説明

導電性微粒子、絶縁性樹脂被覆導電性微粒子及び異方性導電材料

【課題】接続抵抗値が低く導通信頼性に優れた導電性微粒子、絶縁性樹脂被覆導電性微粒子及び異方性導電材料を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の導電性微粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面に形成された導電性金属層から構成される導電性微粒子であって、前記基材粒子が、個数平均粒子径が100μm以下のビニル系重合体微粒子であり、該導電性微粒子は、表面が導電性金属で形成された多数の突起を有しており、これらの突起が粒子表面方向に房状に並ぶことで前記導電性金属層が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続抵抗値が低く導通信頼性に優れた導電性微粒子、並びに、該導電性微粒子を用いてなる絶縁性被覆導電性微粒子及び異方性導電材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ(LCD)パネルやプラズマディスプレイ(PDP)パネルを駆動する信号を送るドライバICを搭載したテープキャリアーパッケージ(TCP)やチップオンフィルム(COF)パッケージとパネルとの接続、あるいはTCPやCOFとプリント配線基板との接続、さらにはドライバICをパネル上にそのまま実装するCOG(チップオンガラス)等に、異方性導電フィルム(ACF)や異方性導電ペースト(ACP)等の異方性導電材料が使用されている。このような異方性導電材料に用いられる導電性微粒子は、金属粒子や基材粒子とする重合体微粒子の表面を導電性金属層で被覆したものが使用されている。
【0003】
しかしながら、近年の異方性導電材料を用いた電極間の接続においては、電子機器や電子部品の小型化に伴い、基板上に形成される電極が一層微細になってきている。このような微細電極を使用する場合でも十分な接続信頼性を確保するために、より接続抵抗値を低く抑えることのできる導電性微粒子が求められている。
【0004】
そこで、接続抵抗値を低減するため、導電性微粒子の表面に突起を形成する試みがなされている。例えば、母粒子の表面に子粒子を付着させて作られ、表面に突起を持った非電導性微粒子の表面に、金属メッキを施してなる導電性微粒子が開示されている(特許文献1参照)。この技術では、突起部分に非導電性の材料を用いているため、接続抵抗値を低くし導通性を良好にするには不十分であった。また、母粒子に付着した子粒子の密着性が不十分であるため、バインダー樹脂中に導電性微粒子を分散させる際に突起を形成する子粒子部分が脱離してしまい、突起による接続抵抗値の低減を図ることができないという問題があった。
【0005】
また、平均粒径が1〜20μmの球状芯材粒子表面上に無電解めっき法によりニッケル又はニッケル合金皮膜を形成した導電性無電解めっき粉体において、該皮膜最表層に0.05〜4μmの微小突起を有し、且つ該皮膜と該微小突起とは実質的に連続皮膜であることを特徴とする導電性無電解めっき粉体が開示されている(特許文献2参照)。この技術では、球状芯材粒子上へのニッケル皮膜の形成と同時にメッキ浴の自己分解が起こり、該自己分解物が芯材粒子表面上に捕捉されることによって、微小突起の核が生成し、これを成長させて突起を形成させているが、この手法では突起の数や大きさ、形状を制御することが困難であり、導通信頼性の向上を図ることは困難であった。
【0006】
さらに、基材微粒子の表面が導電性膜で被覆されており、前記導電性膜の表面に隆起した複数の突起を有する導電性微粒子であって、前記基材微粒子の表面に、前記導電性膜の表面を隆起させている芯物質を有し、前記芯物質は、前記導電性膜を構成している導電性物質とは異なる導電性物質を用いて構成されていることを特徴とする導電性微粒子が開示されている(特許文献3参照)。この技術では突起を形成する芯物質が、金属で構成されている点で特許文献1に開示されている技術と比較して接続抵抗値の低減に有効である。しかし、基材微粒子に付着した芯物質の密着性が不十分であるため、バインダー樹脂中に導電性微粒子を分散させる際に突起を形成する芯物質部分が脱離してしまい、突起による接続抵抗値の低減を図ることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−36902号公報
【特許文献2】特開2000−243132号公報
【特許文献3】国際公開第2005/73985号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、接続抵抗値導を低く抑えることを目的として、表面に突起を形成した導電性微粒子が種々提案されているが、いずれにおいても基材粒子に対する突起の密着性が不十分であった。そのため、導電性微粒子を使用する際(例えば、樹脂と混合する際)に突起が脱落してしまうことが多く、接続抵抗値の低減効果が小さかった。また、従来の突起を形成した導電性微粒子では、粒子表面全体において突起が一様に分布していないため、突起による接続抵抗値低減効果にバラツキがあり、突起が形成されていない部分が電極と対向した場合には、接続抵抗値が低減できないことがあった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、低圧接続でも初期抵抗値が低い接続が得られる導電性微粒子、絶縁性樹脂被覆導電性微粒子及び異方性導電材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決することができた本発明の導電性微粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面に形成された導電性金属層から構成される導電性微粒子であって、前記基材粒子が、個数平均粒子径が100μm以下のビニル系重合体微粒子であり、該導電性微粒子は、表面が導電性金属で形成された多数の突起を有しており、これらの突起が粒子表面方向に房状に並ぶことで前記導電性金属層が形成されていることを特徴とする。粒子表面のFE−SEM画像において、1μm四方内に存在する突起の個数は30個〜500個であることが好ましく、前記突起の平均長径は50nm〜300nmが好ましい。前記突起の平均長径と平均短径との比(長径/短径)は1.2〜3.0であることが好ましい。前記導電性金属層の厚さは0.01μm〜0.30μmが好ましい。導電性微粒子の個数平均粒子径は3μm未満が好ましい。前記基材粒子は、樹脂成分を含んでおり、この樹脂成分を形成する単量体成分として、多官能アクリレートが含まれる態様、多官能(メタ)アクリレート及び芳香族ジビニル化合物が含まれる態様が好ましい。
【0010】
本発明には、前記導電性微粒子表面の少なくとも一部に絶縁性樹脂層を有する絶縁性樹脂被覆導電性微粒子;前記導電性微粒子又は前記絶縁性樹脂被覆導電性微粒子を含有する異方性導電材料も含まれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の導電性微粒子は突起が粒子表面方向に房状に並ぶことで導電性金属層が形成されているため、突起が脱落しにくい。よって、本発明の導電性微粒子、絶縁性樹脂被覆導電性微粒子又は異方性導電材料を用いることにより、低圧接続でも初期抵抗値が低い接続が行える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】製造例2で得られた導電性微粒子のFE−SEM画像である。
【図2】製造例2で得られた導電性微粒子のFE−SEM画像拡大図である。
【図3】製造例5で得られた導電性微粒子のFE−SEM画像である。
【図4】製造例5で得られた導電性微粒子のFE−SEM画像拡大図である。
【図5】製造例6で得られた導電性微粒子のFE−SEM画像である。
【図6】製造例6で得られた導電性微粒子のFE−SEM画像拡大図である。
【図7】製造例9で得られた導電性微粒子のFE−SEM画像である。
【図8】製造例9で得られた導電性微粒子のFE−SEM画像拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、導電性微粒子の表面に突起を形成すれば、電極表面に形成された酸化皮膜を突き破って抵抗値を下げるのに有効であること;突起を房状に密集した状態で並べることにより、突起が導電性微粒子から脱落し難くなり導通信頼性が向上することを見出し、本発明を完成した。
【0014】
1.導電性微粒子
1−1.突起
本発明の導電性微粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面に形成された導電性金属層から構成されており、基材粒子表面に多数の突起が房状に密集して並ぶことで導電性金属層を形成していることが特徴である。「房状」とは、個々の突起(好ましくは、膨らんだ中実の袋状突起)がその周囲に存在する複数の突起と接するように形成されている状態をいう。従って、粒子表面方向に突起が密に並ぶことになる。本発明の導電性微粒子において、突起は粒子表面の全体に形成されていることが好ましいが、粒子表面積に対して例えば、90%以上突起が形成されていればよい。前記突起は粒子表面積に対して95%以上形成されていることが好ましく、より好ましくは98%以上である。このように房状に突起が密集して形成されていることにより、個々の突起が互いに接し合うため、突起が導電性微粒子から脱落し難くなる。また、粒子表面全体に均一に突起が形成されているため、突起の効果にバラツキがなく、安定して低い初期抵抗値が達成できる。
【0015】
本発明の導電性微粒子は、粒子表面のFE−SEM画像において、1μm四方内に存在する突起の個数が30個〜500個であることが好ましい。1μm四方内に存在する突起の個数が30個以上であれば、個々の突起が大きくなりすぎず、突起の脱落をより抑制することができる。また、前記個数が500個以下であれば、個々の突起が小さくなりすぎず、電極を加圧接続する際に電極表面に形成された酸化皮膜をより突き破りやすくなり、また、バインダー樹脂等を排除し易くなる。1μm四方内に存在する突起の個数は40個以上がより好ましく、さらに好ましくは50個以上であり、400個以下がより好ましく、さらに好ましくは300個以下である。なお、1μm四方内に存在する突起の個数の測定方法は後述する。
【0016】
前記突起の個数は、導電性微粒子に付与したい特性に応じて適宜調節することが好ましい。
例えば、基材粒子と導電性金属層との密着性をより向上させたい場合には、粒子表面のFE−SEM画像における1μm四方内に存在する突起の個数を80個以上(より好ましくは90個以上、さらに好ましくは95個以上)とすることが好ましい。これにより、個々の突起間の谷部が多く存在することとなるため、該谷部によるアンカー効果がより大きくなり、基材粒子と導電性金属層との密着性がより向上する。
【0017】
また例えば、初期抵抗値をより低くしたい場合には、粒子表面のFE−SEM画像における1μm四方内に存在する突起の個数を80個未満(より好ましくは75個以下、さらに好ましくは70個以下)とすることが好ましい。これにより、個々の突起形状を大きくすることができ、電極を加圧接続する際に電極表面に形成された酸化皮膜をより突き破りやすくなり、また、突起間の谷部もより幅広くかつより深くなるため、バインダー樹脂を排除し易くなる。
【0018】
前記突起の正面視の外周形状は特に限定されず、等方性でも非等方性でもよいが、周囲の突起との接点を増やすために、各突起の正面視の外周形状は非等方性が好ましい。特に、突起の平均長径と平均短径との比(長径/短径)が1.2以上が好ましく、より好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.4以上であり、3.0以下が好ましく、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.0以下である。突起の正面視の外周形状、平均長径及び平均短径はFE−SEM画像を用いて確認することができる。
【0019】
前記突起の正面視の平均長径は、50nm以上が好ましく、より好ましくは70nm以上、さらに好ましくは100nm以上であり、300nm以下が好ましく、より好ましくは250nm以下、さらに好ましくは220nm以下である。突起の平均長径が50nm以上であれば、個々の突起が小さくなりすぎず、電極を加圧接続する際に電極表面に形成された酸化皮膜をより突き破りやすくなり、また、バインダー樹脂等を排除し易くなる。また、突起の平均長径が300nm以下であれば、個々の突起が大きくなりすぎず、突起の脱落をより抑制することができる。
【0020】
前記突起の平均長径は、導電性微粒子に付与したい特性に応じて適宜調節することが好ましい。
例えば、基材粒子と導電性金属層との密着性をより向上させたい場合には、突起の平均長径を150nm未満(より好ましくは140nm以下、さらに好ましくは130nm以下)とすることが好ましい。これにより、個々の突起が小さくなり突起の個数を増やすことができ、突起間の谷部が多く存在することとなるため、該谷部によるアンカー効果がより大きくなり、基材粒子と導電性金属層との密着性がより向上する。
【0021】
また例えば、初期抵抗値をより低くしたい場合には、突起の平均長径を150nm以上(より好ましくは160nm以上、さらに好ましくは170nm以上)とすることが好ましい。これにより、個々の突起形状を大きくすることができ、電極を加圧接続する際に電極表面に形成された酸化皮膜をより突き破りやすくなり、また、突起間の谷部もより幅広くかつより深くなるため、バインダー樹脂を排除し易くなる。
【0022】
1−2.導電性金属層
導電性金属層を構成する金属は、導電性を持つ化合物であればよく特に限定されない。例えば、ニッケル、パラジウム、金、銀、銅、白金、鉄、スズ、鉛、コバルト、チタン、ビスマス、亜鉛、アルミニウム、インジウム、又はこれらの合金等が挙げられる。これらの中でも、金、ニッケル、パラジウム、銀、銅が導電性に優れており好ましい。また、導電性金属層は、単層でもよいし複層であってもよく、複層の場合には、例えば、ニッケル−金、ニッケル−パラジウム、ニッケル−パラジウム−金、ニッケル−銀等の組み合わせが好ましく挙げられる。
【0023】
本発明の導電性微粒子において、導電性金属層の厚さは0.01μm〜0.30μmが好ましい。導電性金属層膜厚が0.30μm以下であれば、基材粒子と導電性金属層の密着性がより向上し、導電性金属層膜厚が0.01μm以上であれば、凸部の効果による接続抵抗値の低減効果がより大きくなり、接続信頼性もより向上する。
【0024】
本発明の導電性微粒子は、個数平均粒子径が好ましくは50μm以下である。LCD導通用の導電性微粒子として用いる場合は、液晶層面内スペーサとほぼ同様の粒子径を有することが好ましく、具体的には4μm〜11μmの範囲であることが好ましい。異方性導電フィルム(ACF)用の導電性微粒子として用いる場合には、個数平均粒子径が4.0μm以下であることが好ましい。また、異方性導電ペースト(ACP)用の導電性微粒子として用いる場合には、個数平均粒子径が11μm〜50μmであることが好ましい。
【0025】
導電性微粒子が微細化するほど、異方性導電材料を調製する際の分散シェアが高くなる。そのため、従来の表面に突起を有する導電層微粒子では、表面の突起がより脱落し易くなる。しかし、本発明の導電性微粒子では一様な微細な突起で覆われているために、高シェアにおいても脱落が抑止される。また、導電性微粒子が微細化すれば電極との接触面積が小さくなり抵抗値を低減することは通常難しくなるものの、本発明の導電性微粒子であれば、表面が一様な微細な突起で覆われているために電極表面の酸化皮膜を突き破る能力が高く、なお且つ多数の突起に基づく広い接続面積が確保されることとなり、低い接続抵抗が達成される。しかも上述のように異方性導電材料に、導電性微粒子から脱落した突起の混入が抑制されているために、隣接する端子間でのリーク現象も生じ難い。従って、本発明の導電性微粒子においては、対向する接続端子間距離が小さくなるほど、また隣接する配線パターン間の距離が小さくなるほど、これらの導電接続に用いる異方性導電材料に用いる場合に、本発明の効果を特に顕著に発揮することとなる。
【0026】
このような理由から、個数平均粒子径は、3.0μm未満がより好ましく、さらに好ましくは2.8μm以下であり、好ましくは1.1μm以上、より好ましくは1.3μm以上、さらに好ましくは1.6μm以上である。なお、本発明における導電性粒子の平均粒子径は、フロー式粒子像解析装置(シスメックス社製「FPIA−3000」)により測定される個数平均粒子径を意味する。
【0027】
2.基材粒子
次に、基材粒子について説明する。本発明に用いられる基材粒子はビニル系重合体を含有する粒子であれば特に限定されず、ビニル系重合体のみからなる粒子や、有機質と無機質とが複合された材料からなる有機質無機質複合粒子のいずれも使用することができる。なお、本発明のビニルには、(メタ)アクリロイルも含まれる。ビニル系重合体微粒子としては、具体的には、(メタ)アクリル系(共)重合体、(メタ)アクリル系−スチレン系共重合体等のビニル系重合体のみからなる粒子や、重合性(ビニル基含有の意味;以下同じ)アルコキシシランのラジカル重合体及び/又は縮重合体、重合性アルコキシシランとビニル系モノマーとの共重合体等の有機質無機質複合粒子が挙げられる。以下の説明で「ビニル重合体」というときは、ビニル系モノマーが重合した有機質のみの重合体を意味する。また、本発明でいう「ビニル系重合体微粒子」は、「ビニル重合体」からなる成分や骨格を含む粒子を意味する。これらのビニル系重合体微粒子の製造方法の詳細は後述するが、乳化重合、懸濁重合、シード重合、ゾルゲル法等が採用でき、中でも、シード重合やゾルゲル法は粒度分布を小さくすることができるため好ましい。なお、微粒子の組成は、GC−MS等で確認することができる。
【0028】
2−1.ビニル重合体粒子
ビニル重合体粒子は、ビニル系単量体を含有する単量体混合物を含む単量体組成物を重合して得られる。単量体混合物に含有させるビニル系単量体としては、1分子中に1個のビニル基を有する非架橋性単量体、1分子中に2個以上のビニル基を有する架橋性単量体のいずれも使用することができる。
【0029】
前記非架橋性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類等の(メタ)アクリル系単量体:スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、パラヒドロキシスチレン等のスチレン系単量体:2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル類:2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル類等が挙げられる。なお、前記非架橋性単量体として(メタ)アクリル酸を用いる場合には、部分的にアルカリ金属で中和してもよい。これらの非架橋性単量体は単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。これらの非架橋性単量体の中でも、分子内にエステル結合を有さない単量体を必須成分として用いることが好ましく、中でも、スチレン系単量体が好ましく、特に、スチレン、α−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン等が好適である。
【0030】
架橋性単量体としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、デカエチレングリコールジメタクリレート、ペンタデカエチレングリコールジメタクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及び、これらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等の架橋剤;ポリブタジエン、ポリイソプレン不飽和ポリエステル等が挙げられる。これらの架橋性単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、分子内にエステル結合を有さない単量体を必須成分として用いることが好ましく、中でも、多官能アクリレート(より好ましくは2官能アクリレート)を用いる態様;多官能(メタ)アクリレートと芳香族ジビニル化合物とを併用する態様が好適である。
【0031】
架橋性単量体として、多官能アクリレート(より好ましくは2官能アクリレート)を用いた場合、あるいは、多官能(メタ)アクリレート及び芳香族ジビニル化合物を用いた場合には、房状に並んだ突起を有する導電性微粒子が得られやすいため好ましい。すなわち、本発明の導電性微粒子を構成する基材粒子としては、樹脂成分を含んでおり、この樹脂成分を形成する単量体成分として、多官能アクリレートが含まれる形態、並びに、多官能(メタ)アクリレート及び芳香族ジビニル化合物が含まれる形態の基材粒子が好ましい。
【0032】
また、前記単量体混合物中の架橋性単量体の含有率は1質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。前記単量体混合物中の架橋性単量体の含有率を1質量%以上とすることにより、ビニル重合体粒子の耐溶剤性や耐熱性が高まり、粒子としての硬度を適切にすることができる。
【0033】
ビニル重合体粒子の製造方法は、前記したような単量体混合物を含む単量体組成物を重合させるものである。なお、重合方法としては、懸濁重合、シード重合、乳化重合等の公知の重合方法を採用することができ、これらの中でも懸濁重合、シード重合が好ましい。ビニル重合体粒子の製造方法については、国際公開第2010/032851号に記載された方法を採用すればよい。
【0034】
2−2.有機質無機質複合粒子
有機質無機質複合粒子は、ビニル重合体に由来する有機質部分と、無機質部分とを含んでなる粒子である。前記有機質無機質複合粒子の態様としては、シリカ、アルミナ、チタニア等の金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属炭化物等の無機質微粒子が、ビニル重合体中に分散含有されてなる態様;(オルガノ)ポリシロキサン、ポリチタノキサン等のメタロキサン鎖(「金属−酸素−金属」結合を含む分子鎖)と有機分子が分子レベルで複合してなる態様;ビニルトリメトキシシラン等のビニル系重合体を形成し得るビニル基を有するオルガノアルコキシシランが加水分解縮合反応やビニル基の重合反応を起こすことで得られる粒子や加水分解性シリル基を有するシラン化合物を原料とするポリシロキサンとビニル基を有する重合性単量体等と反応させて得られる粒子のように、ビニル重合体骨格とポリシロキサン骨格とを含む有機質無機質複合粒子からなる態様等が挙げられる。これらの中でも、特にビニル重合体骨格とポリシロキサン骨格とを含む有機質無機質複合粒子からなる態様が好ましい。
【0035】
以下、ビニル重合体骨格とポリシロキサン骨格とを含む有機質無機質複合粒子(以下、単に「複合粒子」ということがある。)について詳述する。
【0036】
前記ビニル重合体骨格は、下記式(1)で表される繰り返し単位により構成される主鎖を有するビニル重合体であり、側鎖を有するもの、分岐構造を有するもの、さらには架橋構造を有するものであってもよい。複合粒子の硬度を適度に制御できる。
【0037】
【化1】

【0038】
また、ポリシロキサン骨格は、下記式(2)で表されるシロキサン単位が連続的に化学結合して、網目構造のネットワークを構成した部分と定義される。
【0039】
【化2】

【0040】
ポリシロキサン骨格を構成するSiO2の量は、複合粒子の質量に対して0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは1質量%以上であり、25質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下である。ポリシロキサン骨格中のSiO2の量が上記範囲であれば、複合粒子の硬度の制御が容易となる。なお、ポリシロキサン骨格を構成するSiO2の量は、粒子を空気等の酸化性雰囲気中で800℃以上の温度で焼成した前後の質量を測定することにより求めた質量百分率である。
【0041】
複合粒子は、その硬度や破壊強度等といった機械的特性それぞれについて、ポリシロキサン骨格部分やビニル重合体骨格部分の割合を適宜変化させることにより任意に調節することができる。複合粒子におけるポリシロキサン骨格は、加水分解性基を有するシラン化合物を加水分解縮合反応させて得ることが好ましい。
【0042】
加水分解性を有するシラン化合物としては、特に限定はされないが、例えば、下記一般式(3)で表されるシラン化合物及びその誘導体等が挙げられる。
R’mSiX4-m (3)
(式中、R’は置換基を有していてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基及び不飽和脂肪族基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、Xは水酸基、アルコキシ基及びアシロキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を表し、mは0から3までの整数である。)
【0043】
一般式(3)で表されるシラン化合物としては、特に限定はされないが、例えば、m=0のものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能性シラン;m=1のものとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等の3官能性シラン;m=2のものとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジフェニルシランジオール等の2官能性シラン;m=3のものとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルシラノール等の1官能性シラン等が挙げられる。
【0044】
一般式(3)で表されるシラン化合物の誘導体としては、特に限定はされないが、例えば、Xの一部がカルボキシル基、β−ジカルボニル基等のキレート化合物を形成し得る基で置換された化合物や、前記シラン化合物を部分的に加水分解して得られる低縮合物等が挙げられる。
【0045】
加水分解性を有するシラン化合物は、1種のみ用いても2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。なお、一般式(3)において、m=3であるシラン化合物及びその誘導体のみを原料として使用する場合は、複合粒子は得られない。
【0046】
複合粒子のポリシロキサン骨格が、ビニル系重合体骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接結合した有機ケイ素原子を分子内に有する形態の場合は、前記加水分解性を有するシラン化合物としては、ビニル結合を含有する有機基を有するものを用いる必要がある。
【0047】
ビニル結合を含有する有機基としては、例えば、下記一般式(4)、(5)及び(6)で表される有機基等を挙げることができる。
CH2=C(−Ra)−COORb− (4)
(式中、Raは水素原子又はメチル基を表し、Rbは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。)
CH2=C(−Rc)− (5)
(式中、Rcは水素原子又はメチル基を表す。)
CH2=C(−Rd)−Re− (6)
(式中、Rdは水素原子又はメチル基を表し、Reは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。)
【0048】
一般式(4)の有機基としては、例えば、(メタ)アクリロキシ基等が挙げられ、(メタ)アクリロキシ基を有する一般式(3)のシラン化合物としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン(又は、γ−トリメトキシシリルプロピル−β−メタクリロキシエチルエーテルともいう)、γ−(メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0049】
前記一般式(5)の有機基としては、例えば、ビニル基、イソプロペニル基等が挙げられ、これらの有機基を有する前記一般式(3)のシラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0050】
前記一般式(6)の有機基としては、例えば、1−アルケニル基もしくはビニルフェニル基、イソアルケニル基もしくはイソプロペニルフェニル基等が挙げられ、これらの有機基を有する前記一般式(3)のシラン化合物としては、例えば、1−ヘキセニルトリメトキシシラン、1−ヘキセニルトリエトキシシラン、1−オクテニルトリメトキシシラン、1−デセニルトリメトキシシラン、γ−トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、ω−トリメトキシシリルウンデカン酸ビニルエステル、p−トリメトキシシリルスチレン、1−ヘキセニルメチルジメトキシシラン、1−ヘキセニルメチルジエトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0051】
複合粒子に含まれるビニル重合体骨格は、(I)シラン化合物の加水分解縮合反応により得られたポリシロキサン骨格を有する粒子に、ビニル系単量体成分を吸収させた後、重合させることで得ることができる。また、特に前記シラン化合物が、加水分解性基とともに、ビニル結合を含有する有機基を有する場合には、(II)シラン化合物の加水分解縮合反応後に、これを重合することでも得ることができる。
【0052】
前記複合粒子は、(i)ポリシロキサン骨格がビニル系重合体骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素原子を分子内に有している形態(化学結合タイプ)であってもよいし、(ii)このような有機ケイ素原子を分子内に有していない形態(IPNタイプ)であってもよく、特に限定はされないが、(i)の形態が好ましい。なお、前記(I)の方法でポリシロキサン骨格とともにビニル重合体骨格を得た場合は、(ii)の形態を有する複合粒子が得られ、特に前記シラン化合物が、加水分解性基とともに、ビニル結合を含有する有機基を有していれば、前記(i)と(ii)の形態を併せ持った複合粒子が得られる。また、前記(II)のようにしてポリシロキサン骨格とともにビニル重合体骨格を得た場合は、(i)の形態を有する複合粒子が得られる。
【0053】
前記(I)や(II)の方法において、ポリシロキサン骨格を有する粒子に吸収させることのできる単量体としては、前記したビニル系単量体が挙げられ、所望する複合粒子の物性に応じて適宜選択することができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0054】
例えば、疎水性のビニル系単量体は、ポリシロキサン骨格を有する粒子に単量体成分を吸収させる際に、単量体成分を乳化分散させた安定なエマルションを生成させ得るので好ましい。また、前記した架橋性単量体を使用すれば、得られる複合粒子の機械的特性の調節が容易にでき、また、複合粒子の耐溶剤性を向上させることもできる。架橋性単量体としては、前記ビニル重合体粒子に用いられるものとして例示したものを用いることができる。特に、架橋性単量体として、多官能アクリレート(より好ましくは2官能アクリレート)を用いること、多官能(メタ)アクリレートと芳香族ジビニル化合物とを併用することが、前記ビニル重合体粒子における場合と同様の理由で好ましい。
【0055】
複合粒子の製造方法は、加水分解縮合工程と、重合工程とを含むことが好ましく、加水分解、縮合工程後、重合工程前に、重合性単量体を吸収させる吸収工程を含めることがより好ましい。吸収工程を含めることにより、複合粒子中のビニル重合体骨格成分の含有量や含有されるビニル重合体骨格の屈折率を調整できる。なお、加水分解縮合工程に用いるシラン化合物が、ポリシロキサン骨格構造を構成し得る要素とともにビニル重合体骨格を構成する要素を併せ持ったものでない場合は、前記吸収工程を必須とし、この吸収工程に続く重合工程においてビニル重合体骨格が形成される。複合粒子の製造方法については、国際公開第2010/032851号に記載された方法を採用すればよい。
【0056】
本発明に用いられる基材粒子の形状は特に限定されるものではなく、例えば球状、回転楕円体状、金平糖状、薄板状、針状、まゆ状のいずれでもよく、粒子表面の形状も、平滑状、襞状、多孔状のいずれでもよい。中でも、工業的に用途が多い点で球状が好適である。
【0057】
基材粒子の粒子径は、個数平均粒子径で100μm以下であり、1.0μm〜49.5μmが好ましい。個数平均粒子径が1.0μm以上であれば、粒子の凝集を抑制でき、均一な導電性金属層をより形成しやすくなり、一方、49.5μm以下であれば、導電性微粒子としての適用用途が広くなり、工業上の利用分野が多くなる。また、上述したように本発明の導電性微粒子の効果を特に顕著に発揮できることから、基材粒子の個数平均粒子径は、3.0μm未満が好ましく、より好ましくは2.7μm以下であり、1.0μm以上が好ましく、より好ましくは1.2μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上である。また、前記基材粒子の粒子径における変動係数(CV値)は、好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下、最も好ましくは4%以下である。
【0058】
前記基材粒子の10%K値は、1000N/mm2以上、30000N/mm2以下が好ましい。基材粒子の10%K値が1000N/mm2以上であれば、異方性導電材料として用いた際に、周囲のバインダーを十分に排除でき、電極への食い込み具合が強くなり、より低い接続抵抗値が得られる。一方、基材粒子の10%K値が30000N/mm2以下であれば、接続部位に対して電気的により良好な接触状態を確保できる。基材粒子の10%K値は2000N/mm2以上、25000N/mm2以下がより好ましい。
【0059】
なお、基材粒子の10%K値は、粒子を10%圧縮したときの圧縮弾性率であり、例えば、公知の微小圧縮試験機(島津製作所製「MCT−W500」等)を用い、室温で粒子の中心方向へ荷重負荷速度2.22mN/secで荷重をかけ、圧縮変位が粒子径の10%となるまで粒子を変形させたときの荷重と変位量(mm)を測定し、下記式に基づき求めることができる。
【0060】
【数1】

(ここで、E:圧縮弾性率(N/mm2)、F:圧縮荷重(N)、S:圧縮変位(mm)、R:粒子の半径(mm)である。)
【0061】
本発明の導電性微粒子は、上述の基材粒子に導電性金属層を形成することにより得られるが、本発明の突起を有する導電性微粒子を製造し易い点から、基材粒子が親水化処理されていることが好ましい。親水化処理方法としては、酸やアルカリ水溶液による処理、プラズマ処理、オゾン水処理、フッ素ガスと酸素原子を含む化合物のガスとを含む混合ガスによる処理等が好ましい。中でも、フッ素ガスと酸素原子を含む化合物のガスとを含む混合ガスによる処理がなされた基材粒子が、導電性金属層との密着性に優れる、すなわち突起の脱落し難い導電性微粒子を得やすい点で好ましい。フッ素ガスと酸素原子を含む化合物のガスとを含む混合ガスによる処理による親水化処理について説明する。
【0062】
2−3.親水化処理
前記混合ガス中のフッ素ガスの濃度は、0.01体積%以上であることが好ましい。フッ素ガス濃度が0.01体積%以上であれば、親水化処理を均一に施すことができる。なお、フッ素ガスの濃度は、10体積%以下が好ましい。
【0063】
前記混合ガスは、フッ素ガスと、酸素原子を含む化合物のガスが必須成分である。酸素原子を含む化合物のガスとしては、酸素、二酸化硫黄、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化窒素等が好ましいものとして挙げられる。これらの中でも、マイルドな条件でも親水化処理効果が高い点で、酸素ガスが好ましい。混合ガスにはフッ素ガス及び酸素原子を含む化合物のガス以外に、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスも使用可能である。なお、気相中での処理における粉塵爆発を防止して、親水化処理を工業的にかつ安全に行う観点からは、不活性ガスとして窒素ガスを使用することが好ましい。従って、混合ガスとしては、フッ素ガス、酸素原子を含む化合物のガス及び不活性ガスからなる組成を有するものが好ましく、さらに、フッ素ガス、酸素ガス及び窒素ガスを含む混合ガスがより好ましい。
【0064】
混合ガス中のフッ素ガスの分圧は、9Pa(0.06Torr)以上であるとより均一に親水化処理を行うことができ、好ましい。前記混合ガス中の酸素原子を含む化合物のガスの分圧は、親水化処理を均一に行う観点から、70Pa(0.53Torr)〜85000Pa(638Torr)が好ましい。前記混合ガス中の不活性ガスの分圧は、工業的かつ安全に親水化処理を行う観点から、3199Pa(24Torr)〜79180Pa(594Torr)が好ましい。
【0065】
混合ガスの全圧は、安全に親水化処理を行うためには、101.3kPa(760Torr)以下が好ましい。101.3kPaを超えると、混合ガスが容器外に漏れる虞がある。
【0066】
前記親水化処理において、基材粒子と混合ガスを接触させる方法は特に限定されないが、例えば、基材粒子を保持できる容器内に混合ガスを導入して密封状態で所定時間処理する方法(密封接触法)か、基材粒子を保持できる容器内に、混合ガスを流通させ、連続的に供給する方法(連続供給法)が好ましい。
【0067】
親水化処理においては、上記混合ガスによる接触処理の後に、混合ガス接触後の基材粒子を、さらに水分と接触させる処理を行うことが好ましい。水分と接触することで、混合ガスとの接触によって粒子表面に形成された−C(F)=Oが、より効率的にカルボキシル基に転換される。また、このとき生成するHFや粒子表面に吸着しているHFあるいはFを有効に除去することもできる。
【0068】
上記水分としては、水及び/又は水蒸気を用いることができる。また、前記水分としてアルカリ性水溶液を用いることが好ましい。アルカリ性水溶液を接触させると、粒子表面にはカルボン酸のアルカリ金属塩やアミン塩(以下、カルボン酸塩ということがある。)が形成される。このカルボン酸塩は、粒子の親水性を一層高める。
【0069】
前記アルカリ性水溶液としては、例えば、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の水溶性アミン類の水溶液;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物や、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩等のアルカリ金属化合物を水に溶解したアルカリ金属元素イオンを含有する水溶液;が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属元素イオンを含有する水溶液が好ましく、さらにナトリウムイオンを有するものがより好ましく、特に、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
【0070】
アルカリ性水溶液の濃度は0.01mol/l〜5mol/lが好ましく、より好ましくは0.05mol/l〜2mol/lであり、さらに好ましくは0.1mol/l〜1mol/lである。
【0071】
混合ガス接触後の粒子と水分とを接触させる態様としては、水分として、アルカリ性水溶液を用いる態様;水及び/又は水蒸気を用いる態様;アルカリ性水溶液と、水及び/又は水蒸気を用いる態様のいずれであってもよい。中でも、アルカリ性水溶液と、水及び/又は水蒸気を用いる態様が好ましい。また、接触順序は特に限定されないが、粒子表面に吸着しているHFあるいはF2等を効率よく除去する観点からは、粒子をアルカリ性水溶液と接触させた後、水及び/又は水蒸気と接触させるのが望ましい。アルカリ性水溶液を接触させた後、粒子を、水及び/又は水蒸気と接触させることで、余分なアルカリ性水溶液を洗浄することができる。なお、本明細書では、以下、粒子とアルカリ性水溶液とを接触させる場合を「アルカリ処理」といい、粒子と水とを接触させる場合を「温水洗浄」ということがある。
【0072】
水分との接触処理方法としては、特に限定されないが、例えば、混合ガスとの接触に用いたチャンバーを大気圧に開放した後、チャンバー内に水蒸気を送り込み、粒子と水とを接触させる方法;混合ガスとの接触に用いたチャンバーを大気圧に開放した後、チャンバー内に水蒸気を送り込み、粒子と水とを接触させた後、さらに、粒子を取り出して水中に分散させて水や水を含む溶媒で洗浄する方法;混合ガスとの接触後、チャンバーから取り出した粒子を、別途水蒸気雰囲気中に浸したり、水や水を含む溶媒で洗浄する方法;混合ガスとの接触後、チャンバーから取り出した粒子をアルカリ性水溶液中に分散させてアルカリ処理する方法;混合ガスとの接触後、チャンバーから取り出した粒子をアルカリ性水溶液中に分散させてアルカリ処理した後、さらに、粒子を取り出して水中に分散させて水や水を含む溶媒で洗浄する方法が挙げられる。
【0073】
水分との接触時間は1〜600分程度が好ましい。また、−C(F)=Oのカルボキシル基又はカルボン酸塩への転換を効率的に進め、また、このとき生成するHFや粒子表面に吸着しているHFあるいはF2を有効に除去するため、水分(アルカリ性水溶液、及び/又は、水及び/又は水蒸気)の温度は、20℃以上が好ましく、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは60℃以上、最も好ましくは80℃以上である。
【0074】
また、アルカリ性水溶液、水、又は水を含む溶媒で粒子を処理する場合は、溶媒と粒子との合計100質量%中、粒子濃度を0.5質量%〜50質量%とすることが好ましい。粒子濃度が0.5質量%未満であると、所定量の粒子を洗浄する際に発生する含フッ素排水の量が増大するため、工業的にコストが高くなる虞がある。粒子濃度が50質量%を超えると、洗浄が不十分となる虞がある。粒子の洗浄を効率的に行うために、溶媒に粒子を入れた状態で超音波分散を行うことが好ましい。
【0075】
3.導電性微粒子の製造方法
上述したような突起を有する導電性微粒子は、無電解メッキ法、電解メッキ法等によってメッキを施す方法;金属微粉を単独でもしくはバインダーに混ぜ合わせたペースト状で基材粒子にコーティングする方法;ハイブリダイゼーションにより基材粒子の表面に子粒子を付着させた後、この突起を有する基材粒子に真空蒸着、イオンプレーティング、イオンスパッタリング等の物理的蒸着方法により導電性金属層を形成する方法;等により製造できる。これらの中でも特に無電解メッキ法が、大掛かりな装置を必要とせず容易に導電性金属層を形成できる点で好ましい。
【0076】
以下、本発明の導電性微粒子の製造方法の一例として無電解メッキ法を説明する。無電解メッキ法による導電性金属層の形成は、エッチング工程、触媒化工程、無電解メッキ工程を経て行うことが推奨される。エッチング工程及び触媒化工程において処理条件を制御することにより、多数の突起が粒子表面方向に房状に並ぶように制御することができる。
【0077】
3−1.エッチング工程
エッチング工程では、基材粒子をクロム酸、無水クロム酸−硫酸混合液、過マンガン酸等の酸化剤;塩酸、硫酸、フッ酸、硝酸等の強酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強アルカリ溶液等を用いて基材粒子の表面に微小な凹凸を形成させ、その凹凸のアンカー効果によって、後述する無電解めっき後の基材粒子と導電性金属層の密着性の向上を図る。基材粒子として、上述の親水化処理をしてなる基材粒子を用いる場合は、これらのエッチング工程を省略することもできる。
【0078】
3−2.触媒化工程
触媒化工程では、基材粒子の表面にメッキ析出の基点となるパラジウム触媒を吸着させる。パラジウム触媒を吸着させる方法は特に限定されず、無電解メッキ用として市販されている触媒化試薬を用いて行えばよい。触媒化方法としては、例えば、塩化パラジウムと塩化第一スズとを含む溶液を触媒化試薬とし、これに基材粒子を浸漬することにより基材粒子表面に触媒金属を吸着させ、その後、硫酸や塩酸等の酸や水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液で前記パラジウムイオンを還元することにより、基材粒子表面にパラジウムを析出させる方法(キャタリスト−アクセレータ法)や、基材粒子をスズイオン(Sn2+)を含有する溶液と接触させることによりスズイオンを基材粒子表面に吸着させた後、パラジウムイオン(Pd2+)を含有する溶液に浸漬させることにより、基材粒子表面にパラジウムを析出させる方法(センシタイジング−アクチベーティング法)等が挙げられる。
【0079】
以下、触媒化方法の一例として、センシタイジング−アクチベーティング法について説明する。
前記スズイオンを含有する溶液としては、例えば、塩化第一スズ溶液が挙げられる。前記スズイオン含有溶液の濃度(スズ換算)は10質量ppm以上が好ましく、より好ましくは20質量ppm以上、さらに好ましくは30質量ppm以上であり、1500質量ppm以下が好ましく、より好ましくは1000質量ppm以下、さらに好ましくは800質量ppm以下である。また、スズイオン含有溶液の使用量は、基材粒子100質量部に対するスズ量が0.10質量部以上が好ましく、より好ましくは0.12質量部以上、さらに好ましくは0.15質量部以上であり、10質量部以下が好ましく、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0080】
前記パラジウムイオンを含有する溶液としては、例えば、塩化パラジウム溶液が挙げられる。前記パラジウムイオン含有溶液の濃度(パラジウム換算)は1質量ppm以上が好ましく、より好ましくは2質量ppm以上、さらに好ましくは3質量ppm以上であり、200質量ppm以下が好ましく、より好ましくは100質量ppm以下、さらに好ましくは80質量ppm以下である。また、パラジウムイオン含有溶液の使用量は、基材粒子100質量部に対するパラジウム量が0.010質量部以上が好ましく、より好ましくは0.012質量部以上、さらに好ましくは0.015質量部以上であり、1質量部以下が好ましく、より好ましくは0.8質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下である。
【0081】
なお、スズイオン含有溶液の使用量及びパラジウムイオン含有溶液の使用量は、所望するパラジウム触媒の吸着量に応じて適宜調節することが好ましい。
例えば、パラジウム触媒の吸着量を低減したい場合には、スズイオン含有溶液の使用量は、基材粒子100質量部に対するスズ量が1質量部以下が好ましく、より好ましくは0.8質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以下である。パラジウムイオン含有溶液の使用量は、基材粒子100質量部に対するパラジウム量が30質量部以下が好ましく、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。一方、例えば、パラジウム触媒の吸着量を増加させたい場合には、スズイオン含有溶液の使用量は、基材粒子100質量部に対するスズ量が1質量部以上が好ましく、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上である。パラジウムイオン含有溶液の使用量は、基材粒子100質量部に対するパラジウム量が0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上である。
【0082】
前記スズイオン含有溶液、パラジウムイオン含有溶液に基材粒子を浸漬する際の液温、浸漬時間は、各イオンが基材粒子に充分に吸着できれば特に限定されず、適宜調整すればよいが、液温は10℃〜60℃が好ましく、浸漬時間は1分〜120分が好ましい。
【0083】
上記触媒化工程により、基材粒子の表面にパラジウム触媒が吸着した触媒化基材粒子が得られる。ここで、本発明の導電性微粒子を製造する場合、前記パラジウム触媒吸着量を調整することにより、最終的に得られる導電性微粒子表面に形成する突起個数を制御することができる。
例えば、粒子表面のFE−SEM画像における1μm四方内に存在する突起の個数を80個以上としたい場合には、前記パラジウム触媒の吸着量は400mg/m2以上が好ましく、より好ましくは500mg/m2以上、さらに好ましくは600mg/m2以上であり、2000mg/m2未満が好ましく、より好ましくは1500mg/m2以下、さらに好ましくは1300mg/m2以下である。
【0084】
また、例えば、粒子表面のFE−SEM画像における1μm四方内に存在する突起の個数を80個未満としたい場合には、前記パラジウム触媒の吸着量は10mg/m2以上が好ましく、より好ましくは50mg/m2以上、さらに好ましくは100mg/m2以上であり、400mg/m2未満が好ましく、より好ましくは390mg/m2以下、さらに好ましくは380mg/m2以下である。なお、前記パラジウム吸着量は、基材粒子に施す前処理条件や、触媒化処理に使用する塩化第一スズと塩化パラジウムの量を適宜調整すること等により制御できる。
【0085】
3−3.無電解メッキ工程
無電解メッキ工程では、前記触媒化工程にてパラジウム触媒を吸着させた触媒化基材粒子表面に、導電性金属層を形成する。無電解メッキ処理は、還元剤と所望の金属塩を溶解したメッキ液中に触媒化基材粒子を浸漬することにより、パラジウム触媒を起点として、メッキ液中の金属イオンを還元剤で還元し、基材粒子表面に所望の金属を析出させて、導電性金属層を形成するものである。
【0086】
無電解メッキ工程では、まず、触媒化基材粒子を水に十分に分散させ、触媒化基材粒子の水性スラリーを調製する。ここで、安定した導電特性を発現させるためには、触媒化基材粒子を、メッキ処理を行う水性媒体に十分分散させておくことが好ましい。触媒化基材粒子を水性媒体に分散させる手段としては、例えば、通常攪拌装置、高速攪拌装置、コロイドミル又はホモジナイザーのような剪断分散装置等従来公知の分散手段を採用すればよく、必要に応じて超音波や分散剤(界面活性剤等)を併用してもよい。
【0087】
次に、所望の導電性金属の塩、還元剤、錯化剤及び各種添加剤等を含有する無電解メッキ液に、上記で調製した触媒化基材粒子の水性スラリーを添加することにより、無電解メッキ反応を生じさせる。無電解メッキ反応は、触媒化基材粒子の水性スラリーを添加すると速やかに開始する。また、この反応には水素ガスの発生を伴うので、水素ガスの発生が完全に認められなくなった時点をもって無電解メッキ反応を終了すればよい。無電解メッキ反応の終了後、反応系内から導電性金属層が形成された基材粒子を取り出し、必要に応じて洗浄、乾燥を施すことにより、導電性微粒子を得ることができる。
【0088】
前記導電性金属塩としては、導電性金属層を構成する金属として例示した金属の塩化物、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。例えば、導電性金属層としてニッケル層を形成する場合には、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル等のニッケル塩等を無電解メッキ液に含有させればよい。導電性金属塩は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。無電解メッキ液中における導電性金属塩の濃度は、所望の膜厚の導電性金属層が形成されるように、基材粒子のサイズ(表面積)等を考慮して適宜決定すればよい。
【0089】
前記還元剤としては、例えば、次亜リン酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、ヒドラジン等が挙げられる。還元剤は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
【0090】
前記錯化剤としては、導電性金属のイオンに対して錯化作用のある化合物が使用できる。例えば、ニッケルに対して錯化作用のある化合物としては、クエン酸、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸又はそれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩等のカルボン酸(塩);グリシン等のアミノ酸;エチレンジアミン、アルキルアミン等のアミン酸;その他のアンモニウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、ピロリン酸(塩);等が挙げられる。錯化剤は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
【0091】
無電解メッキ液のpHは、限定されないが、好ましくは4〜14である。
【0092】
無電解メッキ工程は、必要に応じて繰返し行ってもよい。例えば金属種の異なる無電解メッキ液を用いて無電解メッキ工程を繰返すことにより、基材粒子の表面に異種金属を幾層にも被覆できる。具体的には、基材粒子にニッケルメッキを施してニッケル被覆粒子を得た後、該ニッケル被覆粒子をさらに無電解金メッキ液に投入して金置換メッキを行うことにより、最外層が金層で覆われ、その内側にニッケル層を有する導電性微粒子が得られる。
【0093】
導電性金属層の膜厚を調整するには、具体的には、無電解メッキ処理を行う際の基材粒子濃度(処理液あたりの基材粒子の量)や無電解メッキ処理で使用する無電解メッキ液の濃度、pH、あるいは無電解メッキ処理の反応温度等を調整すればよい。例えば、無電解メッキ処理の処理液に対する基材粒子の量を減らしたり、無電解メッキ処理で使用する無電解メッキ液の濃度を薄くしたりすると、導電性金属層の膜厚は薄くなる。
【0094】
4.絶縁性樹脂被覆導電性微粒子
前記導電性微粒子は、さらにその表面の少なくとも一部に絶縁性樹脂層を有していることが好ましい。このように導電性金属層にさらに絶縁性樹脂層が積層されていると、微細配線の電気的な接続を行う際に生じやすい横導通を防ぐことができる。
【0095】
特に、本発明の導電性微粒子であれば、表面が一様な微細な突起で覆われているために絶縁性樹脂層を形成する絶縁樹脂の密着性が高く、しかも、従来の異常析出に基づくような孤立した突起の形態とは異なるために、異方性導電材料に用いた場合に、その調整過程での絶縁樹脂の脱落が抑制される。よって、端子間接続時に接続部分で絶縁樹脂が容易に排除されるとともに、非接続部分における絶縁被覆層は保持され易い。その結果、低い接続構造と、横方向のリークを充分に抑止することができる。従って、本発明の導電性微粒子が、絶縁性樹脂被覆導電性微粒子である形態もまた好ましい形態である。
【0096】
絶縁性樹脂層を構成する樹脂は、導電性微粒子の粒子間における絶縁性が確保でき、一定の圧力及び/又は加熱により容易にその絶縁性樹脂層が崩壊あるいは剥離するものであればよく、特に限定されない。例えば、上述したビニル基含有モノマーからなる重合体及び共重合体のほか、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等のポリオレフィン類;ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリル重合体、SB型スチレン−ブタジエンブロック共重合体、SBS型スチレン−ブタジエンブロック共重合体及びこれらの水添化合物等のブロックポリマー;ビニル系重合体及び共重合体等の熱可塑性樹脂や特にその架橋物;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、メチルセルロース等の水溶性樹脂及びこれらの混合物;等が挙げられる。
【0097】
絶縁性樹脂層は、単層であってもよいし複数の層からなるものであってもよい。例えば、単一又は複数の皮膜状の層が形成されていてもよいし、絶縁性を有する粒状、球状、塊状、鱗片状その他の形状の粒子を導電性金属層の表面に付着したものであってもよいし、さらには、導電性金属層の表面を化学修飾することにより形成されたものであってもよく、又は、これらが組み合わされたものであってもよい。
【0098】
絶縁性樹脂層の厚みは0.01μm以上、1μm以下であるのが好ましい。より好ましくは0.1μm以上、0.5μm以下である。絶縁性樹脂層の厚みが薄すぎると、電気絶縁性が不充分となり、一方、厚すぎると、導通特性が低下するおそれがある。
【0099】
絶縁性樹脂層を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、無電解メッキ工程後の導電性微粒子の存在下で、絶縁性樹脂層を構成する樹脂の原料のモノマーを界面重合、懸濁重合又は乳化重合させ、絶縁性樹脂により導電性微粒子をマイクロカプセル化する方法;絶縁性樹脂を有機溶媒に溶解した絶縁性樹脂溶液中に導電性微粒子を分散させた後、乾燥させるディッピング法;スプレードライ法、ハイブリダイゼーションによる方法;等の従来公知の方法を採用することができる。
【0100】
5.異方性導電材料
前記導電性微粒子及び絶縁性樹脂被覆導電性微粒子は、異方性導電材料として好適に用いられる。異方性導電材料の形態としては、特に制限されないが、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電接着剤、異方性導電インク等、相対向する基材間や電極端子間に設けることで電気的な接続を可能にするものが挙げられる。
【0101】
異方性導電フィルムは、例えば、導電性微粒子等とバインダー樹脂等を含むフィルム形成用組成物に溶媒を加えて液状にし、この液をポリエチレンテレフタレート製等のフィルム上に塗布した後、溶媒を蒸発させることにより得ることができる。得られた異方性導電フィルムは、例えば、電極上に配置され、この異方性導電フィルム上に対向電極を重ね合わせ、加熱圧縮することにより電極間の接続に使用される。
【0102】
異方性導電ペーストは、例えば、導電性微粒子等とバインダー樹脂等を含む樹脂組成物をペースト状にすることにより得られる。得られた異方性導電ペーストは、例えば、適当なディスペンサーに入れられ、接続すべき電極上に所望の厚さで塗工され、塗工された異方性導電ペースト上に対向電極を重ね合わせ、加熱しながら加圧して樹脂を硬化させることにより、電極間の接続に使用される。
【0103】
異方性導電接着剤は、例えば、導電性微粒子等とバインダー樹脂等を含む樹脂組成物を所望の粘度に調整することにより得られる。得られた異方性導電接着剤は、異方性導電ペーストと同様、電極上に所望の厚さで塗工した後、対向電極を重ね合わせ、両者を接着することにより電極間の接続に使用される。
【0104】
異方性導電インクは、例えば、導電性微粒子等とバインダー樹脂等を含む樹脂組成物に溶媒を加えて印刷に適した粘度に調整することにより得られる。得られた異方性導電インクは、例えば、接着すべき電極上にスクリーン印刷し、溶媒を蒸発させた後、異方性導電インクによる印刷面に対向電極を重ね合わせ、加熱圧縮することにより電極間の接続に使用される。
【0105】
このような異方性導電材料は、通常、絶縁性のバインダー樹脂中に導電性微粒子等を分散させ所望の形態とすることで製造されるが、絶縁性のバインダー樹脂と導電性微粒子等とを別々に使用して、基材間あるいは電極端子間を接続してもかまわない。
【0106】
バインダー樹脂としては、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の熱可塑性樹脂;グリシジル基を有するモノマーやオリゴマー、イソシアネート等の硬化剤との反応により硬化する硬化性樹脂組成物、光や熱により硬化する硬化性樹脂組成物;等が挙げられる。
【0107】
本発明の異方性導電材料において、導電性微粒子の含有量は、用途に応じて適宜決定すればよいが、例えば、異方導電性材料の全量に対して2体積%〜70体積%が好ましい。より好ましくは5体積%以上、さらに好ましくは10体積%以上であり、より好ましくは50体積%以下、さらに好ましくは40体積%以下である。導電性微粒子の含有量が少なすぎると、充分な電気的導通が得られ難い場合があり、一方、導電性微粒子の含有量が多すぎると、導電性微粒子同士が接触してしまい、異方性導電材料としての機能が発揮され難い場合がある。
【0108】
本発明の異方性導電材料におけるフィルム膜厚、ペーストや接着剤の塗工膜厚、印刷膜厚等については、使用する本発明の導電性微粒子の粒子径と、接続すべき電極の仕様とを考慮し、接続すべき電極間に導電性微粒子が狭持され、且つ接続すべき電極が形成された接合基板同士の空隙がバインダー樹脂層により充分に満たされるように、適宜設定することが好ましい。
【0109】
本発明の異方性導電材料は、低温での電気的接続に供しても、初期の接続抵抗値を充分に低くし、かつ経時的な抵抗値の上昇も抑制できるものであり、優れた接続信頼性を発揮する。従って、本発明の異方性導電材料を用いて接続部位間を電気的に接続する際の接続方法は、特に制限されないが、通常よりも低温で行うことが、本発明の効果を有意に発揮する上で望ましい。具体的には、接続時の温度は200℃以下とするのが好ましい。
【0110】
本発明の異方性導電材料を用いて電気的接続を行うに際しては、接続時の圧力は、特に制限されないが、通常1MPa〜100MPaであるが、低圧接続であっても上述した表面構造に基づき本発明の導電性微粒子を用いる効果が如何なく発揮される。また、接続時間(熱及び圧を付加する時間)は、温度や圧力に応じて適宜設定すればよいが、通常10秒〜3600秒である。
【実施例】
【0111】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0112】
1.評価方法
1−1.個数平均粒子径、変動係数(CV値)
<重合体粒子>
粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製「コールターマルチサイザーIII型」)により30000個の粒子の粒子径を測定し、個数平均粒子径、粒子径の標準偏差を求めるとともに、下記式に従って粒子径のCV値(変動係数)を算出した。
粒子の変動係数(%)=100×(粒子径の標準偏差/個数平均粒子径)
<導電性微粒子>
フロー式粒子像解析装置(シスメックス社製、「FPIA(登録商標)−3000」)を用いて、導電性微粒子3000個の粒子径(μm)を測定し、個数平均粒子径を求めた。
【0113】
1−2.パラジウム触媒吸着量
パラジウム触媒を吸着させた触媒化処理基材粒子1部に食塩水(食塩濃度:20%)10部を加え、超音波分散させた。次いで、この分散液に、硝酸水溶液(濃度:69%)2部を滴下し、10分間80℃で攪拌し、2時間超音波分散し、固液分離した後、超純水60部で洗浄した。得られた濾液中のパラジウム元素量を誘導結合プラズマ発光分光装置(島津製作所社製:「ICPE(登録商標)−9000」)により定量することで、触媒化処理基材粒子の表面に吸着したパラジウム触媒量(mg/g)を算出した。そして、下記式に代入することで触媒化処理基材粒子の表面積に対する吸着量(mg/m2)を求めた。
【0114】
【数2】

[ここで、A:触媒化処理基材粒子の表面に吸着したパラジウム触媒量(mg/g)、B:触媒化処理基材粒子の表面積に対する吸着量(mg/m2)、D:個数平均粒子径(μm)、d:基材粒子の比重(g/cm)である。]
【0115】
1−3.導電性金属層膜厚
フロー式粒子像解析装置(シスメックス社製、「FPIA(登録商標)−3000」)を用いて、基材粒子3000個の粒子径X(μm)、導電性微粒子3000個の粒子径Y(μm)を測定した。そして、下記式に従って導電性金属層の膜厚を算出した。
導電性金属層膜厚(μm)=(Y−X)/2
【0116】
1−4.導電性金属層の凸部構造評価
導電性微粒子について、超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、「FE−SEM S−4800」)により、30000倍の倍率にて表面観察を行い、突起が存在する場合を「有」、表面が平滑である場合を「無」とした。
また、突起が存在する場合には、1個の導電性微粒子に対して、対角線の交点が粒子の正投影面における中心と一致する、縦横1μm四方の正方形を観察し、前記1μm2の正方形の中に存在する凸部の個数を測定した。さらに、前記1μm2の正方形の中に存在する凸部の長径、短径を測定し、その平均値を求めた。ここで、長径とは、突起の最も長い部分の長さであり、短径とは、前記長径方向に直行する方向において最も長い部分の長さである。
【0117】
1−5.初期抵抗値
導電性微粒子10質量部にバインダー樹脂としてのエポキシ樹脂(三菱化学製、「JER828」)100質量部に硬化剤(三新化学社製、「サンエイド(登録商標) SI−150」)2質量部、及びトルエン100質量部を加え、さらに1mmのジルコニアビーズ50質量部を加えて、ステンレス製の2枚攪拌羽根を用いて300rpmで10分間分散を行い、得られたペースト状組成物をバーコーターで剥離処理PETフィルム上に塗布して乾燥させ異方性導電フィルムを得た。
得られた異方性導電フィルムを抵抗測定用の線を有した全面アルミ蒸着ガラス基板と100μmピッチに銅パターンを形成したポリイミドフィルム基板間に挟み込み、5MPa、200℃の圧着条件で熱圧着した後、電極間の抵抗値を評価した。初期抵抗値が3Ω未満の場合を◎、3Ω以上5Ω未満を○、5Ω以上を×とした。また、85℃/85%RHで500時間放置後の抵抗値についても同様に測定し、以下に求められる抵抗値上昇率が1%未満を◎、5%未満を○、5%以上を×とした。
抵抗値上昇率(%)=100×(85℃/85%RH500時間後抵抗値−初期抵抗値)/初期抵抗値
【0118】
1−6.密着性
導電性微粒子10部にトルエン100部を加え、さらに1mmのジルコニアビーズ50部を加えて、ステンレス製の2枚攪拌羽根を用いて400rpmで10分間分散を行った。分散処理後の粒子を取出し、乾燥後、デジタル走査型電子顕微鏡(日立協和エンジニアリング、「S−3500N」)により、導電性微粒子の表面観察を行った。1000個の粒子を観察し、導電性金属層が剥離している粒子の個数をカウントし、剥離粒子個数が5個未満を◎、10個未満を○、10個以上を×とした。
【0119】
2.導電性微粒子の製造
2−1.製造例1
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水1800.0部と、25%アンモニア水24.0部、メタノール555.0部を入れ、攪拌下、滴下口から3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン80.0部及びメタノール45.0部の混合液を添加して、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を行って、メタクリロイル基を有するポリシロキサン粒子(重合性ポリシロキサン粒子)の乳濁液を調製した。
【0120】
次いで、乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製:「ハイテノール(登録商標)NF−08」)の20%水溶液10.0部をイオン交換水400.0部で溶解した溶液に、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート200.0部及びジビニルベンゼン(新日鐡化学社製 DVB960)200.0部と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製:「V−65」)4.8部を溶解した溶液を加え、乳化分散させて単量体成分の乳化液を調製した。反応開始から2時間後、得られた乳化液を、ポリシロキサン粒子の乳濁液中に添加して、さらに攪拌を行った。乳化液の添加から1時間後、混合液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、ポリシロキサン粒子が単量体を吸収して肥大化していることが確認された。
【0121】
次いで、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の20%水溶液96.0部、イオン交換水500.0部を加え、窒素雰囲気下で反応液を65℃まで昇温させて、65℃で2時間保持し、単量体成分のラジカル重合を行った。ラジカル重合後の乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下230℃で1時間焼成処理し、重合体粒子を得た。この重合体粒子の個数平均粒子径は2.50μm、変動係数(CV値)は2.9%であった。
【0122】
親水化処理工程
上記で得た重合体粒子120部を、容量500Lのチャンバー式処理装置に入れた。粒子層の厚みは0.5mmであった。チャンバー内を、1Paに減圧した後、フッ素(F2)ガス/酸素(O2)ガス/チッ素(N2)ガス=66.7Pa(0.5torr)/3.99kPa(30torr)/75.93kPa(569.5torr)となるように導入した。その後、40℃で60分間処理を行った後、チャンバー内を窒素で置換し、大気圧に戻した。
次に、得られた混合ガス処理粒子120部を、1%水酸化ナトリウム水溶液に分散させ(粒子濃度6.7質量%)、攪拌下、80℃で3時間アルカリ処理を行った。粒子を濾過した後、80℃のイオン交換水に分散させ(粒子濃度6.7質量%)、同温度で3時間洗浄処理を行った。室温まで冷却した後、粒子を濾過し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールの順で掛け洗いを行った後、さらに、120℃で2時間真空乾燥を行うことにより親水化処理された重合体粒子を得た。
【0123】
触媒化工程
ビーカーに塩化第一スズ水溶液「ピンクシューマー(日本カニゼン株式会社製)10部とイオン交換水80部を入れ混合した。別途、ビーカーに上記で得た重合体粒子(基材粒子)2部とイオン交換水10部を入れ超音波分散させたものを準備し、これを前記混合液に投入し、30℃で15分間攪拌して懸濁液とし、これを固液分離して得られたケーキを、イオン交換水30部で洗浄した。なお、懸濁液中のスズ濃度は689質量ppmであり、基材粒子100部に対するスズ量は3.44部であった。
得られたケーキをビーカーに移し、イオン交換水80部を加え超音波分散させ、これに、塩化パラジウム水溶液「レッドシューマー(日本カニゼン株式会社製)」20部加え、30℃で15分間攪拌して懸濁液とした。なお、懸濁液中のパラジウム濃度は72質量ppmであり、基材粒子100部に対するパラジウム量は0.36部であった。この懸濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水40部で洗浄し、窒素雰囲気下100℃で2時間真空乾燥を行い、表面にパラジウム触媒が吸着された触媒化基材粒子を得た。
【0124】
無電解メッキ工程
上記で得た触媒化基材粒子0.2部をイオン交換水8部に添加し、超音波処理した後、70℃の水浴で粒子懸濁液を加温した。この懸濁液を攪拌しながら、別途70℃で加温した無電解ニッケルメッキ液「シューマーS680(日本カニゼン株式会社製)」18.5部を加え、無電解ニッケルメッキを行った。水素ガスの発生が終了したことを確認した後、固液分離を行い、イオン交換水、メタノールの順に洗浄し、100℃で2時間真空乾燥を行って、個数平均粒子径2.74μmの導電性微粒子(1)を得た。
【0125】
2−2.製造例2
製造例1の親水化処理工程において、混合ガスの濃度を、フッ素(F2)ガス/酸素(O2)ガス/チッ素(N2)ガス=133Pa(1.0torr)/3.99kPa(30torr)/75.86kPa(569torr)となるように導入したこと以外は、製造例1と同様の手法で導電性微粒子(2)を得た。
【0126】
2−3.製造例3
製造例1の親水化処理工程において、混合ガスの濃度を、フッ素(F2)ガス/酸素(O2)ガス/チッ素(N2)ガス=667Pa(5.0torr)/3.99kPa(30torr)/75.32kPa(565torr)となるように導入したこと以外は、製造例1と同様の手法で導電性微粒子(3)を得た。
【0127】
2−4.製造例4
製造例1の親水化処理工程において、混合ガスの濃度を、フッ素(F2)ガス/酸素(O2)ガス/チッ素(N2)ガス=1.33kPa(10torr)/3.99kPa(30torr)/74.66kPa(560torr)となるように導入したこと以外は、製造例1と同様の手法で導電性微粒子(4)を得た。
【0128】
2−5.製造例5
製造例1の親水化処理工程において、混合ガスの濃度を、フッ素(F2)ガス/酸素(O2)ガス/チッ素(N2)ガス=1.33kPa(10torr)/667Pa(5torr)/78.0kPa(585torr)となるように導入したこと以外は、製造例1と同様の手法で導電性微粒子(5)を得た。
【0129】
2−6.製造例6
製造例5の触媒化工程において、塩化パラジウム水溶液の量を5部に変更したこと以外は製造例5と同様の手法で導電性微粒子(6)を得た。なお、懸濁液中のパラジウム濃度は18.0質量ppmであり、基材粒子100部に対するパラジウム量は0.09部であった。
【0130】
2−7.製造例7
製造例2の触媒化工程において、塩化第一スズ水溶液の量を0.5部に変更したこと以外は製造例2と同様の手法で導電性微粒子(7)を得た。なお、懸濁液中のスズ濃度は34質量ppmであり、基材粒子100部に対するスズ量は0.17部であった。
【0131】
2−8.製造例8
製造例2の触媒化工程において、塩化パラジウム水溶液の量を5部に変更したこと以外は製造例2と同様の手法で導電性微粒子(8)を得た。なお、懸濁液中のパラジウム濃度は18.0質量ppmであり、基材粒子100部に対するパラジウム量は0.09部であった。
【0132】
2−9.製造例9
製造例2の触媒化工程において、塩化パラジウム水溶液の量を1.0部に変更したこと以外は製造例2と同様の手法で導電性微粒子(9)を作製した。なお、懸濁液中のパラジウム濃度は3.6質量ppmであり、基材粒子100部に対するパラジウム量は0.018部であった。
【0133】
2−10.製造例10
製造例1と同様にして製造した上記で得た重合体粒子10部を、予めクロム酸400g/l、硫酸400g/lとなるように調製したエッチング処理液200部に加え、70℃で10分間加熱処理を行った。室温まで冷却した後、これを固液分離して得られたケーキを、イオン交換水、メタノールの順で掛け洗いを行った後、さらに、120℃で2時間真空乾燥を行った。以上の前処理工程を行った後は、製造例1と同様に触媒化工程、無電解メッキ工程を行い、導電性微粒子(10)を得た。
【0134】
各製造例における製造条件、及び、パラジウム触媒吸着量を表1に示した。また、得られた導電性微粒子の評価結果を表2に示した。さらに、導電性微粒子(2)、(5)、(6)、(9)の導電性微粒子についてのFE−SEM画像を図1〜図8に示した。
【0135】
【表1】

【0136】
【表2】

【0137】
表2より、粒子表面に房状に突起が密集して形成されている導電性微粒子(1)〜(9)は、初期抵抗値、85℃/85%RHで500時間放置後抵抗値ともに低く、導通信頼性に優れていることが分かる。これらの中でも、1μm四方内の突起個数が80個未満である導電性微粒子(6)、(9)は、特に、初期抵抗値、85℃/85%RHで500時間放置後抵抗値が低い。一方、1μm四方内の突起個数が80個以上である導電性微粒子(1)〜(5)、(7)、(8)は、基材粒子と導電性金属層との密着性が特に優れている。なお、導電性微粒子(10)は表面に突起が形成されていないため、500時間放置後抵抗値が高かった。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の導電性微粒子は、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電接着剤、異方性導電インク等の異方性導電材料に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材粒子と、該基材粒子の表面に形成された導電性金属層から構成される導電性微粒子であって、
前記基材粒子が、個数平均粒子径が100μm以下のビニル系重合体微粒子であり、
該導電性微粒子は、表面が導電性金属で形成された多数の突起を有しており、これらの突起が粒子表面方向に房状に並ぶことで前記導電性金属層が形成されていることを特徴とする導電性微粒子。
【請求項2】
粒子表面のFE−SEM画像において、1μm四方内に存在する突起の個数が30個〜500個である請求項1に記載の導電性微粒子。
【請求項3】
粒子表面のFE−SEM画像において、1μm四方内に存在する突起の個数が30個以上80個未満である請求項1に記載の導電性微粒子。
【請求項4】
粒子表面のFE−SEM画像において、1μm四方内に存在する突起の個数が80個以上500個以下である請求項1に記載の導電性微粒子。
【請求項5】
粒子表面のFE−SEM画像において、前記突起の平均長径が50nm〜300nmである請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電性微粒子。
【請求項6】
前記突起の平均長径と平均短径との比(長径/短径)が1.2〜3.0である請求項1〜5のいずれか一項に記載の導電性微粒子。
【請求項7】
前記導電性金属層の厚さが0.01μm〜0.30μmである請求項1〜6のいずれか一項に記載の導電性微粒子。
【請求項8】
個数平均粒子径が3μm未満である請求項1〜7のいずれか一項に記載の導電性微粒子。
【請求項9】
前記基材粒子が、樹脂成分を含んでおり、この樹脂成分を形成する単量体成分として、多官能アクリレートが含まれる請求項1〜8のいずれか一項に記載の導電性微粒子。
【請求項10】
前記基材粒子が、樹脂成分を含んでおり、この樹脂成分を形成する単量体成分として、多官能(メタ)アクリレート及び芳香族ジビニル化合物が含まれる請求項1〜8のいずれか一項に記載の導電性微粒子。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の導電性微粒子の表面の少なくとも一部に絶縁性樹脂層を有することを特徴とする絶縁性樹脂被覆導電性微粒子。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の導電性微粒子又は請求項11に記載の絶縁性樹脂被覆導電性微粒子を含有することを特徴とする異方性導電材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−79635(P2012−79635A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226076(P2010−226076)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】