説明

導電性促進剤としての有機酸の金属塩

【課題】 樹脂及び導電性充填材を含む導電性樹脂組成物に有機酸の金属塩を添加することによって可使時間又はレオロジーを損なわずにその組成物の導電性、特に導電率、が向上した導電性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 樹脂、導電性充填材、及びアクリル酸又はメタクリル酸の金属塩を除く有機酸の金属塩を含む導電性樹脂組成物。向上した導電性を有する樹脂組成物は半導体パッケージ産業、特に高レベルの導電率が求められる用途に商業的に適している。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願
この出願は、2005年6月23日に出願された「貴金属粉末及びフレーク用のジカルボン酸の銀塩」と題する米国特許出願第 号に関する。
【0002】
発明の分野
本発明は導電性樹脂組成物に関し、特に有機酸の金属塩を含む導電性樹脂組成物に関する。
【0003】
発明の背景
導電性充填剤は樹脂組成物を熱的または電気的に伝導性にするために樹脂組成物へ添加される。導電性樹脂組成物は、幅広い用途を有する。例えば、回路構成材料を回路版へ、或いは半導体ダイをリードフレイムへ付着させる場合のソルダー代替物;例えば迷走電流または静電気を運び去る導電性塗料としての遮蔽;例えば重合体肉厚被膜インクまたは導電性アンテナ用のRFIDインクのような導電性インク;タンタルコンデンサ;または例えば、熱放散用のケイ素ゲルまたはグリース等としての熱的界面材料等の幅広い用途を有する。
【0004】
特に、導電性樹脂組成物は半導体ダイまたはチップを基板へ付着させるための接着剤として用いることができる。用途によっては、例えば電力集積回路(power integrated circuit)において、或いはソルダーの代替物としての該ダイと該基板間の高度の導電性を要求するものでは、高められた伝導性が必要である。こうするための明らかな方法は、該樹脂組成物中の該導電性充填剤の充填量を増やすことであり、或いはより導電性の充填剤を利用することである。しかし、これらのどの方法も該組成物のレオロジーまたは他の性能特性に影響を与えるものである。
【0005】
発明の概要
本発明者らは、樹脂及び導電性充填材を含む導電性樹脂組成物に有機酸の金属塩を添加することによって可使時間又はレオロジーを損なわずにその組成物の導電性、特に導電率、が向上するということを見出した。従って、向上した導電性を有する樹脂組成物は半導体パッケージ産業、特に高レベルの導電率が求められる用途に商業的に適している。
【0006】
発明の詳細な記述
本発明は、樹脂、導電性充填材、及びアクリル酸又はメタクリル酸の金属塩を除く有機酸の金属塩を含む導電性樹脂組成物である。その組成物にその金属塩を添加することによって導電性が有意に向上する。この態様において金属塩は、その導電性樹脂組成物が利用されるデバイスの動作で発生する熱によって活性化される。
【0007】
一つの態様において、組成物は、硬化性樹脂、その樹脂のための硬化剤、導電性充填材、及びアクリル酸又はメタクリル酸の金属塩を除く有機酸の金属塩を含む。この技術は縮合反応、付加反応及び電子供与/電子受容反応を経由する硬化反応の化学において使用されることができる。この態様において、金属塩は反応の熱によって又は反応を開始するための熱の入力によって活性化される。
【0008】
本発明の導電性樹脂組成物に使用するのに好適な金属塩は有機酸の金属塩であり、一官能性又は多官能性のいずれでもよく、即ち、金属元素は1の原子価又は1より多い原子価を有してもよい。その塩において配位するのに適した金属元素としては、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、チタニウム(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)、水銀(Hg)、アルミニウム(Al)及び錫(Sn)などが挙げられる。
【0009】
金属塩を誘導するための有機酸は、一官能性又は多官能性のいずれでもよい。一つの態様において、有機酸は二官能性である。有機酸は炭素原子20個以下のサイズとすることができ、一つの態様において、有機酸は4〜8の炭素原子を含む。有機酸は飽和又は不飽和のいずれでもよい(アクリル酸又はメタクリル酸を除く)。
【0010】
好適な有機酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブチル酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、o−クロロ安息香酸、m−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ブロモ安息香酸、m−ブロモ安息香酸、p−ブロモ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、アントラニル酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、o−メトキシ安息香酸、m−メトキシ安息香酸、p−メトキシ安息香酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、リンゴ酸、クエン酸、並びにそれらの分枝鎖異性体及びハロゲン置換誘導体などが挙げられる。
【0011】
全てではないとしても、これらカルボン酸の多くが商業的に入手でき、又は当業者によって容易に合成されることができる。金属塩への転換反応は公知の技術であり、実施例に開示される方法によって達成される。これらカルボン酸の金属塩は一般に固体の材料であり、選ばれた樹脂組成物に組み込むために微細な粉末に粉砕することができる。金属塩は、配合物の0.05〜10重量%の充填量で樹脂組成物に充填される。一つの態様においてその充填量は約0.1〜0.5重量%である。
【0012】
これらの組成物での使用に適した典型的な樹脂は、フェノール系、エポキシ、アクリレート、マレイミド、ポリイミド、ポリウレタン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリエステル、シリコーン、ベンゾオキサジン、オキセタン、チオエン、オキサゾリン、ニトロン、ビニルエーテル、スチレン系及びケイ皮酸系を含む。特定な樹脂の選択は本発明にとっては重要なことではなく、使用者が最終使用用途に合う硬化及び接着性能で該樹脂を選択することができる。樹脂のこのような性能特性は当業者には知られていることであろう。
【0013】
該樹脂はまた導電性充填剤を含む。本明細書及び請求の範囲において用語“導電性充填剤”は (a) 粒子、フレークまたは粉体状及びそれらの任意の組合せの金属と(b)フレークまたは粉体状及びそれらの任意の組合せの非導電性充填剤であって、金属表面が被覆されているものを含むものと見做す。粒子、フレークまたは粉体の大きさ及び形状は本発明にとっては重要ではない。一般的には、該導電性充填剤の充填密度を最適にするためにフレークと粉体の組合せが用いられる。典型的には、該充填剤は20重量%〜95重量%の量で存在することになる。1つの態様において、充填剤は銀充填剤であり、70重量%〜90重量%の量で存在する。
【0014】
適当な導電性充填剤は金属性であり、金、銀、銅、コバルト、銀被覆黒鉛、銅合金、白金、パラジウム、ニッケル、アルミニウム、銀被覆銅、白金またはパラジウムの銀合金、青銅または黄銅合金を含む。本明細書で開示されているパラメーター内の特定の最終使用用途のための充填剤組成物の選択は当業者の専門技術の範囲に属するものであり、改良された伝導性を得るためには重要ではない。
【0015】
合成実験例
(実施例1:1.0 molのアジピン酸及び2.1 molの硝酸銅(II)・ヘミペンタハイドレートからのアジピン酸銅)
アジピン酸(Aldrich, A26357, 99%) (15.0 g, 0.1026 mol)及び100 mLの水を、機械的混合機、温度計及びpHプローブを備えた500 mLの4つ口丸底フラスコに混合した。反応によって白色の混合物が生成した。攪拌しながらNH40H (アッセイ 28-30%)を加え、pHを2.85から約7.0(〜7.0)まで上昇させた。この添加の際、反応温度は33℃以下に維持した。約pH 5.2で全ての固体が溶解し、無色透明な溶液が得られた。pHを約7.0に安定させた。5℃以下まで反応溶液の冷却を開始した。一方、50 mLの水中の硝酸銅(II)・ヘミペンタハイドレート(Aldrich, 223395, 98%) (50.1 g, 0.2154 mol)の溶液を調製した。その塩は容易に溶解して暗青色透明溶液になった。反応温度を6℃以下に維持しながらその硝酸銅(II)・ヘミペンタハイドレート溶液を反応溶液に加えた。添加の際すぐに、青緑色の結晶状物質が溶液から析出した。発熱は観察されなかった。添加後、青緑色の反応混合物を室温で一晩放置した。この時点でpHは約4.2だった。
【0016】
約12時間後、微細な青色粉末が青色透明液からpH 約3.5で濾過された。この固体を300 mLの水に加え、10分間混合し、濾過した。この水洗工程を繰り返した。二回目の水洗液はpH 約6で無色透明だった。水洗に続き、薄青色の粉末を400 mLのアセトンに加え、10分間混合し、濾過した。アセトン洗浄液は無色透明だった。
【0017】
粉末の薄青色ケーキを回収し、その後、真空オーブン中45℃で2日間乾燥した。上記の反応により得られたおおよその収量は22グラムだった。
【0018】
(実施例2:1.6 molのアジピン酸及び1.0 molの硝酸銅(II)・ヘミペンタハイドレートからのアジピン酸銅)
アジピン酸(Aldrich, A26357, 99%) (50.68 g, 0.3468 mol)及び100 mLの水を、機械的混合機、温度計及びpHプローブを備えた500 mLの4つ口丸底フラスコに混合した。反応によって白色の混合物が生成した。攪拌しながらNH40H (アッセイ 28-30%)を加え、pHを2.60から約7.0まで上昇させた。この添加の際、反応温度は52℃以下に維持した。pH 7.0で全ての固体が溶解し、無色透明な溶液が得られた。pHを約7.0に安定させた。10℃以下まで反応溶液の冷却を開始した。一方、50 mLの水中の硝酸銅(II)・ヘミペンタハイドレート(Aldrich, 223395, 98%) (50.0 g, 0.2151 mol)の溶液を調製した。その塩は容易に溶解して暗青色透明溶液になった。反応温度を10℃以下に維持しながらその硝酸銅(II)・ヘミペンタハイドレート溶液を反応溶液に加えた。添加の際すぐに、青緑色の結晶状固体が溶液から析出した。発熱は観察されなかった。20分間の添加後、青緑色の反応混合物を室温で一晩放置した。この時点でpHは約6.2だった。
【0019】
約12時間後、青色粉末が明青色透明液から濾過された。母液のpHの測定値は30℃で約5.7であった。この固体を250 mLの水に加え、10分間混合し、濾過した。この水洗工程をさらに二回繰り返した。全ての水洗液は無色透明だった。
【0020】
水洗に続き、薄青色の粉末を400 mLのアセトンに加え、30分間混合し、濾過した。アセトン洗浄液は無色透明だった。この工程を繰り返した。
【0021】
粉末の薄青色ケーキを真空オーブン中45℃で一晩乾燥した。上記の反応により得られた収量は約47グラムだった。
【0022】
(実施例3:1.0 molのアジピン酸及び1.0 molの硝酸銅(II)・ヘミペンタハイドレートからのアジピン酸銅)
アジピン酸(Aldrich, A26357, 99%) (29.23 g, 0.2000 mol)及び370 mLの水を、マグネチックスターラーバー、温度計及びpHプローブを備えた2Lの4つ口丸底フラスコに混合した。反応によって白色の混合物が生成した。攪拌しながらNH40H (アッセイ 28-30%)を加え、pHを約2.9から6.0まで上昇させた。約27gのNH40Hを加えた後、温度は30℃であった。全ての固体が溶解し、無色透明な溶液が得られた。15分間混合し、pHを約6.0に安定させた。硝酸銅(II)・ヘミペンタハイドレート(Aldrich, 223395, 98%) (46.50 g, 0.2000 mol)の370mL水溶液を調製した。その塩は容易に溶解して暗青色透明溶液になった。その後その溶液を低速添加漏斗(slow-add funnel)に仕込んだ。反応物を攪拌しながら、その硝酸銅(II)・ヘミペンタハイドレート溶液を(2分間にわたり)落とすようにして(essentially dumped in)投入した。添加の際、pHは約6から約4.5に低下し、青緑色の固体が溶液から析出した。温度は変化しなかった(約26℃)。
【0023】
添加から20分後、青緑色の粒状混合物が微細な青色固体に変化した。この時点でpHの測定値は4.2だった。5分以内に色が変化し、その青色の固体は明青色の透明な母液から粉末として濾過された。この固体を500 mLの冷水(<10℃)に加え、15分間混合し、濾過した。この冷水洗工程をさらに三回繰り返した。全ての水洗液は透明でほぼ無色だった。水洗に続き、青色の粉末を空気乾燥し、その後、オーブン中45℃で約2日間真空乾燥した。上記の反応により得られた収率は約82%だった。
【0024】
(実施例4:1.0 molのアジピン酸及び2.06 molの硝酸銀からのアジピン酸銀)
アジピン酸(Aldrich, A26357, 99%) (16.70 g, 0.1143 mol)及び100 mLの水を、機械的混合機、温度計及びpHプローブを備えた250 mLの4つ口丸底フラスコに混合した。反応によって白色の混合物が生成した。攪拌しながらNH40H (アッセイ 28-30%)を加え、pHを7.0まで上昇させた。結果としての温度は33℃だった。添加の際、全ての固体が溶解し、無色透明な溶液が得られた。次に氷浴中で反応物を冷却しながら、硝酸銀(Aldrich, 209139, 99+%, 40.0 g, 0.2354 mol)の溶液を40mLの水中で調製した。攪拌しながら硝酸銀溶液を反応物に30分間かけて加えた。
【0025】
添加の際、反応温度を5℃以下に維持した。pHが5.4に低下し、明るい色の固体が反応溶液から析出した。混合を一晩続けた。その後、固体は反応混合物から濾過され、300 mLの水に加え、30分間混合し、濾過した。この水洗に続き、粉末状生成物を空気乾燥し、200 mLのアセトン中で30分間混合し、濾過した。アセトン洗浄をさらに二回繰り返した。最終濾過後に生成物の白色ケーキが得られ、これを空気乾燥し、粉末状に粉砕し、その後、真空オーブン中70℃で2日間にわたり乾燥した。上記の反応により得られた収量は約38グラムだった。
【0026】
(実施例5:1.0 molのアジピン酸及び1.03 molの硝酸銀からのアジピン酸銀)
アジピン酸(Aldrich, A26357, 99%) (24.76 g, 0.1694 mol)及び100 mLの水を、機械的混合機、温度計及びpHプローブを備えた250 mLの4つ口丸底フラスコに混合した。反応によって白色の混合物が生成した。攪拌しながらNH40H (アッセイ 28-30%)を加え、pHを約7.0まで上昇させた。結果としての温度は35℃だった。添加の際、全ての固体が溶解し、無色透明な溶液が得られた。次に氷浴中で反応物を冷却しながら、硝酸銀(Aldrich, 209139, 99+%, 29.64 g, 0.1745 mol)の溶液を30mLの水中で調製した。攪拌しながら硝酸銀溶液を反応物に20分間かけて加えた。
【0027】
添加の際、反応温度を5℃以下に維持した。pHが6.6に低下し、明るい色の固体が反応溶液から析出した。混合を約30分間続けた。固体は反応混合物から濾過され、300 mLの水に加え、30分間混合し、濾過した。この水洗に続き、粉末状生成物を空気乾燥し、200 mLのアセトン中で30分間混合し、濾過した。アセトン洗浄をさらに二回繰り返した。最終濾過後に生成物の白色ケーキが得られ、これを空気乾燥し、粉末状に粉砕し、その後、真空オーブン中100℃で一晩乾燥した。上記の反応により得られた白色粉末の収量は27グラムだった。
【0028】
(実施例6:1.0 molのコハク酸及び1.03 molの硝酸銀からのコハク酸銀)
コハク酸(Aldrich, 398055, 99+%) (20.0 g, 0.1694 mol)、100 mLの水及び50mLのメタノールを、機械的混合機、温度計及びpHプローブを備えた250 mLの4つ口丸底フラスコに混合した。反応によって白色の混合物が生成した。攪拌しながらNH40H (アッセイ 28-30%)を加え、pHを2.0から7.0まで上昇させた。添加の際、全ての固体が溶解し、無色透明な溶液が得られた。次に氷浴中で反応物を冷却しながら、硝酸銀(Aldrich, 209139, 99+%, 29.64 g, 0.1745 mol)の溶液を30mLの水中で調製した。攪拌しながら硝酸銀溶液を反応物に10分間かけて加えた。
【0029】
添加の際、反応温度を5℃以下に維持した。pHが6.5に低下し、白色の固体が反応溶液からすぐに析出した。混合を約20分間続けた。その後、固体は反応混合物から濾過され、300 mLの水に加え、30分間混合し、濾過した。この水洗に続き、粉末状生成物を空気乾燥し、200 mLのアセトン中で30分間混合し、濾過した。アセトン洗浄をさらに二回繰り返した。最終濾過後に生成物の白色ケーキが得られ、これを空気乾燥し、粉末状に粉砕し、その後、真空オーブン中100℃で一晩乾燥した。上記の反応により得られたオフホワイト(off-white)粉末の収量は26.7グラムだった。
【0030】
(実施例7:1.0 molのコハク酸及び2.06 molの硝酸銀からのコハク酸銀)
コハク酸(Aldrich, 398055, 99+%) (13.5 g, 0.1143 mol)及び100 mLの水を、機械的混合機、温度計及びpHプローブを備えた250 mLの4つ口丸底フラスコに混合した。反応によって白色の混合物が生成した。攪拌しながらNH40H (アッセイ 28-30%)を加え、pHを2.4から7.2まで上昇させた。添加の際、全ての固体が溶解し、無色透明な溶液が得られた。次に氷浴中で反応物を冷却しながら、硝酸銀(Aldrich, 209139, 99+%, 40.0 g, 0.2354 mol)の溶液を40mLの水中で調製した。反応温度を5℃に維持する一方で、攪拌しながら硝酸銀溶液を反応物に45分間かけて加えた。
【0031】
硝酸銀溶液を加えると白色の固体が反応溶液からすぐに析出した。混合を2時間続けた。その後、固体は反応混合物から濾過され、300 mLの水に加え、30分間混合し、濾過した。この水洗に続き、粉末状生成物を空気乾燥し、200 mLのアセトン中で30分間混合し、濾過した。アセトン洗浄をさらに二回繰り返した。最終濾過後に生成物の白色ケーキが得られ、これを空気乾燥し、粉末状に粉砕し、その後、真空オーブン中100℃で一晩乾燥した。上記の反応により得られた白色粉末の収量は37グラムだった。
【0032】
(実施例8:1.0 molのDL-リンゴ酸及び2.06 molの硝酸銀からのリンゴ酸銀)
DL-リンゴ酸(Aldrich, 240176, 99+%) (15.33 g, 0.1143 mol)及び100 mLの水を、機械的混合機、温度計及びpHプローブを備えた250 mLの4つ口丸底フラスコに混合した。反応によって無色透明の溶液が生成した。攪拌しながらNH40H (アッセイ 28-30%)を加え、pHを1.8から7.2まで上昇させた。中和の際、その反応温度は34℃に達した。次に氷浴中で反応物を冷却しながら、硝酸銀(Aldrich, 209139, 99+%, 40.0 g, 0.2354 mol)の溶液を40mLの水中で調製した。反応温度を5℃に維持する一方で、攪拌しながら硝酸銀溶液を反応物に25分間かけて加えた。
【0033】
硝酸銀溶液を加えると白色の固体が反応溶液からすぐに析出した。混合を2時間続けた。その後、固体は反応混合物から濾過され、300 mLの水に加え、30分間混合し、濾過した。この水洗に続き、生成物を空気乾燥し、200 mLのアセトン中で30分間混合し、濾過した。アセトン洗浄をさらに二回繰り返した。最終濾過後に生成物の白色ケーキが得られ、これを空気乾燥し、粉末状に粉砕し、その後、真空オーブン中70℃で2日間乾燥した。上記の反応により得られた白色粉末の収量は37グラムだった。
【0034】
(実施例9:1.0 molのマレイン酸及び2.06 molの硝酸銀からのマレイン酸銀)
マレイン酸(Aldrich, M153, 99%) (13.27 g, 0.1143 mol)及び100 mLの水を、機械的混合機、温度計及びpHプローブを備えた250 mLの4つ口丸底フラスコに混合した。反応によって無色透明の溶液が生成した。攪拌しながらNH40H (アッセイ 28-30%)を加え、pHを1.2から7.0まで上昇させた。中和の際、その反応温度は37℃に達した。次に氷浴中で反応物を冷却しながら、硝酸銀(Aldrich, 209139, 99+%, 40.0 g, 0.2354 mol)の溶液を40mLの水中で調製した。反応温度を4〜6℃に維持する一方で、攪拌しながら硝酸銀溶液を反応物に70分間かけて加えた。
【0035】
硝酸銀溶液を加えると白色の固体が反応溶液からすぐに析出した。混合を1時間続けた。その後、固体は反応混合物から濾過され、300 mLの水に加え、30分間混合し、濾過した。この水洗に続き、生成物を空気乾燥し、200 mLのアセトン中で30分間混合し、濾過した。アセトン洗浄をさらに三回繰り返した。最終濾過後に生成物の黄褐色ケーキが得られ、これを空気乾燥し、粉末状に粉砕し、その後、真空オーブン中70℃で2日間乾燥した。上記の反応により得られた薄い黄褐色粉末の収量は31グラムだった。
【0036】
性能実験例
(実施例10:ビスマレイミド及びエポキシ配合物)
各々が23重量部の樹脂系及び77重量部の銀フレークを含む二つの配合物A及びBを調製した。樹脂系の過半部分(major portion)はビスマレイミド樹脂及びエポキシ樹脂で構成され、少量部分(minor portion)は硬化剤、触媒、接着促進剤及び希釈剤から構成された。配合物Aは有機酸の金属塩を含まなかった。配合物Bは0.5重量部のアジピン酸銀を含んだ(樹脂系の量を比例して0.5重量部まで減量した。)。これら配合物は体積抵抗率(VR)及び結合部抵抗率(bond joint resistivity: BJR)を試験した。実施例の最後に試験手順を記載する。結果は表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
有機酸の金属塩を添加することにより、導電性充填材を充填した樹脂組成物の導電率が有意に向上するという結果が得られた。
【0039】
(実施例11:ビスマレイミド及びアクリレート配合物)
各々が20重量部の樹脂系及び80重量部の銀フレークを含む二つの配合物C及びDを調製した。樹脂系の過半部分はビスマレイミド樹脂、アクリレート樹脂及びエポキシ樹脂で構成され、少量部分は硬化剤、触媒、接着促進剤及び希釈剤から構成された。配合物Cは有機酸の金属塩を含まなかった。配合物Dは0.5重量部のアジピン酸銅を含んだ(樹脂系の量を比例して0.5重量部まで減量した。)。これら配合物は体積抵抗率(VR)及び結合部抵抗率(BJR)を試験した。実施例の最後に試験手順を記載する。結果は表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
有機酸の金属塩を添加することにより、導電性充填材を充填した樹脂組成物の導電率が有意に向上するという結果が得られた。
【0042】
(実施例12:エポキシ配合物)
各々が23重量部の樹脂系及び77重量部の銀フレークを含む二つの配合物E及びFを調製した。樹脂系の過半部分はビスマレイミド樹脂及びエポキシ樹脂で構成され、少量部分は硬化剤、触媒、接着促進剤及び希釈剤から構成された。配合物Eは有機酸の金属塩を含まなかった。配合物Fは0.5重量部のアジピン酸銅を含んだ(樹脂系の量を比例して0.5重量部まで減量した。)。これら配合物は体積抵抗率(VR)及び結合部抵抗率(BJR)を試験した。実施例の最後に試験手順を記載する。結果は表3に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
有機酸の金属塩を添加することにより、導電性充填材を充填した樹脂組成物の導電率が有意に向上するという結果が得られた。
【0045】
試験手順
(体積抵抗率)
体積抵抗率(VR)は、単位厚さ当たりの直流(dc)電圧降下の、試験される材料を通過する単位面積当たりの電流の量に対する比として定義される。基本的な材料特性、体積抵抗率は、ある材料が、その材料のバルクを通過する電荷どれだけ容易に伝導するかを示しており、オーム−センチメートル(Ω−cm)で表現される。本明細書における試料の体積抵抗率は、Quadtech Digibridge又はKeithley Sourcemeter 4 上で硬化した試料(3 mm (幅)×0.05 mm (高さ)×25 mm (長さ))について試験した。二人の異なる作業員が、二つの異なる測定装置(Quadtech又はKeithley)上で各試験片について5回繰り返して試験を行った。この試験のパーセント偏差は5%未満だった。オーブン硬化された試験片は、30分間かけて175℃に昇温され、その後、15分間、175℃で保持された。スナップ硬化された試験片は、窒素下、15秒間120℃、15秒間150℃、その後、15秒間180℃、その後、15秒間200℃、そして最後に60秒間220℃で硬化された。
【0046】
(結合部抵抗率)
結合部抵抗率(BJR)は、導電性材料結合部におけるボンドラインを横切る電気抵抗の測定値である。BJRの測定は、デルタモードのKeithley nanovolt meterと共にデルタモードのKeithley Sourcemeter set上で行った。導電性材料が施され、銀メッキされた6mm×6mmのボンドパッド上に厚さ1mil(25ミクロン)にスクリーン印刷され、その後、VRのためとしてオーブン硬化された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂、導電性充填材、及びアクリル酸又はメタクリル酸の金属塩を除く有機酸の金属塩を含む導電性樹脂組成物。
【請求項2】
有機酸の金属塩を誘導するための有機酸が、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブチル酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、o−クロロ安息香酸、m−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ブロモ安息香酸、m−ブロモ安息香酸、p−ブロモ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、アントラニル酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、o−メトキシ安息香酸、m−メトキシ安息香酸、p−メトキシ安息香酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、リンゴ酸、クエン酸、並びにそれらの分枝鎖異性体及びハロゲン置換誘導体からなる群から選ばれる、請求項1の導電性樹脂組成物。
【請求項3】
有機酸の金属塩を誘導するための金属が、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、チタニウム(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)、水銀(Hg)、アルミニウム(Al)及び錫(Sn)からなる群から選ばれる、請求項1の導電性樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂が、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、チオエン樹脂、オキサゾリン樹脂、ニトロン樹脂、ビニルエーテル樹脂、スチレン樹脂及びケイ皮酸樹脂からなる群から選ばれる、請求項1の導電性樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂が、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、アクリレート樹脂、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項4の導電性樹脂組成物。
【請求項6】
導電性充填材が、金、銀、銅、コバルト、銀被覆黒鉛、銅合金、白金、パラジウム、ニッケル、アルミニウム、銀被覆銅、白金またはパラジウムとの銀合金、青銅及び黄銅合金からなる群から選ばれる、請求項1の導電性樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−2249(P2007−2249A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172676(P2006−172676)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(590000824)ナショナル スターチ アンド ケミカル インベストメント ホールディング コーポレイション (112)
【Fターム(参考)】