の周波数100mHz〜10kHzの位相差θの最大値θmaxおよび最小値θminの関係も上記式を満足することを特徴とする導電性ロール。
【請求項6】
請求項5において、前記表面処理液が、さらにカーボンブラックと、アクリルフッ素系ポリマー及びアクリルシリコーン系ポリマーから選択される少なくとも1種のポリマーとの少なくとも一方を含有したものであることを特徴とする導電性ロール。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−293046(P2008−293046A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215999(P2008−215999)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【分割の表示】特願2007−508250(P2007−508250)の分割
【原出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000227412)シンジーテック株式会社 (99)
【Fターム(参考)】