説明

導電性弾性体組成物

【課題】例えば電気二重層キャパシタの集電体において十分な成膜性,導電性,弾力性(機械的強度等)が得られると共に、良好な水蒸気バリア性,耐熱性が得られる導電性弾性体組成物を提供する。
【解決手段】少なくともスチレン−イソブチレンブロック共重合体を含むものをポリマーとして用い、そのポリマーに非金属系導電剤を加えて得られる導電性混合材料を硬化させ、電気二重層キャパシタの集電体等に適用される導電性弾性体組成物を製膜する。前記ポリマーにスチレン−イソブチレンブロック共重合体とスチレン−エチレン共重合体とが含まれる場合、スチレン−イソブチレンブロック共重合体/スチレン−エチレン共重合体が重量部比で90/10〜30/70の範囲内となるように調整する。前記のスチレン−イソブチレンブロック共重合体には分子量が5万〜11万のものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性弾性体組成物に関するものであり、例えば電解液を用いた電気二重層キャパシタの集電体に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
石油危機以降、省エネルギー・クリーン活動等の環境性・カイロ会議によりエネルギー枯渇問題等が提起され、エネルギー蓄積部品として例えばキャパシタ等の開発が行われてきた。例えば、電気二重層キャパシタ(以下、キャパシタと称する)においては、実用性の高いエネルギー蓄積部品として注目されてきた。このキャパシタは、水系の電解質(例えば、硫酸等の電解液)を用いたものと有機系の電解質(例えば、プロピレンカーボネート等から成る分極性電極)を用いたものとに分類することができる。
【0003】
有機系の電解質は、電位窓の幅が広いことから水系の電解質よりもエネルギー密度が大きい特徴を有する。また、電気容量を大きくする方法として、集電体の表面(電解液と接触する側の面)に対し活性炭と溶剤との混合溶液を塗布して表面処理することにより、その表面積を増やす方法が採られている。前記の活性炭と溶剤との混合溶液においては、例えばアセトニトリル,エチルベンゼン,ジメチルスルホキシド等のSP値の高い溶剤が用いられている。
【0004】
一方、水系の電解質は、前記の有機系電解質と比較すると、エネルギー密度が小さいものの、難燃性で安全性が高い特徴を有する。したがって、キャパシタにおいて水系の電解質を用いる場合には、例えば構成を積層構造にすることにより電気容量を大きくする手段が採られている。
【0005】
図3は、電解液を用いた一般的なキャパシタの一例を示す概略説明図である。図3に示すように、絶縁性の枠体31aの内周側にセパレータ31bが設けられたガスケット31を2つの集電体32a,32bにより挟持し、前記セパレータ31bと集電体32a,32bとの間に硫酸等の電解液33を充填した単セル30によって構成され、使用目的に応じて前記単セル30を複数個組み合わせ積層して用いられる。
【0006】
前記のような集電体においては、キャパシタのさらなる小型化,大容量化,高信頼性化に伴い、該集電体の成膜性(例えば、薄膜であっても表面が平坦であること),導電性(例えば、体積固有抵抗値が低いこと),弾力性(例えば、強度,伸び等の特性が良好であること)等を良好にすることが要望され、例えばポリマー(重合体)を主成分とし導電剤等が加えられた材料(以下、導電性混合材料と称する)が用いられ、その導電性混合材料を薄膜化して成る弾性体組成物が適用されている。
【0007】
集電体の抵抗分は、キャパシタにおける合成抵抗値に係るものであるため、低くすることが好ましい。この集電体の抵抗分を低くする方法としては、例えば所望のバインダーに対しカーボン等の非金属系導電剤を高充填した導電性混合材料を適用する方法が一般的に知られている。
【0008】
また、集電体の成膜性,導電性を良好にする方法として、例えば溶剤にポリマーを溶解しカーボンを充填して得た混合材料を用い、その液状の混合材料を流延法により薄膜状に製膜して集電体を得る方法が採られていたが、この方法では該集電体の膜厚を均一化することが困難であった。
【0009】
近年においては、例えばポリマー,導電剤(例えば、該ポリマー100重量部に対し、10〜60重量部の導電剤),粘着付与剤(例えば、ポリマー100重量部に対し、5〜100重量部の粘着付与剤)を含んだ導電性混合材料であって、前記のポリマーとしてスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体を用いたものを適用することにより、集電体の膜厚を均一化する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−4034号公報(段落[0002],[0006],[0009]等)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記のように単にスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体,導電剤,粘着付与剤から成る導電性混合材料を用いる方法の場合、その集電体において十分な水蒸気バリア性(電解液の漏れを防止する特性(集電体を介して電解液が漏れないようにする特性))が得られなかった。例えば、キャパシタにおいて電荷の授受が起きている際には発熱(エネルギー損失による瞬発的な発熱)が生じ電解液から水蒸気が発生し易くなるため、前記のように水蒸気バリア性の低い集電体を適用している場合には、その水蒸気が集電体へ浸透し該集電体の外部に流出することにより電解液濃度が変化、あるいは電解液自体が外部に漏れる恐れがある。このような電解液濃度の変化,電解液の漏れが生じると、キャパシタの等価直列抵抗成分が時間経過と共に変化してしまう。
【0011】
また、近年の電子部品等は高温雰囲気下(例えば、温度85℃の雰囲気下)で使用されることが多く、集電体に関して耐熱性等に対する信頼性の向上が求められているが、前記のような集電体では十分な耐熱性が得られなかった。
【0012】
本発明は前記課題に基づいてなされたものであり、例えば電気二重層キャパシタの集電体において十分な成膜性,導電性,弾力性(機械的強度等)が得られると共に、良好な水蒸気バリア性,耐熱性が得られる導電性弾性体組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題の解決を図るために、請求項1記載の発明は、少なくともポリマーと非金属系導電剤とを含んだ導電性混合材料から成るものであって(例えば、導電性混合材料をトルエン等の溶剤に溶融し得た導電性混合溶液を用い、流延法により製膜されたものであって)、前記ポリマーは、少なくともスチレン−イソブチレンブロック共重合体を含んだものであることを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、少なくともポリマーと非金属系導電剤とを含んだ導電性混合材料から成るものであって、前記ポリマーは、スチレン−イソブチレンブロック共重合体とスチレン−エチレン共重合体とを含み、そのスチレン−イソブチレンブロック共重合体/スチレン−エチレン共重合体は重量部比で90/10〜30/70の範囲内であることを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、前記請求項1または2記載の発明において、前記のスチレン−イソブチレンブロック共重合体の分子量は4万超〜12万未満(好ましくは、約5万〜11万)であることを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、前記請求項1乃至3記載の発明において、前記の導電性混合材料は、水添テルペン樹脂,ポリテルペン樹脂,脂環族飽和炭化水素樹脂,層状ケイ酸無機化合物(例えば、合成雲母,クレー等)のうち何れか一つ以上を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明は、前記の請求項1乃至4記載の発明において、前記の導電性混合材料は、水添テルペン樹脂,ポリテルペン樹脂,脂環族飽和炭化水素樹脂,層状ケイ酸無機化合物のうち何れか一つ以上を、ポリマー100重量部に対し60重量部以下の範囲内で含むことを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の発明は、前記請求項1乃至5記載の発明において、前記の非金属系導電剤は、ケッチェンブラック,アセチレンブラック,ファーネスブラックのうち何れか1種以上を含むことを特徴とする。
【0019】
請求項7記載の発明は、前記請求項1乃至6記載の発明において、前記の導電性混合材料は架橋剤を含み3次元架橋されることを特徴とする。
【0020】
本発明のように、少なくともスチレン−イソブチレンブロック共重合体と、非金属系導電剤と、を含んだ導電性混合材料を用いることにより、たとえ目的とする導電性弾性体組成物が薄膜(例えば、厚さ10μm〜50μmの薄膜)であっても、十分な成膜性,導電性,弾力性が得られるだけでなく,良好な水蒸気バリア性,耐熱性を得ることができる。
【0021】
また、スチレン−イソブチレンブロック共重合体とスチレン−エチレン共重合体とを含む導電性混合材料を用い、スチレン−イソブチレンブロック共重合体/スチレン−エチレン共重合体の重量部比を90/10〜30/70の範囲内にすることにより、耐熱性を損わないようにすることができる。
【0022】
さらに、スチレン−イソブチレンブロック共重合体の分子量は4万超〜12万未満にすることにより、水蒸気バリア性が損なわないようにすることができる。
【0023】
さらにまた、水添テルペン樹脂,ポリテルペン樹脂,脂環族飽和炭化水素樹脂,層状ケイ酸無機化合物をうち何れか1種以上を含む導電性混合材料により、水蒸気バリア性をより良好にすることができる。加えて、前記のバリア性を向上させる材料のうち層状ケイ酸無機化合物によれば、耐熱性がより良好になる。
【0024】
加えてまた、前記の非金属系導電剤として用いられるケッチェンブラック,アセチレンブラック,ファーネスブラックによれば、良好な導電性を付与することができる。加えてさらに、前記の架橋剤を用いることにより、目的とする弾性体組成物が3次元架橋状態となり、導電性や弾力性がより良好になる。
【発明の効果】
【0025】
以上示したように本発明によれば、たとえ導電性弾性体組成物において薄膜であっても、良好な成膜性,導電性,弾力性,水蒸気バリア性,耐熱性が得られ、例えば電気二重層キャパシタ等のエネルギー蓄積部品の小型化,大容量化,高信頼性化を図ることができ、省エネルギー・クリーン活動等に貢献することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態における導電性弾性体組成物を図面等に基づいて詳細に説明する。
【0027】
本実施の形態は、導電性弾性体組成物に関するものであり、ポリマー,非金属系導電剤を含んだ導電性混合材料を用いた導電性弾性体組成物に関するものであって、そのポリマーが少なくともスチレン−イソブチレンブロック共重合体を含んだものである。この導電性混合材料を薄膜状に硬化させて得たものを、例えば硫酸を主成分とする電解液を用いた電気二重層キャパシタの集電体に適用することにより、その集電体において良好な成膜性,導電性,弾力性,水蒸気バリア性,耐熱性を得ることができる。
【0028】
前記の導電性混合材料において、スチレン−イソブチレンブロック共重合体,スチレン−エチレン共重合体,非金属系導電剤を含んだポリマーを用いる場合、スチレン−イソブチレンブロック共重合体とスチレン−エチレン共重合体との混合比(以下、スチレン−イソブチレンブロック共重合体/スチレン−エチレン共重合体と称する)は、重量部比で90/10〜30/70の範囲内となるように調整することが好ましい。
【0029】
また、前記のスチレン−イソブチレンブロック共重合体には分子量が5万〜11万のものを用いることが好ましい。
【0030】
さらに、前記のスチレン−イソブチレンブロック共重合体の具体例としては、直鎖状の共重合体(所謂ブロックコポリマー)であって、比重が0.92〜0.96程度,スチレン成分とエチレン成分との比(スチレン成分/エチレン成分)が10/90〜35/65の範囲内,破断強度(スチレン−イソブチレンブロック共重合体単体の破断強度)が10MPa〜20MPa(好ましくは、14MPa〜18MPa)の範囲内のものを適用することが好ましい。
【0031】
前記の導電性混合材料には、目的とする集電体の水蒸気バリア性を向上させるために、例えば水添テルペン樹脂,ポリテルペン樹脂,脂環族飽和炭化水素樹脂,層状ケイ酸無機化合物(例えば、合成雲母,タルク)等の材料(以下、バリア性向上剤と称する)を加えても良く、そのバリア性向上剤はポリマー100重量部に対し60重量部以下の範囲で用いることが好ましい。
【0032】
また、前記の非金属系導電剤には、例えばケッチェンブラック,アセチレンブラック,ファーネスブラック等のうち少なくとも一つから成る導電剤を適用することができる。
【0033】
さらに、前記の導電性混合材料を硬化させて得られる導電性弾性体組成物において良好な3次元架橋状態を付与するために、該導電性混合材料に対し架橋剤を加えることが好ましい。
【0034】
さらにまた、前記の導電性混合材料により薄膜の導電性弾性体組成物を得る場合には、例えば該導電性混合材料をトルエン等の溶剤に溶融し、その得られた溶液(以下、導電性混合溶液と称する)を用い流延法を適用することにより達成できる。この導電性混合溶液においては、該溶液中に導電性混合材料を均一に分散させるための混練・混合性や成膜性を考慮して、粘度や固形分を調整(例えば、粘度が約700cps〜6000cpsの範囲内で固形分が約18%〜25%の範囲内となるように調整)することが好ましい。
【0035】
前記の導電性混合溶液の粘度が高すぎたり低すぎたりする場合、その導電性混合溶液を用いて薄膜の導電性弾性体組成物を得ると、該導電性弾性体組成物の膜厚が不均一になる恐れがある。
【0036】
例えば、前記の導電性弾性体組成物の強度を高くし得る樹脂(例えば、樹脂単体の破断強度が約18MPa超となるもの)を用いた場合や、該強度を低くし得る樹脂(例えば、樹脂単体の破断強度が約14MPa未満となるもの)を用いた場合には、それぞれ導電性混合溶液の粘度が高過ぎたり低過ぎたりし、目的とする導電性弾性体組成物の膜厚が不均一になる恐れはあるが、前記のように樹脂単体の破断強度が10MPa〜20MPaの範囲内であれば、適度な粘度を有する導電性混合材料が得られ目的とする導電性弾性体組成物の膜厚を均一にでき、例えば前記の電気二重層キャパシタの集電体として十分適用できる。
【0037】
[実施例]
次に、本実施の形態における導電性弾性体組成物の実施例を詳細に説明する。本実施例では、下記表1に示す種々の樹脂(後述する樹脂P1〜P4),導電剤(後述する導電剤C1〜C3),可塑剤,添加剤(バリア性向上剤;後述するバリア剤B1〜B4),架橋剤を用いて導電性混合材料(後述する導電性混合材料M1〜M35)を得、それら導電性混合材料を用いて作製した種々の集電体の試料において以下に示す方法で成形性,導電性(体積固有抵抗値),弾力性(破断強度,伸び率),バリア性,耐熱性をそれぞれ調べた。
【0038】
【表1】

【0039】
まず、前記の樹脂P1〜P4,導電剤C1〜C3,可塑剤,バリア剤B1〜B4,架橋剤を適宜配合して導電性混合材料M1〜M35をそれぞれ得、それら導電性混合材料M1〜M35をトルエン(例えば、ポリマー100重量部,導電剤50重量部に対し300重量部のトルエン)と共にプラネタリーミキサーにより混練した後、それぞれインクミル(3本ロール)で分散混合することにより各々の導電性混合溶液をそれぞれ作製した。これら各導電性混合溶液に用いた導電性混合材料M1〜M35の樹脂P1〜P4,導電剤C1〜C3,可塑剤,バリア剤B1〜B4,架橋剤の配合割合および合計重量部は下記表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
その後、図1A,Bのメイヤーバーコート法の概略説明図に示すように、アクリル板1の一端面側に対して略矩形状で厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートから成る薄膜(以下、PET薄膜と称する)2を載置し、そのPET薄膜2上に対して各導電性混合溶液(導電性混合材料M1〜M35を用いた導電性混合溶液)をそれぞれ滴下し、ガラス棒3を使用(例えば、図1Aの矢印方向に掃引)して流延(目的とする試料4の厚さが50μmとなるように流延)することにより、前記PET薄膜2表面を該導電性混合溶液で被覆した後、オーブン(温度120℃)により乾燥(20分間乾燥)して硬化させ、薄膜(50μm)の試料4をそれぞれ作製した。
【0042】
なお、前記試料4をPET薄膜2から剥離し易くするために、例えば図1Bに示すように前記PET薄膜2の外周部付近に対して例えば厚さ約150μmのセロテープ(NICHIBAN社の登録商標)5をスペーサとして被着する、または前記PET薄膜2表面を予め離形処理してから、図1Aに示すように試料4を作製することが好ましい。
【0043】
[成膜性]
前記のように作製した試料4表面における罅割れ等の有無を観察した後、その試料4と共にPET薄膜2をアクリル板1から剥離して折曲(約90°折曲)し、その折曲した部分の試料4における罅割れ等の有無を観察した。また、前記PET薄膜2から試料4を剥離した際に、その試料4の伸縮,破断,反り(例えば、反りが生じ、シール性試験等において取り扱いが困難になる状態)等の有無を観察した。
【0044】
[導電性]
前記の剥離した試料4において、JIS−K7194に準拠(4探針法)し測定器(三菱化学製のロレスターGP)を用いて体積固有抵抗値(Ω・cm)を測定した。
【0045】
[弾力性]
前記試料4から幅5mm,長さ150mmの試験片を作成し、JIS−K7127(プラスチックフィルムの試験方法)に準拠して、前記の試験片を該試験片の長さ方向に引張る(引張り速度500mm/min.で引張る)ことにより破断強度を測定すると共に、その破断した際の伸び率を測定した。
【0046】
[バリア性]
カップ法に準拠して、図2の概略説明図に示すように水(約40gの水)が充填されたシャーレ(直径約120mmのシャーレ)9の開口部を、前記試料4を裁断して得た略矩形状のフィルム(約150mm×150mmの略矩形状のフィルム)10で被覆およびセロテープ5で封止し、そのシャーレ9を加熱(オーブンにより温度100℃で60分間加熱)してから室温下にて放置(10分間放置)し、前記オーブンによる加熱前および加熱後の前記シャーレ9の重量減少率を測定した。
【0047】
[耐熱性]
前記試料4を加熱(オーブンにより温度85℃で30分間加熱)してから室温下にて放置(30分間放置)し、その試料4に関して前記の[弾力性]の項目に示す方法により伸び率(後述(1)式中では、加熱・放置後の伸び率)を測定し、下記式に基づいて伸び率の変化を求めることにより耐熱性を調べた。
【0048】
「耐熱性」=((「加熱前の試料4における伸び率」−「加熱・放置後の試料4における伸び率」)/「加熱前の試料4における伸び率」)×100……(1)
前記のように各導電性混合材料M1〜M35を用いた場合における試料の成形性,導電性,弾力性,バリア性,耐熱性の結果を下記表3〜6に分けて示す。なお、下記表3〜6の成膜性の欄では、試料において罅割れや伸縮,破断,反り等の外観変化が観察された場合を記号「×」で示し、前記の外観変化が殆ど観察されず表面がほぼ平坦であった場合(集電体として適用しても何ら問題がない程度の場合)を記号「○」で示し、前記の外観変化が全く観察されず表面が平坦であった場合を記号「◎」で示した。
【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
[表3に示す結果]
まず、前記の表3において、樹脂P1(すなわち、スチレン−エチレン共重合体)のみをポリマーとし導電剤C1が含まれた導電性混合材料M1,M6から成る試料は、良好な成膜性,導電性を有し高い伸び率が得られたが、たとえ可塑剤や架橋剤を用いても、水蒸気バリア性,耐熱性は低く十分な破断強度が得られなかった。
【0054】
また、前記の導電性混合材料M1と同様の組成で、樹脂P1の替わりに樹脂P2あるいはP4(すなわち、分子量が約1万〜4万、あるいは約12万のスチレン−イソブチレンブロック共重合体)が含まれた導電性混合材料M2,M4から成る試料は、十分な導電性は得られたが成膜性が低く、弾力性,水蒸気バリア性,耐熱性を測定することができなかった。
【0055】
一方、前記の導電性混合材料M1と同様の組成で、前記の樹脂P1の替わりに樹脂P3(すなわち、分子量が約5万〜11万のスチレン−イソブチレンブロック共重合体)が含まれた導電性混合材料M3,M5,M7から成る試料は、成膜性,導電性,弾力性,水蒸気バリア性,耐熱性の全てがそれぞれ良好であった。また、導電性混合材料M5,M7から成る試料のように可塑剤や架橋剤が含まれている場合には、前記の導電性,弾力性,水蒸気バリア性がより良好(導電性混合材料M3から成る試料よりも良好)になることを読み取れる。
【0056】
[表4に示す結果]
次に、前記の表4において、前記の導電性混合材料M6と同様の組成で、樹脂P1と共に樹脂P3が含まれ(すなわち、スチレン−エチレン共重合体、および分子量が約5万〜11万のスチレン−イソブチレンブロック共重合体が含まれ)、スチレン−イソブチレンブロック共重合体/スチレン−エチレン共重合体が重量部比で10/90の導電性混合材料M8から成る試料は、良好な成膜性,導電性,弾力性,水蒸気バリア性が得られたが、耐熱性が十分ではなかった。
【0057】
一方、前記の導電性混合材料M6と同様の組成で、樹脂P1と共に樹脂P3が含まれ(すなわち、スチレン−エチレン共重合体、および分子量が約5万〜11万のスチレン−イソブチレンブロック共重合体が含まれ)、スチレン−イソブチレンブロック共重合体/スチレン−エチレン共重合体が重量部比で30/70〜90/10の導電性混合材料M9〜M12から成る試料は、成膜性,導電性,弾力性,水蒸気バリア性,耐熱性の全てがそれぞれ良好であった。
【0058】
[表5に示す結果]
次に、前記の表5において、前記の導電性混合材料M10と同様の組成で、バリア剤B1〜B3のうち何れかが70重量部含まれた導電性混合材料M17,M22,M27から成る試料においては、成膜性が低く導電性,弾力性,水蒸気バリア性,耐熱性を測定することができなかった。また、前記バリア剤B4が70重量部含まれた導電性混合材料M32から成る試料においても、成膜性が低く、導電性を測定することができたものの弾力性,水蒸気バリア性,耐熱性は測定することができなかった。
【0059】
一方、前記の導電性混合材料M10と同様の組成で、バリア剤B1〜B4のうち何れかが2〜50重量部の範囲で含まれた導電性混合材料M13〜M16,M18〜M21,M23〜M26,M28〜M31から成る試料は、成膜性,導電性,弾力性,水蒸気バリア性,耐熱性の全てがそれぞれ良好であった。特に、バリア剤B4(すなわち、層状ケイ酸無機化合物)が含まれた導電性混合材料M28〜M31から成る試料においては、他の導電性混合材料から成る試料よりも耐熱性が良好であることを読み取れる。
【0060】
[表6に示す結果]
次に、前記の表6に示す結果において、前記の導電性混合材料M30と同様の組成で、50重量部の導電剤C1の替わりに導電剤C2またはC3が60重量部含まれ、層状ケイ酸無機化合物が10重量部含まれた導電性混合材料M33,M34から成る試料は、良好な成膜性,導電性を有し、十分な弾力性,水蒸気バリア性,耐熱性が得られた。また、前記の導電性混合材料M30と同様の組成で、層状ケイ酸無機化合物と可塑剤とを含まない導電性混合材料M35から成る試料においても、良好な成膜性,導電性を有し、十分な弾力性,水蒸気バリア性,耐熱性が得られた。
【0061】
なお、前記の実施例では樹脂P3として分子量が約5万〜11万のものを用いたが、その分子量が約4万超〜12万未満の範囲内であれば、導電性混合材料や導電性混合溶液の混練・混合性を十分に確保でき、導電性弾性体組成物において良好な成膜性,導電性,弾力性,水蒸気バリア性,耐熱性が得られることを確認できた。
【0062】
また、前記の実施例では厚さ50μmの試料を用いたが、その厚さが10μm〜50μmの範囲内であれば、導電性弾性体組成物において十分良好な成膜性,弾力性を得ることができ、例えば該導電性弾性体組成物を集電体として用い種々の構成部材(枠体,セパレータ等)と共に積層し熱圧着法等によりキャパシタを構成しても、その際に集電体が破断等を起こす恐れはない。
【0063】
さらに、前記の実施例では、各試料において導電剤C1〜C3やバリア剤B1〜B4をそれぞれ何れか一種類用いたが、それら導電剤C1〜C3やバリア剤B1〜B4はそれぞれ2種類以上用いた場合であっても、同様の作用効果が得られることを確認できた。
【0064】
さらにまた、前記の実施例では前記のバリア剤B1〜B4を50重量部以下の範囲内で用いた場合に水蒸気バリア性や耐熱性等が良好になることを示したが、そのバリア剤B1〜B4を60重量部以下の範囲内で用いた場合であっても、同様の作用効果が得られることを確認できた。
【0065】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施例における試料の製膜方法を示す概略説明図。
【図2】本実施例における試料のバリア性を測定する方法の概略説明図。
【図3】電解液を用いた一般的なキャパシタの一例を示す概略説明図。
【符号の説明】
【0067】
4…試料
30…キャパシタ
31…ガスケット
31a…枠体
31b…セパレータ
32a,32b…集電体
33…電解液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリマーと非金属系導電剤とを含んだ導電性混合材料から成るものであって、
前記ポリマーは、少なくともスチレン−イソブチレンブロック共重合体を含んだものであることを特徴とする導電性弾性体組成物。
【請求項2】
少なくともポリマーと非金属系導電剤とを含んだ導電性混合材料から成るものであって、
前記ポリマーは、スチレン−イソブチレンブロック共重合体とスチレン−エチレン共重合体とを含み、そのスチレン−イソブチレンブロック共重合体/スチレン−エチレン共重合体は重量部比で90/10〜30/70の範囲内であることを特徴とする導電性弾性体組成物。
【請求項3】
前記のスチレン−イソブチレンブロック共重合体の分子量は4万超〜12万未満であることを特徴とする請求項1または2記載の導電性弾性体組成物。
【請求項4】
前記の導電性混合材料は、水添テルペン樹脂,ポリテルペン樹脂,脂環族飽和炭化水素樹脂,層状ケイ酸無機化合物のうち何れか一つ以上を含むことを特徴とする請求項1乃至3記載の導電性弾性体組成物。
【請求項5】
前記の導電性混合材料は、水添テルペン樹脂,ポリテルペン樹脂,脂環族飽和炭化水素樹脂,層状ケイ酸無機化合物のうち何れか一つ以上を、ポリマー100重量部に対し60重量部以下の範囲内で含むことを特徴とする請求項1乃至4記載の導電性弾性体組成物。
【請求項6】
前記の非金属系導電剤は、ケッチェンブラック,アセチレンブラック,ファーネスブラックのうち何れか1種以上を含むことを特徴とする請求項1乃至5記載の導電性弾性体組成物。
【請求項7】
前記の導電性混合材料は架橋剤を含み3次元架橋されることを特徴とする請求項1乃至6記載の導電性弾性体組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−36945(P2006−36945A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219539(P2004−219539)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000158840)鬼怒川ゴム工業株式会社 (171)
【Fターム(参考)】