説明

導電性微粒子の製造方法、導電性微粒子、異方性導電材料、及び、導電接続構造体

【課題】CV値及びアスペクト比が小さく、回路接続時の加熱圧縮による接触不良等を起こすことのない導電性微粒子を効率よく製造することができる導電性微粒子の製造方法、該導電性微粒子の製造方法を用いてなる導電性微粒子、該導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料、及び、導電接続構造体を提供する。
【解決手段】基材微粒子の表面に、導電性金属層が形成された導電性微粒子の製造方法であって、ポリアミック酸と金属アルコキシドと非重合性有機溶媒とを混合してポリアミック酸混合溶液を調整する工程と、前記ポリアミック酸混合溶液と乳化剤水溶液とを混合し、攪拌する乳化工程と、前記乳化工程を行った混合液を加熱する加熱工程とを有する基材微粒子調製工程を有する導電性微粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CV値及びアスペクト比が小さく、回路接続時の加熱圧縮による接触不良等を起こすことのない導電性微粒子を効率よく製造することができる導電性微粒子の製造方法、該導電性微粒子の製造方法を用いてなる導電性微粒子、該導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料、及び、導電接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性の金属層を表面に有する導電性微粒子は、バインダー樹脂や粘接着剤等と混合することにより、例えば、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電接着剤、異方性導電フィルム、異方性導電シート等の異方性導電材料として広く用いられている。
これらの異方性導電材料は、例えば、液晶ディスプレイ、パーソナルコンピュータ、携帯電話等の電子機器において、基板同士を電気的に接続したり、半導体素子等の小型部品を基板に電気的に接続したりするために、相対向する回路基板や電極端子の間に挟み込んで使用されている。
【0003】
また、電子回路基板において、ICやLSIは、電極をプリント基板にハンダ付けすることによって接続されていた。しかし、ハンダ付けでは、プリント基板と、ICやLSIとを効率的に接続することはできなかった。また、ハンダ付けでは、ICやLSIの実装密度を向上させることが困難であった。
これを解決するためにハンダを球状にした、いわゆる「ハンダボール」でICやLSIを基板に接続するBGA(ボールグリッドアレイ)が開発された。BGAによれば、チップ又は基板に実装されたハンダボールを高温で溶融させ、基板とチップとを接続することができる。したがって、電子回路基板の生産効率が改善され、チップの実装密度が向上した電子回路基板を製造することができる。
しかし、近年、基板の多層化が進み、多層基板は使用環境の影響を受けやすいことから、基板に歪みや伸縮が発生し、基板間の接続部に断線が発生するという問題があった。
例えば、ハンダボールを用いて、半導体が基板に接続されると、半導体と基板との線膨張係数が違うため、ハンダボールに応力が加わる。その結果、ハンダボールに亀裂が入り、断線することがあった。
【0004】
特許文献1にはアクリル化合物で形成された基材微粒子の表面に金属メッキが施された金属メッキ粒子が開示されている。
しかし、アクリル化合物で形成された基材微粒子を用いた導電性微粒子は、耐熱性が低いため、基材微粒子が加熱されると、基材微粒子が変形しやすい。その結果、接続抵抗値が高くなるという問題があった。
【0005】
このような問題に対し、耐熱性に優れるポリイミド樹脂で形成される基材微粒子を用いることが検討されている。しかしながら、ポリイミド樹脂は金属メッキとの密着性が低い。このような基材微粒子を用いてなる導電性微粒子は、回路接続時の加熱圧縮により金属メッキ層が破壊され、接触不良等を起こすことがあった。また、基材微粒子と金属メッキ層との密着性を向上させるためには、金属メッキを行う前に、基材微粒子表面に複雑な前処理が必要となり、導電性微粒子を効率的に製造することは困難であった。
【0006】
特許文献2には耐熱性、及び、金属メッキとの密着性に優れ、かつ効率的に製造することができる方法として、スプレードライ法によりポリイミド−シリカ複合体基材微粒子を製造する方法が開示されている。
しかしながら、スプレードライ法で得られた基材微粒子は、CV値及びアスペクト比が大きくなる傾向があり、このような基材微粒子を用いて得られる導電性微粒子を用いると、隣接する電極間のリークが発生することがあった。また、導電性微粒子と電極との接触面積を制御することができないという問題があった。また、スプレードライ法で得られた基材微粒子を分級することにより、粒子径を揃えようとすると、分級工程に多くの時間を費やす必要があった。
【特許文献1】特公平7−97717号公報
【特許文献2】特開2005−325147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、CV値及びアスペクト比が小さく、回路接続時の加熱圧縮による接触不良等を起こすことのない導電性微粒子を効率よく製造することができる導電性微粒子の製造方法、該導電性微粒子の製造方法を用いてなる導電性微粒子、該導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料、及び、導電接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材微粒子の表面に、導電性金属層が形成された導電性微粒子の製造方法であって、ポリアミック酸と金属アルコキシドと非重合性有機溶媒とを混合してポリアミック酸混合溶液を調整する工程と、上記ポリアミック酸混合溶液と乳化剤水溶液とを混合し、攪拌する乳化工程と、上記乳化工程を行った混合液を加熱する加熱工程とを有する基材微粒子調製工程を有する導電性微粒子の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明の導電性微粒子の製造方法は、基材微粒子の製造工程と、上記基材微粒子の表面に金属メッキ層を形成させる工程とからなる。
上記基材微粒子の製造工程は、ポリアミック酸と金属アルコキシドと非重合性有機溶媒とを混合してポリアミック酸混合溶液を調整する工程と、上記ポリアミック酸混合溶液と乳化剤水溶液とを混合し、攪拌する乳化工程と、上記乳化工程を行った混合液を加熱する加熱工程とを有する。
【0010】
上記基材微粒子の製造工程は、ポリアミック酸と金属アルコキシドと非重合性有機溶媒とを混合してポリアミック酸混合溶液を調整する工程を有する。
【0011】
上記ポリアミック酸は、特に限定されず、多価のポリカルボン酸とジアミンとの重縮合体、多価のポリカルボン酸とジオール化合物との重縮合体、ポリカルボン酸誘導体とジアミンとの重縮合体、ポリカルボン酸誘導体とジオール化合物との重縮合体等が挙げられる。また、上記ポリアミック酸は、パイヤーMLRC5057、パイヤーMLRC5097、パイヤーMLRC5019(いずれもI.S.T.社製)等の市販品を用いることもできる。また、例えば、無水ピロメリット酸とオキサジアニリンとを非重合性有機溶媒中にて混合、攪拌し、重合させることによっても得ることができる。
【0012】
上記ポリアミック酸混合溶液における上記ポリアミック酸の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は3重量%、好ましい上限は70重量%である。上記ポリアミック酸の含有量が3重量%未満であると、基材微粒子が脆くなることがある。上記ポリアミック酸の含有量が70重量%を超えると、基材微粒子の線膨張が充分に低下しないことがある。上記ポリアミック酸の含有量のより好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は50重量%である。
【0013】
上記金属アルコキシドは特に限定されず、例えば、テトラアルコキシシランや、アルキルアルコキシシランや、構造内部にエポキシ基、イソシアネート基、ウレイド基、アミノ基、メルカプト基、ハロゲン基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、スチリル基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
【0014】
上記テトラアルコキシシランは特に限定されず、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラポリメトキシシラン、テトラポリエトキシシラン等が挙げられる。
【0015】
上記アルキルアルコキシシランは特に限定されず、例えば、モノアルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルアルコキシシランが挙げられる。上記アルキルアルコキシシランのアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ビニル基等が挙げられる。また、上記アルキルアルコキシシランのアルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0016】
上記構造内部にエポキシ基を有するシランカップリング剤は特に限定されず、例えば、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0017】
上記構造内部にイソシアネート基を有するシランカップリング剤は特に限定されず、例えば、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0018】
上記構造内部にウレイド基を有するシランカップリング剤は特に限定されず、例えば、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0019】
上記構造内部にアミノ基を有するシランカップリング剤は特に限定されず、例えば、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0020】
上記構造内部にメルカプト基を有するシランカップリング剤は特に限定されず、例えば、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0021】
上記構造内部にハロゲン基を有するシランカップリング剤は特に限定されず、例えば、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0022】
上記構造内部にビニル基、アクリル基、メタクリル基、スチリル基等を有する重合性のシランカップリング剤は特に限定されず、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0023】
上記シランカップリング剤の代わりにチタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤、及び、リン酸エステルカップリング剤等を単独で用いてもよいし、他の金属アルコキシドと併用してもよい。
【0024】
上記非重合性有機溶媒は特に限定されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、N−アセチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン等の極性溶媒が好適に用いられる。
【0025】
上記基材微粒子の製造工程は、上記ポリアミック酸混合溶液と乳化剤水溶液とを混合し、攪拌する乳化工程を有する。
【0026】
上記乳化剤水溶液は、水と、乳化剤とを含有する。
上記乳化剤は特に限定されず、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸カリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性乳化剤が挙げられる。また、上記乳化剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート等のノニオン性乳化剤が挙げられる。また、上記乳化剤として、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤が挙げられる。また、上記乳化剤として、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性乳化剤が挙げられる。また、上記乳化剤として、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、セルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、マリアリム、ポリスチレンスルホン酸等の高分子分散剤が挙げられる。また、上記乳化剤として、セチルアルコール等の分散助剤が挙げられる。
【0027】
上記乳化剤水溶液における上記乳化剤の濃度は特に限定されないが、好ましい下限は0.25重量%である。上記乳化剤の濃度が0.25重量%未満であると、乳化液滴の大きさが揃わないため、基材微粒子のCV値が大きくなることがある。
【0028】
上記基材微粒子の製造工程は、上記乳化工程を行った混合液を加熱する加熱工程を有する。この加熱工程は、具体的には、上記乳化工程により得られた化合物をハイブリット化反応させる工程である。
なお、上記ハイブリット化反応とは、上記金属アルコキシドがシラン化合物である場合には、シラン反応のことを意味する。
【0029】
上記ハイブリット化反応における反応温度は特に限定されないが、好ましい下限は60℃、好ましい上限は150℃である。上記ハイブリット化反応における反応温度のより好ましい下限は70℃、より好ましい上限は110℃である。
【0030】
上記ハイブリット化反応の反応時間は特に限定されないが、好ましい下限は3時間である。上記ハイブリット化反応の反応時間が3時間未満であると、導電性微粒子の耐熱性が低下するため、接続信頼性が低下することがある。上記ハイブリット化反応の反応時間のより好ましい下限は4時間である。
【0031】
上記基材微粒子の製造工程は、上記工程の後、更に加熱を行うことでイミド化反応を行うことが好ましい。なお、この工程は、上記ハイブリット化反応の加熱温度及び反応時間を高温かつ長時間保つことによりそのまま行うこともできるが、一度、ハイブリット化反応を終了させた後、得られる化合物を脱水装置により脱水し、トルエン中に添加した後、加熱を行うことによりイミド化反応を行うことが好ましい。
【0032】
上記イミド化反応における反応温度は特に限定されないが、好ましい下限は100℃である。上記イミド化反応における反応温度が100℃未満であると、導電性微粒子の耐熱性が低下するため、接続信頼性が低下することがある。上記イミド化反応における反応温度のより好ましい下限は180℃である。
【0033】
上記イミド化反応の反応時間は特に限定されないが、好ましい下限は3時間である。上記イミド化反応の反応時間が3時間未満であると、導電性微粒子の耐熱性が低下するため、接続信頼性が低下することがある。上記イミド化反応の反応時間のより好ましい下限は5時間である。
【0034】
本発明の導電性微粒子の製造方法は、上述した工程により基材微粒子を作製した後、上記基材微粒子の表面に金属メッキ層を形成させる工程を有する。
【0035】
上記導電性金属層を形成する金属は特に限定されず、例えば、金、銀、銅、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、カドミウム等が挙げられる。
【0036】
上記基材微粒子の表面に、上記導電性金属層を形成させる方法は特に限定されず、例えば、無電解メッキ法、電解メッキ法、真空蒸着法、イオンプレーティング、イオンスパッタリング等が挙げられる。
【0037】
上述した本発明の導電性微粒子の製造方法により得られる導電性微粒子は、従来のイオンスプレー法による導電性微粒子の製造方法と比べて、CV値及びアスペクト比が小さく、回路接続時の加熱圧縮による接触不良等を起こすことがない。また、このような導電性微粒子を効率よく製造することができる。
また、基材微粒子は、無機骨格と有機骨格とが共有結合していることから、耐熱性や、金属メッキ層との密着性にも優れる。
本発明の導電性微粒子の製造方法により製造されてなる導電性微粒子もまた、本発明の1つである。
【0038】
本発明の導電性微粒子は、上述したように基材微粒子と、上記基材微粒子の表面に形成された導電性金属層とからなる。
本発明の導電性微粒子の製造方法により製造されることにより、上記基材微粒子のCV値は5%以下となる。CV値が5%を超えると、粒子径分布が広くなりすぎて、電極を接続する際に、接触又は接地面積がばらつくため、安定した接続が得られにくいという問題が発生する。
【0039】
また、本発明の導電性微粒子の製造方法により製造されることにより、上記基材微粒子のアスペクト比は1.0〜1.2となる。アスペクト比がこの範囲を外れると、隣接する電極間でリークが起こったり、電極を接続する際に、接触面積がばらつき、安定した接続が得られにくかったりするという問題が発生する。
ここでアスペクト比とは、基材微粒子の長径と短径との比(長径/短径)を意味する。
【0040】
本発明の導電性微粒子中の基材微粒子における金属アルコキシド由来の無機骨格の含有量は特に限定されないが、好ましい下限が2.5重量%、好ましい上限が15重量%である。上記無機骨格の含有量が2.5重量%未満であると、導電性微粒子として用いた際に、圧縮により破壊を起こしやすく、更に、機械的強度の効果が充分に得ることができないことがある。上記無機骨格の含有量が15重量%を超えると、導電性微粒子が脆くなることがある。なお、上記無機骨格とは、金属−O(酸素)マトリックスを意味する。
【0041】
本発明の導電性微粒子をバインダー樹脂に分散させることにより異方性導電材料を製造することができる。このような異方性導電材料もまた、本発明の1つである。
【0042】
本発明の異方性導電材料は、例えば、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘着剤、異方性導電フィルム、異方性導電シート等が挙げられる。
【0043】
上記バインダー樹脂は特に限定されないが、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体、エラストマー等が挙げられる。
上記ビニル樹脂は特に限定されないが、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂は特に限定されないが、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性ブロック共重合体は特に限定されないが、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
また、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂、湿気硬化型樹脂であってもよい。
【0044】
本発明の異方性導電材料には、必要に応じて、例えば、増量剤、可塑剤、粘接着性向上剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、有機溶媒等の各種添加剤が添加されてもよい。
【0045】
本発明の異方性導電材料を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記バインダー樹脂中に本発明の導電性微粒子を添加し、均一に混合して分散させ、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘着剤等とする方法が挙げられる。また、本発明の異方性導電材料を製造する方法として、上記バインダー樹脂中に本発明の導電性微粒子を添加し、均一に分散させるか、又は、加熱溶解させて、離型紙や離型フィルム等の離型材の離型処理面に所定の厚さとなるように塗工し、必要に応じて乾燥や冷却等を行って、異方性導電フィルム、異方性導電シート等とする方法も挙げられる。なお、異方性導電材料の種類に対応して、適宜の製造方法を選択することができる。
また、上記バインダー樹脂と、本発明の導電性微粒子とを混合することなく、別々に用いて異方性導電材料としてもよい。
【0046】
本発明の導電性微粒子又は本発明の異方性導電材料を用いてなる導電接続構造体もまた、本発明の1つである。
【0047】
本発明の導電接続構造体は、一対の回路基板間に、本発明の導電性微粒子又は本発明の異方性導電材料を充填することにより、一対の回路基板間を接続させた導電接続構造体である。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、CV値及びアスペクト比が小さく、回路接続時の加熱圧縮による接触不良等を起こすことのない導電性微粒子を効率よく製造することができる導電性微粒子の製造方法、該導電性微粒子の製造方法を用いてなる導電性微粒子、該導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料、及び、導電接続構造体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0050】
(実施例1)
(懸濁重合法による基材微粒子の作製)
ポリアミック酸の原料として無水ピロメリット酸20重量部と、オキサジアニリン20重量部とを混合し、混合溶液を得た。得られた混合溶液と、極性の非重合性溶媒であるジメチルアセトアミド300重量部とを混合し、撹拌してポリアミック酸溶液を調製した。
次に、合成したポリアミック酸溶液20.5重量部と、無機架橋のためのアミン成分としてN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン3重量部と、テトラエトキシシラン6.5重量部とを混合し、混合溶液を得た。得られた混合溶液と、水溶性乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2重量部を含有するイオン交換水390重量部とを混合し、超音波ホモジナイザーにて30分間強制乳化して、ポリアミック酸−シリカエマルジョンが分散した分散液を調製した。
次に、撹拌機、ジャケット還流冷却器及び温度計を備えた重合器を用い、重合器内部を窒素雰囲気とした後、得られた分散液を投入し、30分間撹拌した後に重合器を80℃に加熱した。4時間反応し、その後1時間の熟成期間をおいた後、重合器を室温まで冷却した。
得られたスラリーを脱水装置により脱水した後、トルエン中で熱イミド化した。
【0051】
得られた粒子をアセトンで充分に洗浄し、有機−無機骨格ハイブリッド基材微粒子(平均粒子径4μm)を得た。
得られた基材微粒子の表面を無電解ニッケルメッキし、厚さ0.06μmのニッケルメッキ層を形成させた。更に、置換金メッキを行い、厚さ0.03μmの金メッキ層をニッケルメッキ層の表面に形成させ導電性微粒子を得た。
【0052】
エポキシ樹脂としてjER828(ジャパンエポキシレジン社製)100重量部、トリスジメチルアミノエチルフェノール2重量部、及び、トルエン100重量部に対し、得られた導電性微粒子を添加し、遊星式撹拌機を用いて充分に混合し、混合物を得た。得られた混合物を、離型フィルム上に乾燥後の厚さが7μmとなるように塗布し、トルエンを揮発させて導電性微粒子を含有する接着フィルムを得た。なお、導電性微粒子の配合量は、フィルム中の含有量が5万個/cmとした。
その後、導電性微粒子を含有する接着フィルムを、導電性微粒子を含有させずに得た接着フィルム(厚さ10μm)と常温で貼り合わせた厚さ17μmで2層構造の異方性導電フィルムを得た。
【0053】
得られた異方性導電フィルムを5mm×5mmの大きさに切断した。切断した異方性導電フィルムを、一方に抵抗測定用の引き回し線を有するアルミニウム電極(高さ0.2μm、L/S=20μm/20μm)が形成されたガラス基板(幅200μm、長さ1mm)のアルミニウム電極側のほぼ中央に貼り付けた。次いで、同じアルミニウム電極が形成されたポリイミド基板(幅200μm、長さ1mm)を、電極同士が重なるように位置合わせをしてから貼り合わせた。このガラス基板とポリイミド基板との積層体を、圧力10N、温度150℃の条件で30秒間熱圧着し、導電接続構造体を得た。
【0054】
(比較例1)
実施例1と同様にしてポリアミック酸溶液を調製した。
次に、合成したポリアミック酸溶液25重量部と、水溶性乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2重量部を含有するイオン交換水390重量部とを混合し、超音波ホモジナイザーにて30分間強制乳化して、ポリアミック酸が分散した分散液を調製した。
次に、撹拌機、ジャケット還流冷却器及び温度計を備えた重合器を用い、重合器内部を窒素雰囲気とした後、得られた分散液を投入し、30分間撹拌した後に重合器を80℃に加熱した。4時間反応し、その後1時間の熟成期間をおいた後、重合器を室温まで冷却した。
得られたスラリーを脱水装置により脱水した後、トルエン中で熱イミド化した。
【0055】
得られた粒子をアセトンで充分に洗浄し、基材微粒子(平均粒子径4μm)を得た。
得られた基材微粒子の表面を無電解ニッケルメッキし、厚さ0.06μmのニッケルメッキ層を形成させた。更に、置換金メッキを行い、厚さ0.03μmの金メッキ層をニッケルメッキ層の表面に形成させ導電性微粒子を得た。
【0056】
以下、実施例1と同様にして異方性導電フィルム及び導電接続構造体を作製した。
【0057】
(比較例2)
実施例1と同様にしてポリアミック酸溶液を調製した。
次に、合成したポリアミック酸溶液30重量部と、無機化合物として平均粒子径50nmの表面疎水処理を施したシリカ粒子1.5重量部とを混合し、混合溶液を得た。得られた混合溶液と、水溶性乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2重量部を含有するイオン交換水390重量部とを混合し、ローターステーター型ホモジナイザーにて30分間強制乳化して、ポリアミック酸−シリカエマルジョンが分散した分散液を調製した。
次に、撹拌機、ジャケット還流冷却器及び温度計を備えた重合器を用い、重合器内部を窒素雰囲気とした後、得られた分散液を投入し、30分間撹拌した後に重合器を80℃に加熱した。4時間反応し、その後1時間の熟成期間をおいた後、重合器を室温まで冷却した。
得られたスラリーを脱水装置により脱水した後、トルエン中で熱イミド化した。
【0058】
得られた粒子をアセトンで充分に洗浄し、基材微粒子(平均粒子径4μm)を得た。
得られた基材微粒子の表面を無電解ニッケルメッキし、厚さ0.06μmのニッケルメッキ層を形成させた。更に、置換金メッキを行い、厚さ0.03μmの金メッキ層をニッケルメッキ層の表面に形成させ導電性微粒子を得た。
【0059】
以下、実施例1と同様にして異方性導電フィルム及び導電接続構造体を作製した。
【0060】
(比較例3)
実施例1と同様にしてポリアミック酸溶液を調製した。
次に、合成したポリアミック酸溶液25重量部と、無機架橋のためのアミン成分としてN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン25重量部とを混合し、混合溶液を得た。
スプレードライ装置(ヤマトラボテック社製「GS310」)を用い、空室部の温度が170℃、噴射圧力0.1MPaの条件下で得られたポリアミック酸混合溶液をスプレードライし、粒子を得た。
【0061】
得られた粒子をアセトンで充分に洗浄し、基材微粒子(平均粒子径4μm)を得た。
得られた基材微粒子の表面を無電解ニッケルメッキし、厚さ0.06μmのニッケルメッキ層を形成させた。更に、置換金メッキを行い、厚さ0.03μmの金メッキ層をニッケルメッキ層の表面に形成させ導電性微粒子を得た。
【0062】
以下、実施例1と同様にして異方性導電フィルム及び導電接続構造体を作製した。
【0063】
<評価>
実施例1及び比較例1〜3で得られた導電性微粒子、並びに、導電接続構造体について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0064】
(1)CV値、アスペクト比の測定
分級操作前の任意の200個の導電性微粒子を走査型電子顕微鏡(3000倍)で観察し、数平均粒子径を算出した。さらに、数平均粒子径からCV値及びアスペクト比を計算した。
【0065】
(2)収率の測定
導電性微粒子の収率は、導電性微粒子の全量を、孔径12.5μm及び孔径4.0μmの篩を通して、孔径4.0μmの篩上に残った導電性微粒子の重量の割合を収率として計算した。
【0066】
(3)抵抗値の測定
得られた導電接続構造体の電極間の抵抗値(通常)を四端子法にて測定した。また、得られた導電接続構造体に対してPCT試験(80℃、95%RHの高温高湿環境下で1000時間保持)を行った後、電極間の抵抗値を測定した。
抵抗値の評価は以下の基準で行なった。
○:電極間の抵抗値(通常)が10Ω未満で、PCT試験後の抵抗値が15Ω未満。
×:電極間の抵抗値(PCT試験後)が20Ω以上。
【0067】
【表1】

【0068】
(実施例2)
(懸濁重合法による基材微粒子の作製)
乳化条件及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの仕込み量を変えた以外は、実施例1と同様にして基材微粒子(平均粒子径260μm)を作製した。
得られた基材微粒子の表面にバレルめっき装置を用いて、銅メッキし、5μmの銅メッキ層を形成させた。更に、共晶ハンダメッキを行い、15μmのハンダメッキ層を銅メッキ層の表面に形成させ導電性微粒子を得た。
【0069】
(比較例4)
乳化条件及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの仕込み量を変えた以外は、比較例1と同様にして基材微粒子(平均粒子径260μm)を作製した。
得られた基材微粒子の表面にバレルめっき装置を用いて、銅メッキし、5μmの銅メッキ層を形成させた。更に、共晶ハンダメッキを行い、15μmのハンダメッキ層を銅メッキ層の表面に形成させ導電性微粒子を得た。
【0070】
(比較例5)
乳化条件及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの仕込み量を変えた以外は、比較例2と同様にして基材微粒子(平均粒子径260μm)を作製した。
得られた基材微粒子の表面にバレルめっき装置を用いて、銅メッキし、5μmの銅メッキ層を形成させた。更に、共晶ハンダメッキを行い、15μmのハンダメッキ層を銅メッキ層の表面に形成させ導電性微粒子を得た。
【0071】
(比較例6)
噴霧圧力を変えた以外は、比較例3と同様にして基材微粒子(平均粒子径260μm)を作製した。
得られた基材微粒子の表面にバレルめっき装置を用いて、銅メッキし、5μmの銅メッキ層を形成させた。更に、共晶ハンダメッキを行い、15μmのハンダメッキ層を銅メッキ層の表面に形成させ導電性微粒子を得た。
【0072】
<評価>
実施例2及び比較例4〜6で得られた導電性微粒子について以下の評価を行った。結果を表2に示した。
【0073】
(1)CV値、アスペクト比の測定
分級操作前の任意の200個の導電性微粒子を走査型電子顕微鏡(3000倍)で観察し、数平均粒子径を算出した。さらに、数平均粒子径からCV値及びアスペクト比を計算した。
【0074】
(2)収率の測定
導電性微粒子の収率は、導電性微粒子の全量を、孔径500μm及び孔径300μmの篩を通して、孔径300μmの篩上に残った導電性微粒子の重量の割合を収率として計算した。
【0075】
(電極間抵抗)
24個の導電性微粒子をチップの電極に実装し、更に、赤外線リフロー装置を用いてチップをプリント基板に実装した。リフロー条件は、185℃で1分間加熱し、その後、245℃で3分間加熱する条件であった。このようにして10枚のチップが実装されたプリント基板を作製し、導電接続構造体を得た。得られた導電接続構造体を、−40〜125℃(各30分サイクル)でプログラム運転する恒温槽に入れた。100サイクル毎にすべての導電性微粒子の導通を調べ、断線したチップの数を計測した。
○:1000サイクル後の導通不良のチップは0〜4個であった。
△:1000サイクル後の導通不良のチップは5〜7個であった。
×:1000サイクル後の導通不良のチップは8〜10個であった。
【0076】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、CV値及びアスペクト比が小さく、回路接続時の加熱圧縮による接触不良等を起こすことのない導電性微粒子を効率よく製造することができる導電性微粒子の製造方法、該導電性微粒子の製造方法を用いてなる導電性微粒子、該導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料、及び、導電接続構造体を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材微粒子の表面に、導電性金属層が形成された導電性微粒子の製造方法であって、
ポリアミック酸と金属アルコキシドと非重合性有機溶媒とを混合してポリアミック酸混合溶液を調整する工程と、
前記ポリアミック酸混合溶液と乳化剤水溶液とを混合し、攪拌する乳化工程と、
前記乳化工程を行った混合液を加熱する加熱工程とを有する基材微粒子調製工程を有することを特徴とする導電性微粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の導電性微粒子の製造方法により製造されてなることを特徴とする導電性微粒子。
【請求項3】
基材微粒子の表面に、導電性金属層が形成された導電性微粒子であって、
前記基材微粒子における金属アルコキシド由来の無機骨格の含有量が2.5〜15重量%である
ことを特徴とする請求項2記載の導電性微粒子。
【請求項4】
基材微粒子のCV値が5%以下であることを特徴とする請求項2又は3記載の導電性微粒子。
【請求項5】
基材微粒子のアスペクト比が1.0〜1.2であることを特徴とする請求項2、3又は4記載の導電性微粒子。
【請求項6】
請求項2、3、4又は5記載の導電性微粒子が絶縁性のバインダー樹脂中に分散されてなることを特徴とする異方性導電材料。
【請求項7】
請求項2、3、4若しくは5記載の導電性微粒子、又は、請求項6記載の異方性導電材料を用いてなることを特徴とする導電接続構造体。


【公開番号】特開2009−245855(P2009−245855A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92999(P2008−92999)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】